説明

ターボチャージャの調整軸装置

本発明は、可変タービンジオメトリのターボチャージャまたはウェイストゲートターボチャージャの調整軸装置(1)であって、固定部分(3)を含む調整軸(2)を有し、その固定部分(3)を介して調整軸(2)に連結されるレバー(4)を有し、調整軸(2)の基本部分(6)に配置されるスリーブ(5)を有し、かつ、そのスリーブ(5)およびその調整軸(2)の間の前記基本部分(6)の領域に装着されるシール(7)を有する調整軸装置(1)に関し、調整軸(2)の主要部分(6)が段付きの外形輪郭を有し、かつ、スリーブ(5)が、基本部分(6)の形状を相補する形の段付きの内側輪郭を備えた内側の輪郭を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1によるVTGターボチャージャまたはウェイストゲートターボチャージャの調整軸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
「VTGターボチャージャ」という用語は、調整軸装置を必要とする可変タービンジオメトリ(variable turbine geometry:VTG)を有するターボチャージャに関する。ウェイストゲートターボチャージャにおいては、タービンバイパスが、調整軸によって駆動されるバルブによって制御される。
【0003】
VTGターボチャージャの既知の調整軸装置においては、調整軸およびブッシュ間の部分における隙間シールのシール効果が不完全であるという問題が、印加される排気ガスのプラス圧力に応じて生じる可能性がある。この問題が生じると、ターボチャージャから排気ガスおよび排気煙が外部に排出されることがある。
【0004】
ピストンリングのシール効果を隙間のシール効果と組み合わせるように、ブッシュ内の中央にピストンリングを配置してシールを改善する方法が、国際公開第2004/063535 A1号パンフレットから知られる。
【0005】
しかし、この装置は、ピストンリングの取り付けに必要なスリップオンベベル(面取り部)が、ブッシュの内腔内において有効な隙間シールの長さを著しく短縮するという重大な欠点を有する。これは、ブッシュの形状が対称で、取り付けが側方に向けられていない場合、もう一方のブッシュ端面にも適切なスリップオンベベルが必要になるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、VTGまたはウェイストゲートターボチャージャの調整軸装置であって、第1に、排気ガスおよび排気煙の外部への排出を顕著に低減するために隙間シールとピストンリングシールとの組合せを構成し、第2に、同じブッシュ長さにおいてシール効果の改善を可能にする調整軸装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は請求項1の特徴によって実現される。従属請求項は本発明の有利な発展形態に関する。
【0008】
本発明によれば、調整軸とブッシュとの間に静止シールが設けられ、このシールが、ブッシュを経由するターボチャージャからの排気ガスおよび排気煙の外部への排出を、完全に防止する程ではないとしても少なくとも大幅に低減する。
【0009】
このシールは、好ましくは、ピストンリングとして構成される。
【0010】
特に好ましい実施形態においては、シールが、固定部分と自由端との間の調整軸の主要部分の溝の中に装着される。
【0011】
主要部分は段付き構造であり、異なる外径を有する2つの円筒状断面のものになっている。主要部分を取り巻くブッシュの内側の輪郭も、同様に、対応する段付き構造であり、異なる寸法の円筒内径を有する2つの領域部分を備えている。2つの領域間の遷移部分は、ピストンリングを取り付けるためのスリップオンベベルとして形成することができるので、両側に、可能な限り長い有効なシール用隙間を残すことができる。この場合、遷移部分によって形成されるブッシュおよび調整軸間の環状の空間は、粒子の集合容積として用いることができる。粒子がこの集合容積に集積することによって、調整軸の動きを遅くする可能性があるシール隙間内への集積が避けられる。ブッシュの外径は必ずしも段付き構造にする必要はなく、ブッシュの外径は全ブッシュ長さについて一定にしてもよい。ブッシュの外径を段付き構造にすると、左右が逆になる誤取り付けを避け得るという付加的な利点がある。
【0012】
本発明のさらなる詳細、利点および特徴は、2つの実施例に関する、添付の図面を参照した以下の説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
VTGターボチャージャの既知の調整軸装置1を図1に示す。VTGターボチャージャそのものは、それ自体周知の従来型構造のものとすることができるので、図中に詳細表示していない。
【0014】
調整軸装置1は、固定部分3および自由端8を含む調整軸2を有する。さらに、図1は、固定部分3および自由端8が調整軸2の主要部分6よりも小さい外径を有することを示している。主要部分6は、固定部分3と自由端8との間に位置している。この例では、これら3つの部分は、すべて、円筒状の外形輪郭を有する。
【0015】
調整軸2は固定部分3を介してレバー4に連結される。
【0016】
調整軸装置1は、さらに、調整軸2の基本部分6上に配置されるブッシュ5を有する。
【0017】
最後に、ブッシュ5および調整軸2間の基本部分6の範囲に、シール7が配置装着される。このため、基本部分6は円周溝を有しており、好ましくはピストンリングとして構成し得るシールをこの溝9の中に装着する。これによって、排気煙または排気ガスの外部への漏出を顕著に制限するシールが、ブッシュ5と調整軸2またはその基本部分6との間に形成される。
【0018】
図1に示す調整軸装置においては、調整軸2の基本部分6は、連続した円筒状もしくは滑らかな構造であり、スリップオンベベルはブッシュの両端面に明らかに見られる。
【0019】
これとは対照的に、図2に示す本発明による調整軸装置の第1実施形態は、段付き構造の基本部分6、従って異なる外径の2つの円筒断面10および11を有する基本部分6を備える。この実施形態においては、部分10が部分11より大きな外径を有する。
【0020】
この結果、ブッシュ5は、調整軸2の部分10の領域において、部分11を取り巻く領域の内径よりも大きい内径を有する。
【0021】
本発明によるこの実施形態においても、基本部分6の溝の中にシール7が装着される。従って、対応するすべての特徴について、図1に関する記述を参照することができる。
【0022】
また図2が示すように、ブッシュ5も、同様に2つの部分12および13を有し、より大きな内径を有する部分12が、調整軸2の部分10を取り巻き、部分13が、調整軸2の小さい方の外径の領域11を取り巻く。さらに、ブッシュ13の部分12は、ブッシュ5の部分13よりも小さい外径を有する。この点に関しては、図2の表現を参照するとさらに明確である。
【0023】
ウェイストゲートターボチャージャ用として提供される第2の実施形態を図3に示す。調整軸の構成は図2のそれに合致しているので、上記の説明を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】既知の調整軸装置の部分断面図を示す。
【図2】本発明による調整軸装置(VTG)の第1実施形態の、図1に対応する図を示す。
【図3】本発明による調整軸装置(ウェイストゲート)の第2実施形態の、図1に対応する図を示す。
【符号の説明】
【0025】
1 調整軸装置
2 調整軸
3 固定部分
4 レバー
5 ブッシュ
6 基本部分
7 シール
8 自由端
9 溝
10 調整軸2の大きい外径部分
11 調整軸2の小さい外径部分
12 ブッシュ5の大きい内径部分
13 ブッシュ5の小さい内径部分
14 スリップオンベベル
15 集合容積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VTGまたはウェイストゲートターボチャージャの調整軸装置(1)であって、
固定部分(3)を含む調整軸(2)と、
前記固定部分(3)を介して前記調整軸(2)に連結されるレバー(4)と、
前記調整軸(2)の基本部分(6)に配置されるブッシュ(5)と、
前記ブッシュ(5)および前記調整軸(2)間の前記基本部分(6)の領域に装着されるシール(7)とを有し、
前記調整軸(2)の前記基本部分(6)が段付きの外形輪郭を有し、かつ、
前記ブッシュ(5)が、前記基本部分(6)の形状を相補する形に形成される内側の輪郭を有する、
ことを特徴とする調整軸装置。
【請求項2】
前記シール(7)がピストンリングであることを特徴とする請求項1に記載の調整軸装置。
【請求項3】
前記シール(7)が前記調整軸(2)の溝(9)の中に装着されることを特徴とする請求項1または2に記載の調整軸装置。
【請求項4】
前記調整軸(2)が、前記調整軸(2)の主要部分(6)の外径よりも小さい外径を有する自由端(8)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調整軸装置。
【請求項5】
前記ブッシュ(5)が、補足的に段付きに形成される外形輪郭を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の調整軸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−542607(P2008−542607A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513978(P2008−513978)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004906
【国際公開番号】WO2006/128616
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】