ディーゼルエンジン
【課題】エンジンの始動運転時におけるコモンレール圧の変更時点と変更内容について、明確な設定を行うことにより良好な始動運転を可能とする。
【解決手段】コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの始動運転時にエンジン回転数nの変化により初爆状態を検出した位置前後にて、コモンレールのレール圧pを増圧補正させる補正手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。また、コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの低温始動運転時にクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間に、コモンレールのレール圧pを徐々に昇圧させる昇圧手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。
【解決手段】コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの始動運転時にエンジン回転数nの変化により初爆状態を検出した位置前後にて、コモンレールのレール圧pを増圧補正させる補正手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。また、コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの低温始動運転時にクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間に、コモンレールのレール圧pを徐々に昇圧させる昇圧手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディーゼルエンジンに関する。特に、コモンエールのレール圧制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンへ燃料を供給噴射する燃料噴射装置の一つとして高圧にした燃料をコモンレールなるものの燃料通路に一旦蓄え、その後、このコモンレールに接続された複数の電磁弁を有してなる噴射ノズルを制御して同時に噴射を行えるようにしたコモンレール式燃料噴射装置と称されるものが種々提案されており公知・周知となっている。(例えば、特許文献1参照)
ところで、このようなコモンレール式燃料噴射装置においては、コモンレール内の圧力,即ちコモンレール圧を如何に安定、且つ確実に目標圧力とするかが噴射特性の良否に大きく影響するものであるが、従来装置においては、電磁弁を有してなる圧力制御弁の開弁等の動作特性が予め想定したものであるとして種々の制御を行うようになっているものである。
【0003】
現実には、個々の圧力制御弁によってバラツキが生じることがあり、このような特性のバラツキがあっても本来の安定、且つ確実な噴射制御が行えるよう、燃料噴射装置の様々な運転状態に応じてコモンレール圧の適切な制御を行うことができる動作制御方法及び燃料噴射装置を提供すると共に、エンジンの始動状態においては、エンジンの初爆から少なくともアイドリング状態で安定するまでの間は、コモンレール圧の制御としては応答性の良い制御が行われることにより、安定、且つ確実な燃料噴射制御が実現できるもの等が開示されている。(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開平10−54318号公報
【特許文献2】特開2002−339830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の如く、エンジンの始動状態において、エンジンの初爆から少なくともアイドリング状態で安定するまでの間コモンレール圧の制御として応答性の良い制御を行うというものでは、コモンレール圧が、アイドリング状態で安定するまでの間という変更時点についての不明確さと、応答性の良い制御が行われるという変更内容についての具体性に欠けるという難点があった。
【0005】
そこで本発明は、エンジンの始動運転時におけるコモンレール圧の変更時点と変更内容について明確な設定を行うことにより、良好な始動運転を行い得るようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの始動運転時にエンジン回転数(n)の変化により初爆状態を検出した位置前後にて、コモンレールのレール圧(p)を増圧補正させる補正手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。
【0007】
このような構成により、該エンジンの始動運転を行う際に、エンジン回転数(n)の増加や増加率等の検出によって初爆状態であると判断されたときは、この判断された時点の位置前後において、燃料の蓄圧を行うコモンレールのレール圧(p)を補正手段によって増圧補正させることにより、始動運転時における厳しい条件に対し的確な燃料噴射を行わせることができる。
【0008】
請求項2の発明は、コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの低温始動運転時にクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間に、コモンレールのレール圧(p)を徐々に昇圧させる昇圧手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。
【0009】
このような構成により、該エンジンの低温始動運転を行う際に、エンジン回転数(n)の上昇によるクランキング領域から加速度領域の間において、燃料の蓄圧を行うコモンレールのレール圧(p)を徐々に昇圧手段によって昇圧させることにより、低温始動運転時における特に厳しい条件に対し的確な燃料噴射を行わせることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、上記作用の如く、該エンジンの始動運転を行う際に、エンジン回転数(n)の変化によって初爆状態であると判断されたときは、この判断された時点の位置前後においてコモンレールのレール圧(p)を増圧させることにより、従来の如き、レール圧(p)の変更時点についての不明確さと変更内容についての具体性に欠けるという難点がなく、始動運転時における厳しい条件に対し的確な燃料噴射を行わせることが可能となり、始動性の向上及び始動時白煙の低減を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明では、上記作用の如く、該エンジンの低温始動運転を行う際に、エンジン回転数(n)の上昇によるクランキング領域から加速度領域の間において、コモンレールのレール圧(p)を徐々に昇圧させることにより、従来の如き、低温時着火前にレール圧(p)を上昇させ未燃燃料がピストン壁に衝突して温度が低下し始動性が悪くなるということがなく、低温始動運転時における特に厳しい条件に対し的確な燃料噴射を行わせることが可能となり、始動性の向上及び始動時白煙を抑制し着火性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
コモンレール方式を用いたディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの始動運転時にエンジン回転数nの変化により初爆状態を検出した位置前後にて、コモンレールのレール圧pを増圧補正させる補正手段を設ける。また、コモンレール方式を用いたディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの低温始動運転時にクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間に、コモンレールのレール圧pを徐々に昇圧させる昇圧手段を設ける。
【0013】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図4に示す如く、ディーゼルエンジン1は、多気筒形態のコモンレール方式でシリンダブロック2の上部にシリンダヘッド3を、下部にオイルパン4を配設すると共に、前部にギヤケース5とラジエータファン6を、後部にフライホイル7を各々配設させ、該シリンダヘッド3の吸気側に吸気マニホールド8を接続すると共に、この吸気マニホールド8の下方でシリンダブロック2の上部位置にコモンレール10を装着して構成させる。
【0014】
図5に示す如く、コモンレール式による燃料噴射装置の概要をシステム図により説明する。コモンレール式(蓄圧式燃料噴射)とは、各気筒へ燃料を噴射する燃料噴射装置への燃料供給を要求された圧力とするコモンレール10(蓄圧室)を介して行うものである。
【0015】
燃料タンク11内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ12を介して該エンジン1で駆動される高圧ポンプ13に吸入され、この高圧ポンプ13によって加圧された高圧燃料は吐出通路14によりコモンレール10に導かれ蓄えられる。
【0016】
該コモンレール10内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路16により気筒数分の燃料噴射弁17に供給され、エンジンコントロールユニット18(以下ECUという)からの指令に基づき、各気筒毎に燃料噴射弁17が開弁作動して、高圧燃料が該エンジン1の各燃焼室内に噴射供給され、各燃料噴射弁17での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路19により共通のリターン通路20へ導かれ、
このリターン通路20によって燃料タンク11へ戻される。
【0017】
また、コモンレール10内の燃料圧力(レール圧)を制御するため高圧ポンプ13に圧力制御弁21が設けられており、この圧力制御弁21はECU18からのデューティ信号によって、高圧ポンプ13から燃料タンク11への余剰燃料のリターン通路20の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール10側への燃料吐出量を調整してレール圧pを制御することができる。
【0018】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標レール圧pを設定し、レール圧センサ22により検出されるレール圧pが目標レール圧pと一致するよう、圧力制御弁21を介してレール圧pをフィードバック制御する。
【0019】
農作業車におけるコモンレール式ディーゼルエンジン1のECU18は、図6に示す如く、回転数と出力トルクの関係において走行モードM1と通常作業モードM2及び重作業モードM3の三種類の制御モードを設けている。
【0020】
走行モードM1は、回転数の変動で出力も変動するドループ制御として、農作業を行わず移動走行する場合に使用するものであり、例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができる。
【0021】
通常作業モードM2は、負荷が変動しても回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御として、通常の農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるとき、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するのでオペレータが楽に操縦できる。
【0022】
重作業モードM3は、通常作業モードM2と同様に負荷が変動しても回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御で、特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがない。
【0023】
これらの作業モードM1,M2,M3は、作業モード切替スイッチの操作、又は走行変速レバーの変速操作、作業クラッチの入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0024】
従来、ディーゼルエンジンでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジン特有の、所謂ノック音を低減することが知られている。
【0025】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回乃至2回に固定して行われるものであったが、前記コモンレール10のシステムを用いることで、エンジンの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できる。
【0026】
図1に示す如く、コモンレール式ディーゼルエンジン1において始動運転を行う際に、エンジン回転数nの増加や増加率等の検出によって初爆状態であると判断されたときは、この判断された時点前では低圧であった該コモンレール10のレール圧pを、判断された時点後において前記ECU18等による補正手段によって増圧させることにより、始動運転時における厳しい条件に対し燃料噴射弁17により的確に燃料噴射を行わせることが可能となり、始動性の向上及び始動時白煙の低減を図ることができる。
【0027】
また、図2に示す如く、コモンレール式ディーゼルエンジン1において低温始動運転を行う際に、エンジン回転数nの上昇によるクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間において、図3のフローチャートに示す如く、水温によって低温時のエンジン回転数nの増加率有により、該コモンレール10のレール圧pを前記ECU18等による昇圧手段によって徐々に昇圧させることにより、従来の如く、低温時着火前にレール圧pを上昇させ未燃燃料がピストン壁に衝突して温度が低下し始動性が悪くなるということがなく、低温始動運転時における特に厳しい条件に対し燃料噴射弁17により的確な燃料噴射を行わせることが可能となり、始動性の向上及び始動時白煙を抑制し着火性を高めることができる。
【0028】
また、前記の如き該エンジン1における始動運転時に、図7に示す如く、エンジン回転数nの増加や増加率等の検出によって初爆状態の判断を行い、この判断によって気筒内雰囲気温度が燃焼可能状態にあると判定し、判断時点前では少量であった燃料噴射量の形態を判断時点後において増加補正させることにより、従来の如き始動動作時間等の制御による初爆状態が発生しない始動不可能な状態における過大な燃料噴射を防止することができるから、始動に要する燃料の総量及び始動時の黒煙排出総量を軽減することができる。
【0029】
また、元来、オペレータの操作に対する応答性の良さというのはエンジンに求められている一つの性能であるが、この応答性を上げることにより、低温時のエンジン始動直後等において急激にアクセル操作を行った際に、失火や白煙の発生という障害が起きることがある。
【0030】
このため、コモンレール式ディーゼルエンジン1において、始動後の無負荷時における前記ECU18内の燃料噴射量を監視することで、現在の該エンジン1の状態が低温時始動直後等で無負荷時でも重く燃料噴射量が多くなると判断できるため、図8に示す如く、燃料噴射量が多くなるほど噴射量の制限を行うスモークリミットsの補正を強く行うことにより、失火や白煙の発生を抑えつつ該エンジン1の状態に応じた応答性によって対応させることができる。
【0031】
なお、元々スモークリミットsは、無負荷時等に急激なアクセル変化が起きたときエンジン回転数nの上昇に対し燃料噴射量が多すぎることによるスモークの発生を抑えるための機能であり、更に、エンジンの状態によってスモーク量が増大するようなときは、スモークリミットsのマップ補正量を一段と強くする対応が必要である。
【0032】
また、前記の如く、該エンジン1において、始動後の無負荷時における前記ECU18内の燃料噴射量を監視することで、現在の該エンジン1の状態が低温時始動直後等で無負荷時でも重く燃料噴射量が多くなると判断できるため、該スモークリミットsを必要とするような燃料噴射量が多いときほど、図9に示す如く、該エンジン1の状態に応じて応答性を低くするようなアクセルのなまし制御fを強く行うことにより、急激なアクセル変化に対しても失火や白煙の発生を抑えて該エンジン1の状態に応じたより良い応答性によって対応させることができる。
【0033】
また、コモンレール式ディーゼルエンジン1において、従来では、前記高圧ポンプ13入口の燃料温度が高すぎる場合、燃料を必要以上に燃料タンク11に戻してリターン通路20で冷却し過ぎると熱効率において損失になると共に、燃料が低温の場合、n−パラフィンがワックス結晶として析出し燃料フィルタ12を閉塞させ運転に支障をきたす恐れがある。
【0034】
このため、図10に示す如く、リターン通路20にサーモスタッド型の流路切替弁23を設け、この流路切替弁23によるリーク燃料の返流点を温度により、高温の場合は燃料タンク11へ、常温の場合は燃料フィルタ12の前へ、低温の場合は燃料フィルタ12の後へ各々返流させることにより、リーク燃料の返流点を温度により可変とすることができるから、該エンジン1入口の燃料温度を適温に調整することが可能となり良好な運転を行い得るものである。
【0035】
また、従来、電子制御燃料噴射エンジンにおいては、エンジン環境により様々な触媒再生運転が実施されており、ポスト噴射による排ガス温度昇温もその一つであるが、ノズル開弁の最小値程度の極微量の噴射量の場合では噴射量及び噴射の有無が不安定になり易いものであつた。
【0036】
このため、DPF(パティキュレートフィルタ)を搭載したコモンレール式ディーゼルエンジン1において、ポスト噴射の有無をエンジンの各気筒毎に可変とし、例えば、ポスト噴射量が極微量でよい場合ではポスト噴射を実施する気筒数を減筒して一気筒当たりの噴射量を増加させることもできる。このように、ポスト噴射を実施する気筒数を増減可能とすることで、一気筒当たりの噴射量を調整可能とすることにより、ポスト噴射を確実に実施することができると共に、温度調節を適切に制御することができる。
【0037】
また、電子制御燃料噴射エンジンにおいては、エンジン環境により様々な燃料噴射の補正が実施されているが、該エンジン環境の中に作業機負荷を取り入れて農業機械特有の制御を実施している例は少ない。
【0038】
このため、図11に示す如く、コンバインでは、刈取部の先端部等に稲の刈り始めを検出・予測するために設けたセンサにより刈取負荷の開始タイミングを予測すると共に、トラクターでは、ロータリーのケース下面等にロータリーが地面と接触するタイミングを検出・予測するために設けたセンサにより耕運負荷の開始タイミングを予測することにより、予測開始時から制御の補正等を開始することができるため、負荷条件が大きく変化する作業開始時のエンジン制御の応答遅れを小さくすることが可能となり、例えば、EGR率やブースト圧の最適化,運転モードの切り替え,急激なトルク変動の軽減等を実施することができる。
【0039】
このように、作業機自体に作業負荷の開始時期を予測するためのセンサを取り付けることにより、高い精度で作業負荷が掛かるタイミングを検出して作業負荷の開始時期を予測することができるから、エンジン制御の設定切り替えに余裕ができ、負荷率が大きく変化する条件における燃料噴射設定値の補正等を円滑に行うことができる。
【0040】
また、農作業車24において畦越え等による登坂・降坂を行う際には、従来では、オペレータの判断により手動でアクセル開度を調整して作業性及び安全性を確保していたものであるが、このような操作ではオペレータの判断ミス等が発生した場合においては安全性が阻害されることとなる。
【0041】
このため、図12に示す如く、農作業車24に設けた傾斜センサ25の傾斜角度指示値がある設定値以上となった場合には、傾斜センサ25の情報により登坂・降坂であると判断し、オペレータによる判断及び操作を待つことなく自動的にアクセル開度を低く抑えるよう制御することにより、エンジン回転数nを低下させ作業性及び安全性を確保した運転を行うことができる。
【0042】
また、前記の如く、農作業車24に設けた傾斜センサ25の情報により登坂・降坂を判断し、オペレータによる判断及び操作を待つことなく自動的にアクセル開度を制御することにより、エンジン回転数nを低下させ作業性及び安全性を確保した運転を行うものにおいて、傾斜角度を検知する数秒前の間にオペレータによるアクセル操作が行われた際は、傾斜センサ25の情報による自動的なアクセル開度の制御は実施せず、オペレータの意思による手動操作を優先させる。
【0043】
また、前記の如く、農作業車24に設けた傾斜センサ25の情報により登坂・降坂を判断し、オペレータによる判断及び操作を待つことなく自動的にアクセル開度を制御することにより、エンジン回転数nを低下させ作業性及び安全性を確保した運転を行うものにおいて、走行時にはアクセル開度を下げる制御を行うが、作業時の登坂運転の際にはアクセル開度を上げる制御を行う等、作業運転モード時にはアクセル開度を上げることにより作業性能を維持することができる。
【0044】
また、農作業車24等の作業時において旋回を行うとき、従来では、ポテンショメータの信号によりアクチュエータにてスロットルを引っ張り制御を行っていたためエンジン回転数nの低下率変更の応答遅れが大きいという難点があつた。
【0045】
このため、図13に示す如く、作業時に車体側のECU26に旋回信号tとハンドルの切れ角信号hとが入力されると、この信号がCAN通信により前記エンジン1側のECU18に送られ、ポテンショメータのスロットル位置とは独立してハンドルの切れ角によってエンジン回転数nの低下率を変更する制御が行われることにより、応答遅れが少なくなりオペレータの操作性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
トラクターやコンバイン等の農作業車を始め一般車両にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】エンジン始動運転時に初爆状態検出によりレール圧の増圧状態を示す線図。
【図2】エンジン低温始動運転時に回転増加によりレール圧の増圧状態を示す線図。
【図3】水温低温時に回転数増加によりレール圧の昇圧手順を示すフローチャート。
【図4】コモンレール式多気筒ディーゼルエンジンにおける全体構成を示す側面図。
【図5】コモンレールによる蓄圧式燃料噴射ディーゼルエンジンを示すシステム図。
【図6】三種類の制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図。
【図7】エンジン始動運転時に初爆状態の検出により噴射量の増加状態を示す線図。
【図8】無負荷時の燃料噴射量に対するスモークリミットの補正の状態を示す線図。
【図9】無負荷時の燃料噴射量が多いときになまし制御を強くする状態を示す線図。
【図10】エンジンのリーク燃料返流点を温度により変える状態を示すブロック図。
【図11】作業負荷開始をセンサにより予測し応答遅れを縮小する状態を示す線図。
【図12】傾斜角度の検出を行うセンサを取り付けた農作業車の状態を示す側面図。
【図13】旋回信号の入力によりエンジン回転数を変更する回路を示すブロック図。
【符号の説明】
【0048】
1 コモンレール式ディーゼルエンジン
n エンジン回転数
10 コモンレール
p レール圧
11 燃料タンク
12 燃料フィルタ
13 高圧ポンプ
17 燃料噴射弁
18 ECU
20 リターン通路
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディーゼルエンジンに関する。特に、コモンエールのレール圧制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンへ燃料を供給噴射する燃料噴射装置の一つとして高圧にした燃料をコモンレールなるものの燃料通路に一旦蓄え、その後、このコモンレールに接続された複数の電磁弁を有してなる噴射ノズルを制御して同時に噴射を行えるようにしたコモンレール式燃料噴射装置と称されるものが種々提案されており公知・周知となっている。(例えば、特許文献1参照)
ところで、このようなコモンレール式燃料噴射装置においては、コモンレール内の圧力,即ちコモンレール圧を如何に安定、且つ確実に目標圧力とするかが噴射特性の良否に大きく影響するものであるが、従来装置においては、電磁弁を有してなる圧力制御弁の開弁等の動作特性が予め想定したものであるとして種々の制御を行うようになっているものである。
【0003】
現実には、個々の圧力制御弁によってバラツキが生じることがあり、このような特性のバラツキがあっても本来の安定、且つ確実な噴射制御が行えるよう、燃料噴射装置の様々な運転状態に応じてコモンレール圧の適切な制御を行うことができる動作制御方法及び燃料噴射装置を提供すると共に、エンジンの始動状態においては、エンジンの初爆から少なくともアイドリング状態で安定するまでの間は、コモンレール圧の制御としては応答性の良い制御が行われることにより、安定、且つ確実な燃料噴射制御が実現できるもの等が開示されている。(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開平10−54318号公報
【特許文献2】特開2002−339830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の如く、エンジンの始動状態において、エンジンの初爆から少なくともアイドリング状態で安定するまでの間コモンレール圧の制御として応答性の良い制御を行うというものでは、コモンレール圧が、アイドリング状態で安定するまでの間という変更時点についての不明確さと、応答性の良い制御が行われるという変更内容についての具体性に欠けるという難点があった。
【0005】
そこで本発明は、エンジンの始動運転時におけるコモンレール圧の変更時点と変更内容について明確な設定を行うことにより、良好な始動運転を行い得るようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの始動運転時にエンジン回転数(n)の変化により初爆状態を検出した位置前後にて、コモンレールのレール圧(p)を増圧補正させる補正手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。
【0007】
このような構成により、該エンジンの始動運転を行う際に、エンジン回転数(n)の増加や増加率等の検出によって初爆状態であると判断されたときは、この判断された時点の位置前後において、燃料の蓄圧を行うコモンレールのレール圧(p)を補正手段によって増圧補正させることにより、始動運転時における厳しい条件に対し的確な燃料噴射を行わせることができる。
【0008】
請求項2の発明は、コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの低温始動運転時にクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間に、コモンレールのレール圧(p)を徐々に昇圧させる昇圧手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。
【0009】
このような構成により、該エンジンの低温始動運転を行う際に、エンジン回転数(n)の上昇によるクランキング領域から加速度領域の間において、燃料の蓄圧を行うコモンレールのレール圧(p)を徐々に昇圧手段によって昇圧させることにより、低温始動運転時における特に厳しい条件に対し的確な燃料噴射を行わせることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、上記作用の如く、該エンジンの始動運転を行う際に、エンジン回転数(n)の変化によって初爆状態であると判断されたときは、この判断された時点の位置前後においてコモンレールのレール圧(p)を増圧させることにより、従来の如き、レール圧(p)の変更時点についての不明確さと変更内容についての具体性に欠けるという難点がなく、始動運転時における厳しい条件に対し的確な燃料噴射を行わせることが可能となり、始動性の向上及び始動時白煙の低減を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明では、上記作用の如く、該エンジンの低温始動運転を行う際に、エンジン回転数(n)の上昇によるクランキング領域から加速度領域の間において、コモンレールのレール圧(p)を徐々に昇圧させることにより、従来の如き、低温時着火前にレール圧(p)を上昇させ未燃燃料がピストン壁に衝突して温度が低下し始動性が悪くなるということがなく、低温始動運転時における特に厳しい条件に対し的確な燃料噴射を行わせることが可能となり、始動性の向上及び始動時白煙を抑制し着火性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
コモンレール方式を用いたディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの始動運転時にエンジン回転数nの変化により初爆状態を検出した位置前後にて、コモンレールのレール圧pを増圧補正させる補正手段を設ける。また、コモンレール方式を用いたディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの低温始動運転時にクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間に、コモンレールのレール圧pを徐々に昇圧させる昇圧手段を設ける。
【0013】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図4に示す如く、ディーゼルエンジン1は、多気筒形態のコモンレール方式でシリンダブロック2の上部にシリンダヘッド3を、下部にオイルパン4を配設すると共に、前部にギヤケース5とラジエータファン6を、後部にフライホイル7を各々配設させ、該シリンダヘッド3の吸気側に吸気マニホールド8を接続すると共に、この吸気マニホールド8の下方でシリンダブロック2の上部位置にコモンレール10を装着して構成させる。
【0014】
図5に示す如く、コモンレール式による燃料噴射装置の概要をシステム図により説明する。コモンレール式(蓄圧式燃料噴射)とは、各気筒へ燃料を噴射する燃料噴射装置への燃料供給を要求された圧力とするコモンレール10(蓄圧室)を介して行うものである。
【0015】
燃料タンク11内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ12を介して該エンジン1で駆動される高圧ポンプ13に吸入され、この高圧ポンプ13によって加圧された高圧燃料は吐出通路14によりコモンレール10に導かれ蓄えられる。
【0016】
該コモンレール10内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路16により気筒数分の燃料噴射弁17に供給され、エンジンコントロールユニット18(以下ECUという)からの指令に基づき、各気筒毎に燃料噴射弁17が開弁作動して、高圧燃料が該エンジン1の各燃焼室内に噴射供給され、各燃料噴射弁17での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路19により共通のリターン通路20へ導かれ、
このリターン通路20によって燃料タンク11へ戻される。
【0017】
また、コモンレール10内の燃料圧力(レール圧)を制御するため高圧ポンプ13に圧力制御弁21が設けられており、この圧力制御弁21はECU18からのデューティ信号によって、高圧ポンプ13から燃料タンク11への余剰燃料のリターン通路20の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール10側への燃料吐出量を調整してレール圧pを制御することができる。
【0018】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標レール圧pを設定し、レール圧センサ22により検出されるレール圧pが目標レール圧pと一致するよう、圧力制御弁21を介してレール圧pをフィードバック制御する。
【0019】
農作業車におけるコモンレール式ディーゼルエンジン1のECU18は、図6に示す如く、回転数と出力トルクの関係において走行モードM1と通常作業モードM2及び重作業モードM3の三種類の制御モードを設けている。
【0020】
走行モードM1は、回転数の変動で出力も変動するドループ制御として、農作業を行わず移動走行する場合に使用するものであり、例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができる。
【0021】
通常作業モードM2は、負荷が変動しても回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御として、通常の農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるとき、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するのでオペレータが楽に操縦できる。
【0022】
重作業モードM3は、通常作業モードM2と同様に負荷が変動しても回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御で、特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものであり、例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがない。
【0023】
これらの作業モードM1,M2,M3は、作業モード切替スイッチの操作、又は走行変速レバーの変速操作、作業クラッチの入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0024】
従来、ディーゼルエンジンでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジン特有の、所謂ノック音を低減することが知られている。
【0025】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回乃至2回に固定して行われるものであったが、前記コモンレール10のシステムを用いることで、エンジンの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できる。
【0026】
図1に示す如く、コモンレール式ディーゼルエンジン1において始動運転を行う際に、エンジン回転数nの増加や増加率等の検出によって初爆状態であると判断されたときは、この判断された時点前では低圧であった該コモンレール10のレール圧pを、判断された時点後において前記ECU18等による補正手段によって増圧させることにより、始動運転時における厳しい条件に対し燃料噴射弁17により的確に燃料噴射を行わせることが可能となり、始動性の向上及び始動時白煙の低減を図ることができる。
【0027】
また、図2に示す如く、コモンレール式ディーゼルエンジン1において低温始動運転を行う際に、エンジン回転数nの上昇によるクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間において、図3のフローチャートに示す如く、水温によって低温時のエンジン回転数nの増加率有により、該コモンレール10のレール圧pを前記ECU18等による昇圧手段によって徐々に昇圧させることにより、従来の如く、低温時着火前にレール圧pを上昇させ未燃燃料がピストン壁に衝突して温度が低下し始動性が悪くなるということがなく、低温始動運転時における特に厳しい条件に対し燃料噴射弁17により的確な燃料噴射を行わせることが可能となり、始動性の向上及び始動時白煙を抑制し着火性を高めることができる。
【0028】
また、前記の如き該エンジン1における始動運転時に、図7に示す如く、エンジン回転数nの増加や増加率等の検出によって初爆状態の判断を行い、この判断によって気筒内雰囲気温度が燃焼可能状態にあると判定し、判断時点前では少量であった燃料噴射量の形態を判断時点後において増加補正させることにより、従来の如き始動動作時間等の制御による初爆状態が発生しない始動不可能な状態における過大な燃料噴射を防止することができるから、始動に要する燃料の総量及び始動時の黒煙排出総量を軽減することができる。
【0029】
また、元来、オペレータの操作に対する応答性の良さというのはエンジンに求められている一つの性能であるが、この応答性を上げることにより、低温時のエンジン始動直後等において急激にアクセル操作を行った際に、失火や白煙の発生という障害が起きることがある。
【0030】
このため、コモンレール式ディーゼルエンジン1において、始動後の無負荷時における前記ECU18内の燃料噴射量を監視することで、現在の該エンジン1の状態が低温時始動直後等で無負荷時でも重く燃料噴射量が多くなると判断できるため、図8に示す如く、燃料噴射量が多くなるほど噴射量の制限を行うスモークリミットsの補正を強く行うことにより、失火や白煙の発生を抑えつつ該エンジン1の状態に応じた応答性によって対応させることができる。
【0031】
なお、元々スモークリミットsは、無負荷時等に急激なアクセル変化が起きたときエンジン回転数nの上昇に対し燃料噴射量が多すぎることによるスモークの発生を抑えるための機能であり、更に、エンジンの状態によってスモーク量が増大するようなときは、スモークリミットsのマップ補正量を一段と強くする対応が必要である。
【0032】
また、前記の如く、該エンジン1において、始動後の無負荷時における前記ECU18内の燃料噴射量を監視することで、現在の該エンジン1の状態が低温時始動直後等で無負荷時でも重く燃料噴射量が多くなると判断できるため、該スモークリミットsを必要とするような燃料噴射量が多いときほど、図9に示す如く、該エンジン1の状態に応じて応答性を低くするようなアクセルのなまし制御fを強く行うことにより、急激なアクセル変化に対しても失火や白煙の発生を抑えて該エンジン1の状態に応じたより良い応答性によって対応させることができる。
【0033】
また、コモンレール式ディーゼルエンジン1において、従来では、前記高圧ポンプ13入口の燃料温度が高すぎる場合、燃料を必要以上に燃料タンク11に戻してリターン通路20で冷却し過ぎると熱効率において損失になると共に、燃料が低温の場合、n−パラフィンがワックス結晶として析出し燃料フィルタ12を閉塞させ運転に支障をきたす恐れがある。
【0034】
このため、図10に示す如く、リターン通路20にサーモスタッド型の流路切替弁23を設け、この流路切替弁23によるリーク燃料の返流点を温度により、高温の場合は燃料タンク11へ、常温の場合は燃料フィルタ12の前へ、低温の場合は燃料フィルタ12の後へ各々返流させることにより、リーク燃料の返流点を温度により可変とすることができるから、該エンジン1入口の燃料温度を適温に調整することが可能となり良好な運転を行い得るものである。
【0035】
また、従来、電子制御燃料噴射エンジンにおいては、エンジン環境により様々な触媒再生運転が実施されており、ポスト噴射による排ガス温度昇温もその一つであるが、ノズル開弁の最小値程度の極微量の噴射量の場合では噴射量及び噴射の有無が不安定になり易いものであつた。
【0036】
このため、DPF(パティキュレートフィルタ)を搭載したコモンレール式ディーゼルエンジン1において、ポスト噴射の有無をエンジンの各気筒毎に可変とし、例えば、ポスト噴射量が極微量でよい場合ではポスト噴射を実施する気筒数を減筒して一気筒当たりの噴射量を増加させることもできる。このように、ポスト噴射を実施する気筒数を増減可能とすることで、一気筒当たりの噴射量を調整可能とすることにより、ポスト噴射を確実に実施することができると共に、温度調節を適切に制御することができる。
【0037】
また、電子制御燃料噴射エンジンにおいては、エンジン環境により様々な燃料噴射の補正が実施されているが、該エンジン環境の中に作業機負荷を取り入れて農業機械特有の制御を実施している例は少ない。
【0038】
このため、図11に示す如く、コンバインでは、刈取部の先端部等に稲の刈り始めを検出・予測するために設けたセンサにより刈取負荷の開始タイミングを予測すると共に、トラクターでは、ロータリーのケース下面等にロータリーが地面と接触するタイミングを検出・予測するために設けたセンサにより耕運負荷の開始タイミングを予測することにより、予測開始時から制御の補正等を開始することができるため、負荷条件が大きく変化する作業開始時のエンジン制御の応答遅れを小さくすることが可能となり、例えば、EGR率やブースト圧の最適化,運転モードの切り替え,急激なトルク変動の軽減等を実施することができる。
【0039】
このように、作業機自体に作業負荷の開始時期を予測するためのセンサを取り付けることにより、高い精度で作業負荷が掛かるタイミングを検出して作業負荷の開始時期を予測することができるから、エンジン制御の設定切り替えに余裕ができ、負荷率が大きく変化する条件における燃料噴射設定値の補正等を円滑に行うことができる。
【0040】
また、農作業車24において畦越え等による登坂・降坂を行う際には、従来では、オペレータの判断により手動でアクセル開度を調整して作業性及び安全性を確保していたものであるが、このような操作ではオペレータの判断ミス等が発生した場合においては安全性が阻害されることとなる。
【0041】
このため、図12に示す如く、農作業車24に設けた傾斜センサ25の傾斜角度指示値がある設定値以上となった場合には、傾斜センサ25の情報により登坂・降坂であると判断し、オペレータによる判断及び操作を待つことなく自動的にアクセル開度を低く抑えるよう制御することにより、エンジン回転数nを低下させ作業性及び安全性を確保した運転を行うことができる。
【0042】
また、前記の如く、農作業車24に設けた傾斜センサ25の情報により登坂・降坂を判断し、オペレータによる判断及び操作を待つことなく自動的にアクセル開度を制御することにより、エンジン回転数nを低下させ作業性及び安全性を確保した運転を行うものにおいて、傾斜角度を検知する数秒前の間にオペレータによるアクセル操作が行われた際は、傾斜センサ25の情報による自動的なアクセル開度の制御は実施せず、オペレータの意思による手動操作を優先させる。
【0043】
また、前記の如く、農作業車24に設けた傾斜センサ25の情報により登坂・降坂を判断し、オペレータによる判断及び操作を待つことなく自動的にアクセル開度を制御することにより、エンジン回転数nを低下させ作業性及び安全性を確保した運転を行うものにおいて、走行時にはアクセル開度を下げる制御を行うが、作業時の登坂運転の際にはアクセル開度を上げる制御を行う等、作業運転モード時にはアクセル開度を上げることにより作業性能を維持することができる。
【0044】
また、農作業車24等の作業時において旋回を行うとき、従来では、ポテンショメータの信号によりアクチュエータにてスロットルを引っ張り制御を行っていたためエンジン回転数nの低下率変更の応答遅れが大きいという難点があつた。
【0045】
このため、図13に示す如く、作業時に車体側のECU26に旋回信号tとハンドルの切れ角信号hとが入力されると、この信号がCAN通信により前記エンジン1側のECU18に送られ、ポテンショメータのスロットル位置とは独立してハンドルの切れ角によってエンジン回転数nの低下率を変更する制御が行われることにより、応答遅れが少なくなりオペレータの操作性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
トラクターやコンバイン等の農作業車を始め一般車両にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】エンジン始動運転時に初爆状態検出によりレール圧の増圧状態を示す線図。
【図2】エンジン低温始動運転時に回転増加によりレール圧の増圧状態を示す線図。
【図3】水温低温時に回転数増加によりレール圧の昇圧手順を示すフローチャート。
【図4】コモンレール式多気筒ディーゼルエンジンにおける全体構成を示す側面図。
【図5】コモンレールによる蓄圧式燃料噴射ディーゼルエンジンを示すシステム図。
【図6】三種類の制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図。
【図7】エンジン始動運転時に初爆状態の検出により噴射量の増加状態を示す線図。
【図8】無負荷時の燃料噴射量に対するスモークリミットの補正の状態を示す線図。
【図9】無負荷時の燃料噴射量が多いときになまし制御を強くする状態を示す線図。
【図10】エンジンのリーク燃料返流点を温度により変える状態を示すブロック図。
【図11】作業負荷開始をセンサにより予測し応答遅れを縮小する状態を示す線図。
【図12】傾斜角度の検出を行うセンサを取り付けた農作業車の状態を示す側面図。
【図13】旋回信号の入力によりエンジン回転数を変更する回路を示すブロック図。
【符号の説明】
【0048】
1 コモンレール式ディーゼルエンジン
n エンジン回転数
10 コモンレール
p レール圧
11 燃料タンク
12 燃料フィルタ
13 高圧ポンプ
17 燃料噴射弁
18 ECU
20 リターン通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの始動運転時にエンジン回転数(n)の変化により初爆状態を検出した位置前後にて、コモンレールのレール圧(p)を増圧補正させる補正手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの低温始動運転時にクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間に、コモンレールのレール圧(p)を徐々に昇圧させる昇圧手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項1】
コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの始動運転時にエンジン回転数(n)の変化により初爆状態を検出した位置前後にて、コモンレールのレール圧(p)を増圧補正させる補正手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
コモンレールを搭載したディーゼルエンジンにおいて、該エンジンの低温始動運転時にクランキング領域から加速度領域を経て定速度領域に達する間に、コモンレールのレール圧(p)を徐々に昇圧させる昇圧手段を設けたことを特徴とするディーゼルエンジン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−8060(P2009−8060A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172364(P2007−172364)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]