説明

チタン酸バリウム粉末、チタン酸バリウム粉末の製造方法およびこれを用いたセラミック電子部品

【課題】固相法において粒子径を300nm以上で制御でき、均質な粒子形状、低欠陥高結晶、高分散性、低粒子内空孔であり、かつ極微細粒子を含まない狭粒度分布であるチタン酸バリウム粉末、チタン酸バリウム粉末の製造方法およびこれを用いたセラミック電子部品を提供する。
【解決手段】本発明に係るチタン酸バリウム粉末は、ペロブスカイト構造を有し、直方体形状または直方体類似形状を有し、BET法により測定された比表面積が3.2m/g以下であることを特徴とする。本発明に係るチタン酸バリウム粉末は、高結晶性、高分散性、低欠陥性、狭粒度分布、低粒内空孔でありかつ均質な粒子形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末、チタン酸バリウム粉末の製造方法およびこれを用いたセラミック電子部品に関し、高結晶性、高分散性、低欠陥性、狭粒度分布、低粒内空孔でありかつ均質な粒子形状を有するチタン酸バリウム粉末、チタン酸バリウム粉末の製造方法およびこれを用いたセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
固相法による酸化物粒子の合成技術は古くから開発されており、粒子合成法としては化学的方法と物理的方法とに大別される。現在確立されている技術としては、化学的手法では晶析法が挙げられ、これは固相から新しい固相への相転移現象を利用するものである。物理的手法はビルトダウン法ともいい大きな粒子を粉砕機で機械粉砕を繰り返し、所望の平均粒子径、比表面積をもつ粒子とする手法である。
【0003】
一般的に晶析法では結晶性が良い粒子が合成できるとされているが、粒度分布のシャープなものを合成するには不向きであり、現在の高特性化、高信頼性化が進んでいる電子部品の分野、たとえば積層セラミック電子部品の分野で利用されるチタン酸バリウムに求められる粒度分布を満足させるチタン酸バリウムの合成手法の主流にはなっていない。
【0004】
また、機械的粉砕を用いた方法で作製されたチタン酸バリウム粒子は一般によく積層セラミック電子部品に用いられてきたが、粉砕による不純物混入の問題、粉砕時に発生するチッピングによる極微細粒子の発生などによる粒度分布のブロード化の問題、不規則な粒子形状、反応時のネッキング形成による低分散性など積層セラミック電子部品の更なる高特性化、高信頼性化に対してデメリットとなる要因が存在している。
【0005】
また、固相法以外には水熱合成法、シュウ酸塩法等がチタン酸バリウムの合成手法として用いられているが、水熱合成法では粒子内欠陥や空孔の問題があり、また高コストであるため積層セラミック電子部品用途の誘電体材料として主流ではない。また、シュウ酸塩法は原料合成が液相法で、目的粉合成が固相法であり、粒子内欠陥やポアが比較的少ないそれぞれの利点を出してはいるが、粒度分布が悪い、粒子形状が不規則、結晶性が中庸といった状態であり、それぞれの欠点も出している。
【0006】
そのため、均質な粒子形状、低欠陥高結晶、高分散性、低粒子内空孔であり、かつ極微細粒子を含まない狭粒度分布であり通常積層セラミック電子部品に用いられるような粒径を持つ粒子を合成することができれば、積層セラミック電子部品の高特性化、高信頼性化が見込まれ、様々なアプローチから粉体合成プロセスの改良が進められてきた。
【0007】
これらの課題を解決する為の粉体合成プロセスの改良として、例えば固相法において原料粉末である酸化チタン(TiO2)や炭酸バリウムに適切な比表面積の粉末を用いて仮焼きすることにより高結晶であり所望の比表面積をもつ粒子、もしくは粒子径のばらつきの少ない粒子を得る方法(例えば、特許文献1、2)や、原料粉末の配合と仮焼き条件(温度、雰囲気)を最適化することにより、高い結晶性を保ちながら所望の粒子径をもちかつ粗大粒子含有率が低い粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献3)。
【0008】
また、粒子形状の制御方法として、ソルボサーマル法を用いて、微細な立方体状のチタン酸バリウム粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献4)。
【0009】
また、チタン酸バリウムではないが、液相法を用いて、正方柱類似形状を有し単結晶であり超微粒子や凝集粉が少なく粒度分布がシャープでありかつ分散性に優れているという特徴を有するチタン酸カルシウム粒子が開示されている(例えば、特許文献5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−2739号公報
【特許文献2】特開平10−338524号公報
【特許文献3】特開2005−213070号公報
【特許文献4】特開2008−115042号公報
【特許文献5】特開2008−230872号公報
【特許文献6】特開2004−323344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載されている固相法の改善手法では、固相法が抱える根本的な課題の解決法にはならず、粒子形状が均質なものが作製できないといったことや、仮焼温度を下げて粒子径を小さくすると、結晶性や異方性が低下するといった問題が発生し、固相法で行うメリットが無くなってしまう。
【0012】
また、粒子形状の制御について、特許文献5では8nm〜40nmの立方体形状のチタン酸バリウムおよびその製造法については開示されているが、一般的にチタン酸バリウムでは粒子径が小さくなるほど強誘電性が低下することが知られており、前述の粒子径範囲のチタン酸バリウム粒子を、現在一般的に製造されているセラミック電子部品に適用することは困難である、という問題がある。
【0013】
また特許文献5中には、比較例として50nm以上の立方体形状粒子について言及されているが、角が丸い立方体形状であり、また球状の極微細粒子を含むものとなっており、同様に現在一般的に製造されているセラミック電子部品に適用することは困難である。
【0014】
また特許文献6には正方柱、あるいは正方柱類似のチタン酸カルシウム粉末およびその製造法について開示されている。特許文献6中に示されるように、結晶性が高く、形状均一性の高い粉体ではあるが、その製法は水熱合成法類似の方法で合成されており、そのため水熱合成法に特有の問題である粒子内部の空孔は依然存在しており、その存在は積層セラミック電子部品の信頼性に対して問題となる。また合成法の特徴として、水酸化カルシウムの低い飽和溶解量を用いており、すぐさま同様の特徴を有するチタン酸バリウム粉体の合成に適用できるものではない。
【0015】
本発明では、上記問題点に鑑みてなされたものであって、固相法において粒子径を300nm以上で制御でき、均質な粒子形状、低欠陥高結晶、高分散性、低粒子内空孔であり、かつ極微細粒子を含まない狭粒度分布であるチタン酸バリウム粉末、チタン酸バリウム粉末の製造方法およびこれを用いたセラミック電子部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るチタン酸バリウム粉末は、ペロブスカイト構造を有し、直方体形状または直方体類似形状を有し、BET法により測定された比表面積が3.2m2/g以下であることを特徴とする。直方体形状または直方体類似形状であるため、粒子のもつ誘電性などの電気的特性を高くすることができると共に、BET法により測定された比表面積が3.2m2/g以下であるため、セラミック電子部品に好適に用いることができる。
【0017】
本発明においては、粒子の累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたとき、(D90−D10)/D50が2以下であることが好ましい。これにより、狭い粒度分布を有するため、このチタン酸バリウム粉末を用いて得られるセラミック電子部品の信頼性を高くすることができる。
【0018】
本発明においては、粒子内部に空孔を含む粒子の割合が0.2%以下であることが好ましい。これにより、内部空孔が少ない、すなわち欠陥がすくないため、得られるチタン酸バリウム粉末を用いて得られる粉体を用いることにより、高い特性を有するセラミック電子部品を得ることができる。
【0019】
本発明に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法は、Ti原料を含むチタン水溶液にキレート剤を添加して混合水溶液を作製する混合水溶液作製工程と、得られた混合水溶液にバリウム(Ba)塩を添加してゲル化してチタン/クエン酸/バリウムスラリーを作製し、チタン/クエン酸/バリウムスラリー中のBaとチタン(Ti)との混合比を3以上10以下とするゲル化工程と、得られたチタン/バリウム/キレートスラリーを均一に乾燥させる乾燥工程と、乾燥して得られた乾燥粉を800℃以上1000℃以下で熱処理する熱処理工程と、熱処理して得られた熱処理粉の余剰Baを酸で溶解する溶解工程と、を含むことを特徴とする。これにより、均質な粒子形状、低欠陥高結晶、高分散性、低粒子内空孔であり、かつ極微細粒子を含まない狭粒度分布を有するチタン酸バリウム粉末を作製することができる。得られたチタン酸バリウム粉末を用いることにより、従来より、高特性、高信頼性を有する積層セラミック電子部品を作製することができる。
【0020】
本発明に係るセラミック電子部品は、上記いずれか1つに記載されるチタン酸バリウム粉末を含むことを特徴とする。このため、従来のチタン酸バリウム粉末を用いて得られる粉体を含むセラミック電子部品に比べ、高特性であり、かつ高い信頼性を有するセラミック電子部品とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、固相法において粒子径を300nm以上で制御でき、均質な粒子形状、低欠陥高結晶、高分散性、低粒子内空孔であり、かつ極微細粒子を含まない狭粒度分布とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図2】図2は、Ba−Tiゲルの状態を模式的に示す図である。
【図3】図3は、乾燥後の混合物を示す断面模式図である。
【図4】図4は、熱処理後の熱処理粉を示す断面模式図である。
【図5】図5は、セラミックコンデンサの一実施形態を模式的に示す概念断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例に係る試料において、熱処理工程後の混合物から余剰バリウムを除去したチタン酸バリウム粉末のXRD結果を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施例に係るチタン酸バリウム粉末のFE−SEM写真である。
【図8】図8は、本発明の実施例に係るチタン酸バリウム粉末のTEM格子像である。
【図9】図9は、本発明の比較例に係るチタン酸バリウム粉末のFE−SEM写真である。
【図10】図10は、本発明の実施例に係るチタン酸バリウムの代表的な粒子のSTEM HAADF法によるコントラスト像である。
【図11】図11は、本発明の実施例に係るチタン酸バリウムの代表的な粒子の電子線回折像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)及び実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための実施形態及び実施例により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせても良いし、適宜選択して用いてもよい。
【0024】
<チタン酸バリウム粉末>
本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、ペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸バリウム粒子の集合体であり、結晶構造中のAサイトをBaが占有し、BサイトをTiが占有している。本実施形態では、このAサイトを占有する原子とBサイトを占有する原子とのモル比を示すBa/Ti比が、好ましくは0.980〜1.010、より好ましくは0.990〜1.003の範囲にある。このBa/Ti比は、粉末の用途に応じて上記の範囲で制御されることが好ましい。本実施形態では、後述する粉末の製造方法において、Ba/Ti比を制御することができる。
【0025】
また、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を構成する粒子は直方体もしくは直方体類似の形状を有している。それぞれの面はほぼ直角に交わっており、チタン酸バリウム粉末を構成する粒子の大部分は直方体もしくは直方体類似の形状である。本実施形態において、直方体類似の形状とは、部分的に直方体もしくは直方体類似の形状を構成するいずれかもしくは複数の辺あるいは頂点部分に丸みを帯びているもの、もしくは面取りがなされたような外観を示すものが含まれている。粒子が球状ではなく直方体形状もしくは直方体類似の形状であるということは、電気的特性を発現するペロブスカイト構造が理想的に整列しているということを意味し、粒子のもつ誘電性などの電気的特性が高いということを示す。実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、直方体形状もしくは直方体類似の形状の粒子を多く含むため、誘電性などの電気的特性を高めることができる。
【0026】
BET法による比表面積測定により測定された比表面積は3.2m2/g以下であり、これを用いて以下の式(1)にもとづき算出される本発明によるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径D[SSA]50は、313nmである。
D[SSA]50=6/(ρS)[μm]・・・(1)
(式(1)中、ρは粒子の真比重、Sは粒子の比表面積を示す。)
【0027】
また、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末において、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90とすると、(D90−D10)/D50が2以下、好ましくは1.5以下である。この「(D90−D10)/D50」は、D50を基準とした粒子径のバラツキを示しており、粒度分布がブロードであるかシャープであるかの指標となる。また、(D90−D10)/D50は極微細粒子の存在量に対する指標ともなる。粒成長の抑制という観点から、粉体中に含まれる極微細粒子は少ない方が望ましく、それゆえ(D90−D10)/D50はより小さいことが望ましい。本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、D90とD10との差が小さい、すなわち(D90−D10)/D50が小さく極微細粒子が少ない狭い粒度分布を有している。
【0028】
なお、粒子径を測定する方法としては特に制限されないが、本実施形態では、走査型電子顕微鏡観察により各粒子の粒子径を測定することが好ましい。
【0029】
凝集した粒子集合の径すなわち2次粒子径は、本実施形態では、チタン酸バリウム粉末を溶媒中に分散し、レーザ回折・散乱法などで測定することが出来る。この方法により2次粒子の体積基準粒子径分布を測定し、累積体積が50%となる2次粒子径d[MT]50をもとめる。
【0030】
粒子が球形であるとしたとき、比表面積よりもとめた平均粒子径D[SSA]50と2次粒子径d[MT]50の比、d[MT]50/D[SSA]50は、粒子が理想的に単分散している場合、d[MT]50/D[SSA]50=1となる。逆にd[MT]50/D[SSA]50が1より大きい場合、その値が大きいほど凝集が激しく分散性が悪いといえる。本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末においてd[MT]50/D[SSA]50は1〜3であり、より好ましくは2.5以下である。
【0031】
本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を構成するチタン酸バリウム粒子が単結晶であることは、透過電子顕微鏡による電子線回折像より確認することができる。チタン酸バリウム粒子が単結晶であることは結晶性が極めて高いことを意味する。粒成長の抑制や高い誘電率が得られるという観点から、チタン酸バリウム粒子の結晶性は高い必要がある。また、一般に室温ではチタン酸バリウム粉末はペロブスカイト型結晶構造を有する。これは温度により変化し、キュリー点以下の常温においては正方晶系となり、キュリー点以上では立方晶系となる。立方晶系においては、各結晶軸(a軸、b軸、c軸)の格子定数は等しいが、正方晶系においては、一つの軸(c軸)の格子定数が、他の軸(a軸(=b軸))の格子定数よりも長くなっている。本実施形態では、チタン酸バリウムの粒子径を考慮すると、c軸の格子定数とa軸の格子定数との比を示すc/aが1.008以上、好ましくは1.009以上である。このc/aはチタン酸バリウムの異方性の指標となり、高い誘電率が得られるという観点から、高い方が好ましい。
【0032】
チタン酸バリウム粒子内部の空孔有無については、HAADF−STEM(high-angle annular dark-field scanning transmission electron microscopy)法によるチタン酸バリウム粒子観察で粒子内部のコントラストを見ることにより判別が可能である。この方法では、粒子内部に空孔が存在する場合その部分が黒い点として示される。一般に空孔の存在は、信頼性、誘電特性の低下をまねくため、少なければ少ないほど好ましい。本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を構成するチタン酸バリウム粒子においては、粒子内に黒点すなわち空孔を持つ粒子の割合は0.2%以下であり、より好ましくは0%である。
【0033】
以上より、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、均質な粒子形状であって、高分散性を有し、極微細粒子が非常に少なく、かつ結晶性(低欠陥性)が高く、粒子内に存在する空孔が少ないという特徴を有する粉末である。
【0034】
このような特性を有するチタン酸バリウム粉末を、セラミック電子部品に対して用いることで、セラミック電子部品はより高い高温負荷寿命を有し、かつより高い比誘電率をもつことができるため、信頼性の高いセラミック電子部品を市場に供することが可能となる。
【0035】
<チタン酸バリウム粉末の製造方法>
次に、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法の一例について図面を用いて説明する。本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法は、固相反応手法を用いてチタン酸バリウム粉末を得られるものである。図1は、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法は、以下の工程を含む。
(A) チタン水溶液とキレート剤水溶液とBa塩水溶液とを準備する原料準備工程(ステップS11)
(B) Ti原料を含むチタン水溶液にキレート剤を添加して混合水溶液を作製する混合水溶液作製工程(ステップS12)
(C) 得られた混合水溶液にBa塩を添加してゲル化してチタン/クエン酸/バリウムスラリーを作製し、チタン/クエン酸/バリウムスラリー中のBaとTiとの混合比を3以上10以下とするゲル化工程(ステップS13)
(D) チタン/クエン酸/バリウムスラリー(ゲル)のpHを調整するpH調整工程(ステップS14)
(E) 得られたチタン/バリウム/キレートスラリーを均一に乾燥させる乾燥工程(ステップS15)
(F) 乾燥して得られた乾燥粉を800℃以上1000℃以下で熱処理する熱処理工程(ステップS16)
(G) 処理して得られた熱処理粉の余剰Baを酸で溶解する溶解工程(ステップS17)
(H) Ba塩水溶液とチタン酸バリウム粉末を分離する固液分離工程(ステップS18)
【0036】
<原料準備工程:ステップS11>
出発原料として、図1に示すように、チタン水溶液とキレート剤水溶液とBa塩水溶液とを準備する(原料準備工程:ステップS11)。本実施形態では、Ba原料としてBa塩粉末を用いる。
【0037】
チタン水溶液中のTi原料としては、水溶性のTi原料を用いる。水溶性のTi原料としては、塩化チタン溶液、塩化チタン水溶液、ペルオキシチタン酸水溶液が好ましいが、本実施形態では塩化チタン水溶液を用いた。水溶性のTi原料を用いることによって、より均質な分散状態を乾燥段階まで維持することができる。本水溶液中のTi濃度は特に制限されないが、取り扱いの観点から、好ましくは10質量%以上20質量%以下である。濃度を低くしすぎるとチタン水溶液が不安定で、水酸化物の析出が発生するので好ましくない。
【0038】
Ba原料には水溶性バリウム塩を用いる。Ba塩としては、水溶性であれば特に制限されない。具体的には、塩化バリウム、硝酸バリウム、ギ酸バリウム、酢酸バリウム、乳酸バリウム、過塩素酸バリウム、フッ化バリウム、水酸化バリウム、シュウ酸バリウム、塩素酸バリウム、ヨウ素酸バリウム、ヨウ化バリウム、臭化バリウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。また、これらは組み合わせて用いてもよい。取り扱いの容易さや水への溶解性などの観点から、炭酸バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウムがより好ましい。本実施形態では、酢酸バリウムを用いた。
【0039】
バリウム塩水溶液のBa塩の濃度は、その溶液の溶解度以下であれば特に制限されない。コストの観点から今回は飽和水溶液を作製し用いた。
【0040】
キレート剤は水溶性Ti原料を安定化させるために用いられる。キレート剤としては、酸性キレート剤である必要があり、水溶液が酸性であるものであれば特に制限されない。酸性キレート剤を用いることによって、水溶性Ti原料の析出を抑制し、バリウム塩水溶液の混合時のTi原料の加水分解を抑制することができる。アルカリ性のキレート剤を用いると、混合時にTiの水酸化物が析出してしまう為に用いることができない。カルボン酸系のキレート剤として、具体的には、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸などが挙げられる。本実施形態ではクエン酸を用いた。
【0041】
キレート剤水溶液の濃度はその水溶液の溶解度以下であれば特に制限されない。コストの観点から、今回は50質量%のクエン酸水溶液を作製し用いた。
【0042】
<混合水溶液作製工程:ステップS12>
次に、図1のフローチャートに示すように、上記で準備した塩化チタン水溶液とクエン酸水溶液を混合し、チタン/クエン酸水溶液の混合水溶液を作製する。
【0043】
<ゲル化工程:ステップS13>
この水溶液を強撹拌しながら、そこへ酢酸バリウム水溶液を滴下し、ゲル化する(ゲル化工程:ステップS13)。図2は、Ba−Tiゲルの状態を模式的に示す図である。図2に示すように、水11中には、多数のバリウムイオン12とチタンイオン13とクエン酸14とが点在(分散)し、チタンイオン13とクエン酸14とは、水素結合(図2中、破線部分)で連結されている。
【0044】
滴下初期段階は水溶液であるチタン/クエン酸/バリウム水溶液も、滴下中期になりpHが上がってくると、Tiチタンが水酸化物になって析出してくる。この水酸化物ゲルは水分を大量に含むために、大量のバリウムイオンを内包している。
【0045】
バリウム塩水溶液の滴下速度は特に制限されないが、本実施形態では200g/時間以上で行うことが好ましい。
【0046】
チタン/クエン酸/バリウムスラリー(ゲル)中のBaとTiとの混合比(Ba/Ti比)は好ましくは3以上10以下であり、より好ましくは3以上5以下である。すなわち、混合時のBa/Ti比は粒子径及び、粒度分布に対する効果がある。Ba/Ti比が低い(例えば、1以上2未満)と、仮焼き時の熱拡散長が長くなり、粒子同士の融合が起こり粒度分布が悪くなる。Ba/Ti比が高い(例えば、5よりも大きい)と、反応前に生成する障壁が大きくなり、熱拡散長が短くなり、粒子同士の融合がおこりにくくなり、粒度分布が良くなる。そこで、Ba/Ti比を上記範囲内とすることで、BaがTiよりも過剰に存在している状態でチタン水溶液からのチタン水酸化物を析出させる。このようにすることで、チタン水酸化物中に大量のバリウムイオンを内包し、また、水中にも大量のバリウムイオンが存在することで、後述する乾燥工程において、混合液の液体成分(分散媒および溶媒)が除去されると、Ba塩粒子中に、酸化チタン粒子が分散され、かつ酸化チタン粒子同士が接触していない状態の混合物を得ることができる。
【0047】
Ba/Ti比が小さすぎると、析出したチタン水酸化物に内包されるバリウムイオン量が少なくなるばかりか、水中に溶けているバリウムイオン量も少なくなり、乾燥後の混合物中の酸化チタン粒子間の距離が小さくなり、後述する熱処理工程において生成するチタン酸バリウムのネッキングが生じやすい傾向にある。Ba/Ti比が大きすぎると、コストの面で大きなデメリットがあると共に炭酸塩の溶解が困難になりBa/Ti比を制御できなくなる。
【0048】
複数のチタン酸化物粒子と複数のバリウム塩粒子とを含む混合物には、1個のバリウム塩粒子中に1個以上のチタン酸化物粒子が点在(分散)している。本実施形態では、塩化チタン水溶液とクエン酸水溶液とを混合した混合水溶液に酢酸バリウム粉末を混合してゲル化し、混合物であるチタン/クエン酸/バリウムスラリー(ゲル)を作製しているが、本実施形態においては、混合物を作製する方法は、特にこれに限定されるものではなく、他の方法により複数のチタン酸化物粒子と複数のバリウム塩粒子とを含む混合物を作製するようにしてもよい。
【0049】
<pH調整工程:ステップS14>
バリウム塩水溶液の滴下終了後、3時間程度撹拌し、チタン/クエン酸/バリウムスラリー(ゲル)のpHを調整した(pH調整工程:ステップS14)。この撹拌時間は特に制限されないが、pHの安定化を図る観点から例えば、1時間以上5時間以下であることが好ましい。
【0050】
チタン/クエン酸/バリウムスラリー(ゲル)のpHは目的の粒子径によって調整する。チタン/クエン酸/バリウムスラリー(ゲル)のpHは、例えば、2以上5以下の間で制御することが好ましく、より好ましくは2以上4以下である。Ba/Tiの仕込み比によって、所望のpHにならない場合は塩酸、酢酸または酸性のキレート剤でチタン/クエン酸/バリウム水溶液のpHを調整する。本実施形態においては、塩酸を用いることが好ましい。このスラリーのpHによってバリウム塩滴下中期に発生するチタン水酸化物の凝集状態を制御でき、目的粉末の粒子径を制御することができる。すなわち、チタン/クエン酸/バリウムスラリー(ゲル)のpHはバリウム添加中に発生するTiの核粒子の大きさを制御する因子であり、このpHの制御は所望の粒子径の誘電体粒子を得るためのパラメーターである。
【0051】
<乾燥工程:ステップS15>
次に、チタン/クエン酸/バリウムスラリーから液体成分を除去し、乾燥する(乾燥工程:ステップS15)。液体成分を除去して乾燥する方法は均一にする必要があり、液体成分を除去して乾燥する方法としては、バリウムイオンを内包したチタン水酸化物ゲル、およびバリウムイオンから液体成分を均一に(急速に)除去できる方法であれば特に制限されず、たとえばスプレードライ、スラリードライ、フリーズドライ、噴霧熱分解装置などでの乾燥方法を用いることが可能である。乾燥工程は均一乾燥が目的であるため、瞬間乾燥が好ましい。ゆっくりした乾燥では、Ba塩の晶析が徐々に生じるため、均質なTi―Ba乾燥粉ができない。スプレードライヤーやスラリードライヤーを好適に用いることができるが、仮焼きも同時に行える噴霧熱分解装置やフリーズドライヤーも用いることができる。コンタミレスの観点からはスプレードライヤーや噴霧熱分解装置、フリーズドライヤーが好適であるが、瞬間凍結ができない溶液においては、フリーズドライヤーを用いることは好ましくない。よって好ましくはスプレードライヤーや噴霧熱分解装置を用いて乾燥させることが好ましい。
【0052】
本実施形態では、スプレードライにより乾燥させた。スプレードライを行うことにより、スラリー(ゲル)中の液体成分が瞬間的に均一に除去され、乾燥物が得られる。このとき、チタン水酸化物ゲルに内包されたバリウムイオンは、その状態を維持したまま乾燥され、バリウムイオンはBa塩の形態となり、また、水中に溶けているバリウムイオンもBa塩の形態となり乾燥物を形成する。チタン水酸化物ゲルは乾燥工程(ステップS15)によって酸化チタンとなり、内包していたバリウムイオンが変化したBa塩によって乾燥物内により強く固定される。その結果、図3に示すように、Ba塩粒子15と酸化チタン粒子16とを含む乾燥物(混合物)17が得られる。この乾燥物17には、Ba塩粒子15中に多数の酸化チタン粒子16が点在(分散)している。このスプレードライにより得られる乾燥物においては、酸化チタン粒子16の周囲はBa塩粒子15が付着してており、しかも、各酸化チタン粒子16は互いに接触していない状態である。
【0053】
<熱処理工程:ステップS16>
次に、図1のフローチャートに示すように、得られた乾燥粉を熱処理する(熱処理工程:ステップS16)。この熱処理工程(ステップS16)では、図3に示すように、まず、Ba塩粒子15から酸化バリウム(一部炭酸バリウム)が生じる反応が起こり、続いて、生成した酸化バリウム(一部炭酸バリウム)と酸化チタン粒子16との固相反応が生じチタン酸バリウム(BaTiO3)が生成する。
【0054】
ここで、上記で得られた乾燥粉17においては、図3に示すように、所定の径を有する酸化チタン粒子16がBa塩粒子15中に点在している状態となっている。したがって、酸化チタン粒子17と、生成した酸化バリウム(一部炭酸バリウム)とは面で接触することになり、粒粉(混合物)17を熱処理すると、酸化チタン粒子16と酸化バリウム(一部炭酸バリウム)との固相反応が全方位的に進行し、図4に示すように、熱処理粉18内には、チタン酸バリウム(BaTiO3)粒子19が生成する。しかも、チタン酸バリウム粒子19が生成しても、チタン酸バリウム粒子19間には酸化バリウム(一部炭酸バリウム)20が障壁として存在しているため、チタン酸バリウム粒子19同士が接触することはない。その結果、チタン酸バリウム粒子19の結合が抑制され、各々の粒子で独立に反応が進む為、直方体もしくは直方体類似の形状をもち、所定の径を保った状態のチタン酸バリウム粒子19が得られる。
【0055】
また、乾燥後の混合物中に、酸化チタン(TiO2)粒子16以外のチタン酸化物粒子が存在している場合には、上記の熱処理工程において、チタン酸化物から二酸化チタンが生成する反応が起こる。
【0056】
熱処理工程(ステップS16)における熱処理温度は、800℃以上1200℃以下であり、より好ましくは800℃以上1000℃以下℃である。仮焼雰囲気は減圧雰囲気、空気、二酸化炭素、水蒸気雰囲気を用いることができる。熱処理(仮焼)によって、Ba塩は酸化バリウムとなり、さらに炭酸バリウムとなり、チタニウム塩は酸化物となり、さらにTiとBaが反応してチタン酸バリウムとなる。反応温度と雰囲気、仕込みのバリウム/Ti比によって、粒子径および粒度分布を制御することができる。
【0057】
反応温度が高すぎると、結晶性炭酸バリウムができるため、チタン化合物が移動しやすくなると共に、熱拡散長が長くなり、バリウム障壁の効果が弱くなり、粒子同士の融合が起きやすく粒度分布が不均一となり、粒子径も大きくなりすぎる。温度が低すぎると、一般的なセラミック電子部品に用いられている一般的チタン酸バリウムに好適な平均粒子径(例えば、300nm)以上をもつ粒子が得られず、また均質な形状の粒子が得られない。また、固相反応が十分に進行せずペロブスカイト型チタン酸バリウムが十分に生成せず均質な形状をもつ結晶性の高い粒子が得られない。
【0058】
また、雰囲気によって、粒成長抑制効果やペロブスカイト相でない異相の発生を抑制する効果がある。
【0059】
熱処理工程におけるその他の条件は、たとえば以下のようにすればよい。昇温速度はΔ300℃/時間で、熱処理温度での保持時間は好ましくは3時間以上9時間以下である。雰囲気は大気中、二酸化炭素、水蒸気、脱炭酸空気または減圧雰囲気とすることが好ましい。
【0060】
熱処理後には、図4に示すように、酸化バリウム(一部炭酸バリウム)を含む)20中にチタン酸バリウム粒子19が点在している熱処理粉18が得られる。
【0061】
<溶解工程:ステップS17>
次に、熱処理後の熱処理粉18の余剰Baとして酸化バリウム(一部炭酸バリウム)20を酸で溶解し、熱処理後の熱処理粉18からチタン酸バリウム粒子19を分離する(溶解工程:ステップS17)。分離する方法としては、特に制限されず、物理的な方法であってもよいし、化学的な方法であってもよい。本実施形態では、熱処理後の混合物に溶解液を添加して、チタン酸バリウム粒子を分離する。
【0062】
具体的には、酸化バリウム(一部炭酸バリウム)は酸に溶解しやすく、チタン酸バリウムは酸に溶解しにくいため、熱処理後の熱処理粉18に、溶解液として、酸を添加することで、バリウム化合物のみが溶解し、チタン酸バリウム粒子19が得られることになる。
【0063】
本実施形態における、余剰Baバリウムの溶解工程(ステップS17)は熱処理後の熱処理粉18をイオン交換水に懸濁させ強撹拌しているものに、pHを測定しながら酸を滴下する。余剰バリウムが溶解している段階では、酸を滴下しても、即座に中性領域のpHになるが、余剰バリウムが溶解すると、pHが4から5の弱酸領域で飽和する。その時点を溶解の終点として規定した。pHが飽和した段階で3時間撹拌し、pHの変化が無いことを確認した。撹拌時間は特に制限されないが1時間以上10時間以下が好ましい。
【0064】
溶解に用いる酸としては、特に制限されないが、例えば、塩酸、硝酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸、ギ酸、弗酸などが好ましい。なかでも、Baの再利用の観点から、酢酸を用いることが好ましい。本実施形態では酢酸を用いた。
【0065】
酸洗浄の効果によって、仮焼時のネッキングを防いでいた余剰のBa化合物を取り除くことができ、均質な粒子形状、低欠陥高結晶、高分散性、低粒子内空孔という特徴を有するチタン酸バリウムを得ることができる。
【0066】
余剰Baの溶解の制御はpHで行い、仮焼粉スラリーを強撹拌しながら、酸を滴下する。洗浄工程の終了の目安は、スラリーのpHが5から5.5で変化が無くなった段階であり、強酸側へpHを持っていくことは、誘電体粒子表面のBaも溶解させてしまうので好ましくない。また、溶解を効率的に行う為にボールミルで解砕を行いながら酸洗浄を行うこともできる。
【0067】
本実施形態においては、チタン酸バリウムのBa/Ti比が小さくなりすぎないように炭酸バリウムを溶解しているが、熱処理粉18の比表面積や酸溶解の条件を制御することにより、Ba/Ti比の範囲を調整することができる。
【0068】
<固液分離工程:ステップS18>
上記のように、洗浄して得られるスラリーは、吸引ろ過で固液分離し(固液分離工程:ステップS18)、乾燥し、目的の粉末を得た。乾燥温度については特に限定されるものではないが、本実施形態においては130℃とした。
【0069】
以上より、上述のチタン酸バリウム粉末の製造方法によれば、チタン酸バリウム粒子19の集合体であるチタン酸バリウム粉末と、炭酸バリウムが溶解した溶液とが得られる。この溶液は、図1に示すように、出発原料のバリウム源として再利用することができる。したがって、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法よれば、効率良くチタン酸バリウム粉末を製造することができる。
【0070】
このように、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法は、キレート化によって安定化されたBaリッチのチタン/クエン酸/バリウムスラリー(ゲル)を用い、さらにこのスラリー(ゲル)を均一に乾燥させ、仮焼することによって、チタン酸バリウム粉末を作製する。ここで、Baリッチであることにより、目的粒子の粒成長を制御し、均質な形状をもち、良粒度分布のチタン酸バリウム粉末を得ることができる。さらに、チタン酸バリウム粉末は固相反応で合成されるために、高結晶性、高異方性で粒子内部に空孔が無いもしくは非常に少ないチタン酸バリウム粉末を合成することができる。
【0071】
よって、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法によれば、固相反応手法を用いてチタン酸バリウム粉末を作製する際、チタン酸バリウム粉末の固相合成において欠点とされていた粉砕により発生する極微細粒子の存在、粒度分布のブロード化、不規則な粒子形状、および反応時のネッキング形成による低分散を改善することができる。また、固相合成の利点である、高結晶性(低欠陥性)および低粒子内空孔を有するチタン酸バリウム粉末の作製方法である。
【0072】
したがって、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法を用いることによって、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を得ることができる。本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末は、下記(1)〜(3)に記されるような均質な粒子形状、低欠陥高結晶、高分散性、低粒子内空孔であり、かつ極微細粒子を含まない狭粒度分布を有するチタン酸バリウム粉末(誘電体粒子)である。このため、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を用いることで、従来より、高特性、高信頼性を有する積層セラミック電子部品を市場に供することが可能である。
(1)ペロブスカイト構造を有し、直方体形状または直方体類似形状Wをもち、BET法により測定された比表面積が3.2m/g以下である。
(2)粒子内部に空孔を含む粒子の割合が0.2%以下である。
(3)走査型電子顕微鏡により観察された像より求められた粒子の累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90、としたとき(D90-D10)/D50が2以下である。
【0073】
<セラミック電子部品>
上記のようにして得られたチタン酸バリウム粉末は、セラミック電子部品の一部を構成する誘電体層を形成する誘電体磁器組成物の誘電体材料として好適に用いられる。本実施形態に係るチタン酸バリウムの製造方法を用いて得られたチタン酸バリウム粉末を用いて得られた誘電体磁器組成物を誘電体層として適用したセラミック電子部品の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、セラミック電子部品として積層型のセラミックコンデンサを用いた場合について説明する。
【0074】
図5は、セラミックコンデンサの一実施形態を模式的に示す概念断面図である。図5に示すように、セラミックコンデンサ30は、コンデンサ素子本体31と、コンデンサ素子本体31の両端部に各々形成された一対の端子電極(外部電極)32とを含む。コンデンサ素子本体31は、両端面並びに、上面と下面と両側面とを含む四方側面を有する直方体形状に形成される。コンデンサ素子本体31の大きさも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とする。なお、図5中、コンデンサ素子本体31の幅方向をXとし、厚さ方向をYとする。
【0075】
コンデンサ素子本体31は、複数の誘電体層33と、複数(例えば100層程度)の内部電極34とを有している。コンデンサ素子本体31は、複数の誘電体層33と複数の内部電極34とを交互に積層して形成されている。コンデンサ素子本体31は、セラミックグリーンシート(未焼成セラミックシート)を複数枚積層し、セラミックグリーンシートの間に内部電極34となる所定パターンの導電性ペーストを含む積層体を加熱圧着して一体化して、切断し、脱脂し、焼成することにより得られる直方体状の焼結体である。誘電体層33と内部電極34との積層方向は、コンデンサ素子本体31の厚さ方向Yである。コンデンサ素子本体31は、両端面並びに、上面と下面と両側面とを含む四方側面を有する直方体形状に形成されている。なお、説明の都合上、図1では、誘電体層33および内部電極34の積層数を視認できる程度の数としているが、所望の電気特性に応じて、誘電体層33および内部電極34の積層数を適宜変更してもよい。積層数は、例えば、誘電体層33および内部電極34を、各々数十層としてもよく、100層から500層程度としてもよい。また、実際のコンデンサ素子本体31は、誘電体層33の層間を視認できない程度に一体化されていてもよい。
【0076】
誘電体層33は、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の製造方法で製造されたチタン酸バリウムを含む誘電体磁器組成物で構成される。誘電体層33は、誘電体磁器組成物からなるセラミックグリーンシートを焼成して得られるものである。誘電体磁器組成物は、本実施形態に係るチタン酸バリウムの製造方法で製造され、結晶性および異方性が高く、ナノメートルオーダーの粒子径を持ち、シャープな粒度分布を有するため、高温負荷寿命であり、高い誘電率を有する。また、誘電体磁器組成物は、副成分を含んでもよい。副成分としては、Mn、Cr、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、NbおよびR(RはYなどの希土類元素の1種以上)の酸化物並びに焼成により酸化物になる化合物などが挙げられ、これらを一種類以上含有していてもよい。
【0077】
内部電極34は、一端がコンデンサ素子本体31の端面36a、36bの何れかから露出し、一方の外部電極32に接続され、他端は外部電極32と絶縁されている。対向する一対の外部電極32に各々接続している内部電極34同士が誘電体層33を介して交互に対向し、所定間隔を持って複数積層されている。
【0078】
内部電極34を構成する材料としては、積層型のセラミック電子部品の内部電極として通常用いられる導電性材料であれば用いることができ、例えば、Pd、Ag、Ni、これらの合金などを主成分とする導電性材料を含んだものなどが用いられる。
【0079】
外部電極32は、コンデンサ素子本体31の端面36a、36bと、上面37a、下面37bの一部を覆うように設けられている。外部電極12は、コンデンサ素子本体31の端面36a、36bで内部電極34と接続し、コンデンサ回路を構成している。外部電極12は、電子部品の外部電極として通常用いられる導電性材料であれば用いることができ、例えば、Ni、Pd、Ag、Au、Cu、Pt、Sn、Rh、Ru、Irなどの少なくとも1種またはそれらの合金を用いることができる。外部電極32は、外部電極12に含まれる導電性材料を含有する導電性ペーストをコンデンサ素子本体31の端面36a、36bに塗布して焼き付けることによって形成されている。また、外部電極32は、複数の金属電極層で構成されていてもよく、例えば、Cuめっき層を下地電極に、Niめっき層、Snめっき層を形成するようにしてもよい。
【0080】
セラミックコンデンサ30は、以下のようにして製造される。まず、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を含む誘電体ペーストと、内部電極層用ペーストとを用いて、焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とを形成する。続いて、焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とが積層されたグリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素子本体31に、外部電極32を形成して、セラミックコンデンサ30が製造される。
【0081】
このようにして製造されたセラミックコンデンサ30は、本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を用いて製造されるため、一般的なチタン酸バリウム粉末を用いて製造されたものに比べ、より高い高温負荷寿命を有すると共に、より高い比誘電率を有することから、信頼性の高い電子部品を提供することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【実施例】
【0083】
以下、本実施形態に係る発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本実施形態に係る発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
<チタン酸バリウム粉末の作製>
[実施例1〜7]
下記原料を用いて上述の図1に示すような本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末の作製方法を用いてチタン酸バリウム粉末を作製した。
(チタン水溶液)
塩化チタン水溶液(商品名「化学用 塩化チタン(IV)溶液」、和光純薬社製、16.5質量%[Ti換算重量%])を用いた。
(キレート剤水溶液)
イオン交換水600gにクエン酸1水和物740gを溶解させて作製した。
(バリウム塩粉末)
イオン交換水に酢酸バリウム(商品名「酢酸バリウム」、チカモチ製薬社製)を溶解させて40重量%の酢酸バリウム水溶液を作製した。
(チタン/キレート剤水溶液)
上記キレート剤水溶液にチタン水溶液750gを混合し、作製した。
【0085】
(チタン/キレート剤水溶液へのBa塩水溶液の滴下)
上記チタン/キレート剤水溶液へバリウム塩水溶液を滴下した。滴下量は各実施例によってBa/Tiモル比で3、5、10になるようにし、滴下速度は200g/時間で行った。また、Ba塩水溶液の滴下は、チタン/キレート剤水溶液を250rpmの回転数で撹拌しながら行った。
【0086】
(チタン/キレート/バリウムスラリーのpH調整)
チタン/キレート/バリウムスラリーは、塩酸でpHを調整した。目的pHは各実施例によって2.5、3、3.5、4になるようにした。pH調整後3時間撹拌し水酸化チタンゲルを安定化した。
【0087】
(スプレードライ乾燥)
上記スラリーをビュッヒのB−290スプレードライヤーを用いてスプレー乾燥させた。スプレー乾燥条件は入り口温度220℃、出口温度110℃〜130℃の条件で行った。原料水溶液の供給速度はスプレーのコーン状態がきれいな円錐状になるように、ガス供給量と原料水溶液の供給量を調節しながら行った。乾燥粉の粒子径はおおよそ100μm以下になる条件であった。
【0088】
(熱処理(仮焼))
熱処理は、大気中雰囲気において、熱処理温度は800℃〜1200℃の範囲、昇温速度はΔ300℃/時間で、保持時間は3時間で行った。
【0089】
(余剰バリウムの洗浄)
余剰バリウムの溶解は、仮焼粉をイオン交換水に30質量%になるように懸濁させ強撹拌しているものに、pHを測定しながら酢酸を滴下した。余剰バリウムが溶解している段階では、酸を滴下しても、即座に中性領域のpHになるが、余剰バリウムが溶解すると、pHが4から5の弱酸領域で飽和する。そこを洗浄の終点と規定した。pHが飽和した段階で3時間撹拌し、pHの変化が無いことを確認した。
【0090】
(固液分離工程)
上記洗浄後スラリーを吸引ろ過で固液分離した後、130℃で2時間乾燥させ、目的の粉末を得た。
【0091】
(比較例1)
熱処理温度を1250℃とした以外は、上述の実施例1〜7と同様の操作でチタン酸バリウム粉末を合成した。
【0092】
(比較例2)
熱処理温度を700℃とした以外は、上述の実施例1〜7と同様の操作でチタン酸バリウム粉末を合成した。
【0093】
(比較例3)
Ba/Tiモル比を2とした以外は、上述の実施例1〜7と同様の操作で熱処理温度を800℃としチタン酸バリウム粉末を合成した。
【0094】
(比較例4)
チタン/キレート/バリウムスラリーのpHを1.5とした以外は、上述の実施例1〜7と同様の操作で熱処理温度を800℃としチタン酸バリウム粉末を合成した。
【0095】
(比較例5)
チタン/キレート/バリウムスラリーのpHを5とした以外は、上述の実施例1〜7と同様の操作で熱処理温度を800℃としチタン酸バリウム粉末を合成した。
【0096】
(比較例6)
一般的な固相反応を用いた合成法によりチタン酸バリウム粒子を合成した。
【0097】
(比較例7)
一般的な水熱反応を用いた合成法によりチタン酸バリウム粒子を合成した。
【0098】
上記実施例および比較例のBa/Tiモル比、チタン/キレート/バリウムスラリーのpH、熱処理温度を表1に示す。
【0099】
<評価>
得られたチタン酸バリウム粉末を用いて、BET比表面積評価法(BET法)によりチタン酸バリウム粉末の被表面積と粒子径を測定した。また、X線回折測定(X-Ray Diffraction:XRD)を行い、測定により得られたX線回折強度からリートベルト法(Rietveld法、リートフェルト法)により解析し、c/aおよび炭酸バリウム量を測定した。また、SEMによりチタン酸バリウム粉末を観察し、チタン酸バリウム粉末の粒子径を測定し、D50の粒子径と粒度分布((D90−D10)/D50)を測定した。また、レーザ回折・散乱法を用いて、2次粒子径d[MT]50を測定した。また、蛍光X線元素分析法(X-ray Fluorescence Analysis:XRF)によりBa/Ti比を測定した。また、HAADF−STEM法を用いて、粒子内空孔を測定した。また、TEMを用いてチタン酸バリウム粉末の電子線回折像から結晶性を評価した。
【0100】
(比表面積)
比表面積は、BET法により測定した。本実施例では、粒子径と結晶性および異方性とを考慮して、3.3m/gより小さいものを良好とした。
【0101】
(平均粒子径D[SSA]50)
平均粒子径D[SSA]50は、比表面積より(1)式を用いて算出した。
【0102】
(c/a、炭酸バリウム量)
c/a、炭酸バリウム量は、X線回折測定(X-Ray Diffraction:XRD)を行い、測定により得られたX線回折強度からリートベルト法(Rietveld法、リートフェルト法)により解析し、求めた。
【0103】
(X線回折)
X線回折は、X線源としてCu−Kα線を用い、その測定条件は、電圧45kV、電流40mAで、2θ=20°〜130°の範囲を、走査速度0.08°/秒とし測定した。
【0104】
測定により得られたX線回折強度よりリートベルト解析を行い、c/aおよび炭酸バリウム量を評価した。本実施例では、粒子径と結晶性および異方性とを考慮して、c/aは1.008以上を良好とし、炭酸バリウム量は1質量%以下を良好とした。
【0105】
(粒度分布:(D90−D10)/D50)
得られた粉末を構成する一次粒子についてSEM観察を行い、500個の粒子について観察し、その粒子径を測定した。そして、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50および累積個数が90%となる粒子径をD90とした。得られたD10、D50およびD90から、(D90−D10)/D50を算出した。本実施例では、(D90−D10)/D50は2以下を良好とした。
【0106】
(分散性評価:d[MT]50/D[SSA]50)
(2次粒子径の測定)
得られたチタン酸バリウム粉末0.05gをヘキサメタリン酸ナトリウム10質量%水溶液10gを添加したイオン交換水50gに分散し、マイクロトラック社製MT3300を用いてレーザ回折・散乱法により体積基準粒子径分布を測定し、累積体積が50%となる粒子径を2次粒子径d[MT]50とした。
【0107】
(d[MT]50/D[SSA]50の算出)
比表面積よりもとめた平均粒子径D[SSA]50と上記2次粒子径d[MT]50を用い、その比d[MT]50/D[SSA]50を算出し、分散性の指標とした。d[MT]50/D[SSA]50が1に近いほど凝集力が弱い、すなわち分散性がよいといえる。本実施例ではd[MT]50/D[SSA]50は1〜3を良好とした。
【0108】
(空孔を有する粒子の割合(%))
チタン酸バリウム粒子が内部に空孔を有する割合の評価は、HAADF−STEM法(high-angle annular dark-field scanning transmission electron microscopy)を用いてチタン酸バリウム粒子の粒子内部のコントラスト像を観察することにより行った。
【0109】
(単結晶性評価)
本実施形態に係るチタン酸バリウム粉末を構成するチタン酸バリウム粒子が単結晶であることは、透過電子顕微鏡による、電子線回折像より確認された。
【0110】
上記実施例および比較例により得られたチタン酸バリウム粉末の比表面積、平均粒子径D[SSA]50、c/a、炭酸バリウム量、累積個数が50%となる粒子径D50、粒度分布((D90−D10)/D50)、2次粒子の分散性d[MT]50/D[SSA]50、Ba/Ti比、空孔を有する粒子の割合の測定結果を表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
図6は、本発明の実施例に係る試料を、熱処理した後の混合物から余剰Baを除去したチタン酸バリウム粉末のXRD結果を示す図である。図6に示すように、熱処理後の混合物を溶解して得られたチタン酸バリウム粉末には、異相がほとんど含まれておらず、熱処理後の混合物から余剰Baが除去されていることが確認できた。
【0113】
図7は、熱処理後の混合物から余剰Baを除去した試料のFE−SEM写真であり、本発明の実施例に係るチタン酸バリウム粉末のFE−SEM写真である。図7に示すように、本発明に係る方法により製造されたチタン酸バリウム粉末は、直方体形状もしくは直方体類似形状の結晶であり結晶性の良さが確認され、かつ粒子径のバラツキが少ないことが確認された。
【0114】
図8は、本発明の実施例に係るチタン酸バリウム粉末のTEM格子像である。図8に示すように、本発明の実施例に係る方法により製造されたチタン酸バリウム粉末は高い結晶性を有することが確認された。
【0115】
図9は、本発明の比較例に係るチタン酸バリウム粉末のFE−SEM写真である。図9に示すように、本発明の比較例に係る方法により製造されたチタン酸バリウム粉末は、形状が不均一であり、粒子径のバラツキが大きいことが確認された。
【0116】
図10は、本発明の実施例に係るチタン酸バリウムの代表的な粒子のSTEM HAADF法によるコントラスト像である。図10に示すように、本発明に係る方法により製造されたチタン酸バリウム粉末は粒子内ポアがないことが確認された。
【0117】
図11は、本発明の実施例に係るチタン酸バリウムの代表的な粒子の電子線回折像である。図11に示すように、本発明に係る方法により製造されたチタン酸バリウム粉末は結晶性が良好であったことが確認された。
【0118】
よって、本発明の実施例に係る方法により製造されたチタン酸バリウム粉末は、角状の結晶であり、結晶性が良く、粒子径のバラツキも少なく、粒子内にポアもなく、結晶性も良好であるといえる。
【0119】
表1に示すように、比較例1で得られた粉体の粒度分布(D90−D10)/D50は3.5であった。また、比較例2で得られた粉体の粒子径D50は0.16μmであった。また、比較例3で得られた粉体の分散性d[MT]50/D[SSA]50は4であった。また、比較例4で得られた粉体の粒度分布(D90−D10)/D50は4であった。また、比較例5で得られた粉体の比表面積は3.7m2/gであり、大部分は不定形の粒子で構成されていた。よって、比較例1−5により合成された粉体では、不均一な粒子形状、小さすぎる粒子径、広い粒度分布、低い分散性などセラミック電子部品用粉体として不適当な部分を有するといえる。また、比較例6で得られた粉体の粒度分布(D90−D10)/D50は5以上であった。また、比較例7で得られた粉体の空孔を有する粒子の割合は80%であった。これに対し、実施例1〜7に基づき合成された試料においては、比表面積評価、c/a、炭酸バリウム量、(D90−D10)/D50、d[MT]50/D[SSA]50および粒子の形状は、いずれも良好であった。よって、実施例1〜7に基づき合成されたチタン酸バリウム粉末は、比較例6、7のように従来技術で得られる粉体と比してセラミック電子部品に供するに好適なものとなっていることが判明した。また、比較例7のように水熱合成法で作製された粒子にくらべ粒子内空孔の存在割合が明らかに低かった。よって、実施例1〜7に基づき合成されたチタン酸バリウム粉末は、例えば積層セラミック電子部品などのセラミック電子部品に供するに好適である。
【0120】
したがって、本実施形態によるチタン酸バリウムは、均質な粒子形状、低欠陥高結晶、高分散性、低粒子内空孔であり、かつ極微細粒子を含まない狭粒度分布であるチタン酸バリウム粉末(誘電体粒子)であるため、このチタン酸バリウム粉末を用いることにより、従来より高特性、高信頼性な積層セラミック電子部品を市場に供することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
11 水
12 バリウムイオン
13 チタンイオン
14 クエン酸
15 バリウム塩粒子
16 酸化チタン粒子
17 乾燥粉(混合物)
18 熱処理粉
19 チタン酸バリウム(BaTiO3)粒子
20 酸化バリウム(一部炭酸バリウム)
30 セラミックコンデンサ
31 コンデンサ素子本体
32 端子電極(外部電極)
33 誘電体層
34 内部電極
36a、36b 端面
37a 上面
37b 下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト構造を有し、直方体形状または直方体類似形状を有し、BET法により測定された比表面積が3.2m/g以下であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末。
【請求項2】
粒子の累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたとき、(D90−D10)/D50が2以下であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム粉末。
【請求項3】
粒子内部に空孔を含む粒子の割合が0.2%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のチタン酸バリウム粉末。
【請求項4】
Ti原料を含むチタン水溶液にキレート剤を添加して混合水溶液を作製する混合水溶液作製工程と、
得られた混合水溶液にバリウム塩を添加してゲル化してチタン/クエン酸/バリウムスラリーを作製し、チタン/クエン酸/バリウムスラリー中のバリウムとチタンとの混合比を3以上10以下とするゲル化工程と、
得られたチタン/バリウム/キレートスラリーを均一に乾燥させる乾燥工程と、
乾燥して得られた乾燥粉を800℃以上1000℃以下で熱処理する熱処理工程と、
熱処理して得られた熱処理粉の余剰バリウムを酸で溶解する溶解工程と、
を含むことを特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載されるチタン酸バリウム粉末を含むことを特徴とするセラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−211058(P2012−211058A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78355(P2011−78355)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】