説明

ニオブ酸カリウム堆積体およびその製造方法、圧電薄膜振動子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、並びに、電子機器

【課題】 ニオブ酸カリウムの薄膜を有するニオブ酸カリウム堆積体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体100の製造方法は,
R面サファイア基板からなる基板11の上方にバッファ層12を形成する工程と、
バッファ層12の上方に、擬立方晶表示において(100)配向でエピタキシャル成長したニオブ酸カリウム層13またはニオブ酸カリウム固溶体層を形成する工程と、
ニオブ酸カリウム層13またはニオブ酸カリウム固溶体層の上方に電極層を形成する工程と、を含み、
ニオブ酸カリウム層13またはニオブ酸カリウム固溶体層の(100)面は、R面サファイア基板11のR面(1−102)に対して,[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ酸カリウム堆積体およびその製造方法、圧電薄膜振動子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、並びに、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信分野においては、通信速度の増大に伴って通信周波数の高周波化が進んできている。このような高周波化のためのデバイスとして、圧電薄膜振動子(Film Bulk Acoustic Resonator:FBAR)が注目されている。圧電薄膜振動子では、小型化および高効率化のために、より大きな電気機械結合係数が必要である。
【0003】
ところで、ニオブ酸カリウム(KNbO)(a=0.5695nm、b=0.3973nm、c=0.5721nm、以下「斜方晶」としては本指数表示に従う)の単結晶基板は、大きな電気機械結合係数を示すことが見出されている。例えば、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)2929.に記載されているように、0°YカットX伝播KNbO単結晶基板は、電気機械結合係数が50%程度という非常に大きな値を示すことが実験で確認されている。しかしながら、何らかの大面積の基板上にニオブ酸カリウム薄膜を形成して圧電薄膜振動子を作製することは、困難な場合がある。
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)2929.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ニオブ酸カリウムの薄膜を有するニオブ酸カリウム堆積体およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、電気機械結合係数の大きな圧電薄膜振動子を提供することにある。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、上記圧電薄膜振動子を含む周波数フィルタ、発振器、電子回路、および、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1のニオブ酸カリウム堆積体の製造方法は、
R面サファイア基板からなる基板の上方にバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層の上方に、擬立方晶表示において(100)配向でエピタキシャル成長したニオブ酸カリウム層またはニオブ酸カリウム固溶体層を形成する工程と、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の上方に電極層を形成する工程と、を含み、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成される。
【0008】
このニオブ酸カリウム堆積体の製造方法によれば、前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の(100)面が、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成される。この製造方法によれば、このような前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層を有するニオブ酸カリウム堆積体を提供することができる。このニオブ酸カリウム堆積体を用いることにより、電気機械結合係数の大きな圧電薄膜振動子を得ることができる。
【0009】
なお、本発明において、特定のもの(以下、「A」という)の上方に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成するとは、A上に直接Bを形成する場合と、A上に、A上の他のものを介してBを形成する場合と、を含む。また、本発明において、Aの上方に形成されたBとは、A上に直接形成されたBと、A上に、A上の他のものを介して形成されたBと、を含む。
【0010】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の(100)面が、前記R面サファイア基板のR面(1−102)と成す角は、1度以上15度以下となるように形成されることができる。
【0011】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記ニオブ酸カリウム層は、斜方晶ニオブ酸カリウムの格子定数を21/2b<a<cとし、かつc軸が分極軸であるとき、b軸配向でエピタキシャル成長しているドメインを含むように形成され、
前記b軸は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成されることができる。
【0012】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記b軸が前記R面サファイア基板のR面(1−102)と成す角は、1度以上15度以下となるように形成されることができる。
【0013】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記バッファ層は、立方晶(100)配向でエピタキシャル成長するように形成され、
前記バッファ層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成されることができる。
【0014】
本発明に係る第2のニオブ酸カリウム堆積体の製造方法は、
R面サファイア基板からなる基板の上方に立方晶(100)配向でエピタキシャル成長したバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層の上方に、ニオブ酸カリウム層またはニオブ酸カリウム固溶体層を形成する工程と、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の上方に電極層を形成する工程と、を含み、
前記バッファ層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成される。
【0015】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記バッファ層の(100)面が、前記R面サファイア基板のR面(1−102)と成す角は、1度以上15度以下となるように形成されることができる。
【0016】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記バッファ層としては、岩塩構造の金属酸化物を用いることができる。
【0017】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記金属酸化物としては、酸化マグネシウムを用いることができる。
【0018】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記電極層の上方に他の基板を接合する工程と、
前記バッファ層をエッチングで除去して、前記基板を分離する工程と、を含むことができる。
【0019】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体の製造方法において、
前記ニオブ酸カリウム固溶体層としては、K1−xNaNb1−yTa(0<x<1、0<y<1)で表される固溶体を用いることができる。
【0020】
本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体は、上述のニオブ酸カリウム堆積体の製造方法により得られる。
【0021】
本発明に係る第1のニオブ酸カリウム堆積体は、
R面サファイア基板からなる基板と、
前記基板の上方に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層の上方に形成された、ニオブ酸カリウム層またはニオブ酸カリウム固溶体層と、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の上方に形成された電極層と、を含み、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層は、擬立方晶表示において(100)配向でエピタキシャル成長しており、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いている。
【0022】
本発明に係る第2のニオブ酸カリウム堆積体は、
R面サファイア基板からなる基板と、
前記基板の上方に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層の上方に形成された、ニオブ酸カリウム層またはニオブ酸カリウム固溶体層と、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の上方に形成された電極層と、を含み、
前記バッファ層は、立方晶(100)配向でエピタキシャル成長しており、
前記バッファ層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いている。
【0023】
本発明に係る圧電薄膜振動子は、上述のニオブ酸カリウム堆積体を含む。
【0024】
本発明に係る周波数フィルタは、上述の圧電薄膜振動子を含む。
【0025】
本発明に係る発振器は、上述の圧電薄膜振動子を含む。
【0026】
本発明に係る電子回路は、上述の周波数フィルタおよび上述の発振器のうちの少なくとも一方を含む。
【0027】
本発明に係る電子機器は、上述の電子回路を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
1.第1の実施形態
1.1. 図1〜図3は、本実施形態に係るニオブ酸カリウム堆積体100を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係るニオブ酸カリウム堆積体100は、基板11と、基板11上に形成されたバッファ層12と、バッファ層12上に形成されたニオブ酸カリウム層13と、ニオブ酸カリウム層13上に形成された電極層14と、を含むことができる。
【0030】
基板11としては、R面サファイア基板を用いることができる。R面サファイア基板を用いることは、バッファ層12およびニオブ酸カリウム層13をエピタキシャル成長させることができる点、大面積基板を安価に入手できる点、さらに、エッチング液への耐性があり、繰返して利用できる点で好ましい。
【0031】
バッファ層12としては、例えば、岩塩構造の金属酸化物を用いることができる。岩塩構造の金属酸化物としては、例えば、MgO(酸化マグネシウム)を用いることができる。バッファ層12については、後に詳述する。
【0032】
電極層14の材質は特に限定されず、例えば、Pt、Ir、Au、Cr、IrO、SrRuO、Nb−SrTiO、La−SrTiO、Nb−(La,Sr)CoOなどの電極材料を用いることができる。ここで、Nb−SrTiOはSrTiOにNbをドープしたものであり、La−SrTiOはSrTiOにLaをドープしたものであり、Nb−(La,Sr)CoOは(La,Sr)CoOにNbをドープしたものである。これらの材料において、金属酸化物は、導電性や化学的安定性に優れ、また気相成長による成膜が可能なため、電極層14の材料として好ましい。
【0033】
ニオブ酸カリウム層13は、単結晶または多結晶のニオブ酸カリウムを有する。ニオブ酸カリウム層13の厚さは、特に限定されず、適用されるデバイスなどによって適宜選択されるが、例えば、10nm以上10μm以下とすることができる。ニオブ酸カリウム層13については、後に詳述する。
【0034】
また、本実施形態に係るニオブ酸カリウム堆積体100は、図2に示すように、さらに、電極層14上に形成された他の基板(以下「第2基板」ともいう)15を有することができる。第2基板15の材質は特に限定されず、エッチングなどによってパターニングができるものを用いることができる。第2基板15としては、例えばシリコン基板、感光性ガラス等のガラス基板、金属基板、樹脂基板などを用いることができる。また、第2基板15の膜厚は、本実施形態に係るニオブ酸カリウム堆積体100を適用するデバイスなどによって適宜選択される。
【0035】
また、本実施形態に係るニオブ酸カリウム堆積体100は、図3に示すように、第2基板15と、第2基板15上に形成された電極層14と、電極層14上に形成されたニオブ酸カリウム層13と、を含むことができる。
【0036】
また、本実施形態では、上述したニオブ酸カリウム層13の代わりに、ニオブ酸カリウムのニオブおよびカリウムの一部が他の元素で置換されたニオブ酸カリウム固溶体の層であってもよい。このようなニオブ酸カリウム固溶体としては、例えば、ニオブ酸タンタル酸ナトリウムカリウム固溶体(K1−xNaNb1−yTa(0<x<1、0<y<1))で表される固溶体を挙げることができる。このことは、以下に述べる実施形態でも同様である。
【0037】
1.2. 次に、ニオブ酸カリウム堆積体100の製造方法について述べる。
【0038】
(1)まず、図1に示すように、R面サファイア基板からなる基板(以下「R面サファイア基板」ともいう)11を用意する。R面サファイア基板11は、予め脱脂洗浄されている。脱脂洗浄は、R面サファイア基板11を有機溶媒に浸漬させ、超音波洗浄機を用いて行うことができる。ここで、有機溶媒としては、特に限定されないが、例えばエチルアルコールとアセトンとの混合液を使用することができる。
【0039】
(2)次に、図1に示すように、レーザーアブレーション法によって、R面サファイア基板11上にMgOからなるバッファ層12を形成する。
【0040】
具体的には、脱脂洗浄したR面サファイア基板11を基板ホルダーに装填したあと、室温での背圧が1×10−8Torrの真空装置内に基板ホルダーごと導入する。次に、例えば、5×10−5Torrの酸素分圧になるように酸素ガスを導入し、赤外線ランプを用いて20℃/分で400℃まで加熱昇温する。なお、昇温速度、基板温度、圧力などの条件は、これに限るものではない。
【0041】
次に、レーザー光をバッファ層用のマグネシウムターゲットに照射し、このターゲットからマグネシウム原子を叩き出すレーザーアブレーション法により、プルームを発生させる。そして、このプルームはR面サファイア基板11上に向けて出射され、R面サファイア基板11上に接触する。その結果、R面サファイア基板11上に、立方晶(100)配向のMgOからなるバッファ層12がエピタキシャル成長によって形成される。そして、バッファ層12の(100)面は、R面サファイア基板11のR面(1−102)(以下、単に「R面」ということもある。)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いていることが好ましい。このことを図4および図5を用いて説明する。
【0042】
図4は、六方晶のサファイア結晶を模式的に示す図であり、図5は、バッファ層12の(100)面の傾きを模式的に示す図である。R面サファイア基板11のR面(1−102)とは、図4におけるN−S面である。図5に示すように、R面サファイア基板11のN−S面(即ち、R面)に対して、バッファ層12の(100)面は、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いている。言い換えるならば、バッファ層12の(100)面と、R面とが交差する直線は、[11−20]方向ベクトルと平行である。このようなバッファ層12を形成することにより、後に述べる所望のニオブ酸カリウム層13を得ることができる。バッファ層12の(100)面が、R面サファイア基板11のR面(1−102)と成す角δは、1度以上15度以下であるのが好ましい。
【0043】
また、バッファ層12としてMgOを用いることにより、Mg2+がニオブ酸カリウム層13のNb5+を置換してK(Mg,Nb)Oが生成した場合においても、ニオブ酸カリウム層13の絶縁性を低下させないことが可能である。
【0044】
バッファ層12の厚さは、特に限定されないが、R面サファイア基板11とニオブ酸カリウム層13の反応を防ぎ、かつ酸化マグネシウム自身の潮解性によるニオブ酸カリウム層13の劣化を防ぐ、という点を考慮すると5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0045】
なお、マグネシウム原子、または後の工程における所望の原子をターゲットから叩き出す方法としては、上述したレーザー光をターゲット表面に照射する方法の他、例えば、アルゴンガス(不活性ガス)プラズマや電子線等をターゲット表面に照射(入射)する方法を用いることもできる。これらの中では、レーザー光をターゲット表面に照射する方法が好ましい。この方法によれば、レーザー光の入射窓を備えた簡易な構成の真空装置を用いて、原子をターゲットから容易にかつ確実に叩き出すことができる。
【0046】
ターゲットに照射するレーザー光としては、波長が150〜300nm程度、パルス長が1〜100ns程度のパルス光が好適に用いられる。具体的には、レーザー光としては、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー等のエキシマレーザー、さらにYAGレーザー、YVOレーザー、COレーザーなどが挙げられる。これらの中でも、特にArFエキシマレーザーまたはKrFエキシマレーザーが好適とされる。ArFエキシマレーザーおよびKrFエキシマレーザーは、いずれも取り扱いが容易であり、また、より効率良く原子をターゲットから叩き出すことができる。
【0047】
レーザー光の照射時の各条件は、プルームが十分基板11に到達でき、バッファ層12としてのMgOがエピタキシャル成長できるのであれば、特に限定されない。レーザー光の照射時の条件としては、例えば、レーザーエネルギー密度が2J/cm以上4J/cm以下、レーザー周波数が5Hz以上20Hz以下、ターゲットと基板11との距離(以下「ターゲット基板間距離」という)が30mm以上100mm以下、基板温度が300℃以上600℃以下、堆積中の酸素分圧が1×10−5Torr以上1×10−3Torr以下とすることができる。
【0048】
(3)次に、図1に示すように、レーザーアブレーション法によって、バッファ層12上にニオブ酸カリウム層13を形成する。
【0049】
具体的には、レーザー光をバッファ層用のターゲット、例えばK0.6Nb0.4ターゲットに照射し、このターゲットからカリウム原子、ニオブ原子および酸素原子を叩き出すレーザーアブレーション法により、プルームを発生させる。そして、このプルームは、R面サファイア基板11上に向けて出射されてバッファ層12に接触する。その結果、バッファ層12上に、擬立方晶表示において(100)配向のニオブ酸カリウム層13がエピタキシャル成長によって形成される。そして、図5に示すように、ニオブ酸カリウム層13の(100)面は、R面サファイア基板11のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いている。なお、図5は、上述したように、バッファ層12の(100)面の傾きを模式的に示す図であるが、同様に、ニオブ酸カリウム層13の(100)面の傾きを模式的に示す図でもある。
【0050】
より具体的には、ニオブ酸カリウム層13は、斜方晶ニオブ酸カリウムの格子定数を21/2b<a<cとし、かつc軸が分極軸であるとき、b軸配向でエピタキシャル成長しているドメイン(以下「斜方晶b軸配向ドメイン」ともいう)を含むことが好ましい。そして、b軸は、R面サファイア基板11のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いていることが好ましい。このようなニオブ酸カリウム層13を用いることにより、後述するように、電気機械結合係数の大きな圧電薄膜振動子200(図21参照)を得ることができる。
【0051】
ニオブ酸カリウム層13の(100)面が、R面サファイア基板11のR面(1−102)と成す角Δは、1度以上15度以下であるのが好ましい。より具体的には、斜方晶ニオブ酸カリウムのb軸がR面サファイア基板11のR面(1−102)と成す角は、1度以上15度以下であるのが好ましい。なお、ニオブ酸カリウム層13の(100)面がR面と成す角Δは、バッファ層12の(100)面がR面と成す角δと同じであることも、違うこともできる。
【0052】
また、レーザーアブレーション法の条件は、プルームが十分バッファ層12に到達できるならば、特に限定されない。レーザー光の照射時の条件としては、例えば、レーザーエネルギー密度が2J/cm以上4J/cm以下、レーザー周波数が5Hz以上20Hz以下、ターゲット基板間距離が30mm以上100mm以下、基板温度が600℃以上800℃以下、堆積中の酸素分圧が1×10−2Torr以上1Torr以下とすることができる。
【0053】
本実施形態では、レーザーアブレーション時の条件を選択することにより、ニオブ酸カリウムを単結晶、または多結晶(好ましくは単相の多結晶)とすることができる。
【0054】
なお、上述した例では、K0.6Nb0.4ターゲットを用いたが、ターゲットの組成比はこれに限定されない。例えば、ニオブ酸カリウム層13の形成には、Tri−Phase−Epitaxy法に適した組成比のターゲットを用いることができる。Tri−Phase−Epitaxy法は、気相原料を固液共存領域の温度に保持した基体に堆積し、液相中から固相を析出させる方法である。
【0055】
具体的には、まず、基体(本実施形態では、基板11と、バッファ層12とからなる)上に堆積させた直後の液相状態のKNb1−xにおけるカリウムのモル組成比xが、0.5≦x≦xの範囲となるような気相原料であるプルームを基体に供給する。なお、xは、所定の酸素分圧下におけるKNbOと3KO・Nbとの共晶点におけるxである。次に、基体の温度Tを、T≦T≦Tの範囲に保持することにより、プルームの供給で基体上に堆積させたKNb1−xの残液を蒸発させる。これにより、KNb1−xからKNbO単結晶を基体上に析出させることができる。なお、Tは、所定の酸素分圧下におけるKNbOと3KO・Nbとの共晶点における温度である。また、Tは、所定の酸素分圧下であって、基体上に堆積させた直後の液相状態のKNb1−xにおける完全溶融温度である。
【0056】
(4)次に、図1に示すように、ニオブ酸カリウム層13上に、例えばSrRuOからなる電極層14を形成する。
【0057】
具体的には、R面サファイア基板11の温度を300℃まで下げた後、レーザー光をSrRuOターゲット表面に照射し、このターゲットからストロンチウム原子、ルテニウム原子および酸素原子を叩き出すレーザーアブレーション法により、プルームを発生させる。そして、このプルームはR面サファイア基板11上に向けて出射され、ニオブ酸カリウム層13に接触して、SrRuOからなる電極層14がエピタキシャル成長によって形成される。
【0058】
レーザー光の照射時の各条件は、プルームが十分基板11に到達でき、SrRuO層がエピタキシャル成長できるのであれば、特に限定されない。レーザー光の照射時の条件としては、例えば、レーザーエネルギー密度が2J/cm以上4J/cm以下、レーザー周波数が5Hz以上20Hz以下、ターゲット基板間距離が30mm以上100mm以下、基板温度が200℃以上400℃以下、堆積中の酸素分圧が1×10−3Torr以上1×10−1Torr以下とすることができる。
【0059】
以上の工程により、図1に示すニオブ酸カリウム堆積体100を形成することができる。
【0060】
(5)次に、図2に示すように、電極層14の上に第2基板15を接着する。第2基板15を電極層14に接着する方法としては、例えば、エポキシ系等の接着剤または半田などを用いた接着法、あるいは、金−金または金−アルミなどの金属間固体接合法などを用いることができる。
【0061】
以上の工程により、図2に示すニオブ酸カリウム堆積体100を形成することができる。
【0062】
(6)次に、図3に示すように、バッファ層12をウェットエッチングすることにより、ニオブ酸カリウム層13、電極層14および第2基板15の積層体と、R面サファイア基板11とを分離する。
【0063】
ウェットエッチングには、バッファ層12のみを溶解して他の層に悪影響を与えないエッチング液を用いる。本実施形態では、バッファ層12としてMgOを用いているので、エッチング液としては、例えばリン酸や硝酸などの酸性溶液を用いることができる。
【0064】
以上の工程により、図3に示すニオブ酸カリウム堆積体100を形成することができる。
【0065】
さらに、必要に応じて、ニオブ酸カリウム層13の表面を平坦化するための研磨処理を行うことができる。このような研磨処理としては、バフ研磨、CMP(Chemical Mechanical Polishing)などを用いることができる。
【0066】
また、本実施形態では、バッファ層12、ニオブ酸カリウム層13および電極層14の成膜方法として、レーザーアブレーションを用いたが、成膜方法はこれに限定されず、例えば蒸着法、MOCVD法、スパッタ法を用いることができる。
【0067】
1.3. 本実施形態によれば、R面サファイア基板11の上に立方晶(100)配向のMgOからなるバッファ層12を形成し、バッファ層12の上に気相法を用いてニオブ酸カリウム層13を形成する。これにより、ニオブ酸カリウムの単一相薄膜をb軸配向でエピタキシャル成長させることができる。このニオブ酸カリウム層13を用いることにより、後述するように、電気機械結合係数の大きな圧電薄膜振動子200(図21参照)を得ることができる。
【0068】
さらに、本実施形態によれば、ニオブ酸カリウム層13の(100)面は、R面サファイア基板11のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いている。このニオブ酸カリウム層13を用いることにより、後述するように、電気機械結合係数のより一層大きな圧電薄膜振動子200を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、600〜800℃程度の温度を必要とするニオブ酸カリウム層13を形成した後に、一旦基板温度を例えば300℃以下に下げた後に電極層14を形成し、さらに第2基板15を電極層14に接合することができる。このように、ニオブ酸カリウム層13を形成した後に該ニオブ酸カリウム層13を高温度にさらす工程が必要ない。従って、電極層14を構成する成分がニオブ酸カリウム層13に拡散してその特性を劣化させることがない。
【0070】
1.4.実験例
(1) まず、第1の実験例について説明する。本実験例では、以下の方法によりニオブ酸カリウム堆積体100を形成した。本実験例では、単相の多結晶ニオブ酸カリウムの薄膜を得ることができた。
【0071】
まず、R面サファイア単結晶基板からなる基板11を有機溶媒に浸漬させ、超音波洗浄機を用いて脱脂洗浄を行った。ここで、有機溶媒としては、エチルアルコールとアセトンの1:1混合液を使用した。次に、基板11を基板ホルダーに装填した後、室温での背圧1×10−8Torrの真空装置内に基板ホルダーごと導入し、5×10−5Torrの酸素分圧になるように酸素ガスを導入し、赤外線ランプを用いて20℃/分で400℃まで加熱昇温した。
【0072】
次に、マグネシウムターゲットの表面に、エネルギー密度2.5J/cm、周波数10Hz、パルス長10nsの条件でKrFエキシマレーザー(波長248nm)のパルス光を入射し、ターゲット表面にマグネシウムのプラズマプルームを発生させた。このプラズマプルームを、基板温度400℃、酸素分圧5×10−5Torrの条件で基板11に照射し、MgOからなるバッファ層12を形成した。ターゲット基板間距離は70mmとし、照射時間は30分とし、バッファ層12の膜厚は10nmとした。
【0073】
次に、K0.6Nb0.4ターゲットの表面に、エネルギー密度3J/cm、周波数10Hz、パルス長10nsの条件でKrFエキシマレーザーのパルス光を入射し、ターゲット表面にK、Nb、Oのプラズマプルームを発生させた。このプラズマプルームを、基板温度750℃、酸素分圧1×10−1Torrの条件で基板11に向けて照射し、バッファ層12の上にニオブ酸カリウム層13を形成した。ターゲット基板間距離は70mmとし、照射時間は240分とし、ニオブ酸カリウム層13の膜厚は1μmとした。
【0074】
本実験例で得られたニオブ酸カリウム層13のX線回折パターン(2θ−θスキャン)を図6に示す。図6のX線回折パターンに示される全てのピークは、サファイアおよびニオブ酸カリウムに帰属され、それ以外の化合物に帰属されるピークは観察されない。従って、本実験例で得られたニオブ酸カリウムは、多結晶ではあるが単相であることが確認された。
【0075】
次に、基板温度を300℃まで下げた後、SrRuOターゲット表面に、エネルギー密度3J/cm、周波数10Hz、パルス長10nsの条件でKrFエキシマレーザーのパルス光を入射し、ターゲット表面にSr、Ru、Oのプラズマプルームを発生させた。このプラズマプルームを、基板温度300℃、酸素分圧1×10−2Torrの条件で基板11に向けて照射し、SrRuO層からなる電極層14を形成した。ターゲットと基板11との距離は70mmとし、照射時間は60分とし、電極層14の膜厚は100nmとした。
【0076】
次に、電極層14の上にシリコンからなる第2基板15を接着剤(エポキシ系接着材)により接着し、ニオブ酸カリウム堆積体100(図2参照)を得た。
【0077】
その後、得られたニオブ酸カリウム堆積体100をリン酸溶液に浸漬して、MgOからなるバッファ層12をエッチングし、基板11を分離した。このようにして、第2基板15の上に、電極層14およびニオブ酸カリウム層13が順に積層されたニオブ酸カリウム堆積体100(図3参照)を得た。
【0078】
(2) 次に、第2の実験例について説明する。本実験例では、以下の方法によりニオブ酸カリウム堆積体100を形成した。本実験例では、単結晶のニオブ酸カリウムの薄膜を得ることができた。
【0079】
まず、第1の実験例と同様に、R面サファイア単結晶基板からなる基板11の脱脂洗浄を行った。次に、第1の実験例と同様に、基板11を基板ホルダーに装填した後、真空装置内に基板ホルダーごと導入し、酸素ガスを導入し、400℃まで加熱昇温した。このとき、図7に示すように、サファイア[11−20]方向からの反射高速電子線回折(Reflection High Energy Electron Diffraction:RHEED)により得られたパターンには、単結晶特有の菊池ラインや強反射点が観測された。
【0080】
次に、マグネシウムターゲットの表面に、周波数20Hzの条件でKrFエキシマレーザーのパルス光を入射し、ターゲット表面にマグネシウムのプラズマプルームを発生させた。この際、エネルギー密度、パルス長、波長はそれぞれ、第1の実験例と同条件とした。このプラズマプルームを基板11に照射し、MgOからなるバッファ層12を形成した。この際、基板温度、酸素分圧、ターゲット基板間距離、照射時間、膜厚はそれぞれ、第1の実験例と同条件とした。
【0081】
このようにして得られた堆積体について、サファイア[11−20]方向からのRHEEDパターンを求めたところ、図8に示すパターンが得られた。このRHEEDパターンには、回折パターンが現れており、MgOからなるバッファ層12がエピタキシャル成長していることが確認された。
【0082】
さらに、この堆積体のMgOからなるバッファ層12のX線回折パターン(2θ−θスキャン)を図9に示す。図9に示すように、基板11のピークの他には観測されなかった。2θ値をMgO(200)(a=0.4212nmとすると2θ=42.92°)に固定した場合のX線回折パターン(ωスキャン)を図10および図11に示す。ωスキャンの回転軸がサファイア[11−20]に平行な場合には、図10に示すように、中心より9.2°シフトしたピークが観測された。ωスキャンの回転軸がサファイア[−1101]に平行な場合には、図11に示すように、ピークは観測されなかった。これらの結果から、基板11より約9°傾いたMgO(100)膜が成長していることが確認された。
【0083】
次に、K0.67Nb0.33ターゲットの表面に、エネルギー密度2J/cmの条件でKrFエキシマレーザーのパルス光を入射し、ターゲット表面にK、Nb、Oのプラズマプルームを発生させた。この際、周波数、パルス長はそれぞれ、第1の実験例と同条件とした。このプラズマプルームを、基板温度600℃、酸素分圧1×10−2Torrの条件で基板11に向けて照射し、バッファ層12の上にニオブ酸カリウム層13を形成した。ニオブ酸カリウム層13の膜厚は0.5μmとした。また、ターゲット基板間距離、照射時間はそれぞれ、第1の実験例と同条件とした。
【0084】
このようにして得られた堆積体について、サファイア[11−20]方向からのRHEEDパターンを求めたところ、図12に示すパターンが得られた。このパターンには、明確な回折パターンが現れており、ニオブ酸カリウムがエピタキシャル成長していることが確認された。
【0085】
さらに、この堆積体のニオブ酸カリウム(KNbO)層13のX線回折パターン(2θ−θスキャン)を図13に示す。図13に示すように、KNbOを擬立方晶の面指数で表記すると、KNbO(100)pc、KNbO(200)pcのピークが観測された。従って、KNbOは(100)pc配向していることが確認された。KNbO(200)pc(2θ=45.12°)のX線回折パターン(ωスキャン)を図14および図15に示す。ωスキャンの回転軸がサファイア[11−20]に平行な場合には、図14に示すように、中心より6.3°シフトしたピークが観測された。ωスキャンの回転軸がサファイア[−1101]に平行な場合には、図15に示すように、ピークは観測されなかった。これらの結果から、基板11より約6°傾いたKNbO(100)pc膜が成長していることが確認された。
【0086】
また、X線回折極点図を測定したところ、図16〜図18に示す結果が得られた。図16、図17、図18は、それぞれ、サファイア(0006)(2θ=41.7°)、MgO(202)(2θ=62.3°)、KNbO(101)pc(2θ=31.5°)のX線回折極点図である。図17および図18に示すように、MgO(202)およびKNbO(101)pcのスポットは、ともに4回対称性を示しており、面間でKNbO(100)pc/MgO(100)/サファイア(1−102)、面内でKNbO[010]pc//MgO[010]//サファイア[11−20]のエピタキシャル成長方位の関係になっていることが分かった。また、図17および図18に示すように、4スポットの中心が極点図の中心(Psi=0度)からサファイア[−1101]方向に、それぞれ9度程度、6度程度シフトしている。これらは、上述したωスキャンのシフト量と一致している。従って、MgOからなるバッファ層12は、(100)面が基板11のR面に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として、9度程度傾いた状態でエピタキシャル成長しており、ニオブ酸カリウム層13は、擬立方晶表示において(100)面が基板11のR面に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として、6度程度傾いた状態でエピタキシャル成長していることが確認された。
【0087】
また、ラマン散乱スペクトルを測定したところ、図19および図20に示す結果が得られた。図19、図20はそれぞれ、z(x,x)−z、z(x,y)−zの幾何学的配置に対応している。ここで、幾何学的配置を示す式は、「入射光の運動量の方向(入射光の偏光方向,散乱光の偏光方向)−散乱光の運動量の方向」を意味している。z(x,x)−zの幾何学的配置においては、図19に示すように、280cm−1および600cm−1付近のA振動モードのピークは強く観察されるが、250cm−1および530cm−1付近のB振動モードのピークはほとんど観察されない。一方、z(x,y)−zの幾何学的配置においては、図20に示すように、250cm−1および530cm−1付近のB振動モードのピークは強く観察されるが、280cm−1および600cm−1付近のA振動モードのピークはほとんど観察されない。即ち、z(x,y)−zの配置の場合と、z(x,x)−zの配置の場合とでは、A振動モードとB振動モードとのピーク強度の大きさが逆転している。
【0088】
この結果から、擬立方晶(100)配向で取り得る斜方晶(101)ドメインおよび斜方晶(010)ドメイン(斜方晶b軸配向ドメイン)のうち、どちらが支配的かを考察する。表1は、各ドメイン構造に対して、ラマン散乱スペクトルに観測されるフォノンモードの選択則を空間群に基づいて求めたものである。なお、表1における「O」は観測されることを示し、「N」は観測されないことを示す。
【0089】
【表1】

【0090】
入射光の偏光面と散乱光の偏光面とを平行または直交にしたとき、(010)ドメインの場合、分極軸が入射光の電界と平行または直交するため、A、Bモードのうちの一方が選択的に観測される。一方、(101)ドメインの場合、分極軸が入射光の電界とねじれの位置になるため、偏光面の向きによらず、A、Bモードの両方が一緒に観測される。従って、図19および図20の結果は、(010)ドメイン(斜方晶b軸配向ドメイン)が支配的だと仮定したときのピークの選択則と一致しており、得られたニオブ酸カリウム層13が斜方晶b軸配向ドメインからなることを示している。
【0091】
また、このラマン散乱スペクトルの測定結果と、上述したX線回折の測定結果とにより、斜方晶のニオブ酸カリウムのb軸が、基板11のR面に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いていることが確認された。
【0092】
次に、基板温度を300℃まで下げた後、第1の実験例と同条件でSrRuO層からなる電極層14を形成した。
【0093】
次に、電極層14の上にシリコンからなる第2基板15を接着剤(エポキシ系接着材)により接着し、ニオブ酸カリウム堆積体100(図2参照)を得た。
【0094】
その後、得られたニオブ酸カリウム堆積体100をリン酸溶液に浸漬して、MgOからなるバッファ層12をエッチングし、基板11を分離した。このようにして、第2基板15の上に、電極層14およびニオブ酸カリウム層13が順に積層されたニオブ酸カリウム堆積体100(図3参照)を得た。
【0095】
2.第2の実施形態
2.1. 次に、本発明を適用した第2の実施形態に係る圧電薄膜振動子の一例について、図面を参照しながら説明する。図21は、本実施形態に係る圧電薄膜振動子200を模式的に示す断面図である。図21において、図3に示すニオブ酸カリウム堆積体100の部材と実質的に同じ部材には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0096】
圧電薄膜振動子200は、空隙部15aを有する第2基板15と、第2基板15上に形成された電極層(以下「第1電極層」ともいう)14と、第1電極層14上に形成されたニオブ酸カリウム層13と、ニオブ酸カリウム層13上に形成された第2電極層16と、を含む。そして、第1電極層14および第2電極層16は、少なくとも空隙部15aの上方に位置する。空隙部15aでは、第1電極層14が露出している。
【0097】
本実施形態に係る圧電薄膜振動子200は、後述するように、本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体、例えば、図3に示すニオブ酸カリウム堆積体100を加工して構成される。従って、圧電薄膜振動子200を構成するニオブ酸カリウム層13は、ニオブ酸カリウム堆積体100のニオブ酸カリウム層13と同じ特徴を有する。ニオブ酸カリウム層13は、上述したように、単結晶または多結晶のニオブ酸カリウムから構成されている。
【0098】
第2電極層16の材質としては、特に限定されず、第1電極層14と同様のものを用いることができ、例えばPt、Ir、Al、Au、Cuなどが好ましい。
【0099】
2.2. 本実施形態に係る圧電薄膜振動子200は、本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体を用いて、例えば以下のようにして形成される。
【0100】
まず、図3に示すニオブ酸カリウム堆積体100の第2基板15の表面に、リソグラフィー技術およびエッチング技術を用いてレジスト層(図示せず)を形成する。このレジスト層は、空隙部15aの形成領域に開口部を有する。次に、レジスト層をマスクとして、第2基板15を異方性エッチングして空隙部15aを形成する。異方性エッチングには、例えば、公知のドライエッチング法等を用いることができる。
【0101】
次に、ニオブ酸カリウム層13の上に、例えば、スパッタ法およびリフトオフ法を用いて第2電極層16を形成する。このとき、第2電極層16は、空隙部15aの上方に位置し、かつ、空隙部15aを平面的に見て覆うように形成される。
【0102】
2.3. 本実施形態に係る圧電薄膜振動子は、本発明に係るニオブ酸カリウム堆積体を有する。従って、本実施形態によれば、電気機械結合係数の大きな圧電薄膜振動子を実現することが可能となる。
【0103】
2.4. 次に、本実施形態に係る圧電薄膜振動子200について行った実験例について述べる。
【0104】
(1) 上述した第1の実施形態における第1の実験例のニオブ酸カリウム堆積体100を用いて、第1の実験例の圧電薄膜振動子200を形成した。ニオブ酸カリウム堆積体100は、単相の多結晶のニオブ酸カリウム層13を有する。
【0105】
得られた圧電薄膜振動子200について、第1電極層14と第2電極層16との間の圧電振動を測定した。その結果、共振周波数から求められた音速は5000m/sであった。また、共振周波数および反共振周波数から求められた電気機械結合係数は30%であった。
【0106】
また、ニオブ酸カリウムの代わりに、ニオブ酸タンタル酸ナトリウムカリウム固溶体(K1−xNaNb1−yTa、0<x<1、0<y<1)を用いた圧電薄膜振動子200の場合も同様の効果が得られた。
【0107】
(2) また、上述した第1の実施形態における第2の実験例のニオブ酸カリウム堆積体100を用いて、第2の実験例の圧電薄膜振動子200を形成した。ニオブ酸カリウム堆積体100は、単結晶のニオブ酸カリウム層13を有する。このニオブ酸カリウム層は、斜方晶b軸配向ドメインを含み、該b軸は、基板11のR面に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いている。
【0108】
得られた圧電薄膜振動子200について、第1電極層14と第2電極層16との間の圧電振動を測定した。その結果、共振周波数から求められた音速は5000m/sであった。また、共振周波数および反共振周波数から求められた電気機械結合係数は40%であった。このように、多結晶のニオブ酸カリウム層13を用いた場合(実験例1の場合)の電気機械結合係数(30%)に比べ、単結晶のニオブ酸カリウム層13をb軸が傾いた状態でエピタキシャル成長させることによって、電気機械結合係数が改善されることが明らかとなった。
【0109】
3.第3の実施形態
次に、本発明を適用した第3の実施形態に係る発振器および周波数フィルタの一例について、図面を参照しながら説明する。図22は、本実施形態に係る発振器250の回路構成を示す図である。なお、図22に示すIN、OUT、Vはそれぞれ、制御用入力信号、発振出力、電源電圧を意味する。
【0110】
発振器250は、図22に示すように、周波数可変の圧電薄膜振動子200(図21参照)を有する。発振器250は、例えば、電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCO)である。図22に示すように、トランジスタTr、およびその周りのいくつかの受動部品により、コルピッツ型の発振器250が構成されている。トランジスタTrのベースには、キャパシタC3を介して、圧電薄膜振動子200の一方の電極層が接続されている。圧電薄膜振動子200の他方の電極層は、接地されている。圧電薄膜振動子200に、抵抗R1を介して、周波数制御用の直流電圧が加えられると、電圧の大きさに応じて、共振周波数、反共振周波数が変化する。これらの周波数およびキャパシタC1,C2,C3の容量により発振器250の発振周波数は決定される。従って、圧電薄膜振動子200に電圧を印加することにより、発振器250の発振周波数を変化させることができる。即ち、圧電薄膜振動子200に印加される電圧により、発振器250の発振周波数を制御できる。
【0111】
発振器250は、例えば、図23に示すPLL回路のVCOとして用いられる。図23は、PLL回路の基本構成を示すブロック図である。PLL回路は、位相比較器71、低域フィルタ72、増幅器73、およびVCO74から構成されている。位相比較器71は、入力端子70から入力される信号の位相(または周波数)と、VCO74から出力される信号の位相(または周波数)とを比較し、その差に応じて値が設定される誤差電圧信号を出力するものである。低域フィルタ72は、位相比較器71から出力される誤差電圧信号の位置の低周波成分のみを通過させるものである。増幅器73は、低域フィルタ72から出力される信号を増幅するものである。VCO74は、入力された電圧値に応じて発振する周波数が、ある範囲で連続的に変化する発振回路である。
【0112】
このような構成のもとにPLL回路は、入力端子70から入力される位相(または周波数)と、VCO74から出力される信号の位相(または周波数)との差が減少するように動作し、VCO74から出力される信号の周波数を入力端子70から入力される信号の周波数に同期させる。VCO74から出力される信号の周波数が入力端子70から入力される信号の周波数に同期すると、その後は一定の位相差を除いて入力端子70から入力される信号に一致し、また、入力信号の変化に追従するような信号を出力するようになる。
【0113】
また、圧電薄膜振動子200(図21参照)を用いて周波数フィルタを構成することができる。周波数フィルタは、例えば、周波数可変の複数の圧電薄膜振動子200と、周波数制御用端子と、を含む。周波数制御用端子に直流電圧が加えられると、それぞれの圧電薄膜振動子200に直流電圧が加わり、それに応じて各圧電薄膜振動子200の共振周波数、反共振周波数が変化する。従って、周波数制御用端子に電圧を印加することにより、周波数フィルタの通過周波数帯域を変化させることができる。即ち、周波数制御用端子に印加される電圧により、周波数フィルタの通過周波数帯域を制御できる。
【0114】
以上述べたように、本実施形態に係る周波数フィルタおよび発振器は、本発明に係る電気機械結合係数の大きな圧電薄膜振動子を有する。従って、本実施形態によれば、周波数フィルタおよび発振器の小型化を実現することが可能となる。
【0115】
4.第4の実施形態
4.1. 次に、本発明を適用した第4の実施形態に係る電子回路および電子機器の第1の例について、図面を参照しながら説明する。図24は、本実施形態に係る電子機器300の電気的構成を示すブロック図である。電子機器300とは、例えば携帯電話機である。
【0116】
電子機器300は、電子回路310、送話部80、受話部91、入力部94、表示部95、およびアンテナ部86を有する。電子回路310は、送信信号処理回路81、送信ミキサ82、送信フィルタ83、送信電力増幅器84、送受分波器85、低雑音増幅器87、受信フィルタ88、受信ミキサ89、受信信号処理回路90、周波数シンセサイザ92、および制御回路93を有する。
【0117】
電子回路310において、送信フィルタ83および受信フィルタ88として、上述した周波数フィルタを用いることができる。フィルタリングする周波数(通過させる周波数)は、送信ミキサ82から出力される信号のうちの必要となる周波数、および、受信ミキサ89で必要となる周波数に応じて、送信フィルタ83および受信フィルタ88で個別に設定されている。また、周波数シンセサイザ92内に設けられるPLL回路(図23参照)のVCO74として、図22に示す発振器を用いることができる。
【0118】
送話部80は、例えば音波信号を電気信号に変換するマイクロフォン等で実現されるものである。送信信号処理回路81は、送話部80から出力される電気信号に対して、例えばD/A変換処理、変調処理等の処理を施す回路である。送信ミキサ82は、周波数シンセサイザ92から出力される信号を用いて送信信号処理回路81から出力される信号をミキシングするものである。送信フィルタ83は、中間周波数(以下、「IF」と表記する)の必要となる周波数の信号のみを通過させ、不要となる周波数の信号をカットするものである。送信フィルタ83から出力される信号は、変換回路(図示せず)によってRF信号に変換される。送信電力増幅器84は、送信フィルタ83から出力されるRF信号の電力を増幅し、送受分波器85へ出力するものである。
【0119】
送受分波器85は、送信電力増幅器84から出力されるRF信号をアンテナ部86へ出力し、アンテナ部86から電波の形で送信するものである。また、送受分波器85は、アンテナ部86で受信した受信信号を分波して、低雑音増幅器87へ出力するものである。低雑音増幅器87は、送受分波器85からの受信信号を増幅するものである。低雑音増幅器87から出力される信号は、変換回路(図示せず)によってIFに変換される。
【0120】
受信フィルタ88は、変換回路(図示せず)によって変換されたIFの必要となる周波数の信号のみを通過させ、不要となる周波数の信号をカットするものである。受信ミキサ89は、周波数シンセサイザ92から出力される信号を用いて、受信フィルタ88から出力される信号をミキシングするものである。受信信号処理回路90は、受信ミキサ89から出力される信号に対して、例えばA/D変換処理、復調処理等の処理を施す回路である。受話部91は、例えば電気信号を音波に変換する小型スピーカ等で実現されるものである。
【0121】
周波数シンセサイザ92は、送信ミキサ82へ供給する信号、および、受信ミキサ89へ供給する信号を生成する回路である。周波数シンセサイザ92は、PLL回路を有し、このPLL回路から出力される信号を分周して新たな信号を生成することができる。制御回路93は、送信信号処理回路81、受信信号処理回路90、周波数シンセサイザ92、入力部94、および表示部95を制御する。表示部95は、例えば携帯電話機の使用者に対して機器の状態を表示する。入力部94は、例えば携帯電話機の使用者の指示を入力する。
【0122】
4.2. 次に、本発明を適用した第4の実施形態に係る電子回路および電子機器の第2の例について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、電子機器の例として、リーダライタ2000およびそれを用いた通信システム3000について説明する。図25は、本実施形態に係るリーダライタ2000を用いた通信システム3000を示す図であり、図26は、図25に示す通信システム3000の概略ブロック図である。
【0123】
図25に示すように、通信システム3000は、リーダライタ2000と、非接触情報媒体2200と、を含む。リーダライタ2000は、キャリア周波数fを有する電波W(以下「キャリア」ともいう)を非接触情報媒体2200へ送信し、または非接触情報媒体2200から受信し、無線通信を利用して非接触情報媒体2200と交信する。電波Wは任意の周波数帯のキャリア周波数fcを使用することができる。図25および図26に示されるように、リーダライタ2000は、本体2105と、本体2105上面に位置するアンテナ部2110と、本体2105内部に格納される制御インターフェース部2120と、電源回路172と、を含む。アンテナ部2110と制御インターフェース部2120とは、ケーブル2180によって電気的に接続されている。また、図示はしないが、リーダライタ2000は、制御インターフェース部2120を介して、外部ホスト装置(処理装置など)に接続されている。
【0124】
アンテナ部2110は、非接触情報媒体2200との間で情報の通信を行う機能を有する。アンテナ部2110は、図25に示すように、所定の通信領域(点線で示す領域)を有する。アンテナ部2110は、ループアンテナ112および整合回路114により構成される。
【0125】
制御インターフェース部2120は、送信部161と、減衰振動キャンセル部(以下「キャンセル部」という)140と、受信部168と、コントローラ160と、を含む。
【0126】
送信部161は、外部装置(図示せず)より送信されたデータを変調し、ループアンテナ112に送信する。送信部161は、発振回路162と、変調回路163と、駆動回路164と、を含む。発振回路162は、所定の周波数のキァリアを発生させるための回路である。発振回路162は、通常、水晶振動子等を用いて構成されるが、上述した本発明に係る発振器を用いることにより、通信周波数の高周波化、検出感度の向上が可能となる。変調回路163は、キャリアを与えられた情報に従って変調する回路である。駆動回路164は、変調されたキャリアを受けて電力増幅し、アンテナ部2110を駆動する。
【0127】
キャンセル部165は、キャリアのON/OFFに伴い、アンテナ部2110のループアンテナ112によって発生する減衰振動を抑制する機能を有する。キャンセル部165は、ロジック回路166と、キャンセル回路167と、を含む。
【0128】
受信部168は、検波部169と、復調回路170と、を含む。受信部168は、非接触情報媒体2200が送信した信号を復元する。検波部169は、例えば、ループアンテナ112に流れる電流の変化を検出する。検波部169は、例えばRFフィルタを含むことができる。RFフィルタとしては、通常、水晶振動子等を用いるが、上述した本発明に係る周波数フィルタを用いることにより、通信周波数の高周波化、検出感度の向上、小型化が可能となる。復調回路170は、検波部169で検出された変化分を復調する回路である。
【0129】
コントローラ160は、復調した信号から情報を取り出して外部装置に転送する。電源回路172は、外部より電力の供給を受けて適宜電圧変換を行い、各回路に対し必要電力を供給する回路である。なお、内蔵電池を電力源とすることもできる。
【0130】
非接触情報媒体2200は、リーダライタ2000と電磁波(電波)を用いて交信する。非接触情報媒体2200としては、例えば、非接触ICタグ、非接触ICカードなどを挙げることができる。
【0131】
次に、本実施形態のリーダライタ2000を用いた通信システム3000の動作について説明する。リーダライタ2000から非接触情報媒体2200にデータが送られる場合には、図示しない外部装置からのデータは、リーダライタ2000において、コントローラ160で処理されて送信部161に送られる。送信部161では、発振回路162から一定振幅の高周波信号がキャリアとして供給されており、このキャリアが変調回路163により変調されて、変調高周波信号が出力される。変調回路163から出力される変調高周波信号は、駆動回路164を介してアンテナ部2110に供給される。これと同時に、キャンセル部165が、変調高周波信号のOFFタイミングに同期して、所定のパルス信号を生成し、ループアンテナ112における減衰振動の抑制に寄与する。
【0132】
非接触情報媒体2200においては、アンテナ部186を介して、変調高周波信号が受信回路180に供給される。また、変調高周波信号は、電源回路182に供給されて、非接触情報媒体2200の各部に必要な所定の電源電圧が生成される。受信回路180から出力されたデータは、復調されてロジック制御回路184に供給される。ロジック制御回路184は、クロック183の出力に基づいて動作し、供給されるデータを処理して所定のデータをメモリ185に書き込む。
【0133】
非接触情報媒体2200からリーダライタ2000にデータが送られる場合は、リーダライタ2000において、変調回路163からは無変調で一定振幅の高周波信号が出力される。高周波信号は、駆動回路164、アンテナ部2110のループアンテナ112を介して、非接触情報媒体2200に送られる。
【0134】
非接触情報媒体2200においては、メモリ185から読み出されたデータがロジック制御回路184で処理されて、送信回路181に供給される。送信回路181では、データの‘1’、‘0’ビットに応じて、スイッチがON/OFFする。
【0135】
リーダライタ2000においては、送信回路181のスイッチがON/OFFすると、アンテナ部2110のループアンテナ112の負荷が変動する。このため、ループアンテナ112に流れる高周波電流の振幅が変動する。即ち、高周波電流は、非接触情報媒体2200から供給されるデータによって振幅変調される。この高周波電流は、受信部168の検波部169で検出され、復調回路170で復調されてデータが得られる。このデータは、コントローラ160で処理され、外部装置などに送られる。
【0136】
4.3. 本実施形態に係る電子回路および電子機器は、本発明に係る電気機械結合係数の大きな圧電薄膜振動子を有する。従って、本実施形態によれば、電子回路および電子機器の省電力化を実現することが可能となる。
【0137】
上記のように、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【0138】
例えば、本発明に係る周波数フィルタ、発振器はそれぞれ、UWBシステム、携帯電話機、無線LAN等における広帯域フィルタ、VCOに適用することができる。
【0139】
また、例えば、上記実施形態においては、電子機器として携帯電話機およびリーダライタを用いた通信システムを、電子回路として携帯電話機およびリーダライタ内に設けられる電子回路をその一例として挙げて説明した。しかしながら、本発明はこれらに限定されることなく、種々の移動体通信機器およびその内部に設けられる電子回路に適用することができる。例えば、BS(Broadcast Satellite)放送等を受信するチューナなどの据置状態で使用される通信機器およびその内部に設けられる電子回路、光ケーブル中を伝播する光信号等を用いるHUBなどの電子機器およびその内部に設けられる電子回路にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】第1の実施形態に係るニオブ酸カリウム堆積体を模式的に示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係るニオブ酸カリウム堆積体を模式的に示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係るニオブ酸カリウム堆積体を模式的に示す断面図。
【図4】六方晶のサファイア結晶を模式的に示す図。
【図5】バッファ層およびニオブ酸カリウム層の傾きを模式的に示す図。
【図6】第1の実験例に係るニオブ酸カリウム層のX線回折図。
【図7】第2の実験例に係るサファイア基板のRHHEDパターン。
【図8】第2の実験例に係るバッファ層のRHHEDパターン。
【図9】第2の実験例に係るバッファ層の2θ−θスキャンのX線回折図。
【図10】第2の実験例に係るバッファ層のωスキャンのX線回折図。
【図11】第2の実験例に係るバッファ層のωスキャンのX線回折図。
【図12】第2の実験例に係るKNbO層のRHHEDパターン。
【図13】第2の実験例に係るKNbO層の2θ−θスキャンのX線回折図。
【図14】第2の実験例に係るKNbO層のωスキャンのX線回折図。
【図15】第2の実験例に係るKNbO層のωスキャンのX線回折図。
【図16】第2の実験例に係るサファイア基板のX線回折極点図。
【図17】第2の実験例に係るバッファ層のX線回折極点図。
【図18】第2の実験例に係るKNbOのX線回折極点図。
【図19】第2の実験例に係るKNbOのラマン散乱スペクトル。
【図20】第2の実験例に係るKNbOのラマン散乱スペクトル。
【図21】第2の実施形態に係る圧電薄膜振動子の断面図。
【図22】第3の実施形態に係る発振器の回路構成を示す図。
【図23】PLL回路の基本構成を示すブロック図。
【図24】第4の実施形態に係る電子回路の構成を示すブロック図。
【図25】第4の実施形態に係るリーダライタを用いた通信システムを示す図。
【図26】図25に示す通信システムの概略ブロック図。
【符号の説明】
【0141】
11 基板(R面サファイア基板)、12 バッファ層、13 ニオブ酸カリウム層、14 電極層(第1電極層)、15 第2基板、16 第2電極層、70 入力端子、71 位相比較器、72 低域フィルタ、73 増幅器、74 VCO、80 送話部、81 送信信号処理回路、82 送信ミキサ、83 送信フィルタ、84 送信電力増幅器、85 送受分波器、86 アンテナ部、87 低雑音増幅器、88 受信フィルタ、89 受信ミキサ、90 受信信号処理回路、91 受話部、92 周波数シンセサイザ、93 制御回路、94 入力部、95 表示部、100 ニオブ酸カリウム堆積体、112 ループアンテナ、114 整合回路、160 コントローラ、161 送信部、162 発振回路、163 変調回路、164 駆動回路、165 キャンセル部、166 ロジック回路、167 キャンセル回路、168 受信部、169 検波部、170 復調回路、172 電源回路、180 受信回路、181 送信回路、182 電源回路、183 クロック、184 ロジック制御回路、185 メモリ、186 アンテナ部、200 圧電薄膜振動子、250 発振器、300 電子機器、310 電子回路、2000 リーダライタ、2105 本体、2110 アンテナ部、2120 制御インターフェース部、2200 非接触情報媒体,3000 通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R面サファイア基板からなる基板の上方にバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層の上方に、擬立方晶表示において(100)配向でエピタキシャル成長したニオブ酸カリウム層またはニオブ酸カリウム固溶体層を形成する工程と、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の上方に電極層を形成する工程と、を含み、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成される、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の(100)面が、前記R面サファイア基板のR面(1−102)と成す角は、1度以上15度以下となるように形成される、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ニオブ酸カリウム層は、斜方晶ニオブ酸カリウムの格子定数を21/2b<a<cとし、かつc軸が分極軸であるとき、b軸配向でエピタキシャル成長しているドメインを含むように形成され、
前記b軸は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成される、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記b軸が前記R面サファイア基板のR面(1−102)と成す角は、1度以上15度以下となるように形成される、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記バッファ層は、立方晶(100)配向でエピタキシャル成長するように形成され、
前記バッファ層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成される、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項6】
R面サファイア基板からなる基板の上方に立方晶(100)配向でエピタキシャル成長したバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層の上方に、ニオブ酸カリウム層またはニオブ酸カリウム固溶体層を形成する工程と、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の上方に電極層を形成する工程と、を含み、
前記バッファ層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾くように形成される、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記バッファ層の(100)面が、前記R面サファイア基板のR面(1−102)と成す角は、1度以上15度以下となるように形成される、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記バッファ層としては、岩塩構造の金属酸化物を用いる、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記金属酸化物としては、酸化マグネシウムを用いる、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、
前記電極層の上方に他の基板を接合する工程と、
前記バッファ層をエッチングで除去して、前記基板を分離する工程と、を含む、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかにおいて、
前記ニオブ酸カリウム固溶体層としては、K1−xNaNb1−yTa(0<x<1、0<y<1)で表される固溶体を用いる、ニオブ酸カリウム堆積体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のニオブ酸カリウム堆積体の製造方法により得られる、ニオブ酸カリウム堆積体。
【請求項13】
R面サファイア基板からなる基板と、
前記基板の上方に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層の上方に形成された、ニオブ酸カリウム層またはニオブ酸カリウム固溶体層と、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の上方に形成された電極層と、を含み、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層は、擬立方晶表示において(100)配向でエピタキシャル成長しており、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いている、ニオブ酸カリウム堆積体。
【請求項14】
R面サファイア基板からなる基板と、
前記基板の上方に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層の上方に形成された、ニオブ酸カリウム層またはニオブ酸カリウム固溶体層と、
前記ニオブ酸カリウム層または前記ニオブ酸カリウム固溶体層の上方に形成された電極層と、を含み、
前記バッファ層は、立方晶(100)配向でエピタキシャル成長しており、
前記バッファ層の(100)面は、前記R面サファイア基板のR面(1−102)に対して、[11−20]方向ベクトルを回転軸として傾いている、ニオブ酸カリウム堆積体。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載のニオブ酸カリウム堆積体を含む、圧電薄膜振動子。
【請求項16】
請求項15に記載の圧電薄膜振動子を含む、周波数フィルタ。
【請求項17】
請求項15に記載の圧電薄膜振動子を含む、発振器。
【請求項18】
請求項16に記載の周波数フィルタおよび請求項17に記載の発振器のうちの少なくとも一方を含む、電子回路。
【請求項19】
請求項18に記載の電子回路を含む、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−245413(P2006−245413A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60914(P2005−60914)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】