説明

ダイボンディング用樹脂ペーストおよびその用途

【課題】比較的低い温度で貼り付ける必要がある基板に対しても印刷法によって容易に供給・塗布できるダイボンディング用樹脂ペースト、ならびに、それを用いた半導体装置等の用途を提供する。
【解決手段】カルボン酸末端基を有するブタジエンのホモポリマーまたはコポリマー(A)、熱硬化性樹脂(B)、フィラー(C)、および印刷用溶剤(D)を含み、乾燥硬化後の弾性率が1〜100MPa(25℃)であるダイボンディング用樹脂ペースト。固形分が40〜90重量%、チキソトロピー指数が1.5〜8.0、および粘度(25℃)が5〜1000Pa・sであると好ましい。前記樹脂ペーストを用い、(1)基板上に所定量の樹脂ペーストを塗布し、(2)樹脂ペーストを乾燥して樹脂をBステージ化し、(3)Bステージ化した樹脂に半導体チップを搭載し、(4)樹脂を後硬化することを含む方法により半導体装置を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC、LSI等の半導体素子とリードフレームや絶縁性支持基板等の支持部材との接合材料(ダイボンディング材)として用いられるダイボンディング用樹脂ペースト、および、それを用いた半導体装置の製造方法、半導体装置等の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSIとリードフレームとの接合材料として、従来から、Au−Si共晶合金、半田あるいは銀ペースト等が知られている。
【0003】
本出願人は、特定のポリイミド樹脂を用いた接着フィルム、特定のポリイミド樹脂に導電性フィラーもしくは無機フィラーを加えたダイボンディング用接着フィルムを先に提案している(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−228697号公報
【特許文献2】特開平06−145639号公報
【特許文献3】特開平06−264035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記Au−Si共晶合金は、耐熱性および耐湿性は高いが、弾性率が大きいために、大型チップに適用した場合に割れやすい。また、高価であるという難点もある。
半田は安価であるものの、耐熱性に劣り、その弾性率はAu−Si共晶合金と同様に高く、大型チップへの適用は難しい。
銀ペーストは、安価で、耐湿性が高く、弾性率はこれらの中では最も低く、350℃の熱圧着型ワイヤボンダーに適用できる耐熱性もあるので、現在はダイボンディング材の主流である。しかし、ICやLSIの高集積化が進み、それに伴ってチップが大型化していくなかで、ICやLSIとリードフレームとを銀ペーストで接合しようとすると、これをチップ全面に広げて塗布しなければならず、それには困難を伴う。
【0006】
本出願人が先に提案したダイボンディング用接着フィルムは、比較的低温で接着でき、かつ良好な熱時接着力をもつため、ダイボンド用として、42アロイリードフレームに好適に使用できる。
【0007】
しかし、近年のパッケージの小型・軽量化に伴い、絶縁性支持基板の使用が広範になっており、また、製造コストの低減を目的として、ダイボンディング材を量産性の高い印刷法で供給しようとする方法が注目されている。こうした状況の中で、この接着フィルムを絶縁性支持基板へ効率的に供給・貼付しようとすると、予めチップサイズに切り出して(または打ち抜いて)接着フィルムを貼り付ける必要がある。
【0008】
接着フィルムを切り出し、基板に貼り付ける方法では、生産効率を上げるための貼付装置が必要となる。また、接着フィルムを打ち抜いて複数個のチップ分を一括で貼り付ける方法は、接着フィルムの無駄が生じやすい。さらに、絶縁性支持基板の大部分は、基板内部に内層配線が形成されているため、接着フィルムを貼り付ける表面には凹凸が多く、接着フィルム貼付時に空隙が生じて、信頼性が低下しやすい。
【0009】
本発明の課題は、比較的低い温度で半導体チップを貼り付ける必要がある基板に対して、印刷法によって容易に供給・塗布できるダイボンディング用樹脂ペーストを提供することである。また、そのダイボンディング用樹脂ペーストを用いた半導体装置の製造方法、半導体装置等の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明では以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、カルボン酸末端基を有するブタジエンのホモポリマーまたはコポリマー(A)、熱硬化性樹脂(B)、フィラー(C)、および印刷用溶剤(D)を含む樹脂ペーストであって、乾燥硬化後の樹脂ペーストの弾性率が1〜300MPa(25℃)であるダイボンディング用樹脂ペーストに関する。
【0011】
別の本発明は、上記ダイボンディング用樹脂ペーストを用いる半導体装置の製造方法に関し、(1)基板上に所定量の上記ダイボンディング用樹脂ペーストを塗布し、(2)前記樹脂ペーストを乾燥して樹脂をBステージ化し、(3)Bステージ化した前記樹脂に半導体チップを搭載し、(4)前記樹脂を後硬化することを含む、半導体装置の製造方法に関する。
【0012】
別の本発明は、(1)基板上に所定量の上記ダイボンディング用樹脂ペーストを塗布し、(2)前記樹脂ペーストを乾燥して樹脂をBステージ化し、(3)Bステージ化した前記樹脂に半導体チップを搭載し、(4)前記樹脂を後硬化することを含む製造方法により得られる半導体装置に関する。
【0013】
別の本発明は、(1)基板上に所定量の上記ダイボンディング用樹脂ペーストを塗布し、(2)前記樹脂ペーストに半導体チップを搭載し、(3)前記樹脂ペースト中の樹脂を硬化することを含む、半導体装置の製造方法に関する。
【0014】
さらに別の本発明は、(1)基板上に所定量の上記ダイボンディング用樹脂ペーストを塗布し、(2)前記樹脂ペーストに半導体チップを搭載し、(3)前記樹脂ペースト中の樹脂を硬化することを含む半導体装置の製造方法により得られる半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、比較的低い温度で半導体チップを貼り付ける必要がある基板に対して、印刷法によって容易に供給・塗布できるダイボンディング用樹脂ペーストを提供できる。また、本発明のダイボンディング用樹脂ペーストは、耐熱性があり、扱いやすく、低応力性および低温接着性に優れている。さらに、フィルム状接着剤に比べ、基板に対する密着性が向上するため、パッケージ信頼性が高まる。ダイボンド用として、有機基板などの絶縁性支持基板や銅リードフレームに好適に使用でき、また、42アロイリードフレームにも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ピール接着力を測定する装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明に係るダイボンディング用樹脂ペースト(以下、単に「樹脂ペースト」という場合もある。)は、カルボン酸末端基を有するブタジエンのポリマー(A)(ホモポリマーまたはコポリマー)、熱硬化性樹脂(B)、フィラー(C)、および印刷用溶剤(D)を含む。
【0019】
成分(A)であるカルボン酸末端基を有するブタジエンのホモポリマーまたはコポリマーとしては、たとえば好適に使用できるものとして、主鎖にアクリロニトリルを導入した低分子量液状ポリブタジエンであり末端にカルボン酸を有する、Hycer CTB−2009×162,CTBN−1300×31,CTBN−1300×8、CTBN−1300×13、CTBNX−1300×9(いずれも宇部興産株式会社製)や、カルボン酸基を有する低分子量液状ポリブタジエンである、NISSO−PB−C−2000(日本曹達株式会社製)などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
成分(B)である熱硬化性樹脂として好ましいものは、たとえばエポキシ樹脂であり、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂または分子中にフェノール性水酸基を有する化合物と、硬化促進剤とを含む樹脂混合物として用いてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含むものであり、硬化性や硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が好ましい。このような樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールF、または、ハロゲン化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
エポキシ樹脂を用いる場合の配合量は、上記成分(A)100重量部に対し300重量部を超えない程度、好ましくは200重量部を超えない程度であることが好ましい。この配合量が300重量部を超えると、ペーストの保管安定性が低下しやすい。
【0023】
フェノール樹脂は、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するものであり、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
フェノール樹脂または分子中にフェノール性水酸基を有する化合物の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0〜150重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜120重量部である。この配合量が150重量部を超えると、硬化性が不十分となる恐れがある。
【0025】
硬化促進剤は、エポキシ樹脂を硬化させるために用いられるものであればよい。このようなものとしては、たとえば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。
【0026】
硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対し、0〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜20重量部である。この配合量が50重量部を超えると、ペーストの保管安定性が低下する恐れがある。
【0027】
熱硬化性樹脂(B)として、1分子中に少なくとも2個の熱硬化性イミド基を有するイミド化合物を使用することもできる。そのような化合物の例としては、オルトビスマレイミドベンゼン、メタビスマレイミドベンゼン、パラビスマレイミドベンゼン、1,4−ビス(p−マレイミドクミル)ベンゼン、1,4−ビス(m−マレイミドクミル)ベンゼンが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、下記の式(I)〜(III)で表されるイミド化合物等を用いることも好ましい。
【化1】

【0028】
〔式中、XやYは、O、CH、CF、SO、S、CO、C(CHまたはC(CFを示し;R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素または臭素を示し;Dはエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示し;mは0〜4の整数を示す。〕
イミド化合物を用いる場合の配合量は、成分(A)100重量部に対して200重量部を超えない程度、好ましくは100重量部を超えない程度である。この配合量が200重量部を超えると、ペーストの保管安定性が低下しやすい。
【0029】
式(I)のイミド化合物としては、たとえば、4,4−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミド−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4−ビスマレイミドジフェニルケトン、2,2’−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、4,4−ビスマレイミドジフェニルフルオロメタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0030】
式(II)のイミド化合物としては、たとえば、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕フルオロメタン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ケトン、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0031】
これらイミド化合物の硬化を促進するため、ラジカル重合剤を使用してもよい。ラジカル重合剤としては、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。ラジカル重合剤の使用量は、イミド化合物100重量部に対して、概ね0.01〜1.0重量部が好ましい。
【0032】
成分(C)のフィラーとしては、銀粉、金粉、銅粉等の導電性(金属)フィラー;シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機物質フィラー;等がある。
【0033】
フィラーのうち、銀粉、金粉、銅粉等の導電性(金属)フィラーは、接着剤に導電性、伝熱性またはチキソトロピー性を付与する目的で添加される。また、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機物質フィラーは、接着剤に低熱膨張性、低吸湿率、チキソトロピー性を付与する目的で添加される。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
半導体装置の電気的信頼性を向上させるフィラーとして、無機イオン交換体を加えてもよい。無機イオン交換体としては、ペースト硬化物を熱水中で抽出したとき、水溶液中に抽出されるイオン、たとえば、Na、K、Cl、F、RCOO、Br等のイオン捕捉作用が認められるものが有効である。このようなイオン交換体としては、天然に産出されるゼオライト、沸石類、酸性白土、白雲石、ハイドロタルサイト類などの天然鉱物、人工的に合成された合成ゼオライトなどが例として挙げられる。
【0035】
これら導電性フィラーまたは無機物質フィラーは、それぞれ2種以上を混合して用いることもできる。物性を損なわない範囲で、導電性フィラーの1種以上と無機物質フィラーの1種以上とを混合して用いてもよい。
【0036】
フィラーの量は、成分(A)100重量部に対して、通常、1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは2〜50重量部である。このフィラーの量は、ペーストに十分なチキソトロピー性(チキソトロピー指数:1.5以上)を付与する観点から、1重量部以上であることが好ましい。さらにこのフィラーの量は、接着性の観点から100重量部以下であることが好ましく、これを超えて配合量が多すぎると、硬化物の弾性率が高くなり、その結果、ダイボンディング材の応力緩和能が低くなって、半導体装置の実装信頼性が低下する恐れがある。
【0037】
フィラーの混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミルなどの分散機を適宜、組み合せて行う。
【0038】
成分(D)である印刷用溶剤は、フィラーを均一に混練または分散できる溶剤のなかから選択することが好ましい。印刷時の溶剤の揮散防止を考えて、沸点100℃以上の溶剤を選ぶことが好ましい。
【0039】
上記印刷用溶剤としては、N−メチル−2−ピロリジノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライムともいう)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライムともいう)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、γ−ブチロラクトン、イソホロン、カルビトール、カルビトールアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、アニソールのほかに、印刷用インキの溶剤として使われる石油蒸留物を主体とした溶剤などが挙げられる。これらは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
上記印刷用溶剤(D)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、通常、10〜100重量部であることが好ましい。
【0041】
樹脂ペーストの印刷中に泡、ボイドの発生が目立つ場合は、上記印刷用溶剤(D)中に脱泡剤、破泡剤、抑泡剤等を添加することが効果的である。添加量は、抑泡効果を発揮させる観点から、溶剤(D)中に0.01重量%以上であることが好ましく、接着性やペーストの粘度安定性の観点から、溶剤(D)中に10重量%以下であることが好ましい。
【0042】
接着力を向上させるため、樹脂ペースト中には、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系添加剤等を適宜加えてもよい。
【0043】
以上のような成分を含む樹脂ペーストの乾燥硬化後の弾性率、すなわちペースト硬化物の弾性率は、1〜300MPa(25℃)である。好ましくは、この乾燥硬化後の弾性率は、1〜100MPa(25℃)である。
【0044】
上記弾性率は、動的粘弾性測定装置にてペースト硬化物の貯蔵弾性率E’を測定したときの25℃の値とする。乾燥硬化後の樹脂ペーストの弾性率が1未満の場合は、基板とチップがずれたりし易く、組立作業性に難があるので好ましくなく、300MPaを超えると、基板とチップ間の応力緩和が十分でなく、半導体パッケージの耐温度サイクル性が低下する。「乾燥硬化後」とは、樹脂を完全に硬化させた後、を意味する。
【0045】
さらに、樹脂ペーストの固形分が40〜90重量%であることが好ましい。上記固形分が40重量%以上であると、ペースト乾燥後の体積減少に基づく形状変化抑制の観点から好ましく、90重量%以下であると、ペーストの流動性および印刷作業性向上の観点から好ましい。
【0046】
樹脂ペーストのチキソトロピー指数は、1.5〜8.0であることが好ましい。樹脂ペーストのチキソトロピー指数が1.5以上であると、印刷法によって供給・塗布されたペーストにおけるダレ等の発生を抑制して、印刷形状を良好に保つとの観点から好ましい。さらに、このチキソトロピー指数が8.0以下であると、印刷法によって供給・塗布されたペーストにおける「欠け」やカスレ等の発生抑制の観点から好ましい。
【0047】
樹脂ペーストの粘度(25℃)は、5〜1000Pa・sであることが好ましい。樹脂ペーストの粘度が5〜1000Pa・sであると、印刷作業性の観点から好ましい。樹脂ペーストの粘度は、印刷法の種類により適宜調整することが好ましく、たとえば、スクリーンメッシュ版等のようにマスク開口部にメッシュ等が張ってある場合は、メッシュ部の抜け性を考慮して5〜100Pa・sの範囲であることが好ましく、ステンシル版等の場合は20〜500Pa・sの範囲に調整されていることが好ましい。また、乾燥後のペーストに残存するボイドが多く見られる場合は、150Pa・s以下の粘度に調整することが有効である。
【0048】
上記粘度は、E型回転粘度計を用いて、25℃で、回転数0.5rpmで測定したときの値とする。チキソトロピー指数は、E型回転粘度計で、25℃で、回転数1rpmで測定したときの値と、回転数10rpmで測定したときの値との比で定義する(チキソトロピー指数=(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度))。
【0049】
得られたダイボンディング用樹脂ペーストは、42アロイリードフレームや銅リードフレーム等のリードフレーム;または、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂等のプラスチックフィルム;さらには、ガラス不織布等の基材にポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂等のプラスチックを含浸・硬化させたもの;あるいは、アルミナ等のセラミックス製の支持部材に、印刷法によって供給・塗布し、乾燥半硬化させる(Bステージ化する)ことができる。それにより、Bステージ接着剤付き支持基板が得られる。このBステージ接着剤付き支持基板に、IC、LSI等の半導体素子(チップ)を貼り付け、加熱してチップを支持基板に接合する。その後、樹脂ペーストを後硬化させる工程により、チップが支持基板に搭載される。この樹脂ペーストの後硬化は、実装組立工程での問題がない場合は、封止材の後硬化工程の際に併せて行ってもよい。
【0050】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、以上の各工程を含むものであり、本発明に係る半導体装置は、以上の各工程を含む製造方法により製造されるものである。
【0051】
上記ダイボンディング用樹脂ペーストは溶剤を含有しているが、半導体装置の製造方法に用いる際には、乾燥工程にてBステージ化することにより溶剤の大部分が揮発するため、ダイボンディング層にボイドの少ない、良好な実装信頼性をもつ半導体装置を組み立てることができる。
【0052】
一方、樹脂ペーストを印刷法によって供給・塗布した後に、パッケージ信頼性に影響が無ければ、乾燥半硬化させることなく半導体素子を貼り付け、その後、加熱してチップを支持基板に接合することもできる。
【0053】
したがって、別の本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上に所定量の上記ダイボンディング用樹脂ペーストを塗布し、樹脂ペーストに半導体チップを搭載し、樹脂ペースト中の樹脂を硬化する各工程を含むものであり、別の本発明に係る半導体装置は、以上の各工程を含む製造方法により製造されるものである。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0055】
(実施例1)
カルボン酸末端基を有するブタジエンのホモポリマーまたはコポリマー(A)(ベース樹脂)として、CTBNX−1300×9(宇部興産株式会社製)を100重量部を秤取し、これをらいかい機に入れた。ここに、熱硬化性樹脂(B)として予め用意していた、エポキシ樹脂(YDCH−702)25重量部およびフェノール樹脂(H−1)15重量部の、印刷用溶剤(D)であるカルビトールアセテート(60重量部)溶液(熱硬化性樹脂の固形分濃度は約40重量%)と、硬化促進剤(TPPK)0.5重量部を加え、混合した。続いて、フィラー(C)としてシリカ微粉末であるアエロジル8重量部を加え、1時間撹拌・混練し、ダイボンディング用樹脂ペースト(樹脂ペーストNo.1;固形分71.2重量%)を得た。
【0056】
(実施例2〜5、比較例1)
ベース樹脂、熱硬化性樹脂、フィラーおよび/または溶剤の種類および配合量を変えて、実施例1と同様に行い、ダイボンディング用樹脂ペースト(樹脂ペーストNo.2〜No.6;固形分は順に68.3、72.5、65.5、67.3、44.5重量%;ただしNo.6の樹脂ペーストは比較対照用)を得た。
【0057】
表1に、樹脂ペーストの配合を示す。
【表1】

【0058】
表1において、種々の記号は下記の意味である。
【0059】
CTBNX−1300×9:宇部興産(株)製、カルボン酸末端液状ポリブタジエン(官能基数2.3/mol)
CTBN−1300×31:宇部興産(株)製、カルボン酸末端液状ポリブタジエン(官能基数1.9/mol)
CTBN−1300×8:宇部興産(株)製、カルボン酸末端液状ポリブタジエン(官能基数1.85/mol)
YDCH−702:東都化成(株)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量220)
ESCN−195:日本化薬(株)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)
H−1:明和化成(株)、フェノールノボラック樹脂(OH当量106)
VH−4170:大日本インキ化学工業(株)、ビスフェノールAノボラック樹脂(OH当量118)
TPPK:東京化成工業(株)、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート
2P4MHZ:四国化成工業(株)、キュアゾール(イミダゾール化合物)
アエロジル:日本アエロジル(株)、アエロジル#380(シリカの微粉末)
CA:カルビトールアセテート
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
調合・混合後のダイボンディング用樹脂ペーストの粘度およびチキソトロピー指数を、表2に示す。粘度およびチキソトロピー指数の測定方法は、以下のとおりである。
【0060】
粘度:東機産業株式会社製E型粘度計で直径19.4mm,3°コーンを用いて、25℃での樹脂ペーストの粘度を測定した(0.5rpm)。
【0061】
チキソトロピー指数:上記粘度計を用いて各回転数での粘度を測定し、次式により求めた:チキソトロピー指数=(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)。
【0062】
得られた樹脂ペーストについて、チップ貼付温度をそれぞれ180℃または250℃としたときのピール接着力を測定した。ピール接着力の測定法は、以下の通りである。
【0063】
太陽インキ製造株式会社製ソルダーレジストPSR−4000AUS−5が塗布された有機基板に、樹脂ペーストを印刷し((1)基板上に所定量のペーストを塗布する工程)、60℃で15分間、100℃で30分間乾燥させた後((2)乾燥工程にてB−ステージ化する工程)、5×5mmのシリコンチップを180℃または250℃の熱盤上で1000gの荷重をかけ5秒間圧着させた((3)Bステージ化したダイボンディング用樹脂に半導体チップを搭載する工程)。シリコンチップは、400μm厚のウェハを250μm厚にハーフカットし、裏側方向に力を加えて割ることにより、端部において150μm厚の突起部を有するように準備されたものである。その後、180℃で1時間硬化させたのち((4)後硬化する工程)、図1に示す測定装置を用いて、250℃、20秒間加熱時の引き剥がし強さを測定した。
【0064】
この図1に示す測定装置は、プッシュプルゲージを改良したものであり、基板1、ダイボンディング材(樹脂ペースト)2およびシリコンチップ3からなる積層体を、熱板10上において、支え11および12で固定した状態で、シリコンチップ3の突起部に掛けられたプッシュプルゲージ13を、図中矢印で示す方向に移動させたときの荷重を検知することにより、樹脂ペーストのチップ引き剥がし強さを測定することができる。一般に、この数値が高いほどリフロークラックが発生しにくくなる。
【0065】
表2に示すとおり、No.1〜5の樹脂ペーストは、180℃においても、250℃においても、高いピール接着力を示した。また、耐熱性に優れていた。
【0066】
No.1〜6で得られた樹脂ペーストを用いて、リードフレームにシリコンチップを接合させたときのチップ反りを測定した。チップ反りの測定は、次のようにして行った。
【0067】
厚さ150μmの古河電気工業株式会社製EF−TEC64T銅板に樹脂ペーストを印刷し、60℃で15分間、続いて100℃で30分間乾燥させて、膜厚40μmのダイボンド材(ダイボンディング用樹脂)を形成させた。これに、大きさ13mm×13mm、厚さ400μmのシリコンチップを載せ、1000gの荷重をかけて、250℃、5秒間圧着させた。室温(25℃)に戻したのち、表面粗さ計を用いて直線状に11mmスキャンし、ベースラインからの最大高さ(μm)を求めて、チップ反りとした。
【0068】
表2に示すとおり、No.1〜3の樹脂ペーストを用いた場合のチップ反りは、ほとんどゼロであり、良好な応力緩和能を示した。No.4および5の樹脂ペーストを用いた場合のチップ反りは、No.1〜3と比較すると高いが、No.6(比較)の樹脂ペーストを用いた場合に比較して1/3以下の、十分な応力緩和能を示した。
【0069】
硬化した後のフィルムの貯蔵弾性率E’を、動的粘弾性測定装置を用いて測定し、表2に示した。測定方法は、以下のようにした。
【0070】
ポリテトラフルオロエチレンフィルムにダイボンディング用樹脂ペーストを硬化後の膜厚が100μmになるように塗布し、150℃で60分間予備乾燥した後、180℃で60分間硬化させた。硬化後のフィルムをポリテトラフルオロエチレンフィルムから引き剥がし、以下の条件で貯蔵弾性率の測定を行い、25℃の値を示した。
【0071】
フィルム膜厚:100μm、フィルム幅:8mm、測定部長さ:22.6mm、測定周波数:1Hz、測定温度:−100℃〜300℃、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:N2、測定装置:レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー株式会社製粘弾性アナライザーRSA−2
【表2】

【0072】
本発明のダイボンディング用樹脂ペーストは、極めてかつ十分に低応力であり、かつ熱時の接着力に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸末端基を有するブタジエンのホモポリマーまたはコポリマー(A)、熱硬化性樹脂(B)、フィラー(C)、および印刷用溶剤(D)を含み、乾燥硬化後の弾性率が1〜300MPa(25℃)であるダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項2】
固形分が40〜90重量%、チキソトロピー指数が1.5〜8.0、および粘度(25℃)が5〜1000Pa・sである請求項1に記載のダイボンディング用樹脂ペースト。
【請求項3】
(1)基板上に所定量の請求項1または2に記載のダイボンディング用樹脂ペーストを塗布し、(2)前記樹脂ペーストを乾燥して樹脂をBステージ化し、(3)Bステージ化した前記樹脂に半導体チップを搭載し、(4)前記樹脂を後硬化することを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法により得られる半導体装置。
【請求項5】
(1)基板上に所定量の請求項1または2に記載のダイボンディング用樹脂ペーストを塗布し、(2)前記樹脂ペーストに半導体チップを搭載し、(3)前記樹脂ペースト中の樹脂を硬化することを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置の製造方法により得られる半導体装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−193009(P2011−193009A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98093(P2011−98093)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【分割の表示】特願2005−176765(P2005−176765)の分割
【原出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】