説明

ドライアイのための処方物および方法

提供されるのは、ドライアイを処置および予防する、そして/または涙液膜破壊時間を延長するための方法および組成物である。本発明により、ドライアイを処置または予防するために有効な量のNSAIDを含む、眼科用処方物が提供される。代用涙と、ドライアイを処置または予防するために有効な量のNSAIDとを含む、眼科用処方物もまた提供される。このNSAIDは、ケトロラクトロメタミン、インドメタシン、フルルビプロフェンナトリウム、ネパフェナック、ブロムフェナック、スプロフェンおよびジクロフェナックからなる群から選択され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
ドライアイ(乾燥性角結膜炎)は、人口の約10〜20%に影響を与える眼の疾患である。この疾患は、加齢につれて、より多くの割合の人々に段階的に影響を与え、これらの患者の大多数は女性である。さらに、ほとんどすべての人々は、ドライアイ疾患、目の過敏、またはドライアイ状態の徴候および/または症状を、長期間の視覚仕事、コンピューターを用いる仕事、乾燥環境にいること、乾燥をもたらす薬物適用などのような特定の状況下で時々経験する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイを患う個体では、まばたきをもたらす反射および支援涙物質の分泌は損なわれる。ドライアイの徴候および症状は、角膜炎、結膜および角膜の着色、赤み、ぼやけた視覚、減少した涙膜破壊時間、涙産生、容量、および流れの減少、結膜の赤みの増加、涙膜中の過剰の残渣、眼の乾燥、眼に砂の入った感じ(ocular grittiness)、眼の焼灼感、眼の中の異物体感覚、過剰の涙、光恐怖症、眼の刺すような痛み(ocular stinging)、屈折損傷、眼の鋭敏度、および眼の過敏を含む。患者は、これら症状の1つ以上を経験し得る。過剰の流涙応答は、直感に反するように見え得るが、ドライアイによって引き起こされる過敏および異物体感覚に対する自然の反射応答である。幾人かの患者はまた、眼のアレルギーおよびドライアイ症状の組み合わせに起因する眼のかゆみを経験する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドライアイの患者の症状にまた影響し得る多くの可能な改変因子があり、循環性ホルモンのレベル、種々の自己免疫疾患(例えば、シェーグレン病および全身性エリテマトーデス)、PRKまたはLASIKを含む眼の手術、多くの薬物適用、環境状態、コンピューター使用のような視覚作業、眼の疲労、コンタクトレンズ着用、および角膜鋭敏度のような、部分的まぶた閉鎖、表面不規則性(例えば、翼状片)、ならびに機械的影響(例えば、まぶた不規則性(例えば、眼瞼下垂症、眼瞼内反/外反症、瞼裂斑))が挙げられる。低湿度の環境、例えば、防氷装置をもつ車に座ること、または乾燥気候ゾーンに生活することのような、脱水を引き起こすような環境は、ドライアイ症状を悪化させるか、または引き起こす。さらに、視覚にたよる作業もまた、症状を悪化し得る。症状におおいに影響し得る仕事は、テレビを見ること、およびまばたき率が減少する長時間のコンピューターの使用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
被験体の眼の表面に添加されるとき、例えば、涙膜破壊時間および/または眼保護指数を上昇させることにより、涙膜の完全性を長期化させる眼科用処方物が提供される。詳細には、種々のその他の薬剤と組み合わせた非ステロイド系抗炎症性薬物(NSAID)を含む局所的眼科用処方物(例えば、代用涙(tear substitute))が提供される。これら処方物の驚くべき効用は、とりわけ、それらの中の成分の組み合わせの相乗効果に帰される。有効量の処方物は、ドライアイおよび/または一般的な目の過敏を処置もしくは防ぐために用いられ得、そしてそれが別の目の障害のための薬物を含む場合、その別の目の障害を処置するためにもまた用いられ得る。そのような処方物はまた、目の中に点眼されるとき、心地よい処方物を提供し、そのような他の薬剤と組み合わされないNASIDの処方物と比較して増加した、効用および作用の持続時間を有する。NASID成分は、眼の不快さからの軽減または予防を提供し、そして涙成分は、(涙膜破壊時間の延長により明らかであるように)涙膜を増大することによって、眼の表面保護を提供する。これらの組み合わせは、これらの症状の急性または慢性の軽減のために用いられ得る。
【0005】
また特徴であるのは、涙膜破壊時間または(本明細書でさらに説明されるような)眼保護指数を増加させる方法、ならびに上記組成物の投与によりドライアイおよび/または目の過敏を処置および予防する方法である。さらに、特徴であるのは、上記処方物の輸送、貯蔵または使用のためのキット、および上記方法の実施である。
【0006】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(詳細な説明)
簡便さのために、本発明のさらなる説明の前に、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語がここに集められる。これらの定義は、本開示の残りを考慮して解釈されるべきであり、そして当業者により理解される。
【0008】
用語「水性」は、代表的には、キャリアが、>50重量%、より好ましくは>75重量%、そして特に>90重量%の程度の水である水性組成物を示す。
【0009】
本明細書で用いられるとき、用語「ドライアイ」は、長期間の視覚仕事、コンピューター上の作業、乾燥環境にいること、目の過敏、全身的または非全身的薬物適用、コンタクトレンズなどのような他の状況によって誘起されるドライアイ疾患ならびにドライアイの徴候および/または症状の両方を含む。
【0010】
語句「有効量」は、当該技術分野で認められた用語であり、そして本発明の薬学的組成物中に取り込まれるとき、任意の医療処置に適用可能な合理的利益/リスク比で、特定の所望の効果をもたらす薬剤の量をいう。特定の実施形態では、この用語は、ドライアイおよび/または目の過敏の症状をなくし、低減し、もしくは維持する(例えば、その症状の拡散を防ぐ)か、あるいはドライアイおよび/または目の過敏を予防するか、もしくは処置するのに必要であるか、または十分な量をいう。この有効量は、処置される疾患もしくは状態、投与される特定の組成物、または疾患もしくは状態の重篤度のような因子に依存して変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく特定の薬剤の有効量を実験によって決定し得る。
【0011】
本明細書で用いられるとき、用語「NSAID」は、眼科学的に受容可能な非ステロイド系抗炎症性薬物、またはその薬学的に受容可能な塩を意味する。
【0012】
本発明の方法によって処置される「患者」、「被験体」、または「宿主」は、ヒトまたは霊長類、哺乳動物、および脊椎動物のような非ヒト動物いずれかをいう。
【0013】
語句「薬学的に受容可能」は当該技術分野で認められ、そして健全な医療的判定の範囲内で、合理的な利益/リスク比と相応し、過剰の毒性、過敏、アレルギー応答、またはその他の問題もしくは合併症なくして、人間および動物の組織と接触する使用に適している組成物、ポリマーならびにその他の材料および/またはその塩および/または投薬形態をいう。
【0014】
語句「薬学的に受容可能なキャリア」は当該技術分野で認められ、そして、例えば、1つの器官もしくは身体の部分から、別の器官もしくは身体の部分まで、任意の補助物もしくは組成物またはその成分を保持もしくは輸送することに関与するか、または薬剤を眼の表面に送達するための、薬学的に受容可能な物質、組成物、またはビヒクル(例えば、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または被包性物質)のことをいう。各キャリアは、組成物のその他の成分と適合し、そして患者に有害でないという意味で「受容可能」でなければならない。特定の実施形態では、薬学的に受容可能なキャリアは、非発熱性である。薬学的に受容可能なキャリアとして役立ち得る物質のいくつかの例は:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;(2)コーンスターチおよびポテトスターチのようなスターチ;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;(4)粉末化トラガカントゴム;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤ワックスのような賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油のようなオイル;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;(12)エチルオレエートおよびエチルラウレートのようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝化剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;(21)HP−グアールのようなガム;(22)ポリマー;および(23)薬学的処方物中で用いられるその他の非毒性適合物質を含む。
【0015】
用語「薬学的に受容可能な塩」は当該技術分野で認められ、そして本発明の組成物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩またはその任意の成分のことをいい、治療薬剤、賦形剤、その他の物質などを含むがそれらに限定されない。薬学的に受容可能な塩の例は、塩酸および硫酸のような無機酸由来の塩、およびエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのような有機酸由来の塩を含む。塩の形成のための適切な無機塩基の例は、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などの水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩を含む。塩はまた、適切な有機塩基を用いて形成され得、非毒性で、そしてこのような塩を形成するのに十分に強い有機塩基を含む。例示の目的には、このような有機塩基のクラスは、メチルアミン、ジメチルアミン、およびトリエチルアミンのような、モノ−、ジ−、およびトリアルキルアミン;モノ−、ジ−、およびトリエタノールアミンのようなモノ−、ジ−、またはトリヒドロキシアルキルアミン;アルギニンおよびリジンのようなアミノ酸;グアニジン;N−メチルグルコサミン;N−メチルグルカミン;L−グルタミン;N−メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N−ベンジルフェネチルアミン;(トリヒドロキシメチル)アミノエタンなどを含み得る。例えば、J.Pharm.Sci.、66:1〜19(1977)を参照のこと。
【0016】
用語「予防すること」は、ドライアイおよび/または目の過敏のような状態に関して用いられるとき、当該技術分野で認められ、そして上記組成物を受容しない被験体と比較して、被験体における医療状態の徴候および/または症状の発症の頻度を低減するか、または遅延させる組成物の投与のことをいう。
【0017】
本明細書で用いられるとき、用語「代用涙」は、潤滑し、「濡らし」、内因性の涙の粘稠度に近似し、自然の涙の構築を支援するか、またはそうでなければ眼への投与に際し、ドライアイの徴候および/または症状および状態の一時的軽減を提供する分子または組成物をいう。
【0018】
用語「処置すること」は当該技術分野で認められた用語であり、これは、任意の状態または疾患の少なくとも1つの症状を治癒および改善することをいう。
【0019】
(1.薬学的組成物)
本発明は、ドライアイの処置および予防のための、薬学的に受容可能なキャリア中の有効量のNSAIDおよび代用涙を含む新規な薬学的組成物を特徴とする。このNSAIDおよび代用涙は相乗的に作用し得、眼の表面上のNSAIDのより長い滞留時間を提供し、それ故、作用の持続時間および効用を増加させ、同様に、例えば、涙膜破壊時間および/または眼保護指数を増加させることにより涙膜の完全性を持続させる。
【0020】
例示のNSAIDとしては、ケトロラクトロメタミン(Acular(登録商標))(および、その関係する部分が本明細書中に参考として援用される1984年6月12日に発行されたWaterburyによる米国特許第4,454,151号に眼科学的に有効であると記載されるその他の化合物)、インドメタシン、フルルビプロフェンナトリウム、ネパフェナック、ブロムフェナック、スプロフェンおよびジクロフェナック(Voltaren(登録商標))(および、その関係する部分が本明細書中に参考として援用される1990年10月2日に発行されたNagyによる米国特許第4,960,799号に眼科学的に有効であると記載されるその他の化合物)、ならびにそれらのエステルおよび薬学的に受容可能な塩が挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
薬学的眼科用処方物は、代表的には、有効量、例えば、0.001wt/vol%〜10wt/vol%、好ましくは0.005wt/vol%〜1wt/vol%の活性成分(例えば、上記NSAID)を含む。活性成分の量は、意図される特定の処方物および疾患状態に応じて変動する。例えば、ケトロラクの有効量は、約0.05〜約0.5%の範囲であり;フルルビプロフェンナトリウムの有効量は、約0.003〜約0.03%の範囲であり、ネパフェナックの有効量は、約0.01%〜約0.1%の範囲であり、スプロフェンの有効量は、約0.1%〜約1%の範囲であり、ブロムフェナックの有効量は、約0.009%〜約0.09%の範囲であり、そしてジクロフェナックの有効量は、約0.01%〜約0.1%の範囲である。
【0022】
好ましくは、上記処方物中に存在するNSAIDの有効量は、ドライアイおよび/または目の過敏からの不快さを低減するのに十分であるべきであり、そして/または知覚麻痺効果を生成しない。上記処方物中に存在するNSAIDの有効量は、鎮痛効果を生成するに十分であるべきである。
【0023】
種々の代用涙が当該技術分野で公知であり、これらとしては、グリコール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールのようなモノマーポリオール;ポリエチレングリコールのようなポリマーポリオール;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロースエステル;デキストラン70のようなデキストラン;ゼラチンのような水溶性タンパク質;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポビドンのようなポリマー;カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940およびカルボマー974Pのようなカルボマー;およびHP−グアールのようなガムが挙げられるが、それらに限定されない。多くのこのような代用涙は商業的に入手可能であり、これらとしては、セルロースエステル(例えば、Bion Tears(登録商標)、Celluvisc(登録商標)、Genteal(登録商標)、OccuCoat(登録商標)、Refresh(登録商標)、Teargen II(登録商標)、Tears Naturale(登録商標)、Tears Naturale II(登録商標)、Tears Naturale Free(登録商標)、およびTheraTears(登録商標));ならびにポリビニルアルコール(例えば、Akwa Tears(登録商標)、Hypo Tears(登録商標)、Moisture Eyes(登録商標)、Murine Lubricating(登録商標)、Systane(登録商標)Lubricant Eye Drops、およびVisine Tears(登録商標))が挙げられるが、それらに限定されない。代用涙はまた、商業的に入手可能なLacri−Lube(登録商標)軟膏のようなパラフィンを含み得る。代用涙として用いられるその他の商業的に入手可能な軟膏としては、Lubrifresh PM(登録商標)、Moisture Eyes PM(登録商標)およびRefresh PM(登録商標)が挙げられる。
【0024】
特定の実施形態では、代用涙は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。特定の実施形態では、代用涙は、Genteal(登録商標)潤滑性の点眼剤である。GenTeal(登録商標)(CibaVision−Novartis)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース3mg/gを含み、そして過ホウ素酸ナトリウムで保存された滅菌潤滑性点眼剤である。
【0025】
その他の実施形態では、代用涙はRefresh(登録商標)である。
【0026】
なおその他の実施形態では、代用涙はASTである。ASTの調製および使用は、米国特許第6,806,364号に記載され、その全体が本明細書中に参考として明確に援用される。ASTは、0.2〜2.5(例えば、0.5〜0.8)重量%のポリマー粘滑薬、0.045〜0.065(例えば、0.05〜0.06)重量%のカルシウム塩、および0.14〜1.4(例えば、0.3〜1.2)重量%のリン酸塩を含む。ASTは、20〜150(例えば、50〜90)センチポアズの粘度を有し、そしてリン酸塩またはその他の適切な塩でpH5.5〜8.5(例えば、6〜8)に緩衝化される。それはさらに、1つ以上の以下の成分:0.5〜1.0重量%のグリコール、0.5〜1.0重量%のプロピレングリコール、0.005〜0.05重量%のグリシン、0.006〜0.08重量%のホウ酸ナトリウム、0.025〜0.10重量%の塩化マグネシウム、および0.001〜0.01重量%の塩化亜鉛を含み得る。
【0027】
特定の実施形態では、代用涙は、薬学的キャリアとして作用する。
【0028】
特定の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、少なくとも2つのNSAIDおよび代用涙の組み合わせを含み得る。その他の実施形態では、本発明の局所処方物は、抗アレルギー剤および少なくとも2つの代用涙の組み合わせを含み得る。
【0029】
上記に記載の本発明の薬学的組成物は、その他の活性成分(血管収縮薬、抗アレルギー剤、抗感染薬、ステロイド、麻酔薬、抗炎症剤、鎮痛剤、ドライアイ薬剤(例えば、分泌促進薬、粘液模倣物(mucomimetic)、ポリマー、脂質、抗酸化剤)などが挙げられるが、それらに限定されない)をさらに含み得るか、またはその他の活性成分(血管収縮薬、抗アレルギー剤、抗感染薬、ステロイド、麻酔薬、抗炎症剤、鎮痛剤、ドライアイ薬剤(例えば、分泌促進薬、粘液模倣物、ポリマー、脂質、抗酸化剤)などが挙げられるが、それらに限定されない)を含む薬学的組成物と組み合わせて(同時または逐次的に)投与され得る。
【0030】
例えば、上記NSAID/代用涙組成物は、別の薬学的組成物(例えば、Restatis(登録商標)(シクロスポリン眼科エマルジョン、0.05%)のような処方薬物)と組み合わせて用いられ得る。それは、この別の薬学的組成物と同時、または逐次的に用いられ得る。例えば、このNSAID/代用涙組成物は、別の投与された医薬が被験体で有効となり始める前の立ち上げ時間にその被験体に投与され得る。特定の実施形態では、このNSAID/代用涙組成物は、それらが、Restatis(登録商標)のような処方薬物のための補充物として役立つような様式で用いられ得る。
【0031】
薬学的組成物のNSAIDおよびその他の活性成分は、薬学的に受容可能な塩の形態であり得る。
【0032】
好ましくは、本発明による薬学的組成物は、溶液、懸濁液および局所投与のためのその他の投薬形態として処方される。処方の容易さ、および罹患した眼の中に溶液の1〜2滴の溶液を点眼することによるこのような組成物を容易に投与する患者の能力に基づいて、水溶液が一般に好まれる。しかし、これらの組成物はまた、懸濁液、粘性もしくは半粘性ゲル、またはその他のタイプの固形もしくは半固形組成物であり得る。
【0033】
任意の種々のキャリアが、本発明の処方物中で用いられ得、これらは、水、水と水混和性溶媒(例えば、C〜C−アルカノール)との混合物、0.5〜5%の非毒性の水溶性ポリマーを含む植物油または鉱油、天然産物(例えば、ゼラチン、アルギネート、ペクチン、トラガカントゴム、カラヤゴム、キサンゴム、カラギナン、寒天およびアカシア、酢酸スターチおよびヒドロキシプロピルスターチなどのようなスターチ誘導体)、そしてまた他の合成産物(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、好ましくは中性Carbopolのような架橋されたポリアクリル酸、またはこれらポリマーの混合物)を含む。このキャリアの濃度は、代表的には、活性成分の1〜100000倍の濃度である。
【0034】
処方物中に含まれ得るさらなる成分は、張度エンハンサー、保存剤、可溶化剤、非毒性賦形剤、粘滑薬、金属イオン封鎖剤、pH調節剤、共溶媒および粘度構築剤を含む。
【0035】
pH、好ましくは生理学的pHの調節のために、緩衝液が特に有用であり得る。本発明の溶液のpHは、4.0〜8.0、より好ましくは約4.0〜6.0、より好ましくは約6.5〜7.8の範囲内に維持されるべきである。ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、TRIS、および種々の混合されたリン酸緩衝液(NaHPO、NaHPOおよびKHPOの組み合わせを含む)およびそれらの混合物のような、適切な緩衝液が添加され得る。一般に、緩衝液は、約0.05〜2.5重量%、そして好ましくは0.1〜1.5%の範囲の量で用いられる得る。
【0036】
張度は、必要であれば、代表的には張度増大試薬によって調節される。このような試薬は、例えば、イオン性および/または非イオン性タイプであり得る。イオン性張度エンハンサーの例は、例えば、CaCl、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBrまたはNaCl、NaSOまたはホウ酸のような、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物である。非イオン性張度増大試薬は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、またはデキストロースである。本発明の水溶液は、代表的には、塩化ナトリウムの0.9%溶液またはグリセロールの2.5%溶液に等価である標準の涙液流体の浸透圧に近似するように張度試薬で調節される。約225〜400mOsm/kgの重量オスモル濃度が好ましく、より好ましくは280〜320mOsmである。
【0037】
特定の実施形態では、局所処方物はさらに保存剤を含む。保存剤は、代表的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウムなどのような四級アンモニウム化合物から選択される。塩化ベンザルコニウムは:塩化N−ベンジル−N−(C−C18アルキル)−N,N−ジメチルアンモニウムとして好ましくは記述される。四級アンモニウム塩とは異なる保存剤の例は、例えば、チオメルサール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀またはホウ酸フェニル水銀、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムのようなチオサリチル酸のアルキル水銀塩、例えば、メチルパラベンまたはプロピレンパラベンのようなパラベン、例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコールまたはフェニルエタノールのようなアルコール、例えば、クロロヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアニド、過ホウ酸ナトリウム、Germal(登録商標)IIまたはソルビン酸のようなグアニジン誘導体である。好ましい保存剤は、四級アンモニウム化合物、特にPolyquad(米国特許番号第4,407,791号)のような塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体、アルキル−水銀塩、およびパラベンである。適切な場合には、十分な量の保存剤が上記眼科用組成物に添加され、細菌および真菌によって引き起こされる使用の間の二次的汚染に対する保護を確実にする。
【0038】
別の実施形態では、本発明の局所処方物は保存剤を含まない。このような処方物は、コンタクトレンズを着用する患者、またはいくつかの局所点眼剤を用いる者、および/または既に損なわれた眼の表面(例えばドライアイ)をもつ者であって保存剤に対する制限された曝露がより所望される者のために有用であり得る。
【0039】
局所処方物はさらに、可溶化剤の存在を、特に活性または不活性成分が懸濁液またはエマルジョンを形成する傾向にある場合に必要とし得る。上記に関係する組成物に適切な可溶化剤は、例えば、チロキサポール、脂肪酸グリセロールポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール、グリセロールエーテル、シクロデキストリン(例えば、α−、β−、またはγ−シクロデキストリン、例えば、アルキル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシアルキル化もしくはアルキルオキシカルボニル−アルキル化誘導体、あるいはモノグリコシル−もしくはジグリコシル−α−、β−、またはγ−シクロデキストリン、モノマルトシル−もしくはジマルトシル−α−、β−またはγ−シクロデキストリン、あるいはパノシル−シクロデキストリン)、ポリソルベート20、ポリソルベート80またはこれら化合物の混合物からなる群から選択される。特に好ましい可溶化剤の特定の例は、ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応産物、例えば、市販の製品Cremophor EL(登録商標)またはCremophor RH40(登録商標)である。ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応産物は、目に対して極度に耐性のある特に良好な可溶化剤であることが証明されている。別の好ましい可溶化剤は、チロキサポールおよびシクロデキストリンから選択される。用いられる濃度は、特に活性成分の濃度に依存する。添加される量は、代表的には、活性成分を可溶化するに十分である。例えば、可溶化剤の濃度は、活性成分の濃度の0.1〜5000倍である。
【0040】
上記処方物は、例えば、200、300、400および600と指定されるポリエチレングリコール、1000、1500、4000、6000および10000と指定されるCarbowaxのような、例えば、乳化剤、湿潤剤または充填剤のような非毒性賦形剤をさらに含み得る。添加される賦形剤の量およびタイプは、特定の要求に従い、そして一般に約0.0001〜約90重量%の範囲にある。
【0041】
その他の化合物が、上記キャリアの粘度を増加させるために本発明の処方物に添加され得る。粘度増大試薬の例は、:ヒアルロン酸およびその塩、硫酸コンドロイチンおよびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの種々のポリマー;ビニルポリマー;およびアクリル酸ポリマーを含むが、それらに限定されない。
【0042】
(2.パッケージング)
本発明の処方物は、単回用量製品または複数用量製品のいずれかとしてパッケージされ得る。単回用量製品はパッケージの開封前には滅菌され、そしてこのパッケージ中の組成物のすべては、患者の片目または両目への単回添加で消費されることが意図される。パッケージが開封された後の組成物の滅菌度を維持するための抗微生物防腐剤の使用は、一般に不必要である。上記処方物は、軟膏処方物である場合、当業者に公知であるように、軟膏に適切であるとしてパッケージされ得る。
【0043】
複数用量製品もまた、パッケージの開封前に滅菌されている。しかし、この組成物のための容器は、この容器中の組成物のすべてが消費される前に何回も開封され得るので、この複数用量製品は、これら組成物がこの容器の繰り返される開封および取り扱いの結果として、微生物で汚染されるようにならないことを確実にするために十分な抗微生物活性を有さなければならない。この目的のために必要な抗微生物活性のレベルは、当業者に周知であり、そして米国薬局方(「USP」)および食品医薬局によるその他の刊行物、ならびにその他の国々における対応する刊行物のような公の刊行物中に詳述されている。微生物汚染に対する眼科用薬学的製品の保存のための仕様の詳細な説明および特定処方物の保存の効用を評価するための手順は、これら刊行物中に提供されている。米国では、保存剤効果の標準は、一般に、「USP PET」要件と称される(頭字語「PET」は、「保存剤効果試験」の略である)。
【0044】
単回用量パッケージの使用は、上記組成物中の抗微生物保存剤の必要性をなくし、これは、医学的観点から顕著に有利である。なぜなら、眼科的組成物を保存するために利用される従来の抗微生物薬剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)は、特にドライアイ状態または予め存在する眼の過敏を患う患者において、眼の過敏を引き起こし得るからである。しかし、「成形、充填およびシール」として知られるプロセスにより調製される小容量プラスチックバイアルのような現在利用可能である単回用量パッケージは、製造業者および消費者にとっていくつかの欠点を有している。単回用量パッケージングシステムの主な欠点は、必要なパッケージング物質の非常に多い量であり、これは、浪費的およびコスト高であり、そして消費者に不便である。また、消費者が目への1または2滴の添加の後に単回用量容器を彼らが指示されるように棄てない(その代わりに、後の使用のために開封されたコンテナおよびその中に残る任意の組成物を節約する)リスクがある。単回用量製品のこの不適正な使用は、汚染された組成物が眼に添加される場合、単回用量製品の微生物汚染および付随する眼の感染リスクをもたらす。
【0045】
本発明の処方物は、好ましくは、「使える状態」の水溶液として処方されるが、代替の処方物が、本発明の範囲内で企図される。それ故、例えば、活性成分、界面活性剤、塩、キレート剤、または眼科用溶液のその他の成分、またはそれらの混合物は、凍結乾燥され得るか、またはそうでなければ、(例えば、脱イオン水または蒸留水への)溶解の準備ができた乾燥粉末または錠剤として提供される。溶液の自己保存性性質のために、滅菌水は要求されない。
【0046】
(3.使用の方法)
本発明は、被験体におけるドライアイおよび/または眼の過敏を処置または予防する方法を特徴とし、上記に記載の新規処方物の使用を含む。例えば、ドライアイおよび/または眼の過敏を処置または予防する方法は、その処置または予防の必要がある被験体の眼の表面に、薬学的に受容可能なキャリア中に有効量の少なくとも1つのNSAIDおよび代用涙を含む処方物を投与する工程を包含し得る。
【0047】
また提供されるのは、被験体の涙膜の涙膜破壊時間(TFBUT)を増加させる方法であり、その方法を必要とする被験体の眼の表面に、薬学的に受容可能なキャリア中に有効量の少なくとも1つのNSAIDおよび代用涙を含む処方物を投与する工程を包含し得る。
【0048】
また提供されるのは、被験体の眼の眼保護指数(OPI)を増加させる方法であり、その方法を必要とする被験体の目の表面に、薬学的に受容可能なキャリア中に有効量の少なくとも1つのNSAIDおよび代用涙を含む処方物を投与する工程を包含し得る。
【0049】
上記処方物中のNSAIDの有効量は、吸収、不活性化、および薬物の排泄速度ならびにこの処方物からの化合物の送達速度に依存する。投薬値はまた、軽減されるべき症状の重篤度に応じて変動し得ることに注意されるべきである。任意の特定の被験体について、特定の投薬養生法は、個々の必要性および上記組成物の投与を管理または監督する人の専門的な判断に従って経時的に調節されるべきであることがさらに理解されるべきである。代表的には、分量は、当業者に公知の技法を用いて決定される。
【0050】
本発明の任意の化合物の投薬量は、被験体の症状、年齢およびその他の身体的特徴、処置または予防されるべき障害の性質および重篤度、所望の心地良さの程度、投与の経路、および補助物の形態に依存する。任意の本発明の処方物は、単回用量または分割された用量で投与され得る。本発明の処方物の投薬量は、当業者に公知の、または本明細書中で教示されるような技法によって容易に決定され得る。
【0051】
上記処方物の有効用量または有効量、および投与のタイミングに対する任意の起こり得る影響は、本発明の任意の特定の処方物について同定される必要があり得る。これは、本明細書中に記載されるような慣用の実験によって達成され得る。任意の処方物の有効性および、処置または予防の方法の有効性は、上記処方物を投与する工程、および本明細書中に記載されるようなNSAID組成物の効用および患者への心地良さの程度に付随する1つ以上の指数を測定することにより投与の影響を評価する工程、ならびにこれら指数の処置後の値を、異なる処方物を用いる同じ指数の値と比較することにより評価され得る。
【0052】
所定の患者で最も有効な処置をもたらす投与の正確な時間および任意の特定の処方物の量は、特定化合物の活性、薬物動力学、バイオアベイラビリティー、(年齢、性別、疾患タイプおよびステージ、一般的身体状態、所定の用量および薬物適用のタイプに対する応答性を含む)患者の生理学的状態、投与の経路などに依存する。本明細書に提示されるガイドラインは、処置を最適化する(例えば、最適時間および/または投与の量を決定する)ために用いられ得、これは、被験体をモニターすること、ならびに投薬量および/またはタイミングを調節することからなる慣用の実験を必要とするのみである。
【0053】
本発明の組成物へと処方されるいくつかのNSAIDの組み合わせた使用は、任意の個々の成分の必要な投薬量を低減し得る。なぜなら、異なる成分の効果の発現および持続時間が相補的であり得るからである。このような組み合わせ治療では、これら異なるNSAIDは一緒または別個に、そして一日のうちで同時または異なる時間で送達され得る。
【0054】
(4.キット)
なお別の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載される処方物のパッケージングおよび/または貯蔵および/または使用のためのキット、ならびに本明細書中に記載される方法の実施のためのキットを提供する。従って、例えば、キットは、本発明の1つ以上の眼科用溶液、懸濁液または処方物、錠剤、またはカプセルを含む1つ以上の容器を備え得る。これらキットは、輸送、使用および貯蔵の1つ以上の局面を容易にするように設計され得る。
【0055】
これらキットは、必要に応じて、それらの中に提供される処方物の使用の手段を開示する指示(すなわち、プロトコール)を含む指示資料を含み得る。指示資料は、代表的には、書かれたか、または印刷された資料を含むが、それらはそのように制限されるわけではない。このような指示を貯蔵し、そしてそれらをエンドユーザーに連絡し得る任意の媒体が本明細書によって企図される。このような媒体は、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学的媒体(例えば、CD ROM)などを含むが、それらに限定されない。このような媒体は、このような指示資料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含み得る。
【0056】
本明細書中で記述されるすべての刊行物および特許は、各々の刊行物または特許が参考として援用されるべきことが詳細かつ個々に示されているように、それらの全体が参考として本明細書によって援用される。矛盾する場合には、本明細書中に任意の定義を含む本出願が支配する。
【実施例】
【0057】
(例示)
本発明は、ここで一般に説明され、本発明の特定の局面および実施形態の例示の目的のために単に含まれ、そしていかなる方法においても本発明を制限することは意図されない以下の実施例を参照することによってより容易に理解される。
【0058】
(実施例1:Refresh人工涙を用いるAcular(ケトロラク)の処方)
以下の研究は、眼の不快さを低減する際に、Refresh人工涙を用いる、0.25%まで低減された0.5%ケトロラク眼科用溶液(Acular)の効用を調べる。
【0059】
制御された有害な環境(CAE)と呼ばれる特別に開発されたチャンバーを、過敏によって引き起こされる眼の不快を評価するためのモデルとして用いた。このCAEは、その中で湿度が低レベルで制御され、そして温度、風の流れ、照明および視覚仕事がすべて制御されているチャンバーである。CAEに入る患者は、経時的に眼の不快さを生じる。このモデルは、ドライアイおよび/または目の過敏を処置するために作用し得る薬剤の正確な評価を可能にする。
【0060】
ベースラインの眼の検査を、眼科医によって18人の被験体について実施した。被験体は、次いでCAEに入り、そして60分間滞在した。5分毎に各目の眼の不快さを規格化した0〜4の眼の不快さスケールに関して、被験体が評価し、そして研究スタッフが記録した。目が2つの引き続く評価で少なくとも3のスコアを示したとき、0.5%ケトロラク、0.25%ケトロラク、または偽薬(リフッシュ涙−人工涙)のいずれかの1〜2滴を目の中に点眼した。被験体は、0〜9の心地良さスケール(0=極度に心地良い、そして9=極度に不快)に関し、上記滴の滴下後すぐにこの滴の心地良さを記録し、そして眼の不快さ評価とともに、CAE中にさらに90分間滞留した。
【0061】
各目は、それが初期CAE曝露の間の2つの引き続く測定で少なくとも3のスコアに到達したとき、投薬および評価された。
【0062】
退去眼検査は、眼科医によって90分の追跡CAE曝露の後に実施された。
【0063】
0.5%ケトロラク(N=8つの目)は、被験体がCAEに曝されたとき投薬後の偽薬(N=7つの目)と比較して眼の不快さスコアの減少を示した。この減少は、投薬後CAE中の曝露の15分で開始することが明らかであった。0.25%ケトロラク(N=5)もまた、患者がCAEに曝されたとき投薬後の偽薬(N=5)と比較して眼の不快さスコアの減少を示した。0.25%ケトロラクの減少は、処置の滴下後40分で明らかであった。0.25%ケトロラクの効果は、0.5%ケトロラクのそれより少なかったが、0.25%ケトロラクが不快さを低減したことはなお明らかであった。
【0064】
目における点眼後すぐの滴の心地良さは、0.5%ケトロラクで処置した目より、偽薬および0.25%ケトロラクで処置した目の方が優れていた。0.25%ケトロラク滴と偽薬滴との心地良さの間には差がなかった。従って、利用可能なAcular(0.5%ケトロラク眼科用溶液)より低い濃度からなる滴は、目の中に加えられる場合、より心地よいが、過敏に起因する眼の不快さを処置するようになお作用する。さらなる用量範囲試験が、0.25%より高いが0.5%より低い濃度(0.5%より心地良いが、0.25%より効用がある)を同定し得ることが予期され得る。これらの特徴をもつその他の濃度もまた、本発明に包含されることが意図される。
【0065】
データ(図1)は、眼の不快さを減少し得る局所的NSAIDの濃度が同定され得ることを示す。
【0066】
(実施例2:AST人工涙を用いるAcular(ケトロラク)の処方物)
以下の研究は、眼の不快さを低減する際に、ASTの効用を、1:1のAST:ケトロラク組み合わせと比較する。
【0067】
ベースラインの眼の検査を、眼科医によって18人の被験体について実施した。被験体は、次いでCAEに入り、そして90分間まで滞在した。5分毎に各目の眼の不快さを規格化した0〜4の眼の不快さスケールに関して、被験体が評価し、そして研究スタッフが記録した。目が2つの引き続く評価で少なくとも3のスコアを示したとき、AST人工涙またはAST:ケトロラクの1:1混合物のいずれかの1〜2滴を目の中に点眼した。被験体は、0〜9の心地良さスケール(0=極度に心地良い、そして9=極度に不快)に関し上記滴の点眼後すぐにこの滴の心地良さを記録し、そして眼の不快さ評価とともに、CAE中にさらに60分間滞留した。
【0068】
各目は、それが初期CAE曝露の間の2つの引き続く測定で少なくとも3のスコアに到達したとき、投薬および評価された。
【0069】
退去眼検査は、眼科医によって60分の追跡CAE曝露の後に実施された。
【0070】
図2は、この研究の結果を描写する。ASTへのケトロラクの添加は、CAE挑戦の間に眼の不快さを有意に改善する。ASTは、代表的には点眼の際にケトロラクに付随する目の刺すような痛みを減少する。
【0071】
(実施例3:涙膜破壊時間(TFBUT))
ドライアイ症候群の重篤度の指標である、「涙膜破壊時間」または「TFBUT」試験は、涙膜を維持することで溶液の効用を測定するために用いられ得る。それは、被験体が感じ得る眼の不快さの程度と相関する。数百人の被験体を含む研究において、70%を超える被験体が涙膜破壊の1秒以内に眼の不快さを報告した。平均して、正常な目にある涙膜は、平均7.1秒で破壊する。対照的に、「ドライアイ」中の涙膜は、平均3.2秒で破壊する。従って、TFBUTを増加させる能力を有する試薬は、ドライアイを処置および予防する際に用いられ得る。
【0072】
例えば、このTFBUTは以下のように評価され得る。患者の目に、まず、5マイクロリットルの2%フルオレセインナトリウムを点眼する。フルオレセイン点眼の後、患者は自分の頭を細隙灯に置き、そして調査者は、コバルトブルー照明下で目を見る。患者は3回まばたきし、そして目を3回目のまばたきの後、通常の絞りで目を開けて保持することを指示される。
【0073】
3回目のまばたきで目を開いたときストップウォッチがスタートされ、そして調査者が、拡大し始めた涙膜破壊の領域を同定したとき停止される。涙膜破壊の領域は、他の方法では緑の蛍光を発する涙膜中の黒い空隙によって同定可能である。目は試験の間ビデオテープを撮られる。
【0074】
ドライアイ患者におけるTFBUTに対する実施例1および2に記載される眼科用溶液の効用は以下のように試験され得る。最初、各患者のTFBUTベースラインが確立される。眼科用処方物の1または2滴を次いで、各患者の片目に添加し、そしてTFBUTを、添加後5、10、15、30、45、および60分で測定する。
【0075】
このTFBUTは、眼保護指数(OPI)(Nally L、Ousler GW、Abelson MB.ドライアイ患者における眼の不快さおよび涙膜破壊時間:相関関係.IOVS 2000 41;4(ARVO Abstract):1436)を誘導するために用いられ得、これは、TFBUTを、まばたき間の時間(秒)(「IBI」)で除することにより得られる。1または1を超えるOPI(すなわち、TFBUTがIBIより大きいか、またはIBIに等しい)は、ドライアイの最小の徴候または症状とともに、涙で保護された眼の表面を示す。1より小さいOPI(すなわち、TFBUTがIBIより小さい)は、ドライアイの悪化した徴候または症状とともに保護されていない眼の表面を示す。
【0076】
(参考文献)
本明細書中に記述されたすべての刊行物および特許は、あたかも各々の個々の刊行物また特許が参考として援用されて詳細かつ個々に示されているようにそれらの全体が参考として本明細書によって援用される。矛盾する場合には、本明細書中に任意の定義を含む本出願が支配する。
【0077】
(等価物)
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識、または慣用の実験を超えずに用いて確認し得る。本発明の特定の実施形態が考察されるが、上記の明細書は例示であって、そして制限ではない。本発明の多くの改変は、本明細書を再検討する際に当業者に明らかになる。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を、それらの等価物の全範囲とともに、および明細書を、そのような改変例とともに参照して決定されるべきである。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、Refresh(登録商標)人工涙と組み合わせたAcular(登録商標)(本明細書ではまた、「Acular」または「ケトロラク」とも呼ばれる)の効用を調べる研究の結果を描写する。
【図2】図2は、AST人工涙と組み合わせたAcular(登録商標)の効用を調べる研究の結果を描写する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイを処置または予防するために有効な量のNSAIDを含む、眼科用処方物。
【請求項2】
代用涙と、ドライアイを処置または予防するために有効な量のNSAIDとを含む、眼科用処方物。
【請求項3】
前記NSAIDが、ケトロラクトロメタミン、インドメタシン、フルルビプロフェンナトリウム、ネパフェナック、ブロムフェナック、スプロフェンおよびジクロフェナックからなる群から選択される、請求項1に記載の眼科用処方物。
【請求項4】
前記NSAIDが、ケトロラクトロメタミンである、請求項1に記載の眼科用処方物。
【請求項5】
前記NSAIDの量が、約0.5%以下のケトロラクトロメタミンである、請求項4に記載の眼科用処方物。
【請求項6】
約0.05%〜約0.3%のケトロラクを含む、請求項5に記載の眼科用処方物。
【請求項7】
前記代用涙がASTである、請求項2に記載の眼科用処方物。
【請求項8】
前記代用涙がRefresh人工涙である、請求項2に記載の眼科用処方物。
【請求項9】
前記代用涙が:モノマーポリオール、ポリマーポリオール、デキストラン、水溶性タンパク質、カルボマー、ゴム、セルロースエステルおよびパラフィンからなる群から選択される、請求項2に記載の眼科用処方物。
【請求項10】
前記代用涙が:Bion Tears(登録商標)、Celluvisc(登録商標)、Genteal(登録商標)、OccuCoat(登録商標)、Refresh(登録商標)、Teargen II(登録商標)、Tears Naturale(登録商標)、Tears Naturale II(登録商標)、Tears Naturale Free(登録商標)、およびTheraTears(登録商標)、Akwa Tears(登録商標)、Hypo Tears(登録商標)、Moisture Eyes(登録商標)、Murine Lubricating(登録商標)、Systane(登録商標)Lubricant Eye Drops、Visine Tears(登録商標)、Lacri−Lube(登録商標)軟膏、Lubrifresh PM(登録商標)、Moisture Eyes PM(登録商標)およびRefresh PM(登録商標)からなる群から選択される、請求項2に記載の眼科用処方物。
【請求項11】
少なくとも1つの他の治療剤をさらに含む、請求項1に記載の眼科用処方物。
【請求項12】
ドライアイおよび/または目の過敏を有する被験体を処置する方法であって:
(a)被験体中でTFBUTまたはOPIまたは非侵襲的涙膜破壊時間を決定し、そして該患者の眼の不快さを評価する工程;
(b)請求項1〜11のいずれか1項に記載の眼科用処方物を投与する工程;
(c)被験体中でTFBUTまたはOPIまたは非侵襲的涙膜破壊時間を決定する工程であって、ここで、該TFBUTまたはOPIまたは非侵襲的涙膜破壊時間の増加が、該眼科用処方物が該被験体を処置することに効用があることを示す工程、
を包含する、方法。
【請求項13】
(a)被験体においてTFBUTを決定する工程と;(b)該被験体に、該被験体中に存在するTFBUTに基づき、NSAIDおよび代用涙を含む処方物を投与する工程とを包含する、方法。
【請求項14】
(a)被験体においてTFBUTまたは非侵襲的涙破壊時間を決定し、そして該患者の眼の不快さを評価する工程;および(b)該TFBUTまたは非侵襲的涙破壊時間を用いて、該被験体におけるドライアイのタイプまたは程度を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
(c)前記被験体に、該被験体における前記タイプまたは程度のドライアイを処置するために有効な、NSAIDおよび代用涙を含む処方物を投与する工程をさらに包含する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−524692(P2009−524692A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552581(P2008−552581)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/061065
【国際公開番号】WO2007/087609
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508221866)アーシエックス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】