説明

ナビゲーション装置

【課題】案内音声の出力に関連した基準地点に対して、案内音声の出力が適切なタイミングで完了するナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】本発明のナビゲーション装置は車両の位置を特定する位置特定手段9と、車の速度を計測する速度計測手段13と、目的地に至る誘導経路上にある案内地点Nに関した案内音声を出力する音声出力手段15,17と、案内地点から誘導経路に沿って所定の基準距離だけ戻った基準地点を基準として案内音声の出力を制御する制御手段1とを備えている。制御手段1は、案内地点から誘導経路に沿って発話開始距離だけ戻った発話開始地点に車両が至ると、音声出力手段15,17に案内音声を出力させ、発話開始距離は、基準距離よりも大きく、案内音声の長さである発話時間が長くなるにつれて大きくなり、基準地点に対して速度計測地点にて計測された車両の速度が速くなるにつれて大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行に関する各種情報を通知する案内音声を発して、誘導経路に沿って車両の走行を誘導するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるナビゲーション装置は、車両の現在位置の周囲の地図を誘導経路と共に示すと共に、交差点や分岐点などの案内地点に車両が近づくと、案内地点における車両の進行方向や案内地点までの走行距離などを通知する案内音声を出力することで、誘導経路に沿って車両の走行を誘導する。
【0003】
音声による案内が有効に機能するためには、適切なタイミングで案内音声を出力することが求められる。例えば、特開2001−241962号公報には、車両の速度に応じて、案内音声の出力タイミングの基準となる基準地点間の間隔を変更するナビゲーション装置が開示されている。このナビゲーション装置では、車両の速度が速いと、基準地点間の間隔が大きくされることで、ドライバの感覚と音声案内の出力タイミングとを合わせる工夫がなされている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−241962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2001−241962号公報に開示されたナビゲーション装置を含む一般的なナビゲーション装置では、案内地点に対して所定の基準距離だけ手前に位置する基準地点に車両が到達したと認められると、その案内地点に関する案内音声が出力される。案内音声が伝える内容には、基準距離が含まれる場合が多く、例えば、左折をすべき交差点に対して400m前にある基準地点に車両が達すると、「400m先、左方向です」なる案内音声が出力される。
【0006】
ナビゲーション装置では、このような案内音声は、設定された基準地点に対して(つまり、基準地点を車両が通過する時点に対して)適切なタイミングで出力されるのが好ましい。特に、基準地点と案内地点の間の距離、つまり基準距離を音声で通知する場合には、案内音声の出力が完了した時点において、基準地点に対してできるだけ正確な地点を車両が走行していることが好ましい。上述の例を取り上げると、左折をすべき交差点に対して400m前にある基準地点になるべく近い地点を車両を通過する時点にて、「400m先、左方向です」なる案内音声の出力が完了するのが好ましい。
【0007】
しかしながら、従来のナビゲーション装置では、案内音声の出力が完了する車両の位置は、基準地点を通過する際の車両の速度に応じて、基準地点に対して変化する。仮に、基準地点を車両が通過した時点から案内音声の出力が開始されるとして、車両が基準地点を時速20kmで通過する場合と、車両が基準地点を時速60kmで通過する場合とでは、(案内音声が同じであるとすると)案内音声の出力が完了した時点において、後者における基準地点と車両の位置との間の距離は、前者における距離の3倍になる。
【0008】
さらに、従来のナビゲーション装置では、案内音声の出力が完了する車両の位置は、案内音声の長さに応じて、基準地点に対して変化する。仮に、基準地点を車両が通過した時点から案内音声の出力が開始されるとして、案内音声の長さが3秒である場合と、9秒である場合とでは、(速度が同じであるとすると)案内音声の出力が完了した時点において、後者における基準地点と車両の位置との距離は、前者における距離の3倍になる。
【0009】
このように、従来のナビゲーション装置では、車両の速度と案内音声の長さとに応じて、案内音声の出力が完了する時点が、車両が基準地点を通過する時点に対して大きく変化する。このため、基準地点と案内地点の間の距離を音声で通知する場合に、案内音声の出力が完了した時点において、基準地点からかなりずれた地点に車両が位置する事態が起こってしまい、案内音声の内容と実際の距離とが合致しない不具合が起こり得る。また、車両の現在位置から案内地点までの走行距離をディスプレイに表示するナビゲーション装置では、案内音声の出力が完了した時点において、音声で案内した距離とディスプレイ表示された走行距離との間にずれが起こってしまう。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するものであって、案内音声の出力に関連して設定される基準地点又は基準距離に対して、案内音声の出力が適切なタイミングで完了するナビゲーション装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のナビゲーション装置は、車両の位置を特定する位置特定手段と、前記車両の速度を計測する速度計測手段と、目的地に至る誘導経路上にある案内地点に関する案内音声を出力する音声出力手段と、前記案内地点から前記誘導経路に沿って所定の基準距離だけ戻った基準地点を基準として前記案内音声の出力を制御する制御手段とを備えるナビゲーション装置において、前記制御手段は、前記基準地点に対して設定された前記誘導経路上の速度計測地点に前記車両が到達すると、発話開始距離を計算し、前記案内地点から前記誘導経路に沿って前記発話開始距離だけ戻った発話開始地点に前記車両が到達すると、前記音声出力手段に前記案内音声を出力させ、前記発話開始距離は、前記基準距離よりも大きく、前記案内音声の長さが長くなるにつれて大きくなり、前記速度計測地点における前記車両の速度が速くなるにつれて大きくなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のナビゲーション装置では、前記発話開始距離は、前記案内音声の長さと、前記速度計測地点における前記車両の速度との積に、前記基準距離を加えることを含む数学的関係を用いて決定される。前記発話開始距離は、所定の調整値と前記案内音声の長さの和と、前記速度計測地点における前記車両の速度との積に、前記基準距離を加えた値であるのが好ましい。前記基準地点が高速道路上にある場合の前記基準距離は、前記基準地点が高速道路以外の道路上にある場合の前記基準距離よりも大きいことが好ましい。
【0013】
また、本発明のナビゲーション装置では、前記制御手段は、前記速度計測地点における前記車両の速度が、所定の基準速度よりも大きい場合、前記速度計測地点にて前記音声出力手段に前記案内音声を出力させる。前記速度計測地点が高速道路上にある場合の前記基準速度は、前記速度計測地点が高速道路以外の道路上にある場合の前記基準速度よりも大きいことが好ましい。さらに、本発明のナビゲーション装置では、前記制御手段は、前記発話開始距離が、前記誘導経路に沿って前記速度計測地点から前記案内地点に至る距離以上である場合、前記速度計測地点にて前記音声出力手段に前記案内音声を出力させることが好ましい。
【0014】
本発明のナビゲーション装置は、車両の位置を特定する位置特定手段と、前記車両の速度を計測する速度計測手段と、出発地から目的地に至る誘導経路上の案内地点に関する1又は複数の案内音声を出力する音声出力手段と、前記車両の位置及び前記車両の速度に基づいて前記1又は複数の案内音声の出力を制御する制御手段とを備えるナビゲーション装置において、前記1又は複数の案内音声は、前記誘導経路上にて前記案内地点に対して前記出発地側にある1又は複数の基準地点と夫々関連付けられており、前記1又は複数の基準地点について、前記案内地点に対して前記出発地側に1又は複数の速度計測地点が夫々設定され、前記制御手段は、前記1又は複数の速度計測地点の各々に前記車両が到達すると、その速度計測地点で計測された前記車両の速度を用いて発話開始距離を計算し、前記誘導経路に沿って前記案内地点から前記発話開始距離だけ戻った発話開始地点に前記車両が到達すると、その速度計測地点に対応する基準地点に関連した案内音声を前記音声出力手段に出力させ、前記発話開始距離は、速度計測地点に対応する基準地点から前記誘導経路に沿って前記案内地点に至る基準距離よりも大きく、その基準地点に関連した案内音声が長くなるにつれて大きくなり、計測された前記車両の速度が速くなるにつれて大きくなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のナビゲーション装置では、前記発話開始地点が前記案内地点に最も近い発話開始地点である場合を除いて、前記発話開始地点では、前記発話開始距離の計算に用いられる前記車両の速度が計測された速度計測地点に対応する基準地点の基準距離の通知を含む案内音声が出力される。前記1又は複数の基準地点の各々の基準距離は、その基準地点が高速道路上にあるか否かに応じて異なっており、高速道路上にある場合におけるその基準地点の基準距離は、高速道路以外の道路上にある場合におけるその基準地点の基準距離よりも大きいことが好ましい。
【0016】
また、本発明のナビゲーション装置では、前記制御手段は、前記1又は複数の速度計測地点に含まれる速度計測地点で計測された前記車両の速度が所定の基準速度よりも大きい場合、その速度計測地点にて、その速度計測地点に対応する基準地点に関連した案内音声を前記音声出力手段に出力させる。前記1又は複数の速度計測地点の全てについて前記基準速度は同じではなく、前記案内地点に最も近い速度計測地点に関する前記基準速度が最小であることが好ましい。前記1又は複数の速度計測地点の各々について、前記基準速度は、その速度計測地点が高速道路上にあるか否かに応じて異なっており、その速度計測地点が高速道路上にある場合における前記基準速度は、その速度計測地点が高速道路以外の道路上にある場合における前記基準速度よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、誘導経路上にて基準地点の手前にある発話開始地点に車両が到達すると案内音声を出力し、発話開始地点から案内地点までの距離である発話開始距離は、案内音声の長さである発話時間が長くなるにつれて、速度計測地点に計測された車両の速度が速くなるにつれて大きくなるので、車両が基準地点を通過する時点から大きくずれることなく、案内音声の発話が終了する。基準地点から案内地点までの距離が案内音声で通知される場合には、案内音声が終了する時点と車両が基準地点を通過する時点との時間差が僅かとなるので、本発明はより効果的となる。さらに、本発明を採用することで、車両の現在位置から案内地点までの走行距離が表示されるナビゲーション装置では、案内音声が終了する時点にて、表示される走行距離と案内音声で通知される距離との差が僅かとなる。
【0018】
車両の速度が基準速度よりも大きいと、速度計測地点にて直ちに案内音声を出力することで、車両の速度が非常に大きい場合において、車両が基準位置を通過する時点に対して案内音声の発話が遅れる事態が抑制される。計算された発話開始距離に基づいて特定される。発話開始地点が速度計測地点に対して目的地側に位置していない場合に、速度計測地点にて案内音声を出力することで、基準地点を基準とした案内音声の出力が必ず実行される。基準地点が高速道路上にあるか否かに応じて異なる基準距離を用いることで、また、速度計測地点が高速道路上にあるか否かに応じて異なる基準速度を用いることで、車両の走行状況に適した制御が可能となる。
【0019】
本発明では、1つの案内地点に対して複数の案内音声が出力されてよく、この場合、複数の基準地点が設定されて、これら複数の基準地点に対して複数の案内音声が関連付けられ、1又は複数の基準地点について、1又は複数の速度計測地点が夫々設定される。制御手段は、各速度計測地点にて、その速度計測地点で計測された車両の速度を用いて発話開始距離を計算する。この発話開始距離は、その速度計測地点に対応する基準地点の基準距離よりも大きく、その基準地点に関連した案内音声が長くなるにつれて大きくなり、計測された前記車両の速度が速くなるにつれて大きくなるので、発話開始距離だけ案内地点から戻った発話開始地点にて案内音声が出力されると、基準距離だけ案内地点から戻った地点を車両が通過する時点から大きくずれることなく、案内音声の発話が終了する。基準距離が案内音声で通知される場合には、案内音声が終了する時点と、基準地点を車両が通過する時点との時間差が僅かとなるので、本発明はより効果的となる。案内地点に最も近い発話開始地点に関する基準速度が最小であるように基準速度を設定することで、案内地点付近における車両の減速を考慮した案内音声の出力タイミング制御が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例である車載用ナビゲーション装置のブロック図である。制御部(1)は、ナビゲーション装置の制御を統括的に行い、ナビゲーション装置の機能を実現するための各種処理や動作を実行する。制御部(1)は、例えばマイクロコンピュータであって、各種演算を行い、図2を参照して説明する誘導動作を記述したプログラムを含む各種プログラムを実行するCPU(3)と、CPU(3)で実行されるプログラムやCPU(3)で使用されるデータを一時的に格納するRAM(5)と、電源の投入時に実行されるブートプログラムなどを格納するROM(7)とを含んでいる。
【0021】
GPS受信部(9)は、例えばGPS用LSIを用いて構成されており、図示を省略したGPSアンテナを介して、GPS衛星からGPS信号を受信する受信回路や、受信したGPS信号を処理して位置演算に使用するデータを復調するロジック回路などを含んでいる。GPS受信部(9)にて復調されたデータは、制御部(1)に送られる。ジャイロセンサ(11)は、車両の方位を検知して、制御部(1)に方位データを送る。車速センサ(13)は、車両の速度を検知して、制御部(1)に速度データを送る。制御部(1)は、GPS受信部(9)で復調されたデータを用いて車両の現在位置を算出し、ジャイロセンサ(11)及び車速センサ(13)からのデータを用いて車両の方位及び速度を夫々特定する。なお、GPS受信部(9)のデータに加えて、ジャイロセンサ(11)及び車速センサ(13)からのデータが、車両の現在位置の算出に用いられてもよい。
【0022】
描画部(15)は、制御部(1)から送られたコマンドや描画用データに基づいて、表示部(17)に表示される画面に関する画像データを作成する。表示部(17)に表示される画面には、車両周囲の地図を含む案内画面、メニュー画面、各種設定画面や各種検索画面などがある。描画部(15)は、例えば、描画LSIを用いて構成されており、描画処理を実行するグラフィックスプロセッサと、描画処理により作成された画像データを格納するグラフィックスメモリと、グラフィックスメモリに格納されている画像データに基づいて表示部(17)に送る画像信号を生成するディスプレイコントローラとを含んでいる。表示部(17)には、例えば液晶表示装置が使用される。
【0023】
音声出力部(19)は、DAC(digital-analog converter)、ローパスフィルタやアンプなどを含む音声出力用LSIで構成されており、制御部(1)から送られたコマンドや音声データに基づいて、ナビゲーション装置が出力する案内音声に係る音声信号を生成する。音声出力部(19)で生成された音声信号は、スピーカー(21)で再生される。
【0024】
記録媒体(23)は、例えば、ハードディスク、メモリーカード、DVD又はCD−ROMなどであって、地図データ(25)と、車載用ナビゲーション装置の誘導動作やその他の動作の手順を記述したプログラム(27)とが格納されている(プログラム(27)は、制御部(1)のROM(7)又はその他の記憶手段に格納されてもよい)。さらに、記録媒体(23)には、案内音声を構成する音声要素に対応した多数の音声要素データ(29)も格納されている。音声要素データ(29)は、例えば、PCMデータであって、より具体的にはWAV形式のデータである。地図データ(25)、プログラム(27)及び音声要素データ(29)は、ドライブ部(31)を介して読み出されて、制御部(1)に送られる。
【0025】
地図データ(25)は、矩形の地理的領域を単位にして管理されており、必要に応じて制御部(1)によって部分的に読み出される。地図データ(25)は、単位領域の各々について、道路網を記述するノード及びリンクに関する道路データと、道路形状や地形等に関する形状データと、都道府県名や道路名などに関する文字記号データを含んでいる。道路データは、各ノードについて、緯度及び経度、三叉路や十字路等の属性、接続するリンクなどに関する情報を含んでおり、各リンクについて、高速道路や一般道などの道路種別、道路名称(例えば、国道1号線)、リンクの長さや方位などに関する情報を含んでいる。道路データは、経路探索や誘導経路の記述などに使用され、形状データ及び文字記号データは、地図の描画に使用される。
【0026】
操作部(33)は、電源キーなどのハードキーと、表示部(17)の表示領域上に設けられたタッチパネルと、それらを制御する制御用マイクロコンピュータなどで構成されている(何れの図示せず)。操作部(33)には、さらにリモートコントローラが含まれていてもよい。
【0027】
図2は、本実施例のナビゲーション装置が行う誘導動作を示すフローチャートである。この動作を記述したプログラム(27)は、記録媒体(23)から制御部(1)のRAM(5)に読み出されて、制御部(1)のCPU(3)によって実行される。制御部(1)は、まず、目的地を設定する処理を行う(S1)。例えば、メニュー画面を介して使用者の指示がなされると、目的地検索用の画面が表示部(17)に表示される。目的地検索用の画面に使用者が検索条件を入力すると、条件を満たす場所の検索が実行されて該当する場所が使用者に提示される。そして、使用者の指示又は選択がなされると、該当場所、又は該当場所から選択された場所が、目的地として設定される。記録媒体(23)に格納された地図データ(25)には、名称、住所や電話番号などを検索条件して場所を検索するためのデータベースも含まれており、制御部(1)は、当該データベースを参照して検索を行い、目的地として設定された場所に関する緯度及び経度や名称等の情報をRAM(5)に記憶する。
【0028】
目的地が設定された後、制御部(1)は経路探索を実行して、誘導経路が決定される(S3)。ステップS3では、制御部(1)は、GPS受信部(9)等のデータに基づいて車両の現在位置を算出し、算出された現在位置を出発地として設定された目的地に至る経路探索を実行する。制御部(1)は、記録媒体(23)の地図データ(25)の道路データを参照して経路探索を行い、誘導経路を構成するノード及びリンクに関する情報を誘導経路に関する情報としてRAM(5)に記憶する。経路探索は、例えばダイクストラ法を用いて行われ、現在位置に対応したノード(例えば現在位置に最も近いノード)から目的地に対応したノード(例えば、目的地に最も近いノード)に至る経路の中で、走行時間や走行距離などのコストが最小になるような経路が誘導経路として特定される。
【0029】
経路探索がなされて誘導経路が決定すると、制御部(1)は、記憶されている誘導経路情報から、案内音声を出力すべき案内地点の全てを抽出して、抽出された各案内地点における進行方向や案内地点の種別などの案内事項と共に記憶する(S5)。例えば、ステップS5では、制御部(1)は、誘導経路に含まれている各ノードについて、誘導経路に含まれる進入リンクに対して、誘導経路に含まれる脱出リンク以外の脱出可能性があるリンクが存在しているか否かを判断し、そのようなリンクが存在するノードについては、進入リンク、脱出リンク、及び脱出可能性のあるリンクの方位などに基づいて、脱出リンクを道なりとしてよいか否かを判定する。さらに、制御部(1)は、脱出リンクが道なりではないノードについて、進入リンク、脱出リンク、及び脱出可能性のあるリンクの方位などに基づいて車両の進行方向を特定し、そのノードの情報と共に案内地点として記憶する。車両の進行方向には、左、斜め左、右、斜め右、Uターン、直進などがある。また、高速道路上の分岐点に対応するノードであって、誘導経路に沿って分岐点にて直進すると高速道路から抜け出るようなノードは、車両の進行方向を直進として、案内地点として抽出される。さらに、ステップS5では、目的地や経由地に対応したノードや、フェリー乗り場などの特殊な地点に対応するノードについても、案内地点として抽出される。これら案内地点については、それら地点までの走行距離や到着を案内するような案内音声が、誘導動作にて出力される。
【0030】
例えば、図3に示すような誘導経路IがステップS3にて得られたとする。誘導経路Iは、出発地に対応するノードN1から目的地に対応するノードN12までのノードと、これらノードN1乃至N12の間にあるリンクL1乃至L11とを用いて記述されている。リンクL7とL8は、高速道路に対応しており、リンクL1乃至L4、リンクL10及びL11は、国道や市道などの一般道路に対応している。リンクL5、L6及びL9は、高速道路と一般道路との間の移行路に対応している。音声による案内が行われる案内地点に対応するノードは、右折をする交差点に対応したノードN2、左折をする交差点に対応したノードN3、右折をする交差点に対応したノードN4、左折をして高速道路への移行路に入る分岐点に対応したノードN5、左折をして高速道路から一般道路への移行路に入る分岐点に対応したノードN9、右折をする交差点に対応したノードN10、目的地に対応したノードN12であって、これらノードが、ステップS5にて案内地点として抽出される。
【0031】
ステップS5の後、制御部(1)は、抽出された各案内地点について、1又は複数の発話基準地点を設定する処理を行う(S7)。制御部(1)は、ステップS7で設定された発話基準地点の各々について速度計測地点を設定する処理を行い(S9)、その後、車両の走行に伴って音声案内を実行する(S11)。ステップS7乃至S11の詳細については後述する。図4は、案内地点Nに対して設定された発話基準地点(R1〜R3)と、それら発話基準地点の夫々に設定された速度計測地点(PV1〜PV3)を例示した説明図である。図4には、案内音声が出力される発話開始地点(PC1〜PC3)も示されている。
【0032】
まず、発話基準地点について説明する。本実施例では、1つの案内地点に対して案内音声が3回出力されることから、案内地点Nと案内地点Nに対して出発地側に位置する(1つ手前の)案内地点N'との間に、3つの発話基準地点が設定される。第1発話基準地点R1は、案内地点(又は案内地点に対応するノード)Nから、誘導経路Iに沿って第1発話基準距離だけ戻った地点として、第2発話基準地点R2は、案内地点Nから、誘導経路Iに沿って第2発話基準距離だけ戻った地点として、第3発話基準地点R3は、案内地点Nから、誘導経路Iに沿って第3発話基準距離だけ戻った地点として設定される。なお、第1発話基準距離<第2発話基準距離<第3発話基準距離、である。本実施例のナビゲーション装置は、これら第1乃至3発話基準地点R1〜R3を基準として案内音声の出力タイミングの制御を行う。
【0033】
第1乃至第3発話基準距離は、第1乃至3発話基準地点R1〜R3が高速道路上にあるか否かに応じて、言い換えると、案内地点N'から案内地点Nに至る誘導経路の区間が高速道路であるか否かに応じて異なっており、第1乃至3発話基準地点R1〜R3が高速道路上にある場合の第1乃至第3発話基準距離は、第1乃至3発話基準地点R1〜R3が高速道路上にない場合の第1乃至第3発話基準距離よりも大きい。本実施例では、第1乃至3発話基準地点R1〜R3が高速道路上にない場合、第1発話基準距離は50mに、第2発話基準距離は400mに、第3発話基準距離は1000mに設定される。また、本実施例では、第1乃至3発話基準地点R1〜R3が高速道路上にある場合、第1発話基準距離は120mに、第2発話基準距離は1000mに、第3発話基準距離は2000mに設定される。第1乃至第3発話基準距離のこれら設定値は、例えば制御部(1)のROM(7)に記憶される。
【0034】
本実施例ではこのように、隣接する案内地点の間に3つの発話基準地点が原則として設定されるが、隣接する案内地点の間の(誘導経路に沿った)距離が短い場合には、3つの発話基準地点の全てを設定できない事態が現実的に起こり得る。本実施例では、隣接する案内地点の間の距離が短い場合には、設定される発話基準地点の数を減少させ、隣接する案内地点の間における案内音声の発話回数も減らす構成を採用している。また、隣接する案内地点の間の距離が、第1発話基準距離と比較して短い場合には、第1発話基準地点R1すら設定することは不可能であるが、ナビゲーション装置の機能上、ある案内地点に対して、案内音声を少なくも1回発話することは必要とされる。図2のステップS7の発話基準地点設定処理は、これらの事項を踏まえたものである。
【0035】
図5は、ステップS7の発話基準地点設定処理の詳細を示すフローチャートである。当該処理では、誘導経路上の案内地点について、出発地から目的地に向けて、発話基準地点が順次設定される。制御部(1)は、発話基準地点を特定すべき案内地点と、その案内地点の手前にある案内地点との間の(誘導経路に沿った)距離Lを求めると共に、隣接するそれら案内地点間の道路種別を特定する(S21)。案内地点間の距離Lと道路種別とは、ステップS3で得られた誘導経路情報に含まれるリンクの長さや道路属性に基づいて決定される。 なお、最初の案内地点については、出発地とその案内地点の間の距離及び道路属性が特定される。
【0036】
ステップS21の後、制御部(1)は、案内地点間の距離Lが第3発話基準距離以下であるか否かを判定する(S23)。ステップS23では、ステップS21にて特定した道路種別に応じた第3発話基準距離が選択されて(道路種別が高速道路ならば2000m、高速道路以外ならば1000m)、距離Lと比較される。案内地点間の距離Lが第3発話基準距離を超える場合、制御部(1)は、対象である案内地点に対して、第1乃至第3発話基準地点を設定する処理を行う(S25)。設定された発話基準地点は、RAM(5)に記憶されている発話基準地点リストに加えられる。発話基準地点リストの詳細については後述する。
【0037】
ステップS23にて、案内地点間の距離Lが第3発話基準距離以下であると判定された場合、制御部(1)は、案内地点間の距離Lが第2発話基準距離以下である否かを判定する(S27)。案内地点間の距離Lが第2発話基準距離を超える場合、制御部(1)は、対象である案内地点に対して、第1乃至第2発話基準地点を設定する処理を行う(S29)。ステップS29にて、案内地点間の距離Lが第2発話基準距離以下であると判定された場合、制御部(1)は、案内地点間の距離Lが第1発話基準距離以下であるか否かを判定する(S31)。案内地点間の距離Lが第1発話基準距離を超える場合、制御部(1)は、対象である案内地点に対して、第1発話基準地点を設定する処理を行う(S33)。なお、ステップS27では、ステップS21にて特定した道路種別に応じた第2発話基準距離が選択されて(道路種別が高速道路ならば1000m、高速道路以外ならば400m)、距離Lと比較される。ステップS31では、ステップS21にて特定した道路種別に応じた第1発話基準距離が選択されて(道路種別が高速道路ならば120m、高速道路以外ならば50m)、距離Lと比較される。
【0038】
ステップS31にて、案内地点間の距離Lが第1発話基準距離以下であると判定された場合、制御部(1)は、対象である案内地点について近接発話基準地点を設定する処理を行う(S35)。ステップS35は、案内地点間の距離Lが非常に短い場合に、対象である案内地点について発話基準地点を形式的に設定する処理であって、本実施例では、その案内地点の手前の案内地点が近接発話基準地点として設定される。後述するように、近接発話基準地点は、発話開始地点としての特徴を有する。なお、手前の案内地点から誘導経路に沿って所定の距離(例えば、10〜30m)だけ進んだ地点が近接発話基準地点として設定されてもよい。ステップS25、S29、S33又はS35の後、制御部(1)は、ステップS5の結果に基づいて発話基準地点を設定すべき次の案内地点があるか否かを判定し(S37)、次の案内地点がある場合には、その案内地点についてステップS21及びそれ以降の処理を繰り返し行う。最後の案内地点(目的地)について発話基準地点が設定されると、次の案内地点がないとステップS37にて判定されて、ステップS7の発話基準地点設定処理は終了する。
【0039】
図3に例示した誘導経路Iの場合、案内地点として抽出された各ノードに関する発話基準地点が制御部(1)にて設定されて、ステップS7の結果として、例えば、図6に示すような発話基準地点リストが、制御部(1)にて記憶される。発話基準地点リストには、各発話基準地点のID番号と、対応する案内地点を基準とした位置と、案内内容の種別と、案内音声のタイプを示す番号とが含まれる。例えば、ID番号「R2−3」(単なる数値でもよいが、説明を考慮して、ノードN2の第3発話基準地点である旨がID番号にて表現されている。その他の発話基準地点についても同様)の発話基準地点については、「N2:1000」としてノードN2の1000m手前の地点である旨が記述されており、ノードN2は右折を行う交差点であることから、「右折交差点前1000m」として、発話基準地点が交差点の右折を1000m手前で案内する旨が特定されており、その旨を案内する案内音声の音声タイプとして「2」が指定されている。なお、ノードN3とノードN4との間の距離は、第1発話基準距離以下であることから、ノードN4に対応する近接発話基準地点(ID番号「R4−0」)としてノードN3が設定されている。
【0040】
制御部(1)は、各音声タイプの発話内容を規定した音声タイプテーブルを記憶している。上述したように、本実施例では、原則として、1つの案内地点に対して、第1乃至第3発話基準地点を基準として案内音声が3回出力される。これら3回の案内音声の内容は同一であってもよいが、第1乃至第3発話基準地点に応じて異なっているのが好ましい。本実施例では、第2及び第3発話基準地点に関連して出力される案内音声にて、第2及び第3発話基準距離が夫々通知される。第1発話基準地点に関連した案内音声は、車両が案内地点に近い状況下で出力されることから、第1発話基準距離の通知ではなく、車両がまもなく案内地点に到着する旨の通知が含まれるのが好ましい。本発明では、1つの案内地点に対して出力される案内音声の数、つまり、1つの案内地点に対して設定される発話基準地点の数は特に制限されず、案内地点に最も近い発話基準地点に関連する案内音声を除いて、発話基準距離の通知を含む案内音声が出力されるのが好ましい。
【0041】
図7に、音声タイプテーブルの一例を示す。例えば、音声タイプ「2」の案内音声の発話内容は、「1000m先」「右方向」「です」となっており、「1000m先」と、「右方向」と、「です」という3つの音声要素が組み合わされて構成される旨が示されている。案内音声を構成する種々の音声要素の音声要素データ(29)は、つまり、「2000m先」、「1000m先」、「右方向」、「左方向」や「です」といった音声要素の音声要素データ(29)は、上述したように記録媒体(23)に記憶されている。制御部(1)は、案内音声を出力する際に、音声タイプテーブルを参照して、必要とする音声要素データ(29)を記録媒体(23)から読み出し、これら音声要素データ(29)を合成して案内音声の音声データを作成し、RAM(5)に記憶する。なお、図7では、説明上、発話内容を「1000m先」、「右方向」や「です」などと表現しているが、実際には、発話内容は、これら音声要素の音声要素データ(29)のファイル名で特定されるであろう。
【0042】
本実施例のナビゲーション装置は、各案内地点を通過した後に車両が走行する道路について、その名称が道路データに含まれている場合には、案内音声にその道路の名称を含めて出力する。制御部(1)は、各案内地点について、通過後の道路に対応するリンクの情報に道路名称が含まれているか否かを判定し、含まれている場合には、その名称を、図6に例示した発話基準地点リストの種別に加える。図3に例示した誘導経路Iでは、リンクL3の道路名称が国道123号であり、リンクL10及びL11の道路名称が国道456号であって、それら名称は、図6の発話基準地点リストにおけるノードN3及びN10に対応する発話基準地点の種別に記載されている。
【0043】
例えば、図7の音声タイプテーブルにて、音声タイプ「52」の案内音声の発話内容は、「1000m先」「(道路名称)」「右方向」、「です」となっており、「1000m先」と、「(道路名称)」と、「右方向」と、「です」という3つの音声要素が組み合わされて構成される旨が示されている。ここで「(道路名称)」とは、案内地点を通過することで車両が走行する道路の名称であって、具体的なケースに応じて、道路の名称、本実施例では発話基準地点リストで指定された道路名称が入る。図6の発話基準地点リストでは、左折をして国道123号に入る案内地点のノードN3に対応した(第3)発話基準地点R3−3の音声タイプは「55」であって、図7の音声タイプテーブルでは、音声タイプ「55」の発話内容は、「1000m先」「(道路名称)」「左方向」「です」となっている。図6の発話基準地点リストの発話基準地点R3−3の種別には「国道123号」が含まれていることから、この「(道路名称)」は、「国道123号」となる。なお、図3に例示した誘導経路IのリンクL2やL4については、(固有の)道路名称が道路データに含まれていないことから、図6の発話基準地点リストでは、案内地点のノードN2やN4に関係する発話基準地点の案内音声の音声タイプは、「(道路名称)」を含まない「2」、「3」や「4」となっている。
【0044】
音声要素「(道路名称)」に相当する音声要素データは、記録媒体(23)には格納されていない。道路データに含まれる道路名称の数が多いことから、これらについて音声要素データを予め作成して記録媒体(23)に格納するのは記録容量の点で現実的でないことによる。音声タイプ「52」や「55」などの道路名称を含む案内音声については、制御部(1)は、発話基準地点リストに含まれる道路名称に基づいて、音声要素「(道路名称)」に相当する音声要素データを適宜作成して、記録媒体(23)に格納されているその他の音声要素データ(29)と合成することで、案内音声の音声データを作成する。
【0045】
図7の音声タイプテーブルには、本件発明の理解を容易にすることを目的として、案内音声の時間も併せて記されている。例えば、音声タイプ「1」の案内音声である「2000m先、右方向です」の長さ(発話開始から終了までの発話時間)は、3.6秒である。図6から理解されるように、案内音声の内容に応じて、発話時間は異なっており、さらに、音声タイプ「52」などの「(道路名称)」を含む案内音声の発話時間は、案内される道路名称に応じて変化する。
【0046】
本発明のナビゲーション装置の特徴は、従来のナビゲーション装置のように、発話基準地点に車両が到達したことを契機として、案内音声の出力(発話)を行うのではなく、発話基準地点に車両が到達する時点で、案内音声の出力が完了するように、案内音声の出力を制御することを特徴としている。この特徴を実現するために、本実施例のナビゲーション装置では、各発話基準地点に対して、速度計測地点及び発話開始地点が設定される。図4に示す例では、第1乃至第3発話基準地点R1〜R3に対して、第1乃至第3発話開始地点PC1〜PC3と、第1乃至第3速度計測地点PV1〜PV3とが夫々設定されている。速度計測地点は、車両の速度を計測する誘導経路上の地点であって、発話基準地点と同様に、案内地点と、速度計測地点から誘導経路に沿って案内地点に至る距離(速度計測距離)と、誘導経路情報とで特定され得る。発話開始地点は、案内音声の出力が開始される誘導経路上の地点であって、案内地点と、発話開始地点から誘導経路に沿って案内地点に至る距離(発話開始距離)と、誘導経路情報とで特定され得る。発話開始距離は、対応する発話開始地点にて計測された車両の速度と、出力される案内音声の長さとを用いて決定される。なお、近接発話基準地点に対しては、発話開始地点及び速度計測地点は設定されず、近接発話基準地点に車両が到達すると、案内音声の出力が開始される。
【0047】
本実施例では、各速度計測地点について、その速度計測地点と案内地点の間の速度計測距離は、以下の式(1)に基づいて決定される。
式(1):速度計測距離=発話基準距離+(平均音声発話時間+発話準備時間)×最大自車速度
【0048】
式(1)の発話基準距離は、速度計測地点に対応する発話基準地点の発話基準距離である。式(1)の平均音声発話時間は、各種案内音声の長さ(発話時間)の平均値に相当する値である。この平均音声発話時間の値は、本実施例のナビゲーション装置が出力し得る全ての案内音声を考慮した厳密な平均値である必要はなく、典型的な幾つかの案内音声について(道路名称については大まかな平均値を設定して)、求められた平均値であってよい。本実施例の場合、平均音声発話時間は、例えば5秒程度にされる。平均音声発話時間は、発話基準距離の種別に応じて変化してもよい。第1発話基準地点に関連して出力される案内音声の長さは、第2及び第3発話基準地点に関連して出力される案内音声の長さよりも通常短いことから、式(1)に第1発話基準距離が代入される場合の平均音声発話時間は、式(1)に第2又は第3発話基準距離が代入される場合の平均音声発話時間よりも短くされてもよい。
【0049】
式(1)の発話準備時間は、調整値であって、案内音声を出力する条件が満たされてからナビゲーション装置が案内音声の発話を開始するまでに要するシステム時間である(例えば、図10のステップS75にて発話開始地点に車両が到達したと判定されてからステップS77が実行されるまでの時間に相当する)。発話準備時間は、例えば0.1秒程度になる。発話準備時間は、通常微少な値なので式(1)から削除されてもよい。
【0050】
式(1)の最大自車速度は、後述するように速度計測地点にて計測された車両の速度と比較される車両の速度であって、案内音声の発話動作の基準値となる速度である。後に詳述する音声案内(図2のステップS9)では、車両が速度計測地点に達して車両の速度が計測されると、その速度が最大自車速度を超えているか否かが判定されて、超えている場合には、案内音声の発話が直ちに行われる(図10のステップS69及びS77)。ある速度計測地点における最大自車速度は、その速度計測地点が高速道路上にあるか否かに応じて異なっており、速度計測地点が高速道路上にある場合の基準速度は、速度計測地点が高速道路以外の道路上にある場合の基準速度よりも大きい。また、案内地点に近づくと車両が減速することを考慮して、第1速度計測地点の最大自車速度は、その他の速度計測地点について設定される最大自車速度よりも小さくされる。
【0051】
本実施例において、第1乃至第3速度計測地点の各々における最大自車速度の設定値は、高速道路の場合と高速道路以外の道路の場合とについて、例えば制御部(1)のROM(7)に記憶されている(ROM(7)には、上述したように、これらの場合について第1乃至第3発話基準距離の設定値も記憶されており、さらに、平均音声発話時間や発話準備時間の設定値も記憶されている)。また、式(1)に基づいて決定される第1乃至第3速度計測距離も、高速道路の場合と高速道路以外の道路の場合とについて予め計算されて、例えば制御部(1)のROM(7)に記憶されている。制御部(1)は、速度計測地点を設定する際に、その速度計測地点に対応する発話基準地点が高速道路上にあるか否かに基づいて(又は、発話基準地点が存在する隣接した案内地点間の区間が高速道路上にあるか否かに応じて)、その速度計測地点の種別に対応した適切な速度計測距離を選択して使用する。
【0052】
図4に示した例を取り上げると、第1乃至第3速度計測地点PV1〜PV3が高速道路上にない場合、例えば、第1速度計測地点PV1について、最大自車速度は時速60kmにされ、第2速度計測地点PV2及び第3速度計測地点PV3について、最大自車速度は時速80kmにされる。第1乃至第3速度計測地点PV1〜PV3が高速道路上にある場合、第1速度計測地点PV1について、最大自車速度は、時速100kmにされ、第2速度計測地点PV2及び第3速度計測地点PV3について、最大自車速度は時速200kmにされる。高速道路の場合と高速道路以外の道路の場合とについて、第1乃至第3速度計測距離は、これら最大自車速度と、第1乃至第3発話基準距離(高速以外では、50m、400m、1000m。高速では、120m、1000m、2000m)、平均音声発話時間(5秒)及び発話準備時間(0.1秒)を用いて式(1)から決定される。なお、本実施例において、第1乃至第3発話基準距離及び第1乃至第3速度計測距離は、(高速道路の場合と高速道路以外の道路の場合の双方において)第3速度計測距離>第3発話基準距離>第2速度計測距離>第2発話基準距離>第1速度計測距離>第1発話基準距離となるように定められる。
【0053】
このようにして、式(1)に基づいて決定された速度計測距離を用いて、誘導経路上の各発話基準地点に対して速度計測地点が設定されるが、本実施例では、隣接する案内地点間の距離Lよりも、速度計測距離の方が大きくなる事態が起こり得る。図8は、その状況を例示する説明図である。図8にて、発話基準位置Rは、手前の案内地点N'に最も近い発話基準地点であり、第1〜3発話基準地点の何れかであり得る(図5のステップS25、S29及びS33)。図5のステップS23、S27及びS31にて、距離Lは、発話基準位置Rに係る発話基準距離よりも長いことが保証されている。式(1)は発話基準距離を含むことから、発話基準位置Rに対応した速度計測地点を特定する速度計測距離は、発話基準位置Rに係る発話基準距離よりも長くなる。しかしながら、手前の案内地点N’が発話基準位置Rに近い位置にある場合には、図8に示すように、速度計測距離が、距離L以上になることがあり得る。
【0054】
本実施例では、発話基準地点に対して速度計測地点を設定する際に、その速度計測地点を設定する際に用いられる速度計測距離が、隣接する案内地点間の距離以上である場合、案内音声による案内を行う案内地点の手前にある案内地点から、誘導経路に沿って所定の距離だけ進んだ地点を速度計測地点として設定する。図8では、誘導経路Iに沿って、手前の案内地点N'から所定の距離(例えば、10〜30m)進んだ地点が速度計測地点PVとして設定されている。このように発話基準地点を設定することで、発話基準地点と、それに対応する速度基準地点が共に、同一の隣接案内地点区間に位置することが保証される。なお、手前の案内地点が速度計測地点として設定されてもよい(この場合、その速度計測地点は、対応する発話基準地点が属する隣接案内地点間の区間上にあるとして取り扱われる)。
【0055】
図9は、図2にステップS9として示す速度計測地点設定処理の詳細を示すフローチャートである。制御部(1)は、誘導経路上の各発話基準地点について、出発地から目的地に向かって、発話基準地点を順次設定する。但し、近接発話基準地点については、速度計測地点は設定されない。まず、制御部(1)は、発話基準地点リストに記載されている発話基準地点の1つについて、近接発話基準地点である否かを判定する(S41)。ステップS41では、例えば、図7の発話基準地点リストの位置又は種別に基づいて、判定がなされる。
【0056】
発話基準地点が近接発話基準地点でない場合、制御部(1)は、ステップS41の後、速度計測距離が、発話基準地点に対応する案内地点とその手前の案内地点との間の距離L以上であるか否かを判定する(S43)。発話基準地点が第1発話基準地点である場合には第1速度計測距離と、第2発話基準地点である場合には第2速度計測距離と、第3発話基準地点である場合には第3速度計測距離と、距離Lが比較される。また、発話基準地点が高速道路上にある場合、高速道路用の速度計測距離が用いられ、発話基準地点が高速道路上にない場合、高速道路以外の道路用の速度計測距離が用いられる。距離Lと、発話基準地点が高速道路上にあるか否かの判断とには、図5のステップS21の結果が用いられる。
【0057】
ステップS43にて、速度計測距離が距離L未満であると判定した場合、制御部(1)は、その速度計測距離に基づいて誘導経路上に速度計測地点を設定する(S45)。設定された速度計測地点の情報(ID番号や位置など)は、RAM(5)に記憶された速度計測地点リスト(図示せず)に加えられる。ステップS43にて、速度計測距離が距離L以上であると判定された場合、制御部(1)は、図8を参照して説明したように手前の案内地点から所定の距離だけ誘導経路に沿って進んだ地点を速度計測地点として設定する(S47)。
【0058】
ステップS41、S43又はS45の後、制御部(1)は、速度計測地点を設定すべき次の発話基準地点が存在するか否かを判定し、存在する場合には、その発話基準地点についてステップS41及びそれ以降の処理を行う(S49)。最後の発話基準地点について発話基準地点が設定された場合、次の発話基準地点がないとステップS49にて判定されて、速度計測地点設定処理は終了する。
【0059】
各発話基準地点について、発話開始距離は、その発話基準地点に対応する速度計測地点で計測された車両の速度(計測速度)を用いて以下の式(2)に基づいて計算される。
式(2):発話開始距離=発話基準距離+(音声発話時間+発話準備時間)×計測速度
【0060】
発話開始距離に基づいて、上述したように、案内音声の出力が開始される誘導経路上の地点である発話開始地点が特定される。式(2)の発話基準距離は、発話基準地点の発話基準距離であって、式(1)と同様に第1乃至第3発話基準距離の何れかであり、その発話基準地点が高速道路上にあるか否かに応じて値が異なる。発話準備時間も、式(1)と同様である。式(2)の音声発話時間は、発話開始地点で出力される(又は、対応する発話基準地点に関連した)案内音声の発話時間である。例えば、図3及び図6に示す第3発話基準地点R2−3に対応する第3発話開始地点については、式(2)の音声発話時間は3.5秒となり(図7の音声タイプ「2」)、第2発話基準地点R2−2に対応する第2発話開始地点については3秒となり(図7の音声タイプ「3」)、第1発話基準地点R2−1に対応する第3発話開始地点については2.5秒となる(図7の音声タイプ「4」)。
【0061】
図4に示した例において、第1発話開始地点PC1は、第1速度計測地点PV1にて計測された車両の速度を用いて、式(2)から算出された第1発話開始距離だけ、案内地点Nから誘導経路Iに沿って(出発地側に)戻った地点である。第2発話開始地点PC2は、第2速度計測地点PV2にて計測された車両の速度を用いて式(2)から算出された第2発話開始距離だけ、案内地点Nから戻った地点である。 第3発話開始地点PC3は、第3速度計測地点PV3にて計測された車両の速度を用いて式(2)から算出された第3発話開始距離だけ、案内地点Nから戻った地点である。なお、本実施例では、手前の案内地点側にある発話基準地点に関して得られた発話開始距離が、その発話基準地点に対応する速度計測地点から案内地点に至る距離以上であることが起こり得る。言い換えると、式(2)を用いて計算された発話開始距離で特定される発話開始地点が、速度計測地点に対して出発地側に(又は速度計測地点に)位置する事態が起こり得る。この場合、本実施例では、車両が速度計測地点に到達すると案内音声が発話される。
【0062】
図10は、図2に示すステップS11の音声案内の詳細を示すフローチャートであるナビゲーション装置は、ステップS7で作成した発話基準地点リストにおいて、発話基準地点は、図6に例示したように誘導経路に沿った通過順に並べられている。制御部(1)は、発話基準地点リストを参照して、誘導経路上にある案内地点に関する案内音声を、車両の走行に伴って、発話基準地点順に出力する。まず、制御部(1)は、ある発話基準地点に関連した案内音声の音声データを作成する(S61)。案内音声は、その発話基準地点に対応した発話開始地点で出力される(又はその発話基準地点に対応した速度計測地点で出力される)音声であるが、その発話基準地点が近接発話基準地点である場合には、近接発話基準地点にて出力される音声である。最初にステップS61が実行される場合には、出発地に最も近い発話基準地点に関連した案内音声の音声データが作成される。制御部(1)は、音声タイプテーブルを参照して、対象である発話基準地点の音声タイプに必要な音声要素データ(29)を記録媒体(23)から読み出して、それら音声要素データ(29)を合成する。音声タイプが道路名称を含む場合には、制御部(1)は、発話基準地点リストの種別の欄を参照して道路名称を特定し、その道路名称に係る音声要素データを作成すると共に、記録媒体(23)から読み出した音声要素データ(29)と合成する。
【0063】
ステップS61の後、制御部(1)は、対象である発話基準地点、つまり出力される案内音声に係る発話基準地点が近接発話基準地点であるか否かを判定する(S63)。ステップS63にて近接発話基準地点でないと判定された場合、制御部(1)は、ステップS61にて作成した案内音声の音声発話時間を特定する(S65)。制御部(1)は、例えば、RAM(5)に記憶されている案内音声の音声データのデータ量から、その案内音声の音声発話時間を計算する。音声要素データ(29)が、データの再生時間を記述可能なタグを含んでいる場合には、タグが参照されて、各音声要素の発話時間が特定されると共に足し合わされてもよい。図7の音声タイプテーブルに示すように、各音声タイプについて予め算出された音声発話時間が参照されてもよいが、道路名称を含む音声タイプについては、ステップS23にて、音声発話時間を算出する必要がある。この場合、図6の発話基準地点リストに示された道路名称からその道路名称の発話に要する時間が計算されて、案内音声に含まれるその他の音声要素に要する(予め求められた)時間に加えられてもよい。
【0064】
ステップS11の音声案内の間、制御部(1)は、GPS受信部(9)、ジャイロセンサ(11)及び車速センサ(13)から得られたデータに基づいて車両の現在位置を周期的に算出しており、ステップS65の後、制御部(1)は、対象である発話基準地点に対応した速度計測地点に車両が到達したか否かを判定する(S67)。ステップS67では、制御部(1)は、ステップS9で作成された速度計測地点リストから対応する速度計測地点を特定し、例えば、車両の位置位置が、特定された速度計測地点を含む所定の領域内に入ると、その速度計測地点に車両が到達したと判断する。または、車両の位置位置が、誘導経路上にてその速度計測地点を超えた位置にあると認められる場合に、速度計測地点に車両が到達したと判断する。
【0065】
ステップS67にて、速度計測地点に車両が到達したと判断されると、制御部(1)は、車速センサ(13)から得られたデータから車両の速度を記憶すると共に、最大自車速度以下であるか否かを判定する(S69)。上述したように、速度計測地点が高速道路にあるか否かと、速度計測地点の種別(第1乃至第3速度計測地点)とに応じて、最大自車速度は変化する。ステップS69では、車両が到達した速度計測地点の特徴に対応した最大自車速度と、計測された車両の速度とが比較される。上述した例では、速度計測地点が高速道路以外の道路上にある第1速度計測地点である場合、時速60kmの最大自車速度と車両の速度とが比較され、速度計測地点が高速道路上にある第3速度計測地点である場合、時速200kmの最大自車速度と車両の速度とが比較される。
【0066】
ステップS69にて、車両の速度が最大自車速度以下であると判定された場合、制御部(1)は、ステップS69で計測された車両の速度を用いて、対象である発話基準地点について、式(2)に従って発話開始距離を計算する(S71)。式(2)の発話基準距離には、対象である発話基準地点の発話基準距離が用いられる。ステップS71の後、制御部(1)は、ステップS71で計算した発話開始距離が、ステップS67にて車両が到達したと判定された速度計測地点と車両が次に通過する案内地点(ステップS61にて生成された案内音声データによる音声案内が行われる案内地点)との間の距離以上であるか否かを判定する(S73)。ステップS73では、ステップS71で計算した発話開始距離に加えて、ステップS3で得られた誘導経路情報、ステップS5で得られた案内地点抽出結果やステップS9で得られた速度計測地点リスト等を用いて判定がなされる。ステップS67にて車両が到達したと判定された速度計測地点が、図9のステップS45で設定された速度計測地点である場合には、計算された発話開始距離とその速度計測地点の速度計測距離とが比較される。その速度計測地点が、図9のステップS47で設定された速度計測地点である場合には、計算された発話開始距離と、(その速度計測地点が位置する)隣接する案内地点間の距離Lから所定の距離(10〜30m)を引いた値とが比較される。
【0067】
ステップS71で計算した発話開始距離が、ステップS67にて車両が到達したと判定された速度計測地点と車両が次に通過する案内地点との間の距離よりも短い場合、ステップS73の後、ステップS67と同様にして、制御部(1)は、ステップS71で計算された発話開始距離に基づいて特定される発話開始地点に車両が到達したか否かを判定する(S75)。制御部(1)は、ステップS71で計算した発話開始距離、ステップS3で得られた誘導経路情報やステップS5で得られた案内地点抽出結果等を用いて発話開始地点を特定し、ステップS75にて、発話開始地点に車両が到達したと判定すると、制御部(1)は、ステップS61で作成した音声データを音声出力部(19)に送ると共に、その出力を指示する(S77)。
【0068】
ステップS69にて、車両の速度が最大自車速度を超えていると判定された場合、ステップS77が直ちに実行される。本実施例のナビゲーション装置では、このような処理を行うことで、車両の速度が非常に速い場合において、案内音声の遅延が抑制されている。また、ステップS71で計算した発話開始距離が、ステップS67にて車両が到達したと判定された速度計測地点と車両が次に通過する案内地点との間の距離以上であると、ステップS73にて判定された場合にも、ステップS77が直ちに実行されて、速度計測地点にて案内音声が出力される。これによって、対象である発話基準地点に関連した案内音声の発話が確保される。
【0069】
ステップS63にて、対象である発話基準地点が近接発話基準地点であると判定された場合、制御部(1)は、ステップS67と同様にして、近接発話基準地点であるその発話基準地点に車両が到達したか否かを判定する(S79)。ステップS79にて、車両が到達したと判定された場合、ステップS77が直ちに実行される。これによって、隣接する案内地点間の距離が非常に短い状況下であっても、案内地点に対して音声案内が行われる。なお、ステップS79の後に行われるステップS77では、手前の案内地点(近接発話基準地点)から所定の距離(例えば、10〜30m)だけ車両が進んだ段階で、案内音声の出力がなされてもよい。
【0070】
ステップS77の後、制御部(1)は、発話基準地点リストに、ステップS77で出力した案内音声に関する発話基準地点に対して目的地側にある次の発話基準地点があるか否かを判定し(S81)、次の発話基準地点がある場合には、その発話基準地点について、ステップS61及びそれ以降のステップを再度実行する。全ての発話基準地点について案内音声の出力が行われた場合、つまり、目的地に最も近い発話基準地点について案内音声の出力が行われると、ステップS11の案内音声は終了する。
【0071】
上記実施例の音声案内動作では、例えば、図3及び図6に示す第2発話基準地点R2−2に関した案内音声の発話は、次のように行われる。式(1)を用いて第2速度計測距離、つまり第2発話基準地点R2−2に対応した第2速度計測地点は決定される。第2発話基準距離は400mであり、最大自車速度は時速80kmであることから平均音声発話時間を5秒とし、発話準備時間を0.1秒とすると、第2速度計測距離は、式(1)に基づいて、400+(5+0.1)×80×1000÷3600=513mとなる。つまり、図3に示すノードN2に相当する案内地点から誘導経路Iに沿って513mだけ戻った地点が、その案内地点に係る第2速度計測地点となる。
【0072】
車両が上述の第2速度計測地点に達すると、制御部(1)は、車速センサ(13)のデータから車両の速度を得る。制御部(1)は、得られた速度が最大自車速度である80kmを超えている場合、図7の音声タイプ「3」の案内音声「400m先、右方向です」の音声データを音声出力部(19)に送ると共に、案内音声をスピーカ(21)から出力するように音声出力部(19)に指示する。第2速度計測地点における車両の速度が、80km以下である場合、制御部(1)により、第2発話開始距離が計算されて、即ち第2発話開始地点が設定される。計測された車両の速度が、例えば、60kmであるとすると、音声タイプ「3」の発話時間は3秒であることから、第2発話開始距離は、式(2)に基づいて、400+(3+0.1)×60×1000÷3600=452mとなる。つまり、図3に示すノードN2に相当する案内地点から誘導経路Iに沿って452mだけ戻った地点が、その案内地点に係る第2発話開始地点となる。車両が第2発話開始地点に達すると、制御部(1)が音声出力部(19)に指示することにより、音声タイプ「3」の案内音声がスピーカ(21)から出力されて、その発話は3秒間継続される。車両の速度が変化することなく時速60kmであるならば、その3秒間の間に車両は、60×1000÷3600×3=50m移動する。従って、車両が、ノードN2に対応した案内地点の400m手前にある発話基準地点R2−2に達する時点にほぼ一致して、音声タイプ「3」の案内音声「400m先、右方向です」の発話が終了することになる。
【0073】
また、例えば、図6に示す第2発話基準地点R5−2に関した案内音声の発話は、次のように行われる。式(1)を用いて第2速度計測距離、つまり第2速度計測地点が決定されるが、第2速度計測距離は、先と同様に513mとなり、図3に示すノードN5に相当する案内地点から誘導経路Iに沿って513mだけ戻った地点がその案内地点に係る第2速度計測地点となる。第2速度計測地点で計測された車両の速度が、例えば、60kmであるとすると、音声タイプ「25」の発話時間は6秒であることから、第2発話開始距離は、式(2)に基づいて、400+(6+0.1)×60×1000÷3600=502mとなる。つまり、図3に示すノードN5に相当する案内地点から誘導経路Iに沿って502m手前の地点が、その案内地点に係る第2発話開始地点となる。車両が第2発話開始地点に達すると、音声タイプ「25」の案内音声が出力されて、その発話は6秒間継続される。車両の速度が変化することなく時速60kmであるならば、その6秒間の間に車両は、60×1000÷3600×6=100m移動する。従って、車両が、ノードN5に対応した案内地点の400m手前にある発話基準地点R5−2に達する時点にほぼ一致して、音声タイプ「25」の案内音声「400m先、左方向、高速道路入口です」の発話が終了することになる。
【0074】
本実施例のナビゲーション装置では、図10に詳細を示した案内音声動作と並行して、車両の現在位置周辺の地図を含む案内画面を表示部(17)に表示する動作も行われる。当該動作の詳細については、本発明とは直接的に関係しないので詳細な説明を省略するが、案内画面には、車両が次に通過する(誘導経路に沿って最も近い)案内画面までの走行距離がリアルタイムで表示部(17)に表示される。この走行距離表示は、例えばステップS75にて発話開始地点に到達したと判断される際に、ステップS71で計算された発話開始距離に近い値になる。本実施例のナビゲーション装置では、上述したように案内音声の出力が制御されることから、ステップS77が完了して案内音声の出力が終わる時点の近くにて、車両は発話基準地点を通過することになる。案内音声の出力が終わる時点の近くにて、ナビゲーション装置の走行距離表示が発話基準距離に近い値になることから、本実施例のナビゲーション装置では、案内音声による発話基準距離の通知が完了する時点と、発話基準距離が表示部(17)に表示される時点とがほぼ合致することになる。
【0075】
本発明のナビゲーション装置では、上述した式(2)以外の式を用いて発話開始距離が求められてもよい。例えば、式(2)の発話準備時間は、制御部(1)にて高速な処理が行われる場合には微少な値となることから省略され得る。本発明においては、音声発話時間が長くなるほど、発話開始地点が案内地点又は発話基準地点から遠ざかる必要があることから、発話開始距離と音声発話時間の関係は、音声発話時間が長くなるにつれて発話開始距離が大きくなるように定められる。また、本発明においては、計測された速度が速くなるほど、発話開始地点が案内地点又は発話基準地点から遠ざかる必要があることから、発話開始距離と音声発話時間の関係は、計測された速度が速くなるにつれて発話開始距離が大きくなるように定められる。時間と速度の積が距離となることから、さらに、発話開始距離は発話基準距離より大きい必要があることから、発話開始距離の数学的記述には、音声発話時間と車両の速度の積と、発話基準距離との和が含まれるのが一般的であろう。
【0076】
本発明のナビゲーション装置では、上述した式(1)において、平均音声発話時間の代わりに、最長の案内音声の発話時間である最大音声発話時間が使用されてもよい。また、本発明のナビゲーション装置では、上述した式(1)の平均音声発話時間の代わりにその速度計測地点に対応する発話開始地点にで出力される案内音声の音声発話時間が使用されてもよい。この場合、対象となる発話基準地点に関連する案内音声の音声発話時間を特定すると共に、特定された音声発話時間を用いて速度計測距離を算出する処理が、図9のステップS43の前に必要となるであろう。なお、上記実施例において、式(1)は、速度計測距離又は速度計測地点を決定する手法の一例を示すに過ぎないことに留意すべきである。
【0077】
上記実施例におけるGPS受信部(9)は、又は、GPS受信部(9)、ジャイロセンサ(11)及び車速センサ(13)は、本発明における位置特定手段に対応している。上記実施例における車速センサ(13)は、本発明における速度計測手段に対応している。上記実施例における音声出力部(19)及びスピーカ(21)は、本発明における音声出力手段に対応している。上記実施例における制御部(1)とそこで実行されるプログラム(27)とは、本発明における制御手段に対応している。上記実施例において、発話基準地点の数、速度や距離に関して具体的な数値が述べられているが、これら数値は、あくまで説明のために例示したものであることに留意すべきである。
【0078】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を減縮する様に解すべきではない。また、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の発明の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施例であるナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施例のナビゲーション装置の誘導動作を示すフローチャートである。
【図3】誘導経路の一例と、それを構成するノード及びリンクを示す説明図である。
【図4】本発明の実施例であるナビゲーション装置にて設定される発話基準地点、案内音声が出力される発話開始地点、及び車両の速度を計測する速度計測地点を示した説明図である。
【図5】本発明の実施例のナビゲーション装置が行う発話基準地点設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例のナビゲーション装置が作成及び記憶する発話基準地点リストの一例である。
【図7】本発明の実施例のナビゲーション装置が記憶している音声タイプテーブルの一例である。
【図8】手前の案内地点から所定の距離だけ進んだ地点が速度計測地点として設定される状況を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例のナビゲーション装置が行う速度計測地点設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例のナビゲーション装置が行う音声案内処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
(1) 制御部
(9) GPS受信部
(13) 車速センサ
(19) 音声出力部
(21) スピーカ
(23) 記録媒体
(29) 音声要素データ
N 案内地点
R1〜3 第1〜第3基準地点
RC1〜3 第1〜第3発話開始地点
RV1〜3 第1〜第3速度計測地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を特定する位置特定手段と、前記車両の速度を計測する速度計測手段と、目的地に至る誘導経路上にある案内地点に関する案内音声を出力する音声出力手段と、前記案内地点から前記誘導経路に沿って所定の基準距離だけ戻った基準地点を基準として前記案内音声の出力を制御する制御手段とを備えるナビゲーション装置において、
前記制御手段は、前記基準地点に対して設定された前記誘導経路上の速度計測地点に前記車両が到達すると、発話開始距離を計算し、前記案内地点から前記誘導経路に沿って前記発話開始距離だけ戻った発話開始地点に前記車両が到達すると、前記音声出力手段に前記案内音声を出力させ、
前記発話開始距離は、前記基準距離よりも大きく、前記案内音声の長さが長くなるにつれて大きくなり、前記速度計測地点における前記車両の速度が速くなるにつれて大きくなることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記発話開始距離は、前記案内音声の長さと、前記速度計測地点における前記車両の速度との積に、前記基準距離を加えることを含む数学的関係を用いて決定される、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記発話開始距離は、所定の調整値と前記案内音声の長さの和と、前記速度計測地点における前記車両の速度との積に、前記基準距離を加えた値である、請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記基準地点が高速道路上にある場合の前記基準距離は、前記基準地点が高速道路以外の道路上にある場合の前記基準距離よりも大きい、請求項1乃至3の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記速度計測地点における前記車両の速度が、所定の基準速度よりも大きい場合、前記速度計測地点にて前記音声出力手段に前記案内音声を出力させる、請求項1乃至4の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記速度計測地点が高速道路上にある場合の前記基準速度は、前記速度計測地点が高速道路以外の道路上にある場合の前記基準速度よりも大きい、請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記発話開始距離が、前記誘導経路に沿って前記速度計測地点から前記案内地点に至る距離以上である場合、前記速度計測地点にて前記音声出力手段に前記案内音声を出力させる、請求項1乃至6の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
車両の位置を特定する位置特定手段と、前記車両の速度を計測する速度計測手段と、出発地から目的地に至る誘導経路上の案内地点に関する1又は複数の案内音声を出力する音声出力手段と、前記車両の位置及び前記車両の速度に基づいて前記1又は複数の案内音声の出力を制御する制御手段とを備えるナビゲーション装置において、
前記1又は複数の案内音声は、前記誘導経路上にて前記案内地点に対して前記出発地側にある1又は複数の基準地点と夫々関連付けられており、
前記1又は複数の基準地点について、前記案内地点に対して前記出発地側に1又は複数の速度計測地点が夫々設定され、
前記制御手段は、前記1又は複数の速度計測地点の各々に前記車両が到達すると、その速度計測地点で計測された前記車両の速度を用いて発話開始距離を計算し、前記誘導経路に沿って前記案内地点から前記発話開始距離だけ戻った発話開始地点に前記車両が到達すると、その速度計測地点に対応する基準地点に関連した案内音声を前記音声出力手段に出力させ、
前記発話開始距離は、速度計測地点に対応する基準地点から前記誘導経路に沿って前記案内地点に至る基準距離よりも大きく、その基準地点に関連した案内音声が長くなるにつれて大きくなり、計測された前記車両の速度が速くなるにつれて大きくなることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項9】
前記発話開始地点が前記案内地点に最も近い発話開始地点である場合を除いて、前記発話開始地点では、前記発話開始距離の計算に用いられる前記車両の速度が計測された速度計測地点に対応する基準地点の基準距離の通知を含む案内音声が出力される、請求項8に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記発話開始距離は、前記発話開始距離の計算に用いられる前記車両の速度が計測された速度計測地点に対応する基準地点に関連した案内音声の長さと、計測された前記車両の速度との積に、その基準地点の基準距離を加えることを含む数学的関係を用いて決定される、請求項8に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記1又は複数の基準地点の各々の基準距離は、その基準地点が高速道路上にあるか否かに応じて異なっており、高速道路上にある場合におけるその基準地点の基準距離は、高速道路以外の道路上にある場合におけるその基準地点の基準距離よりも大きい、請求項8乃至10の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記1又は複数の速度計測地点に含まれる速度計測地点で計測された前記車両の速度が所定の基準速度よりも大きい場合、その速度計測地点にて、その速度計測地点に対応する基準地点に関連した案内音声を前記音声出力手段に出力させる、請求項8乃至11の何れかに記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
前記1又は複数の速度計測地点の全てについて前記基準速度は同じではなく、前記案内地点に最も近い速度計測地点に関する前記基準速度が最小である、請求項12に記載のナビゲーション装置。
【請求項14】
前記1又は複数の速度計測地点の各々について、前記基準速度は、その速度計測地点が高速道路上にあるか否かに応じて異なっており、その速度計測地点が高速道路上にある場合における前記基準速度は、その速度計測地点が高速道路以外の道路上にある場合における前記基準速度よりも大きい、請求項12又は請求項13に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−128210(P2009−128210A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304142(P2007−304142)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】