説明

チップボンダ

【課題】電子部品片と相手側部材の超音波溶着を、簡単な構造で、且つ高速に行えるチップボンダを提供する。
【解決手段】中心軸を回転軸とするターレット10と、ターレット駆動モータ20と、ターレット10の周方向に複数設けられ、吸着ノズル33が設けられる超音波ホーン32と、超音波ホーン32を支持するホーン支持部材34と、ホーン支持部材34を上下方向に摺動可能に支持するケース31を備え、吸着ノズル33により電子部品片300を吸着するとともに、超音波ホーン32の超音波振動により電子部品片300と相手側部材を溶着する部品保持ユニット30と、部品保持ユニット30をターレット10に対して相対的に移動するように案内する部品保持ユニット案内装置50と、部品保持ユニット案内装置50に案内される部品保持ユニット30を押圧することによって、部品保持ユニット30を下方向に移動させる部品保持ユニット駆動装置80を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品片を相手側となる電子部品に超音波溶着するチップボンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品片(例えば、Si基板を利用したICチップ、水晶振動子、水晶・リチウムタンタレート・ニオブ酸リチウムなどの素材を利用したSAWフィルターやSAW振動子など)を相手側となる電子部品(例えば、基板)に溶着する装置として、超音波振動を用いて溶着する装置(例えば、超音波フリップチップボンダ)が一般的に用いられている。近年、電子部品の大量生産によるコストダウンを図るため、短時間で電子部品を溶着できる高速動作可能な超音波フリップチップボンダが検討されている。一般的に、超音波フリップチップボンダにおいて高速動作を実現する為に、例えば、ICチップを基板まで搬送して超音波溶着するロボットアームを複数台備えるようにし、ICチップの基板への搬送と溶着を交互に行うようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した高速動作可能な超音波フリップチップボンダは、超音波を発生させる搭載ヘッドが大型化しやすく、更に、この搭載ヘッドを高速で動作するロボットアームを複数台備える必要があり、装置自体の構造が複雑で大型化してしまうとともに、装置の製造コストが増大するという問題があった。
【0004】
また、複数台のロボットアームを高速、且つ高精度に制御しなければならないため、複雑な制御プログラムが必要になるとともに、その制御プログラムを高速で処理するための高性能な制御装置が必要になるという問題があった。
【0005】
また、搭載ヘッドに設けられる超音波ホーンは、ICチップを吸着して基板に搬送し、超音波を印加してICチップを基板に溶着させる。従って、ホーンの先端が傷みやすいので、定期的に交換したり、砥石によってホーン先端を定期的に研磨する必要があった。メンテナンスを行っている間は、ロボットアームを停止させなければならないため、搭載のサイクルタイムが大幅に悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、電子部品片と相手側部材の超音波溶着を、簡単な構造で、且つ高速に行えるチップボンダを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0008】
即ち、上記目的を達成する本発明は、中心軸を回転軸として回転可能に支持されるターレットと、出力軸に前記ターレットが接続されるターレット駆動モータと、前記ターレットの周方向に複数設けられて、電子部品片を保持し、該電子部品片を相手側部材に溶着する部品保持ユニットと、前記ターレットと前記部品保持ユニットの間に設けられて、前記部品保持ユニットを前記ターレットに対して上下方向に移動自在に案内する部品保持ユニット案内装置と、前記部品保持ユニットの上側に設けられ、前記部品保持ユニットを押圧することによって、該部品保持ユニットを下方向に移動させる部品保持ユニット駆動装置と、を備え、前記部品保持ユニットは、前記電子部品片を吸着する吸着ノズルが設けられる超音波ホーンと、前記超音波ホーンを超音波振動可能に支持するホーン支持部材と、前記ホーン支持部材を上下方向に摺動可能に支持するケースと、を備えることを特徴とするチップボンダである。
【0009】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記部品保持ユニット駆動装置は、第1押下装置及び第2押下装置を備え、前記第1押下装置は、前記部品保持ユニット全体を、前記ターレットに対して下方向に押し下げるようにし、前記第2押下装置は、前記吸着ノズルを、前記部品保持ユニットの前記ケースに対して下方向に押し下げることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記部品保持ユニット駆動装置は、前記ターレットから独立した状態で設けられ、少なくとも電子部品片供給装置から前記電子部品片が供給される位置上及び前記電子部品片を前記相手側部材に溶着する位置上に固定配置されることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するチップボンダは、 前記超音波ホーンを回転させるホーン回転装置を備え、前記ホーン回転装置は、前記部品保持ユニットの前記ホーン支持部材に設けられる係合部と係合するホーン回転用スライダと、前記ホーン回転用スライダの一方の面に当接して、該ホーン回転用スライダのスライド自在に支持するスライダ支持装置と、該ホーン回転用スライダの他方の面に当接して、該ホーン回転用スライダを移動させるスライダ移動装置と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記部品保持ユニットは、前記ホーン支持部材を上方に付勢するホーン付勢装置と、前記ホーン支持部材の上下方向の位置を検出するホーン位置検出装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記ホーン付勢装置は、前記ホーン支持部材側に固定配置されるホーン側マグネットと、前記ホーン側マグネットと対向して、前記ケース側に固定配置されるケース側マグネットと、を備え、前記ホーン側マグネット及び前記ケース側マグネットは、相互に吸着又は反発することで、前記ホーン支持部材を上方に付勢することを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成する、チップボンダは、前記部品保持ユニット駆動装置は、前記吸着ノズルに吸着保持されている前記電子部品片が前記相手側部材に当接することよって変化した前記ホーン側マグネットと前記ケース側マグネットの磁力を、前記ホーン位置検出装置が検出したことを契機として、前記第1押下装置の押下動作を停止させることを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記ホーン位置検出装置は、前記ホーン側マグネット又は前記ケース側マグネットに近接して、前記ケースに固定配置されるホール素子を備え、前記ホール素子は、該ホーン側マグネット又は前記ケース側マグネットの磁力の変化量を検出し、該検出した磁力の変化量を電気信号に変換することを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記部品保持ユニット駆動装置は、前記ホーン位置検出装置の検出信号に基づいて、前記第1押圧装置の押下動作を停止すると共に、前記第2押下装置の押下動作を開始して、前記吸着ノズルに任意の押圧力を与えることを特徴とする。
【0017】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記スライダ支持装置は、前記ホーン回転用スライダに当接するベアリングと、前記ベアリングを前記ホーン回転用スライダに押しつける押圧装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記押圧装置は、前記ベアリングの回転軸の周囲に設けられ、前記ベアリングの前記回転軸を前記ホーン回転用スライダ方向に付勢する板ばねを備えることを特徴とする。
【0019】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記スライダ移動装置は、前記ホーン回転用スライダに当接する凸部を有する圧電素子を備えて構成され、前記圧電素子に電圧を加えることで変形させて、前記凸部を円軌道で移動させることで、前記ホーン回転用スライダを任意の距離だけスライドさせることを特徴とする。
【0020】
なお、上記目的を達成するチップボンダの前記ホーン回転用スライダは、前記スライダ支持装置に挟持される被挟持部と、前記スライダ移動装置の前記凸部と当接する当接部を有することが好ましい。
【0021】
また、上記目的を達成するチップボンダの前記超音波ホーンは、該超音波ホーンの振動方向が前記ターレットの径方向となるように設けられていることを特徴とする。
【0022】
また、上記目的を達成するチップボンダは、前記ターレットによる前記部品保持ユニットの移動軌跡上に、前記超音波ホーンの先端を研磨する研磨装置が配置されることを特徴とする。
また、上記目的を達成するチップボンダの前記部品保持ユニット駆動装置は、前記部品保持ユニットの真上に対して前記ターレットの半径方向にオフセットされた状態で配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電子部品片と相手側部材の超音波溶着を、簡単な構造で、且つ高速に行えるチップボンダを提供できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るチップボンダの全体構造を示す正面図である。
【図2A】同チップボンダの全体構造を示す側面図である。
【図2B】同チップボンダの(a)平面図、及び(b)ターレットの開放状態を示す図である。
【図3】(a)(b)同チップボンダの部品保持ユニットを側面から見た断面図、及び部品保持ユニット駆動装置並びに部品保持ユニット案内装置の側面図である。
【図4】(a)超音波ホーンの側面図であり、(b)超音波ホーンの下面図であり、(c)超音波ホーンの振動状態を示す下面図である。
【図5】(a)は、図3(a)における矢印I方向から見たホーン回転装置の平面図であり、(b)同ホーン回転装置の右側面図であり、(c)は、図5(a)における矢視II−II方向から見た同ホーン回転装置の正面図である。
【図6】スライダ移動装置の圧電素子によってホーン回転用スライダを移動させる状態を示す図である。
【図7】部品保持ユニットにおける、マグネットを利用したホーン保持部材の位置検出方法を示す図である。
【図8】(a)〜(d)本実施形態に係るチップボンダ、電子部品片供給装置及び基板供給装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1及び図2Aは、本発明の実施形態に係るチップボンダ1の全体構造を示す正面図である。
【0027】
チップボンダ1は、ターレット10と、ターレット駆動モータ20と、部品保持ユニット30と、ホーン回転装置40と、部品保持ユニット案内装置50と、部品保持ユニット駆動装置80と、部品保持ユニット駆動装置80及びターレット駆動モータ20が配置される駆動装置基台90と、この駆動装置基台90が保持される脚部95を備えて構成される。なお、駆動装置基台90は、自身に配置される部品保持ユニット駆動装置80が、部品保持ユニット30の吸着ノズル33により電子部品片300を吸着する供給位置U、吸着された電子部品片300を基板400に溶着する溶着位置Wの上側に配設される。駆動装置基台90は、その他の位置(例えば、溶着不良の電子部品片300と基板400を不良品トレイに振り落とす位置)に配設されていても好ましい。
【0028】
また、トレイ100に載置された電子部品片300は、XーYテーブルから構成される電子部品片供給装置120によりXーY方向(紙面の左右及び手前奥方向)に移動され、所定の供給位置Uに供給される。また、電子部品片300の供給位置Uへの供給は、上方に配置される供給位置確認カメラ92で撮影した電子部品片300の画像データに基づいて、主制御部(図示省略)が電子部品片供給装置120をXーY方向に移動することにより行われる。
【0029】
また、チップボンダ1を挟んで、電子部品片供給装置120と略反対側(ターレット10の回転移動経路に沿って180度の位相差を有する場所)には、基板400が載置されたトレイ200をXーY方向に移動させる基板供給装置220が設けられている。基板供給装置220は、トレイ200の載置された基板400を溶着位置Wに供給する。また、基板400の溶着位置Wへの供給は、上方に配置される溶着位置確認カメラ94で撮影した基板400の画像データに基づいて、主制御部(図示省略)が基板供給装置220をXーY方向に移動することにより行われる。
【0030】
また、部品保持ユニット30の回転移動経路上の供給位置Uと溶着位置Wの途中(ここでは供給位置Uから90度の位相差を有する場所)に、下側から部品保持ユニット30を撮影する吸着位置確認カメラ93が設けられている。吸着位置確認カメラ93は、吸着ノズル33に吸着保持された電子部品片300の角度を撮影して、撮影した画像データを主制御部に送信する。そして、主制御部は、その画像データに基づいて、ホーン回転装置40を動作させて、電子部品片300が所定の角度になるように吸着ノズル33を回転制御する。吸着ノズル33により吸着保持された電子部品片300の吸着状態(角度)を確認する位置を、ここでは吸着状態確認位置Vと言う
【0031】
また更に、部品保持ユニット30の回転移動経路上の溶着位置Wと供給位置Uの途中(ここでは溶着位置Wから90度の位相差を有する場所)に、研磨装置98が設けられている。研磨装置98は、吸着ノズル33の先端が当接することで、この先端を自動的に研磨する。従って、部品保持ユニット30が、溶着位置Wや供給位置Uで、供給作業や溶着作業を行っている間に、他の部品保持ユニット30の吸着ノズル33のメンテナンスを行うことが可能となる。なお、この研磨装置98によって吸着ノズル33を研磨する位置を、ここでは研磨位置Tと言う。
【0032】
上記のように、チップボンダ1は、ターレット10を回転することにより、部品保持ユニット30に設けられた吸着ノズル33を供給位置U、吸着状態確認位置V、溶着位置W、研磨位置Tの順番に搬送することができるようになっている。なお、ここでは部品保持ユニット30がターレット10の周囲に90度間隔で4箇所に配置される場合を示しているので、この供給位置U、吸着状態確認位置V、溶着位置W、研磨位置Tの各位相差が90度に設定されるが、例えば図8で後述するように部品保持ユニット30がターレット10の周囲に60度間隔で6箇所に配置される場合は、供給位置U、吸着状態確認位置V、溶着位置W、研磨位置Tについても、60度の位相差の倍数となる場所に設定する必要がある。
【0033】
ターレット10は、円盤形状、又は5角形又は6角形等の多角形形状の円板状部材である。ターレット10は、自身の中心軸を回転軸として、ターレット駆動モーター20に回転可能に同軸状態で支持されている。この結果、ターレット10は、ターレット駆動モータ20の回転に連動して回転するようになっている。なお、ターレット駆動モータ20の出力軸は、ここではターレット10に直接接続されているが、減速ギアなどを介して間接接続されていても好ましい。また、ターレット10は、上述した形状に限定されるものではなく、例えば、円筒の外周面から外側に向かって放射状に突出するように形成された複数の凸部(アーム)を有する星型又はヒトデ型等であっても好ましい。
【0034】
ターレット駆動モータ20は、DDモータ(ダイレクト・ドライブ・モータ)を用いており、ターレット10の回転方向の位置決めを高い角度精度で行えるようになっている。なお、ターレット駆動モータ20は、DDモータに限定されるものではなく、DCモータやステッピングモータ等であっても好ましい。つまり、ターレット駆動モータ20は、固定側(ステータ)と回転側(ロータ)を有し、どちらか1方が回転変化する磁界を発生し、その磁界変化によってロータに駆動力を与えることによって、ロータが回転するものであれば、その他の装置でも良い。なお、自身で出力軸の回転量を検出できないモータ(例えば、DCモータ)を用いる場合、出力軸の回転角度を検出するための回転角度検出装置(例えば、ロータリーエンコーダ等)を設け、モータの回転角度を高精度に検出して制御できるようにすることが望ましい。
【0035】
図2B(a)に示されるように、このターレット駆動モータ20は、上方の駆動装置基台90に固定されている。従って、ターレット10は、ターレット駆動モータ20を介して駆動装置基台90に保持されていると考えることも出来る。この駆動装置基台90は、更に脚部95によって揺動自在に保持されている。従って、ターレット10をメンテナンスする際は、図2B(b)に示されるように、脚部95に対して駆動装置基台90を上方に揺動させることで、ターレット10の全体を上方に開放することが可能となっている。
【0036】
図2B(a)に示されるように、部品保持ユニット30は、ターレッ10の周方向に等間隔で複数(ここでは4個)設けられるとともに、下側には吸着ノズル33を有する超音波ホーン32を備えている。なお、この部品ユニット30は、ターレット10の外周において、半径方向外側に突出するように配置されている。このようにすることで、複数の部品保持ユニット30の周方向の間に空間Sを確保できる。従って、供給位置Uの上方に配置される供給位置確認カメラ92は、部品保持ユニット30が存在しないタイミングを見計らって、空間Sを介して電子部品片供給装置120を上方から撮像して、電子部品片300の位置決めを行うようにしている。同様に。溶着位置Wの上方に配置される溶着位置確認カメラ94は、部品保持ユニット30が存在しないタイミングを見計らって、空間Sを介して基板400を撮像し、所定の場所に電子部品片300を溶着するようになっている。
【0037】
このチップボンダ1は、ターレット10を任意の角度だけ回転させることで、所定の部品保持ユニット30の吸着ノズル33を任意の位置に移動させる。また、部品保持ユニット30は、移動先の任意の位置(例えば、供給位置U又は溶着位置W)で、超音波ホーン32の吸着ノズル33で電子部品片300を吸着保持したり、超音波ホーン32の超音波振動により、吸着保持した電子部品片300を基板400を超音波溶着したりできる。吸着ノズル33は、内部に吸入経路33Aが形成されており、特に図示しない真空ポンプと接続されている。真空ポンプは、吸入経路33Aを介して吸着ノズル33の先端に負圧を発生させる。これにより、吸着ノズル33が電子部品片33Aを吸着する。
【0038】
詳細に、部品保持ユニット30は、図3に示されるように、ケース31と、超音波ホーン32と、ホーン支持部材34と、ホーン付勢装置36と、ホーン位置検出装置38を備えて構成される。超音波ホーン32は、超音波発振器(図示省略)により、60kHz帯、具体的には63kHz程度の周波数を有する電気信号を与えられ、機械的な振動エネルギーに変換できるようになっている。なお、超音波発振器から発生する電気信号の周波数は、溶着する電子部品片によって異なり、上記の周波数範囲に限定されるものではない。
【0039】
ケース31の内部の収容空間31Aには、後述するホーン支持部材34の軸部34C、ホーン付勢装置36、ホーン位置検出装置38が収容される。更に、ケース31には摺動通路31Bが形成されており、ホーン支持部材34の軸部34Cが、スライド可能に挿通される。なお、収容空間31Aと摺動通路31Bは連通して形成され、摺動通路31には、軸部34Cを上下方向に摺動可能、且つ軸中心に回転可能に支持する支持部材35が設けられている。本実施形態では支持部材35としてボールベアリングが用いられている。この支持部材35は、摺動通路31Bにおける上下2か所に設けられている。これによって、ホーン支持部材34は、ケース31に対し、上下方向及び回転方向のどちらにも可動できるようになっている。また、収容空間31Aの下側には、ケース側マグネット36Bをケース31に固定するためのケース側マグネット固定部31Dが設けられている。
【0040】
超音波ホーン32のホーン本体部32Xは、図4(a)及び(b)に示されるように、図3の矢印I方向(上下方向)から見て、概略直方体形状で、長手方向の中心部近傍が括れた形状になっている。また、超音波ホーン32は、括れている部分の略中心に吸着ノズル33が端面から下方向に突出形成されている。ホーン本体部32Xには、長手方向及び幅方向に対象の4箇所に薄板状の連結部32Bが形成され、更にこの連結部32Bには固定部32Aが形成される。この固定部32Aは、ホーン支持部材34のホーン取付部34Aに固定される。したがって、超音波ホーン32は、ホーン支持部材34のホーン取付部34Aに対して固定部32Aのみで接続されており、その他の部分では接触していない構造となっている。
【0041】
特にホーン本体部32Xは、薄板状の連結部32Bによって保持されるので、ホーン支持部材34への固定による振動減衰は殆どなく、入力される電気信号に基づく超音波振動を確実に行うことができる。例えば、超音波発生器から所定の周波数(例えば63kHz程度)の電気信号が超音波ホーン32に入力されると、ホーン本体部32Xは、図4(c)に示されるように、連結部32Bの弾性変形により同図の左右方向(矢印B、C方向)で、且つ吸着方向と垂直面内で連続的に振動する。なお、ホーン本体部32Xにおける連結部32Bが形成される位置は、振動モードにおいて最も振動(振幅)が少ない点が設定されている。
【0042】
また、本実施形態では、超音波ホーン32は、吸着ノズル33の近辺がくびれた形状になっており、更に、ターレット10の周方向と垂直方向に超音波振動するように配設されている。即ち、超音波ホーン32の長手方向が、ターレット10の半径方向に向くようにして配置される。このこの結果、吸着ノズル33におけるターレット10の周方向の前後に余裕空間が形成されるので、例えば、ターレット10の周方向に沿って、より多くの部品保持ユニット30を配置することも可能になる。また、既に述べたように、このターレット10の上方に配置される供給位置確認カメラ92や溶着位置確認カメラ94が撮像する際、超音波ホーン32が半径方向に延在すれば邪魔にならないで済む。即ち、供給位置確認カメラ92や溶着位置確認カメラ94、ターレット10によって周方向に移動する超音波ホーン32(部品保持ユニット30)が存在していない間に、そのトレイ100上の電子部品片300や基板400を画像認識する。
【0043】
図3に戻って、ホーン支持部材34は、上下方向断面が概略T字形状の棒状部材である。ホーン支持部材34の下端側(超音波ホーン側)には、上述した軸部34Cと連続して形成されるホーン取付部34Aが設けられ、ホーン支持部材34の上端側(第2押下装置70側)には、ターレット10の半径方向内側に向かって延在する拡張プレート34Dを備える。この拡張プレート34Dの上面が第2押下装置70に押下される受圧部34Bとなる。このように、半径方向に延在する拡張プレート34Dを配置することで、部品保持ユニット駆動装置80を半径方向にオフセットして配置することが可能となっている。また、受圧部34B(拡張プレート34D)の下側には、ホーン側マグネット固定部34Dが設けられ、ホーン付勢装置36のホーン側マグネット36Aが固定される。ホーン取付部34Aの外側面には、ホーン回転装置40と係合する概略L形状の係合部34Eが設けられている。
【0044】
ホーン付勢装置36は、ホーン側マグネット36Aと、このホーン側マグネット36Aよりも下側に配置されるケース側マグネット36Bを有して構成されている。ホーン側マグネット36Aは、環状に形成され、ホーン支持部材34の軸部34Cに挿通されるとともに、ホーン側マグネット固定部34Dに固定されている。ケース側マグネット36Bは、環状に形成され、ホーン支持部材34の軸部34Cに対して遊びを持った状態で挿通されるとともに、ケース31の収容空間31Aに形成されたケース側マグネット固定部31Cに固定されている。ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bは、同じ磁極が互いに対向(例えば、S極とS極又はN極とN極が対向)するように配置されている。ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bは互いに反発する。この反発力により、ホーン支持部材34は、ケース31に対して、上側に付勢されて磁気浮上する。
【0045】
なお、ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bが、互いに吸引するように異極同士が対向するように配置しても好ましい。この場合、ホーン側マグネット36Aがケース側マグネット36Bと吸着してしまわないように、マグネットの吸引力と略同等な力で、ホーン側マグネット36Aを上側に付勢する引っ張りバネ等の上側付勢部材(図示省略)を設けることが好ましい。例えば、引っ張りバネ等で構成された上側付勢部材の一端をホーン支持部材34の一部(例えば、ホーン側マグネット固定部34D)に固定し、上側付勢部材の他端をケース31の収容空間31Aの上側(収容空間31Aの天井部)に固定する。これにより、ホーン側マグネット36Aは、マグネットの磁力によりケース側マグネット36B側(下方向)に吸引されるとともに、上側付勢部材により略同等の力で、ケース側マグネット36Bから離反する方向(上方向)に引っ張られる。ホーン側マグネット36A及びケース側マグネット36Bによる吸引力と、上側付勢部材による引張り力が均衡する高さでホーン支持部材34が支持される。この場合、ホーン支持部材34の上下方向の位置は、上側付勢装置の付勢力(バネによる引張り力)を変えるだけで簡単に調整することができ、ホーン支持部材34とケース31に固定したマグネットを交換する労力を軽減することができる。
【0046】
次に、ホーン位置検出装置38は、ホーン側マグネット36A又はケース側マグネット36Bの磁界変化を検出して電気信号に変換することができる装置である。なお、本実施形態ではホーン位置検出装置38としてホール素子が用いられている。図3において、ホーン位置検出装置38は、ホーン側マグネット36Aに近接するように、ケース31の収容空間31Aの側壁に設けられている。図7に示されるように、ホーン側マグネット36Aは、上下方向にS極とN極が分極しており、磁界Bがホーン位置検出装置38側に作用するようになっている。ホーン位置検出装置(ホール素子)38は、水平方向の磁界Xの強度変化を検出する。従って、図7(b)のように、ホーン側マグネット36Aが上昇すると、ホーン位置検出装置38に作用する磁界Bの強さが変化するので、その位置変化を極めて素早く検出することができる。このように、ホーン位置検出装置38は、ホーン側マグネット36Aとの距離の変化に基づく磁界変動を検出して、その変化を電気信号に変換する。また、ホーン位置検出装置38は、電気信号を主制御部(図示省略)に送信する。主制御部は、ホーン位置検出装置38から受信した電気信号に基づいて、ケース31に対するホーン支持部材34の上下方向の高さ変動を検出できる。この結果、溶着時において、部品保持ユニット30全体を下降させて、電子部品片300が基板400に接触した瞬間を、極めて正確に検出することができる。
【0047】
次に、図5を用いてホーン回転装置40について説明する。同図(a)は、図3の矢印I方向から見たホーン回転装置40の平面図であり、同図(b)は、同ホーン回転装置40の右側面図であり、同図(c)は、図5(a)における矢視II−II方向から見た同ホーン回転装置40の正面図である。
【0048】
ホーン回転装置40は、ホーン支持部材34の係合部34Eと係合するホーン回転用スライダ42を左右(同図(a)の矢印D又はE方向)にスライドさせることによって、ホーン支持部材34を回転させる。この結果、吸着ノズル33を、吸着方向に対して垂直面内で回転(同図(a)の矢印F又はG方向)させることができる。ホーン回転装置40は、上述したホーン回転用スライダ42と、ホーン回転用スライダ42を一方からスライド自在に支持するスライダ支持装置44と、スライダ支持装置44と連動して、ホーン回転用スライダ42を吸着方向と垂直面内でスライドさせるスライダ移動装置46と、ホーン回転用スライダ42のスライド量を検出するスライダ位置検出装置48を有して構成されている。
【0049】
ホーン回転用スライダ42は概略Cリング形状の板部材である。ホーン回転用スライダ42は、支持面42Aと被駆動面42Bを有している。支持面42Aは、スライダ支持装置44におけるベアリング44Aと接触する部位となる。
【0050】
また、ホーン回転用スライダ42の被駆動面42Bは、スライダ移動装置46の圧電素子47に形成される凸部47Aと当接する。従って、ホーン回転用スライダ42は、ベアリング44Aと凸部47Aによって挟持されていることになる。この被駆動面42Bには砂目のシボ加工が施されており、凸部47Aとの摩擦抵抗が大きくしている。詳細は後述するが、圧電素子47の凸部47Aが、ホーン回転用スライダ42の被駆動面42Bを、両者間の摩擦抵抗によってスライドさせるようになっている。
【0051】
スライダ支持装置44は、ボールベアリングなどのベアリング44Aと、板ばね44Bと、押えネジ44Cと、板ばね固定台44Dと、軸台44Eと、保持軸44Fと、台座41を有して構成される。
【0052】
台座41は、方形の筒状に構成されており、内部にスライダ移動装置46の圧電素子47が収容される。この台座41には、2個の軸台44E、44Eが設けられている。この軸台44E、44Eには、保持軸44Fが離反可能な状態で保持される構造となっている。保持軸44Fにはベアリング44Aが設けられる。
【0053】
板ばね固定台44Dは、台座41の略中央に設けられる。板ばね44Bは、2本の押えネジ44C、44Cにより板ばね固定台44Dに固定される。板ばね44Bの弾性力によって、保持軸44Fが、軸台44E側に押さえ付けられる。
【0054】
詳細に、保持軸44Fは、軸台44Eに対して図5(c)の上下方向に移動可能に設けられている。板ばね44Bによって保持軸44Fを軸台44E側にに押さえ付けることによって、ベアリング44Aがホーン回転用スライダ42側に付勢される。この結果、ホーン回転用スライダ42は、スライダ移動装置46の凸部47Aとベアリング44Aで挟み込まれる。この結果、凸部47Aが移動しない限り、ホーン回転用スライダ42はスライドができない状態となる。なお、板ばね44B、押さえネジ44C、板ばね固定台44Dは、本発明の押圧装置を構成する。
【0055】
なお、本実施形態では、板ばね44Bによりベアリング44Aをホーン回転用スライダ42側に押さえ付けることによって、ホーン回転用スライダ42のスライドを規制する構造としたが、これに限定されるものではなく、他の手法を用いることも可能である。
【0056】
スライダ移動装置46は、台座41側に振動可能に支持される圧電素子47を備える。この圧電素子47は、詳細には一対の圧電素子片47Bが内蔵されており、各圧電素子片47Bに対して、相互に90度位相ずらした周期電圧を加えるようになっている。
【0057】
圧電素子47には、ホーン回転用スライダ42方向に突出する凸部47Aが設けられている。上述の2つの圧電素子片47Bに対して、90度の位相差を有する電圧を印加すると、図6に示されるように、この凸部47Aが楕円軌道に沿って高速で回転運動する。この回転方向は、適宜反転させることができる。この凸部47Aの楕円軌道を利用すれば、ホーン回転用スライダ42を図6の左右両方向に移動させることができる。
【0058】
なお、この凸部47Aの楕円軌道の活用手法は様々である。ここでは一つの凸部47Aの楕円軌道を利用して、ホーン回転用スライダ42を移動させる場合を示したが、2つの凸部の楕円軌道を利用して移動させることもできる。
【0059】
以上の結果、周期的に変化するプラス電圧又はマイナス電圧を圧電素子47に連続的に入力することで、ホーン回転用スライダ42をスライドさせて、吸着ノズル33を所定の角度だけ回転させることができる。
【0060】
なお、図5に示されるように、ホーン回転装置40は、マグネット48Aとホール素子48Bを有して構成されるスライダ位置検出装置48を備えている。図マグネット48Aはホーン回転用スライダ42側に設けられており、ホール素子48Bは台座41側に設けられている。マグネット48Aとホール素子48Bは対向しており、ホーン回転用スライダ42が左右方向に移動した場合、マグネット48Aとホール素子48Bの距離が変化してホール素子48B周囲の磁界も変動する。ホール素子48Bでは、この磁界変動を検出して電気信号に変換して主制御部(図示省略)に送信する。主制御部では、ホール素子48Bから受信した電気信号に基づいて、ホーン回転用スライダ42のスライド位置を検出する。主制御部は、検出した位置情報に基づいて、ホーン回転用スライダ42を左右方向に移動させるように制御する。なお、ホール素子49Bや圧電素子47を動作させるための電源や回路などは、台座41に固定されている基板ボックス49に内装されている。
【0061】
次に、図3に戻って、部品保持ユニット案内装置50は、ターレット10と部品保持ユニット30の間に設けられている。この部品保持ユニット案内装置50は、ターレット10外周において上下方向に配設されるレール52と、レール52に対してスライド可能に係合するスライド本体54と、このスライド本体54に固定されるテーブル56と、このテーブル56を常に上方に付勢する部品保持ユニット上方付勢装置58を有して構成される直動装置である。
【0062】
テーブル56は、L型の板状部材であり、L型の1面には、部品保持ユニット30のケース31が固定され、他の面には、第1押下装置60に押下げられる受圧部56Aが形成される。したがって、第1押下装置60の押圧部材68がテーブル56の受圧部56Aを押し下げると、テーブル56とともに部品保持ユニット30全体が下方向に案内される。
【0063】
部品保持ユニット上方付勢装置58は、このテーブル56をターレット10に対して、上方向に常に付勢する装置である。詳細に、部品保持ユニット上方付勢装置58は、ターレット10の上面に固定される外筒58Aと、ターレット10とテーブル56の間に配置される圧縮ばね58Cと、この圧縮ばね58Cを保持する軸部材58Bを有して構成されている。軸部材58Bの上端はテーブル56側に固定されており、同下端は、外筒58Aの内部にスライド可能に挿入される。また、圧縮ばね58Cは、一端ターレット10に当接され、他端はテーブル56に当接されて、圧縮状態で配設されている。したがって、圧縮ばね58Cは、テーブル56を上方向に付勢させる。これにより、部品保持ユニット30は、部品保持ユニット駆動装置80からの外力が付与されない限り、常に上方側で静止するようになっている。
【0064】
部品保持ユニット駆動装置80は、第1押下装置60、及び第2押下装置70を有して構成されている。なお、部品保持ユニット駆動装置80は、駆動装置基台90に搭載されている。この部品保持ユニット駆動装置80は、吸着位置Uと、溶着位置Wの上方において、半径方向にオフレットした状態でそれぞれ配置される。なお、本実施形態では、部品保持ユニット駆動装置80が半径方向内側にオフセット配置されることで、部品保持ユニット30の真上の空間が開放される。この結果、例えば、供給位置確認カメラ92の撮像方向に対して、部品保持ユニット駆動装置80が干渉することを回避できる。
【0065】
第1押下装置60は、モータ62と、カム64と、第2押下装置案内機構66と、押圧部材68を有して構成されている。
【0066】
第2押下装置案内機構66は、レール66Aと、スライド本体66Bと、テーブル66Cと、カム受け部材66Dを有して構成される直動装置である。レール66Aは、駆動装置基台90のレール取付部90Aに上下方向に設けられる。レール66Aには、スライド本体66Bがスライド可能に係合される。スライド本体66Bにはテーブル66Cが固定されている。また、テーブル66Cには、第2押下装置70、カム受け部材66D、及び押圧部材68が固定されている。
【0067】
カム64は、モータ62の出力軸62Aに固定された扁平のカムであり、1回転の任意の位置でカム受け部材66Dに当接して、カム受け部材66Dを押し下げる。したがって、第1押下装置60は、カム受け部材66Dを押し下げることで、テーブル66Cを押し下げる。
【0068】
押圧部材68は、テーブル66Cの下側に突出するように設けられた棒状部材である。この押圧部材68は、部品保持ユニット案内装置50のテーブル56に形成された受圧部56Aを押し下げる。したがって、押圧部材68は、テーブル56とともに部品保持ユニット30全体を押し下げることができる。
【0069】
第2押下装置70は、第1押下装置60のテーブル66Cに固定された基台76と、基台76に固定されるボイスコイルモータ74を有して構成される。ボイスコイルモータ74は、入力された電圧に応じて、予め設定されている圧力(付勢力)で、先端側に設けられた出力軸72を移動させることが出来る。ボイスコイルモータ74の出力軸72は、部品保持ユニット30に設けられたホーン支持部材34の受圧部34Bの上に配置されている。したがって、ボイスコイルモータ74は、出力軸72を下降することによって、ホーン支持部材34の拡張プレート34D(受圧部34B)を任意の力で押圧できるようになっている。なお既に述べたように、拡張プレート34Dは半径方向内側に拡張されているので、この結果、ボイスコイルモータ74を半径方向内側にオフセット配置することができる。
【0070】
図3(a)に示されるように、部品保持ユニット駆動装置80は、第1押圧装置60によって部品保持ユニット30全体を押し下げる。そして、電子部品300が基板400に当接した瞬間、ホーン保持部材34は、ケース31に対して上方に相対移動する。ホーン保持部材34がケース31に対して上方に相対移動すると、ホーン位置検出装置38は、その移動を極めて素早く検出して、電気信号を主制御部(図示省略)へ送信し、第1押圧装置60を停止する。なお、本実施形態では、ホーン保持部材34が、磁力(ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bの反発力)によって磁気浮上していることから、ホーン保持部材34に対して極めて小さい外力が付加される場合でも、ケース31に対して素早く相対移動できる。従って、マグネットによる磁気浮上と、このマグネットを磁気を利用した位置検出によって、極めてコンパクトな構成としながらも、高精度の検出が可能となっている。
【0071】
ホーン位置検出装置38によってホーン保持部材34の相対移動が検知された後、第2押下装置70のボイスコイルモータ74の出力軸72下降させる。ボイスコイルモータ74の出力軸72により、ホーン支持部材34の受圧部34Bに所定の押圧力を加える。この押圧力としては、例えば、最初は0からスタートして線形的に力を増大して最終的には4ニュートン[N]になるように印加する。これにより、ホーン支持部材34に固定された吸着ノズル33に所定の押圧力が付与され、所定の圧力で電子部品片300と基板400を加圧することができる。この押圧力の増大に連動して、超音波振動の振幅も0から線形的に増大させるようにすることで、安定的に電子部品片300と基板400が溶着することができる。なお、ボイスコイルモータ74によるホーン支持部材34の押圧力は、ボイスコイルモータ74に入力する電圧により任意に設定することができる。
【0072】
<溶接動作>
【0073】
次に、チップボンダ1による電子部品片300と基板400の超音波溶着の動作について説明する。
【0074】
図8は、本実施形態に係るチップボンダ1、電子部品片供給装置120及び基板供給装置220において、部品保持ユニット30を6個備えるようにした場合の平面図である。なお、同図においては、チップボンダ1は、6個の部品保持ユニット30がターレット10の周方向に約60°間隔に設けられている。
【0075】
なお、図8(a)において、供給位置Uにある部品保持ユニットを部品保持ユニット30Aと定義し、これを基準に時計回りに部品保持ユニット30B〜30Fと定義する。なお、部品保持ユニットの数や配置間隔は上記に限定されるものではなく、例えば、4個の部品保持ユニットを約90°間隔で設けたり、8個の部品保持ユニットを約45°間隔で設けるようにしても好ましい。また、供給位置Uに対して60度進んだ位置が吸着状態確認位置Vとなっており、更に120度進んだ位置が溶着位置Wとなる。更に60度進んだ位置が研磨位置Tとなる。
【0076】
まず、電子部品片供給装置120は、電子部品片300を所定の供給位置Uに移動させる。この時、主制御部(図示省略)は、供給位置確認カメラ92により、電子部品片供給装置120により供給された電子部品片300の位置を撮影し、撮影した画像データに基づいて、電子部品片300が所定の位置に供給されたか否かを判定する。主制御部は、電子部品片300が所定の供給位置Uからずれていると判定した場合、電子部品片供給装置120を制御し、電子部品片300を所定の供給位置Uに移動させる。なお、供給位置確認カメラ92による電子部品片300の撮像は、上方に部品保持ユニット30B〜30Fが存在していないタイミングを計って実行される。
【0077】
図8(a)に示されるように、チップボンダ1は、部品保持ユニット30Aの吸着ノズル33によって、供給位置Uに供給される電子部品片300を吸着保持する。吸着保持完了後、更に、ターレット10を60度回転させて、部品保持ユニット30Aの電子部品片300を吸着状態確認位置Vに搬送する(同図(b)参照)。そして、主制御部は、吸着状態確認位置Vに搬送された電子部品片300の吸着角度を吸着位置確認カメラ93により下側から撮影する。主制御部は、撮影した画像データに基づいて、電子部品片300が所定の角度とずれているか否かを判定する。主制御部300は、電子部品片300の保持角度が所定の角度からずれていると判定した場合、ホーン回転装置40を駆動し、吸着ノズル33を回転させて電子部品片300の角度を調整する。
【0078】
なお、この時、チップボンダ1は、電子部品片供給装置120により供給位置Uに供給された電子部品片300を、部品保持ユニット30Bの吸着ノズル33により吸着保持する。
【0079】
チップボンダ1は、ターレット10をさらに120度回転させて、部品保持ユニット30Aの吸着ノズル33に吸着保持された電子部品片300を、基板供給装置220によって溶着位置Wに供給された基板400の真上に搬送する(同図(c)参照)。主制御部は、溶着位置確認カメラ94により、基板供給装置220により供給された基板400の位置を撮影し、撮影した画像データに基づいて、基板400が所定の溶着位置Wに配置されているか否かを判定する。主制御部は、基板400が所定の溶着位置Wからずれていると判定した場合、基板供給装置220を制御し、基板400を所定の溶着位置Wに配置する。なお、溶着位置確認カメラ94による基板400の撮像は、上方に部品保持ユニット30B〜30Fが存在していないタイミングを計って実行される。この状態で、部品保持ユニット30Aの電子部品片300の基板400へ搭載して超音波溶着を行う。
【0080】
なお、この時、前述と同様に、主制御部は、吸着状態確認位置Vにおいて、吸着位置確認カメラ93で部品保持ユニット30Cの吸着ノズル33に吸着ノズル33に吸着保持されている電子部品片300を撮影することにより、電子部品片300の角度を検査及び調整する。また、部品保持ユニット30Dの吸着ノズル33で、電子部品片供給装置120により供給位置Uに供給された電子部品片300を吸着する。なお、主制御部は、前述と同様に、チップボンダ1が部品保持ユニット30Aを溶着位置Wに搬送する前に、吸着位置確認カメラ93により、部品保持ユニット30Bの吸着ノズル33に吸着保持されている電子部品片300の角度を撮影し、撮影した画像データに基づいてホーン回転装置40を駆動して、吸着ノズル33を回転させることによって、電子部品片300の角度を所定の角度に調整する。
【0081】
その後チップボンダ1は、図8(d)に示されるように、ターレット10をさらに60度回転させて、超音波溶着作業が完了した部品保持ユニット30Aを研磨位置Tに搬送する。この研磨位置Tでは必要に応じて吸着ノズル33の先端を研磨する。吸着ノズル33の先端は、超音波溶着によって偏って摩耗しやすいため、所定回数の溶着作業を行うと平滑度が悪化する。従って、このように定期的に研磨することで、先端を常に水平に維持する。なお、この研磨作業は、毎回実行しても良いが、予め設定した周期で実行することが好ましい。なお、部品保持ユニット30Aの吸着ノズル33を研磨している最中に、部品保持ユニット30Bは、溶着位置Wにおいて電子部品片300を基板400に超音波溶着することができる。
【0082】
その後、チップボンダ1は、部品保持ユニット30B〜30Fについて、上記と同様の動作を繰り返し行い、電子部品片300の基板400への超音波溶着を行う。
【0083】
本実施形態のチップボンダ1は、部品保持ユニット30が、ターレット10の周方向に所定の間隔で複数設けられている。この結果、複数の部品保持ユニット30が周設されたターレット10を回転することで、複数の電子部品片300を供給位置U及び溶着位置Wに略同時に搬送することができ、電子部品片300の供給や電子部品片300と基板400の溶着を高速で行うことができる。また、電子部品片300の吸着作業や溶着作業等を行っている最中に、研磨位置Tにおいて吸着ノズル33のメンテナンスを行うことも可能となり、長期間に亘って搭載サイクルタイムを短くすることが出来る。
【0084】
また、チップボンダ1の部品保持ユニット30は、吸着ノズル33を備えた超音波ホーン32を備えている。これによって、チップボンダ1は、電子部品片300を保持した後、ターレット10を回転させるだけで、電子部品片300と基板400との溶着を連続的に行うことができ、最小工数で効率的に電子部品片300の溶着を行うことができる。
【0085】
また、本チップボンダ1は、供給位置Uと溶着位置Wの上側に、部品保持ユニット駆動装置80を、ターレット10から独立して固定配置している。したがって、部品保持ユニット駆動装置80を、全ての部品保持ユニット30に対応させて1つずつ設ける必要はなくなり、ターレット10の重量を軽くすることができる。この結果、ターレット10のイナーシャを小さくできるので、ターレットの回転程度を向上させることができる。また、例えば、4つ又はそれ以上の部品保持ユニット30を有する場合でも、部品保持ユニット駆動装置80は2つで済む。なお、研磨装置を配置する場合は、研磨位置Tの上にも部品保持ユニット駆動装置80を配置しておくようにする。
【0086】
更にチップボンダ1は、第1押下装置60により部品保持ユニット30全体を速い速度で下方向に移動させた後、第2押下装置70により、ホーン支持部材34に対して必要な圧力を付加できる。したがって、作業時間を更に短縮することができる。
【0087】
また、チップボンダ1はホーン回転装置40を備えているので、ホーン回転用スライダ42を介してホーン支持部材34を回転させることによって、吸着ノズル33に吸着される電子部品片300の角度を自在に調整することができる。
【0088】
またチップボンダ1は、ホール素子を備えるホーン位置検出装置38を用いて、ケース31に対するホーン支持部材34の位置を高精度で検出することによって、吸着ノズル33に吸着保持される電子部品片300が基板400と接触した瞬間を、高精度且つ素早く検出できる。また、このようにホーン支持部材34を磁気浮上させている磁石を利用して、ホーン支持部材34がホーン支持部材34の位置を検出するようにしているので、部品保持ユニット30をコンパクト且つ軽量化できる。この結果、ターレット10に対して複数の部品保持ユニットを搭載することが可能になる。
【0089】
この際、ホーン付勢部材36は、ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bの反発力又は吸引力でホーン支持部材34を上方向に磁気浮上させている。この結果、バネ等で保持する場合と比較して、ホーン支持部材34を小さい外力で素早く移動させることが可能となる。従って、電子部品片300が基板400と接触した際に、両者に作用する衝撃を吸収することが可能となり、電子部品の品質を高めることが出来る。
【0090】
また、ホーン位置検出装置38は、ケース31の収容空間31A内で、ホーン側マグネット36A又はケース側マグネット36Bの近傍に設けられるホール素子としている。これにより、ホーン位置検出装置38は、ケース側マグネット36Bに対して相対的に移動するホーン側マグネット36Aの磁界の変化を検出することによって、ホーン支持部材34の位置を検出することができる。このように、磁気浮上で利用しているマグネットを位置検出で活用することで、コンパクト化が可能となる。なお、ホーン支持部材34側にホール素子を設置する場合は、ケース側マグネット36Bの磁界の変化を活用することもできる。
【0091】
また、スライダ支持装置44は、ホーン回転用スライダ42をベアリング44Aと圧電素子47の凸部47Aで挟む構造としている。したがって、ホーン回転用スライダ42は、この圧電素子47によって所定の方向に自在にスライドすることができる。
【0092】
また、ホーン回転用スライダ42は、ベアリング44Aと当接する面に、凸部47Aとの摩擦力が大きくなるように形成された被駆動面42Bが形成されている。これによって、ホーン回転用スライダ42は、スライド規制時には、凸部47Aとベアリング44Aの挟持力によって確実に押さえられ、一方で、移動させる際にも、凸部47Aが被駆動面42Bを介してスライド方向の力を付勢することで、容易にスライドさせることができる。
【0093】
また、超音波ホーン32は、ターレット10の半径方向に超音波振動するように配置されている。したがって、ターレット10の回転方向に悪影響を与えることなく、超音波ホーン32を振動させることができる。この結果、吸着ノズル33の正確な位置決め及び高精度な溶着作業を行うことができる。
【0094】
尚、本発明のチップボンダ1は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、電子部品片と基板などの相手側部材の超音波溶着の分野において幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 チップボンダ
10 ターレット
20 ターレット駆動モータ
30 部品保持ユニット
40 ホーン回転装置
50 部品保持ユニット案内装置
60 第1押下装置
70 第2押下装置
80 部品保持ユニット駆動装置
300 電子部品片
400 基板
U 供給位置
V 吸着状態確認位置
W 溶着位置
T 研磨位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を回転軸として回転可能に支持されるターレットと、
出力軸に前記ターレットが接続されるターレット駆動モータと、
前記ターレットの周方向に複数設けられて、電子部品片を保持し、該電子部品片を相手側部材に溶着する部品保持ユニットと、
前記ターレットと前記部品保持ユニットの間に設けられて、前記部品保持ユニットを前記ターレットに対して上下方向に移動自在に案内する部品保持ユニット案内装置と、
前記部品保持ユニットの上側に設けられ、前記部品保持ユニットを押圧することによって、該部品保持ユニットを下方向に移動させる部品保持ユニット駆動装置と、
を備え、
前記部品保持ユニットは、
前記電子部品片を吸着する吸着ノズルが設けられる超音波ホーンと、
前記超音波ホーンを超音波振動可能に支持するホーン支持部材と、
前記ホーン支持部材を上下方向に摺動可能に支持するケースと、
を備えることを特徴とする、チップボンダ。
【請求項2】
前記部品保持ユニット駆動装置は、第1押下装置及び第2押下装置を備え、
前記第1押下装置は、前記部品保持ユニット全体を、前記ターレットに対して下方向に押し下げるようにし、
前記第2押下装置は、前記吸着ノズルを、前記部品保持ユニットの前記ケースに対して下方向に相対的に押し下げることを特徴とする、
請求項1に記載のチップボンダ。
【請求項3】
前記部品保持ユニット駆動装置は、前記ターレットから独立した状態で設けられ、少なくとも電子部品片供給装置から前記電子部品片が供給される位置上、及び前記電子部品片を前記相手側部材に溶着する位置上に固定配置されることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のチップボンダ。
【請求項4】
前記超音波ホーンを回転させるホーン回転装置を備え、
前記ホーン回転装置は、
前記部品保持ユニットの前記ホーン支持部材に設けられる係合部と係合するホーン回転用スライダと、
前記ホーン回転用スライダの一方の面に当接して、該ホーン回転用スライダのスライド自在に支持するスライダ支持装置と、
該ホーン回転用スライダの他方の面に当接して、該ホーン回転用スライダを移動させるスライダ移動装置と、
を備えることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチップボンダ。
【請求項5】
前記部品保持ユニットは、
前記ホーン支持部材を上方に付勢するホーン付勢装置と、
前記ホーン支持部材の上下方向の位置を検出するホーン位置検出装置と、
を備えることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のチップボンダ。
【請求項6】
前記ホーン付勢装置は、
前記ホーン支持部材側に固定配置されるホーン側マグネットと、
前記ホーン側マグネットと対向して、前記ケース側に固定配置されるケース側マグネットと、を備え、
前記ホーン側マグネット及び前記ケース側マグネットは、相互に吸着又は反発することで、前記ホーン支持部材を上方に付勢することを特徴とする、
請求項5に記載のチップボンダ。
【請求項7】
前記部品保持ユニット駆動装置は、前記吸着ノズルに吸着保持されている前記電子部品片が前記相手側部材に当接することよって変化した前記ホーン側マグネットと前記ケース側マグネットの磁力を、前記ホーン位置検出装置が検出したことを契機として、前記第1押下装置の押下動作を停止させることを特徴とする、
請求項6に記載のチップボンダ。
【請求項8】
前記ホーン位置検出装置は、前記ホーン側マグネット又は前記ケース側マグネットに近接して、前記ケースに固定配置されるホール素子を備え、
前記ホール素子は、該ホーン側マグネット又は前記ケース側マグネットの磁力の変化量を検出し、該検出した磁力の変化量を電気信号に変換することを特徴とする、
請求項6又は7記載のチップボンダ。
【請求項9】
前記部品保持ユニット駆動装置は、
前記ホーン位置検出装置の検出信号に基づいて、前記第1押圧装置の押下動作を停止すると共に、前記第2押下装置の押下動作を開始して、前記吸着ノズルに任意の押圧力を与えることを特徴とする、
請求項5乃至8のいずれか1項に記載のチップボンダ。
【請求項10】
前記スライダ支持装置は、
前記ホーン回転用スライダに当接するベアリングと、
前記ベアリングを前記ホーン回転用スライダに押しつける押圧装置と、を備えることを特徴とする、
請求項4に記載のチップボンダ。
【請求項11】
前記押圧装置は、前記ベアリングの回転軸の周囲に設けられ、前記ベアリングの前記回転軸を前記ホーン回転用スライダ方向に付勢する板ばねを備えることを特徴とする、
請求項10に記載のチップボンダ。
【請求項12】
前記スライダ移動装置は、前記ホーン回転用スライダに当接する凸部を有する圧電素子を備えて構成され、
前記圧電素子に電圧を加えることで変形させて、前記凸部を円軌道で移動させることで、前記ホーン回転用スライダを任意の距離だけスライドさせることを特徴とする、
請求項10又は11に記載のチップボンダ。
【請求項13】
前記超音波ホーンは、該超音波ホーンの振動方向が前記ターレットの径方向となるように設けられていることを特徴とする、
請求項1乃至12のいずれかに記載のチップボンダ。
【請求項14】
前記ターレットによる前記部品保持ユニットの移動軌跡上に、前記超音波ホーンの先端を研磨する研磨装置が配置されることを特徴とする、
請求項1乃至13のいずれかに記載のチップボンダ。
【請求項15】
前記部品保持ユニット駆動装置は、前記部品保持ユニットの真上に対して前記ターレットの半径方向にオフセットされた状態で配置されることを特徴とする、
請求項1乃至14のいずれかに記載のチップボンダ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−15250(P2012−15250A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149012(P2010−149012)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(501410137)アキム株式会社 (49)
【Fターム(参考)】