説明

トラクタの機体構造

【課題】 運転座席の下方前部に足元カバーを、組み付け作業性、および、組み付け後のメンテナンス性を低下させることなく装着できるようにする。
【解決手段】 足元カバー65を、左右の後輪フェンダ18に亘って連結される縦壁状の後部カバー66と、この後部カバー66の前部に連結されるトンネル状の前部カバー67とで構成し、前部カバー67の後端上部に、後部カバー66の前面上部に設けた上部連結部69に上方から係合されて前後左右移動および下方移動が阻止された状態に係合連結される上部係合部70を設けるとともに、前部カバー67における左右辺の後端下部には、後部カバー66における開口68の左右下部に設けた下部連結部71に横内方から係合されて前後移動、上方移動、および、横外方移動が阻止された状態に係合連結される下部係合部73を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の後輪フェンダの間に運転座席を配備し、運転ステップの後端左右と前記後輪フェンダの前端下部とを連結し、運転座席の下方前部に、左右の後輪フェンダの間を塞ぐとともに車体後部の上方隆起部を覆う足元カバーを配備したトラクタの機体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記トラクタの機体構造としては、左右の後輪フェンダの間を塞ぐとともに車体後部の上方隆起部を覆う足元カバーを樹脂材で一体形成し、足元カバーの上端辺の左右に突設した爪を左右後輪フェンダに亘って架設したステーに係止するとともに、足元カバーの下端辺の左右に突設した爪をステップの後端に係止して取付けるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−237561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の足元カバーは爪係止手段を用いて工具なしで取り付けることができ、組み付け作業性に優れたものとなっているが、左右の後輪フェンダの間を塞ぐ縦壁状部分と車体後部の上方隆起部を覆う膨出部分とが一体形成された上下および左右に大きい立体構造となっていたために、この足元カバーを樹脂成型する金型が高価なものになりがちであった。
【0005】
また、組み付けられた足元カバーを取外せば機体上部を大きく開放できるので、内部を点検整備するのに便利であるが、その反面、左右を後輪フェンダで囲まれるとともに、上方に運転座席が配備された箇所で、後輪フェンダの間隔に近い横幅をもった大型の足元カバーを脱着するには手数がかかるものであった。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、組み付け作業性、および、組み付け後のメンテナンス性を低下させることなく、足元カバーを装着できるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、左右の後輪フェンダの間に運転座席を配備し、運転ステップの後端左右と前記後輪フェンダの前端下部とを連結し、運転座席の下方前部に、左右の後輪フェンダの間を塞ぐとともに車体後部の上方隆起部を覆う足元カバーを配備したトラクタの機体構造において、
前記足元カバーを、左右の後輪フェンダに亘って連結されるとともに車体後部の上方隆起部を挿通する開口を備えた縦壁状の後部カバーと、この後部カバーの前部に連結されるトンネル状の前部カバーとで構成し、
前記前部カバーの後端上部に、前記後部カバーの前面上部に設けた上部連結部に上方から係合されて前後左右移動および下方移動が阻止された状態に係合連結される上部係合部を設けるとともに、前部カバーにおける左右辺の後端下部には、前記後部カバーにおける開口の左右下部に設けた下部連結部に横内方から係合されて前後移動、上方移動、および、横外方移動が阻止された状態に係合連結される下部係合部を設けてあることを特徴とする。
【0008】
上記構成によると、足元カバーの組み付けに際しては、先ず、後部カバーを後輪フェンダの間に差し入れて、例えば、後部カバーの左右端を後輪フェンダにボルト連結して固定する。次に、縦壁状に固定された後部カバーの前面上部に前部カバーを位置させ、前部カバーの上部係合部を後部カバーの上部連結部に係合させながら前部カバーを押し下げる。この場合、前部カバーの左右辺の下端が後部カバーの左右に設けられた下部連結部に引っかからないように左右辺を横内側に少し撓ませながら前部カバーを押し下げる。そして、前部カバーの上部係合部が後部カバーの上部連結部に充分係合した状態で左右辺を外方に復元させることで前部カバーの下部係合部を後部カバーの下部連結部に横内方から係合させることができる。このようにして、縦壁状の後部カバーの前面にトンネル状の前部カバーを上下左右および前後に移動に連結した足元カバーの組み付けが完了する。
【0009】
組み付け後において、上記手順を逆に行うことで、つまり、前部カバーの左右辺を横内側に撓ませて前部カバーの下部係合部と後部カバーの下部連結部との係合を外しながらから前部カバーを引き上げることで、前部カバーの上部係合部を後部カバーの上部連結部から外して、前部カバーだけを工具なしで後部カバーから取外して、足元にメンテナンス用の開口を簡単に形成し、また、メンテナンス作業後はその開口を前部カバーで塞ぐことができる。
【0010】
この場合、脱着される前部カバーは後部カバーより小幅で後部カバーの前方に突出されており、かつ、運転座席よりも下方に離れた位置にあるので、前部カバーの脱着の際に左右の後輪フェンダや運転座席が邪魔になることはない。
【0011】
従って、第1の発明によると、足元カバーを、左右の後輪フェンダ間に固定される縦壁状の後部カバーと、この後部カバーの前面に脱着自在に係合連結されるトンネル状の前部カバーとに分割することで、組み付け作業性、および、組み付け後のメンテナンス性を余り低下させることなく足元カバーを装着することができるようになった。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記後部カバーの上部連結部を後部カバー前面に突設した頭付き突起で構成するとともに、前記前部カバーに設ける上部係合部を下向きに開口した凹入部で構成してあるものである。
【0013】
上記構成によると、前部カバーの組み付けに際して、後部カバーの前面を案内面として前部カバーの後端を摺接させながら押し下げ移動させることで、前部カバーの上部係合部である凹入部を後部カバーの上部連結部である頭付き突起に適正に係合させることができ、後部カバー上部と前部カバー上部との係合連結操作を簡単に行うことができる。
【0014】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
前記後部カバーに設けた下部連結部を前記開口の内縁に形成した下向きの段部で構成するとともに、前記前部カバーに設ける下部係合部を上向きに開口したスリットで構成してあるものである。
【0015】
上記構成によると、段部およびスリットは形状が単純で製作しやすいものであり、後部カバーの下部連結部と前部カバーの下部係合部を容易かつ安価に製作することができる。
【0016】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記後部カバーを金属板材で構成するとともに、前記前部カバーを樹脂材で構成してあるものである。
【0017】
上記構成によると、前部カバーは樹脂材であるために剛性に劣るが、左右の後輪フェンダに亘って連結される板金構造の後部カバーが高い剛性を発揮するので、この後部カバーに連結された前部カバーは補強され、充分な剛性をもってカバー機能を発揮する。また、前部カバーは後部カバーに比べて小型の部品であるために、成型用の金型も比較的廉価なものとなり、コスト低減にも有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、本発明に係る機体構造を備えたトラクタが示されている。このトラクタは、エンジン1、クラッチハウジング2、板金構造のハウジングフレーム3、主変速装置4、ミッションケース5、および、デフケース6が縦列状に順次連結されて機体ボディAが構成された構造となっており、デフケース6に左右の後輪7が軸支されるとともに、左右の前輪8を操向自在に備えた前車軸ケース9が、エンジン1の下部に連結された前フレーム10の下部にローリング自在に装着支持されている。また、デフケース6の上部にリフトシリンダ11を内装したシリンダケース12が連結されるとともに、リフトシリンダ11で駆動されるリフトアーム13が装備されており、デフケース6の後部に装備された3点リンク機構14のロアーリンク14aがリフトロッド14bを介してリフトアーム13に連結されている。
【0019】
前記エンジン1を収容したボンネット15の後部にはステアリングハンドル16や図示されていない計器パネルを装備したフロントパネルカバー17が配備されるとともに、機体ボディAの後部左右に後輪フェンダ18が固着され、機体ボディAの前後中間箇所を覆う運転ステップ19がフロントパネルカバー17の下部と後輪フェンダ18の前端下部とに亘って設置され、さらに、左右の後輪フェンダ18の間に配備された運転座席20がシリンダケース12の上方に配備されている。
【0020】
前記前輪8は、前車軸ケース9の前側に横架装着されたステアリングシリンダ45で駆動操向されるようになっており、図3に示すように、ステアリングハンドル16の回動方向および回動量に応じて圧油をステアリングシリンダ45に供給制御するパワーステアリングユニット46が、フロントパネルカバー17内に立設されたステアリングフレーム47に取付けられている。図11に示すように、パワーステアリングユニット46の下面にはステアリングシリンダ45への配管48が接続用ナット49を介して連結されており、近接する接続用ナット49の長さを異ならせることで、各接続用ナット49へスパナなどの工具を掛けやすいものとなっている。
【0021】
図5の縦断面図に示すように、前記ハウジングフレーム3は、板材を下向きコの字状に屈曲した主材3aと底板材3bとをL形の補強材3cを介して溶接連結して前後方向に向かう筒状に構成されるとともに、図6に示すように、主材3aの後部から補強板3dがミッションケース5の前部上面まで延出されて主変速装置4およびミッションケース5の上面にボルト連結され、ハウジングフレーム3と主変速装置4およびミッションケース5の連結強度が高められている。
【0022】
図2のこのトラクタの伝動系が示されている。前記エンジン1からの動力はクラッチハウジング2に内装された主クラッチ21介して主変速装置4に入力され、ここで正逆に無段変速された走行系の変速動力が副ギヤ変速機構22に伝達され、この副ギヤ変速機構22で3段に変速された走行系動力がデフ機構23に伝達された後、左右の後輪7に伝達される。また、副ギヤ変速機構22から出力された走行系動力の一部は主変速装置4を貫通する前輪駆動軸24を介して前方に出力されて前車軸ケース9に伝達されるようになっている。
【0023】
なお、主変速装置4は、周知構造の油圧式無段変速装置(HST)が利用されており、可変容量型のアキシャルプランジャポンプPの斜板角度を運転部でのペダル操作によって変更して吐出方向および吐出油量を変更することで、定容量型のアキシャルプランジャモータMの回転方向および回転速度を無段階に変更し、もって、前後進の切換えと零速発進が可能な無段変速走行を行うよう構成されている。
【0024】
そして、アキシャルプランジャポンプPに入力されたエンジン動力の一部はそのままミッションケース5に伝えられ、PTOクラッチ25、PTOモード選択機構26を経た後、デフケース後部に突設されたリヤPTO軸27、および、ミッションケース5の下端部に前向きに突設したミッドPTO軸28に伝達可能となっている。ここで、前記PTOモード選択機構26は、シフト部材29を前後にシフト操作することで、リヤPTO軸27のみを駆動するモード、リヤPTO軸27とミッドPTO軸28を共に駆動するモード、および、ミッドPTO軸28のみを駆動するモードのいずれか一つを選択することができるものであり、作業形態に応じたPTO駆動形態を得ることができるようになっている。また、PTOモード選択機構26の伝動上手に配備されたPTOクラッチ25は油圧操作式の多板クラッチで構成され、選択されたリヤPTO軸27およびミッドPTO軸28への動力伝達を運転部でのレバー操作によって任意に断続することができるものである。
【0025】
図12に、油圧系の概略図が示されている。このトラクタにはエンジン動力で駆動される2つの油圧ポンプP1,P2が備えられており、一方の油圧ポンプP1は3点リンク機構14の駆動用に利用されるものであり、制御弁75を介してリフトシリンダ11に接続されている。また、他方の油圧ポンプP2はパワーステアリング用および主変速装置4を構成する油圧式無段変速装置(HST)のチャージ用に利用されるものであり、油圧ポンプP2からの圧油は先ずパワーステアリングユニット46に供給された後、オイルクーラ、76および、オイルフィルタ77を経て主変速装置4のチャージ回路78に供給されるようになっている。なお、この油圧系の作動油はミッションケース5およびデフケース6の潤滑油に兼用されており、ミッションケース5およびデフケース6が作動油タンクTとして機能している。
【0026】
上記のように構成された機体ボディAの左右外側面に沿って補助フレーム31が配備連結されている。この補助フレーム31は、図4に示すように、前後に長い縦向きの厚板材で構成されており、前記前フレーム10の後部からミッションケース5に亘って配備されて、前フレーム10、クラッチハウジング2、主変速装置4の横側面にそれぞれボルト連結されている。そして、図3および図5に示すように、この補助フレーム31の下端は、機体ボディAの下端より下方に突出されており、左右の補助フレーム31で囲まれた空間内に前記ミッドPTO軸28が配備されている。
【0027】
前記デフケース6の下方には、トレーラや各種牽引型の作業装置を連結する牽引ヒッチ32が装備されている。この牽引ヒッチ32は、図4中に示すように、前後方向に向かう角筒材からなるヒッチ本体32aと、その左右に連設したブラケット32bと、ヒッチ本体32aの前端に連設された幅広のステー部32cとで構成されており、ブラケット32bがデフケース6の後端面にボルト連結されている。また、牽引ヒッチ32のブラケット32bは前記3点リンク機構14を構成するロアーリンク14aの基端を枢支連結するロアーリンク支点xとしても機能するものである。そして、牽引ヒッチ32の前端に連設されたステー部32cの左右外側面に前記補助フレーム31の後端部が重合されてボルト連結されている。
【0028】
図13に、前記補助フレーム31を利用して前後輪間にモーア35を昇降可能に装着した場合が示されている。この場合、補助フレーム31に予め形成された透孔36に支点軸37が挿通され、この支点軸37から延出された左右一対の昇降アーム38にモーア支持用の吊り下げリンク39が連結される。そして、支点軸37の一端に設けた操作アーム40と、前記ブラケット32bに枢支連結した駆動アーム41とがロッド42を介して連結され、油圧駆動されて上方揺動されるロアーリンク14aで駆動アーム41に備えた突片41aを係合して上方に回動させることで昇降アーム38を上昇揺動させるようになっている。
【0029】
この場合、ロアーリンク14aを昇降駆動するリフトアーム13の下降限界を接当規制することで下限位置にあるモーア35の地上高さ(刈り高さ)を設定することになる。そして、刈り高さを任意に変更するために、リフトアーム13の下降限界を任意に調節できるようになっており、以下、その下限調節構造について説明する。
【0030】
図16の側面図、図17の平面図に示すように、デフケース6の後端上部には3点リンク機構14における図示されていないトップリンクの前端を枢支連結する左右一対のトップリンクブラケット51が連結されており、左側のトップリンクブラケット51の基部から後方に向けて突設した基板52の左外側に、支点a周りに上下回動可能に支持アーム53が枢支連結されるとともに、支持アーム52から横外側に向けて突設したストッパピン54が左側リフトアーム13の揺動軌跡と干渉するように配備されている。また、支持アーム53の遊端部には基板52を外周から抱込む係合片53aが備えられている。
【0031】
そして、基板52には前記支点aを中心とする円弧上に複数のピン孔55が周方向適当ピッチで内外2列に亘って形成されるとともに、支持アーム53および係合片53aには前記ピン孔55に重複合致する内外2個の連結孔56が形成されており、ピン孔55と連結孔56とに亘って連結ピン57を装着することで支持アーム53を任意の高さに回動調節することができるようになっている。
【0032】
このように、支持アーム53を任意の高さに回動調節してストッパピン54の上下位置を複数段に調節することで、このストッパピン54で受け止め支持されるリフトアーム13の下限高さを調節して、モーア35の刈り高さを任意に調節することができるようになっているのである。
【0033】
なお、ストッパピン54の基部を延長して支持アーム53に形成した円弧状切欠き58に挿通するとともに、ストッパピン54の延長端に設けたフランジ54aを基板52の内側面に係合させることで、ストッパピン53に働く偏荷重によって支持アーム52が外側に変形することが防止されている。
【0034】
また、図14に示すように、左側のリフトアーム13と左側のロアーリンク14aとを連結するリフトロッド14bの上端枢支部には、横断面形状L形のカバー60が装着され、リフトアーム13とストッパピン54との接当規制箇所に手指を近づけることができないようになっている。
【0035】
図10に示すように、前記運転座席20は、座席支持台61に対して前後にスライド調節可能に支持された可動枠62の前部に支点b周りに上下揺動可能に連結されるとともに、可動枠62の後部に備えたクッションバネ63で運転座席20に働く着座荷重を弾性的に受け止めるよう構成されている。そして、座席支持台61が前記シリンダケース12の上部における前後左右の四箇所に防振ゴム64を介して防振連結され、機体振動が運転座席20に伝わることが抑制されている。
【0036】
また、前記運転座席20の下方と運転ステップ19との間には足元カバー65が配備されており、その取付け構造が図7〜図9に示されている。
【0037】
前記足元カバー65は、左右の後輪フェンダ18に亘って連結される縦壁状の後部カバー66と、この後部カバー66の前部に連結される前部カバー67とで構成されている。ここで、後部カバー66は金属板材(鋼板)で構成されており、車体後部の上方隆起部である主変速装置4の上部を挿通する開口68が形成されている。また、前部カバー67は樹脂成形されたものであり、後部カバー66の開口68に連なるトンネル状に構成されている。
【0038】
後部カバー66における開口68の左右上部の前面には、前部カバーの上部を連結支持する上部連結部として頭付き突起69が設けられ、他方、前部カバー67の後端に沿って連設したフランジ部67aの左右上部には、前記頭付き突起69に連結される上部係合部として下向きの凹入部70が形成され、頭付き突起(上部連結部)69に凹入部70(上部係合部)を上方から係合させることで、前部カバー67の上部が前後左右および下方に移動することが阻止された状態に係合連結されるようになっている。
【0039】
また、後部カバー66における開口68の内縁の左右下部には、前部カバー67の下部を連結支持する下部連結部として下向き段部71が形成され、他方、前部カバー67において側壁状に形成された左右辺の後端下部には後方に向けて突出する舌片72が設けられるとともに、この舌片72の上端に、後部カバー66の下向き段部71に横内方から係合される下部係合部として上向きに開口したスリット73が形成されており、下向き段部(下部連結部)71にスリット(下部係合部)73を横内方から係合させることで、前部カバー67の下部が前後、上方、および、横外方に移動することが阻止された状態に係合連結されるようになっている。
【0040】
上記構成によると、足元カバー65の組み付けに際しては、先ず、後部カバー66を後輪フェンダ18の間に差し入れて、その左右端を後輪フェンダ18にボルト連結、等によって固定する。次に、縦壁状に固定された後部カバー66の前面上部に前部カバー67を位置させ、前部カバー67の凹入部(上部係合部)70を後部カバー66の頭付き突起(上部連結部)69に係合させながら前部カバー67を押し下げる。この場合、図8(イ)に示すように、前部カバー67の左右辺の舌片72が後部カバー66の下向き段部(下部連結部)71に引っかからないように左右辺を横内側に少し撓ませながら前部カバー67を押し下げる。そして、前部カバー67の凹入部70が後部カバー66の頭付き突起69に充分係合した状態で左右辺を外方に復元させることで、図8(ロ)に示すように、前部カバー67のスリット(下部係合部)73を後部カバー66の下向き段部(下部連結部)71に横内方から係合させることができる。このようにして、縦壁状の後部カバー66の前面にトンネル状の前部カバー67を上下左右および前後に移動に連結した足元カバー65の組み付けが完了する。
【0041】
組み付け後において、上記手順を逆に行うことで、つまり、前部カバー67の左右辺を横内側に撓ませて前部カバー67のスリット73と後部カバー66の下向き段部71との係合を外しながらから前部カバー67を引き上げることで、前部カバー67の凹入部70を後部カバー66の頭付き突起69から外して、前部カバー67だけを工具なしで後部カバー66から取外して、足元にメンテナンス用の開口を簡単に形成し、また、メンテナンス作業後はその開口を前部カバー67で塞ぐことができるのである。
【0042】
〔他の実施例〕
【0043】
(1)後部カバー66の上部連結部、下部連結部、および、前部カバー67の上部係合部、下部係合部の構造は上記構造に限られるものではなく、例えば、後部カバー66の上部連結部を横長のスリットにするとともに、前部カバー67の上部係合部を前記スリットに上方から差し込み係合される舌片とし、また、後部カバー66の下部連結部を横向きに開口した連結孔にするとともに、前部カバー67の下部係合部を前記連結孔に横内方から係合する突起とすることもできる。
【0044】
(2)後部カバー66および前部カバー67を共に板金材、あるいは、樹脂材で構成して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】伝動系統図
【図3】機体ボディの側面図
【図4】補助フレームの斜視図
【図5】ハウジングフレーム部位の縦断正面図
【図6】機体ボディの一部を示す斜視図
【図7】前部カバーを取外した状態のカバー構造を示す斜視図
【図8】前部カバーの取付け構造を示す正面図
【図9】前部カバーの取付け構造を示す縦断側面図
【図10】運転座席取付け構造を示す側面図
【図11】パワーステアリングユニットの配管接続部を示す正面図
【図12】油圧系統図
【図13】モーア装着仕様に構成されたトラクタの全体側面図
【図14】モーア昇降構造を示す側面図
【図15】モーア昇降構造を示す平面図
【図16】リフトアーム下限設定構の側面図
【図17】リフトアーム下限設定構造の横断平面図
【符号の説明】
【0046】
18 後輪フェンダ
19 運転ステップ
20 運転座席
65 足元カバー
66 後部カバー
67 前部カバー
68 開口
69 上部連結部(頭付き突起)
70 上部係合部(凹入部)
71 下部連結部(下向き段部)
73 下部係合部(スリット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の後輪フェンダの間に運転座席を配備し、運転ステップの後端左右と前記後輪フェンダの前端下部とを連結し、運転座席の下方前部に、左右の後輪フェンダの間を塞ぐとともに車体後部の上方隆起部を覆う足元カバーを配備したトラクタの機体構造において、
前記足元カバーを、左右の後輪フェンダに亘って連結されるとともに車体後部の上方隆起部を挿通する開口を備えた縦壁状の後部カバーと、この後部カバーの前部に連結されるトンネル状の前部カバーとで構成し、
前記前部カバーの後端上部に、前記後部カバーの前面上部に設けた上部連結部に上方から係合されて前後左右移動および下方移動が阻止された状態に係合連結される上部係合部を設けるとともに、前部カバーにおける左右辺の後端下部には、前記後部カバーにおける開口の左右下部に設けた下部連結部に横内方から係合されて前後移動、上方移動、および、横外方移動が阻止された状態に係合連結される下部係合部を設けてあることを特徴とするトラクタの機体構造。
【請求項2】
前記後部カバーの上部連結部を後部カバー前面に突設した頭付き突起で構成するとともに、前記前部カバーに設ける上部係合部を下向きに開口した凹入部で構成してある請求項1記載のトラクタの機体構造。
【請求項3】
前記後部カバーの下部連結部を前記開口の内縁に形成した下向きの段部で構成するとともに、前記前部カバーに設ける下部係合部を上向きに開口したスリットで構成してある請求項1または2記載のトラクタの機体構造。
【請求項4】
前記後部カバーを金属板材で構成するとともに、前記前部カバーを樹脂材で構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載のトラクタの機体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−117148(P2006−117148A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308232(P2004−308232)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】