説明

タイヤモールド及び空気入りタイヤの製造方法

【課題】接着不良やライトネスといった加硫成型時のゴム流れ不足による不具合を抑制しつつ、タイヤ外観の均一性を確保できるタイヤモールドと空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ成型面10のサイドウォール部を成型する領域に、周方向に沿った環状の粗面成型部1を備え、粗面成型部1には、5〜300μmの突出高さで周方向CDに沿って螺旋状に延びる突起5を設けた。これにより、未加硫タイヤの粘着を抑えてゴムの流動性を確保するとともに、空気が周方向に流れるように促して残留を低減し、タイヤ外観の均一性の確保を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを加硫成型するためのタイヤモールドと、そのタイヤモールドを用いた空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫成型では、未加硫タイヤの外表面がタイヤモールドのタイヤ成型面に粘着しやすく、それに起因したゴム流れ不足により、図11に示すような接着不良を生じることがある。この接着不良は、タイヤ外表面にて周方向に連続的に剥離又は陥没した領域として認められ、特にサイドウォール部での発生が顕著である。また、そのようなゴム流れ不足は、タイヤ成型面とタイヤ外表面との間での空気の残留を助長し、加硫成型したタイヤの外表面にライトネス又はベアと呼ばれる凹み傷を生じる原因にもなる。
【0003】
下記特許文献1には、カーカスプライのジョイント部による筋状の凹凸痕を目立ちにくくするために、サイドウォール部の外表面を円周方向に隣り合う複数の扇状領域に区画し、その隣り合う扇状領域の間で表面粗さの差を50μm以上とした空気入りタイヤが記載されている。また、同文献には、そのようなタイヤを成型するために、タイヤモールドのタイヤ成型面の表面粗さを変化させることの記載があり、扇状領域に対応した表面粗さの粗い領域であれば、加硫成型時に未加硫タイヤの粘着を抑えてゴムの流動性を向上できると考えられる。
【0004】
しかし、上記のタイヤモールドでは、円周方向に隣り合う扇状領域の間で表面粗さを変える必要があるため、タイヤ成型面に対して機械加工を施すことが煩雑且つ困難であり、実用上はサンドブラスト加工などが適用される。それ故、機械加工を施したタイヤ成型面に比べて凹凸の大きさや形成密度の精度が低くなり、使用するモールドが異なると、光沢などのタイヤ外観に差異を生じることがある。また、加硫成型時には、タイヤ成型面とタイヤ外表面との間で空気がランダムな方向に流れるため、空気が行き詰まりを起こして残留する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−106921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接着不良やライトネスといった加硫成型時のゴム流れ不足による不具合を抑制しつつ、タイヤ外観の均一性を確保できるタイヤモールドと空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係るタイヤモールドは、タイヤ成型面のサイドウォール部を成型する領域に、周方向に沿った環状の粗面成型部を備え、前記粗面成型部には、5〜300μmの突出高さで周方向に沿って螺旋状に延びる突起が設けられているものである。
【0008】
このタイヤモールドでは、サイドウォール部を成型する領域に備えた粗面成型部に、5〜300μmの突出高さを有する突起が設けられているため、粗面成型部が相応に粗く形成され、加硫成型時に未加硫タイヤの粘着を抑えてゴムの流動性を確保できる。また、突起が周方向に沿って螺旋状に延びるため、タイヤ成型面とタイヤ外表面との間の空気が周方向に流れやすく、行き詰まりを抑えて空気の残留を低減できる。しかも、粗面成型部に対して機械加工の適用が容易であり、突起の大きさや形成密度を精度良く制御して、光沢などのタイヤ外観の均一性を確保できる。
【0009】
本発明のタイヤモールドでは、前記粗面成型部が曲率を相違させた複数の曲面を含んでおり、タイヤ中心軸を含む平面で切断した断面にて、曲率半径の小さい曲面では曲率半径の大きい曲面よりも前記突起のピッチ又は突出高さが大きいものが好ましい。タイヤの加硫成型では、タイヤ成型面の曲率半径が小さい箇所にて、タイヤ外表面の接触圧力が弱くなりがちであり、そのために接着不良やライトネスを生じる恐れがある。これに対し、本発明の上記構成では、曲率半径の小さい箇所で突起のピッチ又は突出高さが相対的に大きいことから、タイヤ外表面の接触圧力を高めて、接着不良などを有効に抑えられる。
【0010】
本発明のタイヤモールドでは、前記突起の延在方向に沿って前記突起の突出高さが変化するものが好ましい。この場合、タイヤを加硫成型する際に、未加硫タイヤの外表面が、突起の突出高さの大きい箇所に対して先に接触し、突起の突出高さの小さい箇所に対して遅れて接触することから、その突出高さの大きい箇所で接触圧力を高めて、接着不良の発生を有効に抑制できる。
【0011】
本発明のタイヤモールドでは、前記突起のピッチが30〜500μmであるものが好ましい。これによって粗面成型部がより適度に粗くなり、ゴムの流動抵抗を低減して未加硫タイヤの粘着を効果的に抑えることができる。かかる作用効果を高めるうえで、前記突起のピッチが前記突起の突出高さよりも大きいことが好ましい。
【0012】
本発明のタイヤモールドでは、前記タイヤ成型面に、前記突起の突出高さよりも大きい溝深さを有して前記粗面成型部を縦断する径方向溝が設けられているものが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ成型面とタイヤ外表面との間の空気が径方向溝を通じて流動できるため、突起間における空気の残留を低減して、ライトネスの発生を良好に防止できる。
【0013】
また、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、上記した何れかのタイヤモールドを用いてタイヤを加硫成型する工程を備えるものである。この方法では、上記の如き粗面成型部を備えたタイヤ成型面によって、ゴムの流動性を確保しながらも空気の残留を低減して、接着不良やライトネスといった加硫成型時のゴム流れ不足による不具合を抑制できる。それでいて、粗面成型部における突起の大きさや形成密度を精度良く制御して、光沢などのタイヤ外観の均一性を確保できる。
【0014】
本発明の空気入りタイヤの製造方法では、前記タイヤを加硫成型する工程にて、タイヤのサイドウォール部におけるゴム界面の露出部位を前記粗面成型部に押し当てるものが好ましい。ゴム界面の露出部位では、異種ゴムによる流動性の違いに応じて接着不良やライトネスを生じやすい傾向にある。これに対し、本発明の上記方法によれば、そのような不具合を起こしがちな部位を粗面成型部に押し当てるため、接着不良やライトネスの発生を的確に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るタイヤモールドの一例を概略的に示す縦断面図
【図2】図1のA−A矢視断面図
【図3】粗面成型部を概略的に示す平面図とその一部を示す断面斜視図
【図4】粗面成型部の要部を拡大して示す断面図
【図5】本発明の別実施形態における突起の側面図
【図6】径方向溝と周方向溝を設けた粗面成型部の(a)平面図と(b)その一部を示す断面斜視図
【図7】本発明の別実施形態における粗面成型部の要部を拡大して示す断面図
【図8】タイヤモールドへの未加硫タイヤのセットを説明する断面図
【図9】成型した空気入りタイヤの一例を示す斜視図
【図10】ゴム界面の露出部位を説明するためのタイヤ子午線断面図
【図11】接着不良を説明するための空気入りタイヤの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1には、タイヤ用加硫金型であるタイヤモールドM(以下、モールドM)の概略断面図を示す。加硫成型時には、未加硫タイヤがモールドMにタイヤ軸方向を上下にしてセットされ、タイヤ成型面10にタイヤ外表面が押し当てられる。モールドMは、トレッド部を成型するトレッド型部M1と、サイドウォール部を成型するサイド型部M2,M3とを備え、各型部の内周面11〜13がタイヤ成型面10を構成する。図示を省略しているが、トレッド型部M1の内周面11には、トレッドパターンに対応した凹凸形状が形成されている。
【0017】
このモールドMは、タイヤ成型面10のサイドウォール部を成型する領域に、周方向に沿った環状の粗面成型部を備える。本実施形態では、図2に示すように、タイヤ成型面10の下側のサイドウォール部を成型する領域6に粗面成型部1が形成されている。この領域6は、トレッド型部M1の内周面11の一部とサイド型部M3の内周面13に亘り、タイヤのビードヒールからトレッド接地端に至る領域に相当する。粗面成型部1は、領域6の全域を占めてもよいが、一部であっても構わない。領域6には、ロゴ等の模様やサイドプロテクターが形成される場合があるが、それらにも任意に粗面成型部1を形成できる。
【0018】
図3に示すように、粗面成型部1には、5〜300μmの突出高さHで周方向CDに沿って螺旋状に延びる突起5が設けられている。突出高さHは、突起5の山頂から谷底までの高さであり、粗面成型部1における最大高さRzが5〜300μmとなる。最大高さRzは、JISB0601:2001に規定される最大高さ粗さRzに該当し、当該規定に準拠する。また、評価の方式及び手順並びに測定機の特性は、JISB0633:2001及びJISB0651:2001の規定に準拠する。
【0019】
上記の最大高さRzは、径方向DDに沿って五つの連続した基準長さごとに得られる測定データの平均値として求められる。基準長さと評価長さは、粗面成型部1の表面性状に応じて定められ、最大高さRzが10μm以下の場合は基準長さが0.8mm、評価長さが4mmであり、最大高さRzが10μmを超え且つ50μm以下の場合は基準長さが2.5mm、評価長さが12.5mmであり、最大高さRzが50μmを超える場合は基準長さが8mm、評価長さが40mmである。
【0020】
このモールドMでは、粗面成型部1が突起5によって相応に粗く形成されており、加硫成型時には、後述するように未加硫タイヤの粘着を抑えてゴムの流動性を確保できる。また、突起5が周方向CDに沿って螺旋状に延びるため、粗面成型部1とタイヤ外表面との間の空気が周方向に流れやすく、行き詰まりを抑えて空気の残留を低減できる。これにより、接着不良やライトネスといった加硫成型時のゴム流れ不足による不具合の発生を抑制することができる。
【0021】
しかも、突起5が周方向CDに沿って螺旋状に連続して延びる粗面成型部1に対しては、機械加工の適用が容易であり、突起の大きさや形成密度を精度良く制御することができる。その結果、使用するモールドが異なっても、光沢などのタイヤ外観を均一に確保して、外観品質を高めることができる。粗面成型部1は、安価な工作機械による機械加工が可能であり、加工の筋目が周方向CDに沿って螺旋状に延びるように工具を移動させることで加工できる。
【0022】
突起5の突出高さHが5μm未満である場合には、粗面成型部1の粗さが十分でないために未加硫タイヤが粘着しがちであり、流動抵抗が高くなってゴム流れ不足を引き起こしやすい。粗面成型部1の粗さを十分に確保するうえで、突出高さHは10μm以上であることがより好ましい。また、突出高さHが300μmを超える場合には、突起によってタイヤ外表面に深い微小凹部が形成され、その凹部の谷底に歪みが集中してクラックの起点になる恐れがある。
【0023】
突起5は、本実施形態のように断面三角形状に設けられていることが好ましい。これにより、加硫成型時における未加硫タイヤの接触圧力を高めて、接着不良やライトネスを有効に抑制できる。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、突起の断面形状が台形状や頂部が崩れた山状などであっても構わない。
【0024】
図4は、タイヤ中心軸を含む平面で切断した粗面成型部1の要部であり、図1の部分拡大図に相当する。図4(a)では、粗面成型部1が曲率を相違させた複数の曲面1a,1bを含んでおり、このうち曲率半径の小さい曲面1bでは曲率半径の大きい曲面1aよりも突起5のピッチ及び突出高さを大きくしている。これにより、加硫成型時において、
曲面1bにおけるタイヤ外表面の接触圧力を相対的に高くし、接着不良などを有効に抑制することができる。
【0025】
図4(b)は、サイドプロテクターが形成される場合であって、粗面成型部1が、曲率を相違させた複数の曲面1c〜1fを含んでいる。隣接する曲面1cと曲面1dのうち、曲率半径の小さい曲面1cでは曲率半径の大きい曲面1dよりも突起5のピッチ及び突出高さが大きく、上述のようにして接着不良などの抑制を図っている。隣接する曲面1dと曲面1e、隣接する曲面1eと曲面1fとの関係においても同様である。図4の例では、ピッチと突出高さの両方を異ならせているが、ピッチ及び突出高さの一方を均一にして他方を異ならせてもよい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態として、図5に示すように、突起5の延在方向(図5の左右方向)に沿って突起5の突出高さHが変化するものが挙げられる。この場合においても、突出高さHは5〜300μmの範囲内で変化する。本実施形態では、突起5の山頂が波状となるように突出高さHが周期的に変化しており、この周期は径方向に隣接する突起5間で異なっていても構わない。
【0027】
このような突起5では、タイヤを加硫成型する際に、未加硫タイヤTのサイドウォール部の外表面が、突出高さHの大きい箇所P1,P3に対して先に接触し、突出高さHの小さい箇所P2に対して遅れて接触するため、特に箇所P1,P3での接触圧力を高めて、接着不良の発生を有効に抑制できる。この場合、仮に接触圧力が相対的に低い箇所P2で剥離や陥没が生じたとしても、その両側に位置する箇所P1,P3では接触圧力が高いため、剥離や陥没が周方向に連続することを妨げて接着不良の発生を防止できる。
【0028】
突起5のピッチPは30〜500μmであることが好ましく、これによって粗面成型部1が適度に粗くなり、ゴムの流動抵抗を低減して未加硫対してタイヤの粘着を効果的に抑制できる。かかる作用効果を高めるうえで、ピッチPが突出高さHよりも大きいことが好ましい。図3のようにピッチPは径方向DDに並んだ突起5の周期に相当し、JISB0601:2001に規定される平均長さRSmは30〜500μmとなる。この平均長さRSmに関し、評価の方式及び手順並びに測定機の特性、基準長さと評価長さは、最大高さRzに関して説明したものに準じる。
【0029】
図6に示すように、タイヤ成型面10には、突起5の突出高さよりも大きい溝深さD1を有して粗面成型部1を縦断する径方向溝14が設けることができる。この場合、径方向溝14を通じて空気が流動できるため、突起5間における空気の残留を低減してライトネスの発生を良好に防止できる。径方向溝14の溝深さD1は、突起5の山頂から径方向溝14の溝底までの深さであり、突起5の突出高さHの5〜50倍が好ましい。径方向溝14は、周方向CDに間隔を設けて、例えば放射状に6〜10本が設けられる。
【0030】
図6の例では、タイヤ成型面10に、突起5の突出高さよりも大きい溝深さD2を有して径方向溝14に直交する周方向溝15を設けており、排気効率を更に高めるようにしている。周方向溝15の溝深さD2は、突起5の山頂から周方向溝15の溝底までの深さであり、突起5の突出高さHの0.5〜2倍が好ましい。周方向溝15は、周方向CDに沿って環状に設けられ、同心円状に複数本を配置しても構わない。径方向溝14と周方向溝15は、粗面成型部1を機械加工で仕上げた後、同じく機械加工により設けることができる。
【0031】
図4では、各突起5が、粗面成型部1を構成する曲面の法線方向に突出する例を示したが、図7に例示するように、突起5が一律にタイヤ軸方向AD(図1における上下方向)に突出するものでもよい。タイヤを加硫成型する際には、タイヤのサイドウォール部の外表面がタイヤ軸方向からタイヤ成型面10に接近するため、かかる構成によってタイヤ外表面の接触圧力が高められる。また、成型後のタイヤにおいては、サイドウォール部の外表面で光が均一に反射するため、濃淡を抑えて外観品質を向上できる。
【0032】
加硫成型時のゴム流れ不足は、タイヤの最大幅位置からリムラインに至る領域(図9の領域7に相当)で特に顕著であるため、タイヤ成型面10の当該領域に粗面成型部1を形成することが望ましい。また、後述するように、タイヤのゴム界面の露出部位では、異種ゴムによる流動性の違いに応じて接着不良やライトネスを生じやすいため、当該部位を含む領域に粗面成型部1を形成することが望ましい。
【0033】
次に、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法について説明するが、タイヤを加硫成型する工程以外は、従来のタイヤ製造工程と同様にして行うことができるため、加硫成型工程についてのみ説明する。この空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ成型面10のサイドウォール部を成型する領域に上記の如き粗面成型部1を備えたモールドMを用いて、タイヤを加硫成型する工程を有する。
【0034】
加硫成型工程では、図8に示すように加硫成型前の未加硫タイヤTをセットした後、モールドMを図1のように型締めしてタイヤ成型面10をタイヤ外表面に押し当て、タイヤTへの加熱及び加圧を施す。このとき、粗面成型部1では、上述のようにゴムの流動性を確保しながら空気の残留を低減できるため、成型後のタイヤTにおいて、接着不良などの不具合の発生が抑えられる。また、粗面成型部1における突起の大きさや形成密度を精度良く制御しうることにより、光沢などのタイヤ外観の均一性を確保できる。
【0035】
図9は、このような加硫成型工程を経て製造された空気入りタイヤTを示す。この空気入りタイヤTは、リムに着座するビード部からタイヤ径方向外側に延びたサイドウォール部3と、そのサイドウォール部3の外端に連なって踏面を構成するトレッド部4とを備え、サイドウォール部3の外表面に、タイヤ周方向に沿った環状の粗面部2が形成されている。このタイヤTは、粗面部2を備えること以外は、通常の空気入りタイヤと同等の構造であり、内部には不図示のカーカスやベルトが設けられる。
【0036】
粗面部2は、粗面成型部1の転写により成型される部分である。粗面部2には、粗面成型部1の突起5に対応して、5〜300μmの溝深さで周方向に沿って螺旋状に延びる凹溝が設けられ、その表面性状は最大高さRzが5〜300μmとなる。このタイヤTは、粗面部2において、接着不良やライトネスといった加硫成型時のゴム流れ不足による不具合が抑制され、タイヤ外観の均一性が確保されたものとなる。最大幅位置8からリムライン9に至る領域7ではゴム流れ不足が顕著であるため、少なくとも領域7の外表面に粗面部2を形成することが望ましい。
【0037】
タイヤTのサイドウォール部3の外表面には、図10に示すようにゴム界面の露出部位16,17が存在する。即ち、カーカス18の外周にはリムストリップゴム19、サイドウォールゴム20、トレッドゴム21といった各部位に適した複数種のゴムが配されており、符号16,17は、それらのゴム界面の露出部位となる。この部位16,17では、異種ゴムによる流動性の違いに応じて接着不良やライトネスを生じやすい傾向にあるため、加硫成型時に、この露出部位16,17を粗面成型部1に押し当てて、接着不良やライトネスの発生を的確に抑制することが好ましい。
【0038】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。前述の実施形態では、タイヤ成型面が三つの型部により構成された例を示したが、これに限られず、例えばトレッド部の中央で二分割された一対の型部で構成されるものでもよい。また、サイド型部のタイヤ径方向内側に、タイヤのビード部を嵌合するビードリングを別部材として具備しても構わない。
【符号の説明】
【0039】
1 粗面成型部
3 サイドウォール部
5 突起
10 タイヤ成型面
14 径方向溝
15 周方向溝
16 露出部位
17 露出部位
H 突起の突出高さ
M タイヤモールド
P 突起のピッチ
T タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ成型面のサイドウォール部を成型する領域に、周方向に沿った環状の粗面成型部を備え、前記粗面成型部には、5〜300μmの突出高さで周方向に沿って螺旋状に延びる突起が設けられているタイヤモールド。
【請求項2】
前記粗面成型部が曲率を相違させた複数の曲面を含んでおり、タイヤ中心軸を含む平面で切断した断面にて、曲率半径の小さい曲面では曲率半径の大きい曲面よりも前記突起のピッチ又は突出高さが大きい請求項1に記載のタイヤモールド。
【請求項3】
前記突起の延在方向に沿って前記突起の突出高さが変化する請求項1又は2に記載のタイヤモールド。
【請求項4】
前記突起のピッチが30〜500μmである請求項1〜3いずれか1項に記載のタイヤモールド。
【請求項5】
前記タイヤ成型面に、前記突起の突出高さよりも大きい溝深さを有して前記粗面成型部を縦断する径方向溝が設けられている請求項1〜4いずれか1項に記載のタイヤモールド。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載のタイヤモールドを用いてタイヤを加硫成型する工程を備える空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記タイヤを加硫成型する工程にて、タイヤのサイドウォール部におけるゴム界面の露出部位を前記粗面成型部に押し当てる請求項6に記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−240558(P2011−240558A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113866(P2010−113866)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】