説明

ナビゲーション装置

【課題】補正後に、GPS受信機により測位した位置情報から得られる、角速度、加速度と、ジャイロセンサ、加速度センサにより算出した角速度、加速度とを再度比較して、差が所定値以下であることを確認した後、衛星航法と推測航法により得られる現在位置を併用して位置表示する。
【解決手段】GPS受信機13により測位した位置情報から得られる、角速度、加速度と、ジャイロセンサ14、加速度センサ15により算出した角速度、加速度とを比較し、差が所定値以上の場合に、ジャイロセンサ14、加速度センサ15の出力を補正するようにしたナビゲーション装置において、各種センサの補正後に、再度両者の差を確認した後に衛星航法手段11による測位結果と推測航法手段12による測位結果を併用して現在位置を表示手段17に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星航法に用いられるGPS受信機と、推測航法に用いられるジャイロセンサ、加速度センサを有し、GPS受信機により測位した位置情報から得られる、角速度、加速度と、ジャイロセンサ、加速度センサにより算出した角速度、加速度とを比較し、差が所定値以上の場合に、ジャイロセンサ出力、加速度センサ出力を補正するようにしたナビゲーション装置に関するものであり、特に、補正後に、GPS受信機により測位した位置情報から得られる、角速度、加速度と、ジャイロセンサ、加速度センサにより算出した角速度、加速度とを再度比較して、差が所定値以下であることを確認した後、衛星航法と推測航法により得られる現在位置を併用して位置表示するようにしたナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、所望の出発地から目的地までの最適経路を探索して、表示手段に表示した地図画像上に最適経路と車両の現在位置を表示して、走行すべき経路の案内を行う車載用のナビゲーション装置が用いられている。このようなナビゲーション装置においては、車両の現在位置や進行方向、速度を取得して、表示手段に車両の現在位置を表示している。そのため、車載用ナビゲーション装置においては、ジャイロセンサ(角速度センサ)や加速度センサ、距離センサなどの各種センサの検出信号をCPUに取り込み、この各信号から車両位置、車両方向、走行軌跡を求める推測航法手段(自律航法手段)と、GPS受信機から得られる絶対位置情報に基づいて地図データとマッチングすることにより、推定車両位置を算出し、それに基づいて車両の位置、方向、走行軌跡を求める衛星航法手段と、を併用するように構成されるのが一般的である。
【0003】
そして、上記推測航法手段および衛星航法手段の併用の方法としては、例えば、車両の速度が時速20km/h以下ではGPS受信機による測位結果が用いられ、時速20km/hを上回ると各種センサ(推測航法手段)による測位結果が用いられるように構成され、さらに、上記構成で、GPS受信機13による測位結果とジャイロセンサ14、加速度センサ15の検出出力による測位結果の差が所定以上であった場合には、ジャイロセンサ14、加速度センサ15の検出出力による測位結果をGPS受信機13による測位結果にオフセットするように構成される方法などがある。
【0004】
その他にも、GPS受信機による測位においては、地下通路などGPS衛星信号の受信が不可能な地点では絶対位置情報が取得できない場合があり、また、GPS衛星信号と周辺の建物に反射する信号とがGPS受信機において受信される(一般にマルチパスと称される)こともある。そのような場合には絶対位置情報に大きな誤差が生じることもあるため、GPS受信機(衛星航法手段)による測位結果を採用せず、各種センサ(推測航法手段)による測位結果を用いるようにされる。
【0005】
しかし、各種センサ(推測航法手段)による測位においては、例えば、温度や経過年数により各種センサの0点電圧などに誤差が生じ、その誤差が累積されると測位結果に大きな誤差が生じるため、正確な現在位置を検出することが困難になってしまうといった問題がある。そこで、このような問題の解決策として、例えば、下記の特許文献1(特許第3381397号公報)には、角速度センサが異常になった時に他の代替手段により現在位置を検出し、角速度センサが異常になった場合でも走行案内を十分行えるようにした車両用ナビゲーション装置の発明が開示されている。
【0006】
この車両用ナビゲーション装置は、車両の角速度を検出し角速度信号を出力する角速度センサと、車両の走行速度に応じた車速信号を発生する車速センサと、前記角速度信号および前記車速信号に基づいて車両の現在位置を検出する現在位置検出手段とを備え、この検出された現在位置に基づいて走行案内を行うようにされ、角速度信号が車両の回転状態を示す正常な信号であり、この正常な信号発生状態が所定時間以上継続したことにより前記角速度センサの異常を判定する異常判定手段を有し、この異常判定手段によって角速度センサの異常を判定した時に、衛星航法手段などの代替手段により前記現在位置の検出を行うように構成されたものである。
【0007】
また、上記問題のその他の解決策として、GPS受信機によって測位した情報に基づいて、各種センサ(推測航法手段)の補正を行う技術が、下記の特許文献2(特開平07−167871号公報)には、角速度センサ出力補正装置の発明として開示されている。この特許文献2に開示された角速度センサ出力補正装置は、GPSによる位置が一定距離以上の間隔で複数回算出された場合に、GPSの進行方位と自立走行の進行方位との差分を算出することにより、角速度センサのドリフト値を補正するものである。このような補正技術は上記特許文献2の他にも種々知られている。
【0008】
具体的には、この角速度センサ出力補正装置は、角速度センサから得られる角速度値を積算して走行方位を算出する走行方位算出手段と、GPS受信位置から車両方位を算出する手段と、任意の距離毎あるいは任意の時間毎のGPS位置を求め、m回目のGPSによる位置とn回目のGPSによる位置間を結ぶ直線の傾きと、m回目のGPS受信時とn回目のGPS受信時の自立走行位置間を結ぶ直線の傾きとの差分により車両方位を算出する車両の自立方位算出手段と、GPSによる車両方位を用いて角速度センサのオフセット値を補正する補正手段を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3381397号公報
【特許文献2】特開平07−301541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2に開示されるような補正技術では、GPS受信機(衛星航法手段)による測位結果と、各種センサ(推測航法手段)による測位結果とを比較し、両者の差が所定値以上になると、GPS受信機によって測位した情報に基づいて、各種センサ(推測航法手段)の補正を行い、補正が完了するとGPS受信機(衛星航法手段)による測位結果と、前記の各種センサ(推測航法手段)による測位結果とを併用する通常の運用に戻すようにされる。
【0011】
しかしながら、各種センサの補正が行われたとしても、GPS受信機(衛星航法手段)による測位結果と、各種センサ(推測航法手段)による測位結果とが、必ずしも両者の差が所定の範囲内に入っている保証はなく、各種センサの補正後に両者の差が所定の範囲内に入っていない場合には、通常の併用運用に入った後にそのような状態が検出されるという問題点があった。
【0012】
本願の発明者は、上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、GPS受信機により測位した位置情報から得られる、角速度、加速度と、ジャイロセンサ、加速度センサにより算出した角速度、加速度とを比較し、差が所定値以上の場合に、ジャイロセンサ、加速度センサ出力を補正するようにしたナビゲーション装置に関するものであり、特に、補正後に、GPS受信機により測位した位置情報から得られる、角速度、加速度と、ジャイロセンサ、加速度センサにより算出した角速度、加速度とを再度比較して、差が所定値以下であることを確認した後、衛星航法と推測航法により得られる現在位置を併用して位置表示するようになせば、上記の問題点を解消し得ることに想到して、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は、GPS受信機により測位した位置情報から得られる、角速度、加速度と、ジャイロセンサ、加速度センサにより算出した角速度、加速度とを比較し、差が所定値以上の場合に、ジャイロセンサ、加速度センサ出力を補正するようにしたナビゲーション装置において、各種センサの補正後に、再度両者の差を確認した後に衛星航法と推測航法を併用することにより正しい位置情報を得られるようにしたナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、GPS受信機を有する衛星航法手段と、車両の挙動を検出するセンサを有する推測航法手段と、を備え、前記衛星航法手段による測位結果と前記推測航法手段による測位結果とを用いて車両の現在位置を表示手段に表示する制御手段を有するナビゲーション装置において、前記制御手段は、前記衛星航法手段が測位した測位結果に基づいて、車両の角速度および/または加速度を算出するとともに、前記算出した角速度および/または加速度と、前記センサの出力に基づいて算出される角速度および/または加速度との差を算出し、前記算出した差が所定の値を超えているか否かを判定し、前記算出した差が所定の値を超えている場合、前記衛星航法手段による測位結果のみを用いて車両の現在位置を表示手段に表示し、前記センサの出力を補正した後、再度、前記衛星航法手段が測位した測位結果に基づいて、車両の角速度および/または加速度を算出するとともに、前記算出した角速度および/または加速度と、前記センサの出力に基づいて算出される角速度および/または加速度との差を算出し、前記算出した差が所定の値を超えているか否かを判定し、超えていない場合、前記衛星航法手段による測位結果と前記推測航法手段による測位結果を併用して車両の現在位置を表示手段に表示するように構成したことを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記推測航法の有する車両の挙動を検出するセンサには、少なくとも車両の角速度を検出するジャイロセンサおよび/または車両の加速度を検出する加速度センサが含まれることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1または請求項2にかかるナビゲーション装置において、前記ナビゲーション装置は、さらに、車両の停車を検出する停車検出手段を有し、前記制御手段は、前記停車検出手段により車両の停車が検出されると、前記車両の挙動を検出するセンサの出力に基づいて、前記車両の挙動を検出するセンサの出力を0とする補正値を設定し、前記車両の挙動を検出するセンサの出力から前記補正値を差し引くことで前記補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1にかかる発明においては、GPS受信機を有する衛星航法手段と、車両の挙動を検出するセンサを有する推測航法手段と、を備え、前記衛星航法手段による測位結果と前記推測航法手段による測位結果とを用いて車両の現在位置を表示手段に表示する制御手段を有するナビゲーション装置において、前記制御手段は、前記衛星航法手段が測位した測位結果に基づいて、車両の角速度および/または加速度を算出するとともに、前記算出した角速度および/または加速度と、前記センサの出力に基づいて算出される角速度および/または加速度との差を算出し、前記算出した差が所定の値を超えているか否かを判定し、前記算出した差が所定の値を超えている場合、前記衛星航法手段による測位結果のみを用いて車両の現在位置を表示手段に表示し、前記センサの出力を補正した後、再度、前記衛星航法手段が測位した測位結果に基づいて、車両の角速度および/または加速度を算出するとともに、前記算出した角速度および/または加速度と、前記センサの出力に基づいて算出される角速度および/または加速度との差を算出し、前記算出した差が所定の値を超えているか否かを判定し、超えていない場合、前記衛星航法手段による測位結果と前記推測航法手段による測位結果を併用して車両の現在位置を表示手段に表示するように構成したものであるから、車両の挙動を検出するセンサの補正が正しく行われたことを確認した後に、衛星航法手段と推測航法手段を併用した現在位置表示を行うことができるようになる。
【0018】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーション装置において、前記推測航法の有する車両の挙動を検出するセンサには、少なくとも車両の角速度を検出するジャイロセンサおよび/または車両の加速度を検出する加速度センサが含まれることを特徴としたものであるから、ジャイロセンサおよび/または加速度センサの補正が正しく行われたことを確認した後に、衛星航法手段と推測航法手段を併用した現在位置表示を行うことができるようになる。
【0019】
請求項3にかかる発明においては、請求項1または請求項2にかかるナビゲーション装置において、前記ナビゲーション装置は、さらに、車両の停車を検出する停車検出手段を有し、前記制御手段は、前記停車検出手段により車両の停車が検出されると、前記車両の挙動を検出するセンサの出力に基づいて、前記車両の挙動を検出するセンサの出力を0とする補正値を設定し、前記車両の挙動を検出するセンサの出力から前記補正値を差し引くことで前記補正を行うものであるから、推測航法手段を構成するセンサの補正を容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例にかかるナビゲーション装置の起動時の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例にかかるナビゲーション装置における推測航法作動中の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車載用のナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のナビゲーション装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の実施例にかかる車載用のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、制御手段10、GPS受信機13を有する衛星航法手段11、ジャイロセンサ14、加速度センサ15などの各種センサを有する推測航法手段12(自律航法手段とも称される)、地図記憶手段16、表示手段17、入力手段18、音声出力手段19などを備えて構成されている。
【0023】
制御手段10は、図示しないROM、RAMを有するマイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各部の操作を制御する。
【0024】
衛星航法手段11はGPS受信機13を有しており、GPS衛星信号を受信して、車両の位置(緯度、経度)を算出する。GPS受信機13は、一般的には、所定の時間間隔、例えば、本実施例のGPS受信機13では1秒間隔でGPS衛星信号を受信する。そして、衛星航法手段11は、GPS受信機13が受信したGPS衛星信号を用いて算出した位置情報と前回算出した位置情報に基づいて、車両の角速度、加速度を算出する。従って、衛星航法手段11により1秒に1回、車両の現在位置、角速度、加速度等の値が算出される。
【0025】
なお、前回算出した位置情報とは、前回(本実施例では1秒前に)、GPS受信機13が受信したGPS衛星信号を用いて算出した位置情報のことであり、例えば、上記RAM
に記憶される。
【0026】
一方、推測航法手段12は、ジャイロセンサ14、加速度センサ15を有し、これらのセンサ出力を用いて車両の角速度、加速度を検出して位置を算出する。推測航法手段12も所定の時間間隔で出力される各種センサの出力を取得して位置の算出を行う。本実施例の推測航法手段12においては、10msec毎に角速度、加速度を検出し、100msec毎に、10msec毎に算出した角速度、加速度(それぞれ10個のデータ)の平均値を算出して、さらに、100msec毎に算出された角速度、加速度の平均値の10個のデータを用いて移動平均し、車両の角速度、加速度とする処理を行う。
【0027】
100msec毎の移動平均値算出処理にあたっては、100msec毎に得られる最新の10個のデータを用いて、(1番目のデータを削除し、11番目のデータを採用する)それらの平均値を100msec毎に算出する。
【0028】
なお、推測航法手段12による位置の算出は、各種センサ出力のみを用いて算出しても良いし、各種センサの出力および衛星航法手段11により算出された位置情報から算出するようにしても良い。
【0029】
ここで、車両の現在位置は、衛星航法手段11、および、推測航法手段12によって測位される。上記GPS衛星信号を受信して算出される位置情報と前回算出した位置情報から算出される車両の速度が時速20km/h以下ではGPS受信機13による測位結果が用いられ、時速20km/hを上回るとジャイロセンサ14、加速度センサ15の検出出力による測位結果が用いられるように構成され、さらに、上記構成で、GPS受信機13による測位結果とジャイロセンサ14、加速度センサ15の検出出力による測位結果の差が所定以上であった場合には、ジャイロセンサ14、加速度センサ15の検出出力による測位結果をGPS受信機13による測位結果にオフセットするように構成される。
【0030】
また、地下通路などGPS衛星信号の受信が不可能で絶対位置情報が取得できない場所を走行している場合、あるいは、マルチパスの影響によりGPS受信機13による測位結果に大きな誤差か生じるビル街などを走行している場合には、衛星航法手段11による測位結果を採用せず、推測航法手段12による測位結果を用いるようにされる。また、逆にジャイロセンサ14、加速度センサ15の誤差により推測航法手段12による測位結果に大きな誤差が生じる場合には、GPS受信機13(衛星航法手段11)による測位結果が用いられる。
【0031】
制御手段10は、1秒間隔で得られる衛星航法手段11による測位データと、その時点において得られている推測航法手段12による測位データを比較し、両者の差が所定の値以上になると、ジャイロセンサ14、加速度センサ15の補正を行う。補正方法の詳細については後に詳細に説明する。ジャイロセンサ14、加速度センサ15の補正を行った後、本発明にかかるナビゲーション装置1においては、再度、衛星航法手段11による測位データと、推測航法手段12による測位データを比較し、両者の差が所定の値の範囲内であるか否かを確認した後、衛星航法手段11による測位結果と、推測航法手段12による測位結果を併用して現在位置表示を行うように構成される。この詳細についても後に説明する。
【0032】
表示手段17は、地図画像や最適経路画像、誘導案内画像を表示してユーザが視認できるようにするためのマンマシンインターフェースとしての役割を担うものであり、例えば液晶ディスプレイで構成される。なお、この表示手段17は、タッチセンサーを具備させて入力手段18の一部を担うように構成することもできる。この場合は画面上に表示されるアイコンをユーザが触れることで選択入力が行われるようにする。
【0033】
入力手段18は、ナビゲーション装置1における目的地の入力やその他各種の入力を行うためのキーや操作ボタン、スイッチなどを含み、メニュー画面の操作(図示しないタッチパネルを用いる)、入力地手段18の操作により出発地や目的地、時刻条件などの経路探索条件を設定することができる。
【0034】
音声出力手段19はスピーカを有し、経路誘導において、交差点などの案内地点の手前の所定地点に車両が到達すると、交差点の名称や交差点までの距離とともに、車両の進行方向(直進や右左折の別)を音声出力するものである。また、音声出力手段19は、ナビゲーション装置1の操作案内や各種の警告、報知を音声により出力する場合にも用いられる。
【0035】
地図記憶手段16は、各道路の交差点や分岐点などの結節点をノードとし、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路ノードデータ(ノードデータ)と道路リンクデータ(リンクデータ)を含む道路データを記憶する。道路ノードデータには、道路ノードの番号、位置座標、接続リンク本数、交差点名称などが含まれる。また、道路リンクデータには起点および終点となる道路ノードの番号、道路種別、リンク長(リンクコスト)、所要時間、車線数、車道幅などが含まれる。道路リンクデータにはさらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切、料金所などのデータが付与される。道路種別は、高速道路や有料道路の別および国道や都道府県道などの別を含む情報である。記憶手段12は、さらに海岸線、湖沼、河川形状などの水系データ、行政境界データ、施設の位置、形状、名称を含む施設データからなる背景データを記憶している。
【0036】
制御手段10は、利用者によって出発地や目的地が指定されると、記憶手段16に記憶されている地図データ(道路データ)を参照し、出発地から目的地に至る最適経路を探索し、案内経路データを作成するものである。この最適経路の探索は、現在位置または利用者によって指定された出発地に対応する道路ノードから利用者によって指定された目的地に対応する道路ノードまでに至るリンクとノードをダイクストラ法などの各種の手法によって探索し、リンク長(リンクコスト)や所要時間などを累積し、総リンク長または総所要時間などが最短となる経路を案内経路とし、当該経路に属する道路ノードやリンクを案内経路データとして提供するものである。
【0037】
上述のようにして制御手段10により探索された最適経路のデータはRAM(図示せず)に記憶される。制御手段10は、経路案内時において、RAMに記憶された最適経路のデータのうち、衛星航法手段11または推測航法手段12により算出された現在位置を中心とした所定範囲の地図データを表示手段17に表示し、地図画像上に経路や車両の現在位置を表示する。最適経路のデータに記憶された交差点などの案内地点に到達したときは、音声出力手段19を介して案内報知を行う。このように時々刻々変化する車両の現在位置に応じて都度地図データの表示をスクロール(切り替え)しながら目的地までの誘導案内を行う。
【0038】
次に、本発明にかかるナビゲーション装置1の起動時の動作手順について、図2に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0039】
ユーザによりナビゲーション装置1に電源の供給がされるとナビゲーション装置1が起動される(ステップS101)、次いで、GPS受信機13によるGPS衛星信号の受信、測位、すなわち、衛星航法手段11による現在位置の測位が行われ、表示手段17に現在位置を含む地図画像を表示するとともに車両の現在位置を表示する(ステップS102)。
【0040】
なお、ステップS101にてナビゲーション装置1が起動された後、推測航法手段12においてもジャイロセンサ14および加速度センサ15からの角速度および加速度の検出が開始される。
【0041】
そして、衛星航法手段11は、GPS受信機13による測位が所定の測位条件に適合しているか否かを判定する(ステップS103)。所定の測位条件に適合しているか否かの判別は、次の2点に基づいて行う。すなわち、第1点は、GPS受信機13のGPS衛星信号の受信状態が良好であるか否かである。受信状態が良好でない状態とは、所定数のGPS衛星からの信号を受信していない場合や、マルチパスの影響を受けている場合などである。第2点は、衛星航法手段11による測位結果から算出した車両の速度が所定値以上あるか否かにより判定する。
【0042】
ステップS103の判定の結果、GPS受信機13による測位が所定の測位条件に適合していないと判定されると、ステップS102の処理に戻り、所定の条件に適合していると判定されると、衛星航法手段11は、GPS受信機13による測位情報と前回の測位情報から角速度、加速度を算出する(ステップS104)。なお、GPS受信機13による測位は前述したように、所定の時間間隔、本実施例の場合は1秒間隔で行われる。
【0043】
次いで、推測航法手段12は、ジャイロセンサ14、加速度センサ15のそれぞれの検出出力から、車両の角速度、加速度を算出する(ステップS105)。推測航法手段12による測位も所定の時間間隔で行われる。本実施例の推測航法手段12においては、10msec毎に角速度、加速度を検出し、100msec毎に、10msec毎に検出した角速度、加速度(それぞれ10個のデータ)の平均値を算出し、さらに、算出された角速度、加速度の平均値を移動平均して、100msec毎に車両の角速度、加速度とする処理を行う。
【0044】
ここで、ステップS105における加速度の算出について説明を行う。
【0045】
衛星航法手段11により算出される加速度は重力成分のない動的加速度であるが、加速度センサ15から出力される加速度は、ナビゲーション装置1の取付け角や道路の路面角などにより、重力成分が動的加速度に影響を及ぼす場合がある。
【0046】
そのため、例えば、車両の停止時に加速度センサから出力される加速度を重力成分とし、重力成分を除いた加速度を本発明で用いる加速度とする。また、地図記憶手段16に記憶された道路データに道路の路面角データを含ませ、道路の路面角からナビゲーション装置1にかかる重力成分を算出し、重力成分を除いた加速度を本発明で用いる加速度とする。などの手法を用いることで本発明が可能となる。
【0047】
そして、制御手段10は衛星航法手段11が算出した角速度と、推測航法手段12が算出した角速度を比較してその差を算出する(ステップS106)。また、制御手段10は衛星航法手段11が算出した加速度と、推測航法手段12が算出した加速度を比較してその差を算出する(ステップS107)。
【0048】
ここで、差の算出について説明する。
【0049】
上記の通り衛星航法手段11による角速度、加速度の算出は1秒毎に行われ、推測航法手段12による角速度、加速度の算出は100msec毎に行われる。そのため、差の算出は、衛星航法手段11により算出された角速度、加速度と、衛星航法手段11により算出された角速度、加速度が算出されたときの推測航法手段12により算出された角速度、加速度とを夫々比較する。
【0050】
また、ハンドル操作などで一時的に誤差が生じた場合などを考慮し、衛星航法手段11により算出された角速度、加速度と衛星航法手段11により算出された角速度、加速度との差を夫々10回算出し、算出した夫々10個のデータの平均値を夫々の差として算出することが望ましい。
【0051】
次に、制御手段10は、ステップS106で算出した角速度の差、および、ステップS107で算出した加速度の差がそれぞれ所定の値以上であるか否かを判定する(ステップS108)。角速度の差、加速度の差がそれぞれ所定の値以下であれば、制御手段10は、ステップS112の処理に進み、衛星航法手段11および推測航法手段12による測位結果を併用して現在位置を表示する。
【0052】
ステップS108の判定の結果、角速度の差、加速度の差がどちらかでも所定の値以上であれば、制御手段10はステップS109の処理に進み、GPS受信機13による測位結果(衛星航法手段11による測位結果)に基づいて表示手段17に地図画像、現在位置を表示する。
【0053】
そして、制御手段10は車両が停車状態にあるか否かを判定する(ステップS110)。車両の停車状態は、例えば、ジャイロセンサ14および加速度センサ15の出力変動値が何れも所定の値よりも小さい場合に停車を判定することができる。あるいは、ナビゲーション装置1の電源が切断された場合に停車を判定し、ナビゲーション装置1に内蔵されたバッテリでの電源供給に切り替え、その後の処理を行うようになすることもできる。
【0054】
ステップS110の判定処理の結果、車両が停車状態になければステップS103の処理に戻り、車両が停車状態にあればステップS111のセンサ補正の処理に進む。ステップS111のセンサ補正処理は、以下のように行う。すなわち、車両は停止状態であるので、ジャイロセンサ14、加速度センサ15の出力は「0」となるべきものであるから、ジャイロセンサ14、加速度センサ15から何らかの値の出力があった場合には、その値を補正値として設定し、以後このジャイロセンサ14、加速度センサ15の出力からこの補正値を差し引いて、出力値が「0」となるように補正するものである。
【0055】
ステップS111のセンサ補正の処理が完了すると処理はステップS103に戻る。そのため、ステップS103からステップS108の処理が再度行われ、衛星航法手段11および推測航法手段12によりそれぞれ算出した角速度の差、加速度の差が所定値以下になったか否かが確認されるため、正しくセンサ補正が行われたか否か判別でき、正しくセンサ補正が行われていない場合は、衛星航法手段11および推測航法手段12によりそれぞれ算出した角速度の差、加速度の差が所定の範囲以下になったことが確認されるまで、ステップS103〜ステップS111の処理を繰り返す。そのため、正しくセンサ補正が行われていないのに、衛星航法手段11および推測航法手段12による測位結果を併用して現在位置を表示することを防ぐことが可能である。
【0056】
なお、ステップS110の判定処理の結果、車両が停車状態になければステップS103の処理に戻る理由としては、例えば、ジャイロセンサ14、加速度センサ15は正常に動作しているときでも、ハンドル操作などにより一時的に上記差が所定値以上となった場合に、次に停車するまで衛星航法手段11により算出される位置情報しか現在位置表示に用いられないのを防ぐためである。
【0057】
以上の処理により、ナビゲーション装置1が起動された際の処理は完了する。この処理が完了し、ナビゲーション装置1が通常の運用状態、すなわち、推測航法手段12の作動が開始され、衛星航法手段11および推測航法手段12による測位結果を併用して現在位置を表示する。
図3は、推測航法作動中の動作手順を示すフローチャートである。
【0058】
図3のフローチャートにおいて、GPS受信機13によるGPS衛星信号の受信、測位、すなわち、衛星航法手段11による現在位置の測位および推測航法手段12による現在位置の測位が行われ、これらの測位結果を併用して検出される車両の現在位置を含む地図画像を表示手段17に表示するとともに車両の現在位置を表示し(ステップS201)、衛星航法手段11は、GPS受信機13による測位が所定の測位条件に適合しているか否かを判定する(ステップS202)。測位条件に適合するか否かの判定方法は、図2のフローチャートで説明したのと同様の方法である。
【0059】
ステップS202の判定の結果、GPS受信機13による測位が所定の測位条件に適合していないと判定されると、ステップS201の衛星航法手段11による測位の処理に戻り、所定の条件に適合していると判定されると、衛星航法手段11は、GPS受信機13による測位情報と前回の測位情報から角速度、加速度を算出する(ステップS203)。
【0060】
次いで、推測航法手段12は、ジャイロセンサ14、加速度センサ15のそれぞれの検出出力から、車両の角速度、加速度を算出し(ステップS204)、制御手段10は、衛星航法手段11が算出した角速度と、推測航法手段12が算出した角速度を比較してその差を算出する(ステップS205)。また、制御手段10は衛星航法手段11が算出した加速度と、推測航法手段12が算出した加速度を比較してその差を算出する(ステップS206)。
【0061】
次に、制御手段10は、ステップS205で算出した角速度の差、および、ステップS206で算出した加速度の差がそれぞれ所定の値以上であるか否かを判定する(ステップS207)。角速度の差、加速度の差がそれぞれ所定の値以下であれば、制御手段10は、ステップS213の処理に進み、衛星航法手段11および推測航法手段12による測位結果を併用して現在位置を表示する。
【0062】
ステップS207の判定の結果、角速度の差、加速度の差のどちらかが所定の値以上であれば、制御手段10はステップS208の処理に進み、推測航法手段12による現在位置情報の使用を停止し、GPS受信機13による測位結果(衛星航法手段11による測位結果)に基づいて表示手段17に地図画像、現在位置を表示する。
【0063】
そして、制御手段10は車両が停車状態にあるか否かを判定する(ステップS209)。車両の停車状態は、図2の手順で説明したと同様の方法で判定する。ステップS209の判定処理の結果、車両が停車状態になければステップS208の処理に戻り、車両が停車状態にあればステップS210のセンサ補正の処理に進む。ステップS210の処理におけるジャイロセンサ14および加速度センサ15の補正方法は、図2のステップS111の処理で説明したのと同様の方法である。
【0064】
従来のセンサ補正を行う制御方法によれば、センサ(ジャイロセンサ14や加速度センサ15)の補正が正しく行われたものとして、衛星航法手段11および推測航法手段12による測位結果を併用して現在位置を表示する、通常運用状態に戻る。しかしながら、何らかの原因でセンサの補正が正しく完了していない場合も有り得る。そこで、本発明においては、以下に説明するステップS211、S212の処理ルーチンを追加し、センサ補正の処理の結果を確認して、衛星航法手段11および推測航法手段12による測位結果を併用する状態に戻るようにしている。
【0065】
すなわち、ステップS210のセンサ補正の処理が完了すると、衛星航法手段11は、GPS受信機13による測位が所定の測位条件に適合しているか否かを判定する(ステップS211)。ステップS211の判定の結果、GPS受信機13による測位が所定の測位条件に適合していないと判定されると、制御手段10はステップS212の処理に進み、GPS受信機13による測位結果(衛星航法手段11による測位結果)に基づいて表示手段17に地図画像、現在位置を表示して、ステップS211の処理に戻る。
【0066】
ステップS211の判定処理の結果、GPS受信機13による測位が所定の測位条件に適合していると判定されると、ステップS203の処理に戻り、ステップS203〜ステップS210の処理ルーチンを繰り返す。センサ補正処理が正しく完了していれば、この処理ルーチンにおいて、衛星航法手段11が算出した角速度、加速度と、推測航法手段12が算出した角速度、角速度の差が所定の値以下になる筈であるから、ステップS207の判定結果が「NO」になり、ステップS201の処理に戻り、衛星航法手段11および推測航法手段12による測位結果を併用して現在位置を表示する通常の状態に戻ることができる。
【0067】
一方、ステップS211の判定の結果、GPS受信機13による測位が所定の測位条件に適合していないと判定された場合であっても、走行を継続する間に、GPS受信機13による測位結果が測位条件に合致する状態に復帰する筈であるから、その時点で、ステップS203に戻るルーチンに処理が移行することになる。
【0068】
なお、上記の実施例においては、推測航法手段がジャイロセンサおよび加速度センサを備える構成を説明したが、本発明は、この構成に限られるものではなく、推測航法手段は、車両の挙動を検出する種々のセンサ、例えば、舵角センサや地磁気センサ、車速センサナドを含んで構成されていてもよく、推測航法手段が各種センサの出力に基づいて、車両の角速度、加速度を算出して現在位置を測位できればよい。
【0069】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかる車載用のナビゲーション装置によれば、GPS受信機により測位した位置情報から得られる、角速度、加速度と、ジャイロセンサ、加速度センサにより算出した角速度、加速度とを比較し、差が所定値以上の場合に、ジャイロセンサ、加速度センサ出力を補正するようにしたナビゲーション装置において、各種センサの補正後に、再度両者の差を確認した後に衛星航法と推測航法を併用することにより正しい位置情報を得られるようになる。
【符号の説明】
【0070】
1: ナビゲーション装置
10: 制御手段
11: 衛星航法手段
12: 推測航法(自律航法)手段
13: GPS受信機
14: ジャイロセンサ
15: 加速度センサ
16: 地図記憶手段
17: 表示手段
18: 入力手段
19: 音声出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS受信機を有する衛星航法手段と、車両の挙動を検出するセンサを有する推測航法手段と、を備え、前記衛星航法手段による測位結果と前記推測航法手段による測位結果とを用いて車両の現在位置を表示手段に表示する制御手段を有するナビゲーション装置において、
前記制御手段は、前記衛星航法手段が測位した測位結果に基づいて、車両の角速度および/または加速度を算出するとともに、前記算出した角速度および/または加速度と、前記センサの出力に基づいて算出される角速度および/または加速度との差を算出し、前記算出した差が所定の値を超えているか否かを判定し、前記算出した差が所定の値を超えている場合、前記衛星航法手段による測位結果のみを用いて車両の現在位置を表示手段に表示し、前記センサの出力を補正した後、再度、前記衛星航法手段が測位した測位結果に基づいて、車両の角速度および/または加速度を算出するとともに、前記算出した角速度および/または加速度と、前記センサの出力に基づいて算出される角速度および/または加速度との差を算出し、前記算出した差が所定の値を超えているか否かを判定し、超えていない場合、前記衛星航法手段による測位結果と前記推測航法手段による測位結果を併用して車両の現在位置を表示手段に表示するように構成したことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記推測航法の有する車両の挙動を検出するセンサには、少なくとも車両の角速度を検出するジャイロセンサおよび/または車両の加速度を検出する加速度センサが含まれることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記ナビゲーション装置は、さらに、車両の停車を検出する停車検出手段を有し、
前記制御手段は、前記停車検出手段により車両の停車が検出されると、前記車両の挙動を検出するセンサの出力に基づいて、前記車両の挙動を検出するセンサの出力を0とする補正値を設定し、前記車両の挙動を検出するセンサの出力から前記補正値を差し引くことで前記補正を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−276527(P2010−276527A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130719(P2009−130719)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】