説明

ドア駆動制御装置

【課題】各ドア間で高出力トルクを出力しているかの情報を伝達できない場合でも電源電圧の低下を招くことなく、各ドアで高出力トルクを出力してドアを動作させることができ、ドアの施錠も確実に行うこと。
【解決手段】個々にリニアモータ2で駆動される複数のドア1の開閉駆動を各ドア1の実装位置を識別して制御する際に、ドア1の駆動速度が所定速度以下となった場合、ドア1の開閉駆動用のトルクを高出力トルクに切り替えてドアの閉駆動を行う。この場合、運転指令演算部41によって、高出力トルクでのドア1の閉駆動の時間が各ドアQ又は予め定められた駆動組のドアで重ならないようにドア毎にドア高出力設定時間S6を設定し、この設定時間にのみ高出力トルクでドア1の閉駆動を行うように指令する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車等において電動機で開閉が行われる車両ドアの開閉駆動を制御するドア駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や自動車などの乗客乗降用の自動開閉ドアでは、通常、電力消費の抑制やドア駆動用モータの焼損保護、走行中の誤動作の防止といった観点から、ドア開閉時のみ、ドア駆動用モータヘ電力を供給してドアを駆動し、それ以外のドアが閉まっている時は、ロックピンなどの施錠装置を用いて機械的に施錠し、ドア駆動用モータヘの電力の供給を停止している。
【0003】
図6は、従来の鉄道車両用のドア駆動制御装置の構成を示す図である。
ドア駆動制御装置10は、運転指令演算部11と、電力変換部12と、通信インタフェース部14とを備えて構成されており、車体20の電源21と、リニアモータ2と、位置検出器5と、運転台の列車制御装置22とに接続されている。
リニアモータ2は、ドア1に配設された連結部3に可動部が接続されてドア1を開閉駆動する。このドア1には、ドア1を機械的に固定するための施錠装置7が設けられている。位置検出部5は、リニアモータ2の可動部の位置及び速度を検出して得たドア位置検出値S1を運転指令演算部11へ出力する。
【0004】
また、電力変換部12とリニアモータ2とを接続するU,V,W相の三相配線のうちU,W相には、出力電流検出装置4が接続されており、この出力電流検出装置4でU相電流及びW相電流が検出されて得られる出力電流検出値S2が、運転指令演算部11へ入力されるようになっている。
このような構成において、運転指令演算器11は、列車制御装置22からドア動作指令信号S3が入力されると、ドア位置検出値S1及び出力電流検出値S2を用いてドア速度のフィードバック制御を行う。この制御に応じて、電力変換部12が電源21の電力を変換し、この変換された電力による通電でリニアモータ2の駆動が制御され、このモータ駆動によってドア1が開閉駆動する。
【0005】
このようにドアの開閉を制御するドア駆動制御装置10は、図7に符号10−1〜10−8で示すように、ドア毎(例えば第1〜第8のドア毎)に設けられ、通信インタフェース部14を介して列車制御装置22に接続されている。
また、図8に一例を示すように、1車両内における各ドアの位置に対応した局番アドレスA1〜A8を定め、この局番アドレスA1〜A8を各ドア駆動制御装置10−1〜10−8に記憶しておくことによって、ドア実装位置を識別している。
【0006】
鉄道や自動車などの乗客乗降用の自動開閉ドアでは、満員電車などで乗客の圧力がかかりドアの摩擦が大きくなった場合や、ドアに異物が挟まった場合には、ドアの推力を上げることや、一定時間推力を上げた後にドアの再開閉(開動作中のドアを一度開側に動作させ、一定時間後に乗客やカバンなどが抜けたと想定して再び開動作する)などを行い、ドアの動作を確保している。しかし、複数のドアに異物が挟まった場合などは、その全てのドアで推力を上げるため、合計の電力量が大きくなる。
【0007】
通常、図9に示すように、車両の複数のドア駆動制御装置10−1〜10−8は、同一車体に配置された電源21に接続されているが、その電源21には、空調装置31や蛍光灯用インバータ装置32等の他の機器までも接続されている。このため、上記のように複数のドアで推力を上げることによって合計電力量が大きくなると、電源電圧低下を招き、蛍光灯がちらついたりする等、同一車両内の他の機器の動作に悪影響を及ぼすことになる。
【0008】
この対策として、特許文献1及び2に示すような技術がある。特許文献1では、同一電源系統の何れかのドアで高出力トルクを出力していることを、通信インタフェース部14を介して車両間ネットワークにより各ドア駆動制御装置10−1〜10−8に伝達することで、ドア駆動制御装置は他のドアが高出力トルクを出力している時には低出力トルクを出力し、車両全体として電力量が大きくならないように調節している。
【0009】
また、特許文献2では、各ドア駆動制御装置10−1〜10−8の入力電圧や入力電流の大きさに応じて出力トルクに制限をかけることで、車両全体の電力量が大きくならないように調節している。
【特許文献1】特開2005−145240号公報
【特許文献2】特開2005−73381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、車両の型式により車両間ネットワークでどのような情報を伝達できるかは異なり、高出力トルクを出力しているかどうかの情報は、車両の型式によっては使用できないことがあるので、この場合、上記特許文献1の技術は利用することができないという問題がある。
また、上記特許文献2の技術では、全てのドアで高出力トルクを出力しようとするとそれにより電源電圧が低下するため、出力トルクが制限されることになるが、制限された出力トルクではドアが動作できずに、ドアが施錠できない事態も生じるという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、各ドア間で高出力トルクを出力しているかの情報を伝達できない場合でも電源電圧の低下を招くことなく、各ドアで高出力トルクを出力してドアを動作させることができ、ドアの施錠も確実に行うことができるドア駆動制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1によるドア駆動制御装置は、個々に電動機で駆動される複数のドアの開閉駆動を制御する際に、ドアの開閉駆動用のトルクを通常出力トルク又は高出力トルクとしてドアの閉駆動を行うドア駆動制御装置において、前記高出力トルクでのドアの閉駆動の時間が各ドア又は予め定められた駆動組のドアで重ならないようにドア毎に高出力トルク実行時間を設定し、この設定された高出力トルク実行時間にのみ前記高出力トルクでドアの閉駆動を行うように指令する指令手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、複数のドアで高出力トルクが必要になった際に、各ドア間で高出力トルクを出力しているかの情報を伝達できない場合でも、互いに高出力トルクでのドア駆動時間が重ならずに、各ドアを開閉駆動することができる。従って、高出力トルク重複による電源電圧の低下を招くことなく、各ドアで高出力トルクを出力してドアを動作させることができる。
【0013】
また、本発明の請求項2によるドア駆動制御装置は、請求項1において、前記指令手段は、前記設定された高出力トルク実行時間の終了時にドアの再開閉動作を行うように指令することを特徴とする。
この構成によれば、複数のドアの高出力トルク駆動状態が重ならない制御において、更に、高出力トルク駆動が終了時に再開閉動作が行われるので、ドアに異物が挟まれた際に、複数のドアを電源電圧の低下を招くことなく高出力トルクで閉動作させることができ、尚且つ異物除去をより適切に行うことができる。
【0014】
また、本発明の請求項3によるドア駆動制御装置は、前記指令手段は、前記設定された高出力トルク実行時間中にドアの駆動速度が予め定められた速度を超えた場合、前記高出力トルクでない通常のドアの閉駆動を行うように指令することを特徴とする。
この構成によれば、ドアが高出力トルクで駆動中に速度が予め定められた速度を超えた場合、つまり高出力トルクでの閉動作中に異物が除去された場合は、通常の閉動作を行うので、余計な再開閉動作を行うことが無く、無駄な電力も消費しない。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、各ドア間で高出力トルクを出力しているかの情報を伝達できない場合でも電源電圧の低下を招くことなく、各ドアで高出力トルクを出力してドアを動作させることができ、ドアの施錠も確実に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鉄道車両用のドア駆動制御装置の構成を示す図である。
図1(a)に示すドア駆動制御装置40は、運転指令演算部(指令手段)41と、電力変換部12と、通信インタフェース部14とを備え、図6に示した従来構成と異なる点は図1(b)に示すように、運転指令演算部41に、タイマ部43と、比較判定部44と、ドア高出力許可フラグ45aをセット/リセットするフラグ設定部45と、ドア開閉指令部46とを備えて構成したことにある。
【0017】
タイマ部43は、列車制御装置22からのドア動作指令信号S3が入力された際に計時動作を行う。また、タイマ部43は、ドア高出力許可フラグ45aがセット状態の場合にタイムアップするとクリアされるようになっている。
更に、タイマ部43には、図8に示したドア毎の局番アドレスA1〜A8で識別されるドア実装位置に応じて、列車制御装置22からオフセット値が設定されるようになっている。このオフセット値は、ドア動作指令信号が無い場合に出力されるものであり、1車両中における各ドアの高出力トルク出力タイミングをずらし、ドアを閉じる際に全体として高負荷とならないようにするためのものである。つまり、各ドアを1つずつ、又は、複数組に分け組毎にずらして閉じるようにするものである。
【0018】
比較判定部44は、タイマ部43の計時時間S5と予め設定されたドア高出力設定時間S6とを比較し、計時時間S5がドア高出力設定時間S6以上となったか否かを判定する。
フラグ設定部45は、比較判定部44で計時時間S5がドア高出力設定時間S6以上となっていないと判定されている場合は、ドア高出力許可フラグ45aをリセット状態としているが、計時時間S5がドア高出力設定時間S6以上となったことが判定された際に、ドア高出力許可フラグ45aをセットする。
【0019】
つまり、図2(a)を参照すると、ドア高出力許可フラグ45aが時刻t1でセット(SET)されてからタイマ部43が時刻t3でタイムアップするとタイマクリアされ、このクリアによって計時時間S5がドア高出力設定時間S6よりも小さくなってドア高出力許可フラグ45aが同時刻t3でリセット(RESET)される。
この際、ドア動作指令信号S3の入力が継続中であれば、タイマ部43の計時動作が開始され、再び、時刻t4で計時時間S5がドア高出力設定時間S6以上となったことが判定された際に、ドア高出力許可フラグ45aがセットされ、時刻t6のタイムアップまでセット状態となる。
【0020】
つまり、ドア高出力許可フラグ45aは、タイマ部43の計時動作開始時点からドア高出力設定時間S6の終了時点までの時間幅(リセット時間幅と称す)はリセット状態で、計時時間S5がドア高出力設定時間S6以上となった時点(前記の終了時点)からタイマ部43がタイムアップするまでの時間幅(セット時間幅と称す)はセット状態となる。従って、そのセット時間幅とリセット時間幅とが交互に繰り返されるようになっており、各時間幅はドア高出力設定時間S6を変えることによって可変可能となっている。
【0021】
ドア開閉指令部46は、ドア動作指令信号S3の開閉指令に応じてドアを開閉するためのドア出力指令値S7を電力変換部12へ出力し、また、ドア高出力許可フラグ45aがセット状態の場合に、ドア位置検出値S1により確認可能なドア駆動速度が所定以下遅くなるとドアを高出力トルクで駆動させるためのドア出力指令値S7を電力変換部12へ出力する。
【0022】
このような構成の運転指令演算部41によってドア高出力許可フラグ45aがセットされる際の動作を、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップST1において、ドア動作指令信号S3が運転指令演算部41に入力されていない場合、ステップST2において、列車制御装置22から各ドアの実装位置に応じて各ドアのタイマ部43にオフセット値が設定される。
【0023】
一方、ドア動作指令信号S3が入力されると、ステップST3において、タイマ部43が計時動作を行う。
この計時動作が行われると、ステップST4において、比較判定部44によって、その計時時間S5がドア高出力設定時間S6以上となったか否かが比較判定される。この判定の結果、計時時間S5がドア高出力設定時間S6以上となっていないと判定されている場合は、ステップST5において、フラグ設定部45でドア高出力許可フラグ45aがリセット状態とされている。
一方、計時時間S5がドア高出力設定時間S6以上となったと判定されると、ステップST6において、フラグ設定部45でドア高出力許可フラグ45aがセットされる。ここで、ステップST7において、タイマ部43がタイムアップすると、ステップST8において、タイマ部43はクリアされる。
【0024】
次に、このようなドア高出力許可フラグ45aのセット後にドアが開閉される際の動作を、図2に示すタイミングチャートを参照して説明する。
但し、第1及び第2のドアのみを示し、それらドアのドア高出力許可フラグ45aが重ならないようにセット(SET)される場合を(a)及び(d)に示し、そのセットに応じて高出力トルクが出力される際のタイミングチャートを(c)及び(f)に示す。また、(b)及び(e)は本実施の形態との比較のための従来制御のタイミングチャートである。
【0025】
また、(a)及び(d)に示すように、時刻t1〜t3間及び時刻t4〜t6間のセット時間幅に第1のドア用のドア高出力許可フラグ(第1のドア高出力許可フラグ)45aがセットされ、時刻t0〜t1間及び時刻t3〜t4間のセット時間幅に第2のドア用のドア高出力許可フラグ(第2のドア高出力許可フラグ)45aがセットされるものとする。
【0026】
時刻t0においては、列車制御装置22からドア閉指令であるドア動作指令値S3がドア開閉指令部46に入力され、これによって、第1及び第2のドアが「L」レベルで示す通常出力トルクで閉動作を行っているとする。
この閉動作中に、時刻t2で双方のドアが何らかの異物に衝突し、時刻t5で異物が抜け通常動作に戻ったとする。この場合、従来制御であれば、(b)及び(e)に示すように、時刻t2〜t5間の異物が挟まっている間は、双方のドアが「H」レベルで示す高出力トルクで閉動作を行う。従って、従来制御では複数ドアの高出力トルク状態が重なり、これに大容量の電力が費やされるので該当車両の電源電圧低下が生じていた。
【0027】
しかし、本実施の形態では、第1のドアは(c)に示すように、ドア高出力許可フラグ45aがセット状態となっている時刻t2〜t3間とt4〜t5間のみ高出力トルクでの閉動作を行い、第2のドアは(f)に示すように、第1のドアの高出力トルク閉動作時間に重ならない時刻t3〜t4間のみ高出力トルクでの閉動作を行う。つまり、複数ドアの高出力トルク状態が重なることがない。
【0028】
このように、第1の実施の形態のドア駆動制御装置40によるドア駆動制御によれば、複数のドアで高出力トルクが必要になった際に、各ドア間で高出力トルクを出力しているかの情報を伝達できない場合でも、互いにドア駆動時間が重ならないように高出力トルクで各ドアを開閉駆動することができるので、電源電圧の低下を招くことなく、各ドアで高出力トルクを出力してドアを動作させることができる。
これによって、従来のように電源電圧低下による出力トルクの制限によりドアが動作できずにドアが施錠できないといった事態を無くすことができる。換言すれば、ドアの施錠を確実に行うことができる。
【0029】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る鉄道車両用のドア駆動制御装置における運転指令演算部の構成を示すブロック図である。
図4に示す運転指令演算部(指令手段)51は、図1に示した運転指令演算部41の構成要素43〜46に、速度演算部53と、速度比較判定部54と、ドア異物検知フラグ55aをセット/リセットするフラグ設定部55と、フラグ状態判定部56とを備えて構成したことにある。但し、図1に示したドア開閉指令部46は、図4を参照する第2の実施の形態では後述のように処理機能が異なるので符号57を付した。
【0030】
速度演算部53は、ドア位置検出値S1からドア速度S8を演算により求める。
速度比較判定部54は、ドア速度S8が予め設定された速度閾値S9以下となったことを双方の比較により判定し、この判定結果を出力する。
フラグ設定部55は、速度比較判定部54でドア速度S8が速度閾値S9以下となったことが判定された場合に、ドア異物検知フラグ55aをセットする。
フラグ状態判定部56は、ドア高出力許可フラグ45aとドア異物検知フラグ55aのセット/リセットの状態を判定する。
【0031】
また、ドア開閉指令部57は、フラグ状態判定部56でドア高出力許可フラグ45a及びドア異物検知フラグ55aの双方がセット状態と判定されている場合にのみ高出力トルクでドアを閉動作させるためのドア出力指令値S7を出力する。また、双方のフラグ45a,55aがセットとなっている状態からドア高出力許可フラグ45aがリセット状態に変化した際に、所定時間ドアを開動作させたのち高出力トルクでない通常の閉動作とする再開閉動作を行わせるためのドア出力指令値S7を出力する。更に、双方のフラグ45a,55aがセットとなっている状態からドア異物検知フラグ55aがリセット状態に変化した際に、ドアを通常の閉動作とするためのドア出力指令値S7を出力する。
【0032】
このような構成の運転指令演算部51によってドアに異物が挟まれた際の再開閉動作を、図5に示すタイミングチャートを参照して説明する。
但し、第1及び第2のドアのみを示し、それらドアのドア高出力許可フラグ45aが重ならないようにセット(SET)される場合を(a)及び(d)に示し、ドア異物検知フラグ55aがセットされる場合を(b)及び(f)に示し、そのセットに応じて高出力トルクが出力されると共に再開閉動作が行われる場合のタイミングチャートを(d)及び(h)に示す。また、(c)及び(g)は本実施の形態との比較のための従来制御のタイミングチャートである。
【0033】
時刻t0においては、列車制御装置22からドア閉指令であるドア動作指令値S3がドア開閉指令部46に入力されており、これによって、第1及び第2のドアが「L」レベルで示す通常出力トルクで閉動作を行っているとする。
この時刻t0以降の動作を、まず第1のドアから説明する。閉動作中に、第1のドアが何らかの異物に衝突したとするとドア速度が低下する。この際、時刻t1において、速度比較判定部54によってドア速度S8が速度閾値S9以下となったことが判定されると、フラグ設定部55によって(b)に示すように第1のドア異物検知フラグ55aがセットされる。
【0034】
この後、時刻t2において(a)に示すように、第1のドア高出力許可フラグ45aがセットされると、フラグ状態判定部56によって、第1のドア高出力許可フラグ45aと第1のドア異物検知フラグ55aの双方がセット状態であると判定される。この判定結果を受けたドア開閉指令部57によって、高出力トルクでドアを閉動作させるためのドア出力指令値S7が電力変換部12へ出力されるので、(d)に示すように第1のドアが「H」レベルで示す高出力トルクで閉動作を行うことによって異物を押し付ける動作を行う。
【0035】
その後、時刻t5において、(a)に示すように、第1のドア高出力許可フラグ45aがリセット状態に変化したことがフラグ状態判定部56で判定されると、ドア開閉指令部57から再開閉動作を行わせるためのドア出力指令値S7が出力され、これによって、(d)に示すように第1のドアが時刻t5〜t6間での開動作を含む再開閉動作を行う。この際、開動作時にはドア速度が速くなるので、これを速度比較判定部54が判定するとフラグ設定部55が(b)の時刻t5に示すように、第1のドア異物検知フラグ55aをリセットする。
【0036】
この後、再び第1のドアが異物に衝突してドア速度が低下し、時刻t7において(b)に示すように、速度比較判定部54によってドア速度S8が速度閾値S9以下となったことが判定されると、フラグ設定部55によって第1のドア異物検知フラグ55aがセットされる。そして、(a)に時刻t9〜t10に示すように、第1のドア高出力許可フラグ45aがセットされると、(d)に示すように、高出力トルクでドアを閉動作させるためのドア出力指令値S7に応じて第1のドアが高出力トルクで閉動作を行う。
【0037】
次に、第2のドアについて説明する。但し、第1の実施の形態で既に説明した通り、第2のドアにおいては、(e)に示すように、(a)の第1のドア高出力許可フラグ45aとセットが重複しないようにそのリセット期間に、第2のドア高出力許可フラグ45aがセットされるようになっている。
時刻t0以降の閉動作中に、第2のドアが何らかの異物に衝突したとするとドア速度が低下する。この際、時刻t1において、速度比較判定部54によってドア速度S8が速度閾値S9以下となったことが判定されると、フラグ設定部55によって(f)に示すように第2のドア異物検知フラグ55aがセットされる。
【0038】
この時、フラグ状態判定部56によって、ドア高出力許可フラグ45aとドア異物検知フラグ55aの双方がセット状態であると判定され、これを受けたドア開閉指令部57によって、高出力トルクでドアを閉動作させるためのドア出力指令値S7が出力されるので、(h)に示すように第2のドアが「H」レベルで示す高出力トルクで閉動作を行うことによって異物を押し付ける動作を行う。
【0039】
その後直ぐに時刻t2において、(a)に示すように、第2のドア高出力許可フラグ45aがリセット状態に変化したことがフラグ状態判定部56で判定されると、ドア開閉指令部57から再開閉動作を行わせるためのドア出力指令値S7が出力され、これによって、(h)に示すように第2のドアが時刻t2〜t3間での開動作を含む再開閉動作を行う。この際、開動作時にはドア速度が速くなるので、これを速度比較判定部54が判定するとフラグ設定部55が(f)の時刻t2に示すように、ドア異物検知フラグ55aをリセットする。
【0040】
この後、再び第2のドアが異物に衝突してドア速度が低下し、時刻t4において(f)に示すように、速度比較判定部54によってドア速度S8が速度閾値S9以下となったことが判定されると、フラグ設定部55によって第2のドア異物検知フラグ55aがセットされる。そして、(e)に時刻t5〜t9に示すように、第2のドア高出力許可フラグ45aがセットされ、また、(f)に示すように時刻t8で異物が抜け第2のドア異物検知フラグ55aがリセットされたとする。
【0041】
この場合、各フラグ45a,55aがセット状態の(h)に示す時刻t5〜t8間において第2のドアが高出力トルクで閉動作を行う。また、時刻t8で第2のドア異物検知フラグ55aのみがリセット状態に変化するので、ドア開閉指令部57からは(h)に示すように、ドアを通常の閉動作とするためのドア出力指令値S7が出力され、これによって、第2のドアが通常の閉動作を行う。
【0042】
このように、第2の実施の形態のドア駆動制御装置40によるドア駆動制御によれば、第1及び第2のドアの高出力トルク状態が重ならないようにすると共に、ドアの高出力トルクによる閉動作中にドア高出力許可フラグ45aがリセットとなった際に、その閉動作を終了し、この後すぐに再開閉動作を行うようにした。これによって、ドアに異物が挟まれた際に、複数のドアを電源電圧の低下を招くことなく高出力トルクで閉動作させることができ、尚且つ異物除去をより適切に行うことができる。また、高出力トルクでの閉動作中に異物が除去された場合は、通常の閉動作を行うので、余計な再開閉動作を行うことが無く、無駄な電力も消費しない。
従来では、(c)及び(g)に示すように、ドア異物検知フラグ55aがセット状態の場合に高出力トルクでの閉動作を行っていたので、複数ドアの高出力トルク状態が重なり、これに大容量の電力が費やされるので該当車両の電源電圧低下が生じていた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る鉄道車両用のドア駆動制御装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態のドア駆動制御装置による複数ドアの開閉駆動を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】上記実施の形態のドア駆動制御装置の運転指令演算部によるドア高出力許可フラグのセット動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る鉄道車両用のドア駆動制御装置のドア開閉指令部の構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施の形態のドア駆動制御装置による複数ドアの開閉駆動を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】従来の鉄道車両用のドア駆動制御装置の構成を示す図である。
【図7】従来の鉄道車両用のドア駆動制御装置が列車制御装置に通信線で複数台接続された様子を示す図である。
【図8】ドア駆動制御装置で制御される各ドアに割り当てられた局番アドレスの一例を示す図である。
【図9】同一車両における各ドア駆動制御装置、電源及び他の機器の接続構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ドア
2 リニアモータ
3 連結部
4 出力電流検出部
5 位置検出部
7 施錠装置
12 電力変換部
14 通信インタフェース部
22 列車制御装置
40 ドア駆動制御装置
41,51 運転指令演算部
43 タイマ部
44 比較判定部
45,55 フラグ設定部
45a ドア高出力許可フラグ
46,57 ドア開閉指令部
53 速度演算部
54 速度比較判定部
55a ドア異物検知フラグ
56 フラグ状態判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に電動機で駆動される複数のドアの開閉駆動を制御する際に、ドアの開閉駆動用のトルクを通常出力トルク又は高出力トルクとしてドアの閉駆動を行うドア駆動制御装置において、
前記高出力トルクでのドアの閉駆動の時間が各ドア又は予め定められた駆動組のドアで重ならないようにドア毎に高出力トルク実行時間を設定し、この設定された高出力トルク実行時間にのみ前記高出力トルクでドアの閉駆動を行うように指令する指令手段
を備えたことを特徴とするドア駆動制御装置。
【請求項2】
前記指令手段は、前記設定された高出力トルク実行時間の終了時にドアの再開閉動作を行うように指令することを特徴とする請求項1に記載のドア駆動制御装置。
【請求項3】
前記指令手段は、前記設定された高出力トルク実行時間中にドアの駆動速度が予め定められた速度を超えた場合、前記高出力トルクでない通常のドアの閉駆動を行うように指令することを特徴とする請求項2に記載のドア駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−262750(P2007−262750A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89006(P2006−89006)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】