説明

ディゲート装置及びそれを備えた樹脂モールド装置

【課題】パッケージ部の両側に接続する不要樹脂を効率よく分離できるディゲート装置を提供する。
【解決手段】ディゲートパレット27に載置された成形品18に対してディゲートハンド28の1回目の上下動で第1不要樹脂18dを切断刃44dにより分離し、2回目の上下動とディゲートパレット27の回動軸31を中心とする回転との組み合わせで第2不要樹脂18cを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂モールドされた成形品のパッケージ部の両側に接続する第1,第2不要樹脂を各々分離するディゲート装置及びそれを備えた樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトランスファー成形などによる樹脂モールド装置においては、プレス装置で成型された成形品がアンローダーなどにより取りだされ、ディゲート部へ移送されて成形品カルなどの不要樹脂が分離された成形品のみが収納部へ収納されるようになっている。
【0003】
ディゲート部のディゲート方法について説明すると、例えば、被成形品としてリードフレームを用いた場合、左右一対のディゲートパレットに載置された成形品の中央部に存在する成形品カルを上下で挟み込んだまま、ディゲートパレットを押動ロッド等により成形品カル近傍に設けられた回動軸を中心にV字状になるように回転させてディゲートを行ない、不要樹脂を分離する方式が知られている(特許文献1)。或いはリードフレームに穿孔された孔に充填された不要樹脂を反対側よりピン等で突くことにより、ディゲートする方式もある。
【0004】
また、樹脂基板を用いた場合には、パッケージ部を押さえ部材により押さえたまま不要樹脂を強制的に折り曲げて基板端面に設けられた樹脂厚が薄く形成された分離部で不要樹脂を分離除去する方式も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−290218号公報
【特許文献2】特開2006−269486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、被成形品である基板に対して複数の半導体チップが基板実装されて一括して樹脂封止される製品においては、パッケージ部の領域が広く形成され、基板上に封止樹脂をオーバーフローさせる領域が確保できない場合がある。一般に、モールド金型のポットインサート(金型カル)から金型ランナ・ゲートを通じて接続する金型キャビティの反対側にエアーベントが設けられるが、このエアーベントが設けられる基板の外側領域に封止樹脂をオーバーフローさせて樹脂モールドされる成形品が存在する。即ち成形品には、パッケージ部の両側に接続する第1,第2不要樹脂が存在する。
【0007】
この場合、従来のディゲート方式では、成形品のパッケージ部の両側に接続する第1,第2不要樹脂を同じ位置で各々分離することができず、第1不要樹脂と第2不要樹脂とに工程を分けてディゲートを行なう必要があり、設置面積も増大しディゲート機構が複雑化・大型化して製造コストも増大する。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、パッケージ部の両側に接続する不要樹脂を効率よく分離できるディゲート装置及びそれを備えてコンパクトに設置可能な樹脂モールド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
樹脂モールドされた成形品のパッケージ部の両側に接続する第1,第2不要樹脂を各々分離するディゲート装置であって、成形品カルを受けるカル受け部の両側に設けられ、成形品を載置したまま回動軸を中心に回動可能に軸支された一対のディゲートパレットと、前記ディゲートパレットの自由端側を支持することで水平姿勢を維持するパレット支持手段と、前記一対のディゲートパレットに対向して上下動可能に設けられたディゲートハンド本体に、前記カル受け部に支持された成形品カルを押さえ込むカル押さえ部と、当該カル押さえ部の両側で前記成形品の基板部分をディゲートパレットに押さえ込む基板押さえ部と、前記パッケージ部の成形品カルとは反対側に接続する第1不要樹脂を切断する切断手段と、を備えたディゲートハンドと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記カル押さえ部によって成形品カルをカル受け部に対して押さえ込み、かつ各ディゲートパレットの自由端側に裏面側から当接するパレット支持手段により各々水平方向に支持されたままディゲートハンドが下動して前記切断手段により第1不要樹脂が切断されることを特徴とする。
【0011】
また、前記第1不要樹脂を分離した後、前記ディゲートハンドを上下動させて前記カル押さえ部によって成形品カルをカル受け部に対して押さえ込みかつ一対の基板押さえ部により基板部分をディゲートパレットに押さえ込んだまま、前記パレット支持手段による各ディゲートパレットの支持を外すことにより各ディゲートパレットが回動軸を中心に自由端が下降するように回転して成形品カルに接続する第2不要樹脂が分離されることを特徴とする。
【0012】
また、前記基板押さえ部は、前記ディゲートハンド本体に対して支点軸を中心に回動可能に軸支されている支点プレートに、前記基板部分をディゲートパレットに押さえる押さえブロックを備えた押さえプレートが各々スライド可能に支持されており、前記各ディゲートパレットの回転動作に伴って前記支点プレートが支点軸を中心に回転する回転動作に追従して各押さえプレートが当該支点プレートに対して相対的にスライドすることを特徴とする。
【0013】
樹脂モールド装置にあっては、半導体素子が基板実装された被成形品をポットに対して対向配置させる供給部と、前記供給ステージに供給された被成形品がローダーによって搬入されて樹脂モールドされるプレス部と、前記プレス部からアンローダーによって取り出された成形品から上述したディゲート装置によってパッケージ部の両側に接続する第1,第2不要樹脂を各々分離するディゲート部と、前記ディゲート部で第1,第2不要樹脂が分離された製品のみを収納する収納部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記ディゲート装置を用いれば、ディゲートパレットに載置された成形品に対してディゲートハンドの1回目の上下動で第1不要樹脂を切断手段により分離し、2回目の上下動とディゲートパレットの回動軸を中心とする回転動作との組み合わせで第2不要樹脂を分離することができる。よって、ディゲートハンドの上下動を繰り返すだけでパッケージ部の両側に接続する第1,第2不要樹脂を各々効率よく分離することができ、しかも簡易な構成で成形品を移動することなく同じ位置で複数箇所の不要樹脂を除去することができる。
【0015】
また、カル押さえ部によって成形品カルをカル受け部に対して押さえ込み、かつ各ディゲートパレットの自由端側に裏面側から当接するパレット支持手段により各々水平方向に支持されたまま基板押さえ部によって基板部分を押さえつつ切断手段によりパッケージ部の成形品カルとは反対側に接続する第1不要樹脂が切断される。よって、成形品を水平方向に支持されたディゲートパレットに位置決めしつつ確実に第1不要樹脂を分離することができる。
【0016】
また、第1不要樹脂を分離した後、カル押さえ部によって成形品カルをカル受け部に対して押さえ込みかつ基板押さえ部により基板部分を押さえ込んだまま、パレット支持手段による各ディゲートパレットの支持を外すことにより各ディゲートパレットが回動軸を中心に自由端が下降するように回転して成形品カルに接続する第2不要樹脂が切断される。よって、パレット支持手段による各ディゲートパレットの支持を外してディゲートパレットの自由端側を下降させるだけでパッケージ部と第2不要樹脂との接続部に曲げ応力を集中させて分離することができる。
【0017】
また、各ディゲートパレットの回転動作に伴って支点プレートが支点軸を中心に回転する回転動作に追従して各押さえプレートが相対的にスライドする。これにより、回動軸を中心とするディゲートパレットの回転量と支点軸を中心として回転する支点プレートの回転量の差分を押さえプレートが支点プレートに対して相対的にスライドすることで吸収する。よって、ディゲートパレットの回転動作に追従して支点プレートに対して押さえプレートがスライドすることで基板部分を押さえ込んだ押さえブロックの位置がずれることがなくなり、成形品に傷がつくのを防ぐことができる。
【0018】
また、上述したディゲート装置を備えた樹脂モールド装置においては、ディゲート装置をコンパクトに設置することができるうえに、成形品の成形品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】樹脂モールド装置の全体構成例を示す平面レイアウト図である。
【図2】成形品カルを挟み込んだ状態のディゲート装置の正面説明図である。
【図3】第1不要樹脂を切断した状態のディゲート装置の正面説明図である。
【図4】ディゲートハンドが上昇した状態のディゲート装置の正面説明図である。
【図5】支えシリンダを下降させて第2不要樹脂を切断した状態のディゲート装置の正面説明図である。
【図6】ディゲート装置のディゲートパレット側の平面図である。
【図7】ディゲートパレットを支持する支えシリンダの動作を示す説明図である。
【図8】ディゲートハンド昇降に伴うカル受け部の動作を示す説明図である。
【図9】上成形品カル及び上パッケージ部の成形品平面図及び右側面図である。
【図10】図9の成形品から第1不要樹脂及び第2不要樹脂を分離する状態説明図である。
【図11】下成形品カル及び下パッケージ部の成形品平面図及び左側面図である。
【図12】図11の成形品から第1不要樹脂及び第2不要樹脂を分離する状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下の実施形態では、上型側にキャビティ凹部が形成され下型側にポットが形成されるモールド金型を用いたトランスファー成形装置を用いて説明する。また、トランスファー成形装置では、下型を可動型とし上型を固定型として説明する。
【0021】
(樹脂モールド装置の全体構成)
図1は、本発明に係る樹脂モールド装置の一実施形態の各部の平面配置を示す。本実施形態の樹脂モールド装置は、被成形品の供給部A、被成形品の厚さ計測部B、被成形品のプレス部C、樹脂モールド後の成形品の収納部D及び搬送機構Eを備える。また、厚さ計測部Bとプレス部Cとの間にプリヒート部Fが設けられている。以下各部の構成について具体的に説明する。
【0022】
(被成形品の供給部A)
被成形品の供給部Aは、短冊状に形成された被成形品1を収納した供給マガジン2を複数備えた供給ストッカ3と、供給マガジン2から被成形品1を突き出すプッシャ4と、プッシャ4によって突き出された被成形品1を向かい合わせに並べ替えるターンテーブル5とを備える。ターンテーブル5の奥側には、対向配置された一対の被成形品1を、相互の配置位置を保持した状態でセットする供給ステージ(セット台)6が配置されている。供給ステージ6の側方には後述するモールド金型のポットの平面配置に合わせて樹脂タブレット7を供給するための樹脂タブレットの供給部8が設けられている。
【0023】
本実施形態の樹脂モールド装置において樹脂モールドの対象とする被成形品1としては、例えば短冊状に形成された樹脂基板上に複数の半導体チップが基板実装されている。半導体チップは基板に1段あるいは複数段に実装されていても良い。半導体チップはブロック単位で形成されたキャビティごとに樹脂モールドされるようになっている。或いは複数半導体チップを一つのキャビティに収容して樹脂モールドする場合や半導体チップに応じて個別に形成されたキャビティに収容して樹脂モールドされる製品などであっても良い。成形品18について説明すると、2枚1組で樹脂モールドされ基板18eの長手方向にパッケージ部18aが複数箇所に形成される。パッケージ部18aの両側には成形品カル18bに接続する第2不要樹脂18cとその反対側に接続する第1不要樹脂18dが一体に形成される(図9参照)。
【0024】
(厚さ計測部B)
被成形品1の厚さ計測部Bは、供給部Aからプレス部Cへ搬送される間に被成形品1の厚さを計測する。具体的にはローダー24から被成形品1を移載されて保持したまま搬送する搬送プレート9と、当該搬送プレート9をX−Y方向に走査可能なX−Y走査機構(図示せず)と、搬送プレート9の搬送路下に被成形品1に対応して配置され、半導体チップを含む基板の総厚及び基板のみの厚さを測定する測定装置11を備えている。
【0025】
(プリヒート部F)
厚さ計測部Bにおいて被成形品1の厚さが計測された被成形品1は、移載部12において、後述するピックアンドプレース12aによって被成形品1が搬送プレート9から移送機構に支持されたヒータブロック13に移載される。ヒータブロック13は、被成形品1を載置したまま後述する移送機構により受取位置からローダー24への引渡し位置まで移送される。そして、ヒータブロック13は移送路の途中に設けられたトンネルカバー14にて所定時間停止することで集中的にプリヒートされて、ローダー24が待機する引渡し位置まで搬送される。トンネルカバー14は、測定装置11に隣接する位置に設けられている。
【0026】
(プレス部C)
プレス部Cは、被成形品1をクランプして樹脂モールドするモールド金型が装着されたプレス装置15が設けられている。プレス装置15は、下型を型開閉方向に押動するプレス機構、モールド金型のポット内で溶融した樹脂をポットからキャビティに充填するトランスファー機構を備える。プレス装置15におけるプレス機構及びトランスファー機構は、公知の樹脂モールド装置に用いられているプレス部の機構と同様である。本実施形態の樹脂モールド装置において特徴とする構成は、被成形品1を樹脂モールドする際に、前述した被成形品の厚さ計測部Bにおける計測結果に基づいて、上型のキャビティインサート(キャビティ深さを規定するインサートブロック)の移動量を制御するようになっている。プレス装置15には例えば上型のインサート部材を型開閉方向に押動する金型駆動機構16と、キャビティインサートのクランプ面を覆う長尺状のリリースフィルムをリール間で繰り出し及び巻き取りを繰り返すフィルム供給機構17が設けられている。尚、モールド金型は、下型にキャビティが形成されていても良い。
【0027】
リリースフィルムは上型面にインサートブロック間の隙間を利用した公知の吸引機構により吸着保持されるようになっている。リリースフィルムとしては、モールド金型の加熱温度に耐えられる耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。リリースフィルムは、例えば長尺状のフィルム材が用いられ、ロール状に巻き取られた繰出しリールから引き出されて上型クランプ面を通過して巻取りリールへ巻き取られるように設けられる。
【0028】
(ディゲート部G)
プレス部Cからアンローダー25によって取り出し部19に取り出された成形品18は、ディゲート装置20に移送される。ディゲート装置20は、成形品18のパッケージ部18aの両側に接続する第1,第2不要樹脂18d,18cを各々分離する。具体的には、ディゲート装置20は、パッケージ部18aを挟んで成形品カル18bと接続する第2不要樹脂18c及びパッケージ部18aの反対側に接続する第1不要樹脂18dを各々分離する(図6参照)。
【0029】
(成形品の収納部D)
成形品の収納部Dは、ディゲート部Gで不要樹脂が除去された製品21を収納する収納マガジン22を備える。製品21は収納マガジン22に収納され、該収納マガジン22は収納ストッカ23に順次収容される。
【0030】
(搬送機構E)
搬送機構Eはプレス部Cへ被成形品1を搬送するローダー24とプレス部Cから成形品を搬送するアンローダー25を備えている。ローダー24及びアンローダー25は、直列に配置された供給部A、厚さ計測部B、プリヒート部F、プレス部C、収納部D間に連結されたガイドレール26を共用して移動し、プレス部Cに対して各々進退移動可能に設けられている。ローダー24は、供給部Aから被成形品1である基板及び樹脂タブレット7を受け取り、被成形品1を搬送プレート9へ受け渡し、ヒータブロック13でプリヒートされた被成形品1を受け取って、これらをプレス部Cの型開きしたモールド金型へ搬入する動作を繰り返す。また、アンローダー25は、樹脂モールド後に離型した成形品18をモールド金型より受け取って、収納部Dの取り出し部19へ移載する動作を繰り返す。
【0031】
したがって、樹脂モールド装置を構成するユニットを変えてもガイドレール26を連結することで搬送機構Eを変更することなく装置構成を変更することができる。たとえば、図1に示す例は、プレス装置15を1台設置した例であるが、プレス部Cや厚さ計測部Bを複数台連結した樹脂モールド装置を構成することも可能である。
【0032】
(ディゲート装置20の具体的な構成例)
ここで、ディゲート装置20の具体的な構成例について、図2乃至図8を参照して説明する。図2において、ディゲート装置20は、成形品18を載置する左右一対のディゲートパレット27と、これに対向して上下動可能に設けられたディゲートハンド28を備えている。
【0033】
図6において、ディゲートパレット27は、枠体29内の中央部を仕切るように支持されたカル受け部30の両側に長手方向沿って近接して設けられている。各ディゲートパレット27は、その長手方向両側においてカル受け部30と近接する枠体29の短辺部29aに設けられた回動軸31を中心に回動(正逆いずれの方向にも回転)可能に組み付けられている。また、枠体29には、上記一対のディゲートパレット27の自由端側の上面に当接して上方向への回転を規制するパレットストッパ32が枠体29の長辺部29bに2か所に設けられている。
【0034】
また、図7に示すようにディゲートパレット27の自由端側の反対面(裏面)側には、支えシリンダ33(パレット支持手段)が長手方向両端側を支え、下動可能に設けられている。図7の右半図に示すように、ディゲートパレット27は支えシリンダ33を上動させた状態でパレットストッパ32との間で挟み込まれて回動軸31から自由端が水平方向となるように支持されている。
【0035】
図7において、カル受け部30は、枠体29(短辺部29a)に支持された支持プレート34に固定された支持台35に支持されている。支持プレート34と対向するディゲートパレット27との間にはパレット支えばね36がディゲートパレット27の長手方向に複数箇所に設けられている。
このパレット支えばね36は、図7左半図に示すように、支えシリンダ33が下動してディゲートパレット27の支持を外したときに、当該ディゲートパレット27が回動軸31を中心に自由端が下がる向きに回転する際に圧縮されて荷重を受け止めるために設けられている。また、ディゲートパレット27の自由端には、ディゲートパレット27のパレットストッパ32に対する突き当て位置を調整するためのパレットストッパ調整ねじ27aが設けられている。
【0036】
図8において、支持プレート34は、枠体29に支持され、支持ばね37を介して常時カル受け部30を下方に付勢している。カル受け部30は、支持機構38が上動することにより圧縮ばね37に抗して上動する。ディゲートハンド28により成形品カル18bをカル押さえ部40にて押圧して挟み込む際の荷重を受け止める。支持機構38は、上下動シリンダ39によってカル受け部30を上下動可能に支持している。
【0037】
また、図2において、ディゲートハンド28は、ディゲートハンド本体28aにカル押さえ部40とその両側に一対の基板押さえ部41が吊り下げ支持されている。カル押さえ部40は、ディゲートハンド本体28aの中央部にカル受け部30に対向して配置され、後述するように成形品カル18bを対向するカル受け部30に対して押さえ込む。カル押さえ部40は、ディゲートハンド本体28aを上下に貫通する吊り下げロッド40aによって吊り下げ支持されている。吊り下げロッド40aの上端にはストッパ40bが設けられ、下端側にはスペーサ40cが同軸状に設けられている。カル押さえ部40は、下端位置がストッパ40bにより上端位置がスペーサ40cにより規定されるように吊り下げ支持されている。
【0038】
基板押さえ部41は、対向するディゲートパレット27に載置された成形品18のパッケージ部18a以外の基板部分(基板18e;図9参照)を押さえる。基板押さえ部41は、ディゲートハンド本体28aを上下に貫通する吊り下げロッド41aに基板押さえ部本体41bが吊り下げ支持されている。吊り下げロッド41aの上端部とディゲートハンド本体28aとの間には吊り下げばね41cが設けられており、吊り下げロッド41aを上方へ向けて付勢している。
【0039】
基板押さえ部本体41bには支点プレート42が支点軸42aを中心に回転可能に組み付けられている。支点プレート42の下面側には直動ガイド42bが設けられている。直動ガイド42bは、ガイドレール43aが設けられた押さえプレート43を支持している。後述するように各ディゲートパレット27の回転動作に伴って支点プレート42が支点軸42aを中心に回転する回転動作に追従して押さえプレート43が当該支点プレート42に対して相対的にスライドする。また、支点プレート42には、押さえプレート43のスライドを規制する規制ばね42cが設けられている。
【0040】
また、押さえプレート43の下面には、パッケージ部18aと第2不要樹脂18cとの境界部に相当する基板18eを押さえる第2押さえブロック44aと、パッケージ部18aと第1不要樹脂18dとの境界部に相当する基板18eを押さえる第1押さえブロック44bが設けられている。第1押さえブロック44bは、押さえプレート43に押圧ばね44cを介して吊り下げ支持されており、第2押さえブロック44aより下方に突出して配置されている。また、第1押さえブロック44bより外側であって押さえプレート43の外側面部には切断刃44d(切断手段)が固定されている。切断刃44dの下端は第1押さえブロック44bの下端より上方となるように組み付けられている。切断刃44dは、パッケージ部18aに接続する第1不要樹脂18dを切断する。
尚、ディゲートハンド28は、図示しない上下動シリンダによってディゲートハンド本体28aが上下動するようになっている。
【0041】
次に、上述のように構成されたディゲート装置20のディゲート動作の一例について図2乃至図5を参照して説明する。
図2において、カル受け部30を支持する支持機構38を通じて上昇させ(図8参照)、かつ支えシリンダ33を上動させて一対のディゲートパレット27の自由端側の下面を支持して上面をパレットストッパ32に突き当てて水平方向に支持しておく。この状態で、ディゲートパレット27に成形品18が載置される。そして、ディゲートハンド28を下動させて先ずカル押さえ部40によって成形品カル18bをカル受け部30との間で挟み込んで固定する。
【0042】
図3において、上記ディゲートハンド28を更に下動させると、第1押さえブロック44bがパッケージ部18aと第1不要樹脂18dとの境界部に相当する基板18eを押さえると共に更なるハンド28の下動により切断刃44dが第1不要樹脂44dをパッケージ部18aから切断する。このときの成形品カル18bを挟み込んだままディゲートハンド28が下動する際の押し込み量は、カル受けばね(図示せず)と支持ばね37(図7,図8参照)によって吸収される。
【0043】
次に図4において、第1不要樹脂18dを分離した後、一端ディゲートハンド28を上昇させる。このとき、第1押さえブロック44bは基板18eより離間する位置まで上昇するが、カル押さえ部40によって成形品カル18bはカル受け部30に対して押さえ込まれたままである。
【0044】
次に図5において再度ディゲートハンド28を下降させて、先ず、第1押さえブロック44bにより基板18eを押さえ、更に第2押さえブロック44aによってパッケージ部18aと第1不要樹脂18cとの境界部に相当する基板18eを押さえる。このとき、第1押さえブロック44bの押圧力が強まるのを押圧ばね44cが吸収する。
【0045】
次いで、支えシリンダ33を退避させて各ディゲートパレット27の支持を外す。このとき、ディゲートパレット27は回動軸31を中心に自由端側が下方に回転する。このとき、ディゲートパレット27は、支持プレート34に設けられたパレット支えばね36を押し縮めた状態(図7参照)でハの字状に傾斜して支持される。
【0046】
また、各ディゲートパレット27の回転動作に伴って支点プレート42が支点軸42aを中心に回転する回転動作に追従して各押さえプレート43(第2押さえブロック44a,第1押さえブロック44b)が相対的にスライドする。これにより、回動軸31を中心とするディゲートパレット27の回転量と支点軸42aを中心として回転する支点プレート42の回転量の差分を押さえプレート43が支点プレート42に対して相対的にスライドすることで吸収する。
【0047】
これによりパッケージ部18aと第2不要樹脂18cとの境界部に相当する基板18eを第2押さえブロック44aにより位置ずれすることなく押さえたままディゲートパレット27が回転するのでパッケージ部18aと第2不要樹脂18cの接続部に曲げ応力が集中して第2不要樹脂18cが分離される。
【0048】
最後に支えシリンダ33を上動させてディゲートパレット27を水平状態に戻して、ディゲートハンド28を上昇させる。また、ストッパ40bを上より押えていたシリンダ(図示せず)を上昇させることで、支持機構38が更に上昇し、カル受け部30が成形品カル18bを挟んだまま上昇し、カル押さえ部40内に内蔵した吸着パッド(図示せず)により吸着される。ストッパ40bが更に上昇すると、成形品カルを吸着したままカル押さえ部40がカル受け部30より離れて上昇する。
【0049】
ディゲートパレット27に載置された不要樹脂が除去された製品21は、横に移動し、図示しないピックアップ若しくは移送テーブルなどの移送手段によって収納部Dへ移送され、収納マガジン22内へ収納される。また、ディゲートパレット27が移動した後のディゲート装置20では、成形品カル18bを吸着したカル押さえ部40の吸引を解除すると成形品カル18bがそのまま落下し、スクラップボックスに投入される。
【0050】
次に、樹脂モールド動作の一例について図1を参照して説明する。
供給ステージ6にポットに対向して載置された被成形品1は、ローダー24によって保持され、次いで樹脂タブレット供給部8より供給された樹脂タブレット7が保持された搬送プレート9に搬送されて、被成形品1は搬送プレート9に移載される。
搬送プレート9は、図示しないX−Y走査機構により測定装置11を通過する際に被成形品1の半導体チップエリアの総厚及び個々の被成形品1の基板エリアの板厚計測が行なわれる。厚さ計測の結果は制御部50に転送され、制御部50は計測結果に応じて金型駆動機構16を作動させてキャビティインサートの移動量(キャビティ深さ)を調整する。
【0051】
厚さ計測された後搬送プレート9は、移載部12に設けられたピックアンドプレースによって保持されてヒータブロック13に移載される。ヒータブロック13に載置された被成形品1は予備加熱が開始され、ヒータブロック13がプリヒート位置Rに設けられたトンネルカバー14内において停止することにより集中的に予備加熱される。その後ヒータブロック13は、ローダー24が待機する引渡し位置Qへヒータブロック13により搬送される。
そして、ローダー24はヒータブロック13からプリヒートされた被成形品1を受け取ってプレス部Cまでガイドレール26に沿って移動すると、公知の進退機構によってモールド金型へ被成形品1と樹脂タブレット7が搬入される。
【0052】
被成形品1及び樹脂タブレット7がモールド金型に搬入されるとヒータ(図示せず)によって加熱される。プレス装置15からローダー24が退出した後、モールド金型により被成形品1がクランプされ、キャビティに樹脂が充填されて樹脂モールドされる。この樹脂モールド操作においては、先に計測した当該被成形品1の厚さ計測結果に基づいて、予め制御部50により金型駆動機構16を駆動してキャビティ容量が調整された状態で樹脂モールドされる。
【0053】
樹脂モールド後、アンローダー25がプレス装置15内に進入し、成形品18を取り上げてプレス装置15から搬出し成形品18を取り出し部19へ移載する。成形品18は取り出し部19からディゲート装置20へ搬送され、成形品18から第2不要樹脂18c及び第1不要樹脂18dを除去され、すべての不要樹脂が除去された製品21は収納マガジン22に順次収納される。
【0054】
図9乃至図12を参照して不要樹脂を含む成形品18の形態について説明する。尚、成形品18には樹脂基板18eが用いられているものとする。
図9(a)(b)は上カル上キャビティのモールド金型による成形品18の説明図である。樹脂基板18eに対してパッケージ部18aが上部、不要樹脂(成形品カル18b、第2不要樹脂18c、第1不要樹脂18d)がすべて樹脂基板18eの上部(上型側)に形成されている。
【0055】
図10(a)(b)(c)は、樹脂モールド後の成形品18、切断刃44dによるパッケージ部18aから第1不要樹脂18dの切断動作、ディゲートパレット27の回転による第2不要樹脂18cの切断動作を示すものである。
【0056】
図11(a)(b)は下カル下キャビティのモールド金型による成形品18の説明図である。樹脂基板18eに対してパッケージ部18aが下部、不要樹脂(成形品カル18b、第2不要樹脂18c、第1不要樹脂18d)がすべて樹脂基板18eの下部(下型側)に形成されている。
【0057】
図12(a)(b)(c)は、樹脂モールド後の成形品18、切断刃44dによるパッケージ部18aから第1不要樹脂18dの切断動作、ディゲートパレット27の回転による第2不要樹脂18cの切断動作を示すものである。
【0058】
以上説明したように、上述したディゲート装置を用いれば、ディゲートハンド28による上下動を繰り返すだけで成形品カル18bと接続する第2不要樹脂18c及びパッケージ部18aの反対側に接続する第1不要樹脂18dを効率よく分離することができ、しかも成形品18を移動することなく同じ位置でディゲートすることができるのでディゲート部Gをコンパクトに設置することができる。
【0059】
また、成形品18を水平方向に支持されたディゲートパレット27に位置決めしたまま確実に第1不要樹脂18dを分離することができる。また、支えシリンダ33による各ディゲートパレット27の支持を外すだけでディゲートパレット27の自由端側が下降するように回転動作させるだけでパッケージ部18aと第2不要樹脂18cとの接続部に応力を集中させて第2不要樹脂18cを分離することができる。尚、成形品18の位置決め精度を考慮すると、ディゲートパレット27の回転動作が伴わない第1不要樹脂18dを先に除去し、次いで回転動作が伴う第2不要樹脂18cを除去するのが好ましい。
【0060】
また、回動軸31を中心とするディゲートパレット27の回転量と支点軸42aを中心として回転する支点プレート42の回転量の差分を押さえプレート43が支点プレート42に対して相対的にスライドすることにより吸収するので、ディゲートパレット27の回転動作に追従して支点プレート42に対して押さえプレート43がスライドすることで成形品18を押さえ込んだ第1,第2押さえブロック44b,44aが位置ずれすることがなくなり、成形品18に傷がつくのを防ぐことができる。
【0061】
また、上述したディゲート装置を備えた樹脂モールド装置においては、ディゲート装置をコンパクトに設置することができるうえに、成形品の成形品質を維持することができる。
【0062】
尚、上述した樹脂モールド装置は、搬送機構Eを共用した供給部A、厚さ計測部B、プレス部C、収納部Dを組み換え可能な装置について例示したが、これらが一体に組み付けられた公知の樹脂モールド装置に適用することも可能である。
また、樹脂モールド装置はトランスファーモールド装置に限らず圧縮成形装置であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
A 供給部
B 厚さ計測部
C プレス部
D 収納部
E 搬送機構
F プリヒート部
G ディゲート部
Q 引渡し位置
R プリヒート位置
1 被成形品
2 供給マガジン
3 供給ストッカ
4 プッシャ
5 ターンテーブル
6 供給ステージ
7 樹脂タブレット
8 樹脂タブレット供給部
9 搬送プレート
11 測定装置
12 移載部
13 ヒータブロック
14 トンネルカバー
15 プレス装置
16 金型駆動機構
17 フィルム供給機構
18 成形品
18a パッケージ部
18b 成形品カル
18c 第2不要樹脂
18d 第1不要樹脂
18e 基板
19 取り出し部
20 ディゲート装置
21 製品
22 収納マガジン
23 収納ストッカ
24 ローダー
25 アンローダー
26 ガイドレール
27 ディゲートパレット
27a パレットストッパ調整ねじ
28 ディゲートハンド
29 枠体
29a 短辺部
29b 長辺部
30 カル受け部
31 回動軸
32 パレットストッパ
33 支えシリンダ
34 支持プレート
35 支持台
36 パレット支えばね
37 支持ばね
38 支持機構
39 上下動シリンダ
40 カル押さえ部
40a,41a 吊り下げロッド
40b ストッパ
40c スペーサ
41 基板押さえ部
41b 基板押さえ部本体
41c 吊り下げばね
42 支点プレート
42a 支点軸
42b 直動ガイド
42c 規制ばね
43 押さえプレート
43a ガイドレール
44a 第2押さえブロック
44b 第1押さえブロック
44c 押圧ばね
44d 切断刃
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂モールドされた成形品のパッケージ部の両側に接続する第1,第2不要樹脂を各々分離するディゲート装置であって、
成形品カルを受けるカル受け部の両側に設けられ、成形品を載置したまま回動軸を中心に回動可能に軸支された一対のディゲートパレットと、
前記ディゲートパレットの自由端側を支持することで水平姿勢を維持するパレット支持手段と、
前記一対のディゲートパレットに対向して上下動可能に設けられたディゲートハンド本体に、前記カル受け部に支持された成形品カルを押さえ込むカル押さえ部と、当該カル押さえ部の両側で前記成形品の基板部分をディゲートパレットに押さえ込む基板押さえ部と、前記パッケージ部の成形品カルとは反対側に接続する第1不要樹脂を切断する切断手段と、を備えたディゲートハンドと、を備えたことを特徴とするディゲート装置。
【請求項2】
前記カル押さえ部によって成形品カルをカル受け部に対して押さえ込み、かつ各ディゲートパレットの自由端側に裏面側から当接する前記パレット支持手段により各々水平方向に支持されたまま前記ディゲートハンドが下動して前記切断手段により第1不要樹脂が切断される請求項1記載のディゲート装置。
【請求項3】
前記第1不要樹脂を分離した後、前記ディゲートハンドを上下動させて前記カル押さえ部によって成形品カルをカル受け部に対して押さえ込みかつ一対の基板押さえ部により基板をディゲートパレットに押さえ込んだまま、前記パレット支持手段による各ディゲートパレットの支持を外すことにより各ディゲートパレットが回動軸を中心に自由端が下降するように回転して成形品カルに接続する第2不要樹脂が分離される請求項1又は2記載のディゲート装置。
【請求項4】
前記基板押さえ部は、前記ディゲートハンド本体に対して支点軸を中心に回動可能に軸支されている支点プレートに、前記基板部分をディゲートパレットに押さえる押さえブロックを備えた押さえプレートが各々スライド可能に支持されており、前記各ディゲートパレットの回転動作に伴って前記支点プレートが支点軸を中心に回転する回転動作に追従して各押さえプレートが当該支点プレートに対して相対的にスライドする請求項1乃至3のいずれか1項記載のディゲート装置。
【請求項5】
半導体素子が基板実装された被成形品をポットに対して対向配置させる供給部と、
前記供給ステージに供給された被成形品がローダーによって搬入されて樹脂モールドされるプレス部と、
前記プレス部からアンローダーによって取り出された成形品から請求項1乃至4のいずれか1項記載のディゲート装置によってパッケージ部の両側に接続する第1,第2不要樹脂が各々分離されるディゲート部と、
前記ディゲート部で第1,第2不要樹脂が分離された製品のみを収納する収納部と、を具備したことを特徴とする樹脂モールド装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−43839(P2012−43839A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181147(P2010−181147)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】