説明

ナビゲーション装置

【課題】必要に応じて自動的に投射映像の表示が開始される車載用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】自車両の周辺を撮影し映像信号を出力するカメラ群180と、自車両が走行する道路において、自車両が走行可能な道路幅が所定幅以下であることを検知する隘路検知部113と、検知に応じて、道路において自車両による走行が困難か否かを判定する難路判定部114と、難路判定部114により走行が困難であると判定されたことに応じて、映像信号に基づく投射映像を表示する投射映像表示部117と、を備える車載用ナビゲーション装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられた複数のカメラで車両周辺を撮影し、車両上空の所定の視点から車両を見下ろした投射映像を作成する技術が公知である(例えば特許文献1)。車両の運転中にこのような投射映像を表示することにより、運転者の運転を支援することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−7299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用ナビゲーション装置において特許文献1に記載された投射映像を表示する場合、1つの画面に投射映像を表示するか地図を表示するかをユーザに逐一選択させる必要があり、操作が煩雑になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、自車両の周辺を撮影し映像信号を出力する撮影手段と、自車両が走行する道路において、自車両が走行可能な道路幅が所定幅以下であることを検知する検知手段と、検知に応じて、道路において自車両による走行が困難か否かを判定する判定手段と、判定手段により走行が困難であると判定されたことに応じて、映像信号に基づく映像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とするナビゲーション装置である。
請求項6に係る発明は、自車両の周辺を撮影し映像信号を出力する撮影手段と、自車両が走行する道路において、自車両による走行が困難か否かを判定する判定手段と、判定手段により走行が困難であると判定されたことに応じて、映像信号に基づく映像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とするナビゲーション装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、必要に応じて自動的に投射映像の表示が開始されるので、車載用ナビゲーション装置の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車載用ナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】投射映像表示部117が作成する投射映像の例を示す図である。
【図3】経路誘導中ではないときの難路判定部114による判定の具体例を示す模式図である。
【図4】経路案内部112および投射映像表示部117による表示画面の例を示す図である。
【図5】経路誘導中の難路判定部114による判定の具体例を示す模式図である。
【図6】制御回路110による投射映像の表示処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車載用ナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。車載用ナビゲーション装置100(以下、ナビゲーション装置100と呼ぶことがある)は車両に搭載される車載型の装置である。以下の説明では、ナビゲーション装置100が搭載されている車両を自車両と呼ぶ。ナビゲーション装置100は、自車両が目的地に到達するための経路を探索する経路探索機能、および、自車両を当該経路に従って案内する経路案内機能を有する。
【0009】
ナビゲーション装置100は、CPU、主記憶装置、周辺回路等を含む制御回路110を備える。制御回路110には不揮発性の記憶媒体であるフラッシュメモリ120が接続されている。制御回路110は、フラッシュメモリ120に格納された所定の制御プログラムを読み込んで実行することにより、ナビゲーション装置100を構成する各部の制御処理と、後述する経路探索処理および経路案内処理とを行う。
【0010】
制御回路110には、大容量の固定記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)130が接続されている。HDD130には地図データ131が格納されている。地図データ131については後に詳述する。
【0011】
制御回路110には現在地検出装置170が接続されている。現在地検出装置170は自車両の現在地を検出し、制御回路110に出力する装置である。現在地検出装置170は、振動ジャイロ171、速度センサ172、加速度センサ173、およびGPS(Global Positioning System)センサ174を備える。振動ジャイロ171は自車両の角速度を検出する。速度センサ172は自車両の速度を検出する。加速度センサ173は自車両の加速度を検出する。GPSセンサ174はGPS衛星から送出されるGPS信号を検出する。現在地検出装置170はこれらのセンサにより検知された各情報から、周知の方法により自車両の現在地を検出して制御回路110へ出力する。
【0012】
ナビゲーション装置100は、表示装置140とスピーカ150とを備える。表示装置140は例えば液晶ディスプレイ等であり、制御回路110が出力する画像信号に基づいて、画面に画像や文字列を表示する。スピーカ150は制御回路110が出力する音声信号に基づいて、ユーザに対し音声を流す。ナビゲーション装置100には更に、タッチパネル等の入力装置160が設けられており、ユーザによる操作に応じて制御回路110に操作信号が入力されるようになっている。
【0013】
制御回路110には、4つのカメラ(前方カメラ180a、右方カメラ180b、左方カメラ180c、後方カメラ180d)から構成されるカメラ群180が接続されている。これらのカメラは、それぞれ自車両の周辺を撮影し映像信号を出力する。この映像信号については後に詳述する。
【0014】
ナビゲーション装置100は、角度検出装置190を備える。角度検出装置190は、自車両のヨー角(操舵角)、ピッチ角、およびロール角をそれぞれ検出する3つのセンサ(不図示)から成る装置である。検出されたヨー角、ピッチ角、およびロール角はそれぞれ制御回路110に出力される。
【0015】
制御回路110は、経路探索部111、経路案内部112、隘路検知部113、難路判定部114、曲率算出部115、勾配算出部116、投射映像表示部117、および自車位置判定部118を備える。これらの各機能部は、制御回路110がフラッシュメモリ120に格納された制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。これらの各機能部については後に説明する。
【0016】
(地図データ131の説明)
地図データ131は、地図表示用データ、経路探索用データなどを含む。地図表示用データおよび経路探索用データには、地図データに格納されている道路のリンク情報およびノード情報が含まれている。なお、周知のようにリンクは地図データにおいて道路の一区間を表す最小単位であり、各道路は複数のリンクによって構成されている。このリンクのそれぞれは、位置情報(座標情報)を有するノードと形状補間点によって、その座標と形状が決定されている。ここで、リンクとリンクの間はノードによって接続されており、道路形状を適切に表すために、リンク内に単数または複数の形状補間点が置かれている場合もある。
【0017】
リンク情報には、各リンクが表す道路の幅員情報、勾配情報、および片勾配(バンク角)情報と、各リンクの旅行時間(以下、リンク旅行時間)の情報とが含まれている。地図表示用データは、広域から詳細まで複数の縮尺の地図データを有している。制御回路110は表示装置140に地図を表示する際、ユーザの要求に従って、表示地図の縮尺を変更することが可能である。なお本発明において片勾配とは、道路の横断方向(幅方向)の傾斜をいう。片勾配の例としては、道路の曲線区間に対して遠心力の影響を打ち消すため、路面を曲線の内側に傾けるようにしたものが挙げられる。
【0018】
(経路探索部111の説明)
経路探索部111は、自車両の現在地からユーザにより設定された目的地までの最適な経路を探索する処理である、経路探索処理を実行する。目的地がユーザにより設定されると、経路探索部111は現在地検出装置170により検出された現在地を出発地として目的地までの経路演算を所定のアルゴリズムに基づいて行う。例えば、出発地から目的地までの間の旅行時間(リンク旅行時間の合計)が最小になるような経路を演算するアルゴリズムで経路演算が行われる。以上の経路探索処理により求められた経路(以下、推奨経路という)は、表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、他の道路とは区別して画面に表示される。これにより、ユーザは推奨経路を地図画面上で認識することができる。
【0019】
(経路案内部112の説明)
経路案内部112は経路案内処理を実行する。経路案内処理とは、自車両の運転者が経路探索部111により探索された推奨経路に従って自車両を走行させられるように、運転者に対して表示装置140の画面やスピーカ150による音声などにより進行方向指示を行い、自車両を経路誘導する処理である。
【0020】
経路案内処理の実行中、経路案内部112は表示装置140の画面に、自車両の周辺地域の地図を表示する。そして、地図上に、自車両の向きおよび現在地を表すマークを表示する。本実施形態では、このマークは三角形である。以下、このマークを自車位置マークと呼ぶ。
【0021】
(投射映像表示部117の説明)
投射映像表示部117は、自車両上空の所定の視点から車両を見下ろした投射映像を、表示装置140の画面に表示する。投射映像表示部117はこの投射映像を、カメラ群180により出力される映像信号に基づき、例えば特許文献1に記載されているような周知の技術により作成する。
【0022】
図2(a)は道路21を走行中の自車両20を上空から見た様子を示す模式図であり、図2(b)は図2(a)の場合に投射映像表示部117により作成される投射映像22を示す図である。図2(a)に示すように、自車両20の四方にはそれぞれ4つのカメラ180a〜180dが設置されている。これらのカメラは自車両20の周辺を撮影し映像信号を出力する。投射映像表示部117は、前方カメラ180aの出力から投射映像22の領域22aを、右方カメラ180bの出力から投射映像22の領域22bをそれぞれ作成する。同様に、左方カメラ180cの出力からは投射映像22の領域22cが、後方カメラ180dの出力からは投射映像22の領域22dがそれぞれ作成される。その後、投射映像表示部117は、これら4つの領域22a〜22dを繋ぎ合わせることにより、最終的な投射映像22を作成する。
【0023】
投射映像表示部117は、後述する難路判定部114により走行が困難であると判定されると、上述の手順による投射映像の表示を開始する。その後、難路判定部114により走行が困難ではないと判定されるようになると、投射映像の表示を停止する。投射映像の表示タイミングについては後に詳述する。
【0024】
(隘路検知部113の説明)
隘路検知部113は、自車両が走行する道路において、自車両が走行可能な道路幅が所定幅以下であることを検知する。具体的には、まず現在地検出装置170により検出された現在地から、自車両が走行中の道路を特定する。次に、地図データ131を参照することにより、当該道路に対応するリンクのリンク情報を取得する。そして、当該リンク情報に含まれる幅員情報を所定幅と比較することにより、自車両が走行可能な道路幅が所定幅以下であることを検知する。
【0025】
(難路判定部114の説明)
難路判定部114は、隘路検知部113により道路幅が所定幅以下であることが検知されてたことに応じて、自車両の走行が困難か否かを判定する。難路判定部114による具体的な判定の内容は、経路案内部112による経路誘導が行われている場合とそうでない場合とで変化する。以下では、まず経路誘導が行われていない場合について説明する。
【0026】
経路案内部112による経路誘導が行われていない場合、難路判定部114は、角度検出装置190の出力に基づいて走行が困難か否かを判定する。具体的には、角度検出装置190が出力するヨー角、ピッチ角、およびロール角のいずれか少なくとも1つの値が所定角度以上であれば、走行が困難であると判定する。なお、上記の所定角度はヨー角、ピッチ角、およびロール角のそれぞれに対して個別に定められている。
【0027】
図3は、難路判定部114による判定の具体例を示す模式図であり、道路幅が所定幅以下の道路30を走行中の自車両の様子が示されている。また、図4は経路案内部112および投射映像表示部117による表示画面の例を示す図であり、図4(a)〜(c)の各図が図3における位置31a〜31cにそれぞれ対応している。なお、図3において黒く塗りつぶされた四角形32は、自車両の車輪を模式的に表したものである。
【0028】
自車両が位置31aを走行中であるとき、表示装置140は図4(a)に示す地図画面40aを表示する。地図画面40aには道路42と、道路42を走行中の自車両の位置および向きを表す自車位置マーク41aとを含む自車両周辺の地図が表示されている。ここで、自車両が位置31bに移動し、位置31bにおいてヨー角(操舵角)が所定角度以上になったとする。この場合、位置31bにおいて難路判定部114により走行が困難であると判定され、投射映像表示部117はこの判定に応じて投射映像の表示を開始する。その結果、表示装置140の表示画面は地図を表示する領域と投射映像を表示する領域とに分割される。具体的には、図4(b)に示す画面40bが表示装置140に表示される。画面40bの左側の領域43には経路案内部112により現在地周辺の地図が、画面40bの右側の領域44には投射映像表示部117による投射映像がそれぞれ表示されている。
【0029】
自車両が図3に示す位置31bから位置31cに移動し、位置31cにおいてヨー角(操舵角)が所定角度未満になったとする。このとき、位置31cにおいて難路判定部114により走行が困難ではないと判定され、投射映像表示部117はこの判定に応じて投射映像の表示を停止する。その結果、表示装置140の表示画面は図4(b)のように投射映像が表示された画面40bから、図4(c)に示す地図画面40cに復帰する。
【0030】
なお、以上の説明ではヨー角(操舵角)について説明したが、ロール角およびピッチ角についても同様である。
【0031】
次に、経路誘導が行われている場合における、難路判定部114による判定の内容について説明する。経路誘導が行われているとき、曲率算出部115が、推奨経路のうち自車両の現在地から所定距離前方の道路の曲率を継続的に算出する。曲率算出部115による曲率の算出は、地図データ131に含まれるリンク情報に基づく周知の手法により行われる。また経路誘導が行われているとき、勾配算出部116は、推奨経路のうち自車両の現在地から所定距離前方の道路の勾配および片勾配を継続的に算出する。前述の通り、地図データ131は道路の勾配情報および片勾配情報を含んでいる。勾配算出部116による勾配および片勾配の算出は、地図データ131に含まれる上記の勾配情報および片勾配情報を参照することにより行われる。
【0032】
経路誘導が行われている場合、難路判定部114は、曲率算出部115により算出された曲率と、勾配算出部116により算出された勾配および片勾配と、に基づいて走行が困難か否かを判定する。具体的には、曲率、勾配、および片勾配のいずれか少なくとも1つの値が所定値以上であれば、走行が困難であると判定する。なお、上記の所定値は曲率、勾配、および片勾配のそれぞれに対して個別に定められている。
【0033】
図5は、経路誘導中の難路判定部114による判定の具体例を示す模式図である。図5において、黒く塗りつぶされた丸はノードを、ノードを結ぶ実線はリンクを、リンク上の三角形は自車両の現在地および向きを、それぞれ表している。また、白抜きの実線は当該リンクが推奨経路を構成することを表し、白抜きの丸は形状補間点を表す。
【0034】
図5(a)には、2つのノード51a、51bと、これらのノードを結ぶリンク52が示されている。また、リンク52は経路探索部111により算出された推奨経路の一部である。曲率算出部115は、推奨経路のうち自車両の現在地53から所定距離54だけ前方の所定範囲55について、曲率を算出する。例えば図5(a)に示す状態では、所定範囲55の道路は直線状になっているので、曲率算出部115は曲率の値として0を算出する。
【0035】
図5(b)には、6つのノード56a〜56fと、これらの各ノードを接続する5つのリンク58a〜58eが示されている。また、リンク58eは、3つの形状補間点57a〜57cを含む。図5(b)において、経路探索部111は、ノード56a、リンク58b、ノード56c、リンク58d、ノード56e、リンク58e、ノード56f、という経路を推奨経路として算出している。
【0036】
曲率算出部115は図5(a)の場合と同様に、推奨経路のうち自車両の現在地59から所定距離54だけ前方の所定範囲55について、曲率を算出する。このとき所定範囲55には、複数の形状補間点からなる曲線区間が含まれているので、図5(a)の場合とは異なり曲率の値は0より大きくなる。難路判定部114は、この曲率の値が所定値以上であれば、走行が困難であると判定する。投射映像表示部117はこの判定に応じて、図4に示す形で投射映像を表示する。
【0037】
なお、所定距離54は、推奨経路上の所定距離である。従って、例えば図5(c)のように、推奨経路が分岐を含んでいる場合には、所定範囲55は推奨経路の分岐を辿った先となる。図5(c)の例では、ノード60a、リンク61b、ノード60d、リンク61c、ノード60c、リンク61e、という推奨経路において、自車両の現在地59から所定距離54だけ先の推奨経路上の所定範囲55について曲率が算出される。
【0038】
なお、以上の説明では曲率算出部115による曲率の算出について説明したが、勾配算出部116による道路の勾配および片勾配の算出についても同様に、所定範囲55における勾配および片勾配が算出される。勾配の値が所定値以上であった場合、および、片勾配の値が所定値以上であった場合の投射映像表示部117による投射映像の表示についても同様である。
【0039】
経路誘導が行われている場合、投射映像表示部117は、難路判定部114により走行が困難でないと判定されるようになってもすぐに投射映像の表示を停止しない。代わりに、投射映像表示部117は、難路判定部114により走行が困難であると判定される原因となった所定範囲55が通過された時点で、投射映像の表示を停止する。また、自車両が推奨経路から外れ、経路探索部111による再度の経路探索(いわゆるリルート処理)が必要になった場合にも、投射映像表示部117は投射映像の表示を停止する。上記の判定(自車両が所定範囲55を通過したか否かの判定ならびに自車両が推奨経路から外れたか否かの判定)は、自車位置判定部118により行われる。
【0040】
図6は、制御回路110による投射映像の表示処理のフローチャートである。図6に示す処理は、制御回路110がフラッシュメモリ120から読み込んだ所定の制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。
【0041】
まずステップS600では、隘路検知部113が、自車両が走行中の道路の道路幅が所定幅以下であるか否かを判定する。道路幅が所定幅以下であると判定されるまで、ステップS600の処理を繰り返す。他方、ステップS600において肯定判定がなされた場合、すなわち隘路検知部113により道路幅が所定幅以下であることが検知された場合には、処理はステップS610に進む。
【0042】
ステップS610では、難路判定部114が、経路案内部112により経路誘導が行われているか否かを判定する。経路誘導が行われている場合には難路判定部114により肯定判定がなされ、処理はステップS620に進む。他方、難路判定部114により否定判定がなされた場合には、ステップS690に進む。
【0043】
ステップS620では、曲率算出部115が、推奨経路のうち自車両の現在地から所定距離前方の所定範囲の道路の曲率を算出する。ステップS630では、難路判定部114が、ステップS620で算出された曲率が所定値以上であるか否かを判定する。曲率が所定値以上であった場合には難路判定部114により肯定判定がなされ、処理はステップS660に進む。他方、ステップS630において否定判定がなされた場合には、処理はステップS640に進む。
【0044】
ステップS640では、勾配算出部116が、推奨経路のうち自車両の現在地から所定距離前方の所定範囲の道路の勾配および片勾配を算出する。ステップS650では、難路判定部114が、ステップS620で算出された勾配および片勾配のいずれか少なくとも一方が、所定値以上であるか否かを判定する。勾配または片勾配が所定値以上であった場合には難路判定部114により肯定判定がなされ、処理はステップS660に進む。他方、ステップS650において否定判定がなされた場合には、処理はステップS620に戻る。
【0045】
ステップS660では、投射映像表示部117が投射映像を作成し、表示装置140は画面に作成された投射映像の表示を開始する。ステップS670では、自車位置判定部118が、難路判定部114により肯定判定がなされる原因となった所定範囲を通過したか否かを判定する。所定範囲を通過していた場合には、自車位置判定部118により肯定判定がなされ、処理はステップS740に進む。他方、ステップS670において否定判定がなされた場合には、処理はステップS680に進む。
【0046】
ステップS680では、自車位置判定部118が、自車両が推奨経路外に移動したか否かを判定する。自車両が推奨経路外に移動していた場合には、自車位置判定部118により肯定判定がなされ、処理はステップS740に進む。他方、ステップS680において否定判定がなされた場合には、処理はステップS670に戻る。ステップS740では、投射映像表示部117が投射映像の表示を停止し、本処理を終了する。
【0047】
ステップS690では、角度検出装置190が、自車両のヨー角(操舵角)、ピッチ角、ロール角をそれぞれ検出する。ステップS700では、難路判定部114が、ステップS690において検出された3つの値のうちいずれか少なくとも1つが所定値以上であるか否かを判定する。3つの値のうちいずれか少なくとも1つが所定値以上であった場合には、難路判定部114により肯定判定がなされ、処理はステップS710に進む。他方、ステップS700において否定判定がなされた場合には、処理はステップS690に戻る。
【0048】
ステップS710では、ステップS660と同様に、投射映像表示部117が表示装置140の画面に投射映像の表示を開始する。ステップS720では、ステップS690と同様に、角度検出装置190がヨー角(操舵角)、ピッチ角、およびロール角を検出する。ステップS730では、ステップS700と同様に、難路判定部114がステップS720において検出された3つの値全てが所定値未満であるか否かを判定する。3つの値全てが所定値未満であった場合には、難路判定部114により肯定判定がなされ、処理はステップS740に進む。ステップS740では、投射映像表示部117が投射映像の表示を停止し、本処理を終了する。他方、ステップS730において否定判定がなされた場合には、処理はステップS720に戻る。
【0049】
なお、ステップS620〜S650、ステップS690、およびステップS700において、隘路検知部113により道路幅が所定幅より大きくなったことが検知された場合には、図6に示す処理は直ちに終了する。
【0050】
上述した第1の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)隘路検知部113により自車両が走行可能な道路幅が所定幅以下であることが検知されたことに応じて、難路判定部114が走行が困難か否かを判定する。走行が困難であると判定されると、投射映像表示部117がカメラ群180により出力される映像信号に基づく投射映像を表示装置140に表示させる。このようにしたので、必要に応じて自動的に投射映像の表示が開始されるため、映像を選択する必要がなくなり操作性が向上する。
【0051】
(2)難路判定部114は、経路案内部112により経路誘導が行われていない場合には、角度検出装置190により検出された自車両のヨー角が所定角度以上であれば走行が困難であると判定する。また、経路誘導が行われている場合には、曲率算出部115により算出された前方の道路の曲率が所定値以上であれば走行が困難であると判定する。このようにしたので、急なカーブや曲がり角において自動的に投射映像の表示が開始され、カーブや曲がり角を曲がる際の安全確認を容易に行うことができる。
【0052】
(3)難路判定部114は、経路案内部112により経路誘導が行われていない場合には、角度検出装置190により検出された自車両のピッチ角およびロール角のうち少なくとも1つが所定角度以上であれば走行が困難であると判定する。また、経路誘導が行われている場合には、勾配算出部116により算出された前方の道路の勾配および片勾配のうち少なくとも1つが所定値以上であれば走行が困難であると判定する。このようにしたので、急な坂道やバンクが付いた道路のように運転の難易度が高い道路において自動的に投射映像の表示が開始され、運転の難易度を下げることができる。
【0053】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0054】
(変形例1)
第1の実施形態では、自車両のピッチ角を角度検出装置190により検出していた。自車両のピッチ角を、現在地検出装置170により検出された現在地と、HDD130に格納されている地図データ131とから算出してもよい。具体的には、地図データ131から現在走行中の道路勾配を算出すれば、自車両のピッチ角を算出することが可能である。
【0055】
(変形例2)
隘路検知部113が、地図データ131内の幅員情報を参照する以外の方法により道路幅が所定幅以下であることを検知するようにしてもよい。例えば、リンク情報に例えば国道、都道府県道などの道路種別情報が含まれるようにして、国道であれば5m、都道府県道であれば3mというように、道路種別ごとに所定の道路幅を割り当てるようにしてもよい。また、カメラ群180が出力する映像信号に周知の画像処理を行い、白線を認識することにより道路幅を取得するようにしてもよい。あるいは、自車両の側方に存在する壁やガードレールまでの距離をセンサにより検知することにより道路幅を取得する構成とすることも可能である。
【0056】
(変形例3)
隘路検知部113が、道路固有の道路幅ではなく、自車両が実際に走行可能な幅が所定幅以下であることを検知するようにしてもよい。例えば道路工事が行われている区間は、道路幅よりも走行可能な幅が狭くなることになるし、対向車とすれ違う場合には、対向車の車幅の分だけ道路幅が狭くなることを考慮した上で、走行可能な幅が所定幅以下であるか否かを判定することとなる。なお、対向車および対向車の車幅の検知は、カメラ群180と周知の画像処理、センサによる検知、テレマティクスによる車車間通信等により行うことができる。
【0057】
(変形例4)
経路誘導中ではないとき、難路判定部114による判定が変化しても、投射映像表示部117が投射映像の表示を直ちに停止させないようにしてもよい。例えば、難路判定部114が走行が困難ではないと判定した後、一定時間が経過して初めて投射映像の表示を停止させるようにしてもよいし、一定距離を走行した後に投射映像の表示を停止させるようにしてもよい。経路誘導中においても、第1の実施形態で示したように、所定範囲を通過した後直ちに投射映像の表示を停止させなくてもよい。
【0058】
(変形例5)
第1の実施形態では、経路誘導中ではないとき、自車両のヨー角(操舵角)、ピッチ角、ロール角のいずれか少なくとも1つが所定角度以上になった場合に、難路判定部114が走行が困難であると判定する。本発明はこのような構成に限定されない。例えば、ヨー角、ピッチ角、ロール角の少なくとも2つが所定角度以上になった場合に走行が困難であると判定されるようにしてもよいし、3つ全てが所定角度以上になるまで走行が困難であると判定されないようにしてもよい。また、ヨー角、ピッチ角、ロール角以外の条件に基づいて自車両の走行が困難であるか否かを判定するようにしてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(変形例6)
第1の実施形態では、経路誘導中において、推奨経路のうち自車両の現在地から所定距離だけ前方の所定範囲の道路の曲率、勾配、片勾配のいずれか少なくとも1つが所定値以上になった場合に、難路判定部114が走行が困難であると判定する。本発明はこのような構成に限定されない。例えば、曲率、勾配、片勾配の少なくとも2つが所定値以上になった場合に走行が困難であると判定されるようにしてもよいし、3つ全てが所定値以上になるまで走行が困難であると判定されないようにしてもよい。また、曲率、勾配、片勾配以外の条件に基づいて自車両の走行が困難であるか否かを判定するようにしてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。例えば、自車両前方の推奨経路に所定角度以上のカーブが存在するか否かを判定条件の1つとしてもよいし、当該カーブを曲がるために必要な切り返しの回数を判定条件の1つとしてもよい。また、当該カーブを過去に曲がったときの切り返しの回数を記憶しておき、この回数が所定回数以上であった場合には、当該カーブに再度差し掛かったときに自車両の走行が困難であると判定するようにしてもよい。その他、自車両前方の推奨経路上の所定範囲がスクールゾーンや事故多発地点であるか否かを判定条件の1つとすることも可能である。
【0060】
(変形例7)
第1の実施形態では、リンク情報が勾配情報を含んでおり、勾配算出部116はこの勾配情報から道路の勾配を算出していた。本発明はこのような構成に限定されない。例えば、ノード情報に標高情報が含まれるようにし、リンクの両端のノードの標高情報から道路の勾配を算出するようにしてもよい。
【0061】
(変形例8)
地図データ131は、HDD130以外の記憶手段に記憶させてもよい。例えばDVD−ROM等の記憶媒体を用いてもよいし、ナビゲーション装置100の外部から無線通信により地図データ131を受信するようにしてもよい。
【0062】
(変形例9)
投射映像表示部117が、複数のカメラから成るカメラ群180に基づく投射映像以外の映像を表示してもよい。例えば、ナビゲーション装置100が前方カメラ180aのみを有するようにして、投射映像表示部117が前方カメラ180aからの映像信号に基づく映像を表示装置140に表示するようにしてもよい。
【0063】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
100…車載用ナビゲーション装置、110…制御回路、111…経路探索部、112…経路案内部、113…隘路検知部、114…難路判定部、115…曲率算出部、116…勾配算出部、117…投射映像表示部、120…フラッシュメモリ、130…ハードディスクドライブ(HDD)、170…現在地検出装置、180…カメラ群、190…角度検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺を撮影し映像信号を出力する撮影手段と、
自車両が走行する道路において、自車両が走行可能な道路幅が所定幅以下であることを検知する検知手段と、
前記検知に応じて、前記道路において自車両による走行が困難か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により走行が困難であると判定されたことに応じて、前記映像信号に基づく映像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
出発地から目的地に至る推奨経路を探索する経路探索手段と、
前記推奨経路に従って自車両の経路誘導を行う経路誘導手段と、
自車両のヨー角を検出する第1センサとを更に備え、
前記判定手段は、前記経路誘導手段により経路誘導が行われていない場合には、前記ヨー角が所定角度以上であれば前記道路において走行が困難であると判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
自車両のピッチ角およびロール角のうち少なくとも1つを検出する第2センサを更に備え、
前記判定手段は、前記経路誘導手段により経路誘導が行われていない場合には、前記ヨー角に加えて、前記第2センサにより検出された角度が所定角度以上であれば、前記道路において走行が困難であると判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のナビゲーション装置において、
前記推奨経路のうち自車両の現在地から所定距離前方の道路の曲率を算出する曲率算出手段を更に備え、
前記判定手段は、前記経路誘導手段により経路誘導が行われている場合には、前記曲率が所定値以上であれば前記道路において走行が困難であると判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4に記載のナビゲーション装置において、
前記推奨経路のうち自車両の現在地から所定距離前方の道路の勾配および片勾配のうち少なくとも1つを算出する勾配算出手段を更に備え、
前記判定手段は、前記経路誘導手段により経路誘導が行われている場合には、前記曲率が所定値以上であることに加えて、前記勾配算出手段により算出された値が所定値以上であれば、前記道路において走行が困難であると判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
自車両の周辺を撮影し映像信号を出力する撮影手段と、
自車両が走行する道路において、自車両による走行が困難か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により走行が困難であると判定されたことに応じて、前記映像信号に基づく映像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−235847(P2011−235847A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111161(P2010−111161)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】