説明

ナビゲーション装置とその表示方法

【課題】 従来、目的地への経路を探索し、道路や進行方向等の地理的情報を表示して経路誘導を行うナビゲーション装置では、例えば、海域や河川、湖沼等の進入することのできない領域等、情報量が少ない領域について画面のかなりの面積を使用して表示してしまい、運転者に知らせるべき情報を含む領域を表示できないことがある。
本発明の目的は、表示すべきでない領域を表示せず、表示すべき情報を含む可能性のある領域を表示するように地図を提示する技術を提供することにある。
【解決手段】
本発明のナビゲーション装置は、地図情報の表示範囲を特定し、表示不適範囲を特定し、特定された表示範囲から、表示不適範囲を除外して表示可能領域を特定し、表示不適範囲を含まず表示可能領域を含む範囲を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置において、目的地への経路を探索し、道路や進行方向等の地理的情報を表示して経路誘導を行う技術がある。特許文献1には、このようなナビゲーション装置についての技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−317289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなナビゲーション装置では、例えば、海域や河川、湖沼等の進入することのできない領域等、情報量が少ない領域について画面のかなりの面積を使用して表示してしまい、運転者に知らせるべき情報を含む領域を表示できないことがある。
【0005】
本発明の目的は、地図表示において、表示してもあまり有用性のない領域を表示せず、なるべく有用性のある領域を表示する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係るナビゲーション装置は、地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、前記地図情報から表示範囲を特定する表示範囲特定手段と、前記地図情報から表示不適範囲を特定する表示不適範囲特定手段と、前記表示範囲を、前記表示不適範囲が減少する方向に移動させた範囲に含まれる地図情報を表示する地図表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のナビゲーション装置の表示方法は、ナビゲーション装置は、地図情報を記憶する地図情報記憶手段を備え、前記地図情報から表示範囲を特定する表示範囲特定ステップと、前記地図情報から表示不適範囲を特定する表示不適範囲特定ステップと、前記表示範囲を、前記表示不適範囲が減少する方向に移動させた範囲に含まれる地図情報を表示する地図表示ステップと、を実施する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】図2は、リンクテーブルの構成を示す図である。
【図3】図3は、表示範囲特定テーブルの構成を示す図である。
【図4】図4は、自車位置情報テーブルの構成を示す図である。
【図5】図5は、演算処理部の機能構成図である。
【図6】図6は、自車位置表示処理のフロー図である。
【図7】図7は、画面表示例を示す図である。
【図8】図8は、画面表示例を示す図である。
【図9】図9は、表示範囲の表示オフセットを特定する仕組みを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態を適用した車載装置であるナビゲーション装置100について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に、ナビゲーション装置100の構成図を示す。
【0011】
ナビゲーション装置100は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、記憶装置3と、音声入出力装置4(音声入力装置としてマイクロフォン41、音声出力装置としてスピーカ42を備える)と、入力装置5と、ROM装置6と、車速センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Global Positioning System)受信装置9と、FM多重放送受信装置10と、ビーコン受信装置11と、を備えている。
【0012】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば各種センサ7,8やGPS受信装置9、FM多重放送受信装置10等から出力される情報を基にして現在位置を検出する。また、得られた現在位置情報に基づいて、表示に必要な地図データを記憶装置3あるいはROM装置6から読み出す。
【0013】
また、演算処理部1は、読み出した地図データをグラフィックス展開し、そこに現在位置を示すカーマークを重ねてディスプレイ2へ表示する。また、記憶装置3あるいはROM装置6に記憶されている地図データ等を用いて、ユーザから指示された出発地(現在地)と目的地とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索する。また、スピーカ42やディスプレイ2を用いてユーザを誘導する。
【0014】
ナビゲーション装置100の演算処理部1は、各デバイス間をバス25で接続した構成である。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、記憶装置3から読み出した地図データ、演算データなどを格納するRAM(Random Access Memory)22と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)23と、各種ハードウェアを演算処理部1と接続するためのI/F(インターフェイス)24と、を有する。
【0015】
ディスプレイ2は、演算処理部1等で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。ディスプレイ2は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどで構成される。
【0016】
記憶装置3は、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性メモリカードといった、少なくとも読み書きが可能な記憶媒体で構成される。
【0017】
この記憶媒体には、少なくとも、通常の経路探索装置に必要な地図データ(地図上の道路を構成するリンクのリンクデータを含む)であるリンクテーブル200と、表示範囲特定テーブル250と、自車位置情報テーブル300と、が記憶されている。
【0018】
図2は、リンクテーブル200の構成を示す図である。リンクテーブル200は、地図上の区画された領域であるメッシュの識別コード(メッシュID)201ごとに、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータ202を含んでいる。
【0019】
リンクデータ202は、リンクの識別子であるリンクID211ごとに、リンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の座標情報222、リンクを含む道路の種別を示す道路種別223、リンクの長さを示すリンク長224、予め記憶されたリンク旅行時間225、当該リンクの開始ノードに接続するリンクである開始接続リンクと、当該リンクの終了ノードに接続するリンクである終了接続リンクと、を特定する開始接続リンク、終了接続リンク226、リンクを含む道路の通称(例えば、「環八通り」等)を示す通称227、などを含んでいる。
【0020】
なお、ここでは、リンクを構成する2つのノードについて開始ノードと終了ノードとを区別することで、同じ道路の上り方向と下り方向とを、それぞれ別のリンクとして管理するようにしている。
【0021】
図3は、表示範囲特定テーブル250の構成を示す図である。表示範囲特定テーブル250は、ディスプレイ2に表示する地図の範囲を特定する情報を格納するテーブルである。
【0022】
表示範囲特定テーブル250は、表示中心座標251と、表示左右オフセット252と、表示上下オフセット253と、を含んでいる。
【0023】
表示中心座標251には、表示する地図の範囲の中心点を特定する緯度経度等の座標情報が格納される。
【0024】
表示左右オフセット252には、自車の現在位置の表示位置を基準として表示中心座標251の画面上における位置を指定するオフセット量のうち、画面左右方向(X軸方向)のオフセット量を特定する情報が格納される。
【0025】
表示上下オフセット253には、自車の現在位置の表示位置を基準として表示中心座標251の画面上における位置を指定するオフセット量のうち、画面上下方向(Y軸方向)のオフセット量を特定する情報が格納される。
【0026】
図4は、自車位置情報テーブル300の構成を示す図である。自車位置情報テーブル300は、自車の現在位置と、ディスプレイ2に表示する自車位置と、を対応付ける情報を格納するテーブルである。
【0027】
自車位置情報テーブル300は、現在位置301と、表示左右オフセット302と、表示上下オフセット303と、表示位置304と、を含んでいる。
【0028】
現在位置301には、自車の現在位置を特定する緯度経度等の座標情報が格納される。
【0029】
表示左右オフセット302には、自車の表示位置304を求めるために用いる表示中心からの画面上における画面左右方向(X方向)のオフセット量を特定する情報が格納される。
【0030】
表示上下オフセット303には、自車の表示位置304を求めるために用いる表示中心からの画面上における画面上下方向(Y方向)のオフセット量を特定する情報が格納される。
【0031】
表示位置304には、ディスプレイ2に自車位置を示すカーマーク等を表示する位置を特定するディスプレイ2上のXY座標の情報が格納される。
【0032】
図1に戻って説明する。音声入出力装置4は、音声入力装置としてマイクロフォン41と、音声出力装置としてスピーカ42と、を備える。マイクロフォン41は、使用者やその他の搭乗者が発した声などのナビゲーション装置100の外部の音声を取得する。
【0033】
スピーカ42は、演算処理部1で生成された使用者へのメッセージを音声信号として出力する。マイクロフォン41とスピーカ42は、車両の所定の部位に、別個に配されている。ただし、一体の筐体に収納されていても良い。ナビゲーション装置100は、マイクロフォン41及びスピーカ42を、それぞれ複数備えることができる。
【0034】
入力装置5は、使用者からの指示を使用者による操作を介して受け付ける装置である。入力装置5は、タッチパネル51と、ダイヤルスイッチ52と、その他のハードスイッチ(図示しない)であるスクロールキー、縮尺変更キーなどで構成される。
【0035】
タッチパネル51は、ディスプレイ2の表示面側に搭載され、表示画面を透視可能である。タッチパネル51は、ディスプレイ2に表示された画像のXY座標と対応したタッチ位置を特定し、タッチ位置を座標に変換して出力する。タッチパネル51は、感圧式または静電式の入力検出素子などにより構成される。
【0036】
ダイヤルスイッチ52は、時計回り及び反時計回りに回転可能に構成され、所定の角度の回転ごとにパルス信号を発生し、演算処理部1に出力する。演算処理部1では、パルス信号の数から、回転角度を求める。
【0037】
ROM装置6は、CD-ROMやDVD-ROM等のROM(Read Only Memory)や、IC(Integrated Circuit)カードといった、少なくとも読み取りが可能な記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、例えば、動画データや、音声データなどが記憶されている。
【0038】
車速センサ7,ジャイロセンサ8およびGPS受信装置9は、ナビゲーション装置100で現在地(自車位置)を検出するために使用されるものである。
【0039】
車速センサ7は、車速を算出するのに用いる値を出力するセンサである。
【0040】
ジャイロセンサ8は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体の回転による角速度を検出するものである。
【0041】
GPS受信装置9は、GPS衛星からの信号を受信し移動体とGPS衛星間の距離と距離の変化率とを3個以上の衛星に対して測定することで移動体の現在位置、進行速度および進行方位を測定するものである。
【0042】
FM多重放送受信装置10は、FM多重放送局から送られてくるFM多重放送信号を受信する。FM多重放送には、VICS(Vehicle Information Communication System:登録商標)情報の概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、駐車場情報、天気情報などやFM多重一般情報としてラジオ局が提供する文字情報などがある。
【0043】
ビーコン受信装置11は、VICS情報などの概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、駐車場情報、天気情報や緊急警報などを受信する。例えば、光により通信する光ビーコン、電波により通信する電波ビーコン等の受信装置である。
【0044】
図5は、演算処理部1の機能ブロック図である。
【0045】
図示するように、演算処理部1は、主制御部101と、入力受付部102と、出力処理部103と、現在位置算出部104と、表示範囲設定部105と、表示不適範囲特定部106と、表示オフセット特定部107と、自車表示オフセット特定部108と、地図描画部109と、を有する。
【0046】
主制御部101は、様々な処理を行う中心的な機能部であり、処理内容に応じて、他の処理部を制御する。また、随時、走行した日付および時刻と、位置と、を対応付けて、リンクごとに走行履歴を記憶装置3に記憶する。さらに、各処理部からの要求に応じて、現在時刻を出力する。
【0047】
入力受付部102は、入力装置5またはマイクロフォン41を介して入力された使用者からの指示を受け付け、その要求内容に対応する処理を実行するように演算処理部1の各部を制御する。例えば、使用者が推奨経路の探索を要求したときは、目的地を設定するため、地図をディスプレイ2に表示する処理を出力処理部103に要求する。
【0048】
出力処理部103は、表示させる画面情報を受け取り、ディスプレイ2に描画するための信号に変換してディスプレイ2に対して描画する指示を行う。
【0049】
現在位置算出部104は、GPS受信装置9等の情報に基づき、現在位置を特定する。例えば、GPS受信装置9から得られた緯度経度の情報に基づいて、座標記憶装置3あるいはROM装置6に記憶されている地図データ等を用いてマップマッチング処理を行い、現在自車が位置している可能性が高い位置を緯度経度等の座標で特定する。
【0050】
表示範囲設定部105は、所定の位置、例えば現在位置算出部104にて特定した座標を中心として、縮尺に応じた所定の範囲の地図情報をディスプレイ2に表示する範囲として設定する。
【0051】
表示不適範囲特定部106は、表示範囲設定部105が設定した表示範囲に含まれる、表示に不適切な範囲を特定する。例えば、表示に不適切な範囲とは、海、河川、湖沼、山岳、森林等の進入できない範囲である。または、道路が存在しない領域や、車両の通行が著しく困難な細街路等の範囲であってもよいし、使用者が表示に不適切な範囲であるとして指定した範囲であってもよい。
【0052】
表示オフセット特定部107は、表示不適範囲特定部106により特定された範囲を表示しないために、表示領域を移動させる移動量である表示オフセットを算出して特定する。
【0053】
自車表示オフセット特定部108は、移動された表示領域に対応して自車の位置であるカーマークを適切に表示できるように、自車位置を表示するべき画面上の位置、すなわちXY座標を特定するために必要なオフセット情報を特定する。
【0054】
地図描画部109は、移動された表示領域に応じた地図情報に、自車位置を示すカーマークを重畳させて表示する画像を構成する。
【0055】
なお、上記した演算処理部1の各機能部、すなわち主制御部101、入力受付部102、出力処理部103、現在位置算出部104、表示範囲設定部105、表示不適範囲特定部106、表示オフセット特定部107、自車表示オフセット特定部108、地図描画部109は、CPU21が所定のプログラムを読み込み実行することにより構築される。そのため、RAM22には、各機能部の処理を実現するためのプログラムが記憶されている。
【0056】
なお、上記した各構成要素は、ナビゲーション装置100の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。そのため、構成要素の分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。ナビゲーション装置100の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0057】
また、各機能部は、ハードウェア(ASIC、GPUなど)により構築されてもよい。また、各機能部の処理が一つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0058】
[動作の説明]
次に、ナビゲーション装置100の動作について説明する。
【0059】
図6は、ナビゲーション装置100が、自車位置を表示する自車位置表示処理のフロー図である。なお、フロー図の右側に、処理のイメージを示している。このフローは、ナビゲーション装置100が起動されると、所定の間隔で開始される。
【0060】
まず、ナビゲーション装置100は、現在位置Cpを算出する(ステップS001)。具体的には、現在位置算出部104は、ナビゲーション装置100が搭載された車両の現在位置Cpを特定する緯度経度等の座標を算出する。そして、現在位置算出部104は、自車位置情報テーブル300の現在位置301に当該現在位置Cpの座標を格納する。
【0061】
次に、ナビゲーション装置100は、現在位置Cpを表示中心として、表示範囲Daを設定する(ステップS002)。具体的には、表示範囲設定部105は、ステップS001にて算出した現在位置Cpを表示範囲特定テーブル250の表示中心座標251として設定する。また、図示しない表示縮尺情報を用いて、表示中心座標251をディスプレイ2の画面の中心に据えた表示範囲Daを特定する。
【0062】
次に、ナビゲーション装置100は、表示範囲Da内の表示不適範囲Naを特定する(ステップS003)。具体的には、表示不適範囲特定部106は、ステップS002にて特定した表示範囲Daに含まれる領域のうち、表示に不適な領域を特定し、さらに表示に不適な領域から、画面から除外して表示すべき表示不適範囲Naを特定する。
【0063】
表示不適範囲Naは、表示範囲Daに含まれる表示に不適な領域、例えば海域等のうちの一部または全部として特定される。表示不適範囲Naは、表示に不適な領域のうち、画面の所定の範囲を占める範囲であって、かつ、表示中心からみて当該表示に不適な領域の先に表示すべき情報がない範囲、をいう。なお、表示不適範囲特定部106は、表示不適範囲Naを、ディスプレイ2の画面の左右端、上下端のそれぞれから所定の幅を備えた帯状の範囲として設定する。
【0064】
なお、表示不適範囲特定部106は、表示不適範囲Naが表示画面に占める面積の割合が、所定の閾値(例えば30%)未満であれば、表示不適範囲Naとしての特定を解除するようにしてもよい。
【0065】
次に、ナビゲーション装置100は、表示左右オフセットを特定する(ステップS004)。具体的には、表示オフセット特定部107は、ステップS002にて設定した表示範囲Daから表示不適範囲Naを除いた範囲の中央の点を特定し、特定した中央の点が表示中心となるように表示範囲Daの位置を移動させる。その際、表示オフセット特定部107は、移動させる表示範囲Daの画面上の移動量を算出する。
【0066】
そして、表示オフセット特定部107は、当該移動量のうち左右方向(X軸方向)への移動量を表示左右オフセットとして特定する。そして、表示オフセット特定部107は、表示範囲特定テーブル250の表示左右オフセット252に、特定した移動量を格納する。
【0067】
なお、表示範囲Daから表示不適範囲Naを除いた範囲の中央の点は、例えば、当該範囲の左右端の中央の線と、当該範囲の上下端の中央の線と、が交差する点として求められる。詳細な仕組みは、後述する。もちろん、これに限らず、例えば、当該範囲の重心となる点を求め、中央の点としてもよい。
【0068】
次に、ナビゲーション装置100は、表示上下オフセットを特定する(ステップS005)。具体的には、表示オフセット特定部107は、ステップS004にて特定した表示範囲Daの移動量のうち、上下方向(Y軸方向)への移動量を表示上下オフセットとして特定する。そして、表示オフセット特定部107は、表示範囲特定テーブル250の表示上下オフセット253に、特定した移動量を格納する。
【0069】
次に、ナビゲーション装置100は、表示中心を再設定する(ステップS006)。具体的には、まず、表示範囲設定部105は、ステップS002にて設定した表示範囲Daの表示中心座標251を、画面中心のXY座標と対応付ける。そして、表示範囲設定部105は、画面中心のXY座標から、表示左右オフセット252の移動量に応じて左右に移動させ、表示上下オフセット253の移動量に応じてさらにそこから上下に移動させた位置に対応する緯度経度を、新たな表示中心座標251として設定する。
【0070】
次に、ナビゲーション装置100は、自車位置の表示オフセットを特定する(ステップS007)。具体的には、自車表示オフセット特定部108は、ステップS006で表示中心を移動させた方向と逆の方向に、同じ移動量で自車の表示位置を移動させるための表示オフセット量を特定する。
【0071】
そして、自車表示オフセット特定部108は、自車位置情報テーブル300の表示左右オフセット302に当該移動量のうち左右方向(X軸方向)への移動量を格納し、表示上下オフセット303に当該移動量のうち上下方向(Y軸方向)への移動量を格納する。例えば、自車表示オフセット特定部108は、自車位置の左右方向への移動量と、上下方向への移動量とを、表示範囲特定テーブル250の表示左右オフセット252と表示上下オフセット253のそれぞれの符号を反転させて求める。
【0072】
次に、ナビゲーション装置100は、自車位置の表示位置を特定する(ステップS008)。具体的には、地図描画部109は、現在位置情報テーブル300の現在位置301に対応する画面上の位置をXY座標値として特定し、当該XY座標値に対して表示左右オフセット302と表示上下オフセット303の値を適用して、表示位置304として格納する。
【0073】
次に、ナビゲーション装置100は、表示中心を中心として地図を描画する(ステップS009)。具体的には、地図描画部109は、表示範囲特定テーブル250の表示中心座標251に対応する地図の表示範囲を、表示範囲設定部105を介して特定する。そして、地図描画部109は、当該表示範囲に含まれる地理的情報(道路、施設、地形等)を表す地図画像を出力処理部103に表示させる。
【0074】
次に、ナビゲーション装置100は、自車位置の表示位置に自車を現すカーマークを描画する(ステップS010)。具体的には、地図描画部109は、自車位置情報テーブル300の表示位置304により特定される画面上の位置に、自車位置を示すカーマークを、出力処理部103に表示させる。そして、自車位置表示処理を終了する。
【0075】
以上が、自車位置表示処理の処理内容である。
【0076】
上記の自車位置表示処理を行う事によって、ナビゲーション装置100は、表示に不適切な地理的領域が画面上に表示される可能性がある場合に、当該領域の表示を避けるように表示範囲をずらして表示させることが可能となる。
【0077】
次に、自車位置表示処理により表示される画面の例、とくに左右方向(X軸方向)に表示範囲をシフトさせる場合の画面の例を、図7(a)および図7(b)を用いて説明する。
【0078】
図7(a)は、通常の地図表示画面400の例を示す図である。なお、地図表示画面400上の任意の点は、原点を左上端に設定し、右方向にX軸、下方向にY軸を設定して、XY座標により特定されるものとする。
【0079】
地図表示画面400には、自車位置を示すカーマーク401と、陸地表示領域410と、陸地と海域との境界を示す海岸線411と、海域表示領域420と、が示されている。
【0080】
ここで、カーマーク401は、地図表示画面400の中心の点である表示中心402から所定量画面下方向(Y軸方向)にずらした位置に表示される(フロントワイド表示)。このように、カーマーク401の表示位置は、「フロントワイド」等のビューの設定に応じてさまざまに調整される。本実施例においては、このフロントワイド表示を行う場合を例にとって説明するが、これに限られず、鳥瞰図表示などの場合でも適用可能である。
【0081】
一方、図7(b)は、本実施形態の自車位置表示処理のステップS010における調整地図表示画面450の例を示す図である。なお、調整地図表示画面450上の任意の点は、原点を左上端に設定し、右方向にX軸、下方向にY軸を設定して、XY座標により特定されるものとする。
【0082】
調整地図表示画面450は、図7(a)に示した地図表示画面400よりも、左側に表示領域が移動されて表示された画面である。地図表示画面400には、その右端に、左右幅451Lの表示不適領域451が設定されており、その表示不適領域451の表示を避けるために、ステップS006により、画面の中心が表示中心452へと移動されている。
【0083】
その結果、調整地図表示画面450は、地図表示画面400から、移動量451Lだけ左に移動されて表示される。
【0084】
調整地図表示画面450は、そのため、図7(a)では表示範囲に含まれなかった渋滞情報453を表示することが可能となっている。なお、図7(b)の調整地図表示画面450においては、自車位置を示すカーマーク401は、表示不適領域451の左右幅451Lに相当する量だけ、調整地図表示画面450の表示中心452よりも右側に移動された状態で表示される。
【0085】
自車位置表示処理のステップS007にて自車位置表示位置のオフセットが求められており、ステップS010において当該自車位置表示位置のオフセットが適用されてカーマーク401が表示されるためである。このように、カーマーク401は、地図上の正しい位置に配置されてディスプレイ2に表示される。
【0086】
以上が、左右方向に表示範囲をシフトする場合の画面の例の説明である。
【0087】
次に、自車位置表示処理により表示される画面の例、とくに左右方向(X軸方向)および上下方向(Y軸方向)の両方に表示範囲をシフトされる場合の画面の例を、図8(a)および図8(b)を用いて説明する。
【0088】
図8(a)は、通常の地図表示画面500の例を示す図である。なお、地図表示画面500上の任意の点は、原点を左上端に設定し、右方向にX軸、下方向にY軸を設定して、XY座標により特定されるものとする。
【0089】
地図表示画面500には、自車位置を示すカーマーク501と、陸地領域510と、陸地と海域との境界を示す海岸線511と、海域表示領域520と、が示されている。ここで、カーマーク501は、地図表示画面500の中心の点である表示中心502から所定量画面下方向(Y軸方向)にずらした位置に表示される(フロントワイド表示)。このように、カーマーク501の表示位置は、「フロントワイド」等のビューの設定に応じてさまざまに調整される。本実施例においては、このフロントワイド表示を行う場合を例にとって説明するが、これに限られず、鳥瞰図表示などの場合でも適用可能である。
【0090】
一方、図8(b)は、本実施形態の自車位置表示処理のステップS010における調整地図表示画面550の例を示す図である。なお、調整地図表示画面550上の任意の点は、原点を左上端に設定し、右方向にX軸、下方向にY軸を設定して、XY座標により特定されるものとする。
【0091】
調整地図表示画面550は、図8(a)に示した地図表示画面500よりも、左側および下側に表示領域が移動されて表示された画面である。地図表示画面500には、その右端および上端に、左右幅551L、上下幅551Dの表示不適領域551が設定されているため、その表示不適領域551の表示を避けるために、ステップS006により、画面の中心が表示中心552へと移動されている。
【0092】
その結果、調整地図表示画面550は、地図表示画面500から、移動量551Lだけ左に移動され、かつ移動量551Dだけ下に移動されて表示される。
【0093】
なお、図8(b)の調整地図表示画面550においては、自車位置を示すカーマーク501は、表示不適領域551の左右幅551Lおよび上下幅551Dに相当する量だけ、調整地図表示画面550の表示中心552よりも右側および上側に移動された状態で表示される。
【0094】
自車位置表示処理のステップS007にて自車位置表示位置のオフセットが求められており、ステップS010において当該自車位置表示位置のオフセットが適用されてカーマーク501が表示されるためである。このように、カーマーク501は、地図上の正しい位置に配置されてディスプレイ2に表示される。
【0095】
以上が、左右方向に表示範囲をシフトする場合の画面の例の説明である。
【0096】
次に、図9に、自車位置表示処理のステップS004およびステップS005において表示左右オフセットと表示上下オフセットを求める仕組みについて、例を挙げて説明する。
【0097】
図9は、表示画面600を簡略化して示す図である。表示画面600では、原点を表示画面600の左上端に設定し、右方向にX軸、下方向にY軸を設定して画面上の点を特定するものとする。また、表示画面600の中心601は、ステップS002において、表示中心として設定されている。
【0098】
表示画面600の表示範囲の大きさは、表示画面幅であるW(600W)と、表示画面高さであるH(600H)とによって特定される。表示画面600には、その左端、右端および上端に、それぞれ左右幅R(602R)、L(602L)、上下幅D(602D)の表示不適領域602が設定されているものとする。
【0099】
ここで、表示オフセット特定部107は、ステップS004において、表示画面600から表示不適領域602を除外した領域を表示可能領域603として特定する。そして、表示オフセット特定部107は、特定した表示可能領域603の重心となる重心点604の画面上の位置を特定する。
【0100】
ここで、重心点604のY座標値は、表示画面600の下端のY座標から、(H−D)/2(610D)の距離だけY軸と平行に原点方向へ戻った位置のY座標値となる。すなわち、表示画面600の下端のY座標から、表示可能領域603の高さの半分(610Dまたは610U)だけY軸原点方向へ戻った位置のY座標値となる。
【0101】
また、重心点604のX座標値は、表示画面600の右端のX座標から、(W−L−(W−R−L)/2))の距離だけX軸と平行に原点方向へ戻った位置のX座標値となる。すなわち、表示画面600の右端のX座標から、Lと、表示可能領域603の幅の半分(611Rまたは611L)だけ、X軸原点方向へ戻った位置のX座標値となる。このようにして、重心点604のY座標値と、X座標値とが算出され、重心点604の画面上の位置が特定される。
【0102】
そして、表示オフセット特定部107は、ステップS004において、特定した重心点604と、中心601と、のX軸上の距離605を算出して、表示左右オフセットとして特定する。また、表示オフセット特定部107は、ステップS005において、特定した重心点604と、中心601と、のY軸上の距離606を算出して、表示上下オフセットとして特定する。
【0103】
以上が、表示左右オフセットと表示上下オフセットを求める仕組みである。このようにすることで、表示オフセット特定部107は、表示左右オフセットと、表示上下オフセットとを特定することができる。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0105】
本発明の一実施形態によると、ナビゲーション装置100は、表示する有用性のない領域である表示不適範囲を、自車位置を表示する処理において排除して表示することが可能となる。また、それにより表示不適範囲に相当する広さの他の領域を表示することができるようになり、例えばこれから向かう地域の渋滞情報等を表示させることができるようになる。また、そのような場合においても、自車位置を示すカーマークを矛盾なく画面上に表示することが可能となる。
【0106】
本発明は、上記実施形態に制限されない。上記実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態の表示不適範囲は、予め定められた領域を想定しているが、これに限られるものではない。
【0107】
すなわち、自車位置表示処理のステップS003において、表示不適範囲特定部106は、ステップS002において設定された表示範囲に、道路情報や施設情報が存在していない所定の面積を有する領域があれば、当該領域を表示不適範囲として設定するようにしてもよい。このようにすることで、山岳、河川、海域、湖沼などの進入不可能な地形に限らず、実際に通行することのない領域を無駄に表示することを避けることができる。
【0108】
また例えば、その場合、表示不適範囲を設定する処理において、推奨経路に含まれない細道路は道路情報として検知しないようにしてもよい。このようにすることで、さらに精度良く実際に通行することのない領域を特定できる。
【0109】
また、表示不適範囲を設定する処理において、自車が走行している道路と接続しない道路は道路情報として検知しないようにしてもよい。例えば、自車が走行している道路と並走する道路であって、推奨経路に含まれず、表示画面内で直接接続することのない道路を道路情報として検知しないようにする、等である。このようにすることで、実際に走行することのない領域をさらに精度良く特定できる。
【0110】
また、上記実施形態の自車位置表示処理において、表示不適範囲を使用者が指定できるようにしてもよい。例えば、ステップS003において、表示不適範囲特定部106は、表示不適範囲を追加する旨の指定を使用者から入力受付部102を介して受け付けると、当該範囲を表示不適範囲に加えるようにしてもよい。このようにすることで、より使用者の望む表示範囲を設定することが可能となる。
【0111】
なお、もちろん、上記の変形例を組み合わせて、表示不適範囲を設定する処理において、進入不可能な地形と、推奨経路に含まれない細道路と、自車が走行している道路に接続しない道路と、使用者が指定した範囲と、の全て、またはそのうちの任意の組み合わせを道路情報として検知しないようにしてもよい。
【0112】
以上が、変形の例である。
【0113】
なお、上記の実施形態では、本発明を車載ナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明は車載ナビゲーション装置に限らず、ナビゲーション装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1・・・演算処理部、2・・・ディスプレイ、3・・・記憶装置、4・・・音声出入力装置、5・・・入力装置、6・・・ROM装置、7・・・車速センサ、8・・・ジャイロセンサ、9・・・GPS受信装置、10・・・FM多重放送受信装置、11・・・ビーコン受信装置、21・・・CPU、22・・・RAM、23・・・ROM、24・・・I/F、25・・・バス、41・・・マイクロフォン、42・・・スピーカ、51・・・タッチパネル、52・・・ダイヤルスイッチ、100・・・ナビゲーション装置、101・・・主制御部、102・・・入力受付部、103・・・出力処理部、104・・・現在位置算出部、105・・・表示範囲特定部、106・・・表示不適範囲特定部、107・・・表示オフセット特定部、108・・・自車表示オフセット特定部、109・・・地図描画部、200・・・リンクテーブル、250・・・表示範囲特定テーブル、300・・・自車位置情報テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
前記地図情報から表示範囲を特定する表示範囲特定手段と、
前記地図情報から表示不適範囲を特定する表示不適範囲特定手段と、
前記表示範囲を、前記表示不適範囲が減少する方向に移動させた範囲に含まれる地図情報を表示する地図表示手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、さらに、
前記表示不適範囲を特定する情報を記憶する表示不適範囲記憶手段を備え、
前記表示不適範囲特定手段は、前記表示不適範囲記憶手段に記憶された前記表示不適範囲を特定する情報に基づいて前記表示不適範囲を特定する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のナビゲーション装置であって、
前記表示すべき情報が含まれない範囲は、所定の範囲内に道路情報を有しない範囲である、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置であって、
前記所定の範囲内に道路情報を有しない範囲を特定する処理においては、前記表示不適範囲特定手段は、細道路を前記道路情報として扱わない、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のナビゲーション装置であって、
前記所定の範囲内に道路情報を有しない範囲を特定する処理においては、前記表示不適範囲特定手段は、走行中の道路と直接接続しない並走道路を前記道路情報として扱わない、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置であって、
前記所定の範囲内に道路情報を有しない範囲を特定する処理においては、前記表示不適範囲特定手段は、進入不可能な領域を、前記道路情報を有しない範囲に含める、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項6に記載のナビゲーション装置であって、
前記進入不可能な領域は、少なくとも山岳、河川、海域、湖沼のいずれかを含む、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のナビゲーション装置であって、
前記表示不適範囲特定手段は、使用者から指定を受け付けた範囲を特定し、前記表示不適範囲とする、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のナビゲーション装置であって、
前記表示不適範囲特定手段は、前記表示範囲特定手段により特定された表示範囲から、表示すべき情報が含まれない範囲を特定し、前記表示不適範囲とする、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のナビゲーション装置であって、
前記地図表示手段は、前記表示範囲から前記表示不適範囲を除いて得られる範囲の重心を求め、当該重心が表示の中心となるよう前記表示範囲を移動させて前記地図情報を表示する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項11】
ナビゲーション装置の表示方法であって、
前記ナビゲーション装置は、
地図情報を記憶する地図情報記憶手段を備え、
前記地図情報から表示範囲を特定する表示範囲特定ステップと、
前記地図情報から表示不適範囲を特定する表示不適範囲特定ステップと、
前記表示範囲を、前記表示不適範囲が減少する方向に移動させた範囲に含まれる地図情報を表示する地図表示ステップと、を実施する、
ことを特徴とする表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−106824(P2011−106824A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258920(P2009−258920)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】