説明

ディーゼルエンジン

【課題】排気ガスの排出経路に設けているディーゼルパティキュレートフィルタの再生効率の向上、及び再生時における匂いや白煙の大気中への排出抑制。
【解決手段】排気ガス中の粒状化物質PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ46bと酸化触媒46aとから構成される後処理装置46を過給機TBの下流側に備えたディーゼルエンジンにおいて、前記過給器TBの排気タービン45上流側の排気管63にバイパス経路64を構成し、該バイパス経路64に第二酸化触媒65を設け、バイパス経路64に流れる排気ガスの量を調整する絞り弁66を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。また、第二酸化触媒65は、過給器TBの下流側に配置される酸化触媒46aよりも小さい形状としたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディーゼルパティキュレートフィルタ及び酸化触媒を搭載するディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気系において、酸化触媒(DOC)とディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を設ける構成である。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2008−75610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、次のような欠点がある。DPFの再生時においては、排気弁を閉じて排気ガス温度を上げて酸化触媒(DOC)とディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を活性化させる。そして、ポスト噴射により未燃燃料を排気ガスと共に流し、酸化触媒(DOC)で燃焼させてDPF内の温度を上昇させてDPF内の煤、粒状化物質(PM)を燃焼させて大気中に焼き飛ばす。
【0004】
しかしながら、ポスト噴射開始時は、酸化触媒(DOC)内温度が充分に上昇していないので、一部の未燃燃料が排出されてしまい、匂いや白煙を伴う結果となってしまう。
本発明の課題は、前述のような不具合を解消するディーゼルエンジンを搭載した作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)と酸化触媒(46a)とから構成される後処理装置(46)を過給機(TB)の下流側に備えたディーゼルエンジンにおいて、前記過給器(TB)の排気タービン(45)上流側の排気管(63)にバイパス経路(64)を構成し、該バイパス経路(64)に第二酸化触媒(65)を設け、バイパス経路(64)に流れる排気ガスの量を調整する絞り弁(66)を設けたことを特徴とするディーゼルエンジンとしたものである。
【0006】
請求項1の作用は、先ずポスト噴射により、未燃燃料を流した際に、前段の第二酸化触媒(65)で一部の未燃燃料が酸化して昇温する。第二酸化触媒(65)は排気ガス温度の高い上流側に配置されているので、DPFの強制再生運転時においても活性状態にある。
【0007】
残った燃料は、下流側の酸化触媒(46a)で酸化されて更に昇温し、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)内に捕集されている、煤、粒状化物質(PM)を燃焼させて大気中に排出する。絞り弁(66)は、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の強制再生における昇温モード運転時に閉じる。
【0008】
請求項2記載の発明では、前記第二酸化触媒(65)は、過給器(TB)の下流側に配置される酸化触媒(46a)よりも小さい形状としたことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンとしたものである。
【0009】
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、第二酸化触媒(65)は、過給器(TB)の下流側に配置される酸化触媒(46a)よりも小さい形状とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の強制再生運転時に第二酸化触媒(65)と酸化触媒(46a)の2個の酸化触媒の作用で充分に昇温するようになる。これにより、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)が効率良く再生されるようになると共に、一部の未燃燃料が排出されることを防止できるので、匂いや白煙の大気中への放出が抑制されるようになる。
【0011】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、第二酸化触媒(65)は、過給器(TB)の下流側に配置される酸化触媒(46a)よりも小さい形状としたので、エンジンや排気系をコンパクトに構成可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
【0013】
このように、コモンレール1は、エンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0014】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0015】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0016】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0017】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0018】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
【0019】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0020】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0021】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0022】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0023】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0024】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0025】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケースT内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0026】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0027】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0028】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダーである。
【0029】
図5はエンジンのシリンダー5内への吸気と排気の模式図であり、4サイクルのディーゼルエンジンの実施例である。過給器TBの吸気タービン36により過給された空気は、エアクリーナー35から吸気タービン36、インタークーラー37を通過して吸気マニホールド38からシリンダー5内へ送られる構成である。39は吸気バルブであり、40はピストンである。48はカムでありロッカーアーム49を介して吸排気バルブ39、41を開閉させるものである。
【0030】
シリンダー5内で燃焼した排ガスは、排気バルブ41から排気マニホールド42を通過した後、過給器TBの排気タービン45で過給器TBを駆動して排出される構成である。
このディーゼルエンジンは、排気ガスの一部を吸気側に混入させるためのEGR(排気再循環装置)回路44を有している。EGR回路で排気ガスの一部を吸気側に混入させることで酸素量(O2)を減らして、窒素酸化物Noxの発生を低減させるように構成している。ただし、EGR率が上昇しすぎると、逆に酸素量が少なくなって不完全燃焼になるので、燃焼状態によりEGR率を調節する必要がある。この調節は、EGRバルブ43にて行う。EGR回路44は、後述する後処理装置46下流側の排気管55と過給器TBの吸気タービン36上流側の吸入管56との間を接続している。また、EGR回路44の途中にはEGRクーラ57を設ける構成としている。このEGRバルブ43の開閉具合でシリンダー5内への排気ガスの還元量が変化する。
【0031】
排気タービン45を通過後の排気ガスは、後処理装置46を通過してマフラー50から大気中に排出される。後処理装置46は、酸化触媒(DOC)46aとディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bとから構成されている。
【0032】
酸化触媒(DOC)46aは不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は粒状化物質(PM)を捕集するためのものである。前記EGRバルブ43と絞り弁47については、ECU100により制御される構成である。後処理装置46はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bのみで構成してもよい、酸化触媒(DOC)46aを設けると不燃物質が燃焼するので、よりクリーンな排気ガスとなる。
【0033】
DPF46bは、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、PMが溜まってきて能力の低下が懸念される。そこで、後処理装置46の下手側に絞り弁47を設け、この絞り弁47を絞るとDPF46b内の圧力が高く保持されるので温度も高くなる。これにより、高い温度の影響により、DPF46bの再生が可能となる。即ち、高い温度の排気ガスがDPF46bを通過すると、DPF46b内に存在しているPMが焼き飛ばされることでDPF46bが再生される。
【0034】
DPF46bを再生させるためのDPF再生運転としては、EGRバルブ43と絞り弁47の両方を絞る。そして、燃料噴射タイミングのリタード(遅角)と合わせてDPF46b内のガス温度を上昇させ、DPF46bが再生に入るようにする。これにより、燃料のアフター噴射(排気ガス温度を上昇させるため)が不要となったり、アフター噴射の回数を減らすことができるようになるので、燃料消費量を抑制できて環境にもよい。
【0035】
このようなDPF再生運転を行うための条件としては、後処理装置46の上手側に圧力センサ52を設け、後処理装置46の下手側にも圧力センサ53を設け、この圧力差が所定値以上になるとDPF46b内にPMが蓄積して抵抗となっている状態なので、DPF再生運転を行うようにする。
【0036】
また、DPF再生運転に入った状態が長時間続くと、過熱状態となってしまいDPF46bが損傷してしまう。そこで、後処理装置46の下手側に温度センサ59を設け、この温度センサ59の値が所定値を超えるとDPF再生運転を止めて通常運転に戻るようにする。
【0037】
通常の運転は、EGRバルブ43と絞り弁47を同時に制御してEGR量を適宜コントロールするようにする。特に、絞り弁47を有することで、DPF46b内のガス温度を高く保持することができるようになる。
【0038】
前記シリンダー室5から排気された排気ガスは、排気管63を通って過給器TBの排気タービン45へ向かうが、排気管63の途中にバイパス経路64を構成し、このバイパス経路64に第二酸化触媒(DOC)65を設ける構成とする。この第二酸化触媒(DOC)65は、後処理装置46内の酸化触媒(DOC)46aに対して小さいサイズとしている。
【0039】
そして、ポスト噴射等により未燃燃料を流した際に、絞り弁66を閉じて排気ガスをバイパス経路64に流すようにする。すると、未燃燃料は第二酸化触媒(DOC)65で未燃燃料の一部が酸化されて昇温する。さらに、残った未燃燃料は酸化触媒(DOC)46aで酸化されて更に昇温するようになるので、DPF46b内で捕集されているPMの燃焼が促進されてDPF46bの再生が早く可能となる。
【0040】
また、第二酸化触媒(DOC)65の直下流側に絞り部67を設ける構成とする。これにより、排気抵抗が高くなり排気ガス温度の上昇が促進されるようになる。
また、同じ図5の中に同時に記載しているが、前記バイパス回路64の代わりに、排気管63と過給器TBの排気タービン45下流側との間にバイパス回路68を設けるように構成してもよい。そして、このバイパス回路68に前記第二酸化触媒(DOC)65を設けるように構成してもよい。69は絞り弁である。バイパス回路68を使用しないときには、絞り弁69を閉じる構成とする。
【0041】
また、図示は省略するが、燃料フィルタの水溜り状態を水位センサーによって判断するように構成する。水位が高くセンサーのラベルが水有りと判断した場合には、水抜きバルブを開き、ラベルが水なしに変わるまで水を排出制御するようにする。
【0042】
具体的には、水位センサのラベルにより水位位置が高く、燃料系に水が混入する可能性がある場合には、水位のラベルが1から0に変わり、水位が低いと判断されるまで水抜きバルブを開いて水を排出する。排出した水は水タンクに貯蔵する。エンジンの負荷状態をECU100によって判別することにより、負荷状態が高く排気ガス中のNOxが高いと推定される場合には、水タンク内の水をCCB内に水を噴射してNOxの低減を行うようにする。このような構成とすることで、NOx低減が廉価に可能となる。
【0043】
図6の(a)はエンジンの正面図であり、(b)は側面図を示している。
前述した後処理装置46の酸化触媒(DOC)46aとDPF46bは、通常であれば直列状態で配置する構成とする。しかしながら、小型の作業車両(トラクタ)においては搭載するスペースが殆んどないのが現状である。
【0044】
そこで、DOC46aとDPF46bを分離して直交する形態で搭載する構成とする。具体的には、過給器TBの排気側とDOC46aを排気管70で連結し、DOC46aと直交する形態でエンジンEの上方にDPF46bを配置する構成とする。これにより、狭いスペース(エンジンルーム内)でもDOC46aとDPF46bを配置可能となる。
【0045】
図7はエンジンE、DOC46a、DPF46b及びDPFバルブ71についての説明である。DOC46aやDPF46bを設けても、微量の煤、PMは排気ガス中に残るので、DPF46bの下流にあるDPFバルブ71には煤等が付着して溜まってくる。そして、ある程度以上溜まるとDPFバルブ71の作動が悪くなる。そこで、DPFバルブ71に溜まった煤等を除去する必要がある。
【0046】
DPF46bを再生させるときには、DPFバルブ71を所定量閉じて(完全には閉じない)DPF46bを昇温させ、DPF46b内の煤やPMを焼き飛ばすが、DPF46bを再生させるタイミング以外にもDPFバルブ71を作動させてDPFバルブ71内に溜まっている煤等を除去するように構成する。
【0047】
例えば、運転中10分に1回、エンジン性能に影響の無い範囲で、短時間DPFバルブ71の開閉動作をし、動作中の振動によりDPFバルブ71に溜まっている煤等を落すようにする。また、エンジン始動時において、キーを入り状態としたときに、短時間DPFバルブ71の開閉動作を行ってもよい。また、エンジン停止直後、短時間DPFバルブ71の開閉動作を行ってもよい。 これにより、DPFバルブ71に溜まった煤等を効率よく除去可能となる。
【0048】
また、DPFバルブ71を迂回するバイパス回路72を設け、このバイパス回路72に調圧弁73を設ける構成とする。DPF46bを再生させるときにおいては、DPFバルブ71を全閉する。すると、排気ガスはバイパス回路72を流れる。そして、調圧弁73を自動調整してDPFバルブ71上流の圧力が一定となるように制御する。これにより、DPFバルブ71に煤等の堆積による経時変化が少なく、精度よくDPF46bの再生が可能となる。
【0049】
図8(a)に示すように、DPF再生の調整ダイヤル74を操作部の任意の位置に設ける構成とする。この調整ダイヤル74は、燃費優先とDPF再生優先を決めるものであり、ポスト噴射をどの領域まで設定するかを調整するものである。この調整ダイヤル74の中間位置は通常の標準状態としている。図8(b)に示すように、調整ダイヤル74を調整すると標準ラインが移動する構成である。
【0050】
調整により燃費優先を選択すると、ポスト噴射は行われず燃料消費量は抑制できる。また、DPF再生優先を選択すると、DPF前後の差圧が高くなった時において、燃料はポスト噴射の分使用することになるが、速やかに自動再生モードに突入して手動再生を可能な限り回避できるようになる。
【0051】
このようなDPFの再生においては、従来は単一のパラメータ(例えばDPF前後の差圧)で検知していたので精度が悪く、ポスト噴射のための無駄な燃料を使用する場面があって。そこで、DPF46bの詰りを稼動時間、DPF前後差圧、負荷率マップ、連続再生マップの4個のパラメータから算出する構成とする。煤堆積量の積算値の算出は、(稼動時間からの煤の推定値)+(負荷率からの煤の推定値)+(DPF差圧からの煤の推定値)−(連続再生での低減量)となる。煤の堆積量が算出できたら、DPF46bの強制再生の必要なレベルと時間を算出して運転者に精度よく知らせることが可能となる。
【0052】
農業機械の場合、シーズン中にDPFの再生を行うことは嫌がられることが多い。そこで、シーズン終了期間中に行うことが望ましいので、長期格納前にDPFのAsh堆積状態を診断するように構成する。
【0053】
トラクタ、コンバイン、田植機等の運転席に設けている長期格納ボタン75を入り状態とすると、DPF46bの強制再生を実施すると共に、再生後の差圧からAsh堆積量を推定する。長期格納ボタン75を押した時間間隔から、DPFのAsh詰りによる残寿命時間を推定する。次のシーズン期間中に限界値に達すると判断させる場合は、メンテナンスの必要性を表示するようにする。これにより、シーズン終了期間中にメンテナンスを実施することを明確に促すことが可能となる。図9にこの関連図を示している。Ashの詰りによるDPF残寿命推定時間の計算式は、
(Pmax−P2)/(P2−P1)×Δt
となる。
推定残寿命時間がΔtに対して余裕が少ない場合は、シーズンオフの期間中にAsh清掃することをメータパネルに表示する。
【0054】
次に、図10(a)に示す標準モードL1と低燃費モードL2を備える構成について説明する。標準モードL1と低燃費モードL2の切り換えは、運転席に設ける燃費モードスイッチにて行う。そして、低燃費モードL2に切り換えると、中回転領域S1以下で行っているメイン噴射とアフター噴射との噴射間隔を広げ(図10(b))、噴射タイミングを遅らせてターボ過給圧を増加させるように構成する。従来、噴射タイミングを進角させる制御を行う燃費モードは、標準モードに比べ燃費性能を良いものの、全体的にスモークが悪化する傾向で問題があった。
【0055】
前述のように、アフター噴射とメイン噴射との間隔を広げることでアフター噴射のタイミングが遅れ、燃焼が後期まで引っ張られることにより排気温度が上昇し、ブースト圧が上がる。よって空気流量が増加するためスモークが低減する。
【0056】
標準モードで噴射間隔を広げ過ぎるとアフター噴射のタイミングが遅くなりすぎて、逆にスモークが増加してしまうが、低燃費モードの場合、全体的に噴射タイミングが進角されているため、噴射間隔を広げてもアフター噴射が遅くなりすぎることはない。
【0057】
図11(a),図11(b)に示す標準モードL3と低燃費モードL4について説明する。低燃費モードL4に切り換えた際、標準モードL3ではシングル噴射である高回転・中負荷領域S2以上の領域で、パイロット噴射及びアフター噴射を同時に追加する構成とする。従来、噴射タイミングを進角させる制御を行う燃費モードは、標準モードに比べて燃費は良いものの、噴射タイミングの悪影響が出て、特に定格付近のシングル噴射領域で騒音悪化、スモーク悪化する傾向にある。
【0058】
少し燃費は悪くなるが、スモーク抑制に効果があるアフター噴射、騒音低減・燃費向上に効果があるパイロット噴射を同時に行うことで、騒音・スモーク低減させても燃費悪化は防ぐことができるようになり、噴射タイミング進角分の燃費向上分を維持することができる。そして、低燃費モード時のみにこのような制御を行うために、噴射回数増加による噴射ノズル耐久性への悪影響は少なくなる。
【0059】
次に、図12(a)に示すように、インタークーラー無しのターボエンジンの低燃費モードについて説明する。標準の全負荷カーブL5に対して、全回転高負荷域のトルクを20%削減し、中負荷域以下の噴射タイミングを進角(2度〜4度)させて、出力を標準全負荷出力に対し全体的に絞った全負荷カーブL6(低燃費モード)を設定する。
【0060】
インタークーラー無しのターボエンジンは、図12(b)に示すように、インタークーラー付ターボエンジンL8や自然吸気エンジンL9とは異なり、噴射タイミング等の噴射条件が一定であっても、燃料噴射量が増加する。即ち、ターボ過給圧が増加(吸気温度が増加)するにつれて、NOxが悪化するという特性がある(L7)。
【0061】
このような特性を利用し、全体的に出力を絞ることで噴射タイミングを進角させても全体のNOx排出率は悪化しない燃費のよい出力カーブを得ることができる。
前述した図3と図4のトラクタの全体構成において、トラクタは足で操作するアクセルペダル23と、手で操作するアクセルレバー25を有している。アクセルペダル23は、自動車と同じで足で踏み操作している間のみエンジン回転が上昇する構成である。また、アクセルレバー25は手で操作すると共に、アクセルレバー25から手を離してもその部分でエンジン回転を維持する構成としている。
【0062】
そして、アクセルレバー25を操作して一定のエンジン回転数を維持している場合において、アクセルペダル23の有効範囲は、アクセルレバー25で設定しているエンジン回転数から無負荷最高回転数までとなるように構成する。また、このような機能を選択可能な選択スイッチを運転席に設ける構成としている。これにより、作業によって微妙なエンジン回転数の調整が可変的に可能となる。
【0063】
前述のように、DPFを搭載したエンジンをコンバインに使用した場合において、コンバインの動力源としてエンジンと電気モータを備える構成とする。そして、コンバインのグレンタンクから籾を排出する場合には、エンジン動力を利用するのか又はモーターを利用するのかを選択可能に構成する。籾の排出をモーターで行う場合、籾排出中にDPFの強制再生を行う構成とする。これにより、籾排出の時間をDPF再生に有効的に利用可能となり、DPFの再生のために作業を中断するようなことを防止できるようになる。
【0064】
また、前記モータを駆動するバッテリーの充電については、車両のブレーキ力やコンバインの旋回時、刈取、脱穀部等のブレーキ力を利用して充電するように構成する。
図13は駐車ブレーキレバー76とそのレバー溝77を示している。駐車ブレーキレバー76の位置は、パーキングブレーキ解除位置と通常のパーキングブレーキ作動位置に加えて、パーキングブレーキが作動すると共にDPFの強制再生を行なう位置78を設ける構成とする。また、この位置は操作ミス防止のためにクランク形状とした別の溝79に設ける構成とする。これにより、駐車ブレーキの操作のみで機体が停止し、さらにDPFの強制再生が可能となるので、操作性が向上するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクタの左側面図
【図4】トラクタの平面図
【図5】吸気系と排気系の模式図
【図6】(a)エンジンの正面図 (b)エンジンの側面図
【図7】エンジン側面図および排気系の模式図
【図8】(a)調整ダイヤルの平面図 (b)エンジン回転数と負荷率との関係図
【図9】DPF使用時間とDPF再生後の差圧との関係図
【図10】(a)エンジン回転数と出力の性能曲線図 (b)燃料噴射タイミングの模式図
【図11】(a)エンジン回転数と出力の性能曲線図 (b)燃料噴射タイミングの模式図
【図12】(a)エンジン回転数と出力の性能曲線図 (b)出力とNOx排出量との関係図
【図13】駐車ブレーキレバーとその溝の平面図
【符号の説明】
【0067】
PM 粒状化物質
TB 過給器
45 排気タービン
46 後処理装置
46a 酸化触媒(DOC)
46b ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
63 排気管
64 バイパス経路
65 第二酸化触媒
66 絞り弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)と酸化触媒(46a)とから構成される後処理装置(46)を過給機(TB)の下流側に備えたディーゼルエンジンにおいて、前記過給器(TB)の排気タービン(45)上流側の排気管(63)にバイパス経路(64)を構成し、該バイパス経路(64)に第二酸化触媒(65)を設け、バイパス経路(64)に流れる排気ガスの量を調整する絞り弁(66)を設けたことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記第二酸化触媒(65)は、過給器(TB)の下流側に配置される酸化触媒(46a)よりも小さい形状としたことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−156208(P2010−156208A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333414(P2008−333414)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】