説明

テンプレートチャック、インプリント装置、及びパターン形成方法

【課題】様々な厚さ、材料、形状のテンプレートの保持及び変形制御が可能なテンプレートチャック、インプリント装置、及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】インプリント装置用のテンプレートチャック111であって、前記テンプレートチャックは、テンプレート101の上面及び下面にそれぞれ接触させて、前記テンプレートを上下方向から挟み込むための第1及び第2の構造体401,402と、前記テンプレートの側面に接触させて、前記テンプレートを側面方向から挟み込むための複数の接触部材403とを備える。更に、前記テンプレートチャックは、前記複数の接触部材を介して前記テンプレートに応力を加えることで、前記テンプレートを変形させる変形制御装置404を備える。更に、前記第1の構造体、前記第2の構造体、及び前記複数の接触部材は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テンプレートチャック、インプリント装置、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインプリント装置のテンプレートチャックは、光リソグラフィ用のフォトマスクと同じ厚さに規格化されたテンプレートを上面方向から吸着して保持するテンプレート保持機構と、テンプレートに側面方向から応力を加えることで、テンプレートの変形制御を行う変形制御機構とを有している。
【0003】
しかしながら、従来のインプリント装置のテンプレートチャックには、テンプレートの厚さや、材料や、形状を変更すると、そのテンプレート保持性能及び変形制御性能が悪化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−245071号公報
【特許文献2】特表2009−532909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、様々な厚さ、材料、形状のテンプレートの保持及び変形制御が可能なテンプレートチャック、インプリント装置、及びパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、例えば、インプリント装置用のテンプレートチャックであって、前記テンプレートチャックは、テンプレートの上面及び下面にそれぞれ接触させて、前記テンプレートを上下方向から挟み込むための第1及び第2の構造体と、前記テンプレートの側面に接触させて、前記テンプレートを側面方向から挟み込むための複数の接触部材とを備える。更に、前記テンプレートチャックは、前記複数の接触部材を介して前記テンプレートに応力を加えることで、前記テンプレートを変形させる変形制御装置を備える。更に、前記第1の構造体、前記第2の構造体、及び前記複数の接触部材は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されている。
【0007】
また、本発明の別の態様のインプリント装置は、例えば、テンプレートの上面及び下面にそれぞれ接触させて、前記テンプレートを上下方向から挟み込むための第1及び第2の構造体と、前記テンプレートの側面に接触させて、前記テンプレートを側面方向から挟み込むための複数の接触部材とを備える。更に、前記インプリント装置は、前記複数の接触部材を介して前記テンプレートに応力を加えることで、前記テンプレートを変形させる変形制御装置と、前記テンプレートを被転写基板上のレジスト材に接触させた状態で、前記レジスト材に光を照射して、前記レジスト材を硬化するための光源とを備える。更に、前記第1の構造体、前記第2の構造体、及び前記複数の接触部材は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されている。
【0008】
また、本発明の別の態様のパターン形成方法では、例えば、テンプレートの上面及び下面にそれぞれ第1及び第2の構造体を接触させて、前記テンプレートを前記第1及び第2の構造体により上下方向から挟み込む。更に、前記方法では、前記テンプレートの側面に複数の接触部材を接触させて、前記テンプレートを前記複数の接触部材により側面方向から挟み込む。更に、前記方法では、前記複数の接触部材を介して前記テンプレートに応力を加えることで、前記テンプレートを変形させる。更に、前記方法では、前記テンプレートを被転写基板上のレジスト材に接触させた状態で、前記レジスト材を硬化して、前記被転写基板上にレジストパターンを形成する。更に、前記方法で使用される前記第1の構造体、前記第2の構造体、及び前記複数の接触部材は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態のナノインプリント装置の構成を示す側方断面図である。
【図2】第1実施形態のテンプレートチャックの構成を示す側方断面図である。
【図3】図2に示すテンプレートチャックを拡大して示した側方断面図である。
【図4】図2に示すテンプレートチャックを拡大して示した上面図である。
【図5】図2に示すテンプレートチャックの構成を示す上面図である。
【図6】テンプレートの変形制御について説明するための上面図である。
【図7】テンプレートの断面形状を模式的に示した側方断面図である。
【図8】ピンからテンプレートに圧力が加えられる様子を示した側方断面図である。
【図9】第2の構造体のピンが上下方向及び水平方向に動く様子を示した上面図及び側方断面図である。
【図10】第2実施形態のテンプレートチャックの構成を示す側方断面図である。
【図11】図10に示すテンプレートチャックを拡大して示した側方断面図である。
【図12】図10のテンプレートに設けられた凹部の形状を示した上面図である。
【図13】第3実施形態のテンプレートチャックの構成を示す側方断面図である。
【図14】図13に示すテンプレートチャックを拡大して示した側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のナノインプリント装置の構成を示す側方断面図である。
【0012】
図1のナノインプリント装置は、テンプレートチャック111と、ベース112と、アライメントセンサ113と、UV(ultraviolet)光源114と、CCD(charge coupled device)カメラ115と、試料ステージ211と、試料チャック212とを備える。
【0013】
テンプレートチャック111は、テンプレート101を保持し、テンプレート101の変形制御を行うための機構である。テンプレート101は、その2つの主面のうち、ナノインプリント用の凹凸パターンTが形成された面が下面、その逆面が上面となるよう、テンプレートチャック111にセットされる。図1では、テンプレート101の上面、下面、側面がそれぞれ、S1、S2、S3で示されている。テンプレートチャック111は、その上方に位置するベース112に取り付けられている。
【0014】
試料ステージ211は、ウエハ基板等の被転写基板201を設置するためのステージである。被転写基板201は、その2つの主面のうち、レジスト材202を形成予定の面が上面、その逆面が下面となるよう、試料ステージ211上にセットされる。被転写基板201は、試料チャック212によりチャックされることで、試料ステージ211上に固定される。
【0015】
また、アライメントセンサ113は、テンプレート101上のアライメントマークを検出するためのセンサである。UV光源114は、被転写基板201上のレジスト材202にUV光を照射して、レジスト材202を硬化するための光源である。図1のナノインプリント装置では、テンプレート101をレジスト材202に接触させた状態で、レジスト材202にUV光を照射して、レジスト材202を硬化することで、被転写基板201上にレジストパターンを形成する。また、CCDカメラ115は、テンプレート101をモニタリングするためのカメラである。
【0016】
なお、本実施形態のテンプレート101は、アライメントマークの検出、被転写基板201へのUV光の照射、及びテンプレート101のモニタリングを可能とするため、石英等の透明部材で形成されている。
【0017】
以下、テンプレートチャック111の構成について詳細に説明する。
【0018】
図2は、第1実施形態のテンプレートチャック111の構成を示す側方断面図である。
【0019】
図2には、テンプレート基板301と、その主面上に形成されたパターン面302とを有するテンプレート101が、テンプレートチャック111に下向きにセットされた様子が示されている。図2には更に、テンプレート基板301の主面上に設けられたアライメントマーク303と、パターン面302上に設けられたアライメントマーク304が示されている。
【0020】
テンプレートチャック111は、図2に示すように、第1の構造体401と、第2の構造体402と、複数の接触部材403と、変形制御装置404とを備える。
【0021】
第1及び第2の構造体401,402は、テンプレート101の上面S1及び下面S2にそれぞれ接触させて、テンプレート101を上下方向から挟み込むための構造体である。第1の構造体401は例えば、テンプレート101を静電気力又はバキュームで吸着するための静電チャック又はバキュームチャックであり、第2の構造体402は例えば、任意の部材で構成された構造体である。
【0022】
接触部材403は、テンプレート101の側面S3に接触させて、テンプレート101を側面方向から挟み込むための部材である。本実施形態では、テンプレート101が4つの側面S3を有することに対応して、テンプレート101を4つの接触部材403で挟み込んでいる。図2には、4つの接触部材403のうち、第1の構造体401の前面に位置する2つの接触部材403が示されている。なお、接触部材403の個数は、4つ以外であっても構わない。
【0023】
変形制御装置404は、上記複数の接触部材403を介してテンプレート101に応力を加えることで、テンプレート101を変形させる装置である。変形制御装置404は、被転写基板201上のパターンの歪みに合うよう、テンプレート101の平面形状を歪ませるために用いられる。上記の応力は例えば、変形制御装置404を構成する圧電素子やアクチュエータにより発生させる。
【0024】
本実施形態では、このようなテンプレートチャック111により、テンプレート101を保持し、テンプレート101の変形制御を行う。そして、図1のナノインプリント装置は、テンプレートチャック111により保持及び変形されたテンプレート101と、UV光源114とを用いて、被転写基板201へのパターン転写を行う。
【0025】
ここで、従来のテンプレートチャックの問題点と、本実施形態のテンプレートチャック111の利点について説明する。
【0026】
従来のテンプレートチャックは、静電チャック又はバキュームチャックと、変形制御装置とを備え、静電チャック又はバキュームチャックにより、テンプレートを上面方向から吸着して保持する。更には、テンプレートの側面に変形制御装置を接触させ、変形制御装置からテンプレートに応力を直接加えることで、テンプレートの変形制御を行う。テンプレートは、上面方向からの吸着と、側面方向からの応力により保持される。
【0027】
しかしながら、従来のテンプレートチャックには、テンプレートの厚さや、材料や、形状を変更すると、そのテンプレート保持性能及び変形制御性能が悪化するという問題がある。例えば、テンプレートが薄くなると、テンプレートの側面と変形制御装置との接触面積が狭くなり、その結果、テンプレートを保持しにくくなる、応力によってテンプレートに高次の歪み成分が発生する、テンプレートが破損する等の問題が生じる。また、これらの問題は、テンプレートがもろい材料で形成されている場合や、テンプレートのサイズが小さい場合等に、特に顕在化するおそれがある。
【0028】
従来、テンプレートは、フォトマスクから作製されることが多く、テンプレートの厚さ及び材料は、フォトマスクと同じ厚さ及び材料であることが一般的だった。更に、テンプレートは、フォトマスクを4等分して作製されることが多く、テンプレートの形状は、フォトマスクを4等分した形状であることが一般的だった。
【0029】
しかしながら、近年では、テンプレートは、ウエハ基板から作製されることも多く、テンプレートの厚さ、材料、形状は、上記のような厚さ、材料、形状でないことも多くなっている(一般に、ウエハ基板から作製されるテンプレートは、フォトマスクから作製されるテンプレートよりも薄いことが多い)。
【0030】
よって、従来のテンプレートチャックのように、テンプレートの厚さや、材料や、形状の変更により、そのテンプレート保持性能及び変形制御性能が悪化してしまうと、近年のナノインプリントには不都合であることが多い。
【0031】
これに対し、本実施形態のテンプレートチャック111は、図2に示すように、第1及び第2の構造体401,402により、テンプレート101を上下方向から挟み込んで保持する。よって、本実施形態では、第1の構造体401と第2の構造体402との距離を変化させることで、様々な厚さのテンプレート101を保持することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、テンプレート101が第2の構造体402により下方から支えられているため、変形制御装置404による応力や、第1の構造体401による吸着力が弱くても、テンプレート101を保持することができる。よって、本実施形態では、応力が強いと高次歪みの発生や破損のおそれのある、薄いテンプレート101や、もろい材料で形成されたテンプレート101や、小型のテンプレート101も、高次歪みや破損を回避しつつ保持することができる。
【0033】
このように、本実施形態によれば、様々な厚さ、材料、形状のテンプレート101を保持することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、変形制御装置404は、接触部材403を介してテンプレート101に応力を加えることで、テンプレート101の変形制御を行う。具体的には、変形制御装置404が接触部材403に応力を加え、その結果、接触部材403からテンプレート101に応力が加わる。
【0035】
これにより、本実施形態では、テンプレート101の側面S3に接触する役割を変形制御装置404から切り離し、接触部材403を、テンプレート101の側面S3に接触するのに適した構成とし、変形制御装置404を、テンプレート101に応力を加えるのに適した構成とすることが可能となる。
【0036】
例えば、本実施形態では、図2に示すように、接触部材403の厚さを、テンプレート101の厚さよりも厚く設定する。これにより、本実施形態では、変形制御装置404と接触部材403との接触面積を、変形制御装置404とテンプレート101とを直接接触させる場合における変形制御装置404とテンプレート101との接触面積に比べ、広くすることが可能となる。
【0037】
このような構成には、変形制御装置404と接触部材403との接触面積が広いことにより、変形制御装置404がテンプレート101を保持しやすくなり、テンプレートチャック111のテンプレート保持性能が向上されるという効果がある。
【0038】
更には、変形制御装置404がテンプレート101に応力を加えやすくなり、変形制御装置404が、必要以上に大きな力を発生する必要がなくなる。これにより、本実施形態では、テンプレート101に過大な応力が加わることや、テンプレート101に高次の歪み成分が発生することが防止され、様々な厚さ、材料、形状のテンプレート101の変形制御を行うことが可能となる。
【0039】
以上のように、本実施形態では、テンプレートチャック111を、上記のような第1の構造体401、第2の構造体402、接触部材403、及び変形制御装置404を用いて構成することにより、様々な厚さ、材料、形状のテンプレート101の保持及び変形制御が可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、第1の構造体401、第2の構造体402、各接触部材403は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されている。これにより、これらを個別に駆動させて、様々な厚さ、材料、形状のテンプレート101の保持及び変形制御に対処することが可能となっている。本実施形態では、第1及び第2の構造体401,402は上下方向に、各接触部材403は水平方向に駆動可能なよう構成されており、特に、各接触部材403は、対向する側面S3の垂直方向に駆動可能なよう構成されている。
【0041】
以下、図3から図9を参照して、テンプレートチャック111の構成についてより詳細に説明する。
【0042】
図3は、図2に示すテンプレートチャック111を拡大して示した側方断面図である。
【0043】
第1の構造体401は、図3に示すように、その下面に複数のピン411を有する。同様に、第2の構造体402は、その上面に複数のピン412を有する。第1及び第2の構造体401,402はそれぞれ、テンプレート101の上面S1及び下面S2に対し、これら複数のピン411,412で接触するよう構成されている。
【0044】
図4は、図2に示すテンプレートチャック111を拡大して示した上面図である。
【0045】
図4には、第2の構造体402を上方から見た様子が示されており、図3と同様、第2の構造体402の上面に設けられた複数のピン412が示されている。図4に示すX方向及びY方向は、いずれも水平方向を表しており、互いに直交している。
【0046】
ここで、ピン411,412の機能について詳細に説明する。
【0047】
テンプレート101の形状を、被転写基板201(図1)上のパターンの歪みに合うように歪ませるためには、テンプレート101に対し、水平方向の応力だけでなく、上下方向の圧力も加える必要がある場合がある。変形制御装置404が、テンプレート101に対して水平方向の応力を加える機能を有するのに対し、ピン411,412は、テンプレート101に対し垂直方向の圧力を加える機能を有している。理由は、第1及び第2の構造体401,402による圧力がピン411,412に集中することで、ピン411,412からテンプレート101に垂直方向に大きな圧力が掛かるからである。
【0048】
なお、ピン411,412の配置の仕方については、特に制限はなく、図4に示す配置以外にも、様々な配置を採用可能である。
【0049】
また、ピン411,412は、水平方向や上下方向に移動できるよう構成することが望ましい。例えば、ピン411,412は、図4に示すように、XY平面内において任意の方向に移動可能であることが望ましい。
【0050】
ピン411,412の配置や移動の詳細については、後述する。
【0051】
図5は、図2に示すテンプレートチャック111の構成を示す上面図である。
【0052】
図5には、テンプレート101と、テンプレート101を下方から支持する第2の構造体402と、テンプレート101に側方から接する接触部材403が示されている。図5には更に、第2の構造体402の上面に設けられた複数のピン412が示されている。
【0053】
テンプレート101には、図5に示すように、その4つの側面方向から接触部材403を介して応力が加えられる。また、テンプレート101には更に、その下面方向からピン412により圧力が加えられる。本実施形態では、ピン412は、テンプレート101の4つの側面の下部近傍に配置されている。
【0054】
図6は、テンプレート101の変形制御について説明するための上面図である。
【0055】
図6(A)には、テンプレート101そのものにXY方向の歪みが生じている様子が示されている。この場合には、テンプレート101に対し、図6(A)にて矢印で示すような応力を加えることで、テンプレート101の歪みを解消することができる(図6(B))。
【0056】
なお、テンプレート101の平面形状を、被転写基板201上のパターンの歪みに合うように歪ませる場合にも、図6の場合と同様にしてテンプレート101に応力を加える。
【0057】
図7は、テンプレート101の断面形状を模式的に示した側方断面図である。
【0058】
図7には、テンプレート101そのものに上下方向の歪みが生じている様子が示されている。このようなテンプレート101の歪みは、ピン411,412による圧力により解消することが可能である。これについては、図8を参照して説明する。
【0059】
図8は、ピン411,412からテンプレート101に圧力が加えられる様子を示した側方断面図である。
【0060】
本実施形態のピン411,412は、上述のように、上下移動が可能なよう構成されている。図8には、このことを利用して、図7に示すテンプレート101の歪みを解消している様子が示されている。図8では、左上のピン411がテンプレート101に下向きの圧力Pを加え、右下のピン412がテンプレート101に上向きの圧力P’を加えることで、テンプレート101の歪みが解消されている。なお、図8における右上のピン411と左下のピン412は、テンプレート101を単に支持する程度に突き出た状態となっている。
【0061】
このように、第1及び第2の構造体401,402のピン411,412は、様々な厚さのテンプレート101の保持を可能とする効果と、テンプレート101の上下方向の歪みを解消する(又はテンプレート101に上下方向の歪みを与える)効果を有する。
【0062】
図9は、第2の構造体402のピン412が上下方向及び水平方向に動く様子を示した上面図及び側方断面図である。
【0063】
図9(A)及び(B)は、標準状態におけるピン412の位置を示した上面図及び側方断面図である。一方、図9(C)及び(D)は、ピン412が標準状態における位置から上下方向及び水平方向に移動した様子を示した上面図及び側方断面図である。
【0064】
このように、本実施形態のピン412は、上下方向及び水平方向に移動可能なよう構成されている。図9(B)及び(D)には、このようなピン412の移動により、テンプレート101の歪みが解消される様子が示されている。
【0065】
なお、図9では、第2の構造体402のピン412の移動について説明したが、第1の構造体401のピン411の移動の仕方についても、これと同様である。
【0066】
以下、図2を再び参照して、テンプレート101の歪み、及びテンプレート101上のパターンの位置ずれを補正するための制御方法について説明する。
【0067】
図2には、テンプレート101を構成するテンプレート基板301及びパターン面302と、テンプレート基板301に設けられたアライメントマーク303と、パターン面302に設けられたアライメントマーク304が示されている。
【0068】
テンプレート101の歪みについては、テンプレート基板301のアライメントマーク303の位置を測定することで検出可能である。また、テンプレート101上のパターンの位置ずれについては、更にパターン面302のアライメントマーク304の位置を測定することで検出可能である。
【0069】
そこで、本実施形態のナノインプリント装置では、ナノインプリント処理の開始前に、アライメントマーク303,304の位置を測定することで、テンプレート101の歪みに関する情報と、テンプレート101上のパターンの位置ずれに関する情報を、予め取得しておく。
【0070】
更には、ナノインプリント装置内の制御部(例えばプロセッサ)が、これらの情報を利用して、テンプレート101の歪み、及びテンプレート101上のパターンの位置ずれを補正するための制御パラメータを予め計算しておく。そして、計算された制御パラメータを、ナノインプリント装置内の記憶部(例えばフラッシュメモリ)に予め保存しておく。
【0071】
これにより、本実施形態では、ナノインプリント処理の実行時に、当該制御パラメータを利用することで、テンプレート101の歪み、及びテンプレート101上のパターンの位置ずれを精度良く補正することが可能となる。
【0072】
制御パラメータの例としては、変形制御装置404がテンプレート101に加える応力の大きさ、ピン411,412の位置及び圧力、テンプレートチャック111の温度、テンプレート101の温度等が挙げられる。制御パラメータとして、例えば、これらのうちのいずれか1つ以上を使用可能である。
【0073】
以上のように、本実施形態では、テンプレート101を第1及び第2の構造体401,402により上下方向から挟み込んで保持する。更には、テンプレート101の側面に変形制御装置404から接触部材403を介して応力を加えることで、テンプレート101の変形制御を行う。これにより、本実施形態では、様々な厚さ、材料、形状のテンプレート101の保持及び変形制御が可能となる。
【0074】
更に、本実施形態では、第1の構造体401、第2の構造体402、各接触部材403は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されている。これにより、これらを個別に駆動させることで、様々な厚さ、材料、形状のテンプレート101の保持及び変形制御に対処することが可能となる。
【0075】
更に、本実施形態では、第1及び第2の構造体401,402がそれぞれ、テンプレート101の上面S1及び下面S2に対し、複数のピン411,412で接触するよう構成されている。これにより、本実施形態では、テンプレート101に対し、水平方向の応力だけでなく、上下方向の圧力を加えることが可能となる。
【0076】
以下、第1実施形態の変形例である第2及び第3実施形態について説明する。第2及び第3実施形態については、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0077】
(第2実施形態)
図10及び図11は、第2実施形態のテンプレートチャック111の構成を示す側方断面図である。図11は、図10に示すテンプレートチャック111を拡大して示した側方断面図となっている。
【0078】
本実施形態では、第1及び第2の構造体401,402にピン411,412は設けられておらず、第1及び第2の構造体401,402はそれぞれ、テンプレート101の上面S1及び下面S2に対し、面接触するよう構成されている(図10及び図11)。
【0079】
また、本実施形態のテンプレート101には、図11に示すように、その下面S2に凹部321が形成されている。そして、第2の構造体402の上面には、この凹部321に差し込むための凸部421が設けられている。逆に言えば、本実施形態のテンプレート101には、第2の構造体402の凸部421を差し込むための凹部321が形成されているとも言える。
【0080】
そして、第2の構造体402は、上下方向だけでなく、水平方向にも駆動可能なように構成されている(図11)。これにより、本実施形態では、変形制御装置404による応力だけでなく、第2の構造体402を水平方向に駆動させることでも、テンプレート101の変形制御を行うことが可能となっている。
【0081】
本実施形態では、図11に示すように、第2の構造体402を外向きに駆動させることで、テンプレート101を伸ばす方向に変形制御を行うことができる。また、第2の構造体402を内向きに駆動させることで、テンプレート101を縮ませる方向に変形制御を行うことができる。
【0082】
図12は、第2実施形態のテンプレート101に設けられた凹部321の形状を示した上面図である。
【0083】
図12(A)及び(B)には、4つの第2の構造体402の凸部421を差し込むための凹部321の平面形状の例が示されている。図12(A)のテンプレート101には、これらの凸部421用に、1つの環状の凹部321が設けられている。一方、図12(B)のテンプレート101には、これらの凸部421用に、4つの凹部321が設けられている。本実施形態では、図12(A)及び(B)のいずれの凹部321を採用しても構わない。
【0084】
以上のように、本実施形態では、第1及び第2の構造体401,402はそれぞれ、テンプレート101の上面S1及び下面S2に対し、面接触するよう構成されている。更に、第2の構造体402の上面には、テンプレート101の下面S2に設けられた凹部321に差し込むための凸部421が設けられている。これにより、本実施形態では、変形制御装置404による応力だけでなく、第2の構造体402を水平方向に駆動させることでも、テンプレート101の変形制御を行うことが可能となる。
【0085】
(第3実施形態)
図13及び図14は、第3実施形態のテンプレートチャック111の構成を示す側方断面図である。図14は、図13に示すテンプレートチャック111を拡大して示した側方断面図となっている。
【0086】
本実施形態では、第2実施形態と同様、第1及び第2の構造体401,402にピン411,412は設けられておらず、第1及び第2の構造体401,402はそれぞれ、テンプレート101の上面S1及び下面S2に対し、面接触するよう構成されている(図13及び図14)。
【0087】
また、本実施形態では、テンプレート101の側面331(S3)と、各接触部材403の側面431は、図14に示すように、互いに適合するテーパー形状を有している。すなわち、テンプレート101の側面331と、各接触部材403の側面431は、同じ傾斜角度を有するテーパー面となっている。
【0088】
これにより、本実施形態では、テンプレート101と接触部材403との接触面積が、テーパーがない場合に比べて広くなっている。このことには、変形制御装置404及び接触部材403が、テンプレート101を保持しやすくなる、テンプレート101に応力を加えやすくなる等の効果がある。
【0089】
図14では、テンプレート101の上面S1に対する側面S3の角度が、θで示されている。本実施形態では、角度θは、30度から60度、例えば、約45度に設定される。角度θの値は、全側面S3で共通でもよいし、各側面S3ごとに異なっていてもよい。後者の場合には、一部の側面S3のみがテーパー形状を有するようにしても構わない。
【0090】
以上のように、本実施形態では、第1及び第2の構造体401,402はそれぞれ、テンプレート101の上面S1及び下面S2に対し、面接触するよう構成されている。更に、テンプレート101の側面331と、各接触部材403の側面431は、テーパー形状を有している。
【0091】
これにより、本実施形態では、テンプレート101と接触部材403との接触面積が広くなり、変形制御装置404及び接触部材403が、テンプレート101を保持しやすくなり、且つ、テンプレート101に応力を加えやすくなる。
【0092】
なお、図1の説明において、レジスト材202は、UV光によって硬化するとしたが、UV光以外の電磁波や熱によって硬化するようにしても構わない。
【0093】
また、第1実施形態において、種々の制御パラメータの例を示したが、制御パラメータの更なる例として、第2及び第3実施形態の第1及び第2の構造体401,402とテンプレート101との接触面積の大きさが挙げられる。
【0094】
また、第1から第3実施形態は、これらのうちの2つ以上を組み合わせて採用しても構わない。例えば、第1の実施形態と第3の実施形態を組み合わせて、第1及び第2の構造体401,402にピン411,412を設けると共に、テンプレート101の側面331と各接触部材403の側面431をテーパー形状としても構わない。
【0095】
以上、本発明の具体的な態様の例を、第1から第3実施形態により説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
101 テンプレート
111 テンプレートチャック
112 ベース
113 アライメントセンサ
114 UV光源
115 CCDカメラ
201 被転写基板
202 レジスト材
211 試料ステージ
212 試料チャック
301 テンプレート基板
302 パターン面
303 アライメントマーク
304 アライメントマーク
321 凹部
331 テーパー面
401 第1の構造体
402 第2の構造体
403 接触部材
404 変形制御装置
411 ピン
412 ピン
421 凸部
431 テーパー面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリント装置用のテンプレートチャックであって、
テンプレートの上面及び下面にそれぞれ接触させて、前記テンプレートを上下方向から挟み込むための第1及び第2の構造体と、
前記テンプレートの側面に接触させて、前記テンプレートを側面方向から挟み込むための複数の接触部材と、
前記複数の接触部材を介して前記テンプレートに応力を加えることで、前記テンプレートを変形させる変形制御装置とを備え、
前記第1の構造体、前記第2の構造体、及び前記複数の接触部材は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されていることを特徴とするテンプレートチャック。
【請求項2】
前記第1及び第2の構造体はそれぞれ、前記テンプレートの上面及び下面に対し複数のピンで接触するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のテンプレートチャック。
【請求項3】
前記第1及び第2の構造体はそれぞれ、前記テンプレートの上面及び下面に対し面接触するよう構成されており、
前記第2の構造体の上面には、前記テンプレートの下面に設けられた凹部に差し込むための凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のテンプレートチャック。
【請求項4】
前記第1及び第2の構造体はそれぞれ、前記テンプレートの上面及び下面に対し面接触するよう構成されており、
前記複数の接触部材の側面と、前記テンプレートの側面は、テーパー形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のテンプレートチャック。
【請求項5】
テンプレートの上面及び下面にそれぞれ接触させて、前記テンプレートを上下方向から挟み込むための第1及び第2の構造体と、
前記テンプレートの側面に接触させて、前記テンプレートを側面方向から挟み込むための複数の接触部材と、
前記複数の接触部材を介して前記テンプレートに応力を加えることで、前記テンプレートを変形させる変形制御装置と、
前記テンプレートを被転写基板上のレジスト材に接触させた状態で、前記レジスト材に光を照射して、前記レジスト材を硬化するための光源とを備え、
前記第1の構造体、前記第2の構造体、及び前記複数の接触部材は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されていることを特徴とするインプリント装置。
【請求項6】
テンプレートの上面及び下面にそれぞれ第1及び第2の構造体を接触させて、前記テンプレートを前記第1及び第2の構造体により上下方向から挟み込み、
前記テンプレートの側面に複数の接触部材を接触させて、前記テンプレートを前記複数の接触部材により側面方向から挟み込み、
前記複数の接触部材を介して前記テンプレートに応力を加えることで、前記テンプレートを変形させ、
前記テンプレートを被転写基板上のレジスト材に接触させた状態で、前記レジスト材を硬化して、前記被転写基板上にレジストパターンを形成する、
パターン形成方法であって、
前記第1の構造体、前記第2の構造体、及び前記複数の接触部材は、それぞれが個別に駆動可能なよう構成されていることを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−60079(P2012−60079A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204728(P2010−204728)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】