説明

テンション付与装置、ベルト装置および画像形成装置

【課題】ベルトの巻き癖を抑制することができ、かつ、ベルト駆動時の駆動モータの負荷が増加することなく、駆動時にベルト部材に所定のテンションを印加することができるテンション付与装置、ベルト装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】装置の稼動が停止しているときは、形状記憶合金からなる第2コイルスプリング33が、第1コイルスプリング31の付勢力やアーム部材32の自重により伸ばされ、テンションローラ20に印加される付勢力が低下し、中間転写ベルト22が緩んだ状態となっている。装置が駆動し、定着装置45の熱源45aが発熱し、第2コイルスプリング33が加熱されると、第2コイルスプリング33が元の形状に戻ろうとして、アーム部材32を引っ張り上げて、中間転写ベルト22に所定のテンションを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンション付与装置、ベルト装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、像担持体である感光体上に形成されたトナー像を、無端ベルト状の転写ベルトに一次転写し、転写されたトナー像を転写ベルトの無端移動により搬送し、記録部材に二次転写する画像形成装置がある。
この種の画像形成装置では、転写ベルト上に一次転写されたトナー像を記録体に精度よく二次転写するために、転写ベルトに張力を印加して張った状態で無端移動させる必要がある。しかし、転写ベルトに常に張力を印加していると、電源OFF時に転写ベルトの張架ローラに巻き付いている部分(以下、巻き付き部という)に、巻き癖と呼ばれるベルトの変形が生じることがあった。特に、近年、装置の小型化のため、張架ローラの径の小径化がすすみ、上記巻き付き部の曲率が小さくなり、上記巻き癖が顕著に現れ、ベルト表面の平面度を著しく損ねるおそれがあった。
【0003】
なお、定着ベルト、感光体ベルト、紙搬送ベルトでも、転写ベルトと同様の問題が生じる。
【0004】
特許文献1には、次のようなテンション付与装置が記載されている。すなわち、駆動ローラをベルトが緩む方向とベルトが張る方向とに移動可能に支持し、スプリングで駆動ローラをベルトが緩む方向に付勢する。そして、ベルト回転駆動時に、駆動モータから駆動力が伝達される中継ギヤと、この中継ギヤと噛み合い、駆動ローラの軸に固定された駆動伝達ギヤとの間に作用する力を、上記スプリングの付勢方向と逆方向にしたテンション付与装置である。転写ベルトを駆動させるときには、中継ギヤと駆動伝達ギヤとの間に作用する力によって、転写ベルトに適切な張力が印加される。装置の電源OFF時など、転写ベルトが停止しているときは、中継ギヤと駆動伝達ギヤとの間に作用する力がなくなるので、上記スプリングの付勢力で駆動ローラが、ベルトが緩む方向へ移動することで、ベルトに印加する張力が弱められる。これにより、装置電源OFF時に小さな曲率となった部分で生じる巻き癖の発生を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、駆動モータの駆動力で、ベルトにテンションを付与するので、ベルト駆動時の駆動モータの負荷が増え、消費電力が増加してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ベルトの巻き癖を抑制することができ、かつ、ベルト駆動時の駆動モータの負荷が増加することなく、駆動時にベルト部材に所定のテンションを印加することができるテンション付与装置、ベルト装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、無端状のベルト部材を張架する複数の張架ローラのうちの何れか1つの張架ローラをベルト部材に向けて付勢して上記ベルト部材に張力を付与するテンションローラとして機能させるテンション付与装置において、当該テンション付与装置が取り付けられる装置が稼動しているときにのみ発熱する熱源から放熱される熱によりテンションローラへの付勢力が増加するように形状が変化する形状変化部材を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のテンション付与装置において、上記形状変化部材として、形状記憶合金を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のテンション付与装置において、上記形状変化部材が、上記テンションローラを付勢する付勢部材であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかのテンション付与装置において、一端がテンションローラに固定され、他端が上記形状変化部材に直接または部材を介して間接的に固定され、上記テンションローラを付勢する付勢部材を備え、上記形状変化部材は、上記熱源の熱により上記付勢部材の付勢力が増加するように形状が変化することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4のテンション付与装置において、一端に上記付勢部材の他端が固定され、他端に上記形状変化部材が固定される連結部材を備え、上記熱源の熱による上記形状変化部材の形状変化時に、上記連結部材が突き当り、上記連結部材の移動を規制する規制手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5のテンション付与装置において、上記形状変化部材が、バネ形状であり、上記熱源の熱により上記形状変化部材が加熱されたときの上記形状変化部材の付勢力が、上記付勢部材の付勢力よりも大きく、上記熱源により加熱されていないときの上記形状変化部材の付勢力が、上記付勢部材の付勢力よりも小さくなるよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項5または6のテンション付与装置において、上記連結部材が、上記規制手段に突き当るときの衝撃を吸収する緩衝部材を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、無端状のベルト部材と、該無端状のベルト部材を張架する複数の張架ローラと、複数の張架ローラのうちの何れか1つの張架ローラをベルト部材に向けて付勢して上記ベルト部材に張力を付与するテンションローラとして機能させるテンション付与手段とを備えたベルト装置において、上記テンション付与手段として、請求項1乃至7いずれかのテンション付与装置を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8のベルト装置において、複数の張架ローラのうちの何れか1つの張架ローラ内に熱源を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、無端状のベルト部材を複数の張架ローラによって張架しながら無端移動せしめるベルト装置と、上記ベルト部材のおもて面あるいはこれに保持される記録部材にトナー像を形成するトナー像形成手段と、熱源を備え、記録部材上のトナー像を加熱して該トナー像を記録部材に定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、上記ベルト装置として、請求項8のベルト装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項10の画像形成装置において、上記形状変化部材は、上記定着手段の熱源により加熱されることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項10または11の画像形成装置において、上記ベルト部材は、2個の張架ローラにより張架されていることを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、記録部材にトナー像を形成するトナー像形成手段と、無端状のベルト部材を複数の張架ローラによって張架しながら無端移動せしめるベルト装置と、上記ベルト部材を加熱する熱源とを有し、上記記録部材上のトナー像を加熱して該トナー像を記録部材に定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、上記ベルト装置として、請求項9のベルト装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、テンション付与装置が取り付けられた装置が稼動して熱源からの放熱で形状変化部材が加熱され、形状変化部材が高温となり、形状変化部材がテンションローラへの付勢力が増加させるよう形状が変化する。これにより、テンション付与装置が取り付けられた装置稼動時には、テンションローラに付勢力が作用し、ベルト部材に適切な張力が印加される。一方、テンション付与装置が取り付けられた装置の休止時など装置が稼動していないときは、熱源から熱が発生することがないので、形状変化部材が低温となり、高温時の形状から低温時の形状に形状変化部材の形状が変化し、テンションローラの付勢力が低下する。その結果、ベルト部材に印加される張力が低下し、装置非稼動時はベルト部材に印加する張力が弱められる。これにより、巻き癖の発生を抑制することができる。
また、もともとテンション付与装置が取り付けられる装置に備えられた熱源から放熱される熱により形状変化部材の形状を変化させて、ベルト部材に適切な張力を印加するので、特許文献1に記載のようにベルト駆動時の駆動モータの負荷を増加させることがない。よって、装置駆動時に駆動モータの負荷が増加することなく、稼動時にベルト部材に所定のテンションを印加することができ、装置駆動時の消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図2】プロセスユニットの概略構成図。
【図3】従来のテンション付与機構の概略構成図
【図4】本実施形態のテンション付与機構と中間転写ベルトとを示す概略構成図。
【図5】テンションローラ付近の拡大斜視図
【図6】第三コイルスプリングを設けたテンション付与機構と中間転写ベルトとを示す概略構成図。
【図7】駆動ローラと2次転写対向ローラとテンションローラとで張架された中間転写ベルトと本実施形態テンション付与機構とを示す概略構成図。
【図8】本実施形態テンション付与機構の変形例を示す概略構成図。
【図9】定着ベルトとテンション付与機構とを示す概略構成図。
【図10】図9のテンション付与機構の第1の変形例を示す概略構成図。
【図11】図9のテンション付与機構の第2の変形例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット26Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するためのプロセスユニット26Kを例にすると、図2に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体24K、ドラムクリーニング装置83K、除電装置(不図示)、帯電装置25K、現像装置23K等を備えている。画像形成ユニットたるプロセスユニット26Kは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0011】
上記帯電装置25Kは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体24Kの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体24Kの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置25KによってYトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト22上に中間転写される。ドラムクリーニング装置83Kは、中間転写工程を経た後の感光体24K表面に付着している転写残トナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体24Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体24Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色のプロセスユニット(26Y,M,C)においても、同様にして感光体(24Y,M,C)上に(Y,M,C)トナー像が形成されて、後述する中間転写ベルト22上に中間転写される。なお、感光体24Kにおける筒状のドラム部は、中空のアルミ素管のおもて面に有機感光層が被覆されたものである。このドラム部の軸線方向の両端部にそれぞれドラム軸を有するフランジが取り付けられて、感光体24Kを構成している。
【0012】
現像手段たる現像装置23Kは、図示しないKトナーを収容する縦長のホッパ部86Kと、現像部87Kとを有している。ホッパ部86K内には、図示しない駆動手段によって回転駆動されるアジテータ88K、これの鉛直方向下方で図示しない駆動手段によって回転駆動される撹拌パドル89K、これの鉛直方向で図示しない駆動手段によって回転駆動されるトナー供給ローラ80Kなどが配設されている。ホッパ部86K内のKトナーは、アジテータ88Kや撹拌パドル89Kの回転駆動によって撹拌されながら、自重によってトナー供給ローラ80Kに向けて移動する。トナー供給ローラ80Kは、金属製の芯金と、これの表面に被覆された発泡樹脂等からなるローラ部とを有しており、ホッパ部86K内のKトナーをローラ部の表面に付着させながら回転する。
【0013】
現像装置23Kの現像部87K内には、感光体24Kやトナー供給ローラ80Kに当接しながら回転する現像ローラ81Kや、これの表面に先端を当接させる薄層化ブレード82Kなどが配設されている。ホッパ部86K内のトナー供給ローラ80Kに付着したKトナーは、現像ローラ80Kとトナー供給ローラ80Kとの当接部で現像ローラ81Kの表面に供給される。供給されたKトナーは、現像ローラ81Kの回転に伴ってローラと薄層化ブレード82Kとの当接位置を通過する際に、ローラ表面上での層厚が規制される。そして、層厚規制後のKトナーは、現像ローラ81Kと感光体24Kとの当接部である現像領域において、感光体24K表面のK用の静電潜像に付着する。この付着により、K用の静電潜像がKトナー像に現像される。
【0014】
図2を用いてK用のプロセスユニット26Kについて説明したが、Y,M,C用のプロセスユニット26Y,M,Cにおいても、同様のプロセスにより、感光体2Y,M,C表面にY,M,Cトナー像が形成される。
【0015】
先に示した図1において、プロセスユニット26Y,M,C,Kの鉛直方向上方には、光書込ユニット27が配設されている。潜像書込装置たる光書込ユニット27は、画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光Lにより、プロセスユニット26Y,M,C,Kにおける感光体24Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体24Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。かかる構成においては、光書込ユニット27と、プロセスユニット26Y,M,C,Kとにより、3つ以上の潜像担持体にそれぞれ互いに異なる色の可視像たるY,M,C,Kトナー像を作像する作像手段として機能している。
【0016】
なお、光書込ユニット27は、光源から発したレーザー光(L)を、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0017】
プロセスユニット26Y,M,C,Kの鉛直方向下方には、無端状の中間転写ベルト22を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめるベルト装置たる転写ユニット75が配設されている。転写ユニット75は、中間転写ベルト22の他に、駆動ローラ76、テンションローラ20、4つの1次転写ローラ74Y,M,C,K、2次転写ローラ21、ベルトクリーニング装置71、クリーニングバックアップローラ72などを備えている。
【0018】
ベルト部材であり、転写ベルトである中間転写ベルト22は、そのループ内側に配設された駆動ローラ76、テンションローラ20、クリーニングバックアップローラ72及び4つの1次転写ローラ74Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ76の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
【0019】
4つの1次転写ローラ74Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト22を感光体24Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト22のおもて面と、感光体24Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0020】
1次転写ローラ74Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されており、これにより、感光体24Y,M,C,Kの静電潜像と、1次転写ローラ74Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。なお、1次転写ローラ74Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0021】
Y用のプロセスユニット26Yの感光体24Y表面に形成されたYトナーは、感光体24Yの回転に伴って上述のY用の1次転写ニップに進入すると、転写電界やニップ圧の作用により、感光体24Y上から中間転写ベルト22上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト22は、その無端移動に伴ってM,C,K用の1次転写ニップを通過する際に、感光体24M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト22上には4色トナー像が形成される。
【0022】
転写ユニット75の2次転写ローラ21は、中間転写ベルト22のループ外側に配設されて、ループ内側のテンションローラ20との間に中間転写ベルト22を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト22のおもて面と、2次転写ローラ21とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ21には、図示しない転写バイアス電源によって2次転写バイアスが印加される。この印加により、2次転写ローラ21と、アース接続されているテンションローラ20との間には、2次転写電界が形成される。
【0023】
転写ユニット75の鉛直方向下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット16がプリンタの筐体に対してスライド着脱可能に配設されている。この給紙カセット16は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ17を当接させており、これを所定のタイミングで図中反時計回り方向に回転させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。
【0024】
給紙路の末端付近には、レジストローラ18,19からなるレジストローラ対が配設されている。このレジストローラ対は、給紙カセット16から送り出された記録部材たる記録紙をローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙を上述の2次転写ニップ内で中間転写ベルト22上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。
【0025】
2次転写ニップで記録紙に密着せしめられた中間転写ベルト22上の4色トナー像は、2次転写電界やニップ圧の影響を受けて記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、2次転写ローラ21や中間転写ベルト22から曲率分離する。そして、転写後搬送路を経由して、定着装置10に送り込まれる。
【0026】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト22には、記録紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト22のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置71によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト22のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ72は、ベルトクリーニング装置71によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0027】
定着手段たる定着装置10には、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ45と、定着ローラ45に所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ47とが設けられており、定着ローラ45と加圧ローラ47とによって定着ニップを形成している。定着装置10内に送り込まれた記録紙は、その未定着トナー像担持面を定着ローラ45に密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0028】
図示しないテンキー等からなる操作部に対する入力操作や、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる制御信号などにより、片面プリントモードが設定されている場合には、定着装置10内から排出された記録紙Pは、そのまま機外へと排出される。そして、筐体の上カバーの上面であるスタック部56にスタックされる。
【0029】
本実施形態においては、プロセスユニット26Y,M,C,K、光書込ユニット27でトナー像を形成するトナー像形成手段を構成している。
【0030】
次に、本実施形態の特徴点である中間転写ベルト22にテンションを付与するテンション付与装置であるテンション付与機構について説明する。
図3は、従来のテンション付与機構100の概略構成図である。
図に示すように、従来のテンション付与機構100は、コイルスプリング101の一端を、テンションローラ20を回転自在に支持する軸受100aに取り付け、他端を装置の本体側板99に取り付けて、テンションローラ20をベルト張架方向(図中右側)に付勢している。しかし、この従来のテンション付与機構100は、装置の電源OFF時にも中間転写ベルト22に所定のテンションが印加されているため、図3(b)に示すように、中間転写ベルト22の駆動ローラ76やテンションローラ20に巻き付いている部分(以下、巻き付き部という)に、巻き癖と呼ばれるベルトの変形が生じてしまう。その結果、中間転写ベルト表面の平面度や平滑性が損なわれ、転写性(画像抜け、画像とび)が悪化するおそれがあった。
【0031】
そこで、本実施形態においては、装置使用時には、中間転写ベルト22に所定のテンションを付与でき、装置電源OFF時には、中間転写ベルト22に印加するテンションを緩めるテンション付与機構を設けた。以下に、具体的に説明する。
【0032】
図4は、本実施形態のテンション付与機構30と中間転写ベルト22とを示す概略構成図であり、(a)は、装置の電源OFF時のテンション付与機構30と、中間転写ベルト22とを示す概略構成図であり、(b)は、装置駆動時のテンション付与機構30と、中間転写ベルト22とを示す概略構成図である。また、図5は、テンションローラ20付近の拡大斜視図である。
図4に示すように、本実施形態のテンション付与機構30は、第一コイルスプリング31と、連結部材たるアーム部材32と、形状変化部材たる形状記憶合金からなる第二コイルスプリング33とを有している。形状記憶合金は、低温では柔らかく(剛性が低い)、高温では硬い(剛性が高い)特性を有しているため、第二コイルスプリング33は、低温では、荷重発生力が小さく、高温では、荷重発生力が大きくなる性質を有している。
【0033】
図5に示すように、テンションローラ20を回転自在に支持する軸受20bが、装置本体の手前側および奥側側板に設けられた長穴20cに嵌合している。これにより、軸受20bが長穴20cを移動することで、テンションローラ20がベルト張架方向とベルト緩み方向とに所定範囲移動する。
【0034】
連結部材たるアーム部材32は、第一腕部32aと第一腕部32aから折れ曲がった第二腕部32bとを有しており、第一腕部32aと第二腕部32bとの間に貫通孔が設けられている。装置本体に設けられた貫通軸98にこの貫通孔が挿入され、アーム部材32が貫通軸98を中心にして回動自在に装置に取り付けられている。第一腕部32aの端部には、第一バネ固定部32dが設けられており、第二腕部32bの端部には、第二バネ固定部32eが設けられている。
【0035】
上記アーム部材32の第二バネ固定部32eには、第二コイルスプリング33の一端が固定されており、第二コイルスプリング33の他端は、定着ローラ45を回転自在に支持する不図示の軸受に固定されている。アーム部材32の第一バネ固定部32dには、付勢部材たる第一コイルスプリング31の一端が固定されており、他端は、テンションローラ20の軸20aに取り付けられている(図5参照)。
【0036】
装置本体の側板99には、アーム部材32が突き当り、アーム部材32の移動を規制する規制手段たる規制突起99aが設けられている。また、装置側板99の規制突起99aの近傍には、側板99からの高さが規制突起99aよりも高い、緩衝部材たる緩衝スプリング99bが設けられている。
【0037】
装置の電源がONされ、定着ローラ45に内蔵された熱源45aに電流が供給され、熱源45aから熱が放熱されると、第二コイルスプリング33が加熱され、第二コイルスプリング33の温度が上昇する。形状記憶合金からなる第二コイルスプリング33が温度上昇すると、第二コイルスプリング33の力が増加し、第一コイルスプリング31の付勢力やアーム部材32の自重により伸ばされていた第二コイルスプリング33が、元の形状に戻ろうとする。そして、第二コイルスプリング33の元の形状に戻ろうとする力(第二コイルスプリング33のアーム部材32の第二腕部32bを引っ張る力(付勢力))F2が、第一コイルスプリング31のアーム部材32の第一腕部32aを引っ張る力(第一コイルスプリング31の付勢力)F1よりも大きくなる。その結果、第二コイルスプリング33が、アーム部材32の第二腕部32bを図中上方へ引き上げ、アーム部材32が、図4(a)の状態から図中反時計回りに回動し、第一腕部32aの先端が、テンションローラ20から離間する方向(図中右側)へ移動する。すると、第一コイルスプリング31とともに、テンションローラ20がベルト張架方向へ移動して、中間転写ベルト22に張力が印加され、中間転写ベルト22がピンと張った状態となる。さらに、第二コイルスプリング33が縮んで、アーム部材32が図中反時計回りに回転していくと、第一コイルスプリング31が伸びていく。そして、最終的には、図4(b)に示すように、アーム部材32の第一腕部32aが規制突起99aと突き当り、アーム部材32の図中反時計回りの移動が規制される。第一腕部32aが上記規制突起99aと突き当る直前に、緩衝スプリング99bと突き当ることで、アーム部材32の回転の勢いが削減されて、規制突起99aと突き当る。これにより、アーム部材32が規制突起99aに突き当ったときの衝撃を緩和することができ、振動や衝撃音の発生を抑制することができる。
【0038】
また、アーム部材32を規制突起99aに突き当てることで、中間転写ベルト22に印加するテンションを、第一コイルスプリング31の付勢力のみにすることができ、好ましい。これは、アーム部材32を規制突起99aに突き当てない場合、中間転写ベルト22に印加するテンションが、第一コイルスプリング31と第二コイルスプリング33との関係によって決まってくる。第二コイルスプリング33の引っ張り力(付勢力)は、温度によって異なってくるので、装置内の温度や定着温度により変動してしまう。その結果、中間転写ベルト22に印加するテンションが変動するおそれがある。なお、装置駆動時における第二コイルスプリング33の引っ張り力が非常に強くなる材料を用いれば、第二コイルスプリング33の中間転写ベルトのテンションによる撓みはほとんど無視でき、中間転写ベルト22に印加するテンションは、第一コイルスプリング31の付勢力と見なすことができるため、規制突起99aは、設けなくてもよい。
【0039】
装置の電源がOFFにされると、熱源45aの放熱が停止し、第二コイルスプリング33の温度が低下していく。第二コイルスプリング33の温度が下がっていくと、第二コイルスプリング33の剛性が低くなり、第二コイルスプリング33のアーム部材32の第二腕部32bを引っ張る力(付勢力)F2が、第一コイルスプリング31のアーム部材32の第一腕部32aを引っ張る力(付勢力)F1よりも弱くなる。すると、第二コイルスプリング33が、第一コイルスプリング31の付勢力により伸ばされ、アーム部材32が図中時計回りに回動する。すると、第一コイルスプリング31の付勢力が低下し、テンションローラ20に印加される付勢力が低下する。その結果、中間転写ベルト22への張力が低下し、中間転写ベルト22が緩んだ状態となる(図4(a)参照)。これにより、中間転写ベルト22に巻き癖がつくのを抑制できる。
【0040】
上記では、第一コイルスプリング31を有しているが、第一コイルスプリング31は、無くてもよい。この場合、アーム部材32の第一腕部32aの先端をテンションローラ20の軸20aに軸受などを介して取り付ける。また、規制突起99aを無くし、装置稼動時においても、アーム部材32の移動を規制しないようにして、第二コイルスプリング33の付勢力が中間転写ベルト22に印加されるテンションとなるようにする。
【0041】
また、図6に示すように、第三コイルスプリング34を設けて、第三コイルスプリング34でアーム部材32を図中時計回りに付勢してもよい。この場合、装置の電源OFF時に、アーム部材32が図中時計回りに回転して、第一コイルスプリング31が自由長になった後も、この第三コイルスプリング34は、付勢力を有しており、アーム部材32を図中時計回りへ回転させる。アーム部材32が図中時計回りに回転することによって、第一コイルスプリング31とテンションローラ20とが、さらに、駆動ローラ76側へ移動する。これにより、装置電源OFF時に中間転写ベルト22にテンションが印加されるのを、より一層抑制することができる。
【0042】
また、上記では、二次転写対向ローラをテンションローラとして用いたが、図7に示すように、二次転写対向ローラ20とは別にテンションローラ35を配置した構成でもよい。
【0043】
さらに、上記では、形状記憶合金をコイルバネ形状にしているが、これに限られない。例えば、図8(b)に示すように、元の形状が、湾曲した板状または針金状の形状記憶合金330を用いてもよい。この場合、図8(a)に示すように、装置電源OFF時で、形状記憶合金からなる部材330が低温のときは、第一コイルスプリング31の付勢力により真直ぐに伸ばされており、中間転写ベルト22にテンションが印加されていない状態となっている。装置が駆動して、定着装置10の熱により形状記憶合金からなる部材330が高温となると、図8(b)に示すように元の湾曲した形状に戻り、アーム部材32を規制突起99aに突き当てて、中間転写ベルト22にテンションを印加する。
【0044】
また、上記では、中間転写ベルト22にテンションを付与するテンション付与機構に本発明を適用した実施形態について説明したが、これに限られない。例えば、内部に発熱源を備えた加熱ローラと定着ローラとに張架された定着ベルトにテンションを付与するテンション付与装置にも、本発明を適用できる。
【0045】
図9は、定着ベルト453を有する定着装置110の概略構成図である。
図に示すように、定着ベルト453が定着ローラ451と内部に熱源454を備えた加熱ローラ452とによって張架されている。定着ローラ451は不図示の駆動源によって回転駆動され、定着ベルト453が図中矢印B方向に無端移動し、これによって加熱ローラ452が従動回転する。加熱ローラ452は、定着ローラ451から離間する方向と近接する方向とに所定範囲移動可能に装置本体に支持されている。また、定着ローラ451と対向する位置に定着ベルト453を挟んで定着ローラ451に当接し定着ニップNを形成する加圧部材として加圧ローラ47が配設されている。
【0046】
また、加熱ローラ452は、定着ベルト453に適当な所定のテンションを与えるため、テンション付与機構300によって定着ローラ451から離間させる方向に付勢されている。テンション付与機構300は、形状記憶合金からなるコイルスプリング36を備えており、一端が、加熱ローラ452の軸に取り付けられており、他端が、装置の側板に固定されている。この構成は、装置駆動時は、コイルスプリング36の付勢力により、加熱ローラ452を定着ローラ451から離間する方向に付勢して、定着ベルト453に適当な所定のテンションを与えている。装置の電源OFFになり、コイルスプリング36の温度が低温になり、コイルスプリング36の剛性が低くなると、定着ベルト453の張力よりも、コイルスプリング36の付勢力が弱くなる。その結果、加熱ローラ452が定着ベルト453の張力により定着ローラ側へ移動し、コイルスプリング300が圧縮する。これにより、装置電源OFF時は、定着ベルト453のテンションが弱められ、定着ベルト453に巻き癖がつくのを抑制できる。
【0047】
上記では、形状記憶合金からなるコイルスプリング36を圧縮ばねとして用いたが、図10に示すように、形状記憶合金からなるコイルスプリング36を引っ張りばねとして用いてもよい。この場合、電源が落とされ、コイルスプリング36の温度が低温になり、コイルスプリング36の剛性が低くなると、コイルスプリング36が定着ベルト453の張力により伸長し、定着ベルト453のテンションが弱められる。装置駆動時は、加熱ローラ452の熱により温度上昇すると、伸長したコイルスプリング36が圧縮し、定着ベルト453に所定のテンションを付与することができる。
【0048】
また、形状記憶合金からなるコイルスプリング36は、温度によって剛性が変化するため、装置内の温度や定着温度によって、定着ベルト453のテンションが変動するおそれがあるので、図11のように構成してもよい。
図11は、定着ローラ451をテンションローラとして用い、テンション付与機構300は、第一コイルスプリング301と、連結部材302と、形状記憶合金からなる第二コイルスプリング303とを有している。第一コイルスプリング301の一端を、定着ローラ451を回転自在に支持する不図示の軸受に取り付け、他端を連結部材302に取り付ける。形状記憶合金からなる第二コイルスプリング303の一端を、加熱ローラ452を回転自在に支持する不図示の軸受に取り付け、他端を連結部材302に取り付ける。連結部材302には、突起部302aを有している。
【0049】
装置が休止状態であり、第二コイルスプリング303が低温のときは、図11(b)に示すように、第一コイルスプリング301の付勢力によって、第二コイルスプリング303が圧縮せしめられている。装置が駆動し、第二コイルスプリング303が加熱ローラ452の熱を受けて高温になると、第二コイルスプリング303が伸長する。すると、連結部材302の突起部302aが装置本体に設けられたストッパー304に突き当り、連結部材302の定着ローラ側への移動が規制される。また、第二コイルスプリング303が伸長することによって、第一コイルスプリング301が圧縮し、第一コイルスプリング301によって、定着ローラ451が、加熱ローラ452から離間する方向へ付勢される。これにより、定着ベルト453に所定のテンションが付与される。また、連結部材302がストッパー304と突き当り、定着ローラ側への移動が規制されることによって、定着ローラ451に働く付勢力が、第一コイルスプリング301の付勢力のみとなる。第一コイルスプリング301は、温度などにより剛性が変化しない部材で構成されているので、装置駆動時には、一定のテンションを定着ベルト453に付与することができる。
なお、形状記録合金からなる第二コイルスプリング303に変えて、図8に示したように、板状または針金状の形状記憶合金にしてもよい。
【0050】
また、本発明は、上記定着ベルト、中間転写ベルトに限らず、紙搬送ベルトや、感光体ベルトにテンションを付与するテンション付与装置にも適用できる。また、上記では、定着装置の熱により、形状記憶合金を加熱しているが、モータの駆動熱、制御部のCPUから発生する熱により形状記憶合金を加熱してもよい。
【0051】
以上、本実施形態のテンション付与装置たるテンション付与機構30によれば、テンション付与機構30が取り付けられる装置である画像形成装置の稼動時に発熱する熱源(定着装置の発熱源45a)から放熱される熱によりテンションローラ20への付勢力が増加するように形状が変化する形状変化部材たる形状記憶合金を備えている。画像形成装置が駆動すると、定着装置の発熱源45aが熱を発し、形状記憶合金が加熱され形状記憶合金が高温となり、形状記憶合金がテンションローラ20への付勢力が増加させるよう形状が変化する。これにより、画像形成装置駆動時には、テンションローラ20に付勢力が作用し、ベルト部材たる中間転写ベルト22に適切な張力が印加される。一方、画像形成装置がスタンバイ状態や電源が落とされるなど、装置が非稼動時のときは、定着装置の発熱源45aから熱が発生することがないので、形状記憶合金が低温となり、高温時の形状から低温時の形状に形状記憶合金の形状が変化し、テンションローラ20の付勢力が低下する。その結果、中間転写ベルト22に印加される張力が低下し、電源OFF時の中間転写ベルト22に印加する張力が弱められる。これにより、巻き癖の発生を抑制することができる。また、画像形成装置に備えられた熱源から放熱される熱により形状記憶合金の形状を変化させて、中間転写ベルト22に適切な張力を印加するので、駆動モータの駆動力によってベルトにテンションを付与するものに比べて、装置駆動時の消費電力を抑えることができる。
【0052】
図9、図10に示すように、上記テンションローラたる加熱ローラ452を付勢する付勢部材たるコイルスプリング36を、形状記憶合金とすることで、加熱ローラ452によってコイルスプリング36が加熱されると、コイルスプリング36の付勢力が高まり、コイルスプリング36の付勢力が増加し、加熱ローラ452に所定の付勢力が付与される。その結果、ベルト部材たる定着ベルト453に所定のテンションを付与することができる。形状記憶合金からなるコイルスプリング36が低温となると、コイルスプリング36の剛性が低くなり、付勢力が低下する。これにより、加熱ローラ452に印加される付勢力が低下し、定着ベルト453のテンションが低下する。したがって、定着ベルト453の巻き癖の発生を抑制することができる。
【0053】
また、図4〜8、図11に示すように、一端がテンションローラに固定され、他端が上記形状記憶合金に直接または部材を介して間接的に固定され、上記テンションローラを付勢する付勢部材たる第一コイルスプリングを備える構成としてもよい。この場合、形状記憶合金が加熱されて、形状記憶合金が元の形状に戻ることにより、第一コイルスプリングの付勢力が増加し、テンションローラへの付勢力が増加する。そして、装置が非稼動状態となって、形状記憶合金が低温となり、形状記憶合金の剛性が低くなると、第一コイルバネの付勢力により、形状記憶合金の形状が第一コイルバネの付勢力が低下する方向に形状が変化し、第一コイルバネの付勢力が低下する。これにより、ベルト部材の巻き癖の発生を抑制することができる。
【0054】
また、一端に第一コイルスプリング31の他端が固定され、他端に形状記憶合金(第二コイルスプリング33)が固定される連結部材たるアーム部材32を備え、上記熱源の熱による上記形状記憶合金の形状変化時に、上記アーム部材32が突き当り、上記アーム部材32の移動を規制する規制手段たる規制突起99aを設けた。このように、アーム部材32が規制突起99aに突き当ることで、テンションローラ20への付勢力が、第一コイルスプリング31の付勢力のみになる。移動を規制することによって、そのときの第一コイルスプリング31の付勢力が、ほぼ一定になり、所定の付勢力をテンションローラ20に付与することができ、一定のテンションをベルト部材に印加することができる。これにより、ベルト部材の搬送性能を安定させることができる。
【0055】
また、形状記憶合金をバネ形状(第二コイルスプリング33)とした場合、熱源の熱による形状変化後の第二コイルスプリング33の付勢力を、上記第一コイルスプリング31の付勢力よりも大きくする。これにより、第二コイルスプリング33の付勢力によって、連結部材たるアーム部材32が移動して、アーム部材32を規制突起99aに付き当てることができる。そして、熱源の熱により加熱されていないときの第二コイルスプリング33の付勢力が、第一コイルスプリング31の付勢力よりも小さくなるので、装置の電源OFF時は、アーム部材32が、第一コイルスプリング31側へ移動し、第一コイルスプリング31の付勢力を低下させる。これにより、テンションローラ20に付与される付勢力が低下し、ベルト部材に印加されるテンションが低下し、ベルト部材を緩ませることができる。
【0056】
また、上記アーム部材32が、上記規制突起99aに突き当るときの衝撃を吸収する緩衝部材たる緩衝スプリング99bを設けたことで、上記アーム部材32が、上記規制突起99aに突き当るときに発生する振動や衝撃音を低減することができる。
【0057】
また、ベルト部材を2個の張架ローラにより張架することによって、複数の張架ローラによって張架するものに比べて、省スペース化、部品点数を削減することができる。
【0058】
また、複数の張架ローラのうちの何れか1つの張架ローラ内に熱源を備えた定着ベルトを張架するベルト装置に本発明のテンション付与機構を設けることによって、定着ベルトの巻き癖を抑制することができる。
【0059】
また、トナー像を担持するベルト部材である中間転写ベルトに本発明のテンション付与機構を設けることによって、中間転写ベルトの巻き癖を抑制することができる。
また、記録部材たる記録紙を保持する紙搬送ベルトに本発明のテンション付与機構を設けることによって、紙搬送ベルトの巻き癖を抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
20:テンションローラ(二次転写対向ローラ)
22:中間転写ベルト
30,100,300:テンション付与機構
31,301:第一コイルスプリング
32:アーム部材
33,303:第二コイルスプリング
34:第三コイルスプリング
35:テンションローラ
302:連結部材
304:ストッパー
330:形状記憶合金部材
452:加熱ローラ
453:定着ベルト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2004−77942号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト部材を張架する複数の張架ローラのうちの何れか1つの張架ローラをベルト部材に向けて付勢して上記ベルト部材に張力を付与するテンションローラとして機能させるテンション付与装置において、
当該テンション付与装置が取り付けられる装置が稼動しているときにのみ発熱する熱源から放熱される熱によりテンションローラへの付勢力が増加するように形状が変化する形状変化部材を備えたことを特徴とするテンション付与装置。
【請求項2】
請求項1のテンション付与装置において、
上記形状変化部材として、形状記憶合金を用いたことを特徴とするテンション付与装置。
【請求項3】
請求項1または2のテンション付与装置において、
上記形状変化部材が、上記テンションローラを付勢する付勢部材であることを特徴とするテンション付与装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかのテンション付与装置において、
一端がテンションローラに固定され、他端が上記形状変化部材に直接または部材を介して間接的に固定され、上記テンションローラを付勢する付勢部材を備え、
上記形状変化部材は、上記熱源の熱により上記付勢部材の付勢力が増加するように形状が変化することを特徴とするテンション付与装置。
【請求項5】
請求項4のテンション付与装置において、
一端に上記付勢部材の他端が固定され、他端に上記形状変化部材が固定される連結部材を備え、
上記熱源の熱による上記形状変化部材の形状変化時に、上記連結部材が突き当り、上記連結部材の移動を規制する規制手段を設けたことを特徴とするテンション付与装置。
【請求項6】
請求項5のテンション付与装置において、
上記形状変化部材が、バネ形状であり、
上記熱源の熱により上記形状変化部材が加熱されたときの上記形状変化部材の付勢力が、上記付勢部材の付勢力よりも大きく、上記熱源により加熱されていないときの上記形状変化部材の付勢力が、上記付勢部材の付勢力よりも小さくなるよう構成したことを特徴とするベルトテンション付与装置。
【請求項7】
請求項5または6のテンション付与装置において、
上記連結部材が、上記規制手段に突き当るときの衝撃を吸収する緩衝部材を設けたことを特徴とするテンション付与装置。
【請求項8】
無端状のベルト部材と、
該無端状のベルト部材を張架する複数の張架ローラと、
複数の張架ローラのうちの何れか1つの張架ローラをベルト部材に向けて付勢して上記ベルト部材に張力を付与するテンションローラとして機能させるテンション付与手段とを備えたベルト装置において、
上記テンション付与手段として、請求項1乃至7いずれかのテンション付与装置を備えたことを特徴とするベルト装置。
【請求項9】
請求項8のベルト装置において、
複数の張架ローラのうちの何れか1つの張架ローラ内に熱源を備えたことを特徴とするベルト装置。
【請求項10】
無端状のベルト部材を複数の張架ローラによって張架しながら無端移動せしめるベルト装置と、
上記ベルト部材のおもて面あるいはこれに保持される記録部材にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
熱源を備え、記録部材上のトナー像を加熱して該トナー像を記録部材に定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、
上記ベルト装置として、請求項8のベルト装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10の画像形成装置において、
上記形状変化部材は、上記定着手段の熱源により加熱されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項10または11の画像形成装置において、
上記ベルト部材は、2個の張架ローラにより張架されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
記録部材にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
無端状のベルト部材を複数の張架ローラによって張架しながら無端移動せしめるベルト装置と、上記ベルト部材を加熱する熱源とを有し、上記記録部材上のトナー像を加熱して該トナー像を記録部材に定着させる定着手段とを備えた画像形成装置において、
上記ベルト装置として、請求項9のベルト装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−59467(P2011−59467A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210154(P2009−210154)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】