説明

タイヤ情報検出装置

【課題】 センサの出力特性がばらついていても、正確なタイヤ情報、即ち、タイヤ空気圧やタイヤ温度等を検出出来るようにする
【解決手段】 車輌1本体に設けられ、質問信号を送信する質問器20と、車輌1の各タイヤ2に装着され、質問信号に対応してタイヤ空気圧等のタイヤ情報を質問器20に返信する応答器11とを備え、応答器11にはタイヤ情報を検出するための1つ以上のセンサ13a、13bと、センサ13a、13bの特性を特定するためのセンサ特定手段14とを設け、質問器20には、タイヤ情報を処理する制御手段45と、センサ特定手段14によって特定されたセンサの特性を補正する補正テーブルを設け、制御手段45は補正テーブルによってタイヤ情報を補正してタイヤ情報に関わるデータを出力した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの空気圧や温度等のタイヤ情報を検出するためのタイヤ情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタイヤ情報検出装置を図7にしたがって説明する。図7において、送信装置10は車輌の各タイヤに装着され、タイヤ空気圧を検出してこれをタイヤ空気圧信号として送信する。受信装置31は前輪A1、A2の中央部及び後輪B1、B2の中央部に配置され、受信アンテナを内蔵し送信装置10からの信号を受信する。マイコンなどの制御装置4は受信装置31から出力されるタイヤ空気圧値が正常範囲であるかを判定する。液晶などの表示装置5は制御装置4で判定した内容を表示する。
【0003】
送信装置10にはタイヤ空気圧を検出するためのセンサが設けられ、検出された空気圧値はタイヤ空気圧信号に変換され、この空気圧信号によって変調された高周波信号が送信装置10から送信する。受信装置31は高周波信号を復調してタイヤ空気圧信号として出力し、これを解読すると共に空気圧値として表示装置5に表示する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−002020(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、各センサはタイヤの空気圧に対する出力特性にバラツキがあると、正確な空気圧値を表示することが出来ない。また、均一な出力特性を有するセンサを4個揃えることはコスト高となる。
【0006】
本発明は、センサの出力特性がばらついていても、正確なタイヤ情報、即ち、タイヤ空気圧やタイヤ温度等を検出出来るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段として、車輌本体に設けられ、質問信号を送信する質問器と、前記車輌の各タイヤに装着され、前記質問信号に対応してタイヤ空気圧等のタイヤ情報を前記質問器に返信する応答器とを備え、前記応答器には前記タイヤ情報を検出するための1つ以上のセンサと、前記センサの特性を特定するためのセンサ特定手段とを設け、前記質問器には、前記タイヤ情報を処理する制御手段と、前記センサ特定手段によって特定された前記センサの特性を補正する補正テーブルを設け、前記制御手段は前記補正テーブルによって前記タイヤ情報を補正して前記タイヤ情報に関わるデータを出力した。
【0008】
また、前記センサは少なくとも、自身の有する第1の自己共振周波数が前記タイヤの空気圧変化に対応して変化する第1の共振子を備えた。
【0009】
また、前記センサは少なくとも、自身の有する第2の自己共振周波数が前記タイヤの温度変化に対応して変化する第2の共振子を備えた。
【0010】
また、前記特性識別手段を自身の有する第3の自己共振周波数が前記第1及び第2の自己共振周波数とは異なる第3の共振子で構成した。
【0011】
また、前記質問器は、前記第1乃至第3の自己共振周波数の近傍の信号によってそれぞれ変調された前記質問信号を順次前記応答器に送信して前記第1乃至第3の共振子を励振し、前記応答器は、前記第1乃至第3の自己共振周波数の信号によってそれぞれ変調された前記応答信号を順次前記質問器に送信した。
【0012】
また、前記質問信号は、変調された前半の期間と無変調の後半の期間とからなり、前記応答器は、前記後半の期間において前記搬送波をそれぞれ前記第1乃至第3の自己共振周波数の信号によって変調して放射した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、応答器にはタイヤ情報を検出するための1つ以上のセンサと、センサの特性を特定するためのセンサ特定手段とを設け、質問器には、タイヤ情報を処理する制御手段と、センサ特定手段によって特定されたセンサの特性を補正する補正テーブルを設け、制御手段は補正テーブルによってタイヤ情報を補正してタイヤ情報に関わるデータを出力したので、各センサの特性がばらついていても正確なタイヤ空気圧やタイヤ温度を正確に表示することが出来る。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、センサは少なくとも、自身の有する第1の自己共振周波数がタイヤの空気圧変化に対応して変化する第1の共振子を備えたので、第1の自己共振周波数の変化によって正確なタイヤ空気圧を検出できる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、センサは少なくとも、自身の有する第2の自己共振周波数がタイヤの温度変化に対応して変化する第2の共振子を備えたので、第2の自己共振周波数の変化によって正確なタイヤ温度を検出できる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、特性識別手段を自身の有する第3の自己共振周波数が第1及び第2の自己共振周波数とは異なる第3の共振子で構成したので、第1及び第2の自己共振周波数の影響を受けずに第1及び第2のセンサの特性を特定できる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明によれば、質問器は、第1乃至第3の自己共振周波数の近傍の信号によってそれぞれ変調された質問信号を順次応答器に送信して第1乃至第3の共振子を励振し、応答器は、第1乃至第3の自己共振周波数の信号によってそれぞれ変調された応答信号を順次質問器に送信したので、応答器には電源を設けなくても応答信号を質問器に返信できる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明によれば、質問信号は、変調された前半の期間と無変調の後半の期間とからなり、応答器は、後半の期間において搬送波をそれぞれ第1乃至第3の自己共振周波数の信号によって変調して放射したので正確な応答信号を返信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面に従って本発明のタイヤ情報検出装置を説明する。図1は車輌を含めた全体の構成を示し、車輌1に装着された各タイヤ2内には同一構成の応答器11が設けられる。また、車輌1の本体には質問器20が設置される。質問器20には各タイヤ2に対応してその近傍に配置されたアンテナAntが接続される。
【0020】
図2は応答器11の回路構成を示し、送受信用のアンテナ12を有し、このアンテナ12には復調兼変調用のダイオード15と、1つ以上のセンサ13(13a、13b、)と、センサ13の特性を特定するためのセンサ特定手段14とが結合される。
【0021】
センサ13は、自己共振周波数を有し、タイヤ2内の空気圧や温度の変化に対応して自己共振周波数が変化する、例えば水晶共振子等の共振子からなる。特性識別手段14も、同様に水晶共振子等の共振子からなる。そして、例えば、第1のセンサ13aは第1の自己共振周波数F1を有し、タイヤ空気圧に対応してその第1の自己共振周波数F1が変化することによってタイヤ空気圧を検出する。また、第2のセンサ13bは第2の自己共振周波数F2を有し、タイヤの温度に対応してその第2の自己共振周波数F2が変化することによってタイヤの温度を検出する。
【0022】
タイヤ空気圧に対する第1の自己共振周波数F1の変化は、例えば図3に示すように個々のセンサによってA〜Cのようにバラツキ、タイヤ温度に対する第2の自己共振周波数F2の変化も、例えば図4の示すように個々のセンサによってD〜Fのようにばらつく。
【0023】
また、特性識別手段14は、第1及び第2の自己共振周波数(F1、F2)とは異なる第3の自己共振周波数F3を有し、第3の自己共振周波数F3によって第1のセンサの圧力特性(図3のA又はCの何れの特性であるか)及び第2のセンサの温度特性(図4のD〜Fの何れの特性であるか)を特定するためのものである。従って、第3の自己共振周波数F3と第1及び第2の自己共振周波数F1、F2との間には特別の数値的関係を持たせる必要はない。各自己共振周波数(F1〜F3)はおよそ10MHzである。
【0024】
質問器20の回路構成を図5に示す。アンテナAntに接続される送信部21は、2.4GHzの搬送波(Fc)を発生する搬送波発振器22と、変調器23と、変調用の発振信号を出力する発振器24(第1の発振器24a乃至第3の発振器24c)と、送信アンプ25とを有する。第1の発振器24aは第1のセンサ13aの第1の自己共振周波数F1の近傍の周波数(f1)で発振し、第2の発振器24bは第2のセンサ13bの第2の自己共振周波数F2の近傍の周波数(f2)で発振し、発振器24cはセンサ特定手段14の第3の自己共振周波数F3の近傍の周波数(f3)で発振する。変調器23には第1の発振器24a乃至第3の発振器24cの何れかの発振信号が切り替えられて入力される。
【0025】
そして、搬送波が何れかの発振器24からの発振信号によって振幅変調され、変調された2.4GHzの高周波信号は送信アンプ25によって増幅され、アンテナAntから放射される。
【0026】
アンテナAntに接続される受信部41は、受信アンプ42、ミキサ43、局部発振器44、CPU等からなる制御手段45、複数のメモリ46(第1のメモリ46a乃至第3のメモリ46c)、表示手段47等を有する。局部発振器44は搬送波発振器22と同じ周波数(2.4GHz)の局部発振信号を出力してミキサに43に供給する。また、第1のメモリ46aには第1のセンサ13aの複数の特性(図3の特性A乃至C)をそれぞれ補正するための複数の補正テーブルが格納され、第2のメモリ46bには第2のセンサ13bの複数の特性(図4の特性D乃至E)をそれぞれ補正するための複数の補正テーブルが格納されている。これらの補正テーブルは第1のセンサ13a及び第2のセンサ13bの自己共振周波数(F1、F2)から正しいタイヤ圧力及びタイヤ温度を演算によって求めるために使用される。
【0027】
また、第3のメモリ46cにはセンサ特定手段14の第3の自己共振周波数F3と、この周波数F4によって特定された第1及び第2のセンサ13あ、13bの特性の種別との対応関係を示す対応テーブルが格納されている。
【0028】
以上の構成において、まず、質問器20は特定のタイヤ2の応答器11に対して図6のT1、T2、T3で示す期間で質問信号を送信する。期間T1〜T3の前半T1a、T2b、T3cは送信期間、後半のT1x、T2y、T3zは受信期間である。送信期間のT1a、T2b、T3cではそれぞれ第1乃至第3の発振器24a、24b、24cからの発振信号によって振幅変調された高周波信号(2.4GHz)が送信され、後半の期間T1x、T2y、T3zでは無変調の搬送波のみが送信される。この送信工程は他のタイヤの応答器11に対しても同様に繰り返される。
【0029】
すると、応答器11においては、振幅変調された高周波信号はダイオード15によって復調され、各発振信号と同じ周波数の信号が生成される。そして、第1のセンサ13aは、その自己共振周波数(F1)が期間T1aに重畳されている第1の発振器24aの発振信号の周波数に近いのでこの発振信号によって励振され、同様に、第2のセンサ13bは、期間T2bに重畳されている第2の発振器24bの発振信号によって励振され、特性識別手段14は、期間T3cに重畳されている第3の発振器24cの発振信号によって励振される。
【0030】
そして、励振された第1のセンサ13aは第1の自己共振周波数(F1)の信号を発生し、これによって無変調の期間T1xにおいて搬送波がダイオード15によって振幅変調されてアンテナ12から放射される。同様に、第2のセンサ13bは第2の自己共振周波数(F2)の信号を発生し、これによって無変調の期間T2yにおいて搬送波がダイオード15によって振幅変調されてアンテナ12から放射される。また、センサ特定手段14は第3の自己共振周波数F3の信号を発生し、これによって無変調の期間T3zにおいて搬送波がダイオード15によって振幅変調されてアンテナ12から放射される。
【0031】
質問器20においては、第1乃至第3の自己共振周波数(F1〜F3)の信号によって変調された高周波信号はミキサ43に入力され、ここで高周波信号が復調されて第1乃至第3の自己共振周波数(F1〜F3)の信号が抽出されて制御手段45に入力される。制御手段45は、先ず、入力された第3の自己共振周波数F3の信号に基づいて、第3のメモリ46cに格納されれている対応テーブルから対応する第1及び第2のセンサ13a、13bに対応する補正テーブルを特定する。そして、入力された第1のセンサ13aの自己共振周波数F1と第2のセンサ13bの第2の自己共振周波数F2とをそれぞれ第1のメモリ46aに格納されている補正テーブル及び第2のメモリ46bに格納されている補正テーブルによって補正し、これをタイヤ空気圧とタイヤ温度を示すデータに変換して表示装置47に出力する。
【0032】
以上のように、第1のセンサ13aと第2のセンサ13bの特性に応じて補正テーブルを設けることで、各センサの特性がばらついていても正確なタイヤ空気圧やタイヤ温度を正確に表示することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のタイヤ情報検出装置の構成図である。
【図2】本発明のタイヤ情報検出装置における応答器の回路図である。
【図3】本発明のタイヤ情報検出装置における質問器の回路図である。
【図4】本発明のタイヤ情報検出装置に使用されるセンサの特性図である。
【図5】本発明のタイヤ情報検出装置に使用されるセンサの特性図である
【図6】本発明のタイヤ情報検出装置における質問信号のタイムチャートである。
【図7】従来のタイヤ情報検出装置の構成図である。
【符号の説明】
【0034】
1:車輌
2:タイヤ
11:応答器
12:アンテナ
13a:第1のセンサ
13b:第2のセンサ
14:センサ特定手段
15:ダイオード
20:質問器
21:送信部
22:搬送波発振器
23:変調器
24a:第1の発振器
24b:第2の発振器
24c:第3の発振器
25:送信アンプ
41:受信部
42:受信アンプ
43:ミキサ
44:局部発振器
45:制御手段
46a:第1のメモリ
46b:第2のメモリ
46c:第3のメモリ
47:表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌本体に設けられ、質問信号を送信する質問器と、前記車輌の各タイヤに装着され、前記質問信号に対応してタイヤ空気圧等のタイヤ情報を前記質問器に返信する応答器とを備え、前記応答器には前記タイヤ情報を検出するための1つ以上のセンサと、前記センサの特性を特定するためのセンサ特定手段とを設け、前記質問器には、前記タイヤ情報を処理する制御手段と、前記センサ特定手段によって特定された前記センサの特性を補正する補正テーブルを設け、前記制御手段は前記補正テーブルによって前記タイヤ情報を補正して前記タイヤ情報に関わるデータを出力したことを特徴とするタイヤ情報検出装置。
【請求項2】
前記センサは少なくとも、自身の有する第1の自己共振周波数が前記タイヤの空気圧変化に対応して変化する第1の共振子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項3】
前記センサは少なくとも、自身の有する第2の自己共振周波数が前記タイヤの温度変化に対応して変化する第2の共振子を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項4】
前記特性識別手段を自身の有する第3の自己共振周波数が前記第1及び第2の自己共振周波数とは異なる第3の共振子で構成したことを特徴とする請求項3に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項5】
前記質問器は、前記第1乃至第3の自己共振周波数の近傍の信号によって搬送波がそれぞれ変調された前記質問信号を順次前記応答器に送信して前記第1乃至第3の共振子を励振し、前記応答器は、前記第1乃至第3の自己共振周波数の信号によって前記搬送波がそれぞれ変調された前記応答信号を順次前記質問器に送信したことを特徴とする請求項5に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項6】
前記質問信号は、変調された前半の期間と無変調の後半の期間とからなり、前記応答器は、前記後半の期間において前記搬送波をそれぞれ前記第1乃至第3の自己共振周波数の信号によって変調して放射したことを特徴とする請求項5に記載のタイヤ情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−8086(P2006−8086A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204638(P2004−204638)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】