説明

トンネル壁面の展開画像取得システム

【課題】トンネル壁面の展開画像を取得するシステムについて、得られた立体視可能な展開画像が現実の壁面の状態を正確に反映できるようにし、その反映の度合いを簡単に判定できるようにする。
【解決手段】システム10は、トンネルを走行する車両11と、車両11に搭載されたビデオカメラ12と、各ビデオカメラ12が撮像した画像データを処理可能な画像処理部13とからなる。画像処理部13は、画像データの各コマ上の第1および第2ラインから短冊形の第1および第2視差画像をサンプリングし、両ラインの中間から短冊形の直視画像をサンプリングする。各画像を横方向に配列してカメラ12ごとに第1および第2視差連続画像、直視連続画像を合成する。各連続画像を縦方向に配列して、第1および第2視差展開画像、直視展開画像を合成する。第1および第2視差展開画像を赤または青の着色画像として出力して立体視可能とする。これとフルカラー画像として出力した直視展開画像を比較可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面の展開画像を取得するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル壁面の探傷のために、その壁面の展開画像を取得するシステムとして、特許文献1のものが知られている。
特許文献1のシステムでは、トンネルを走行する車両の正面に超広角レンズ(たとえば対角180度)を装着したビデオカメラを固定し、この単一のビデオカメラにトンネル壁面の全周が写り込むようにして連続的な撮像をおこなっている。
【0003】
得られたトンネルの全周動画の各コマについて、環状(弧状も含む、以下同様)に撮影されたトンネル壁面画像の環の中心から所定距離に設定した第1のサンプリングサークル上で環状の第1視差画像を切り出す。また、第1のサンプリングサークルと径の異なる第2のサンプリングサークル上で、第1視差画像と同心環状の第2視差画像を切り出す。
【0004】
各コマから切り出した環状の第1および第2の視差画像を短冊形に展開、幾何変形して、それぞれを動画のコマ送り順に短冊の幅方向に直線的に配列することで、トンネル壁面の全周を展開した第1の視差展開画像と第2の視差展開画像を得る。
これらの視差展開画像から、アナグリフ方式、レンチキュラ方式、パララックスバリア方式など公知の方式により、トンネル壁面の凹凸が把握できる立体視をおこなうことで、壁面のひび割れなどの損傷部を比較的簡易に探知可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−218132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、第1および第2の視差画像を短冊形に展開して長さを揃える際に、大きく幾何変形させる必要があるため、できあがった両視差展開画像から立体視される映像が現実の壁面の状態を正確に反映していないおそれがある。
また視差展開画像から立体視される映像が、壁面の状態をどの程度正確に反映しているか否か、確認する術がないため不便でもある。
したがって、これらの視差展開画像からはトンネル壁面の損傷部の正確な位置や大きさなどが特定不能であり、探傷の精度に改善の余地がある。
【0007】
そこで本発明の解決すべき課題は、トンネル壁面の展開画像を取得するシステムについて、得られた画像データを大きく幾何変形させる必要をなくし、できあがった立体視可能な展開画像が現実の壁面の状態をできるだけ正確に反映できるようにすることである。
また、その立体視可能な展開画像が、現実の壁面の状態をどの程度正確に反映しているか否かの判定を簡単にできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、発明にかかるトンネル壁面の展開画像取得システムでは、トンネルの内部をその長手方向に沿って走行可能な車両と、前記トンネルの周方向に並列するように前記車両に搭載され、前記トンネル壁面の対向箇所をそれぞれ動画として撮像可能な複数のビデオカメラと、を備えるものとしたのである。
ここで各ビデオカメラには、レーザポインタを付属させるのがさらに好ましい。またこのシステムは、車両の移動距離取得手段を備えるのがなお好ましい。
【0009】
そして発明にかかるトンネル壁面の展開画像取得システムでは、前記各ビデオカメラが撮像した画像データを処理可能な画像処理部を備えるものとしたのである。
まず画像処理部は、前記画像データを取り込む画像取り込み手段を有する。
【0010】
つぎに画像処理部は、前記画像データの各コマに任意に設定する第1のラインから所定幅の短冊形の第1視差画像をサンプリングし、前記第1のラインから所定の距離をあけた第2のラインから前記第1視差画像と同幅の短冊形の第2視差画像をサンプリングし、前記第1のラインと第2のラインの中間となる第3のラインから前記第1および第2視差画像と同幅の短冊形の直視画像をサンプリングすることが可能な画像切り出し手段を有する。
【0011】
さらに画像処理部は、前記画像データの各コマからサンプリングされた第1視差画像、第2視差画像、および直視画像を動画のコマ送り順にその幅方向に直線的に配列して第1視差連続画像、第2視差連続画像、および直視連続画像を合成することが可能な画像合成手段を有する。
この画像合成手段は、さらに各ビデオカメラについて得られた第1視差連続画像、第2視差連続画像、および直視連続画像をそれぞれビデオカメラの並列順に直線的に配列して第1視差展開画像、第2視差展開画像、および直視展開画像を合成することが可能でもあるものとする。
【0012】
また画像処理部は、前記第1視差展開画像を赤色または青色のいずれか一方に着色された画像として、前記第2視差展開画像を赤色または青色のいずれか他方に着色された画像として、および前記直視展開画像をフルカラー画像として、それぞれ出力可能な画像出力手段を有する。
【0013】
赤色または青色に着色された第1視差展開画像と第2視差展開画像を用いて、アナグリフ方式により、立体視をおこなうことでトンネル壁面の凹凸状態を把握可能であるため、壁面にできたひび割れなどの損傷部を簡易に探知可能である。
併せて直視展開画像によって、トンネルの壁面を平面視した状態をフルカラーで確認可能でもある。
【発明の効果】
【0014】
トンネル壁面に正対するビデオカメラが撮像した画像データから短冊形の視差画像を切り出し、それをほとんど幾何変形させることなくそのまま時系列に横方向につなげるだけで連続画像が得られる。そのため、この連続画像をさらに縦方向につなげただけで得られる展開画像が、現実のトンネルの状態を良好に反映したものとなる。
【0015】
また反映の度合いの判断は、2つの視差展開画像から立体視される画像と現実のトンネルの状態をフルカラーでそのまま表現した直視展開画像とを比較することで、簡単におこなうことができる。
これにより、トンネル壁面の損傷部の位置や大きさなどの正確な特定が可能となり、探傷の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】トンネル壁面の展開画像取得システムの使用状態を示す概略図
【図2】トンネル壁面の展開画像取得システムのブロック図
【図3】画像処理部における画像切り出し処理の概略図
【図4】画像処理部における画像合成処理の概略図
【図5】画像処理部における画像補正処理の概略図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1および図2のように、実施形態のトンネル壁面の展開画像取得システム10は、車両11と、複数のビデオカメラ12と、画像処理部13を備え、トンネル20の壁面21のひび割れなどの探傷に用いられる。
【0019】
車両11は、トンネル20の長さ方向に沿って走行して通り抜け可能である。
このような車両11としては、ケーブルで牽引などする本発明専用の台車を製作してもよいが、汎用されている自動車を用いることが可能である。
【0020】
複数のビデオカメラ12は車両11に搭載され、それぞれがトンネル20の壁面21に対向するように、トンネル20の周方向に沿って配列されて支持具11aにより支持されている。車両11の走行中には、これらのビデオカメラ12がトンネル20の壁面21を連続的に撮影していくことになる。ここで複数のビデオカメラ12の単位時間あたりのコマ数は、すべて等しいものとする。
このようなビデオカメラ12としては、汎用されているものが使用可能であり、特に鮮明な画像データを得るためには、いわゆるフルハイビジョンのビデオカメラ(ハイビジョンは登録商標)が好適である。
ビデオカメラ12の並列台数は特に限定されないが、8台〜10台が例示できる。またビデオカメラ12を車両11に搭載する際には、縦置きとしても横置きとしてもいずれでもよいが、隣接するビデオカメラ12のトンネル壁面21の撮影範囲がわずかにオーバーラップするようにして、壁面21の撮影抜けがないようにしておくことが好ましい。
【0021】
なお図1では、ビデオカメラ12は、トンネル20の全周のうち半周に対向するように配列されており、壁面21の全周を撮影するには、車両11を往復して走行させる必要がある。
これはトンネル20内の道路が二車線である場合に対応したものであり、図中には対向車線間を仕切るガードレール22が示されている。しかし、トンネル20内の道路が一車線である場合等には、ビデオカメラ12がトンネル20の全周に対向するように配列させて、車両11を片道走行させるだけで、壁面21の全周を撮影することも可能である。トンネル20の全周に対向させる際のビデオカメラ12の台数としては、15台〜20台が例示できる。
【0022】
画像処理部13は車両11に搭載されるか、トンネル20の外に配置されるかしており、ビデオカメラ12が撮像した画像データを有線または無線を介して入力可能になっている。
このような画像処理部13としては、本発明専用の画像処理装置を作製してもよいが、汎用されているパーソナルコンピュータに本発明に関して作製された画像処理用のソフトをインストールしたものも使用可能である。その場合、パーソナルコンピュータのプロセッサ(CPU、MPU)が、画像処理部13の主たる役割を担うことになる。
【0023】
車両11にはロータリエンコーダ11bが付属して、その位置情報を取得可能となっている。得られた車両11の位置情報は、画像処理部13に有線または無線を介して入力可能となっている。
ここで、ロータリエンコーダ11bは、汎用されているものを使用し、その動作方式も特に限定されず、光電方式、磁気方式などもいずれでもよい。なお、車両11の位置情報を取得する装置としては、ロータリエンコーダ11bに限定されずGPS、レーザ距離計、超音波距離計など公知のものを使用可能である。
【0024】
各ビデオカメラ12には、レーザポインタ12aがそれぞれ付属しており、トンネル20の壁面に光点pを映写可能となっている。また各レーザポインタ12aは、同期して一定の時間間隔で点滅可能となっている。
ここで、レーザポインタ12aは汎用されているものを使用し、その光点の色調も特に限定されず、赤色光、緑色光などのいずれでもよい。
【0025】
画像処理部13にはモニタ14(ディスプレイ)が付属しており、ビデオカメラ12から入力された画像データおよびロータリエンコーダ11bから入力された位置情報に基づく画像処理の結果を表示可能となっている。
ここで、モニタ14は汎用されているものを使用し、その表示方式も特に限定されず、液晶方式、プラズマ方式、有機EL方式、ブラウン管方式などのいずれでもよい。また、モニタ14に代えてプロジェクタなど他の映像表示装置を使用してもよい。
さらに、プリンタを付属させて画像処理の結果を印刷可能としてもよい。その印刷方式も特に限定されず、インクジェット方式、レーザ方式などのいずれでもよい。
【0026】
図2に示すように、画像処理部13は、画像取り込み手段13aと、移動距離取得手段13bと、画像切り出し手段13cと、画像合成手段13dと、画像出力手段13eを有する。
また画像処理部13は、画像処理時に必要となるデータをメモリ等の記憶手段に適宜記憶でき、ハードディスク等の記録手段に適宜記録できるものとする。
【0027】
画像取り込み手段13aは、各ビデオカメラ12から連続的に送られた画像データをその動画のコマごとに分解して取り込む。
【0028】
移動距離取得手段13bは、ロータリエンコーダ11bから送られた車両11の位置情報をもとに、ビデオカメラ12のコマ間における車両11の移動距離(速度)を割り出す。
【0029】
画像切り出し手段13cは、画像取り込み手段13aで得られた画像データ(コマ)と移動距離取得手段13bで得られた移動距離データをもとに、図3に示すように、画像データI1、I2、I3ごと(コマごと)に3箇所を短冊形にサンプリングする。
【0030】
具体的には、画像切り出し手段13cは、まず各コマI1、I2、I3・・・Inの定位置に第1のラインL1を設定する。ついで、そのラインL1から車両11の進行方向と逆側(図中左側)に向けて所定幅w1、w2、w3・・・wnの第1視差画像l1、l2、l3・・・lnを公知の画像処理技術をもとにサンプリングする。
ここで第1視差画像l1、l2、l3・・・lnの幅w1、w2、w3・・・wnの大きさは、車両11の速度(ビデオカメラ12のコマ間における移動距離)v1、v2、v3・・・vn−1に一致するように変動させるものとする。
【0031】
第1視差画像l1、l2、l3・・・lnの場合と同様に、画像切り出し手段13cは、各コマI1、I2、I3・・・Inに第1のラインL1から定距離dをあけた位置に第2のラインL2を設定する。そして、その第2のラインL2から画像データの前記第1のラインL1の場合と同側に向けて第2視差画像r1、r2、r3・・・rnをサンプリングする。第2視差画像r1、r2、r3・・・rnの幅は、第1視差画像l1、l2、l3・・・lnとそれぞれ同幅とする。
第1のラインL1および第2のラインL2の位置は、適宜設定可能であるが、ここでは第1視差画像l1、l2、l3・・・lnにレーザポインタ12aが映写する光点pが写りこむように設定しておくものとする。たとえば、光点pが第1のラインL1上に位置するようにすればよい。
逆に、第2視差画像r1、r2、r3・・・rnに光点pが写りこむように設定してもよい。
【0032】
さらに画像切り出し手段13cは、前記第1のラインと第2のラインの中間(すなわち第1および第2のラインからの距離はd/2)となる第3のラインL3から第1および第2視差画像と同側で同幅の直視画像c1、c2、c3・・・cnをサンプリングする。
【0033】
いっぽう図4(a)に示すように、画像合成手段13dは、画像切り出し手段13cで得られた第1視差画像l1、l2、l3・・・lnを、公知の画像処理技術をもとにビデオカメラ12ごとにコマ送り順に(時系列に)その幅方向(横方向)に直線的に配列して複数の第1視差連続画像Ilを合成する。
こうして得られた第1視差連続画像Ilは、各コマにおいて切り出される第1視差画像l1、l2、l3・・・lnの幅が、上述のように車両11の現在速度v1、v2、v3・・・vn−1と一致している。そのため、トンネル壁面21の一部が長さ方向に不自然に伸縮されることがなく、壁面21の状態を長さ方向に正確に反映したものとなっている。
【0034】
第1視差連続画像Ilの場合と同様に、画像合成手段13dは、図4(b)および(c)に示すように、ビデオカメラ12ごとに第2視差画像r1、r2、r3・・・rnから第2視差連続画像Irを合成し、ビデオカメラ12ごとに直視画像c1、c2、c3・・・cnから直視連続画像Icを合成する。
【0035】
さらに画像合成手段13dは、図5に示すように、各ビデオカメラ12について得られた第1視差連続画像Il・・・Ilを、公知の画像処理技術をもとにトンネル20の周方向に対応するようにビデオカメラ12の並列方向(縦方向)に直線的に配列して、トンネル全体の展開画像となる第1視差展開画像を合成する。
【0036】
ここで、トンネル壁面21が曲面であるのに対し第1視差連続画像Il・・・Ilが平面であることや各ビデオカメラ12の車両11走行中の揺れなどに起因して、隣接する第1視差連続画像Il、Il間で位相(長さ方向の位置)にずれが生じうる。
そのいっぽうで、第1視差連続画像Ilに写りこんでいる光点pの位置については、各レーザポインタ12aは同期して点滅していることから、隣接する第1視差連続画像Ilで位相が一致し、光点p間の距離が等しくならなければならない。
【0037】
そのため図5のように、画像合成手段13dは、隣接する第1視差連続画像Il、Il間で光点pの位相がずれている場合には、光点pの位相が一致するように各第1視差連続画像Il・・・Ilを公知の画像処理技術をもとに適宜伸縮補正したうえで、第1視差展開画像を合成している。
このような補正処理は、画像の輝度を測定するなどして光点pの写りこみ箇所を自動的に特定することにより、自動処理化可能である。
【0038】
第1視差展開画像の場合と同様に、画像合成手段13dは、複数の第2視差連続画像Ir・・・Irをビデオカメラ12の並列順に直線的に配列してトンネル全体の第2視差展開画像を合成し、複数の直視連続画像Ic・・・Icをビデオカメラ12の並列順に直線的に配列してトンネル全体の直視展開画像を合成する。
画像合成手段13dは、第1視差展開画像の合成時に上記補正処理をおこなっている場合には、第2視差展開画像および直視展開画像についても第1視差展開画像と同じ補正処理をおこなうものとする。
【0039】
最後に画像出力手段13eは、公知の画像処理技術により、第1視差展開画像を青色の単色に着色し、第2視差展開画像を赤色の単色に着色してモニタ14に出力可能となっている。逆に、第1視差展開画像を赤色に第2視差展開画像を青色に着色してもよい。
こうして着色された第1視差展開画像と第2視差展開画像は、重ねあわせるなどして合成された状態で出力可能である。
また画像出力手段13eは、直視展開画像については、フルカラーでモニタ14やプリンタに直接出力する。その際の色調等は、適宜調整可能なものとする。
【0040】
たとえば、左眼用レンズが赤色に着色され右眼用レンズが青色に着色されたメガネを用いて、第1および第2視差展開画像を眺めると、左眼には青色の第1視差展開画像だけが視認でき、右眼には赤色の第2視差展開画像だけが視認できる。
そのため、トンネルの壁面21を立体視することが可能である。これによりトンネルの壁面21の凹凸状態を把握でき、ひび割れなどの損傷部を探知できる。
なお、上記第1のラインL1と第2のラインL2の間の距離dが、第1視差展開画像と第2視差展開画像の間の視差に相当することになる。このような距離dについては、適宜設定可能なものとする。
両視差展開画像より立体視される映像は、現実のトンネル20の損傷部の位置や大きさをほぼ正確に反映しているため、いわばトンネル壁面の地図として利用することができ、モニタ14上で損傷部の位置等を精度よく特定可能である。
【0041】
また立体視される映像が、どの程度正確にトンネル20の状態を反映しているか否かは、より一層トンネル20の状態を正確に反映している直視展開画像と比較することで簡単に判定できる。そのため、その誤差を補正することで損傷部の位置等をさらに精度よく特定することができる。
こうして着色した視差展開画像とは別に、フルカラーの直視展開画像を作製することにより、対象物の色彩を確認しにくいというアナグリフ方式の欠点を補うことができる。
なお展開画像をトレースすることで、実際に壁面の変状展開図を作成してもよい。
【0042】
上記実施形態はあくまでも例示であって、これに発明の範囲は限定されない。
本発明の範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められ、特許請求の範囲に示された内容を限度として、実施形態についてのあらゆる変更が可能であり、その変更可能な態様も当然に本発明に包含されるものとする。
【0043】
たとえば、上下に隣接するビデオカメラ12間においてトンネル壁面21の撮像範囲を広めにオーバーラップさせておき、かつ画像処理部13が公知の画像処理技術をもとに画像データの上下箇所の前記オーバーラップ範囲に対応する範囲で除去できるようにしてもよい。
このようにすると、ビデオカメラ12が上下に振動していわば波打ったような画像が得られた場合にも、その画像の上下箇所を除去する加工したうえで展開画像としてつなげることができる。そのため、外乱の影響が排除され、展開画像がより正確にトンネルの状態を反映したものとなる。
【0044】
また、レーザポインタ12aは一定の時間間隔で点滅し、ビデオカメラ12の単位時間当たりのコマ数も一定であるため、画像に写りこんだ光点p・・・pを追跡することで、ビデオカメラ12のコマ間における車両11の移動距離を算出することが可能である。
すなわちレーザポインタ12aが単位時間にNp回点灯し、ビデオカメラ12の単位時間当たりのコマ数がNc回(Nc>Np)であり、画像に移りこんだ隣接する光点p、p間の距離がdpであるならば、コマ間移動距離=dp×Np/Ncとなる。
したがってレーザポインタ12aを車両11の位置情報の取得装置としても兼用することが可能であり、ロータリエンコーダ11bを省略してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 トンネル壁面の展開画像取得システム
11 車両
11a 支持具
11b ロータリエンコーダ
12 ビデオカメラ
12a レーザポインタ
13 画像処理部
13a 画像取り込み手段
13b 移動距離取得手段
13c 画像切り出し手段
13d 画像合成手段
13e 画像出力手段
14 モニタ
20 トンネル
21 壁面
22 ガードレール
I1、I2、I3・・・In 画像データ
L1 第1のライン
L2 第2のライン
L3 第3のライン
l1、l2、l3・・・ln 第1視差画像
r1、r2、r3・・・rn 第2視差画像
c1、c2、c3・・・cn 直視画像
w1、w2、w3・・・wn 画像の幅
d 視差画像間の距離
v1、v2、v3・・・vn−1 車両の速度(ビデオカメラのコマ間移動距離)
Il 第1視差連続画像
Ir 第2視差連続画像
Ic 直視連続画像
p 光点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面の展開画像取得システムであって、
トンネルの内部をその長手方向に沿って走行可能な車両と、
前記トンネルの周方向に並列するように前記車両に搭載され、前記トンネル壁面の対向箇所をそれぞれ動画として撮像可能な複数のビデオカメラと、
前記各ビデオカメラが撮像した画像データを処理可能な画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、
前記画像データを取り込み可能な画像取り込み部と、
前記画像データの各コマに任意に設定する第1のラインから所定幅の短冊形の第1視差画像をサンプリングし、前記第1のラインから所定の距離をあけた第2のラインから前記第1視差画像と同幅の短冊形の第2視差画像をサンプリングし、前記第1のラインと第2のラインの中間となる第3のラインから前記第1および第2視差画像と同幅の短冊形の直視画像をサンプリングすることが可能な画像切り出し手段と、
前記画像データの各コマからサンプリングされた第1視差画像、第2視差画像、および直視画像をそれぞれ動画のコマ送り順にその幅方向に直線的に配列して第1視差連続画像、第2視差連続画像および直視連続画像を合成し、さらに各ビデオカメラについて得られた第1視差連続画像、第2視差連続画像および直視連続画像をそれぞれビデオカメラの並列順に直線的に配列して第1視差展開画像、第2視差展開画像および直視展開画像を合成することが可能な画像合成手段と、
前記第1視差展開画像を赤色または青色のいずれか一方に着色された画像として、前記第2視差展開画像を赤色または青色のいずれか他方に着色された画像として、および前記直視展開画像をフルカラー画像として、それぞれ出力可能な画像出力手段と、を有するトンネル壁面の展開画像取得システム。
【請求項2】
前記ビデオカメラの各コマ間における前記車両の移動距離を取得する距離取得手段をさらに備え、
前記画像処理部の画像切り出し手段は、前記各視差画像の幅の大きさを、前記距離取得手段により得られた前記車両の各移動距離と一致するように決定可能である請求項1に記載のトンネル壁面の展開画像取得システム。
【請求項3】
前記各ビデオカメラにそれぞれ付属してそのビデオカメラが撮像するトンネル壁面に光点を映写し、かつ同期して点滅する複数のレーザポインタをさらに備え、
前記画像処理部の画像合成手段は、前記各展開画像の合成時に、前記レーザポインタの光点が写りこんだ光点写りこみ箇所の位相が一致するように、前記各連続画像の長さを補正可能である請求項1または2に記載のトンネル壁面の展開画像取得システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−177569(P2012−177569A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39603(P2011−39603)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(599083329)三協エンジニアリング株式会社 (3)
【出願人】(511051797)有限会社ジーテック (1)
【Fターム(参考)】