説明

ナビゲーション装置

【課題】道路の有する性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定し、その判定結果に基づいて経路を探索することにより、例えば、細街路を走行することが苦手なドライバや、高速道路を走行することが苦手なドライバに対して、適切な運転支援を行うことを目的とする。
【解決手段】対向車速度認識部50は、ビデオカメラ51とレーダー52とを備え、対向車の速度を認識する。認識された対向車速度と自車速度との比や、駆動制御部80から提供される情報に基づいて検出される急ブレーキといった車両の挙動情報に基づいて、ドライバの運転技量が走行中の道路の有する性質に適するかどうかを判定する。例えば、細街路を走行することが適切ではないと判定されたドライバに対しては、地図データ上における細街路のコストを増加させることで、細街路を極力走行しない経路を探索することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの経路を自動的に探索し、探索された誘導経路に基づいてドライバに対して目的地まで案内を行うナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のナビゲーション装置は、道路地図情報を、接続地点を示すノードと、このノード間を接続するリンクからなるネットワーク情報として記憶し、そのネットワーク情報に基づいて、現在位置から目的地までの経路を自動的に計算する。各ノードとリンクには、例えば、高速道路、有料道路、主要幹線道路、細街路等の道路種別や、右左折禁止、一方通行等の交通規制の有無や、リンク長、道路の幅員の広狭、車線数の多寡数、勾配情報等に基づきコストが設定されている。そして、現在位置から目的地までの経路においてコスト積和値が最小となるような経路を最適な経路とし、その経路に基づいてユーザを目的地まで案内する。
【0003】
例えば、特許文献1には、この経路計算をする際に、ドライバの運転技量を判定し、運転技量が低いと判断した場合には目的地に到達するまでに交差点での右折回数を軽減するような経路を探索するナビゲーション装置が記載されている。なお、特許文献1の技術では、ドライバがナビゲーション装置に直接入力する自身の運転技量の高低や、年齢、運転経験年数等の情報に基づいて、ドライバの運転技量を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−93451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、ドライバの運転技量が低いと判定された場合に、右折回数を軽減するような経路を探索しているが、運転技量が低いドライバは、例えば、細街路といった幅員の狭い道路を走行することが苦手であったり、高速道路を走行することが苦手であったりする。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、幅員の狭い細街路である、高速道路である、といった性質を備える道路を走行することがドライバの運転技量に適しているかどうかを判定し、その判定結果に基づいて経路を探索することにより、例えば、細街路を走行することが苦手なドライバや、高速道路を走行することが苦手なドライバに対しては、細街路や高速道路を極力走行しない経路を探索する運転支援を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のナビゲーション装置によれば、運転適性判定手段が、道路の有する性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定し、経路探索手段が、運転適性判定手段にて判定されたドライバの運転技量に適した性質を有する道路を利用した経路を探索する。これにより、例えば、道路が幅員の狭い細街路である、高速道路であるといった道路の性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定することができる。そのため、幅員の狭い細街路を走行することが苦手なドライバや、高速道路を走行することが苦手なドライバに対してそれぞれ適切な運転支援を行うことが可能になる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、経路探索手段が、運転適性判定手段により判定されたドライバの運転技量に適さない性質を有する道路を劣後して経路を探索する。これにより、例えば、細街路といった幅員の狭い道路を走行することが苦手なドライバに対しては細街路や幅員の狭い道路を、高速道路を走行することが苦手なドライバに対しては高速道路を極力経路として利用しないような経路を探索することが可能になる。このため、ドライバが苦手とする性質を有する道路の走行量が軽減されるため、ドライバにかかる運転負荷を軽減させることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、運転適性判定手段は、ドライバの運転する走行中の車両の挙動に基づいて、道路の有する性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定する。これにより、ドライバが実際に運転する車両の挙動に基づいて判定を行うことができるために、客観的な判定が自動的に可能となり、信頼性の高いドライバの運転適性判定が可能となる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明によれば、対向車速度検出手段が、自車が走行する道路の対向車の速度を検出し、運転適性判定手段が、検出された対向車速度と自車速度とを比較することで、道路の有する性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定する。これにより、例えば、細街路や幅員の狭い道路、若しくは坂道といった性質を有する道路を走行する場合、運転技量の適さないドライバは対向車とすれ違う際に、自車速度が対向車速度よりも顕著に遅くなる傾向があるが、この傾向を利用することで道路の有する性質がドライバの運転技量を適しているかどうかを判定することが可能となる。
【0011】
一方、請求項5に記載の発明によれば、制限速度検出手段が、自車が走行する道路の制限速度を検出し、運転適性判定手段が、検出された制限速度と自車速度とを比較することで、道路の有する性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定する。これにより、例えば、高速道路といった性質を有する道路を走行する場合、運転技量の適さないドライバは制限速度よりも自車速度が遅くなる傾向があるが、この傾向を利用することで、道路の有する性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定することが可能となる。
【0012】
請求項6に記載の発明によれば、車間距離検出手段が、自車の走行する道路において自車の前方を同方向に走行する車両との車間距離を検出し、検出された車間距離が所定の距離より短い場合には、経路探索手段によるドライバの運転技量に適した性質を有する道路を利用した経路探索が無効化される。例えば、細街路において、渋滞しており自車の前方10メートル以内に、同方向に走行する車両が存在する場合、対向車速度、若しくは制限速度と自車速度とを比較することにより判定を行ってしまうことによる語制御を防止できる。
【0013】
請求項7に記載の発明によれば、運転適性判定手段が、右折、若しくは左折することがドライバの運転技量に適しているかどうかを右左折時の車両の挙動に基づいて判定する。例えば、右折、若しくは左折する、といった運転行動において、ドライバの運転技量が適しているかどうかを右左折時に急ブレーキになることが頻繁にあるかどうかで判定する。これにより、右折、若しくは左折が苦手であると判定されたドライバに対して適切な運転支援を行うことが可能になる。
【0014】
請求項8に記載の発明によれば、経路探索手段が、運転適性判定手段により、右折、若しくは左折することがドライバの運転技量に適していないと判定された場合には、右折、若しくは左折の回数が軽減される経路を探索する。つまり、右折することが苦手なドライバに対しては右折回数を、左折することが苦手なドライバに対しては左折回数をそれぞれ軽減させる経路を探索する運転支援が可能になる。このため、ドライバが苦手とする右折、若しくは左折の回数が軽減され、ドライバにかかる運転負荷を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例のカーナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例において、細街路を走行することが苦手なドライバに対する経路探索の具体例を示す説明図である。
【図3】本実施例の経路探索処理を示すフローチャートである。
【図4】本実施例の運転適性判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、本実施例では、本発明を車両に搭載されるカーナビゲーション装置に適用した例について説明する。また、本発明は、下記の実施例に限定されることなく、本発明の技術的範囲に存在する限り、様々な形態を取り得る。
【実施例】
【0017】
図1は本実施例のカーナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。カーナビゲーション装置1は、地図データ記憶部10と、自車位置検出部20と、操作スイッチ群30と、表示装置40と、対向車速度認識部50と、制御部60とを備える。また、制御部60には、車両内通信I/F(インタフェース)部70を介して駆動制御部80からの駆動制御情報が提供される。
【0018】
地図データ記憶部10は、経路探索のための経路データ11と、表示装置40に表示させる地図を描画するための描画データ12とを格納する。また、地図データ記憶部10の記憶媒体としては、ROM(Read Only Memoly)、ハードディスク、メモリ等を用いることができる。
【0019】
経路データ11は、道路地図情報をノードと、ノード間を接続するリンクとのネットワーク情報として記憶する。各道路、及び交差点に該当するリンク、及びノードには、例えば、高速道路、有料道路、主要幹線道路、細街路等の道路種別や、右左折禁止、一方通行、制限速度等の交通規制や、リンク長、幅員の広狭、車線数の多寡数、勾配等の情報が付与されている。そして、それら情報に基づき各リンク、及びノードにはコストが設定されている。この経路データ11に記憶されるネットワーク情報とコストに基づいて、制御部60がコストの積和値が最小となるように周知のダイクストラ法等を用いて最適な経路計算を行う。
【0020】
描画データ12は、表示装置40に表示する地図上に道路や、線路、建造物、私有地等といった施設、若しくは海や河川等の地形を描画するためのデータである。
【0021】
自車位置検出部20は、GPS(Global Positioning System)用の人口衛星から送信電波情報を、GPSアンテナを介して受信することで自車位置と検出するGPS受信機21と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロセンサ22と、車両の速度を検出するための速度センサ23とを備えている。そして、これら各センサ等21乃至23は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら自車位置の検出を行うように構成されている。なお、自車位置検出部20は、上述した内の一部のセンサで構成してもよく、また、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサや、ステアリングの回転角センサ等を併用して構成されてもよい。これらの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出する。
【0022】
操作スイッチ群30としては、表示装置40と一体に構成され、表示画面上に設置されるタッチパネル及び表示装置40の周囲に設けられた釦スイッチ等が用いられる。なおタッチパネルと表示装置40とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式、電磁誘導方式、静電容量方式、あるいはこれらを組み合わせた方式などがあるが、何れを用いてもよい。
【0023】
表示装置40は、カラー表示装置であり、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)等があるが、その何れを用いてもよい。表示装置40の表示画面には、描画データ12を用いて描画される地図と、自車位置検出部20にて地図上に特定された現在位置を示すマークや、目的地までの誘導経路等が地図上に重ねて表示される。なお、各種施設の記号データや名称、目印等を地図に重ねて表示させてもよい。
【0024】
対向車速度認識部50は、ビデオカメラ51とレーダー52とを備え、対向車の速度を判定する。具体的には、まず、ビデオカメラ51にて自車の前方を撮像し、撮像された画像から自車に右前方から接近する物体が対向車であるかどうかを、車両のナンバープレート等を画像認識することで判定する。対向車であると判断された場合には、レーダー52により右前方から接近する対向車との距離dを検出する。その検出された距離dの値の時間変化から自車と接近する対向車との相対速度Δd/tを算出する。自車の速度v1は速度センサ23、若しくは駆動制御部80から得ることができるため、対向車の速度v2は、相対速度Δd/tから自車の速度v1を引くことで算出することができる。例えば、2秒間で対向車が20メートル自車に接近した場合、相対速度Δd/tは36[km/h]となり、自車速度v1が15[km/h]であった場合は対向車の速度v2は36−15=21[km/h]と計算できる。なお、ビデオカメラ51により撮像される情報を画像処理することによって対向車との距離d、若しくは、自車と対向車との相対速度Δd/tを算出し、対向車の速度v2を算出するようにしてもよい。また、対向車とすれ違う際に、自車から送信され対向車に反射して受信される超音波のドップラー効果による周波数の変調を利用して相対速度を算出するようにしてもよい。
【0025】
また、対向車速度認識部50においては、レーダー52にて自車の前方を走行する車両と自車との車間距離や、自車の前方に存在する物体の位置等を検出することができる。
【0026】
制御部60は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、ROM等に記憶されたプログラムに基づいて、操作スイッチ群30による操作によって指示された範囲の地図等を表示装置40に表示する地図表示処理や、現在位置から目的地までの最適な経路を自動的に計算して、経路案内を行う経路案内処理を行う。また、制御部60には、車両内通信I/F部70を介して駆動制御部80から駆動制御情報が提供される。駆動制御情報には、アクセルペダル踏力、ブレーキペダル踏力、ステアリング角度、車両速度、車両加速度、方向指示器等が含まれる。さらに、制御部60は運転適性判定部61を備える。
【0027】
運転適性判定部61は、自車が走行中の道路の性質が、ドライバの運転技量に適しているかどうかを判定する。つまり、ドライバがどの性質を有する道路を走行することを苦手とするかを判定する。ドライバの運転技量は当然ながら個人によって様々である。例えば、細街路といった幅員の狭い道路を走行することが苦手ではなくても、高速道路を走行することが苦手であったりする。従って、運転適性判定部61は、ドライバがどの性質を有する道路を苦手とするかを判定する必要がある。
【0028】
ドライバが細街路や幅員の狭い道路を走行することを苦手とする場合、幅員が狭いためにドライバに運転負荷がかかり、自車の前方に障害物等が存在しないにも関わらず不自然な急ブレーキをかけてしまうことがある。また、対向車とすれ違う際に、自車の速度が対向車と比較して著しく遅くなる傾向がある。そこで、細街路や幅員の狭い道路を走行中に不自然な急ブレーキが検知された場合、若しくは対向車の速度v2と自車の速度v1との比v1/v2が著しく小さい場合(例えばv1/v2<1/2)には、ドライバは細街路や幅員の狭い道路を走行することを苦手であると判定する。細街路や幅員の狭い道路が苦手だと判定された場合は、経路データ11において細街路や幅員の狭い道路として特徴付けられる道路のコストが高くなるように設定し記憶する。
【0029】
ドライバが高速道路を走行することを苦手とする場合、道路に設けられた制限速度と比較して自車の速度が遅くなる傾向がある。そこで、道路の制限速度v4と高速道路を走行中の平均自車速度v3との比v3/v4が小さい場合(例えばv3/v4<3/4)には、ドライバは高速道路を走行することを苦手であると判定する。高速道路が苦手だと判定された場合は、経路データ11において高速道路として特徴付けられる道路のコストが高くなるように設定し記憶する。
【0030】
車両が細街路や幅員の狭い道路、高速道路を走行中であるかどうかは、車両の走行する地図データ記憶部10に記憶される地図上の道路に付与されている道路種別の情報から判定することができる。また、急ブレーキの検出は駆動制御部80から提供されるブレーキペダル踏力、若しくは車両加速度が所定の閾値を越えたかどうかによって検出可能である(例えば、車両加速度が−0.5[G]より小さな値となった場合は急ブレーキと判定し検出する)。
【0031】
なお、運転適性判定部61は、ドライバがどの性質を有する道路を苦手とするかを、ドライバが操作スイッチ群30を介して直接入力した情報に基づき、判定を行ってもよい。
【0032】
なお、対向車速度認識部50は、本発明の対向車速度検出手段、及び車間距離検出手段に相当する。制御部60は、本発明の経路探索手段に相当する。運転適性判定部61は運転適性判定手段、及び制限速度検出手段に相当する。
【0033】
次に、細街路や幅員の狭い道路を走行することが苦手だと判定されたドライバに対し、経路データ11における細街路のコストを変更することで、探索される目的地までの経路がどのように変化するかの具体例を、図2を用いて説明する。図2(a)は、通常のドライバに対して自車位置から目的地まで案内する場合の経路を矢印で示した。それに対して図2(b)は、細街路や幅員の狭い道路を苦手とするドライバに対して自車位置から目的地まで案内する場合の経路を矢印で示した。図2(a)の経路に対して図2(b)の経路では、全体の走行距離は長くなっているが、細街路を走行する距離が短くなっていることがわかる。これは、図2(b)のドライバは細街路や幅員の狭い道路を走行することが苦手であると判定されているために、細街路や幅員の狭い道路のコストが通常よりも高く設定され、経路計算の際に細街路よりも幹線道路を優先して経路として選択された結果である。
【0034】
続いて、ドライバの運転技量に応じた経路探索の方法について図3、及び図4のフローチャートを参照して説明する。なお、本フローチャートに示す処理は、制御部60に記憶されているコンピュータプログラムに従って実行される。
【0035】
初めに、図3におけるステップS10において、操作スイッチ群30を介してユーザにより設定された目的地までの経路を探索する。その際、制御部60にて、経路データ11に記憶されるコストの積和値が最小となるような経路が計算される。ステップS10からはステップS20へ移行する。
【0036】
ステップS20では、ステップS10にて探索された経路に基づいて、ユーザを目的地まで案内し、ステップS30へ移行する。
【0037】
ステップS30では、運転適性判定サブルーチンを実行する。なお、運転適性判定サブルーチンの具体的な処理は後述する。その後、ステップS40へ移行する。
【0038】
ステップS40では、運転適性判定サブルーチンにて経路データ11における高速道路のコスト、若しくは細街路や幅員の狭い道路のコストが変更されたかどうかを判定する。コストが変更されている場合には(ステップS40:YES)、ステップS10に戻り、ユーザに適した経路を再度探索する。コストが変更されていない場合には(ステップS40:NO)、ステップS30に戻る。
【0039】
続いて、ステップS30における運転適性判定サブルーチンについて、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
まず、運転適性判定サブルーチンが開始すると、図4におけるステップS100において、細街路や幅員の狭い道路を走行中かどうかを判定する。細街路や幅員の狭い道路を走行中である場合は(ステップS100:YES)、ステップS110へ移行し、細街路や幅員の狭い道路を走行中でない場合は(ステップS100:NO)、ステップS180へ移行し、高速道路を走行中であるかどうかを判定する。
【0041】
ステップS110では、細街路や幅員の狭い道路を走行中に不自然な急ブレーキがあったかどうかを判定する。レーダー52にて前方に障害物が存在しないことを検出しつつも、急ブレーキが検知された場合には(ステップS110:YES)、ドライバは細街路や幅員の狭い道路を走行することが苦手であると判定し、ステップS170へ移行する。不自然な急ブレーキが検出されない場合には(ステップS110:NO)、ステップS120へ移行する。
【0042】
ステップS120では、前方に車両があるかどうかを判定する。前方に車両があるかどうかは、前方に位置する車両との車間距離を利用して判定する。例えば、前方10メートル以内に車両が存在する場合は前方に車両があると判定する。前方の車両との車間距離は、ビデオカメラ51、若しくはレーダー52から検出可能である。前方に車両がある場合は(ステップS120:YES)、自車速度が前方の車両に依存する可能性があるため、速度を利用した運転適性判定は行わない。従って、運転適性判定サブルーチンを終了する。前方に車両がない場合は(ステップS120:NO)、ステップS130へ移行する。
【0043】
ステップS130では、対向車がいるかどうかを判定する。対向車がいる場合は(ステップS130:YES)、ステップS140へ移行する。対向車がいない場合は(ステップS130:NO)、運転適性判定サブルーチンを終了する。
【0044】
ステップS140では、対向車速度v2を検出し、ステップS150へ移行する。
【0045】
ステップS150では、自車速度v1を検出し、ステップS160へ移行する。
【0046】
ステップS160では、対向車速度v2と自車速度v1との比v1/v2が1/2より小さいかどうかを判定する。速度比v1/v2がv2が1/2より小さい場合には(ステップS160:YES)、ドライバは細街路や幅員の狭い道路を走行することが苦手であると判定し、ステップS170へ移行する。速度比v1/v2が1/2以上である場合には(ステップS160:NO)、苦手ではないと判定し、運転適性判定サブルーチンを終了する。
【0047】
ステップS170では、経路データ11において細街路や幅員の狭い道路として特徴付けられる道路のコストの値を+1して記憶し、運転適性判定サブルーチンを終了する。
【0048】
ステップS180では、高速道路を走行中かどうかを判定する。高速道路を走行中である場合は(ステップS180:YES)、ステップS190へ移行し、高速道路を走行中でない場合は(ステップS180:NO)、ステップS100へ戻る。
【0049】
ステップS190では、走行中の高速道路が渋滞しているかどうかを判定する。高速道路が渋滞しているかどうかの判定は、前方に位置する車両との車間距離が短い状態が継続した場合(例えば、前方の車両までの車間距離が20メートル以内である状態が10秒以上継続した場合)とする。渋滞中であると判断される場合には(ステップS190:YES)、運転適性判定サブルーチンを終了する。渋滞中でない場合は(ステップS190:NO)、ステップS200へ移行する。
【0050】
ステップS200では、走行中の高速道路の制限速度情報を経路データ11から読み出して検出する。道路の制限速度v4を検出した後に、ステップS210へ移行する。
【0051】
ステップS210では、平均自車速度v3を検出する。例えば、高速道路を走行中の3分間における平均自車速度を算出する。平均自車速度v3を検出した後に、ステップS220へ移行する。
【0052】
ステップS220では、道路の制限速度v4と平均自車速度v3との比v3/v4が3/4より小さいかどうかを判定する。速度比v3/v4が3/4より小さい場合には(ステップS220:YES)、ドライバは高速道路を走行することが苦手であると判定し、ステップS230へ移行する。速度比v3/v4が3/4以上である場合には(ステップS220:NO)、苦手であるとは判定せず、運転適性判定サブルーチンを終了する。
【0053】
ステップS230では、経路データ11において高速道路として特徴付けられる道路のコストの値を+1して記憶し、運転適性判定サブルーチンを終了する。
【0054】
以上のように本実施例によれば、ドライバが細街路や幅員の狭い道路、高速道路を実際に運転する際の車両の挙動情報に基づいて、それらの道路の性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定する。具体的には、道路の対向車や道路の設けられた制限速度よりも自車の速度が著しく遅い、若しくは、急ブレーキといった不安定な運転動作を行った場合には、走行中の道路が有する性質がドライバの運転技量に適していないと判定する。そして、例えば、高速道路がドライバの運転技量に適していない、つまり、ドライバは高速道路を走行することが苦手であると判定された場合には、経路データ11における高速道路として特徴付けられる道路のコストを増加させる。これにより、高速道路を走行することが苦手なドライバに対して、高速道路を極力経路として利用しない経路探索を行う運転支援が可能になる。細街路や幅員の狭い道路についても同様である。苦手とする道路が経路として選択されにくくなるため、ドライバは運転負荷を軽減させることができる。また、前方の車両との車間距離が短い場合(細街路や幅員の狭い道路なら10メートル以内)や高速道路で渋滞している場合には、対向車速度、若しくは制限速度と自車速度とを比較することによりドライバの運転技量を判定することはない。自車の前方に車両が存在する場合、自車の挙動が前方の車両の挙動に依存する可能性があると考えられるためである。そして、本実施例では、実際にドライバが運転する際の車両の挙動情報に基づくため、客観的にドライバの運転技量を判定でき、信頼性の高いドライバの運転適性判定が可能である。
【0055】
(変形例1)
また、本実施例における変形例1を説明する。変形例1では、運転適性判定部61において、細街路や幅員の狭い道路、高速道路だけでなく、ドライバが坂道を走行することを苦手とするかどうかを判定する。
【0056】
ドライバが坂道を走行することを苦手とする場合、上り坂の発進の際に車両が後進し、驚いて急ブレーキを踏んでしまったり、また、下り坂を走行する際には対向車や道路に設けられた制限速度と比較して、自車の速度が極端に遅くなってしまう傾向がある。そこで、地図上の坂道を走行中に不自然な急ブレーキが検知された場合、若しくは、v1/v2が著しく小さい場合(例えばv1/v2<1/2)、及び、v3/v4が小さい場合(例えばv3/v4<3/4)には、ドライバは坂道を走行することが苦手であると判定する。坂道が苦手だと判定された場合は、経路データ11において坂道として特徴付けられる道路のコストが高くなるように設定し直す。従って、坂道を走行することが苦手なドライバに対しては坂道を極力走行しない経路を探索することが可能になる。なお、車両が坂道を走行中であるかどうかは、車両の走行する地図データ記憶部10に記憶される地図上の道路に付与されている勾配情報から判定することができる。
【0057】
本変形例1によれば、細街路や幅員の狭い道路、高速道路だけでなく、坂道といった道路の性質において、ドライバの運転技量に適しているかどうかを判定し、その運転適性判定の結果に応じて経路を探索するため、さらに精細な運転支援が可能になる。
【0058】
(変形例2)
次に、本実施例における変形例2を説明する。変形例2では、運転適性判定部61において、細街路や幅員の狭い道路、高速道路といった道路の性質だけでなく、さらに、ドライバが右折、若しくは左折することを苦手とするかどうかを判定する。ドライバが右折や左折することを苦手とする場合、右折や左折の最中に対向車や歩行者等を認識するのが遅れ、焦って急ブレーキを踏んでしまう傾向がある。そこで、右折、若しくは左折の最中に急ブレーキが検知されることが頻繁にある場合(例えば、平均して3回の右折時に1回以上の急ブレーキが検知される場合)は、ドライバは右折、若しくは左折することを苦手であると判定する。右折、若しくは左折が苦手だと判定された場合は、経路を計算する際に右折、若しくは左折のコストを高く設定する。これにより、例えば右折することが苦手なドライバに対しては、極力右折を行わずに目的地まで到達できるような経路を探索することが可能になる。なお、車両が右折中、若しくは左折中であるかの判定は、駆動制御部80から提供されるステアリング角度、方向指示器、若しくはジャイロセンサ22等から判定することができる。
【0059】
本変形例2によれば、細街路や幅員の狭い道路、高速道路といった道路の性質だけでなく、右折する、若しくは左折するといった運転行動において、ドライバの運転技量が適しているかどうかを判定する。そして、その運転適性判定の結果に応じて経路を探索するため、より精細な運転支援が可能になる。
【0060】
(変形例3)
次に、本実施例における変形例3を説明する。変形例3では、運転適性判定部61において、細街路や幅員の狭い道路、若しくは高速道路を走行することを苦手ではないと判定された場合は、経路データ11において細街路や幅員の狭い道路、若しくは高速道路として特徴付けられる道路のコストが低くなるように設定し直す。但し、このとき初期設定値よりコストが低くならないようにする。例えば、本実施例ステップS220において、高速道路の制限速度v4と平均自車速度v3との比v3/v4が3/4以上である場合には高速道路を走行することが苦手ではないと判断される。本変形例では、この状況にて、経路データ11において高速道路として特徴付けられる道路のコストが既に初期設定値よりも高く変更されている場合には、コストの値を−1して記憶し直す。
【0061】
本変形例3によれば、ドライバが苦手ではないと判定された性質を有する道路のコストの値を低く設定し直すために、ドライバの運転技量が向上した場合にも対応することが可能である。つまり、苦手であった性質を有する道路をドライバが克服した場合には、その性質を有する道路のコストを初期設定値まで低く設定し直すことが可能になり、常にドライバの運転技量を反映した経路を探索することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
1 カーナビゲーション装置
10 地図データ記憶部
11 経路データ
20 自車位置検出部
23 速度センサ
30 操作スイッチ群
50 対向車速度認識部
60 制御部
70 車両内通信I/F部
80 駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地までの経路を自動的に探索し、該探索された経路に基づいてドライバを前記目的地まで案内するナビゲーション装置において、
道路の有する性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定する運転適性判定手段と、
前記運転適性判定手段にて判定されたドライバの運転技量に適した性質を有する道路を利用した経路を探索する経路探索手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索手段は、前記運転適性判定手段にて判定されたドライバの運転技量に適さない性質を有する道路を劣後して経路を探索することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載のナビゲーション装置において、
前記運転適性判定手段は、ドライバの運転する走行中の車両の挙動に基づいて道路の有する性質がドライバの運転技量に適しているかどうかを判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載のナビゲーション装置において、
自車が走行する道路の対向車の速度を検出する対向車速度検出手段を有し、
前記運転適性判定手段は、前記対向車速度検出手段により検出された対向車速度と自車速度とを比較することで、前記道路の有する性質が前記ドライバの運転技量に適しているかどうかを判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載のナビゲーション装置において、
自車が走行する道路の制限速度を検出する制限速度検出手段を有し、
前記運転適性判定手段は、前記制限速度検出手段により検出された制限速度と自車速度とを比較することで、前記道路の有する性質が前記ドライバの運転技量に適しているかどうかを判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項4若しくは5に記載のナビゲーション装置において、
自車の走行する道路において自車の前方を同方向に走行する車両との車間距離を検出する車間距離検出手段を備え、
前記運転適性判定手段は、前記車間距離検出手段により検出された車間距離が所定の距離より短い場合には、前記経路探索手段によるドライバの運転技量に適した性質を有する道路を利用した経路探索が無効化されることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載のナビゲーション装置において、
前記運転適性判定手段は、右折、若しくは左折することが前記ドライバの運転技量に適しているかどうかを、右左折時の車両の挙動に基づいて判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項7に記載のナビゲーション装置において、
前記経路探索手段は、前記運転適性判定手段により右折、若しくは左折することが前記ドライバの運転技量に適していないと判定された場合には、右折、若しくは左折の回数が軽減される経路を探索することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−223681(P2010−223681A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69745(P2009−69745)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】