説明

テラヘルツ波装置

【課題】連続的に可変するテラヘルツ波を発生、検出できるテラヘルツ波装置を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波装置300は、固定された第1波長を有する第1レーザー光を発振する波長固定レーザー310と、可変する第2波長を有する第2レーザー光を発振する波長スイープレーザー320と、前記第1レーザー光と前記第2レーザー光を結合させるカプラー330と、前記カプラーで放出された混合光をテラヘルツ波に変換する発生器340と、を含み、テラヘルツ波の周波数が連続的に可変されるように構成される。また、連続的に周波数が可変されるテラヘルツ波を検出する検出器を含み、高速テラヘルツ波の分光が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波装置(Terahertz Wave Apparatus)に関し、より詳細的には、波長が可変させるテラヘルツ波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波帯域(0.1THz〜3THz)は、非金属及び無極性物質を透過する特性を有することができる。また、非常に多様な分子等の共振周波数がテラヘルツ波帯域に分布し、その分子を非破壊、未開封、未接触方法にリアルタイムで識別することによって、医療、医学、農業食品、環境計測、バイオ、先端材料評価などで、今までなかった新概念の分析機術の提供が可能なことと予測されている。したがって、テラヘルツ波は、非常に多様な応用の拡大が急速に進行されている。テラヘルツ波は、数meV水準の非常に低いエネルギーとして人体に影響がほとんどないし、人間中心のユビキタス社会実現の必須核心技術として需要が急激に増加しているが、リアルタイム、ポータブル、低価格などを同時に満足すべき技術が開発されずにいる実情である。
【0003】
現在まで活用されているテラヘルツ波生成方法には、周波数倍加法(frequency multiplying method)、逆進行波発振器(Backward wave Oscillator)、フォトミキシング(Photomixing)方法、COポンプ型ガスレーザー( COpumped gas laser)、量子カスケードレーザー(Quantum cascade laser)、自由電子レーザー(Free electron laser)等非常に多様な技術などがある。Thzギャップ領域とする0.1〜10Thz周波数帯域で動作する波源(wave source)の開発に多くの研究が進行されているが、常用化に必須的な超小型、非冷却、高出力条件を備える適切な波源技術が今までは成熟していない状況である。また、広い周波数帯域で迅速的にテラヘルツ波を可変させることができる技術がなかった。広い周波数帯域で迅速的にテラヘルツ波を可変させると、リアルタイムでテラヘルツ波帯域での様々な物理的現状をモニターリングすることが可能である。
【0004】
最近まで1番広範囲に使われたテラヘルツ波装置は、フェムト秒レベル超短パルスレーザー(femtosecond level ultra−short pulse laser)を超高速の応答速度を有する半導体基盤光伝導アンテナ(photoconductive antenna)に照射させ、Thz波を発生、検出するTDS(Time Domain Spectroscopy)装置である。フェムト秒レベル超短パルスレーザー及び光伝導アンテナに構成されたテラヘルツ波装置は、高い信号対雑音比(signal−to−noise ratio:SNR)を提供する等の長所があるが、フェムト秒レベル超短パルスレーザー及び大変精巧な光学系を必需的に要求し、価格と大きさ方面でポータブル概念の計測器として発展するのには多くの制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許10−2009−0049159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、連続的に可変するテラヘルツ波を発生、検出できるテラヘルツ波装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によるテラヘルツ波装置は、固定された第1波長を有する第1レーザー光を発振する波長固定レーザーと、可変する第2波長を有する第2レーザー光を発振する波長スイープレーザーと、前記第1レーザー光と前記第2レーザー光を結合させるカプラーと、前記カプラーで放出された混合光をテラヘルツ波に変換する発生器と、を含み、前記テラヘルツ波の周波数が連続的に可変されるように構成される。
【0008】
本発明の実施形態による前記発生器は、前記第1波長と前記第2波長との差異値に対応する周波数を有するテラヘルツ波を発生させることができる。
【0009】
本発明の実施形態による前記波長スイープレーザーは、利得媒質及び前記利得媒質から放出された光を前記第2波長にフィルターリングする波長可変フィルターを含むことができる。
【0010】
本発明の実施形態による前記利得媒質及び前記波長可変フィルターは、光繊維に結合され得る。
【0011】
本発明の実施形態による前記利得媒質は、半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier)を含むことができる。
【0012】
発明の実施形態による前記利得媒質は、希土類元素添加の光繊維を含むことができる。
【0013】
本発明の実施形態による前記希土類元素は、エルビウム(Er)、またはイッテルビウム(Yb)の中、少なくとも何れが1つを含むことができる。
【0014】
本発明の実施形態による前記波長可変フィルターは、光繊維ファブリ・ペロー可変フィルターを含むことができる。
【0015】
本発明の実施形態による前記波長スイープレーザーは、前記ファブリ・ペロー可変フィルターにパルス形態で電圧を印加する高周波ドライバーをさらに含むことができる。
【0016】
本発明の実施形態による前記ファブリ・ペロー可変フィルターは、前記印加される電圧によって連続的に前記第2波長を可変し、フィルターリングすることができる。
【0017】
本発明の実施形態に従う前記波長スイープレーザーは、前記第2レーザー光を1方向に進行させる光アイソレータ光アイソレータ(optical isolator)をさらに含むことができる。
【0018】
本発明の実施形態による前記波長スイープレーザーは、一部を出力し、他の一部を前記利得媒質でフィードバックする出力光繊維結合器をさらに含むことができる。
【0019】
本発明の実施形態によるテラヘルツ波装置は、前記発生器から放出され、サンプルを透過したテラヘルツ波を検出する検出器をさらに含むことができる。
【0020】
本発明の実施形態によるテラヘルツ波装置は、前記高周波ドライバーで提供されている動期信号を利用してトリガーしながら前記検出器から検出信号を連続的に獲得するデータ獲得装置をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によると、波長固定レーザーと波長スイープレーザーとを利用して高速に周波数を可変することができるテラヘルツ波を発生させ得る。テラヘルツ波の周波数可変速度は、前記波長スイープレーザーの波長走査速度に依存することができる。一方、検出器データ獲得装置を通して高速に周波数が可変されるテラヘルツ波の信号を獲得することによって、テラヘルツ波の高速分光が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】一般的なTDS基盤のテラヘルツ光学装置を説明する図面である。
【図1B】図1Aの光学装置を利用して獲得したデータを示す図面である。
【図2】2つのモードラックキングされたレーザー(mode−locked laser)を使用するテラヘルツ波装置を説明するための図面である。
【図3】本発明の実施形態によるテラヘルツ波を発生させるのに使われるテラヘルツ波装置を説明するための図面である。
【図4】本発明の実施形態による波長スイープレーザー320を具体的に説明するための図面である。
【図5】本発明の実施形態による波長スイープレーザーのフィルターリング動作を説明するためのグラプである。
【図6】本発明の実施形態によるテラヘルツ波を検出するためのテラヘルツ波装置を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及びこの長所は、添付された図面と関連される以下の望ましい実施形態を通じて容易に分かる。しかし、本発明は、ここで説明される実施形態に限定されず、他の形態に具体化することができる。逆に、ここで紹介される実施形態は開示される内容が徹底し、完全になりえるように、そして当業者に本発明の思想が十分に伝えられることができるようにするために提供されるものである。明細書全体にかけて同一な参照番号で表示された部分は、同一な構成要素を示す。
【0024】
本明細書の多様な実施形態で第1、第2、第3などの用語が多様な構成要素を記述するために使われたが、これらの構成要素らがこのような用語によって限定されてはならない。これらの用語は、但しどの構成要素を他の構成要素と区別させるために使われただけである。ここに説明され、例示される実施形態は、それの相補的な実施形態も含む。
【0025】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのことであり本発明を制限しようとするのではない。本明細書での単数型は、文句で特に言及しない限り、複数型も含む。明細書で使われる‘含む(comprises)’、及び/又は‘含み(comprising)’は言及された構成要素は、1つ以上の他の構成要素の存在、または追加を排除しない。
【0026】
図1A及び図1Bは、一般的なTDS基盤のテラヘルツ光学装置を説明する図面である。図1Bは、図1Aの光学装置を利用し、獲得したデータを示す図面である。
【0027】
図1A及び図1Bを参照すると、前記光学装置10は、超短パルスレーザー110を利用してテラヘルツ波を発生及び/又は検出することができる。前記光学装置10は、TDS(time domain spectroscopy)システムで有り得る。前記光学装置10は、フェムト秒レベルのゲート時間のみにデータを獲得するホモダイン(homodyne)検出法を活用して高い信号対雑音比 (signal to noise ratio:SNR)を確保することができる長所がある。
【0028】
前記超短パルスレーザー110の出力光は、第1ミラー112によって経路が変更され得る。前記第1ミラー112で反射された前記超短パルスレーザー110の出力光は、ビームスプリット(beam splitter:BS)114を使用して2つに分れることができる。1つの超短パルスは、第2ミラー116を通してテラヘルツ波発生器(THz Tx)130aに入射させ、テラヘルツ波を発生させ得る。他の超短パルスは、適切な時間遅延を有してテラヘルツ波検出器(THz Dx)130bに入射してテラヘルツ波を時間の上でサンプリングするのに活用することができる。前記テラヘルツ波発生器130a及び前記テラヘルツ波検出器130bは、光伝導アンテナであり得る。前記時間遅延は、DL(delay line)118を利用して隨行され得る。前記DL118の出力光は、第3ミラー122及び第4ミラー124を通じて前記テラヘルツ波検出器130bに提供されることができる。
【0029】
前記テラヘルツ波発生器130aで生成されたテラヘルツ波は、第1集束レンズ142を通して試料146に集束され得る。前記試料146を通過した前記テラヘルツ波は、第2集束レンズ144を通して前記テラヘルツ波検出器130bに入射することができる。前記テラヘルツ波発生器130a及び/又は前記テラヘルツ波検出器130bは、光伝導アンテナであり得る。
【0030】
前記テラヘルツ波検出器130bは、時間遅延に依存する電気信号を発生させ得る。前記電気信号は、データ獲得装置148によって獲得され得る。前記データ獲得装置148は高速A/D変換器、または高速オシロスコープで有り得る。
【0031】
図1Bを参照すると、前記時間遅延による電気信号は、FFT(Fast Fourier Transform)変換され、テラヘルツ波のスペクトルを提供することができる。
【0032】
TDS基盤テラヘルツ波を発生及び検出する光学装置は、フェムト秒級の超短パルスレーザーを半導体に照射させて生成されたキャリアの加速による電磁気波の発生で比較的に容易にテラヘルツ波を発生させ得る。前記TDS基盤テラヘルツ波を発生及び検出する光学装置は、フェムト秒級のゲート時間をホモダイン検出法を活用して高いSNRを確保することができる長所があるので、研究用として多く活用されて来る。発振波長800nm帯域のフェムト秒級の超短パルスレーザーを2つに分け、1つの超短パルスは、テラヘルツ波発生器(THz Tx)に入射させてテラヘルツ波発生に使用し、他の1つの超短パルスは、適切な時間遅延を有してテラヘルツ波検出器(THz Dx)に入射される。データ獲得装置は、遅延時間に依存するデータをテラヘルツ波検出器から獲得し、これをFFT(Fast Fourier Transform)変換してテラヘルツ波のスペクトルを確保することができる。テラヘルツ波の実際応用のためには、遅延時間に該当する情報を収集しなければならないし、前記情報をFFTすることでデータ処理に時間遅延を避けられなくてシステムの大きさ、高価格を除いてもリアルタイム概念のテラヘルツ波源開発には制限的である。
【0033】
前記TDS基盤のテラヘルツ波源生成及び検出システムの短所を克服し、分子指紋(molecular fingerprinting)分析を通じる有害物質検出、新素材特性測定、農水産物の新鮮度測定などの非常に多様な領域で順次的に需要が増加することと予測される周波数ドメイン(Frequency Domain:FD)基盤テラヘルツ波源が要求される。
【0034】
図2は、2つのモードラックキングされたレーザー(mode−locked laser)を使用する一般的なFD(Frequency Domain)基盤のテラヘルツ波発生装置を説明するための図面である。
【0035】
図2を参照すると、レーザーダイオード220、250の一方が無反射コーティングされ、格子(grating)210、240を利用して波長を可変させることができる。前記レーザーダイオード220、250は、他の2つの波長λ、λを有するレーザーを発振させる。図2のテラヘルツ波発生装置200は、高出力の各々の異なる波長λ、λを有する2つのレーザー超高速応答速度を有するフォトミキサー(photomixer)270に照射させ、テラヘルツ波を生成させる。
【0036】
前記フォトミキサー270を利用した波長可変連続発振テラヘルツ波発生のために、2つの独立的な光源が必須である。前記光源は、高出力の波長可変レーザーであり得る。前記波長可変レーザー間の発振周波数差は、テラヘルツ波の周波数に対応され得る。相異なる発振波長の特性は、テラヘルツ波のノイズ特性に直接的な影響を及ぼすことができる。
【0037】
前記フォトミキサー270は、下記のような変換効率(conversion efficiency)を有することができる。
【数1】

【0038】
ここで、P、Pは、各々の異なる波長を有する2つのレーザー等の光出力、Pは、平均光出力であり、Iは、DC光電流(dc photocurrent)であり、Rは、アンテナの放射抵抗であり、cは、フォトミキサーの静電容量であり、τは、フォトミキサーのキャリアライフタイム(carrier lifetime)であり、mは、2つの波長の混合比率である。
【0039】
高効率のテラヘルツ波を発生させるためには、フォトミキサー270の変換効率に影響を及ぼす変数を調節しなければならない。前記フォトミキサー270の変換効率は、フォトミキサーの高い応答速度、または短いキャリアライフタイム、アンテナの放射抵抗及び2つの波長の混合比率などに影響を受けることができる。
【0040】
フォトミックス法を活用したテラヘルツ波発生及び検出システムで、1.5μm、1.3μm帯域の勵起光源を活用しようとする方案が提案されている。その理由は、超小型モジュール化技術、超高速信号処理技術など大部分の核心技術が開発され、比較的に容易に活用が可能であり、また1.5μm、1.3μm帯域で光増幅器が開発され、短波長に比べて長波長で高い変換効率を表すからである。
【0041】
テラヘルツ波の周波数fと2つのレーザーとの波長差Δλは、f=cΔλ/λ関係を有する。2つのレーザーの波長特性がテラヘルツ波の発生に直接的な影響を及ぼすことができる。例示的に、λでλは、一般的に1550nm帯域で定まるので1550nmで平均的に決定されることができる。発振波長λ及びλに該当する周波数f=c/λ、f=c/λの差異によって、テラヘルツ波の周波数fが決定されることができる。すなわち、勵起レーザーの波長可変特性が非常に重要になる。1THz周波数を可変させるためには1.5μmの波長領域で約8nm、1.3μm波長領域で約6nmの2つのモードとの間に波長間隔Δλを可変させることができる波長可変レーザーの開発が必要である。光帯域波長可変特性と共に非常に狭い発振波長線幅を提供することができるレーザー技術が必須である。
【0042】
図3は、本発明の実施形態のよるテラヘルツ波を発生させることに使われるテラヘルツ波装置を説明するための図面である。
【0043】
図3を参照すると、本発明の実施形態によるテラヘルツ波装置300は、波長固定レーザー(wavelength−fixed laser)310、波長スイープレーザー(wavelength−swept laser)320、高周波ドライバー325、カプラー(coupler)330、発生器340及び直流電圧器345を含む。前記発生器340は、フォトミキサー(photomixer)であり得る。
【0044】
前記波長固定レーザー(wavelength−fixed laser)310は、固定された第1波長を有する第1レーザー光を発振する。前記波長固定レーザー310は、レーザー光源及び共振器を含むことができる。前記共振器は、ブラッググレーティング(bragg grating)を有することが可能であり、ブラッググレーティング(bragg grating)は、特定波長の光を選択的に反射することができる。前記ブラッググレーティングは、第1波長λを有する第1レーザー光を共振させることができる。前記波長固定レーザー310は、モードラックキングされたレーザ(mode−locked laser)であり得る。これによって、前記第1レーザー光は、ラックキングされたレーザー光であり得リ、マスタモード(master mode)以外のスラブモード(slave mode)は、減殺され、狭い帯域のスペクトルを有することができる。すなわち、前記第1波長は、前記マスタモードの波長として定まれる。このような狭い帯域のスペクトルを有する前記第1レーザー光は、テラヘルツ波の生成に参与することができる。
【0045】
前記波長スイープレーザー(wavelength−swept laser)320は、可変する第2波長λを有する第2レーザー光を発振する。前記波長スイープレーザー320は、連続的に波長をスイープ(sweep)、またはスキャン(scan)することができるレーザーである。前記高周波ドライバー(high frequency driver)325は、一定の波形(waveform)を発生させ、パルス形態の電圧Vを印加することができる。前記波長スイープレーザー320は、高周波ドライバー(または関数発生器)325によって前記第2波長λをスイープすることができる。
【0046】
前記波長スイープレーザー320は、フィルターリング方式によって2種類に区分され得る。1つは、後フィルターリング(post−filtering)であり、他の1つは、共振器可変フィルターリング(cavity tuning filtering)である。後フィルターリングは、光帯域光源出力端に波長可変フィルターを挿入してフィルターリングする方式であり、利得媒質に出力の一部をフィードバック(feed back)しないため、フィルターによる光源の損失(loss)が大きいので、光出力パワー(output power)が小さいとなる短所がある。反面、共振器可変フィルターリングは、フィルターをレーザー共振器内に挿入してフィルターリングし、出力の一部をまたフィードバックする方式である。共振器可変フィルターリングを利用する波長スイープレーザーは、図4を参照し、下で詳細に説明される。
【0047】
前記カプラー(coupler)330は、前記第1レーザー光と前記第2レーザー光とを結合させる。前記カプラー330は、前記第1レーザー光と前記第2レーザー光とを混合させ、混合光を放出することができる。前記発生器340、例えば、フォトミキサー(photomixer)は、前記カプラー330で放出された混合光をテラヘルツ波に変換する。前記発生器340がフォトミキサーである場合、前記発生器340は、光伝導体(photoconductor)及びアンテナ(antenna)を含むことができる。前記光伝導体は、混合光を光電流に変換し、光電流が前記アンテナを通してテラヘルツ波に複写され得る。前記発生器340は、直流電圧器345により電圧が印加された状態で混合光を受光することができる。
【0048】
前記発生器340は、前記第1波長と前記第2波長との波長の差異値に対応する周波数を有するテラヘルツ波を発生させることができる。したがって、固定された第1波長と可変された第2波長とによって前記波長の差異値が変動され、これによって、テラヘルツ波の周波数が連続的に可変され得る。具体的に、前記フォトミキサー340は、前記第1波長と前記第2波長との差異値に対応する周波数を有するテラヘルツ波を発生させることができる。前記波長差異値を変化させる速度は、前記波長スイープレーザー320のスキャン(走査)速度に依存することができる。結局、テラヘルツ波の周波数可変速度は、前記波長スイープレーザー320の波長走査速度に依存することができる。前記走査速度は、数kHz〜数十kHzであり得る。例えば、前記第1波長が1530nmで、前記第2波長が1530nm〜1562nmと、テラヘルツ波は、0〜4THzまで40KHzの速い速度で可変され得る。
【0049】
図4は、本発明の実施形態による波長スイープレーザー320を具体的に説明するための図面である。
【0050】
図4を参照すると、前記波長スイープレーザー320は、利得媒質321及び前記利得媒質321から放出された光を前記第2波長にフィルターリングする波長可変フィルター322を含むことができる。前記利得媒質321と前記波長可変フィルター322とは光繊維327に結合され得る。前記利得媒質321は、半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier)を含むことができる。前記半導体光増幅器は、1300nm帯域で利得を有することができる。または前記利得媒質321は、希土類元素添加光繊維増幅器であり得る。例えば、前記利得媒質321はエリビウム添加光繊維増幅器(erbium−doped fiber amplifier)であり得り、イッテルビウム(Yb)添加光繊維増幅器であり得る。
【0051】
前記波長可変フィルター322は、光繊維ファブリ・ペロー可変フィルター(fiber Fabry−Perot tunable filter:FFP−TF)であり得る。前記波長可変フィルター322と前記利得媒質321が光繊維に一体型に結合され、共振器の長さが短い波長スイープレーザー320が具現されることができる。反面、前記波長スイープレーザー320は、速い速度に回転できるポリゴンミラーと回折格子で構成されたポリゴン(polygon)波長フィルターを利用し、具現されることができる。または、前記波長スイープレーザー320は、光繊維に配置された遅延線(delay line)に光が共振器を巡回する時間を調節する技術を使用することができる。この場合、共振器を巡回する時間がフィルターのスイープ周期に倍数になると、フィルターリングされた波長成分は巡回した後、フィルターで同じ波長成分に通過して共振することができる。
【0052】
前記利得媒質321と前記波長可変フィルター322との間に各々第1光アイソレータ光アイソレータ(isolator)323及び第2光アイソレータ324が配置される。前記第1光アイソレータ323及び第2光アイソレータ324は、レーザーを一方向だけに進行させる。すなわち、前記第1光アイソレータ323及び第2光アイソレータ324は、一方向だけにレーザーを通過させ、反対方向のレーザー光を遮ることができる。前記波長スイープレーザー320は、出力光繊維結合器(fiber coupler)326を通じて前記第2レーザー光を出力することができる。前記光繊維結合器326は、約70%を前記利得媒質321でフィードバックさせ、約30%は出力(OUT)させることができる。前記出力された第2レーザー光は、サンプリングオシロスコープと光スペクトル分析器(optical spectrum analyzer:OSA)とを利用して測定し、分析されることができる。
【0053】
前記波長スイープレーザー320は、上記で説明した共振器可変フィルターリング方式であり得る。前記共振器可変フィルターリング方式は、図4に示すように前記波長可変フィルター322をレーザー共振器の内に挿入し、所定の波長をフィルターリングすることができ、出力の一部をまた前記利得媒質321にフィードバックする方式である。前記光繊維ファブリ・ペロー可変フィルターは、圧電物質(例えば、PZT)を含むことができる。前記圧電物質に印加される電圧Vを変化させると、フィルター空隙の間隔が調節され、フィルターリング波長が可変され得る。これによって、前記利得媒質321から得られた波長帯域で前記波長可変フィルター322から決まったウィンドウ(window)が移動しながらフィルターリングすることができる。
【0054】
図5は、本発明の実施形態による波長スイープレーザーのフィルターリング動作を説明するためのグラプである。
【0055】
図5を参照すると、前記波長スイープレーザー320が電圧の変化によって共振器の内で前記第2レーザーを発振することができる。前記波長可変フィルター322は、サイン関数である一定の周波数に変調すると、1週期の間にフィルターリングバンドパス(bandpass)波長に走査することができる。具体的に、電圧が増加する方向に対して短波長から長波長へ一定の波長範囲内で走査する(forward scan)反面、電圧が減少する方向に対して長波長から短波長へ一定の波長範囲内で走査することができる(backward scan)。波長走査を2方向に対して全て使用する場合、有効走査周波数は、変調周波数の2倍になることができる。
【0056】
前記波長可変フィルター322は、高周波ドライバー325によって印加される電圧Vによって一定の波長範囲から高速に走査することができる。前記波長走査の速度は、例えば、数kHzであり得る。前記波長可変フィルター322の波長走査範囲、またはフィルターウィンドウ(filter window)の移動によって、前記利得媒質321で得られた波長帯域で前記第2波長λが定まれることができる。前記波長可変フィルター322は、前記第2波長をフィルターリングしながら、前記利得媒質321で得られた波長帯域で前記第2波長を増幅させることができる。
【0057】
一般的に波長スイープレーザー320の最大波長走査周波数は、増幅自発放出(amplified spontaneous emission)によってレーザーが形成される時定数(time constant)に制限され、前記時定数は、フィルター特性、増幅自発放出のパワー、飽和出力、レーザー利得及びレーザー一周時間に依存する。前記共振器可変フィルターリング方式を利用する波長スイープレーザー320は、波長走査周波数の走査特性と関連する光飽和限界(saturation limit)と一周限界(one round−trip limit)とを有する。走査周波数が低い場合、何れか1つの波長でフィルターリングされた光は、1周期あが戻る前にレーザー共振器の内を一回、またはこの以上一周させる。この場合、発振する時間は、レーザーの時定数より長くて、レーザーは、増幅自発放出から充分の光パワーを有し、この場合を光飽和限界と言える。一方、波長走査周波数がますます増加すると、何れか1つの波長でフィルターリングされた光は、レーザー共振器の内で留まる時間がますます短くなり、どの瞬間にレーザーの一周時間(one round−trip time)と同一な周波数が存在する。この時、レーザー出力は、急激な減少が起きてこの場合を一周限界走査周波数(one round−trip limit sweep frequency)という。このような2つの場合に走査速度の制限は、レーザーの利得媒質と共振器との特性によって変わることができる。
【0058】
図6は、本発明の実施形態によるテラヘルツ波を検出するためのテラヘルツ波装置を説明するための図面である。図6で説明される装置は図3で説明されたテラヘルツ波装置と類似し、重複する技術的特徴に対する詳細な説明は省略することにする。
【0059】
図6を参照すると、本発明の実施形態によるテラヘルツ波装置400は、波長固定レーザー(wavelength−fixed laser)410、波長スイープレーザー(wavelength−swept laser)420、高周波ドライバー425、カプラー(coupler)430、発生器440、直流電圧器445、検出器460及びデータ獲得装置470を含む。前記発生器440は、フォトミキサー(photomixer)であり得る。
【0060】
前記波長固定レーザー410は、固定された第1波長λを有する第1レーザー光を発振する。前記波長固定レーザー410は、モード同期レーザ(mode−locked laser)で有り得り、狭いスペクトルを有することができる。前記波長スイープレーザー420は、可変する第2波長λを有する第2レーザー光を発振する。前記波長スイープレーザー420は、連続的に波長をスイープ(sweep)、またはスキャン(scan)するレーザーである。前記波長スイープレーザー420は、高周波ドライバー425でパルス形態に電圧Vを印加され、前記第2波長をフィルターリングすることができる。
【0061】
前記カプラー430は、前記第1レーザー光と前記第2レーザー光とを結合させる。即ち、前記カプラー430は、前記第1レーザー光と前記第2レーザー光とを混合させて混合光を放出させ得る。前記カプラー430で放出された混合光をテラヘルツ波に変換する発生器440が提供される。前記発生器440は、フォトミキサー(photomixer)であり得る。前記発生器440がフォトミキサーである場合、前記発生器440は、光伝導体(photoconductor)及びアンテナ(antenna)を含むことができる。前記発生器440は、直流電圧器445によって電圧が印加された状態で混合光を受光することができる。前記発生器440は、前記第1波長と前記第2波長との波長の差異値に対応する周波数を有するテラヘルツ波を発生させ得る。そして、固定された第1波長と可変される第2波長によって前記波長の差異値が連続的に変動され、これにより、テラヘルツ波の周波数が連続的に可変され得る。
【0062】
前記発生器440で発生されたテラヘルツ波は、サンプル450に照射され、前記サンプル450を通過したテラヘルツ波は、前記検出器460により検出され得る。
【0063】
前記データ獲得装置470は、前記高周波ドライバー425で提供される高周波同期信号を利用して、トリガー(trigger)しながら検出器460から検出信号を連続的に、そして高速に獲得することができる。高速に周波数が可変されるテラヘルツ波を検出することができ、高速テラヘルツ波分光が可能である。前記データ獲得装置470は、ディジタイザー(digitizer)であり得る。前記データ獲得装置470は、平均化を通して信号対雑音比(SNR)を向上させることができる。
【0064】
本発明の実施形態によると、波長固定レーザーと波長スイープレーザーとを利用して高速に周波数を可変することができるテラヘルツ波を発生させ得る。テラヘルツ波の周波数可変速度は、前記波長スイープレーザーの波長走査速度に依存することができる。一方、高速に周波数が可変されるテラヘルツ波を検出することによって、高速のテラヘルツ波分光が可能である。
【符号の説明】
【0065】
310 波長固定レーザー
320 波長スイープレーザー
330 カプラー
340 フォトミキサー
321 利得媒質
322 波長可変フィルター
327 光繊維
323 第1光アイソレータ
324 第2光アイソレータ
326 光繊維結合器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された第1波長を有する第1レーザー光を発振する波長固定レーザーと、
可変する第2波長を有する第2レーザー光を発振する波長スイープレーザーと、
前記第1レーザー光と前記第2レーザー光を結合させるカプラーと、
前記カプラーで放出された混合光をテラヘルツ波に変換する発生器と、を含み、
前記テラヘルツ波の周波数が連続的に可変になるように構成されることを特徴とするテラヘルツ波装置。
【請求項2】
前記発生器は、前記第1波長と前記第2波長との差異値に対応する周波数を有するテラヘルツ波を発生させることを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項3】
前記波長スイープレーザーは、利得媒質及び前記利得媒質から放出された光を前記第2波長にフィルターリングする波長可変フィルターを含むことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項4】
前記利得媒質及び前記波長可変フィルターは、光繊維に結合されることを特徴とする請求項3に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項5】
前記利得媒質は、半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier)を含むことを特徴とする請求項3に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項6】
前記利得媒質は、希土類元素添加の光繊維を含むことを特徴とする請求項3に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項7】
前記希土類元素は、エルビウム(Er)、またはイッテルビウム(Yb)の中で、少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項8】
前記波長可変フィルターは、光繊維のファブリ・ペロー可変フィルターを含むことを特徴とする請求項3記載のテラヘルツ波装置。
【請求項9】
前記波長スイープレーザーは、前記ファブリ・ペロー可変フィルターにパルス形態で電圧を印加する高周波ドライバーをさらに含むことを特徴とする請求項8記載のテラヘルツ波装置。
【請求項10】
前記ファブリ・ペロー可変フィルターは、前記印加される電圧によって連続的に前記第2波長を可変してフィルターリングすることを特徴とする請求項9に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項11】
前記波長スイープレーザーは、前記第2レーザー光を1方向に進行させる光アイソレータ(optical isolator)をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項12】
前記波長スイープレーザーは、一部を出力し、他の一部を前記利得媒質にフィードバックする出力光繊維結合器をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項13】
前記発生器から放出され、サンプルを透過したテラヘルツ波を検出する検出器をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のテラヘルツ波装置。
【請求項14】
前記高周波ドライバーで提供される同期信号を利用してトリガーしながら前記検出器から検出信号を連続的に獲得するデータ獲得装置をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のテラヘルツ波装置。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−164578(P2011−164578A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235414(P2010−235414)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【出願人】(507091417)韓國標準科學研究院 (2)
【氏名又は名称原語表記】Korea Research Institute of Standards and Science
【住所又は居所原語表記】1 Doryong−dong,Yuseong−gu,Daejeon,Republic of Korea
【Fターム(参考)】