タイヤ補強材としてのゴムシートの製造方法および同製造方法により製造されたゴムシートを用いたタイヤ
【課題】内部に埋め込まれているコードに切断箇所のないタイヤ補強用ゴムシートを一連の連続工程により製造する。
【解決手段】ねじり加工工程100と、このねじり加工工程で撚り合わされたコードを一平面上で所定の幅でジグザグ状あるいはコ字状に折り曲げて平面状のコード体を形成する型付け工程200と、このコード体を上下のシート状ゴム体で挟み込んでゴムシートを構成するゴムシート製造工程300とを連続配置することにより、コードに切断箇所のないタイヤ補強用ゴムシートを一連の連続工程により製造する。
【解決手段】ねじり加工工程100と、このねじり加工工程で撚り合わされたコードを一平面上で所定の幅でジグザグ状あるいはコ字状に折り曲げて平面状のコード体を形成する型付け工程200と、このコード体を上下のシート状ゴム体で挟み込んでゴムシートを構成するゴムシート製造工程300とを連続配置することにより、コードに切断箇所のないタイヤ補強用ゴムシートを一連の連続工程により製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ補強材として使用するスチールコードを挟み込んだゴムシートの製造方法および同製造方法により製造されたゴムシートを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラジアルタイヤは、長尺(数百メートル乃至数万メートル)のスチールコードを平行状に数百本配列し、これを同時に繰り出しながら使用するタイヤの仕様に基づく間隔に並べ、平面に引きそろえた状態で両面より薄いシート状ゴム体をサンドイッチ状に貼り合わせるカレンダー加工により、長尺(数百メートルから数万メートル)のカレンダーシートを構成し、このようにして構成されたカレンダーシートを、タイヤに貼り合わせる幅とバイアス角で裁断して短冊体を形成し、それらを貼り合わせてタイヤ原型をつくり、これを金型に入れて高温、高圧で加硫して製造される。
【0003】
従来の方式では、使用されるスチールコードの1度の使用量、すなわちスプールの巻量が大きい方がカレンダー加工の稼働時間が長く、効率が良いとされてきた。
また、スチールコードの加工においても、最終の撚り合わせの工程は製品長さが長い方が加工効率が良く、長尺製品が生産できる工夫をしてきた。すなわち、材料のスプール容量を大きくし、製品スプールを大きくする方向で必然的に撚線機の回転部分を大きくしてきた。
【0004】
撚線機として、現在使用せれているのは、大別して筒型回転で1回転で1度撚りのチューブラタイプのものと、1回転で2度撚りのバンチャタイプのものとがある。
いずれの撚線機も有効エネルギー消費率が10%以下であり極めて浪費が大きい。これは重量物を高速回転させる為の機械損失と高速回転体の空気抵抗による損失の為であると考えられる。
【0005】
近年、自動車が成熟するにともなって自動車用タイヤも成熟し、それに伴ってタイヤに対する要求品質も多様化し、機能的に多様化した要求を満たすためタイヤの種類も増加してきている。
従来のような規格大量生産方式でこれらの要求に対応するには、コストなどの面で無理があり、省スペースで一気通貫的に加工できる新生産方式も併用する必要が生じてきた。
【0006】
タイヤの生産方式では、上記目的に沿い新生産方式が試験的に稼働する段階に来ているが、それに供するスチールコードの生産形態の提供が要望されている。
さらに、今後環境改善時代に先に述べたすこぶるエネルギー効率の悪い方法を継続することなく、資源の最小化、エネルギーの最小化を狙った新しいスチールコードの加工技術の開拓も要望されている。
【0007】
さらに、従来の製造方法により製造されたカレンダーシートは、メッキを施した素線(鋼線)からなるスチールコードで構成されているが、カレンダーシートを所定の長さに切断すると、その切断端部では素線の鉄地が露出してしまう。この切断端部はメッキがないのでゴムとの接着が成されないという問題が発生する。
【0008】
タイヤには自動車の走行中、自動車の重量による歪みが負荷され、さらにコーナリング時にはタイヤのショルダー部やプライ層のターンアップエンド部に最大の負荷が作用するが、タイヤはこの部分に上記切断部分が位置する構造になっている。
しかも、近年タイヤの偏平化が進みタイヤ幅が広くなってきているが、タイヤ幅が広くなる程ショルダ部の歪みが大きくなり、上記未接着部分の存在がさらに問題視されるようになってきた。
【0009】
また、スチールコードは走行時のタイヤの変形を抑える補強材としてタイヤに埋め込まれるものであるが、スチールコードが切断されているため、補強材保有の剛性の効果が充分発揮されず、タイヤのコーナリングフォースを低下させるばかりか、変形によるトレッドの摩耗でタイヤの寿命を低下させる原因にもなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の要望乃至課題に対処したようとするもので、スチールコードの新生産方式の開発により、スチールコードの撚り線加工に無駄なエネルギーを必要とすることがなく、また、スチールコードが切断されることがなく、さらにタイヤの生産方式を少ロット化して無駄なスペース、無駄な輸送を排除することが可能なタイヤ構成用ゴムシートおよびそのゴムシートを用いて製造したタイヤを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、タイヤ補強材としてのゴムシートの製造方法において、複数本の素線又は複数本の素線とストランドコードあるいは複数本のストランドコードを引き出し、これを一対のチャックと同一対のチャックのほぼ中央部に配設された第3のチャックとで把持し、上記第3のチャックを回転することにより上記複数本の素線又は複数本の素線とストランドあるいは複数本のストランドコードにねじり加工を施してスチールコードを形成してから、ねじりの残留応力を取り去り、次に上記撚り線を上記一対のチャック間外に引き出し、これを繰り返すことで撚り方向がS方向とZ方向が交互に存在するスチールコードを作成し、このようにして作成されたスチールコードのチャックで把持していた箇所(無撚り部)を、一平面上で、たとえばジグザグ状やコ字状に折り曲げて平面状のコード体を形成し、このコード体を上下からシート状ゴム体で挟み込むゴムシート製造工程を経てタイヤ構成用ゴムシートを製造することを特徴とする。
【0012】
また、上記のスチールコードの製造方法において、上記ねじり加工による長さの減少分が、上記一対のチャックを構成するチャックのいずれか一方のチャック、あるいは両方のチャックが同一対のチャック間の距離が小さくなる方向に移動して、補填することを特徴とする。
【0013】
さらに、上記のスチールコードの製造方法において、上記ゴムシート製造工程を上記コード体の作成工程に連続して行うことを特徴とする。
【0014】
さらにまた、上記の製造方法により製造されたゴムシートを用いてタイヤを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤ構成用ゴムシートは、1本のコード体を一平面上で所定の幅で、たとえばジグザグ状あるいはコ字状に折り曲げて平面状のコード体を形成し、これを上下のシート状ゴム体で挟み込んだ構成であるので、ゴムシート内でスチールコードは連続していて切断されている箇所がない。よって、このゴムシートを貼り合わせてタイヤ原型をつくり、これを金型に入れて高温、高圧で加硫して製造されたタイヤは、ショルダー部やプライのターンアップ部で鉄地が露出することがなく、これらの箇所でのゴム未接着が防止できる。
【0016】
また、タイヤの内部においてコードは連続しているから補強材保有の剛性の効果を充分発揮することができ、変形に対する耐力が大きくなって、タイヤのコーナリングフォースの低下が防止できるととともに、トレッドの摩耗が防止できてタイヤの寿命を向上させることができる。
【0017】
本発明の撚り線の製造方法は、従来の大量生産型の場合と異なり、簡単な撚り線加工機による撚り線加工で、無撚り部を境界にしてS撚り部とZ撚り部とが交互に繰り返す形状のスチールコードを製造するものであるから、本発明の製造方法によれば、必要な場所で必要量のスチールコードを製造することが可能となるばかりか、簡単な撚り線加工機による撚り線加工であるので、設備費用の低減と撚り線加工のためのエネルギー消費量を極端に低減することができる。
【0018】
また、一対のチャックの間隔を調整することにより、さらに第3のチャックの回転方向や回転数を調節することにより、タイヤの仕様に対応したスチールコードの製造に簡単に対処することができるので、多品種、少量生産化、すなわち少ロット生産方式を低コストで対処することが可能となる。
【0019】
さらに、上記のゴムシート製造工程を上記のコード体の作成工程に連続して行うようにしたので、タイヤ構成材としてのゴムシートの製造装置の少スペース化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の製造方法をその実施に適した装置の1例により説明する。
図1は本発明のゴムシートの製造方法を概念的に示す系統図であり、図1において符号100はねじり加工工程を、符号200は型付け工程を、符号300はゴムシート製造工程をそれぞれ示しており、ねじり加工工程100と型付け工程200とでコード体成形工程が形成されている。
【0021】
図2はねじり加工工程100の1例を示した概略図であり、図2において、符号1は素線を示しており、複数本の素線1が張力を負荷されながらリール8から引き出され、分離板2で各々の素線1は並びを決められ相互の素線の並びが入れ代わらないようにして、送り出しを兼ねた引き出しローラ4によって、一定長さ引き出されて停止する。ここで、一定長さとは、後述のチャック3aとチャック3bとの間隔に相当する長さのことである。
上記複数の素線1は、複数本の素線とストランドコードの組み合わせでもよいし、複数本のストランドコードでもよい。
【0022】
一定長さ引き出されて停止した複数本の素線1(素線束1a)は、一対のチャック3a、3bと、同一対のチャック3a、3bのほぼ中央部に配設された第3のチャック3cとで複数本の素線1が自由に回転できない強さで把持される。
チャック3aとチャック3cとの間隔(および、チャック3bとチャック3cとの間隔)は、ねじり加工終了後におけるスチールコードの長さの減り(撚り減り)を考慮した長さで当該スチールコードが使用されるタイヤに埋設された補強層のバイアス角を考慮した一端部から他端部までのスチールコードの長さと同じ長さである。
【0023】
図2の例では、下流側のチャック3bはねじり加工工程における撚り減りを補填するために、図2中左右方向に移動可能に基台7に取り付けられている。符号6は把持解除時の復帰用バネを示す。なお、上流側のチャック3aを移動可能としてもよく、さらに両チャック3a、3bを移動可能としてもよいが、いずれの場合でも移動可能なチャックには把持解除時の復帰用バネ6が設けられている。
【0024】
一対のチャック3a、3bと第3のチャック3cとで素線束1aを3ヵ所で自由に回転できない強さで把持した後、チャック3cを回転させる。チャック3cを回転させることにより素線束1aはねじられ、3ヵ所のチャック間の素線束1aはS方向とZ方向とにねじられたスチールコードとなる。つまり第3のチャック3cを挟んで左側は「S撚り」に、右側は「Z撚り」にねじられたスチールコードが得られる。第3のチャック3cの回転方向を反対に設定するとき、左右のねじりをこれと反対にすることが可能なことはいうまでもない。
【0025】
スチールコードに必要な仕様に基づいた回転をした後、一旦第3のチャック3cの回転を停止し、次いでねじりの残留応力を取り去るために第3のチャック3cを逆回転する。
次にチャック3a、3cと第3のチャック3cの把持を解除し、引き出しローラ4の駆動でスチールコード5を上記一対のチャック3a、3b間外に引き出す。これによってチャック3a、3b間には連続して次の素線束1aが送り込まれる。チャック3a、3bと第3のチャック3cの把持を解除すると、移動していたチャック3bは復帰用バネ6の復元力により元の位置にもどる。
【0026】
上記スチールコードの製造方法において、ねじりの残留応力を取り去る手段は、上記第3のチャック3cをねじり加工後に開放できる機構にして、スチールコードの戻り力を利用して残留ねじれを取り去るようにしてもよい。
【0027】
引き出されたスチールコード5は第3のチャック3cで把持されていた箇所を境界にしてS撚り部とZ撚り部とが交互に存在する形状となっている。
この工程を繰り返すことにより、所定長さのS撚りスチールコードとZ撚りスチールコードとが交互に形成されたスチールコードを製造することができる。
このようにして製造されたスチールコード5は、このねじり加工工程100に連続する型付け工程200に順次送られる。
【0028】
図3は型付け工程200に好適な折り曲げ装置Aの1例を示す平面図、図4は図3のZ部の側面図である。
【0029】
次に型付け工程200について図3、図4にて説明する。
ねじり加工工程100で撚られたスチールコード5は、一対の送り出しローラ4(図2のものと同じ)で引き出され(図3参照)、ダンサーローラ11で張力を一定に保ちながら折り曲げ装置12、13に送り込まれ、折り曲げ装置12、13に設けた、図5に詳細構造を示す型付けローラ20に設けた凹部と型付けローラ30に設けた凸部とで挟み込まれて折り曲げ加工される。折り曲げる箇所は、上記ねじり加工工程においてチャックで把持されていた無撚り箇所である。無撚り部で折り曲げられるように折り曲げ装置12、13の間隔や送り速度を調整する。
図3、図4中の符号15は、グリップ部で折り曲げ加工を行う際コードにねじれが入るのを防止するためのものである。符号14は送り出しローラを示す。
【0030】
折り曲げ装置12と折り曲げ装置13の型付けローラ20と型付けローラ30は、凹部24と凸部34とが互いに対向する側に設けられているので、スチールコード5の折り曲げられる方向は逆になり、全体として一平面上で山・谷の連続した、いわゆるジグザグ形状に形成された平面状のコード体16(図4参照)に形成される。
【0031】
型付けローラ20は、図5(a)に平面断面図、(b)に側面断面図を示すように、ローラ軸21の表面上に溝22が形成され、この溝22に図6(a)に示すような凹部24を圧入した凹部型付け用金具23がはめ込まれ、ネジ25で固定された構造である。
型付けローラ30は、図5(c)に平面断面図、(d)に側面断面図を示すように、ローラ軸31の表面上に溝32が形成され、この溝32に図6(b)に示すような凸部34を圧入した凸部型付け用金具33が装着された構造である。
【0032】
凸部型付け用金具33の凸部34は上記凹部型付け金具23の凹部24に、ロール20、30の回転によって嵌まり込んでコードに型付けを行うので、回転に沿って凸部がスムーズに嵌まり込むように凸部型付け用金具33はローラ軸31にぶらぶら状態になるようにネジ35で取り付けられている。
【0033】
折り曲げ装置13もこれと同じ構成であるが、図4に示すように型付けローラ20とローラ30とが互いに対向する側に設けられている。
【0034】
なお、上記説明では型付けローラ20が凹部側で、型付けローラ30が凸部側であるが、逆であっても同じ効果が得られるのはいうまでもない。
そして、一対の型付けローラ20、30は連動して同速度で回転するように歯車26、36で連結されている。
【0035】
型付けローラ20に装着する凹部型付け用金具23に設けた凹部24は、図6(a)に示すように、型付け部23aと案内部23bとからなる。型付け部23aの幅xは、凸部型付け用金具33の凸部34の幅をyとしコードの径をφとしたとき、x=y+2φに設定され、案内部23bの幅は型付け部23aの幅xよりも広く、かつテーパ状に広がり開口部(図6(a)における底面)で最大となるような形状に形成されている。
【0036】
凹部型付け用金具23の凹部24の深さは、凸部型付け用金具33の凸部34の高さとほぼ同じ程度であり、また型付け部23aと案内部23bの深さも同程度である。凹部24の底の形状は滑らかなR型が望ましい。
【0037】
図3および図4に示すように、送り出しローラ4(図3参照)で引き出されダンサーローラ11で張力を一定に保ちながら折り曲げ装置12、13に送り込まれ、折り曲げ装置12と折り曲げ装置13の型付けローラ20の凹部と型付けローラ30の凸部とに挟み込まれることによりスチールコード5は型付けされる。
折り曲げ装置12と折り曲げ装置13の型付けローラ20と型付けローラ30は、凹部24と凸部34(図5参照)とが互いに対向する側に設けられているので、折り曲げられる方向は逆になり、全体として一平面上で山・谷の連続した、いわゆるジグザグ形状に形成された平面状のコード体16(図4参照)に形成される。
【0038】
型付けローラで折り曲げ加工を行う周期は、当該ゴムシートが使用されるタイヤの仕様による。タイヤ仕様の変更に伴うコードの一端部から他端部までの長さの変更は、折り曲げ装置12と折り曲げ装置13の距離が変えられる構造にしたり、コードの送りスピードを変えることで変更することができる。
【0039】
図7は、型付けローラ30の凸部34の断面形状例を示しており、(a)に示す凸部34により折り曲げ加工を施すと、コード16は図8(a)に示す鋭角形状に、(b)に示す凸部34により折り曲げ加工を施すとコード16は図8(b)に示す段付き折り曲げ形状に折り曲げられる。図7(c)に示すのような対称形状突起の場合には、コードの折り曲がり部はゆるやかな形状となる。
【0040】
図11は、上記の折り曲げ装置Aにより折り曲げ加工されたコード体からなるゴムシートの1例を示すもので、図11においてコード体は点線で示してある。(a)に示すゴムシートC1は折り曲げ部が鋭角なジグザグ状のコード体a1を一対のゴム状シートC0で挟み込んだ構成であり、(b)に示すゴムシートC2は折り曲げ部がコ字状のコード体a2を一対のゴム状シートC0で挟み込んだ構成である。
図11に示すゴムシートC1、C2は、挟み込まれるコードの間隔やコードのバイアス角度、あるいはコード体の幅はタイヤの仕様にあわせて製作され、これらを貼り合わせてタイヤ原型をつくり、これを金型に入れて高温、高圧で加硫してタイヤが製造される。
【0041】
上記の折り曲げ装置Aで型付け加工された(たとえばジグザグ状に折り曲げられた)コード体16は、次の工程のゴムシート製造工程におくられる。
図9および図10はゴムシート製造工程に好適な装置を示している。この装置(図9および図10に示す装置)によりコード体16を一対のシート状ゴム体72a、72bで挟んでゴムシートCが形成される。
【0042】
図3、図4に示すコード折り曲げ装置Aでジグザグ状に折り曲げられたコード体16が、図9、図10に示すゴムシート製造装置の上流側部分B(図9、図10における左側)に設けた固定水平盤51上に送り出し装置54(コード折り曲げ装置Aと連結した場合、図3、4における送り出しローラ14と同じ)により送られてくる。
【0043】
固定水平盤51の両側に近設して一組みのコンベアベルト52、52が設けられており、このコンベアベルト52、52には、送り出し装置54によって固定水平盤51上に送り出されてきたコード体aが重なってしまうのを防止するため、ピン53が立設されている。そして、このピン53がコード体16の折り曲げ部Pを引っ掛け、コード体aが重なってしまうのを防止しながら順次下流側(図矢印Y方向)にコード体16を移送する。
【0044】
下流よりのところに、コード引き揃え部60が設けられていて、このコード引き揃え部60に送られてきたコード体16は、コード引き揃え部60に設けられた一組のコンベアベルト62a、62b上に立設されたコマ63にコード体16の折り曲げり部Pが引っ掛けられ下流側に移動される。
【0045】
左右のコンベアベルト62a、62bは速度差を有する構成となっているので、コード体の移動方向に対してコードの角度が徐々に変化し、コードの埋め込み用の角度が形成される。このようにして、埋め込み角を得た状態でコードに張力を負荷することで、ゴム埋め込み前のコードの引き揃えが行われる。
【0046】
所望の埋め込み角度をもって引き揃えられたコード体16はゴミシート製造装置70に移動する。ゴムシート製造装置70において、コード体16に圧延ローラ71a、71bで上下方向から1対のシート状ゴム体72a、72bによるシーチングが施され、さらにコードの並びの乱れを防止するため圧延ローラ71a、71bの下流側に設けたコード固定ローラ73a、73bでゴムシートC0を再度押さえつけることによって、さらに安定したゴムシートCが得られる。
【0047】
上記ゴムシートCは両側にコード体16の折り返し部Pが露出しているが、シート状ゴム体72a、72bのうち片方の幅をコード体16の幅よりも広くしておくと、余剰分がゴムシートC0の両端を巻き込むこととなり、ゴムシートC全体をシート状ゴム体で被覆された構造のゴムシートを得ることができる。
【0048】
本発明のゴムシートはタイヤの仕様によって決められるもので、所望のコード体幅はコード折り曲げ装置Aにおける折り曲げ装置12、13の距離を変えるか、コードの送りスピードを変えることで得ることができる。また、所望のコード体間隔は装置Bにおけるコンベアベルト62a、62bのスピードを調整することで得ることができ、また所望のコードバイアス角はコンベアベルト62a、62bの速度差を調整することで得られる。
【0049】
上述の通り、本発明によれば、スチールコードの撚り線加工は、エネルギーのロスを極少化することができる。
また、撚り線加工およびカレンダー加工のための初期設備費用を極少化でき、必要な場所で必要量製造できるので、従来の方法に較べて全てのロスを極少化できる。
さらに、この製造方法で製造されたカレンダーシートは、カレンダーシート内のスチールコードには切断部がなく、したがって接着しない部分がなく、また連続体であることから、耐変形性に優れており、これを使用したタイヤ長寿命でさらに安全なタイヤへの期待ができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のゴムシートの製造方法を概念的に示す系統図である。
【図2】ねじり加工工程概念的に示す系統図である。
【図3】コード折り曲げ装置の概略平面図である。
【図4】図3のZ部の概略側面図である。
【図5】(a)、(c)はコード折り曲げ装置に取り付けるローラの平面断面図、(b)、(d)はその側面断面図である。
【図6】(a)は凹部24に圧入した凹部型付け用金具の斜視図、(b)は凸部34を圧入した凸部型付け用金具の斜視図である。
【図7】(a)、(b)、(c)は折り曲げ装置の突起を拡大した側面図である。
【図8】(a)、(b)は折り曲げ装置により折り曲げられたコードの折り曲げ部の平面図である。
【図9】ゴムシート製造装置の概略平面図である。
【図10】同側面図である。
【図11】(a)、(b)は本発明の製造方法により製造されたゴムシートの1例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:素線
1a:素線束
2:分離板
3a、3b:一対のチャック
3c:第3のチャック
4:送り出しローラ
5:スチールコード
6:復帰用バネ
7:基台
8:繰り出しリール
12、13:折り曲げ装置
16:コード体
20、30:型付けローラ
51:固定水平盤
52:コンベアベルト
53:ピン
54:送り出し装置
60:コード引き揃え部
62a、62b:コンベアベルト
63:コマ
70:ゴムシート製造装置
71a、71b:圧延ローラ
72a:シート状ゴム体
73a、73b:コード固定ローラ
100:ねじり加工工程
200:型付け工程
300:ゴムシート製造工程
C、C1、C2:ゴムシート
Co シート状ゴム体
P:コード体の折り曲げ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ補強材として使用するスチールコードを挟み込んだゴムシートの製造方法および同製造方法により製造されたゴムシートを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラジアルタイヤは、長尺(数百メートル乃至数万メートル)のスチールコードを平行状に数百本配列し、これを同時に繰り出しながら使用するタイヤの仕様に基づく間隔に並べ、平面に引きそろえた状態で両面より薄いシート状ゴム体をサンドイッチ状に貼り合わせるカレンダー加工により、長尺(数百メートルから数万メートル)のカレンダーシートを構成し、このようにして構成されたカレンダーシートを、タイヤに貼り合わせる幅とバイアス角で裁断して短冊体を形成し、それらを貼り合わせてタイヤ原型をつくり、これを金型に入れて高温、高圧で加硫して製造される。
【0003】
従来の方式では、使用されるスチールコードの1度の使用量、すなわちスプールの巻量が大きい方がカレンダー加工の稼働時間が長く、効率が良いとされてきた。
また、スチールコードの加工においても、最終の撚り合わせの工程は製品長さが長い方が加工効率が良く、長尺製品が生産できる工夫をしてきた。すなわち、材料のスプール容量を大きくし、製品スプールを大きくする方向で必然的に撚線機の回転部分を大きくしてきた。
【0004】
撚線機として、現在使用せれているのは、大別して筒型回転で1回転で1度撚りのチューブラタイプのものと、1回転で2度撚りのバンチャタイプのものとがある。
いずれの撚線機も有効エネルギー消費率が10%以下であり極めて浪費が大きい。これは重量物を高速回転させる為の機械損失と高速回転体の空気抵抗による損失の為であると考えられる。
【0005】
近年、自動車が成熟するにともなって自動車用タイヤも成熟し、それに伴ってタイヤに対する要求品質も多様化し、機能的に多様化した要求を満たすためタイヤの種類も増加してきている。
従来のような規格大量生産方式でこれらの要求に対応するには、コストなどの面で無理があり、省スペースで一気通貫的に加工できる新生産方式も併用する必要が生じてきた。
【0006】
タイヤの生産方式では、上記目的に沿い新生産方式が試験的に稼働する段階に来ているが、それに供するスチールコードの生産形態の提供が要望されている。
さらに、今後環境改善時代に先に述べたすこぶるエネルギー効率の悪い方法を継続することなく、資源の最小化、エネルギーの最小化を狙った新しいスチールコードの加工技術の開拓も要望されている。
【0007】
さらに、従来の製造方法により製造されたカレンダーシートは、メッキを施した素線(鋼線)からなるスチールコードで構成されているが、カレンダーシートを所定の長さに切断すると、その切断端部では素線の鉄地が露出してしまう。この切断端部はメッキがないのでゴムとの接着が成されないという問題が発生する。
【0008】
タイヤには自動車の走行中、自動車の重量による歪みが負荷され、さらにコーナリング時にはタイヤのショルダー部やプライ層のターンアップエンド部に最大の負荷が作用するが、タイヤはこの部分に上記切断部分が位置する構造になっている。
しかも、近年タイヤの偏平化が進みタイヤ幅が広くなってきているが、タイヤ幅が広くなる程ショルダ部の歪みが大きくなり、上記未接着部分の存在がさらに問題視されるようになってきた。
【0009】
また、スチールコードは走行時のタイヤの変形を抑える補強材としてタイヤに埋め込まれるものであるが、スチールコードが切断されているため、補強材保有の剛性の効果が充分発揮されず、タイヤのコーナリングフォースを低下させるばかりか、変形によるトレッドの摩耗でタイヤの寿命を低下させる原因にもなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の要望乃至課題に対処したようとするもので、スチールコードの新生産方式の開発により、スチールコードの撚り線加工に無駄なエネルギーを必要とすることがなく、また、スチールコードが切断されることがなく、さらにタイヤの生産方式を少ロット化して無駄なスペース、無駄な輸送を排除することが可能なタイヤ構成用ゴムシートおよびそのゴムシートを用いて製造したタイヤを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、タイヤ補強材としてのゴムシートの製造方法において、複数本の素線又は複数本の素線とストランドコードあるいは複数本のストランドコードを引き出し、これを一対のチャックと同一対のチャックのほぼ中央部に配設された第3のチャックとで把持し、上記第3のチャックを回転することにより上記複数本の素線又は複数本の素線とストランドあるいは複数本のストランドコードにねじり加工を施してスチールコードを形成してから、ねじりの残留応力を取り去り、次に上記撚り線を上記一対のチャック間外に引き出し、これを繰り返すことで撚り方向がS方向とZ方向が交互に存在するスチールコードを作成し、このようにして作成されたスチールコードのチャックで把持していた箇所(無撚り部)を、一平面上で、たとえばジグザグ状やコ字状に折り曲げて平面状のコード体を形成し、このコード体を上下からシート状ゴム体で挟み込むゴムシート製造工程を経てタイヤ構成用ゴムシートを製造することを特徴とする。
【0012】
また、上記のスチールコードの製造方法において、上記ねじり加工による長さの減少分が、上記一対のチャックを構成するチャックのいずれか一方のチャック、あるいは両方のチャックが同一対のチャック間の距離が小さくなる方向に移動して、補填することを特徴とする。
【0013】
さらに、上記のスチールコードの製造方法において、上記ゴムシート製造工程を上記コード体の作成工程に連続して行うことを特徴とする。
【0014】
さらにまた、上記の製造方法により製造されたゴムシートを用いてタイヤを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤ構成用ゴムシートは、1本のコード体を一平面上で所定の幅で、たとえばジグザグ状あるいはコ字状に折り曲げて平面状のコード体を形成し、これを上下のシート状ゴム体で挟み込んだ構成であるので、ゴムシート内でスチールコードは連続していて切断されている箇所がない。よって、このゴムシートを貼り合わせてタイヤ原型をつくり、これを金型に入れて高温、高圧で加硫して製造されたタイヤは、ショルダー部やプライのターンアップ部で鉄地が露出することがなく、これらの箇所でのゴム未接着が防止できる。
【0016】
また、タイヤの内部においてコードは連続しているから補強材保有の剛性の効果を充分発揮することができ、変形に対する耐力が大きくなって、タイヤのコーナリングフォースの低下が防止できるととともに、トレッドの摩耗が防止できてタイヤの寿命を向上させることができる。
【0017】
本発明の撚り線の製造方法は、従来の大量生産型の場合と異なり、簡単な撚り線加工機による撚り線加工で、無撚り部を境界にしてS撚り部とZ撚り部とが交互に繰り返す形状のスチールコードを製造するものであるから、本発明の製造方法によれば、必要な場所で必要量のスチールコードを製造することが可能となるばかりか、簡単な撚り線加工機による撚り線加工であるので、設備費用の低減と撚り線加工のためのエネルギー消費量を極端に低減することができる。
【0018】
また、一対のチャックの間隔を調整することにより、さらに第3のチャックの回転方向や回転数を調節することにより、タイヤの仕様に対応したスチールコードの製造に簡単に対処することができるので、多品種、少量生産化、すなわち少ロット生産方式を低コストで対処することが可能となる。
【0019】
さらに、上記のゴムシート製造工程を上記のコード体の作成工程に連続して行うようにしたので、タイヤ構成材としてのゴムシートの製造装置の少スペース化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の製造方法をその実施に適した装置の1例により説明する。
図1は本発明のゴムシートの製造方法を概念的に示す系統図であり、図1において符号100はねじり加工工程を、符号200は型付け工程を、符号300はゴムシート製造工程をそれぞれ示しており、ねじり加工工程100と型付け工程200とでコード体成形工程が形成されている。
【0021】
図2はねじり加工工程100の1例を示した概略図であり、図2において、符号1は素線を示しており、複数本の素線1が張力を負荷されながらリール8から引き出され、分離板2で各々の素線1は並びを決められ相互の素線の並びが入れ代わらないようにして、送り出しを兼ねた引き出しローラ4によって、一定長さ引き出されて停止する。ここで、一定長さとは、後述のチャック3aとチャック3bとの間隔に相当する長さのことである。
上記複数の素線1は、複数本の素線とストランドコードの組み合わせでもよいし、複数本のストランドコードでもよい。
【0022】
一定長さ引き出されて停止した複数本の素線1(素線束1a)は、一対のチャック3a、3bと、同一対のチャック3a、3bのほぼ中央部に配設された第3のチャック3cとで複数本の素線1が自由に回転できない強さで把持される。
チャック3aとチャック3cとの間隔(および、チャック3bとチャック3cとの間隔)は、ねじり加工終了後におけるスチールコードの長さの減り(撚り減り)を考慮した長さで当該スチールコードが使用されるタイヤに埋設された補強層のバイアス角を考慮した一端部から他端部までのスチールコードの長さと同じ長さである。
【0023】
図2の例では、下流側のチャック3bはねじり加工工程における撚り減りを補填するために、図2中左右方向に移動可能に基台7に取り付けられている。符号6は把持解除時の復帰用バネを示す。なお、上流側のチャック3aを移動可能としてもよく、さらに両チャック3a、3bを移動可能としてもよいが、いずれの場合でも移動可能なチャックには把持解除時の復帰用バネ6が設けられている。
【0024】
一対のチャック3a、3bと第3のチャック3cとで素線束1aを3ヵ所で自由に回転できない強さで把持した後、チャック3cを回転させる。チャック3cを回転させることにより素線束1aはねじられ、3ヵ所のチャック間の素線束1aはS方向とZ方向とにねじられたスチールコードとなる。つまり第3のチャック3cを挟んで左側は「S撚り」に、右側は「Z撚り」にねじられたスチールコードが得られる。第3のチャック3cの回転方向を反対に設定するとき、左右のねじりをこれと反対にすることが可能なことはいうまでもない。
【0025】
スチールコードに必要な仕様に基づいた回転をした後、一旦第3のチャック3cの回転を停止し、次いでねじりの残留応力を取り去るために第3のチャック3cを逆回転する。
次にチャック3a、3cと第3のチャック3cの把持を解除し、引き出しローラ4の駆動でスチールコード5を上記一対のチャック3a、3b間外に引き出す。これによってチャック3a、3b間には連続して次の素線束1aが送り込まれる。チャック3a、3bと第3のチャック3cの把持を解除すると、移動していたチャック3bは復帰用バネ6の復元力により元の位置にもどる。
【0026】
上記スチールコードの製造方法において、ねじりの残留応力を取り去る手段は、上記第3のチャック3cをねじり加工後に開放できる機構にして、スチールコードの戻り力を利用して残留ねじれを取り去るようにしてもよい。
【0027】
引き出されたスチールコード5は第3のチャック3cで把持されていた箇所を境界にしてS撚り部とZ撚り部とが交互に存在する形状となっている。
この工程を繰り返すことにより、所定長さのS撚りスチールコードとZ撚りスチールコードとが交互に形成されたスチールコードを製造することができる。
このようにして製造されたスチールコード5は、このねじり加工工程100に連続する型付け工程200に順次送られる。
【0028】
図3は型付け工程200に好適な折り曲げ装置Aの1例を示す平面図、図4は図3のZ部の側面図である。
【0029】
次に型付け工程200について図3、図4にて説明する。
ねじり加工工程100で撚られたスチールコード5は、一対の送り出しローラ4(図2のものと同じ)で引き出され(図3参照)、ダンサーローラ11で張力を一定に保ちながら折り曲げ装置12、13に送り込まれ、折り曲げ装置12、13に設けた、図5に詳細構造を示す型付けローラ20に設けた凹部と型付けローラ30に設けた凸部とで挟み込まれて折り曲げ加工される。折り曲げる箇所は、上記ねじり加工工程においてチャックで把持されていた無撚り箇所である。無撚り部で折り曲げられるように折り曲げ装置12、13の間隔や送り速度を調整する。
図3、図4中の符号15は、グリップ部で折り曲げ加工を行う際コードにねじれが入るのを防止するためのものである。符号14は送り出しローラを示す。
【0030】
折り曲げ装置12と折り曲げ装置13の型付けローラ20と型付けローラ30は、凹部24と凸部34とが互いに対向する側に設けられているので、スチールコード5の折り曲げられる方向は逆になり、全体として一平面上で山・谷の連続した、いわゆるジグザグ形状に形成された平面状のコード体16(図4参照)に形成される。
【0031】
型付けローラ20は、図5(a)に平面断面図、(b)に側面断面図を示すように、ローラ軸21の表面上に溝22が形成され、この溝22に図6(a)に示すような凹部24を圧入した凹部型付け用金具23がはめ込まれ、ネジ25で固定された構造である。
型付けローラ30は、図5(c)に平面断面図、(d)に側面断面図を示すように、ローラ軸31の表面上に溝32が形成され、この溝32に図6(b)に示すような凸部34を圧入した凸部型付け用金具33が装着された構造である。
【0032】
凸部型付け用金具33の凸部34は上記凹部型付け金具23の凹部24に、ロール20、30の回転によって嵌まり込んでコードに型付けを行うので、回転に沿って凸部がスムーズに嵌まり込むように凸部型付け用金具33はローラ軸31にぶらぶら状態になるようにネジ35で取り付けられている。
【0033】
折り曲げ装置13もこれと同じ構成であるが、図4に示すように型付けローラ20とローラ30とが互いに対向する側に設けられている。
【0034】
なお、上記説明では型付けローラ20が凹部側で、型付けローラ30が凸部側であるが、逆であっても同じ効果が得られるのはいうまでもない。
そして、一対の型付けローラ20、30は連動して同速度で回転するように歯車26、36で連結されている。
【0035】
型付けローラ20に装着する凹部型付け用金具23に設けた凹部24は、図6(a)に示すように、型付け部23aと案内部23bとからなる。型付け部23aの幅xは、凸部型付け用金具33の凸部34の幅をyとしコードの径をφとしたとき、x=y+2φに設定され、案内部23bの幅は型付け部23aの幅xよりも広く、かつテーパ状に広がり開口部(図6(a)における底面)で最大となるような形状に形成されている。
【0036】
凹部型付け用金具23の凹部24の深さは、凸部型付け用金具33の凸部34の高さとほぼ同じ程度であり、また型付け部23aと案内部23bの深さも同程度である。凹部24の底の形状は滑らかなR型が望ましい。
【0037】
図3および図4に示すように、送り出しローラ4(図3参照)で引き出されダンサーローラ11で張力を一定に保ちながら折り曲げ装置12、13に送り込まれ、折り曲げ装置12と折り曲げ装置13の型付けローラ20の凹部と型付けローラ30の凸部とに挟み込まれることによりスチールコード5は型付けされる。
折り曲げ装置12と折り曲げ装置13の型付けローラ20と型付けローラ30は、凹部24と凸部34(図5参照)とが互いに対向する側に設けられているので、折り曲げられる方向は逆になり、全体として一平面上で山・谷の連続した、いわゆるジグザグ形状に形成された平面状のコード体16(図4参照)に形成される。
【0038】
型付けローラで折り曲げ加工を行う周期は、当該ゴムシートが使用されるタイヤの仕様による。タイヤ仕様の変更に伴うコードの一端部から他端部までの長さの変更は、折り曲げ装置12と折り曲げ装置13の距離が変えられる構造にしたり、コードの送りスピードを変えることで変更することができる。
【0039】
図7は、型付けローラ30の凸部34の断面形状例を示しており、(a)に示す凸部34により折り曲げ加工を施すと、コード16は図8(a)に示す鋭角形状に、(b)に示す凸部34により折り曲げ加工を施すとコード16は図8(b)に示す段付き折り曲げ形状に折り曲げられる。図7(c)に示すのような対称形状突起の場合には、コードの折り曲がり部はゆるやかな形状となる。
【0040】
図11は、上記の折り曲げ装置Aにより折り曲げ加工されたコード体からなるゴムシートの1例を示すもので、図11においてコード体は点線で示してある。(a)に示すゴムシートC1は折り曲げ部が鋭角なジグザグ状のコード体a1を一対のゴム状シートC0で挟み込んだ構成であり、(b)に示すゴムシートC2は折り曲げ部がコ字状のコード体a2を一対のゴム状シートC0で挟み込んだ構成である。
図11に示すゴムシートC1、C2は、挟み込まれるコードの間隔やコードのバイアス角度、あるいはコード体の幅はタイヤの仕様にあわせて製作され、これらを貼り合わせてタイヤ原型をつくり、これを金型に入れて高温、高圧で加硫してタイヤが製造される。
【0041】
上記の折り曲げ装置Aで型付け加工された(たとえばジグザグ状に折り曲げられた)コード体16は、次の工程のゴムシート製造工程におくられる。
図9および図10はゴムシート製造工程に好適な装置を示している。この装置(図9および図10に示す装置)によりコード体16を一対のシート状ゴム体72a、72bで挟んでゴムシートCが形成される。
【0042】
図3、図4に示すコード折り曲げ装置Aでジグザグ状に折り曲げられたコード体16が、図9、図10に示すゴムシート製造装置の上流側部分B(図9、図10における左側)に設けた固定水平盤51上に送り出し装置54(コード折り曲げ装置Aと連結した場合、図3、4における送り出しローラ14と同じ)により送られてくる。
【0043】
固定水平盤51の両側に近設して一組みのコンベアベルト52、52が設けられており、このコンベアベルト52、52には、送り出し装置54によって固定水平盤51上に送り出されてきたコード体aが重なってしまうのを防止するため、ピン53が立設されている。そして、このピン53がコード体16の折り曲げ部Pを引っ掛け、コード体aが重なってしまうのを防止しながら順次下流側(図矢印Y方向)にコード体16を移送する。
【0044】
下流よりのところに、コード引き揃え部60が設けられていて、このコード引き揃え部60に送られてきたコード体16は、コード引き揃え部60に設けられた一組のコンベアベルト62a、62b上に立設されたコマ63にコード体16の折り曲げり部Pが引っ掛けられ下流側に移動される。
【0045】
左右のコンベアベルト62a、62bは速度差を有する構成となっているので、コード体の移動方向に対してコードの角度が徐々に変化し、コードの埋め込み用の角度が形成される。このようにして、埋め込み角を得た状態でコードに張力を負荷することで、ゴム埋め込み前のコードの引き揃えが行われる。
【0046】
所望の埋め込み角度をもって引き揃えられたコード体16はゴミシート製造装置70に移動する。ゴムシート製造装置70において、コード体16に圧延ローラ71a、71bで上下方向から1対のシート状ゴム体72a、72bによるシーチングが施され、さらにコードの並びの乱れを防止するため圧延ローラ71a、71bの下流側に設けたコード固定ローラ73a、73bでゴムシートC0を再度押さえつけることによって、さらに安定したゴムシートCが得られる。
【0047】
上記ゴムシートCは両側にコード体16の折り返し部Pが露出しているが、シート状ゴム体72a、72bのうち片方の幅をコード体16の幅よりも広くしておくと、余剰分がゴムシートC0の両端を巻き込むこととなり、ゴムシートC全体をシート状ゴム体で被覆された構造のゴムシートを得ることができる。
【0048】
本発明のゴムシートはタイヤの仕様によって決められるもので、所望のコード体幅はコード折り曲げ装置Aにおける折り曲げ装置12、13の距離を変えるか、コードの送りスピードを変えることで得ることができる。また、所望のコード体間隔は装置Bにおけるコンベアベルト62a、62bのスピードを調整することで得ることができ、また所望のコードバイアス角はコンベアベルト62a、62bの速度差を調整することで得られる。
【0049】
上述の通り、本発明によれば、スチールコードの撚り線加工は、エネルギーのロスを極少化することができる。
また、撚り線加工およびカレンダー加工のための初期設備費用を極少化でき、必要な場所で必要量製造できるので、従来の方法に較べて全てのロスを極少化できる。
さらに、この製造方法で製造されたカレンダーシートは、カレンダーシート内のスチールコードには切断部がなく、したがって接着しない部分がなく、また連続体であることから、耐変形性に優れており、これを使用したタイヤ長寿命でさらに安全なタイヤへの期待ができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のゴムシートの製造方法を概念的に示す系統図である。
【図2】ねじり加工工程概念的に示す系統図である。
【図3】コード折り曲げ装置の概略平面図である。
【図4】図3のZ部の概略側面図である。
【図5】(a)、(c)はコード折り曲げ装置に取り付けるローラの平面断面図、(b)、(d)はその側面断面図である。
【図6】(a)は凹部24に圧入した凹部型付け用金具の斜視図、(b)は凸部34を圧入した凸部型付け用金具の斜視図である。
【図7】(a)、(b)、(c)は折り曲げ装置の突起を拡大した側面図である。
【図8】(a)、(b)は折り曲げ装置により折り曲げられたコードの折り曲げ部の平面図である。
【図9】ゴムシート製造装置の概略平面図である。
【図10】同側面図である。
【図11】(a)、(b)は本発明の製造方法により製造されたゴムシートの1例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:素線
1a:素線束
2:分離板
3a、3b:一対のチャック
3c:第3のチャック
4:送り出しローラ
5:スチールコード
6:復帰用バネ
7:基台
8:繰り出しリール
12、13:折り曲げ装置
16:コード体
20、30:型付けローラ
51:固定水平盤
52:コンベアベルト
53:ピン
54:送り出し装置
60:コード引き揃え部
62a、62b:コンベアベルト
63:コマ
70:ゴムシート製造装置
71a、71b:圧延ローラ
72a:シート状ゴム体
73a、73b:コード固定ローラ
100:ねじり加工工程
200:型付け工程
300:ゴムシート製造工程
C、C1、C2:ゴムシート
Co シート状ゴム体
P:コード体の折り曲げ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ補強材としてのゴムシートの製造方法であって、
複数本の素線又は複数本の素線とストランドコードあるいは複数本のストランドコードを引き出し、
一対のチャックと同一対のチャックのほぼ中央部に配設された第3のチャックとでこれを把持し、
上記第3のチャックを回転することにより上記の複数本の素線又は複数本の素線とストランドコードあるいは複数本のストランドコードにねじり加工を施してスチールコードを形成してからねじりの残留応力を取り去り、
次に上記スチールコードを上記一対のチャック間外に引き出し、これを繰り返すことで撚り方向がS方向とZ方向が交互に存在するスチールコードを作成し、
このようにして作成されたスチールコードのチャックが把持していた箇所(無撚り部)を一平面上で折り曲げて平面状のコード体を形成し、
このコード体を上下からシート状ゴム体で挟み込むゴムシート製造工程を経てタイヤ補強材としてのゴムシートを製造することを特徴とするゴムシートの製造方法。
【請求項2】
上記ねじり加工による長さの減少分が、上記一対のチャックを構成するチャックのいずれか一方のチャック、あるいは両方のチャックが同一対のチャック間の距離が小さくなる方向に移動して、補填されることを特徴とする請求項1記載のゴムシートの製造方法。
【請求項3】
上記ゴムシート製造工程が上記コード体成形工程に連続して行われることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のゴムシートの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたゴムシートを用いたタイヤ。
【請求項1】
タイヤ補強材としてのゴムシートの製造方法であって、
複数本の素線又は複数本の素線とストランドコードあるいは複数本のストランドコードを引き出し、
一対のチャックと同一対のチャックのほぼ中央部に配設された第3のチャックとでこれを把持し、
上記第3のチャックを回転することにより上記の複数本の素線又は複数本の素線とストランドコードあるいは複数本のストランドコードにねじり加工を施してスチールコードを形成してからねじりの残留応力を取り去り、
次に上記スチールコードを上記一対のチャック間外に引き出し、これを繰り返すことで撚り方向がS方向とZ方向が交互に存在するスチールコードを作成し、
このようにして作成されたスチールコードのチャックが把持していた箇所(無撚り部)を一平面上で折り曲げて平面状のコード体を形成し、
このコード体を上下からシート状ゴム体で挟み込むゴムシート製造工程を経てタイヤ補強材としてのゴムシートを製造することを特徴とするゴムシートの製造方法。
【請求項2】
上記ねじり加工による長さの減少分が、上記一対のチャックを構成するチャックのいずれか一方のチャック、あるいは両方のチャックが同一対のチャック間の距離が小さくなる方向に移動して、補填されることを特徴とする請求項1記載のゴムシートの製造方法。
【請求項3】
上記ゴムシート製造工程が上記コード体成形工程に連続して行われることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のゴムシートの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたゴムシートを用いたタイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−217820(P2007−217820A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39277(P2006−39277)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(394010506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(394010506)
【Fターム(参考)】
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