説明

ディスク検査用スピンドル

【課題】 エアスピンドルと同等以上の回転精度を有し、クリーンさが要求される環境にも設置が容易なディスク検査用スピンドルを提供する。
【解決手段】 磁気ディスクやディスクヘッドの製品検査装置等に用いられるスピンドルにおいて、回転対象物としてのディスクを支持するターンテーブル(回転台1aを備えるハブ1)の回転を、動圧軸受により支持する。この構成により、本発明のディスク検査用スピンドルは、従来のエアスピンドルと同等の回転精度を維持しつつも、磁気ディスク等の検査工程で障害となるパーティクルの発生がない。また、エアスピンドルで使用されていた加圧空気からパーティクルを除去するための浄化設備が不要になるうえ、軸受周辺に加圧空気を供給するための配管等のスペースも不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク用のスピンドル装置に関し、特に、磁気ディスクや光ディスク等のディスクまたはディスクヘッドの検査などに好適に用いられるスピンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータのハードディスクに用いられている磁気ディスクやディスクヘッドの製品検査装置、あるいは磁気ディスクのサーボライター等においては、これらのディスクを高速・高精度で回転させるために、空気軸受で回転を支持したスピンドル(エアスピンドル)が用いられている(例えば、特許文献1〜2等を参照。)。
【0003】
このエアスピンドルは、回転対象物としてのディスクを支持するターンテーブル(回転台)と、このターンテーブルを回転させる回転モータとを備え、当該回転モータの回転軸を静圧空気軸受(エア軸受)によって支持するものである。このため、エアスピンドルは、回転時の振動が少ないという特徴を有する。
【0004】
【特許文献1】特開2000−163860号公報
【特許文献2】特開2002−369445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁気ディスクやディスクヘッド等の検査工程は、微細な粒子(パーティクル)などの付着による不良品の発生を防止するため、クリーンな環境下で行われている。しかしながら、前記のようなエアスピンドルを用いたディスク検査装置は、軸の回転支持に加圧空気を使用することから、この加圧空気から異物となるパーティクルを除去するための浄化設備が必要になる。
【0006】
また、このディスク検査装置の周辺には、加圧空気を供給するための配管等のスペースが必要になるうえ、エアスピンドルの軸受部周辺も複雑・大型化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、エアスピンドルと同等以上の回転精度を有し、クリーンさが要求される環境にも設置が容易なディスク検査用スピンドルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ディスクを保持する回転台に繋がる軸と、この軸を回転駆動するモータとを備えるディスク検査用スピンドルにおいて、この軸が動圧軸受で支持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、ディスク検査用スピンドルの軸の回転を、大掛かりな配管等の必要のない動圧軸受で支持することによって、所期の目的を達成しようとするものである。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、ディスク検査用スピンドルの軸の回転支持に動圧軸受を採用することにより、従来のエアスピンドルで使用されていた加圧空気が不要となる。また、加圧空気からパーティクルを除去するための浄化設備が不要になるうえ、軸受周辺に加圧空気を供給するための配管等のスペースも不要となり、このスピンドルを小型化することが可能となる。従って、本発明のスピンドルは、従来のエア軸受を用いたスピンドルに比べ小型で、クリーンさが要求される環境にも設置が容易なディスク検査用スピンドルとすることができる。
【0011】
ここで、前記動圧軸受のスリーブの周囲で、かつ、このスリーブと軸方向同位相の位置に、前記モータのステータが配置されている構成を好適に採用することができる(請求項2)。
【0012】
この構造により、軸受部とモータ部とを、軸方向の同じ位置に径方向内外に重ねて配置することが可能となり、ディスク検査用スピンドルを更にコンパクトに構成することができる。
【0013】
また、前記動圧軸受のスリーブと前記モータのステータとの間には、このモータから発生する振動を減衰させる弾性部材を介在配置することが好ましい(請求項3)。
【0014】
本発明のディスク検査用スピンドルは、前記動圧軸受の軸支持により装置全体をコンパクトに構成することが可能になるのであるが、その反面、動圧軸受のスリーブとモータステータとの間に、モータステータの振動(電磁振動)を吸収緩和する大きな部材(例えば、エアスピンドルにおけるエア軸受のハウジング等)がなく、この振動が軸受スリーブに伝わり易いという欠点がある。
【0015】
しかしながら、請求項3に記載の発明のように、これらの間に振動を減衰させる弾性部材を介在配置することにより、スピンドルの回転に悪影響を与える振動が、モータステータから軸受スリーブに伝播することを防止することができる。なお、これら動圧軸受スリーブとモータステータとの間に配置する弾性部材の種類や形状は特に限定されるものではなく、例えば、これらの部材間に樹脂からなる部材を介在配置したり、あるいは、これらの部材の間を樹脂接着剤により固定する方法等でも良い。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、従来のエアスピンドルと同等以上の回転精度を備えつつも、小型・コンパクトで、クリーンさが要求される環境にも設置が容易なディスク検査用スピンドルとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつこの発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるディスク検査用スピンドルの構造を示す軸方向断面図である。
【0018】
本実施形態におけるディスク検査用スピンドルも、磁気ディスクやディスクヘッドの製品検査装置に用いられるものであり、コアレスのDCブラシレスモータによって、ディスク(図示省略)を支持するターンテーブル(回転台1aを備えるハブ1)を回転駆動するものである。
【0019】
このハブ1の外周フランジ部1bには、前記ブラシレスモータのロータ(回転子)を構成するマグネット2とバックヨーク3が配置されているとともに、その内周フランジ部1cには、積層鋼鈑からなるヨーク4が配置されている。また、このモータのステータ(固定子)を構成するコイル(巻線)5は、スピンドルの基台(設置台)となるベースBに固定された樹脂ブラケット6の外周に配設されている。なお、図中の符号7は、後述する軸受をベースBに固定するためのカラーであり、符号8は、この軸受を固定するための樹脂接着剤である。
【0020】
本実施形態におけるディスク検査用スピンドルの特徴は、回転台1aを備えるハブ1の回転が、動圧軸受装置により支持されている点である。この動圧軸受装置は、動圧溝のポンピング作用によって発生する動圧により、ラジアルとスラスト(アキシャル)の両方向の荷重を負荷するタイプの動圧軸受であり、軸部10aとフランジ部10bを有するシャフト10と、このシャフト10を収納するスリーブ11と、このスリーブ11の一端の開口を密閉する蓋部材(スラスト板12)とから構成されている。
【0021】
シャフト軸部10aの外周面には、軸方向に離間した位置に、周方向にV字状あるいはヘリングボーン状のラジアル動圧溝10v,10vが形成され、フランジ部10bの両端面には、同様にヘリングボーン状あるいはV字状のスラスト動圧溝(図示省略)が、それぞれ形成されている。また、スリーブ11の一端(図示下方)側の開口端面には円周段部が形成されており、この円周段部の内周にスラスト板12を嵌め合わせることによって、この開口が密閉されている。なお、シャフト10とスリーブ11との間のすきま(軸受すきま)には、図示しない潤滑流体が充填されているとともに、スリーブ11の図示上方側開口は、キャピラリーシール等によりこの潤滑流体が漏れ出ることが防止されている。
【0022】
以上の構成により、本実施形態におけるディスク検査用スピンドルは、従来のエアスピンドルと同等の回転精度を維持しつつも、磁気ディスク等の検査工程で障害となる微細な粒子(パーティクル)の発生がない。また、エアスピンドルで使用されていた加圧空気からパーティクルを除去するための浄化設備が不要になるうえ、軸受周辺に加圧空気を供給するための配管等のスペースも不要となる。従って、本実施形態のディスク検査用スピンドルは、小型で、かつ、クリーンさが要求される環境にも設置が容易なディスク検査用スピンドルとすることができる。
【0023】
また、本実施形態におけるディスク検査用スピンドルは、軸受周辺に配管等のスペースが必要ないことから、図のように、動圧軸受のスリーブ11の周囲で、かつ、このスリーブ11と軸方向同位相の位置に、モータのステータおよびロータを配置することが可能で、スピンドル全体の軸方向寸法が短い、コンパクトな構成を実現できるというメリットもある。
【0024】
なお、本実施形態においては、軸受スリーブ11およびスラスト板12と、軸受固定用カラー7との間を、樹脂接着剤8を用いて固定したが、その目的は、ハブ1の高精度の回転を維持すべく、動圧軸受のスリーブ11に伝わるモータの振動(電磁振動)を吸収緩和するためである。従って、この樹脂接着剤8の代わりに、スリーブ11とベースBとの間に、同様の機能を備える弾性部材(樹脂部材等)を介在配置しても良い。また、スリーブ11がベースBに直接固定される場合は、このスリーブとベースBの間を樹脂接着剤を用いて固定するか、あるいは、これらの間に略カップ状の弾性部材を介在配置すれば良い。
【0025】
また、ハブ10の回転を支持する動圧軸受装置の構成も、本実施形態での例に限定されるものではなく、そのラジアル動圧溝およびスラスト動圧溝は、シャフトあるいはスリーブのどちら側に設けても良い。なお、モータのステータおよびロータは、少なくともその一部がラジアル動圧軸受の径方向外側に配設されることが望ましい。この配置により、回転の振れの発生を抑えることができるとともに、ディスク検査用スピンドルをコンパクトに構成できる。
【0026】
また、本発明のディスク検査用スピンドルに用いるモータとしては、回転むら(コギング)を発生しない、コアレス・ブラシレスモータが好ましいが、他の手段を用いてコギングを回避可能であれば、特にその構成は限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態におけるディスク検査用スピンドルの構造を示す軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ハブ
1a 回転台
1b 外周フランジ部
1c 内周フランジ部
2 マグネット
3 バックヨーク
4 ヨーク
5 コイル
6 ブラケット
7 軸受固定用カラー
8 樹脂接着剤
10 シャフト
10a 軸部
10b フランジ部
10v 動圧溝
11 スリーブ
12 スラスト板
B ベース(基台)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを保持する回転台に繋がる軸と、この軸を回転駆動するモータとを備えるディスク検査用スピンドルにおいて、
前記軸が動圧軸受で支持されていることを特徴とするディスク検査用スピンドル。
【請求項2】
前記動圧軸受のスリーブの周囲で、かつ、このスリーブと軸方向同位相の位置に、前記モータのステータが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク検査用スピンドル。
【請求項3】
前記動圧軸受のスリーブと前記モータのステータとの間に、このモータから発生する振動を減衰させる弾性部材が介在配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスク検査用スピンドル。

【図1】
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【公開番号】特開2006−134458(P2006−134458A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321467(P2004−321467)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】