説明

ナビゲーション装置

【課題】渋滞を回避するための経路とその所要時間を、事前に提示することができるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】出発時刻、出発地、および目的地をユーザが指定した通りに設定して経路探索を行い、目的地までの推奨経路と、推奨経路が通過する主要交差点ごとの通過予定時刻を取得する。これらの主要交差点を出発地とした経路探索を、出発時刻を所定時間(30分および1時間)ずつ変化させながら順に実行する。特定の主要交差点を通過しない経路が得られた場合、その主要交差点は存在しないものとして扱う。これらの経路探索の結果として、主要交差点ごとの複数の推奨経路と通過予定時刻とを含んだ情報画面40を表示する。走行中は、現在時刻に応じて推奨経路の切り替えを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
統計交通情報を用いて渋滞を予測し、交通渋滞に陥った場合には渋滞を回避する新たな推奨経路を提示する車両用ナビゲーション装置が知られている(特許文献1)。このようなナビゲーション装置では、渋滞を検出した時点で推奨経路の探索を再度実行し、新たな推奨経路に基づいた経路案内を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−208699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される従来のナビゲーション装置では、経路案内中に渋滞を避けるための経路変更が急に行われるため、運転者に戸惑いが生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、出発地から目的地に至る推奨経路を探索する推奨経路探索手段と、渋滞区間の情報と渋滞発生時間帯の情報とを含む渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段と、前記渋滞情報取得手段により取得された渋滞情報に基づいて、前記推奨経路探索手段により探索された推奨経路上の渋滞区間を特定する渋滞区間特定手段と、前記渋滞区間特定手段により特定された渋滞区間を回避するための回避経路を探索する回避経路探索手段と、出発時刻を設定する出発時刻設定手段と、前記出発時刻設定手段により設定された出発時刻に基づいて、前記推奨経路と前記回避経路の分岐点における通過予定時刻を算出する算出手段とを備え、前記分岐点ごとに、前記通過予定時刻へ所定の時間を加えた時刻の前記渋滞情報に基づいて、前記分岐点から次の分岐点までの経路を、前記推奨経路探索手段により探索された前記推奨経路および前記回避経路探索手段により探索された前記回避経路から選択する選択手段と、前記推奨経路および前記選択手段により選択された前記経路を含む地図と、前記算出手段により算出された予定通過時刻と、前記所定の時間とを表示モニタに表示する表示制御手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者に対して渋滞を回避するための経路が事前に提示される。これにより、運転者は運転中の経路変更に備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置1において、出発予定時刻を設定して経路探索を行った結果を表示している画面である。
【図3】主要交差点の一覧を示す表である。
【図4】最初に実行される経路探索の結果を示す表である。
【図5】交差点P1を出発地とし、出発時刻を15:00とした経路探索の結果を示す図である。
【図6】交差点P1を出発地とし、出発時刻を15:30とした経路探索の結果を示す図である。
【図7】交差点P4を出発地とし、出発時刻を17:20とした経路探索の結果を示す図である。
【図8】交差点P4を出発地とし、出発時刻を17:50とした経路探索の結果を示す図である。
【図9】経路案内処理を示すフローチャートである。
【図10】走行開始後の表示画面を説明するための図である。
【図11】情報画面40を表示する処理を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
――第1の実施の形態――
図1は、本実施形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
ナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、スピーカ17、入力装置18、VICS(登録商標)(道路交通情報通信システム)情報受信部19およびディスクドライブ21を有している。ディスクドライブ21には、地図データが記憶されたDVD−ROM22が装填されている。
【0009】
制御回路11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行して各種の制御を行う。この制御回路11がDVD−ROM22に記憶された地図データに基づいて所定の経路探索処理を行うと、その処理結果が推奨経路として表示モニタ16に表示される。
【0010】
現在地検出装置14は車両の現在地を検出する装置である。現在地装置14は、振動ジャイロ14a、車速センサ14b、GPS(Global Positioning System)センサ14cなどからなる。振動ジャイロ14aは車両の進行方向を検出し、車速センサ14bは車速を検出し、GPSセンサ14cはGPS衛星からのGPS信号を検出する。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された車両の現在地に基づいて、地図の表示範囲や経路探索開始点などを決定するとともに、地図上にその現在地を表示する。
【0011】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを格納する。この画像データは道路地図描画用データや各種の図形データからなり、それらはDVD−ROM22に記憶された地図データに基づいて、適宜生成される。ナビゲーション装置1は、このようにして生成された画像データを用いることによって地図表示などを行うことができる。
【0012】
ディスクドライブ21は、DVD−ROM22から地図データを読み出す。地図データは、地図表示用データ、経路探索用データなどを含む。地図表示用データおよび経路探索用データには、地図データに格納されている道路のリンク情報およびノード情報が含まれている。リンク情報には、各リンクの旅行時間(以下、リンク旅行時間)の情報が含まれている。地図表示用データは、広域から詳細まで複数の縮尺の地図データを有し、ユーザの要求にしたがって、表示地図の縮尺を変更することができる。なお、DVD−ROM22以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより地図データを読み出してもよい。
【0013】
DVD−ROM22には、地図データのほかに統計交通情報も記憶されている。統計交通情報とは、過去の交通情報を収集し、その情報を統計処理したものである。統計交通情報を参照することで、特定の道路区間において特定時間帯に渋滞が発生するという情報を取得することができる。
【0014】
表示モニタ16は、地図データなどの各種情報に基づいて、自車位置付近の道路地図などの各種情報を画面表示としてユーザに提供する。スピーカ17は、各種入力操作をユーザに指示したり、経路誘導したりするための音声を出力する。入力装置18は、ユーザが各種コマンドを設定するための入力スイッチを有し、操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16の表示画面の指示やスピーカ17からの音声指示にしたがって入力装置18を操作することにより、目的地を設定する。
【0015】
目的地がユーザにより設定されると、ナビゲーション装置1はGPSセンサ14cにより検出された現在地を出発地として目的地までの経路演算を所定のアルゴリズムに基づいて行う。たとえば、出発地から目的地までの間の旅行時間(リンク旅行時間の合計)が最小になるような経路を演算するアルゴリズムで経路演算が行われる。このような経路演算を以下、経路探索と呼ぶ。このようにして求められた経路(以下、推奨経路という)は、表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、ほかの道路とは区別して画面表示される。これにより、ユーザは地図上の推奨経路を画面上で認識することができる。ナビゲーション装置1は、推奨経路にしたがって車両が走行できるように、ユーザに対して画面や音声などによる進行方向指示を行い、車両を経路誘導する。
【0016】
VICS情報受信部19は、図示しないVICS情報センタから提供される渋滞情報などのVICS情報を受信し、制御回路11に出力する。このVICS情報は主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって送信される。電波ビーコンや光ビーコンは設置地付近を通過する車両に対してVICS情報を送信し、FM多重放送はそれらよりも広域の通信エリアをカバーする。ナビゲーション装置1は、これらによって送信されたVICS情報をVICS情報受信部19により受信する。VICS情報受信部19で受信したVICS情報は、経路探索に反映される。たとえば、渋滞している区間のリンク旅行時間に、渋滞の程度に応じて重み付けを行う。したがって、重み付けしたリンク旅行時間で経路探索が行われる。
【0017】
次に、本発明の実施形態のナビゲーション装置1における渋滞回避のための複数推奨経路表示について説明する。ユーザが出発地と、目的地と、出発予定時刻とを設定して経路探索の指示を与えると、ナビゲーション装置1は、目的地ならびに目的地へ向かう途中で通過する交差点への到着予定時刻を表示すると同時に、渋滞が発生した場合に渋滞を回避するための別経路も表示する。なお、出発地には車両の現在位置を自動的に設定してもよいし、ユーザが任意の地点を設定できるようにしてもよい。また、出発時刻も同様に、現在時刻を自動的に設定してもよいし、ユーザが任意の時刻を設定できるようにしてもよい。
【0018】
図2は、ナビゲーション装置1において、出発予定時刻を設定して経路探索を行った結果を表示している画面である。図2(a)は、推奨経路および周辺地図を表示した表示モニタ16の表示画面である。図2(b)は、推奨経路の情報を表示する情報画面である。情報画面40は、表示画面30にポップアップ表示される。ユーザが指示を与えることで、情報画面40を非表示にすることもできる。また、表示画面30の視認性を高めるため、情報画面40を透過表示してもよい。
【0019】
表示画面30には、出発地31および目的地36を設定し、出発予定時刻を13:00に設定した場合の、複数の推奨経路が表示されている。これらの推奨経路は、交差点32および交差点35によって大きく3つの区間に分けられている。区間を分けている交差点には、1から始まる連番が表示される。図2(a)では、交差点32の近傍には1が、交差点35の近傍には2が表示されている。網掛け表示されている囲み51、52、53は、統計交通情報に基づいた渋滞発生予測区間を表している。
【0020】
次に、それぞれの区間に存在する推奨経路について説明する。目的地31と交差点32の間の区間には推奨経路が1つだけ存在している(以下、この推奨経路を経路Aと呼ぶ)。交差点32と交差点35の間の区間には、3つの推奨経路が演算されている。1つめの推奨経路は、交差点32を図示右方向へ出発し、交差点33を通り交差点35へ至る推奨経路である(以下、この推奨経路を経路Bと呼ぶ)。2つめの推奨経路は、交差点32を図示上方向へ出発し、交差点34で右方向に方向転換し、交差点33を通り交差点35へ至る推奨経路である(以下、この推奨経路を経路Cと呼ぶ)。3つめの推奨経路は、交差点32を図示上方向へ出発し、交差点34を通過して交差点37を右折し、交差点35へ至る推奨経路である(以下、この推奨経路を経路Dと呼ぶ)。
【0021】
交差点35と目的地36の間の区間には、2つの推奨経路が存在している。1つめの推奨経路は、交差点35から図示上方向に出発して目的地36に至る推奨経路である(以下、この推奨経路を経路Eと呼ぶ)。2つめの推奨経路は、交差点35から図示右方向に出発して目的地36に至る推奨経路である(以下、この推奨経路を経路Fと呼ぶ)。
【0022】
以上のように、1つの区間に複数の推奨経路が存在する場合、それぞれの推奨経路は異なる線種で描画されるので、ユーザはこれらの推奨経路を区別することができる。
【0023】
次に、情報画面について詳述する。図2(b)の情報画面40には、上述した区間および推奨経路を簡略化したものが表示されている。四角形の囲み41,42,43,44はそれぞれ出発地31、交差点32、交差点35、目的地36を表している。交差点に対応する囲みの上方には、表示画面30の、交差点の近傍に表示される連番と同じものが表示されているので、ユーザは表示画面30における交差点と情報画面40における囲みとを対応させて考えることができる。それぞれの囲みには、出発時刻を13:00に設定した場合における、各地点の通過予定時刻が表示されている。
【0024】
囲み同士を接続している直線は、上述の各推奨経路を表している。具体的には、直線45が経路Aを表し、直線46が経路Bを、直線47が経路Cを、直線48が経路Dを、直線49Aおよび49Bが経路Eを、直線50が経路Fをそれぞれ示している。これらの直線の線種および描画色は、表示画面30における各推奨経路の線種および描画色と一致している。
【0025】
ここで、情報画面40の囲み42に注目する。この囲みは表示画面30における交差点32に対応している。囲み42の「14:30」という表示は、出発地を13:00に出発し、最短の推奨経路を通って走行した場合、交差点32の通過予定時刻は14:30であるということを意味する。また、直線47の左側に存在する「+0:30」という表示は、交差点32への到着が予定よりも30分遅れた場合、すなわち交差点32へ15:00に到着した場合には、直線47により表される経路Cを通って交差点35へ向かう経路が最短経路であることを表している。
【0026】
同様に、直線48の左側に「+1:00」と書かれているのは、交差点32へ予定よりも1時間遅い15:30に分岐点32へ到着した場合、経路Dを通って交差点35へ向かう経路が最短経路であるということを意味している。このように各々の交差点には、予定通り交差点に到着した場合の最短の推奨経路に加え、交差点への到着が30分遅れた場合に最短となる推奨経路、1時間遅れた場合に最短となる推奨経路が表示される。遅れによる渋滞の変化がない場合、同じ推奨経路が複数回表示されることもある。
【0027】
以上のように、情報画面40を表示画面30と併せて表示することにより、ユーザは各々の交差点へ所定時間だけ遅れて到着した場合に走行すべき経路を事前に知ることができる。
【0028】
次に、図2に示した表示画面30および情報画面40を表示するための処理を、図3〜図8を用いて説明する。推奨経路および情報画面を表示する処理は、統計交通情報を考慮した経路探索を複数回繰り返して実行することにより行われる。まず初めに、出発地と目的地と出発時刻とをユーザによる指定の通りに設定した経路探索が行われる。このとき、推奨経路に加えて、各主要交差点の通過予定時刻を同時に取得する。その後、各主要交差点を出発地に設定した経路探索を、出発時刻を変更しながら繰り返し行うことで、各主要交差点間の推奨経路を複数通り取得する。
【0029】
図3は、主要交差点の一覧を示す図である。情報画面40により通過予定時刻が表示される交差点は、事前に定められた主要交差点の中から選択される。図2(a)の地図に含まれる交差点のうち、通過予定時刻が表示される主要交差点は、図3の地図71に示す交差点61〜67である。
【0030】
図4は、最初に実行される経路探索の結果を示す図である。初めに、出発時刻、出発地、および目的地をユーザが指定した通りに設定して、経路探索を行う。図4では、出発時刻を13:00、出発地を地点31、目的地を地点36としている。この経路探索では、目的地までの推奨経路と同時に、推奨経路が通過する主要交差点ごとの通過予定時刻を取得する。図4に示した推奨経路は、図3に示した主要交差点のうち、交差点63,64,67,および66を通過している。以下の説明では、これらの交差点をP1,P2,P3,およびP4と呼ぶ。また、これらの交差点の通過予定時刻は14:30,15:00,16:00,および16:50であり、目的地への到着予定時刻は18:00である。
【0031】
次に、最初に通過する交差点P1を出発地とした経路探索を、出発時刻を変化させながら順に実行する。図4から、交差点P1の予想通過時刻は14:30なので、これに0:30および1:00を加算した時刻を出発時間として経路探索を行う。図5は、交差点P1を出発地とし、出発時刻を15:00とした経路探索の結果を示す図である。また、図6は、交差点P1を出発地とし、出発時刻を15:30とした経路探索の結果を示す図である。
【0032】
図5では、交差点P2を覆うように渋滞区間51が存在しているので、推奨経路には渋滞区間51を回避する経路が選択されている。この推奨経路は交差点P2およびP3を通過しない。図6でも、図5とは異なる渋滞区間52が存在し、推奨経路は渋滞区間52を回避する経路が選択されている。また、交差点P4の通過予定時刻はそれぞれ17:50と18:20となっている。
【0033】
図5および図6の結果から、図2(b)に示した情報画面40には、交差点32へ30分遅れて到着した場合には経路Cを選択すべきであること、ならびに、1時間遅れて到着した場合には経路Dを選択すべきであることが表示される。また、交差点P2およびP3を通過しない推奨経路が存在するので、情報画面40には交差点P2およびP3に関する情報は記載されない。
【0034】
次に、交差点P1と同様に、図4,5,6の共通交差点P4を出発地とした経路探索を、出発時刻を変化させながら順に実行する。交差点P2およびP3については、これらの交差点を通過しない推奨経路が存在するため、処理の対象とはしない。図4から、交差点P4の予想通過時刻は16:50なので、これに0:30および1:00を加算した時刻を出発時間として経路探索を行う。図7は、交差点P4を出発地とし、出発時刻を17:20とした経路探索の結果を示す図である。また、図8は、交差点P4を出発地とし、出発時刻を17:50とした経路探索の結果を示す図である。
【0035】
図7では、本来であれば最短で目的地36に向かうことができる経路上に渋滞区間53が存在しているので、推奨経路には渋滞区間53を回避する経路が選択されている。図6では、渋滞区間53が存在しないので、推奨経路は図2(a)と同様の経路となっている。
【0036】
図7および図8の結果から、図2(b)に示した情報画面40には、交差点35へ30分遅れて到着した場合には経路Fを選択すべきであること、ならびに、1時間遅れて到着した場合には経路Eを選択すべきであることが記載される。以上のようにして、図2に示した表示画面30および情報画面40の表示が行われる。
【0037】
次に、上述の推奨経路に基づいて走行中に行われる経路案内について説明する。図9は、経路案内処理を示すフローチャートである。まずステップS1では、上述した複数経路探索処理が行われる。ステップS2では、走行を開始したか否かを判定する。走行が開始されるまでステップS2を繰り返し、走行を開始した場合にはステップS3へ進む。ステップS3では、後述する経路案内処理を実行する。ステップS4では、経路案内が終了したか否かを判定する。目的地付近に到達した等の理由により経路案内を終了する場合には、ステップS4により肯定判定がなされ、処理を終了する。他方、ステップS4により否定判定がなされた場合には、ステップS3へ戻る。
【0038】
次に、図9のステップS3に示した経路案内処理について、例を用いて説明する。いま、出発時刻を13:00に設定し、走行を開始したとする。図10は、走行開始後の表示画面を説明するための図である。経路誘導の設定と推奨経路の確認時には、図2(a)のように、表示画面30にすべての推奨経路を表示するが、走行開始後は図10(a)のように、前述の手順で得られた、所要時間が最短となる推奨経路のみを表示して、渋滞区間を回避するための他の経路は地図上から消去する。つまり、今回は経路A,BおよびEのみが表示されることとなる。
【0039】
走行開始後、ナビゲーション装置1は、現在地検出装置14によって検出される車両の位置と、現在の時刻と、統計交通情報から得られる渋滞情報とに基づいて、今後走行する予定の推奨経路上に発生すると予想される渋滞区間を特定し、その渋滞区間を回避すべきか否かを判定する。この際、推奨経路上に渋滞区間がある場合は優先的に回避すべきと判定してもよいし、あるいは渋滞区間の通過所要時間と、渋滞区間を回避する推奨経路を走行した場合の通過所要時間とを比較することで、渋滞区間を回避すべきか否かを判定してもよい。なお、現在の時刻はGPSセンサ14cにより受信されたGPS信号に基づいて検出することができる。
【0040】
ここで、例えば経路A上で30分の遅れが生じ、交差点32に実際に到達したのが15:00であったとする。交差点32から先へ向かう最短の推奨経路は、当初は経路Bであったが、交差点32の通過時刻が予定よりも30分遅い15:00となってしまったため、図5に示すように、最短の推奨経路は経路Cへと変化する。そこで、本実施形態におけるナビゲーション装置は、経路誘導に用いる推奨経路を経路Bから経路Cに切り替える。この時の表示画面30は、図10(b)のようになる。このようにして、元の推奨経路である経路Bを地図上から消去して、渋滞区間51を回避する経路Cを地図上に表示する。その後は、経路Bに代えて経路Cに従って経路誘導を行う。
【0041】
なお、上記のように、通過予定時刻と実際の通過時刻に違いが生じた場合に、図2(b)の情報画面40を再表示してもよい。このとき、情報画面40に表示される通過予定時刻や所定時間の遅れが生じた場合に選択すべき推奨経路は、実際の通過時刻に基づいて再計算される。また、情報画面40を常に再表示するのではなく、再計算した結果、表示する推奨経路が変化した場合のみ表示するようにしてもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態におけるナビゲーション装置は、統計交通情報を元にした渋滞区間を避けるため、動的に経路誘導に用いる推奨経路の切り替えを行う。また、所定時間の遅れが生じた場合の切り替え候補である推奨経路を事前に提示する。その際、情報画面40を表示することで、発生した遅れに対応する推奨経路を提示する。そして、実際に走行する時刻に応じて、事前に提示した推奨経路の中から最適なものを選択する。
【0043】
次に、図2(b)に示した情報画面40を表示する処理について、図11を用いて説明する。図11は、情報画面40を表示する処理を示すフローチャートである。まずステップS11で、ユーザが指定した通りの出発地、目的地および出発予定時刻を設定して経路探索を行う。このとき、推奨経路と目的地への到着予想時刻だけではなく、推奨経路が通過する主要交差点のリストアップと、各主要交差点ごとの通過予定時刻の取得を同時に行う。ステップS12では、ステップS11で取得した主要交差点を、通過順にそれぞれP1,P2,…,P(N−1)とおく。更に、目的地をPNとおく。ステップS13では、変数iを1とおく。
【0044】
ステップS14では、Piを出発地、PNを目的地、ステップS11で取得したPiの通過予定時刻に30分を加えた時刻を出発予定時刻に設定し、経路探索を行う。この経路探索により得られたPiから目的地までの経路を経路Xと呼ぶ。ステップS15では、P(i+1)、すなわちステップS14で行った経路探索における出発地の次に位置する交差点から、PNまでの各交差点のうち、経路Xが最初に通過する交差点をPxとおく。
【0045】
ステップS16では、ステップS14と同様に経路探索を行うが、出発予定時刻としてステップS11で取得したPiの通過予定時刻に1時間を加えた時刻を設定する。この経路探索により得られたPiから目的地までの経路を経路Yと呼ぶ。ステップS17では、ステップS15と同様に、P(i+1)からPNまでの各交差点のうち、経路Yが最初に通過する交差点をPyとおく。
【0046】
ステップS18では、ステップS15における変数xとステップS17における変数yを比較し、xがyよりも小さいか否かを判定する。xがyよりも小さければステップS18により肯定判定がなされ、ステップS19に進み、変数zに変数yの値を設定する。他方、ステップS18において否定判定がなされた場合にはステップS20へ進み、変数zに変数xの値を設定する。ステップS21では、情報画面40(図2(b))へ交差点Piに関する情報を追加する。通過予定時刻としてステップS11で得られた交差点Piの通過予定時刻を設定し、通過予定時刻に交差点Piを通過した場合の推奨経路として、ステップS11で得られた経路からPiとPzの間の区間を切り出した経路を設定する。また、通過予定時刻が30分遅れた場合の推奨経路として、経路XからPiとPzの間の区間を切り出した経路を、1時間遅れた場合の推奨経路として、経路YからPiとPzの間の区間を切り出した経路を設定する。
【0047】
ステップS22では、変数iに変数zの値を設定する。ステップS23では、変数iがNに等しいか否かを判定する。変数iとNが等しければ、ステップS23により肯定判定がなされ、処理を終了する。他方、ステップS23において否定判定がなされた場合には、ステップS14へ戻る。以上のようにして、情報画面40に主要交差点ならびに主要交差点ごとの推奨経路が表示される。
【0048】
上述した第1の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)主要交差点への到着が遅れた場合の渋滞回避経路が事前に表示される。これにより、ユーザは急な経路の変更に備えることができ、渋滞回避時の戸惑いがなくなる。
(2)出発地および出発予定時刻を設定して、複数の推奨経路ならびに所要時間を確認できる。これにより、出発前日であっても走行する経路のシミュレーションを行うことができる。
【0049】
――第2の実施の形態――
上述した第1の実施の形態では、走行中に行う推奨経路の切り替えは、統計交通情報に基づく渋滞発生予測区間によってのみ行われていた。以下に詳述する第2の実施の形態では、リアルタイムに取得した実際の渋滞情報により、当初に計算した回避ルートを変更する。
【0050】
図12は、第2の実施形態におけるナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置101は、第1の実施形態におけるナビゲーション装置1に加えて、通信装置23を備えている。通信装置23はナビゲーション装置101に接続された携帯電話である。ナビゲーション装置101は、通信装置23を用いて情報センター24と通信を行うことができる。
【0051】
制御回路111は、経路探索を行う機能を持たない。代わりに、経路探索は情報センター24が行う。制御回路111は、経路探索を実行する必要が生じると、通信装置23を用いて経路探索に必要な情報(現在地、目的地、探索条件など)を情報センター24へ送信する。情報センター24は、受信した情報を基に経路探索を行い、推奨経路をナビゲーション装置101へ送信する。このようにして、あたかも制御回路111が経路探索を実行しているように、推奨経路を取得することができる。
【0052】
情報センター24は、前述のように、経路探索を実行する機能を有する。それに加えて、情報センター24には、各地の渋滞情報が集積されている。情報センター24は、ナビゲーション装置101へ、現在発生している渋滞の情報を提供する。ナビゲーション装置101は、経路案内中に、VICS情報受信部19もしくは通信装置23から渋滞情報を受け取り、必要に応じて再度の経路探索の実行ならびに推奨経路の切り替えを行う。
【0053】
上述した第2の実施の形態によるナビゲーション装置によれば、第1の実施の形態によるナビゲーション装置で得られる作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。リアルタイム渋滞情報も含めた渋滞の回避を行うことで、事故による渋滞などの、統計交通情報では予測不可能な渋滞にも対応することができる。
【0054】
次のような変形も本発明の範囲内である。
(1)第2の実施形態では、ナビゲーション装置101が地図表示用データを用意しているが、これを全て情報センターが備えるようにしてよい。この場合、ナビゲーション装置は、画面表示に必要なあらゆる情報を情報センターから受信する。また、渋滞回避のための複数推奨経路表示処理についても、情報センターによって実行される。
(2)情報画面40は、表示画面30にポップアップ表示するのではなく、ナビゲーション装置が備えた別の表示装置に表示してもよい。
(3)表示画面30に表示する渋滞発生予測区間に、渋滞時間帯を併せて表示してもよい。表示方法は、例えば吹き出し等を用いてもよいし、網掛けの上に直接表示してもよい。
(4)情報画面40へ表示する推奨経路は、30分遅れた場合の経路と1時間遅れた場合の経路に限らない。これ以外の場合の経路を表示してもよいし、これらの経路を表示しなくてもよい。また、予定よりも早く着いた場合の経路を表示してもよい。
(5)情報画面40へ推奨経路を表示する際、同じ経路が複数回表示されないようにしてもよい。
【0055】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1、101 ナビゲーション装置
11、111 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地に至る推奨経路を探索する推奨経路探索手段と、
渋滞区間の情報と渋滞発生時間帯の情報とを含む渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段と、
前記渋滞情報取得手段により取得された渋滞情報に基づいて、前記推奨経路探索手段により探索された推奨経路上の渋滞区間を特定する渋滞区間特定手段と、
前記渋滞区間特定手段により特定された渋滞区間を回避するための回避経路を探索する回避経路探索手段と、
出発時刻を設定する出発時刻設定手段と、
前記出発時刻設定手段により設定された出発時刻に基づいて、前記推奨経路と前記回避経路の分岐点における通過予定時刻を算出する算出手段とを備え、
前記分岐点ごとに、前記通過予定時刻へ所定の時間を加えた時刻の前記渋滞情報に基づいて、前記分岐点から次の分岐点までの経路を、前記推奨経路探索手段により探索された前記推奨経路および前記回避経路探索手段により探索された前記回避経路から選択する選択手段と、
前記推奨経路および前記選択手段により選択された前記経路を含む地図と、前記算出手段により算出された予定通過時刻と、前記所定の時間とを表示モニタに表示する表示制御手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置において、
前記推奨経路に従って経路案内を行う経路案内手段と、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
現在の時刻を検出する時刻検出手段と、
前記位置検出手段により検出された位置と、前記時刻検出手段により検出された現在の時刻と、前記渋滞情報とに基づいて、前記回避経路を走行すべきか否かを判定する判定手段とを更に備え、
前記判定手段により前記回避経路を走行すべきと判定されたとき、前記経路案内手段は、前記推奨経路に代えて前記回避経路に従って経路案内を行うことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のナビゲーション装置において、
前記表示制御手段は、前記経路案内手段による経路案内を開始した後、前記判定手段により前記回避経路を走行すべきと判定されなければ、前記回避経路を前記地図上から消去し、前記判定手段により前記回避経路を走行すべきと判定されると、前記推奨経路を前記地図上から消去して前記回避経路を前記地図上に表示することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のナビゲーション装置において、
前記算出手段は、前記回避経路を走行したときの前記通過予定時刻に対する予想遅延時間を算出し、
前記判定手段は、前記位置検出手段により検出された位置と、前記時刻検出手段により検出された現在の時刻と、前記渋滞情報とに基づいて、前記推奨経路上の渋滞区間の通過所要時間を予測し、その通過所要時間と前記予想遅延時間との比較結果に基づいて、前記回避経路を走行すべきか否かを判定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、
前記表示制御手段は、前記推奨経路と前記回避経路とをそれぞれ異なる色で前記地図上に示した地図を前記表示モニタに表示することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−242228(P2011−242228A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113888(P2010−113888)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】