説明

ナノ粒子シリカ充填ベンズオキサジン組成物

ベンズオキサジンベースのものなどの硬化性組成物は、航空宇宙産業内の用途において、例えばマトリックス樹脂または接着材として使用する熱硬化性組成物として有用であり、本発明の基礎を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベンズオキサジンをベースとするものなどの硬化性組成物は、例えばマトリックス樹脂または接着剤として使用する熱硬化性組成物としてなど、航空宇宙産業における用途において有用であり、本発明の基礎を形成し、この中において硬化性組成物は、10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有するシリカにより充填される。
【背景技術】
【0002】
種々の硬化剤を含むエポキシ樹脂が、航空宇宙産業および電子工業において、種々の基質と共に、プリプレグ集成部品に使用する接着剤として、およびマトリックス樹脂として広く使用されてきた。
【0003】
ベンズオキサジン自体、一般に高ガラス転移温度、良好な電気的特性(例えば、誘電率)および低燃焼性を有するものとして文献に報告されてきた。
【0004】
エポキシ樹脂およびベンズオキサジンのブレンドが知られている。例えば、米国特許第4,607,091号(Schreiber)、同5,021,484号(Schreiber)、同5,200,452号(Schreiber)、および同5,445,911号(Schreiber)参照のこと。これらのブレンドは、エポキシ樹脂がベンズオキサジンの溶融粘度を低下させることができ、加工粘度を維持しつつ多量の充填材の装填を可能にするので電子工業において潜在的に有用であると思われる。しかし、エポキシ樹脂は、しばしばベンズオキサジンが重合する温度を望ましくなく増大させる。
【0005】
エポキシ樹脂、ベンズオキサジンおよびフェノール樹脂の三元ブレンドも知られている。米国特許第6,207,786号(Ishida)、およびS.RimdusitおよびH.Ishida、「Development of new class of electronic packaging materials based on ternary system of benzoxazine、epoxy、and phenolic resin」、Polymer、41、7941−49(2000)参照のこと。
【0006】
米国特許第6,323,270号(Ishida)は、クレーと、ナノ複合材を形成するのに有効な量のベンズオキサジンモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーとのナノ複合材組成物について言及し、特許請求している。クレーは、多数の小板からなるケイ酸塩、または多数の小板からなる水和アルミニウムケイ酸塩として記載されている。クレーは、’270特許を読むと、岩石の風化から一般に得られる土壌の成分であり、約100ミクロン未満などの、約50ミクロン未満など、約200ミクロン未満の粒子サイズを有する凝集体であってよく、その例は、モンモリロナイト、アタパルジャイト、イライト、ベントナイト、およびハロイサイトである。
【0007】
最新の技術であるにもかかわらず、改善された性能特性については言うまでもなく、ベンズオキサジンと、10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有するシリカとの組合せをベースとする熱硬化性組成物を調製するための開示、教示または示唆は、いままでなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の組成物は、熱硬化性であり、ベンズオキサジン成分とシリカ成分の組合せを含み、ここで、シリカは、10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有する。
【0009】
一態様において、本発明は、
【0010】
【化1】


[式中、oは、1〜4であり、Xは、直接結合(oが2である場合)、アルキル(oが1である場合)、アルキレン(oが2〜4である場合)、カルボニル(oが2である場合)、チオール(oが1である場合)、チオエーテル(oが2である場合)、スルホキシド(oが2である場合)、またはスルホン(oが2である場合)であり、Rは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのアルキル、またはアリールである]、または
【0011】
【化2】


[式中、pは1〜4であり、Yは、ビフェニル(pが2である場合)、ジフェニルメタン(pが2である場合)およびその誘導体、ジフェニルイソプロパン(pが2である場合)、ジフェニルスルフィド(pが2である場合)、ジフェニルスルホキシド(pが2である場合)、ジフェニルスルホン(pが2である場合)、またはジフェニルケトン(pが2である場合)から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルまたはアルケニルから選択される];および、10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有するシリカ成分を含む、ベンズオキサジン成分を提供する。
【0012】
本発明の態様のさらに特定の実施形態において、ベンズオキサジン成分は、
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

[式中、Xは、直接結合、CH、C(CH、C=O、S、S=OまたはO=S=Oから選択され、および、R、RおよびRは、同一または異なり、メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのアルキル、アリルなどのアルケニルまたはアリールから選択され、およびRは、水素、ハロゲン、アルキル、またはアルケニルから選択される]の1つまたは複数に包含される。
【0016】
本発明の組成物の硬化された反応生成物は、ホット/ウエット(Hot/Wet)ガラス転移温度の感知し得る低下なしに、改善された弾性率および靭性の少なくとも1つを示すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上述したように、本発明は、一般に、ベンズオキサジン成分と、10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有するシリカ成分との組合せを含む熱硬化性組成物を提供する。
【0018】
一態様において、本発明は、
【0019】
【化6】

[式中、oは、1〜4であり、Xは、直接結合(oが2である場合)、アルキル(oが1である場合)、アルキレン(oが2〜4である場合)、カルボニル(oが2である場合)、チオール(oが1である場合)、チオエーテル(oが2である場合)、スルホキシド(oが2である場合)、またはスルホン(oが2である場合)であり、Rは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのアルキル、またはアリール]、または
【0020】
【化7】

[式中、pは1〜4であり、Yは、ビフェニル(pが2である場合)、ジフェニルメタン(pが2である場合)およびその誘導体、ジフェニルイソプロパン(pが2である場合)、ジフェニルスルフィド(pが2である場合)、ジフェニルスルホキシド(pが2である場合)、ジフェニルスルホン(pが2である場合)、またはジフェニルケトン(pが2である場合)から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルまたはアルケニルから選択される];および10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有するシリカ成分を含むベンズオキサジン成分を提供する。
【0021】
本発明の態様のさらに特定の実施形態において、ベンズオキサジン成分は、
【0022】
【化8】

[式中、Xは、直接結合、CH、C(CH、C=O、S、S=OまたはO=S=Oから選択され、および、RおよびRは、同一または異なり、メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのアルキル、アリルなどのアルケニルまたはアリールから選択され、およびRは、水素、ハロゲン、アルキル、またはアルケニルから選択される]に包含される。
【0023】
代表的ベンズオキサジンは、
【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

[式中、R、RおよびRは、上に定義した通りである]を含む。
【0026】
したがって、これらのベンズオキサジンの例は、
【0027】
【化11】

【0028】
【化12】

【0029】
【化13】

【0030】
【化14】


を含む。
【0031】
構造IまたはIIに包含されないが、その他のベンズオキサジンは、以下の構造内にある:
【0032】
【化15】

【0033】
【化16】

[式中、R、RおよびRは、上に定義した通りであり、Rは、R、RまたはRと同様に定義される]。
【0034】
ベンズオキサジン成分は、多官能性ベンズオキサジンおよび単官能性ベンズオキサジンの組合せを含むことができる。単官能性ベンズオキサジンの例は、以下の構造に包含されることができる:
【0035】
【化17】


[式中、Rは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのアルキル、またはアリールであり、およびRは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルから選択される]。
【0036】
このような単官能性ベンズオキサジンの例は、
【0037】
【化18】


[式中、Rは、アルキルまたはアリールである]である。
【0038】
本発明の組成物の硬化された生成物は、実施例に示すように、ホット/ウエットガラス転移温度の感知し得る低下なしに、改善された弾性率および靭性の少なくとも1つを示すことが可能である。
【0039】
ベンズオキサジン成分は、組成物の総重量に対して、約25から約75重量パーセント、望ましくは約35から約65重量パーセントなどの、約10から約99重量パーセントの範囲の量において存在するべきである。
【0040】
シリカ成分は、ナノ粒子サイズの平均粒子直径を有するべきであり、すなわち、10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有する。シリカナノ粒子は、エポキシ樹脂中に予備分散させることができ、ドイツ、Hanse Chemie製、商標NANOPOXの下に市販されているものから選択することができる。NANOPOXは、シリカナノ粒子強化エポキシ樹脂の製品群に対する商標であり、材料特性の卓越した組合せを示す。このシリカ相は、50nm未満の直径および極めて狭い粒子サイズ分布を有する、表面変性された、合成SiOナノ球体からなる。このSiOナノ球体は、エポキシ樹脂マトリックス中の凝集物のない分散体であり、シリカ50重量%まで含む樹脂に対して低い粘度をもたらす。
【0041】
NANOPOX製品の市販の例には、NANOPOX XP 0314(環式脂肪族エポキシ樹脂マトリックス)、XP 0516(ビスフェノールA エポキシ樹脂マトリックス)、およびXP 0525(ビスフェノールF エポキシ樹脂マトリックス)が含まれる。これらのNANOPOX製品は、指摘されたエポキシ樹脂中のシリカナノ粒子分散体であり、シリカナノ粒子は、製造業者は3種の指摘されたエポキシ樹脂に対して40重量%と報告しているが、約50重量%までのレベルである。これらのNANOPOX製品は、製造業者は50nm未満と報告しているが、約5nmから約80nmの粒子サイズを有すると思われる。
【0042】
本発明のシリカ成分は、組成物の総重量に対して、約1から約60重量パーセント、例えば約3から約30重量パーセント、望ましくは約5から約20重量パーセントの範囲の量において存在するべきである。
【0043】
本発明のベンズオキサジン成分は、一般にビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSまたはチオジフェノールなどのフェノール化合物を、アルデヒドおよびアルキルアミンと反応させることによって調製することができる。ここに、参照により本明細書に特に組み込まれる米国特許第5,543,516号は、ベンズオキサジンを形成する方法を記載しており、ここでは、反応時間は、反応物濃度、反応性および温度によって、数分から数時間、変化することができる。また、Burke等、J.Org.Chem.、30(10)、3423(1965)参照のこと;一般に米国特許第4,607,091号(Schreiber)、同5,021,484号(Schreiber)、同5,200,452号(Schreiber)および同5,443,911号(Schreiber)参照のこと。
【0044】
ベンズオキサジンは、Vantico、Inc.、Brewster、New York、Geogia−Pacific Resins、Inc.およびSikoku Chemicals Corporation、千葉、日本を含む幾つかの供給源から、現在商業的に入手可能であり、この最後のものは、とりわけB−a、B−m、F−a、C−aおよびF−aベンズオキサジン樹脂を提供する。これらの中で本発明のベンズオキサジン成分は、しばしば望ましくはB−mベンズオキサジン樹脂系統内にある。
【0045】
また、ベンズオキサジン重合は、ルイス酸などのカチオン性開始剤、および金属ハライドなどの他の知られたカチオン性開始剤;有機金属誘導体、;塩化アルミニウムフタロシアニンなどの金属ポルフィリン;メチルトシレート、メチルトリフレート、およびトリフリン酸;オキシハライド;およびイミダゾールなどの塩基によって開始することができる。
【0046】
また、本発明の組成物は、ベンズオキサジン成分に対して共反応物、硬化剤および/または触媒を含むことができる。例には、フェノールおよびこの誘導体などのルイス酸、アルキレン酸などの強酸、カチオン性触媒、および上述のように、イミダゾールなどの塩基が含まれる。
【0047】
また、本発明の組成物は、強化剤成分を含むことができ、この例には、ポリ(フェニレン)オキシド;Sumitomo Chemical Company、日本から市販されているPES 5003Pなどのアミン停止ポリエチレンスルフィド;第二級アミン末端基を有するアクリロニトリル−ブタジエンコポリマー(「ATBN」)、Union Carbide Corporation、Danbury、Conneticutから市販されているPS 1700などのコア−シェルポリマー;およびGeneral Electric Companyから市販されているBLENDEX 338、SILTEM STM 1500およびULTEM 2000が含まれる。ULTEM 2000(CAS Reg.No.61128−46−9)は、約30,000±10,000の分子量(「Mw」)を有するポリエーテルイミドである。
【0048】
本発明の組成物は、接着剤の形態であってよく、この場合、1つまたは複数の接着促進剤、難燃剤、充填剤、熱可塑性添加剤、反応性または非反応性希釈剤、およびチキソトロープを含むことができる。その上、本発明の接着剤は、フィルム形態であることができ、この場合、ナイロン、ガラス、炭素、ポリエステル、ポリアルキレン、石英、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレンベンゾビスオアキサゾール、炭化ケイ素、フェノールホルムアルデヒド、フタレートおよびナフテノエートから構成される支持体が含まれるべきである。
【0049】
また、本発明は、接着剤の硬化された反応生成物を提供する。
【0050】
また、本発明は、フィルム形態において接着剤を提供し、この場合、さらにフィルムは、ナイロン、ガラス、炭素、ポリエステル、ポリアルキレン、石英、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレンベンゾビスオアキサゾール、炭化ケイ素、フェノールホルムアルデヒド、フタレートおよびナフテノエートから選択されたこれに対する支持体を含むことができる。
【0051】
当然のことながら、本発明は、接着剤フィルムの硬化された反応生成物を提供する。
【0052】
本発明の組成物は、通常、約30分間から4時間、約120から約180℃の範囲の温度に加熱することによって硬化することができる。したがって、本発明の組成物は、比較的穏やかな温度において使用して、非常に良好な生産性を実現することができる。
【0053】
また、本発明の組成物は、例えば、その開示を参照により本明細書に援用する米国特許第5,665,461号(Wong)などから知られているように、シンタクチック材料を形成するのに使用することができる。
【0054】
また、本発明は、本発明の熱硬化性組成物を製造する方法を提供する。この方法のステップは:
(a)
【0055】
【化19】


[式中、o、XおよびRは、上に定義した通りである]、または
【0056】
【化20】


[式中、p、YおよびRは、上に定義した通りである]を含むベンズオキサジンを準備するステップ、
(b)10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有するシリカ成分を混合することを準備するステップ;および
(c)熱硬化性組成物を製造するのに適切な条件下でベンズオキサジンとシリカ成分を混合するステップを含む。
【0057】
また、本発明は、プリプレグおよび本発明の組成物からプリプレグを製造する方法に関する。このような1つの方法は、(a)繊維の層を準備するステップ;(b)本発明の組成物を準備するステップ;および(c)本発明の組成物と繊維の層を一緒にして、プリプレグ集成部品を形成するステップ、および得られるプリプレグ集成部品を、プリプレグを形成するために、繊維の層を本発明の組成物で満たすのに十分な高い温度および圧力条件に曝すステップを含む。
【0058】
プリプレグを製造する他のこのような方法は、(a)繊維の層を準備するステップ;(b)液体形態で本発明の組成物を準備するステップ;(c)繊維の層を、液体の本発明の組成物を通過させて、繊維の層を本発明の組成物で満たすステップ;および(d)
プリプレグ集成部品から過剰の本発明の組成物を除去するステップを含む。
【0059】
繊維の層は、一方向の繊維、織られた繊維、短繊維、不織繊維、または長い不連続繊維から構成することができる。
【0060】
選ばれる繊維は、炭素、ガラス、アラミド、ホウ素、ポリアルキレン、石英、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレンベンゾビスオアキサゾール、炭化ケイ素、フェノールホルムアルデヒド、フタレートおよびナフテノエートから選択することができる。
【0061】
炭素は、ポリアクリロニトリル、ピッチおよびアクリルから選択され、ガラスは、Sガラス、S2ガラス、Eガラス、Rガラス、Aガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、ECRガラス、ガラス繊維、ステープルガラス、Tガラスおよび酸化ジルコニウムガラスから選択される。
【0062】
さらに、本発明は、本発明の組成物で満たされたこのような繊維の束から形成されたトウプレグ、およびトウプレグを製造する方法に関する。このような1つの方法において、ステップは、(a)繊維の束を準備するステップ;(b)本発明の組成物を準備するステップ;(c)本発明の組成物と繊維の束を一緒にして、トウプレグ集成部品を形成するステップ、および得られるトウプレグ集成部品を、繊維の束を本発明の組成物により含浸して、トウプレグを形成するのに十分な高い温度および圧力条件に曝すステップを含む。
【0063】
他のこのような方法において、このステップは、(a)繊維の束を準備するステップ;(b)液体形態で本発明の組成物を準備するステップ;(c)繊維の束を、液体の本発明の組成物を通過させて、繊維の束を本発明の組成物で満たすステップ;および(d)トウプレグ集成部品から過剰の本発明の組成物を除去し、それによってトウプレグを形成するステップを含む。
【0064】
また、本発明の組成物(ならびにこれらから調製されるプリプレグおよびトウプレグ)は、航空宇宙および工業的最終用途に対する複合材部品の製造および組み立て、複合材と金属、サンドイッチ構造に対するコアとコア−フィルの結合、ならびに複合材表面仕上げにおいて特に有用である。
【0065】
また、本発明の組成物は、レジントランスファー成形(「RTM」)、真空補助レジントランスファー成形(「VaRTM」)およびレジンフィルムインフュージョン(「RFI」)などの先進的プロセスにおいて有用である。その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第10/642,325号参照のこと。
【0066】
さらに、本発明を以下の代表的実施例によって例示する。
【実施例1】
【0067】
第1の実施例において、表1において示すように以下の成分を、試料番号1〜5の調製に使用した。
【0068】
【表1】

【0069】
試料のそれぞれを以下のように調製した。
【0070】
ベンズオキサジンを180〜200°Fの範囲の温度において加温して、硬化を開始することなしに流動化させた。
【0071】
NANOPOX XP 0314 シリカナノ粒子が存在するところで、流動化されたベンズオキサジンを、それと一緒に均一な混合物が形成されるまで180°Fの温度において混合した。
【0072】
ATBNが存在するところで、ATBNを、160〜180°Fの範囲の温度において、この混合物中に混合した。
【0073】
このように形成された組成物を、真空下で160〜180°Fの範囲の温度において、15〜30分間混合した。このように形成された組成物を密閉容器に室温で貯蔵した。
【0074】
表1に示した試料は、以下の硬化プロファイルを使用してオートクレーブ中に置いた開放表面型の中で硬化されることができる。
【0075】
試料をオートクレーブ内で90psiの圧力に曝し、この中で温度を、約3時間の間に5°F/分の傾斜速度で350°Fの温度に上昇させた。次いで、硬化された試料を、使用または評価の前に、約1時間の間に5°F/分の傾斜速度で型中で約90°Fの温度に冷却した。
【0076】
試料を硬化させ、特性性能を評価した。その結果を以下に表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
未硬化試料を40〜350℃の温度範囲内で、示差走査熱分析(「DSC」)によって評価し、ここで、温度範囲は、20℃/分の傾斜速度において増加し、これからΔHを記録した。
【0079】
硬化試料を以下の特性試験を使用して評価した。
【0080】
密度をASTM D 792により求め、次いで、硬化収縮を計算した。
【0081】
動的機械的熱分析(「DMTA」)を、二重片持ち取付器具を使用して硬化試料について実施した。硬化試料を炉中で40℃の温度において等温的に平衡させ、温度を5℃/分の傾斜速度で250℃に上昇させた。Tg値を立上りG’、貯蔵せん断弾性率から、このDMTA評価から得た。
【0082】
また、硬化試料を3日間沸騰水に曝し、重量増加を記録した。Tg値をDMTA評価を使用してこれらの試料から得た。
【0083】
曲げ弾性率を、以下の試験体寸法:0.125×0.5×4インチ、スパン2インチを有する硬化試料、試験速度:0.05インチ/分を使用して、ASTM D 790により求めた。K1Cを、寸法:0.15×0.5×3インチ、スパン2インチを有する硬化試料、試験速度:0.5インチ/分を使用して、ASTM D5045、片端ノッチ曲げ(SENB)、により求めた。
【0084】
シリカナノ粒子、例えば、NANOPOX XP 0314を使用する利点は、Tgおよびホット/ウエットTgを損なうことなしに、硬化された組成物の弾性率を増大し、靭性を改善することを含む。その上、シリカナノ粒子(より大きいシリカ粒子と比較して)の使用は、そうでなければ、そのような大きい粒子を捕捉する濾過プロセス(しばしば、プリプレグまたはRTMに関連して使用される)の後でも組成物中のこのようなシリカナノ粒子の包含を可能にする。
【0085】
B−mタイプベンズオキサジンおよびATBNにより調製された組成物に対して、高Tg(乾燥およびホット/ウエット)と共に良好な靭性が観察される。しかし、ATBNの量が増加するに従い、弾性率が減少することが観察された(例えば、試料番号1および2を参照のこと)。シリカナノ粒子強化エポキシ樹脂、例えばNANOPOX XP0314の添加によって、弾性率は、Tgに不利な影響を与えることなしに改善された。したがって、NANOPOX XP0314などのシリカナノ粒子と一緒に、ATBNなどの靭性付与剤を含有させることによって、良好な靭性、高Tg、および種々の成分の量を調整することによって低い値から高い値の範囲の弾性率を有する、ベンズオキサジン含有熱硬化性組成物を調製することができる。一般に低弾性率組成物が、接着剤用途には望ましいが、プリプレグまたはトウプレグのような高性能材料では、高弾性率組成物が、しばしば要求される規格を満足させることができる。
【0086】
第2の実施例において、試料番号6〜7は、表3に表示された成分および示された量で配合した。
【0087】
これらの試料は、炭素繊維強化ラミネートを作製するのに使用した。そのように調製されたラミネートを3°F/分の熱上昇(365°Fの温度まで)および100psiにより、365°Fにおいて2時間オートクレーブ中で硬化させた。
【0088】
【表3】

【0089】
以下の表4に、試料番号6〜7に対して曲げ弾性率が報告されている。試料番号7(シリカナノ粒子を含む)が、より高い弾性率を有することが測定された。
【0090】
【表4】

【0091】
ラミネートを、4×6インチ試験体に裁断し、Boeing試験法BSS 7260タイプII(衝撃後に板圧縮)により衝撃を与えた。衝撃エネルギーは、270ポンドであった。損傷面積をC−スキャンによって求めた。
【0092】
試料番号6により作製されたラミネートは、2.5平方インチの大きい損傷面積を有することが測定され、一方、試料番号7により作製されたラミネートは、0.7平方インチのより小さい損傷面積を有することが測定された。これは、シリカナノ粒子の存在が、複合材用途に重大である衝撃損傷面積を減少させるのを助けることを示した。
【0093】
次に、試料番号8〜11をB−mタイプベンズオキサジン、および、示されている場合は、ATBNおよび/またはシリカナノ粒子無機充填材を使用して調製した。
【0094】
【表5】

【0095】
それぞれの試料番号8〜11に対する調製プロセスは、硬化プロフィール同様、上記の通り(試料番号10〜11ではシリカナノ粒子が添加されており、試料番号8〜10ではATBNが添加されていることを別にして)であった。
【0096】
試料番号8〜11を硬化させ、特性性能に対して評価した。この結果を表6に以下に示す。
【0097】
【表6】

【0098】
試料番号8〜11からのこれらの結果を比較すると、Tgは、Bm−タイプベンズオキサジン中へのATBNの添加とともに増大したことが明らかである。また、GICで表す破壊靭性は、ATBNの量の増加と共に増大した。さらに、試料番号8〜11の、Tgとホット/ウエットTg間の比較は、これらの値において明らかな差異はなかったことを示した。
【0099】
シリカナノ粒子、例えばNANOPOX XP 0314を使用する利点は、シリカナノ粒子(より大きいシリカ粒子と比較して)の使用が、そうでなければ、そのような大きい粒子を捕捉する濾過プロセス(プリプレグまたはRTMにおいて使用される)の後でも組成物中のこのようなシリカナノ粒子の包含を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つまたは複数の
【化1】

[式中、oは、1〜4であり、Xは、直接結合(oが2である場合)、アルキル(oが1である場合)、アルキレン(oが2〜4である場合)、カルボニル(oが2である場合)、チオール(oが1である場合)、チオエーテル(oが2である場合)、スルホキシド(oが2である場合)、およびスルホン(oが2である場合)からなる群から選択され、Rは、水素、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルから選択される]、または
【化2】

[式中、pは、1〜4であり、Yは、ビフェニル(pが2である場合)、ジフェニルメタン(pが2である場合)およびその誘導体、ジフェニルイソプロパン(pが2である場合)、ジフェニルスルフィド(pが2である場合)、ジフェニルスルホキシド(pが2である場合)、ジフェニルスルホン(pが2である場合)、およびジフェニルケトン(pが2である場合)からなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択される]を含むベンズオキサジン成分;および
(b)10−9メートルオーダーの平均粒子径を有するシリカ成分
を含む熱硬化性組成物。
【請求項2】
ベンズオキサジン成分が、1つまたは複数の
【化3】

【化4】

[式中、Xは、直接結合、CH、C(CH、C=O、S、S=OおよびO=S=Oからなる群から選択され、R、R、RおよびRは、同一または異なり、水素、アルキル、アルケニルおよびアリールからなる群から選択される]
を含む、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
ベンズオキサジン成分が、1つまたは複数の
【化5】

【化6】

【化7】

を含む、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
ベンズオキサジン成分が、
【化8】

[式中、RおよびRは、同一または異なり、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される]
を含む、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
ベンズオキサジン成分が、組成物の総重量に対して、約10から約99重量パーセントの範囲の量において存在する、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項6】
シリカ成分が、組成物の総重量に対して、約1から約60重量パーセントの範囲の量において存在する、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の熱硬化性組成物を含む接着剤組成物。
【請求項8】
1つまたは複数の接着促進剤、難燃剤、充填材、熱可塑性添加剤、反応性または非反応性希釈剤、およびチキソトロープをさらに含む、請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の接着剤組成物の硬化した反応生成物。
【請求項10】
請求項1に記載の熱硬化性組成物を含む接着剤フィルム。
【請求項11】
ナイロン、ガラス、炭素、ポリエステル、ポリアルキレン、石英、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレンベンゾビスオキサゾール、炭化ケイ素、フェノールホルムアルデヒド、フタレートおよびナフテノエートからなる群から選択される支持体をさらに含む、請求項10に記載の接着剤フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の接着剤フィルムの硬化した反応生成物。
【請求項13】
請求項1に記載の熱硬化性組成物を含むシンタクチック組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の熱硬化性組成物を含むプリプレグ。
【請求項15】
請求項1に記載の熱硬化性組成物を含むトウプレグ。
【請求項16】
(a)
【化9】

[式中、oは、1〜4であり、Xは、直接結合(oが2である場合)、アルキル(oが1である場合)、アルキレン(oが2〜4である場合)、カルボニル(oが2である場合)、チオール(oが1である場合)、チオエーテル(oが2である場合)、スルホキシド(oが2である場合)、およびスルホン(oが2である場合)からなる群から選択され、Rは、水素、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、およびRは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択される]、または
【化10】

[式中、pは、1〜4であり、Yは、ビフェニル(pが2である場合)、ジフェニルメタン(pが2である場合)およびその誘導体、ジフェニルイソプロパン(pが2である場合)、ジフェニルスルフィド(pが2である場合)、ジフェニルスルホキシド(pが2である場合)、ジフェニルスルホン(pが2である場合)、およびジフェニルケトン(pが2である場合)からなる群から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択される]を含むベンズオキサジン成分を準備するステップ;および
(b)10−9メートルオーダーの平均粒子直径を有するシリカ成分を混合することを準備するステップ;および
(c)熱硬化性組成物を製造するのに適切な条件下でベンズオキサジンとシリカ成分を混合するステップ
を含む、熱硬化性組成物を製造する方法。

【公表番号】特表2008−523171(P2008−523171A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544592(P2007−544592)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/043909
【国際公開番号】WO2006/062891
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】