説明

デジタルマイクロミラーデバイス

【課題】基板上に配置されたマイクロミラーアセンブリのアレイを備えるデジタルマイクロミラーデバイスを提供する。
【解決手段】各マイクロミラーアセンブリは、基板から間隔を置いて配置されたミラーと、ミラーを支持するステムと、ステムの両側に配置された第1の電極及び第2の電極とを備える。ステムは、弾性的に可撓性の材料からなり、したがってミラーは、静電力によって第1の電極の方に、又は第2の電極の方に傾斜することができる。このデジタルマイクロミラーデバイスは、データ投影機等に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルミラーデバイス(DMD)に関する。本発明は、単純なMEMS製造ステップを用いて製造することができる改良型デバイスを提供するために主に開発されてきたものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)は、データ投影機等の多種多様な光デバイスにおいて、今や比較的一般的である。かかるデバイスでは、画像は、半導体チップ上にマトリクス状に配置された微視的小型ミラー(DMD)によって生成される。各ミラーは、投影された画像の1つ又は複数の画素に相当する。ミラーの数は、投影画像の解像度に対応する。
【0003】
DMD技術は、1980年代にテキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)によって開発された(例えば、米国特許第4,956,619号公報、米国特許第4,662,746号公報など参照)。
【0004】
DMDチップは、表面上に数十万個の微視的ミラーが長方形アレイに配列されたものであり、これらのミラーは、表示画像の画素に対応する。これらのミラーは、個々に±10〜12°回転させて、オン又はオフの状態にすることができる。オン状態では、投影機電球からの光がレンズに反射し、スクリーン上で画素が明るく見える。オフ状態では、光は他の場所(通常はヒートシンク)に向けられ、スクリーンが暗く見える。
【0005】
グレイスケールを生成するには、ミラーを非常に高速に切り換え、オン時間対オフ時間の比率によって、生成される濃淡が決まる(2値パルス幅変調方式)。現代のDMDチップでは、1024までの濃淡を生成することができる。
【0006】
ミラー自体は、アルミニウムから作成され、通常約16平方マイクロメートルである。各ミラーは、ミラーの下側面から延びる剛性ステムを介してヨークに取り付けられている。ヨークは、応従性のある(compliant)ねじれヒンジによって支持されており、このねじれヒンジによって、ヨーク(したがってミラー)がオン位置とオフ位置との間で動くことが可能となる。ねじれヒンジは、疲労及び振動衝撃に比較的耐性がある。
【0007】
電極により、静電引力/斥力によってミラーの位置を制御する。1対の電極がヒンジの両側に配置され、一方はヨークに作用し、他方はアルミニウムミラーに直接作用する。約20〜30ボルトのバイアス電位がミラー及びヨークに印加され、一方電極は5ボルトCMOSを用いてアドレシングされる。したがって、ミラーの片側にある電極を+5Vで駆動すると、ミラーは電極が0Vである反対側の方に傾斜する。CMOS電圧を逆転させると、ミラーは反対側に傾斜にすることになる。したがって、各ミラーのオン/オフ状態は、CMOSを介して制御することが可能である。
【0008】
上述のもの等のDMDのより詳細な説明については、David Armitage 他の「Introduction to Microdisplays」、John Wiley and Sons、 2006年を参照されたい。
【0009】
DMDの設計は、ここ10年ほどの間比較的変化してきてはいない。しかし、各ミラーアセンブリ内のいくつかの可動部品のため、DMDは比較的複雑な設計であり、それに対応して複雑なMEMS製造工程が必要となる。こうした複雑性によって、製造コストが増大し、また、各ミラーアセンブリを小型化できる程度に影響が生じる可能性がある。既知のDMDに比べて比較的簡単な設計を有するDMDを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,956,619号公報
【特許文献2】米国特許第4,662,746号公報
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、基板上に配置された複数のマイクロミラーアセンブリを具備するデジタルマイクロミラーデバイスであって、
各マイクロミラーアセンブリが、
前記基板から間隔を置いて配置されたミラーであって、上側反射面及び下側支持面を有する当該ミラーと、
前記ミラーを支持するステムであって、前記基板から前記下側支持面まで延び、前記ミラーの傾斜軸を画定する当該ステムと、
前記ステムの両側に配置された第1の電極及び第2の電極であって、各電極が、前記基板中の電子回路を介して個別にアドレス可能である電極と、
を備え、
前記ステムが弾性的に可撓性の材料からなり、前記ミラーが、静電力によって、前記第1の電極の方に又は前記第2の電極の方に傾斜可能に構成されている、
デジタルマイクロミラーデバイスが提供される。
【0012】
ミラーは、可撓性ステムの周りで傾斜するため、本発明では、従来のDMDにあるヨーク及びねじれヒンジ構成が不要となっている。このため、DMDの全体的な設計、並びにDMDの製造が大幅に簡略化されている。
【0013】
任意選択で、ステムは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のポリマーからなる。PDMSは比較的低いヤング率(1000MPa未満)を有し、したがって電極(複数可)を介して印加される静電力によって、ステムが曲がることが可能となる。さらに、本出願人は、MEMSデバイスにおけるPDMSの有用性、及びPDMSのMEMS製造工程への容易な組込みを既に実証している。
【0014】
任意選択で、上側反射面の全範囲は、平坦である。この平坦面は、従来技術によるDMDとは異なり、従来技術によるDMDでは、上側反射面にステムとの接合部から生じる中央ディンプルがある。完全に平坦な上側反射面によって、従来技術によるデバイスに比べて光学的品質が有利には向上する。
【0015】
任意選択で、ミラーは、金属プレートを備え、この金属プレートは、上側反射面を画定する。任意選択で、金属プレートは、アルミニウムプレートである。
【0016】
任意選択で、ミラーは、金属プレート用の支持プラットフォームをさらに備え、この支持プラットフォームは、下側支持面を画定する。したがって、ミラーは、典型的には、上側金属プレートと、金属プレート用の下側支持プラットフォームとを備えた2部品一体化構造である。
【0017】
任意選択で、支持プラットフォームは、金属プレートと実質的に同延である。
【0018】
任意選択で、支持プラットフォーム及びステムは、同じ材料からなる。典型的には、ステム及び支持プラットフォームは、単一の堆積ステップで同時形成される。例えば、PDMSの堆積によって、ステム及び支持プラットフォームを同時形成することができる。
【0019】
任意選択で、第1の電極及び第2の電極は、ミラー用の第1のランディングパッド及び第2のランディングパッドを画定する。
【0020】
任意選択で、ミラーは、それぞれの第1のランディングパッド及び第2のランディングパッドと接触する第1の接触点及び第2の接触点を有し、これらの第1の接触点及び第2の接触点は、ポリマーからなる。接触点がポリマー(例えばPDMS)からなるため、ミラーがどちらかの電極に張り付いて動かなくなる傾向が最小限に抑えられる。
【0021】
任意選択で、支持プラットフォームは、第1の接触点及び第2の接触点を画定する。したがって、潜在的な静止摩擦問題に対処するための追加の機構が必要でない。支持プラットフォームは、上側アルミニウム反射プレートを支持する機能と、ミラーと電極との間の静止摩擦を最小限に抑える機能との2つの機能を果たす。
【0022】
任意選択で、ミラーは、バイアス電位に電気的に接続される。バイアス電位によって、典型的にはミラーが高電位に維持され、したがって、ミラーは、CMOS電圧(通常5V)によって制御される電極を介して傾斜することが可能となる。
【0023】
ステムは、導電性ポリマーからなることができ、したがってステムが、バイアス電位への電気接続を行う。例えば、ステムは、金属イオンが注入されたPDMSからなることができる。
【0024】
あるいは、複数のミラーを列状に互いに結合し、各列の片側端部をバイアス電圧に電気的に接続してもよい。したがって、共通の接触点を介して、バイアス電位をミラー列全体に印加することができる。
【0025】
任意選択で、ミラーの各列は、共通の傾斜軸を有する。
【0026】
任意選択で、列内の隣接するミラー同士を、リンク機構を介して互いに結合し、リンク機構を共通の傾斜軸に沿って並べる。
【0027】
任意選択で、基板は、1つ又は複数のCMOS層を含むシリコン基板であり、このCMOS層は、電子回路を備える。
【0028】
第2の態様では、上述のデジタルミラーデバイスを備える投影機が提供される。DMDを使用した投影機及び投影システムは、当業者には周知であろう。
【0029】
第3の態様では、マイクロミラーアセンブリを製造する方法であって、
(a)基板の表面上に間隔を置いて配置された1対の電極を形成するステップであり、電極が下にある基板中の電子回路に接続されている、ステップと、
(b)電極及び基板上に犠牲材料層を堆積させるステップと、
(c)犠牲材料中にステム開口を画定して、足場を形成するステップであり、ステム開口が電極の間に位置する、ステップと、
(d)足場の上に弾性的に可撓性の材料層を堆積させるステップと、
(e)可撓性層の上に金属層を堆積させるステップと、
(f)金属層及び可撓性層をエッチングして、可撓性材料のステムで支持された個々のマイクロミラーを画定するステップであり、マイクロミラーが支持プラットフォームに融着された金属層を備える、ステップと、
(g)犠牲材料を除去して、マイクロミラーアセンブリを設けるステップと
を含む、方法が提供される。
【0030】
第3の態様による方法は、最小数の製造ステップを用いてDMDを製造する簡単且つ有効な手段を提供する。
【0031】
任意選択で、弾性的に可撓性の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる。
【0032】
任意選択で、犠牲材料は、光硬化性である。
【0033】
任意選択で、金属層は、アルミニウムからなる。
【0034】
任意選択で、マイクロミラーのアレイは、基板上で同時に製造され、このアレイによって、デジタルマイクロミラーデバイスが画定される。
【0035】
任意選択で、基板は、1つ又は複数のCMOS層を含むシリコン基板であり、このCMOS層は、電子回路を備える。
【0036】
第4の態様では、ステムによって支持された傾斜可能なミラーを備えるマイクロミラーアセンブリであって、ステムが弾性的に可撓性の材料からなる、マイクロミラーアセンブリが提供される。
【0037】
任意選択で、傾斜可能なミラーは、上側反射面を有する金属層を備える。
【0038】
任意選択で、傾斜可能なミラーは、金属層が上に取り付けられる支持プラットフォームをさらに備え、この支持プラットフォームは、弾性的に可撓性の材料からなる。
【0039】
任意選択で、弾性的に可撓性の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる。
【0040】
任意選択で、ミラーは、静電力によって傾斜可能である。
【0041】
任意選択で、1対の電極がステムの両側に配置され、電極によって、静電力の少なくとも一部がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるDMDの概略断面図である。
【図2】図1のDMDが傾斜位置にある図である。
【図3】図1に示すDMDの平面図である。
【図4】電極が形成される、MEMS製造の第1の段階を示す図である。
【図5】犠牲足場が形成される、MEMS製造の第2の段階を示す図である。
【図6】ミラー層及びステムが堆積される、MEMS製造の第3の段階を示す図である。
【図7】個々のマイクロミラーが画定される、MEMS製造の第4の段階を示す図である。
【図8】本発明によるDMDを使用したデータ投影機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明の任意選択による実施形態を、添付の図面を参照しながら単なる例によって説明する。
【0044】
本出願人は、MEMSデバイスにおけるポリジメチルシロキサン(PDMS)の多用性を既に実証している(例えば、各内容を参照により本明細書に組み込む2008年6月20日出願の米国特許出願第12/142,779号、及び2007年3月12日出願の同第11/685,084号参照)。特に、PDMSを従来のMEMS製造工程に組み込むことによって、機械インクジェット装置が改良され、また、ラボオンチップ(lab−on−a−chip)デバイスや微視的分析システムの新しい分野が開拓されてきた。
【0045】
PDMSは、DMDに使用するのに適した特性を有し、したがって市販のDMDよりも遙かに簡単な設計を有することができることが今や判明している。図1及び2を参照すると、本発明によるデジタルマイクロミラーデバイスの一部が示されている。このDMDは、基板2の表面上にマトリクス状に配置された複数のマイクロミラーアセンブリ1を備える。典型的には、各マイクロミラーアセンブリ1は、隣接するマイクロミラーアセンブリとは、5ミクロン未満(例えば、2ミクロン)離れている。マイクロミラーアセンブリは、基板1から間隔を置いて配置されたミラー5を備える。各ミラーは、典型的には正方形であり、約10〜20ミクロンの範囲の長さを有する。
【0046】
ミラー5は、ミラーの上側反射面8を画定するアルミニウムプレート7を備える。ミラー5は、ミラーの下側支持面11を画定する支持プラットフォーム10をさらに備える。アルミニウムプレート7は、DMDのMEMS製造中に、支持プラットフォーム10に融着される。アルミニウムプレート7が支持プラットフォーム10に取り付けられているため、ミラー5の上側反射面8は、その全体にわたって平坦にすることができる。このように平坦にすることによって、優れた光学解像度が有利には得られる。これに対して、従来技術によるDMDは、典型的には、反射面の、支柱がミラーに接合された位置に圧痕を有する。
【0047】
アルミニウムは、DMDに典型的に使用される反射材料であるが、他の金属(例えばチタン)を代わりに使用してもよいことを理解されたい。
【0048】
ミラー5は、基板2から下側支持面11まで延びる弾性的に可撓性のステム13によって支持されている。ステム13と支持プラットフォーム10は共に、同じ可撓性材料からなる一体構造を成している。典型的には、ステム13及び支持プラットフォーム10は、1000MPa未満のヤング率を有するポリマーからなる。ステム13を形成するのに好ましい材料は、ポリジメチルシロキサンであり、約600MPaのヤング率を有する。
【0049】
ステム13は、ミラー5の傾斜軸を画定する。図2で最も明白に分かるように、ミラー5は、傾斜軸の周りで約±15度までの角度、典型的には±7〜10度の角度で傾斜させることが可能である。弾性的に可撓性のステム13を、従来技術によるDMDと対比されたく、従来技術によるDMDでは、ミラーの傾斜が可能となるように、剛性ステムがその基礎部でヒンジ結合されている。
【0050】
ステム13は、ミラー5の重心に取り付けられた支柱の形でよい。あるいは、ステム13は、傾斜軸に沿って少なくとも部分的に延ばしてもよい。典型的には、ステム13は、傾斜軸に沿って延び、ミラー5と同延の支持壁の形を取る。
【0051】
第1の電極15及び第2の電極16が、ステム13の両側に配置されている。第1の電極及び第2の電極は、シリコン基板1中の電子回路によって個別にアドレス可能であり、それによって、ミラー5を静電引力により傾斜させることが可能である。DMDの典型的な動作について、以下でより詳細に説明する。電子回路は、基板の上部に含まれたCMOS層18に含まれている。
【0052】
図2で最も明白に示されるように、第1の電極及び第2の電極によって、ミラー5が傾斜したときのランディングパッドが画定される。従来技術によるDMDの問題の1つに、ミラー/ヨークとランディングパッドとの間の静止摩擦力の問題がある。静止摩擦力によって、ミラーが一方のランディングパッドに恒久的に張り付いて動かなくなり、その結果ミラーが動作不能になることがある。しかし、マイクロミラーアセンブリ1では、支持プラットフォーム10が、ランディングパッドと接触する第1の接触点及び第2の接触点を画定している。支持プラットフォーム10は、有利にはPDMSからなるので、いかなる静止摩擦力も最小限に抑えられる。
【0053】
従来技術によるDMDに即して、本発明のDMDも、ミラー5が、バイアス電位によって比較的高い電位(例えば、20〜50ボルト)に維持される場合に最も有効に機能する。この状況では、下にある5ボルトCMOS回路によって、第1の電極又は第2の電極のいずれかがオン又はオフになったときの必要静電力が最大になる。
【0054】
バイアス電位は、支持ステム13を介してアルミニウムプレート7に印加することができる。PDMS等のポリマー材料は通常、電気絶縁性であるが、チタンイオン等の金属イオンを注入することによって、かかる材料を導電性にすることが可能である(例えば、内容を参照により本明細書に組み込むDubois他の「Sensors and Actuators A」130〜131(2006)、147〜154参照)。したがって、導電性ステム13を用いて、アルミニウムプレート7を高バイアス電位で保持することができる。
【0055】
あるいは、図3に示すように、アルミニウムプレート同士を互いに結合させ、ミラーの列に、列の一端部にある電圧源からバイアス電位を印加することによって、バイアス電位をアルミニウムプレート7に印加してもよい。隣接するプレート7同士は、ミラーの傾斜軸に沿って延びるリンク機構20を介して、互いにデイジーチェーン式に結合される。リンク機構は、ミラー傾斜に対するインピーダンスが最小限に抑えられるように、傾斜軸に沿って配置される。
【0056】
リンク機構20は、ミラーが傾斜する間、必然的にねじれ力を僅かに受けることになるが、これらのリンク機構は一般に、このねじれ力から疲労することはない。その理由は、結合部材のスケールが微視的であるためであり、そのためいかなる結晶転位もすぐに緩和されることになるからである。従来技術によるDMDのねじれヒンジは、同じ理由から疲労することはない。
【0057】
次に、図2を参照すると、傾斜位置にあるマイクロミラーアセンブリ1が示されている。図示の傾斜位置まで動かすには、CMOS回路18によって、第1の電極15を+5Vに設定し、第2の電極を0Vに設定する。アルミニウムプレートが約+45Vの電位にバイアスされているので、ミラー5は、第1の電極から静電反発力を受け、第2の電極の方に傾斜する。当然ながら、電極極性を反転させることによって、ミラー5は反対方向に傾斜することになる。次いで、ミラー5をその傾斜位置で維持するには、両電極を+5V又は0Vに設定するとよい。
【0058】
傾斜中、ステム13は、ミラー5の傾斜に対応するように撓むことが理解されよう。したがって、従来技術による設計とは異なり、ミラーの弾性的傾斜を可能とするのに、いかなる複雑なねじれヒンジ構成も必要でない。
【0059】
次に、図4〜7を参照すると、図1に示すDMDを製造するための簡略化したMEMS製造工程が示されている。図4〜7では、CMOS層18は示されていない。
【0060】
図4に示す第1のステップで、1ミクロンのアルミニウム層をCMOS基板1上に堆積させ、エッチングして個々の第1の電極15及び第2の電極16を画定することによって、電極(又はランディングパッド)を形成する。これらのアルミニウム電極は、下にあるCMOSの上側金属層と接続しており、したがって各電極は、個別に制御可能である。
【0061】
図5に示す第2のステップで、フォトレジスト層22を電極上にスピンコーティングし、パターニングして、ステム開口23を画定する。このフォトレジスト層22は、その後PDMS及びアルミニウムを堆積させる犠牲足場として機能する。
【0062】
図6に示す第3のステップで、PDMS層をフォトレジスト層22上に堆積させ、その後アルミニウム層を堆積させる。PDMS層は、各マイクロミラーアセンブリのステム13及び支持プラットフォーム10を構成する。アルミニウム層は、上側反射面8を有するプレート7を構成する。
【0063】
図7に示す第4のステップで、PDMS層及びアルミニウム層をエッチングして、個々のミラー5を画定する。このエッチングステップには、適切にパターニングしたフォトレジストマスク(図示せず)を使用し、異なる層をエッチングするのに、異なる化学エッチングが必要となることがある。
【0064】
最終ステップで、酸化プラズマ(例えばOプラズマ)に露出させることによって犠牲フォトレジスト22を除去する。最後の「アッシング」ステップによって、図1に示すDMDが得られる。
【0065】
図8は、上述のDMDを使用した典型的なデータ投影機100(例えば、画像投影機又はビデオ投影機)を示す。既知のDMDを組み込んだいかなるデータ投影機も、代わりに、本発明によるDMDを組み込むことができる。内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,966,659号で説明されているように、投影機は、コンピュータシステム101から受け取った画像を印刷するためのプリントヘッドをさらに備えることができる。例えば、印刷物102は、図8に示すように投影機100の背面から排出することができる。
【0066】
当然ながら、本発明は、単なる例によって説明してきたものにすぎず、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内で詳細について改変を行うことができることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された複数のマイクロミラーアセンブリを具備するデジタルマイクロミラーデバイスであって、
各マイクロミラーアセンブリが、
前記基板から間隔を置いて配置されたミラーであって、上側反射面及び下側支持面を有する当該ミラーと、
前記ミラーを支持するステムであって、前記基板から前記下側支持面まで延び、前記ミラーの傾斜軸を画定する当該ステムと、
前記ステムの両側に配置された第1の電極及び第2の電極であって、各電極が、前記基板中の電子回路を介して個別にアドレス可能である電極と、
を備え、
前記ステムが弾性的に可撓性の材料からなり、前記ミラーが、静電力によって、前記第1の電極の方に又は前記第2の電極の方に傾斜可能に構成されている、デジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項2】
前記ステムが、ポリマーからなる、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項3】
前記ステムが、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項4】
前記上側反射面の全範囲が、平坦である、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項5】
前記ミラーが、金属プレートを備え、
前記金属プレートが、前記上側反射面を画定する、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項6】
前記金属プレートが、アルミニウムプレートである、請求項5に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項7】
前記ミラーが、前記金属プレート用の支持プラットフォームをさらに備え、
前記支持プラットフォームが、前記下側支持面を画定する、請求項5に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項8】
前記支持プラットフォームが、前記金属プレートと同延である、請求項7に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項9】
前記支持プラットフォーム及び前記ステムが、同じ材料からなる、請求項7に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項10】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、前記ミラー用の第1のランディングパッド及び第2のランディングパッドを画定する、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項11】
前記ミラーが、それぞれの第1のランディングパッド及び第2のランディングパッドと接触する第1の接触点及び第2の接触点を有し、
前記第1の接触点及び前記第2の接触点が、ポリマーからなる、請求項10に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項12】
前記支持プラットフォームが、前記第1の接触点及び前記第2の接触点を画定する、請求項11に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項13】
前記ミラーが、バイアス電位に電気的に接続される、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項14】
前記ステムが、導電性ポリマーからなり、
前記ステムが、前記バイアス電位への電気接続を行う、請求項13に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項15】
前記ステムが、金属イオンが注入されたポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる、請求項14に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項16】
複数のミラーが、列状に互いに結合され、各列の片側端部が、前記バイアス電位に電気的に接続される、請求項13に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項17】
ミラーの各列が、共通の傾斜軸を有する、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項18】
列内の隣接するミラー同士が、リンク機構を介して互いに結合され、
前記リンク機構が、前記共通の傾斜軸に沿って並べられる、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項19】
前記基板が、1つ又は複数のCMOS層を含むシリコン基板であり、
前記CMOS層が、前記電子回路を備える、請求項1に記載のデジタルマイクロミラーデバイス。
【請求項20】
請求項1に記載のデジタルミラーデバイスを備える、投影機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−511163(P2012−511163A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538793(P2011−538793)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001849
【国際公開番号】WO2010/068962
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】