ニッケル合金スパッタリングターゲット及びニッケルシリサイド膜
【課題】熱的に安定なシリサイド(NiSi)膜の形成が可能であり、膜の凝集や過剰なシリサイド化が起り難く、またスパッタ膜の形成に際してパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらにターゲットへの塑性加工性に富む、特にゲート電極材料(薄膜)の製造に有用なニッケル合金スパッタリングターゲット及び該ターゲットにより形成されたニッケルシリサイド膜を提供する。
【解決手段】白金を22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し、残部がニッケル及び不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル合金スパッタリングターゲット。
【解決手段】白金を22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し、残部がニッケル及び不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル合金スパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱的に安定なニッケルシリサイド(NiSi)膜の形成が可能であり、またターゲットへの塑性加工性が良好である、特にゲート電極材料(薄膜)の製造に有用なニッケル合金スパッタリングターゲット及び該ターゲットにより形成されたニッケルシリサイド膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲート電極材料としてサリサイドプロセスによるNiSi膜の利用が注目されている。ニッケルはコバルトに比べてサリサイドプロセスによるシリコンの消費量か少なくシリサイド膜を形成することができるという特徴がある。また、NiSiはコバルトシリサイド膜と同様に、配線の微細化による細線抵抗の上昇が起り難いという特徴がある。
このようなことから、ゲート電極材料として高価なコバルトに替えてニッケルを使用することが考えられる。しかし、NiSiの場合は、より安定相であるNiSi2へ相転移し易く、界面ラフネスの悪化と高抵抗化する問題がある。また、膜の凝集や過剰なシリサイド化が起り易いという問題もある。
【0003】
従来、ニッケルシリサイド等の膜を用いるものとして、NiあるいはCo膜の上にTiNなどの金属化合物膜をキャップしてアニールすることによって、シリサイド膜形成時に酸素と反応して絶縁膜を形成してしまうことを防止する技術がある。この場合、酸素とNiが反応して凹凸のある絶縁膜が形成されるのを防ぐために、TiNが使用されている。
凹凸が小さいとNiSi膜とソース/ドレイン拡散層の接合までの距離が長くなるので、接合リークを抑制できるとされている。他にキャップ膜としてはTiC、TiW、TiB、WB2、WC、BN、AlN、Mg3N2、CaN、Ge3N4、TaN、TbNi2、VB2、VC、ZrN、ZrBなどが示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また従来技術では、NiSiはシリサイド材料中でも非常に酸化され易くNiSi膜とSi基板との界面領域には凹凸が大きく形成され、接合リークが生じるという問題があることが指摘されている。
この場合、Ni膜上にキャップ膜としてTiN膜をスパッタし、かつこれを熱処理することによりNiSi膜の表面を窒化させる提案がなされている。これによってNiSiが酸化されるのを防ぎ、凹凸の形成を抑制することを目的としている。しかし、TiNをNi上に堆積して形成したNiSi上の窒化膜は薄いため、バリア性を長時間保つことは難しいという問題がある。
【0005】
そこで窒素ガスを添加した混合ガス(2.5〜10%)雰囲気中でシリサイド膜を形成することにより、シリサイド膜のラフネスを40nm以下、粒径200nm以上とする提案がある。さらにNi上にTi、W、TiNx、WNxのうち一つをキャップすることが望ましいとする。
この場合、窒素ガスを含まないアルゴンガスのみでNiをスパッタし、続いてTiNのキャップ膜をスパッタした後、NイオンをNi膜中にイオン注入することによってNi膜中にNを添加してもよいということが示されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、従来技術として半導体装置とその製造方法が開示され、第一金属:Co、Ni、Pt又はPdと、第二金属:Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta又はCrの組合せが記述されている。実施例では、Co−Tiの組合せがある。
コバルトは、チタンに比べてシリコン酸化膜を還元させる能力が低く、コバルトを堆積する際にシリコン基板やポリシリコン膜表面に存在する自然酸化膜が存在する場合はシリサイド反応が阻害される。さらに耐熱性がチタニウムシリサイド膜より劣り、サリサイドプロセス終了後の層間膜用のシリコン酸化膜の堆積時の熱で、コバルトダイシリサイド(CoSi2)膜が凝集して抵抗が上昇してしまう問題があるということが示されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、従来技術として、「半導体装置の製造方法」の開示があり、サリサイド形成の際のオーバーグロースによる短絡を防止するために、コバルトあるいはニッケルにチタン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、ニオブ、ハフニウム及びタングステンより選択された金属との非晶質合金層を形成する技術が示されている。この場合、コバルトの含有量50〜75at%、Ni40Zr60の実施例があるが、非晶質膜とするために合金の含有量が多い(特許文献4参照)。
以上の開示されている従来技術については、いずれも成膜プロセスに関するものでありスパッタリングターゲットに関するものではない。また、従来の高純度ニッケルとしては、ガス成分を除いて〜4N程度であり酸素は100ppm程度と高いものであった。このような従来のニッケルを基としたニッケル合金ターゲットを作製したところ、塑性加工性が悪く品質の良いターゲットを作製することが出来なかった。またスパッタの際にパーティクルが多く、ユニフォーミティも良くないという問題があった。
【0008】
以上のゲート電極材料の問題点に鑑みて、本発明者らは、特に優れた材料としてニッケルをベースとして、これにチタン又は白金を添加したスパッタリングターゲット材を開発し、安定相であるNiSi2へ相転移するのを抑制する提案を行った(特許文献5、特許文献6参照)。
この提案の中で、白金を添加したニッケル合金が最も効果的であり、この提案時点では非常に有用であったが、最近では配線幅の縮小と共に、プロセス温度の上昇は避けられず、さらに高温での熱安定性が求められるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−38104号公報
【特許文献2】特開平9−153616号公報
【特許文献3】特開平11−204791号公報(USP5989988)
【特許文献4】特開平5−94966号公報
【特許文献5】特開2003−213406号公報
【特許文献6】特開2003−213406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、熱的に安定なシリサイド(NiSi)膜の形成が可能であり、膜の凝集や過剰なシリサイド化が起り難く、またスパッタ膜の形成に際してパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらにターゲットへの塑性加工性に富む、特にゲート電極材料(薄膜)の製造に有用なニッケル合金スパッタリングターゲット及び該ターゲットにより形成されたニッケルシリサイド膜を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するため、高純度ニッケルに白金と共に、特殊な金属元素を添加することにより、熱的に安定したシリサイド(NiSi)成膜が可能であり、スパッタリングの際にパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらに塑性加工性に富むターゲットを製造でき、さらにこのターゲットを用いた成膜によりNiSiからNiSi2への相変化を抑制できるニッケルシリサイド膜を得ることができるとの知見を得た。
【0012】
この知見に基づき、本発明は
1)白金を22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し、残部がニッケル及び不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル合金スパッタリングターゲット、を提供する。
【0013】
また、本発明は、
2)白金22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し残部がニッケル及び不可避的不純物であるニッケル合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、シリコン基板上にニッケル合金膜を形成し、このニッケル合金膜とシリコン基板との反応により形成したニッケルシリサイド膜であって、当該ニッケルシリサイド膜のNiSiからNiSi2への相変化温度が750°C以上であることを特徴とするニッケルシリサイド膜
3)NiSiからNiSi2への相変化温度が800°C以上であることを特徴とする上記2)記載のニッケルシリサイド膜、を提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記問題点を解決するため、高純度ニッケルに白金と共に、特殊な金属元素を添加することにより、熱的に安定したシリサイド(NiSi)成膜が可能であり、スパッタリングの際にパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらに塑性加工性に富むターゲットを製造でき、さらにこのターゲットを用いた成膜によりNiSiからNiSi2への相変化を抑制できるニッケルシリサイド膜を得ることができるとの知見を得た。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例及び比較例の熱処理温度によるシート抵抗変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のターゲットは、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴットとし、このインゴットと高純度白金を真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製する。
真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法が適している。この合金インゴットを鍛造、圧延などの工程で板状にして、最終的に再結晶温度(約500°C)〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製する。
【0017】
白金(Pt)の添加量は22〜46wt%、より好ましくは27〜37wt%とする。この白金の添加量が少なすぎると、ニッケル合金層の熱安定が向上しない。添加量か多すぎると、膜抵抗が大きくなりすぎて適当でないばかりか、金属間化合物の量が多くなり塑性加工が困難となって、スパッタ時のパーティクルも多くなるという問題がある。
さらに、本願発明は、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)から選択した1成分以上を5〜50wtppm含有させる。これらの添加元素は、Ni中に固溶した状態で存在する。この合金元素の添加により、単にPtを添加する場合に比べて、サリサイドプロセスにおけるNiSiからNiSi2への相変化を効果的に抑制できる。
【0018】
すなわち、本発明の白金添加ニッケル合金を用いてSi基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱した後、XRD回折法により結晶構造の変化温度を測定したところ、白金22〜46wt%及びイリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppmの添加により50〜100°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。
すなわち、サリサイドプロセスによるニッケルシリサイド膜を形成した場合、NiSiからNiSi2への相変化温度750°C以上を達成し、さらにはNiSiからNiSi2への相変化温度が800°C以上とすることが可能となった。
【0019】
スパッタリングの際のパーティクル発生を減少させ、ユニフォーミティを良好にするために、ガス成分を除く不可避不純物を100wtppm以下とすることが望ましい。より好ましくはガス成分を除く不可避不純物を10wtppm以下とする。
また、ガス成分もパーティクル発生を増加させる要因となるので、酸素50wtppm以下、より好ましくは10wtppm以下、窒素、水素及び炭素をそれぞれ10wtppm以下とするのが望ましい。
【0020】
ターゲットの初透磁率が50以上(好ましくは100程度)、さらには最大透磁率100以上にすることがスパッタ特性に対して重要である。
再結晶温度以上(約500°C)〜950°Cで最終熱処理を行い実質的な再結晶組織とする。熱処理温度が500°C未満であると十分な再結晶組織が得られない。また、透磁率及び最大透磁率の向上も無い。
【0021】
本発明のターゲットにおいては、多少の未再結晶の存在は特性に影響しないが、多量の存在は好ましくない。ターゲットの平均結晶粒径が80μm以下であることが望ましい。
950°Cを超える最終熱処理は、平均結晶粒径を粗大化させるので好ましくない。平均結晶粒径が粗大化すると、結晶粒径のばらつきが大きくなり、ユニフォーミティの低下となる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0023】
(実施例1)
粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とし、このインゴットと同程度の純度の高純度白金8at%及び高純度イリジウム2wtppm、高純度ルテニウム2wtppm、高純度パラジウム1wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は5wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0024】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。これによって、単なる白金添加の場合に比較して、150〜200°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0025】
この図1から明らかなように、800°C以下ではシート抵抗値の上昇は全く認められない。さらに850°Cの加熱でも、若干シート抵抗値の上昇があるのみであった。この高温に加熱してもシート抵抗値が上がらないことは、NiSiからNiSi2への相変化が起こらないことを意味している。
【0026】
この実施例1においては、高純度イリジウム2wtppm、高純度ルテニウム2wtppm、高純度パラジウム1wtppmと、3成分の副成分を総量で5wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で5wtppmを添加する限りにおいて、同一の結果が得られた。
【0027】
(実施例2)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、このインゴットと同程度の純度の高純度白金22wt%及び高純度イリジウム5wtppm、高純度ルテニウム5wtppm、高純度パラジウム5wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は15wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0028】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。これによって、単なる白金添加の場合に比較して、実施例1と同様に、150〜200°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0029】
この図1から明らかなように、800°C以下ではシート抵抗値の上昇は全く認められない。さらに850°Cの加熱でも、若干シート抵抗値の上昇があるのみであった。この高温に加熱してもシート抵抗値が上がらないことは、NiSiからNiSi2への相変化が起こらないことを意味している。
【0030】
この実施例2においては、高純度イリジウム5wtppm、高純度ルテニウム5wtppm、高純度パラジウム5wtppmと、3成分の副成分を総量で15wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で15wtppmを添加する限りにおいて、同一の結果が得られた。
【0031】
(実施例3)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、このインゴットと同程度の純度の高純度白金27wt%及び高純度イリジウム8wtppm、高純度ルテニウム8wtppm、高純度パラジウム9wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は25wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0032】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。これによって、単なる白金添加の場合に比較して、実施例1と同様に、150〜200°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0033】
この図1から明らかなように、800°C以下ではシート抵抗値の上昇は全く認められない。さらに850°Cの加熱でも、若干シート抵抗値の上昇があるのみであった。この高温に加熱してもシート抵抗値が上がらないことは、NiSiからNiSi2への相変化が起こらないことを意味している。
【0034】
この実施例3においては、高純度イリジウム8wtppm、高純度ルテニウム8wtppm、高純度パラジウム9wtppmと、3成分の副成分を総量で25wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で25wtppmを添加する限りにおいて、同一の結果が得られた。
【0035】
(実施例4)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、このインゴットと同程度の純度の高純度白金46wt%及び高純度イリジウム20wtppm、高純度ルテニウム20wtppm、高純度パラジウム10wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は50wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0036】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。これによって、単なる白金添加の場合に比較して、実施例1と同様に、150〜200°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0037】
この図1から明らかなように、800°C以下ではシート抵抗値の上昇は全く認められない。さらに850°Cの加熱でも、若干シート抵抗値の上昇があるのみであった。この高温に加熱してもシート抵抗値が上がらないことは、NiSiからNiSi2への相変化が起こらないことを意味している。
【0038】
この実施例4においては、高純度イリジウム20wtppm、高純度ルテニウム20wtppm、高純度パラジウム10wtppmと、3成分の副成分を総量で50wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で50wtppmを添加する限りにおいて、同一の結果が得られた。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、白金は添加せず、高純度イリジウム0.3wtppm、高純度ルテニウム0.3wtppm、高純度パラジウム0.2wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は0.8wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0040】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。この場合、実施例1に比較して、550°C以上では、相変化温度が急速に増加し、熱安定性が著しく低下した。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0041】
この図1から明らかなように、550°Cを超えるとシート抵抗値の上昇が著しくなったのが確認できた。このように低温に加熱して場合でも、シート抵抗値が大きく高くなったことは、NiSiからNiSi2への相変化が起きたことを意味するものである。
【0042】
この比較例1においては、高純度イリジウム0.3wtppm、高純度ルテニウム0.3wtppm、高純度パラジウム0.2wtppmとし、3成分の副成分を総量で0.8wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で0.8wtppmを添加する限りにおいて、同一の悪い結果が得られた。
【0043】
(比較例2)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、白金を15wt%添加し、さらに高純度イリジウム1wtppm、高純度ルテニウム1wtppm、高純度パラジウム1wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は3wtppmとなる。白金の添加量及びイリジウム、ルテニウム、パラジウムの添加量は、いずれも本願発明の条件を満たしていない。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0044】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。この場合、実施例1に比較して、550°C以上では、相変化温度が急速に増加し、熱安定性が著しく低下した。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0045】
この図1から明らかなように、550°Cを超え、600°Cで一旦とシート抵抗値が減少したが、650°C以上では上昇が著しくなったのが確認できた。このように650°C程度の低温に加熱して場合でも、シート抵抗値が大きく高くなったことは、NiSiからNiSi2への相変化が起きたことを意味するものである。
【0046】
この比較例2においては、白金15wt%以外に、高純度イリジウム1wtppm、高純度ルテニウム1wtppm、高純度パラジウム1wtppmとし、3成分の副成分を総量で3wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で3wtppmを添加する限りにおいて、同一の悪い結果が得られた。
【0047】
(比較例3)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、白金を20wt%添加し、さらに高純度イリジウム10wtppm、高純度ルテニウム10wtppm、高純度パラジウム10wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は30wtppmとなる。白金の添加量は本発明の8at%よりも少なく、本発明の条件を満たしていない。なお、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの添加量は本願発明の条件を満たしている。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0048】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。この場合、実施例1に比較して、750°C以上では、相変化温度が急速に増加し、熱安定性が低下した。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0049】
この図1から明らかなように、700°Cを超えるとシート抵抗値が増加し、750°C以上では上昇が著しくなったのが確認できた。このように750°C程度の温度に加熱して場合でも、シート抵抗値が大きく高くなったことは、この温度でNiSiからNiSi2への相変化が起きたことを意味するものである。
【0050】
この比較例3においては、高純度イリジウム10wtppm、高純度ルテニウム10wtppm、高純度パラジウム10wtppmとし、3成分の副成分を総量で30wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で30wtppmを添加する限りにおいて、白金20wt%と低いために、同一の悪い結果が得られた。
【0051】
(比較例4)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、白金を27wt%添加し、さらに高純度イリジウム1wtppm、高純度ルテニウム1wtppm、高純度パラジウム2wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は4wtppmとなる。白金の添加量は本発明の22wt%以上であるので、本発明の条件を満たしている。なお、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの添加量は本願発明の条件である5wtppmを満たしていない。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0052】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。この場合、実施例1に比較して、750°C以上では、相変化温度が急速に増加し、熱安定性が低下した。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0053】
この図1から明らかなように、750°Cを超えるとシート抵抗値が高くなるのが確認できた。このように750°C程度の温度に加熱して場合でも、シート抵抗値が大きく高くなったことは、この温度でNiSiからNiSi2への相変化が起きたことを意味するものである。比較例1〜比較例3に比べて大きく改善されてはいるが、本発明の目的とする改善に至っていない。
【0054】
この比較例4においては、高純度イリジウム1wtppm、高純度ルテニウム1wtppm、高純度パラジウム2wtppmとし、3成分の副成分を総量で4wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で4wtppmを添加する限りにおいて、白金添加量が27wt%と本願発明の条件を満たしていても、やや悪い結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上に示すように、ニッケルに白金を8〜20at%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm添加したニッケル合金スパッタリングターゲットは、熱的に安定なシリサイド(NiSi)膜の形成が可能であり、膜の凝集や過剰なシリサイド化が起り難く、またスパッタ膜の形成に際してパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらにターゲットへの塑性加工性に富むので、特にゲート電極材料(薄膜)の製造に有用なニッケル合金スパッタリングターゲットを提供できる。
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱的に安定なニッケルシリサイド(NiSi)膜の形成が可能であり、またターゲットへの塑性加工性が良好である、特にゲート電極材料(薄膜)の製造に有用なニッケル合金スパッタリングターゲット及び該ターゲットにより形成されたニッケルシリサイド膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲート電極材料としてサリサイドプロセスによるNiSi膜の利用が注目されている。ニッケルはコバルトに比べてサリサイドプロセスによるシリコンの消費量か少なくシリサイド膜を形成することができるという特徴がある。また、NiSiはコバルトシリサイド膜と同様に、配線の微細化による細線抵抗の上昇が起り難いという特徴がある。
このようなことから、ゲート電極材料として高価なコバルトに替えてニッケルを使用することが考えられる。しかし、NiSiの場合は、より安定相であるNiSi2へ相転移し易く、界面ラフネスの悪化と高抵抗化する問題がある。また、膜の凝集や過剰なシリサイド化が起り易いという問題もある。
【0003】
従来、ニッケルシリサイド等の膜を用いるものとして、NiあるいはCo膜の上にTiNなどの金属化合物膜をキャップしてアニールすることによって、シリサイド膜形成時に酸素と反応して絶縁膜を形成してしまうことを防止する技術がある。この場合、酸素とNiが反応して凹凸のある絶縁膜が形成されるのを防ぐために、TiNが使用されている。
凹凸が小さいとNiSi膜とソース/ドレイン拡散層の接合までの距離が長くなるので、接合リークを抑制できるとされている。他にキャップ膜としてはTiC、TiW、TiB、WB2、WC、BN、AlN、Mg3N2、CaN、Ge3N4、TaN、TbNi2、VB2、VC、ZrN、ZrBなどが示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また従来技術では、NiSiはシリサイド材料中でも非常に酸化され易くNiSi膜とSi基板との界面領域には凹凸が大きく形成され、接合リークが生じるという問題があることが指摘されている。
この場合、Ni膜上にキャップ膜としてTiN膜をスパッタし、かつこれを熱処理することによりNiSi膜の表面を窒化させる提案がなされている。これによってNiSiが酸化されるのを防ぎ、凹凸の形成を抑制することを目的としている。しかし、TiNをNi上に堆積して形成したNiSi上の窒化膜は薄いため、バリア性を長時間保つことは難しいという問題がある。
【0005】
そこで窒素ガスを添加した混合ガス(2.5〜10%)雰囲気中でシリサイド膜を形成することにより、シリサイド膜のラフネスを40nm以下、粒径200nm以上とする提案がある。さらにNi上にTi、W、TiNx、WNxのうち一つをキャップすることが望ましいとする。
この場合、窒素ガスを含まないアルゴンガスのみでNiをスパッタし、続いてTiNのキャップ膜をスパッタした後、NイオンをNi膜中にイオン注入することによってNi膜中にNを添加してもよいということが示されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、従来技術として半導体装置とその製造方法が開示され、第一金属:Co、Ni、Pt又はPdと、第二金属:Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta又はCrの組合せが記述されている。実施例では、Co−Tiの組合せがある。
コバルトは、チタンに比べてシリコン酸化膜を還元させる能力が低く、コバルトを堆積する際にシリコン基板やポリシリコン膜表面に存在する自然酸化膜が存在する場合はシリサイド反応が阻害される。さらに耐熱性がチタニウムシリサイド膜より劣り、サリサイドプロセス終了後の層間膜用のシリコン酸化膜の堆積時の熱で、コバルトダイシリサイド(CoSi2)膜が凝集して抵抗が上昇してしまう問題があるということが示されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、従来技術として、「半導体装置の製造方法」の開示があり、サリサイド形成の際のオーバーグロースによる短絡を防止するために、コバルトあるいはニッケルにチタン、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、ニオブ、ハフニウム及びタングステンより選択された金属との非晶質合金層を形成する技術が示されている。この場合、コバルトの含有量50〜75at%、Ni40Zr60の実施例があるが、非晶質膜とするために合金の含有量が多い(特許文献4参照)。
以上の開示されている従来技術については、いずれも成膜プロセスに関するものでありスパッタリングターゲットに関するものではない。また、従来の高純度ニッケルとしては、ガス成分を除いて〜4N程度であり酸素は100ppm程度と高いものであった。このような従来のニッケルを基としたニッケル合金ターゲットを作製したところ、塑性加工性が悪く品質の良いターゲットを作製することが出来なかった。またスパッタの際にパーティクルが多く、ユニフォーミティも良くないという問題があった。
【0008】
以上のゲート電極材料の問題点に鑑みて、本発明者らは、特に優れた材料としてニッケルをベースとして、これにチタン又は白金を添加したスパッタリングターゲット材を開発し、安定相であるNiSi2へ相転移するのを抑制する提案を行った(特許文献5、特許文献6参照)。
この提案の中で、白金を添加したニッケル合金が最も効果的であり、この提案時点では非常に有用であったが、最近では配線幅の縮小と共に、プロセス温度の上昇は避けられず、さらに高温での熱安定性が求められるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−38104号公報
【特許文献2】特開平9−153616号公報
【特許文献3】特開平11−204791号公報(USP5989988)
【特許文献4】特開平5−94966号公報
【特許文献5】特開2003−213406号公報
【特許文献6】特開2003−213406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、熱的に安定なシリサイド(NiSi)膜の形成が可能であり、膜の凝集や過剰なシリサイド化が起り難く、またスパッタ膜の形成に際してパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらにターゲットへの塑性加工性に富む、特にゲート電極材料(薄膜)の製造に有用なニッケル合金スパッタリングターゲット及び該ターゲットにより形成されたニッケルシリサイド膜を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するため、高純度ニッケルに白金と共に、特殊な金属元素を添加することにより、熱的に安定したシリサイド(NiSi)成膜が可能であり、スパッタリングの際にパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらに塑性加工性に富むターゲットを製造でき、さらにこのターゲットを用いた成膜によりNiSiからNiSi2への相変化を抑制できるニッケルシリサイド膜を得ることができるとの知見を得た。
【0012】
この知見に基づき、本発明は
1)白金を22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し、残部がニッケル及び不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル合金スパッタリングターゲット、を提供する。
【0013】
また、本発明は、
2)白金22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し残部がニッケル及び不可避的不純物であるニッケル合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、シリコン基板上にニッケル合金膜を形成し、このニッケル合金膜とシリコン基板との反応により形成したニッケルシリサイド膜であって、当該ニッケルシリサイド膜のNiSiからNiSi2への相変化温度が750°C以上であることを特徴とするニッケルシリサイド膜
3)NiSiからNiSi2への相変化温度が800°C以上であることを特徴とする上記2)記載のニッケルシリサイド膜、を提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記問題点を解決するため、高純度ニッケルに白金と共に、特殊な金属元素を添加することにより、熱的に安定したシリサイド(NiSi)成膜が可能であり、スパッタリングの際にパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらに塑性加工性に富むターゲットを製造でき、さらにこのターゲットを用いた成膜によりNiSiからNiSi2への相変化を抑制できるニッケルシリサイド膜を得ることができるとの知見を得た。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例及び比較例の熱処理温度によるシート抵抗変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のターゲットは、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴットとし、このインゴットと高純度白金を真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製する。
真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法が適している。この合金インゴットを鍛造、圧延などの工程で板状にして、最終的に再結晶温度(約500°C)〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製する。
【0017】
白金(Pt)の添加量は22〜46wt%、より好ましくは27〜37wt%とする。この白金の添加量が少なすぎると、ニッケル合金層の熱安定が向上しない。添加量か多すぎると、膜抵抗が大きくなりすぎて適当でないばかりか、金属間化合物の量が多くなり塑性加工が困難となって、スパッタ時のパーティクルも多くなるという問題がある。
さらに、本願発明は、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)から選択した1成分以上を5〜50wtppm含有させる。これらの添加元素は、Ni中に固溶した状態で存在する。この合金元素の添加により、単にPtを添加する場合に比べて、サリサイドプロセスにおけるNiSiからNiSi2への相変化を効果的に抑制できる。
【0018】
すなわち、本発明の白金添加ニッケル合金を用いてSi基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱した後、XRD回折法により結晶構造の変化温度を測定したところ、白金22〜46wt%及びイリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppmの添加により50〜100°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。
すなわち、サリサイドプロセスによるニッケルシリサイド膜を形成した場合、NiSiからNiSi2への相変化温度750°C以上を達成し、さらにはNiSiからNiSi2への相変化温度が800°C以上とすることが可能となった。
【0019】
スパッタリングの際のパーティクル発生を減少させ、ユニフォーミティを良好にするために、ガス成分を除く不可避不純物を100wtppm以下とすることが望ましい。より好ましくはガス成分を除く不可避不純物を10wtppm以下とする。
また、ガス成分もパーティクル発生を増加させる要因となるので、酸素50wtppm以下、より好ましくは10wtppm以下、窒素、水素及び炭素をそれぞれ10wtppm以下とするのが望ましい。
【0020】
ターゲットの初透磁率が50以上(好ましくは100程度)、さらには最大透磁率100以上にすることがスパッタ特性に対して重要である。
再結晶温度以上(約500°C)〜950°Cで最終熱処理を行い実質的な再結晶組織とする。熱処理温度が500°C未満であると十分な再結晶組織が得られない。また、透磁率及び最大透磁率の向上も無い。
【0021】
本発明のターゲットにおいては、多少の未再結晶の存在は特性に影響しないが、多量の存在は好ましくない。ターゲットの平均結晶粒径が80μm以下であることが望ましい。
950°Cを超える最終熱処理は、平均結晶粒径を粗大化させるので好ましくない。平均結晶粒径が粗大化すると、結晶粒径のばらつきが大きくなり、ユニフォーミティの低下となる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0023】
(実施例1)
粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とし、このインゴットと同程度の純度の高純度白金8at%及び高純度イリジウム2wtppm、高純度ルテニウム2wtppm、高純度パラジウム1wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は5wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0024】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。これによって、単なる白金添加の場合に比較して、150〜200°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0025】
この図1から明らかなように、800°C以下ではシート抵抗値の上昇は全く認められない。さらに850°Cの加熱でも、若干シート抵抗値の上昇があるのみであった。この高温に加熱してもシート抵抗値が上がらないことは、NiSiからNiSi2への相変化が起こらないことを意味している。
【0026】
この実施例1においては、高純度イリジウム2wtppm、高純度ルテニウム2wtppm、高純度パラジウム1wtppmと、3成分の副成分を総量で5wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で5wtppmを添加する限りにおいて、同一の結果が得られた。
【0027】
(実施例2)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、このインゴットと同程度の純度の高純度白金22wt%及び高純度イリジウム5wtppm、高純度ルテニウム5wtppm、高純度パラジウム5wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は15wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0028】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。これによって、単なる白金添加の場合に比較して、実施例1と同様に、150〜200°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0029】
この図1から明らかなように、800°C以下ではシート抵抗値の上昇は全く認められない。さらに850°Cの加熱でも、若干シート抵抗値の上昇があるのみであった。この高温に加熱してもシート抵抗値が上がらないことは、NiSiからNiSi2への相変化が起こらないことを意味している。
【0030】
この実施例2においては、高純度イリジウム5wtppm、高純度ルテニウム5wtppm、高純度パラジウム5wtppmと、3成分の副成分を総量で15wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で15wtppmを添加する限りにおいて、同一の結果が得られた。
【0031】
(実施例3)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、このインゴットと同程度の純度の高純度白金27wt%及び高純度イリジウム8wtppm、高純度ルテニウム8wtppm、高純度パラジウム9wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は25wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0032】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。これによって、単なる白金添加の場合に比較して、実施例1と同様に、150〜200°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0033】
この図1から明らかなように、800°C以下ではシート抵抗値の上昇は全く認められない。さらに850°Cの加熱でも、若干シート抵抗値の上昇があるのみであった。この高温に加熱してもシート抵抗値が上がらないことは、NiSiからNiSi2への相変化が起こらないことを意味している。
【0034】
この実施例3においては、高純度イリジウム8wtppm、高純度ルテニウム8wtppm、高純度パラジウム9wtppmと、3成分の副成分を総量で25wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で25wtppmを添加する限りにおいて、同一の結果が得られた。
【0035】
(実施例4)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、このインゴットと同程度の純度の高純度白金46wt%及び高純度イリジウム20wtppm、高純度ルテニウム20wtppm、高純度パラジウム10wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は50wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0036】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。これによって、単なる白金添加の場合に比較して、実施例1と同様に、150〜200°Cの相変化温度が向上し、明らかな熱安定性が確認できた。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0037】
この図1から明らかなように、800°C以下ではシート抵抗値の上昇は全く認められない。さらに850°Cの加熱でも、若干シート抵抗値の上昇があるのみであった。この高温に加熱してもシート抵抗値が上がらないことは、NiSiからNiSi2への相変化が起こらないことを意味している。
【0038】
この実施例4においては、高純度イリジウム20wtppm、高純度ルテニウム20wtppm、高純度パラジウム10wtppmと、3成分の副成分を総量で50wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で50wtppmを添加する限りにおいて、同一の結果が得られた。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、白金は添加せず、高純度イリジウム0.3wtppm、高純度ルテニウム0.3wtppm、高純度パラジウム0.2wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は0.8wtppmとなる。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0040】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。この場合、実施例1に比較して、550°C以上では、相変化温度が急速に増加し、熱安定性が著しく低下した。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0041】
この図1から明らかなように、550°Cを超えるとシート抵抗値の上昇が著しくなったのが確認できた。このように低温に加熱して場合でも、シート抵抗値が大きく高くなったことは、NiSiからNiSi2への相変化が起きたことを意味するものである。
【0042】
この比較例1においては、高純度イリジウム0.3wtppm、高純度ルテニウム0.3wtppm、高純度パラジウム0.2wtppmとし、3成分の副成分を総量で0.8wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で0.8wtppmを添加する限りにおいて、同一の悪い結果が得られた。
【0043】
(比較例2)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、白金を15wt%添加し、さらに高純度イリジウム1wtppm、高純度ルテニウム1wtppm、高純度パラジウム1wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は3wtppmとなる。白金の添加量及びイリジウム、ルテニウム、パラジウムの添加量は、いずれも本願発明の条件を満たしていない。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0044】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。この場合、実施例1に比較して、550°C以上では、相変化温度が急速に増加し、熱安定性が著しく低下した。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0045】
この図1から明らかなように、550°Cを超え、600°Cで一旦とシート抵抗値が減少したが、650°C以上では上昇が著しくなったのが確認できた。このように650°C程度の低温に加熱して場合でも、シート抵抗値が大きく高くなったことは、NiSiからNiSi2への相変化が起きたことを意味するものである。
【0046】
この比較例2においては、白金15wt%以外に、高純度イリジウム1wtppm、高純度ルテニウム1wtppm、高純度パラジウム1wtppmとし、3成分の副成分を総量で3wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で3wtppmを添加する限りにおいて、同一の悪い結果が得られた。
【0047】
(比較例3)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、白金を20wt%添加し、さらに高純度イリジウム10wtppm、高純度ルテニウム10wtppm、高純度パラジウム10wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は30wtppmとなる。白金の添加量は本発明の8at%よりも少なく、本発明の条件を満たしていない。なお、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの添加量は本願発明の条件を満たしている。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0048】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。この場合、実施例1に比較して、750°C以上では、相変化温度が急速に増加し、熱安定性が低下した。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0049】
この図1から明らかなように、700°Cを超えるとシート抵抗値が増加し、750°C以上では上昇が著しくなったのが確認できた。このように750°C程度の温度に加熱して場合でも、シート抵抗値が大きく高くなったことは、この温度でNiSiからNiSi2への相変化が起きたことを意味するものである。
【0050】
この比較例3においては、高純度イリジウム10wtppm、高純度ルテニウム10wtppm、高純度パラジウム10wtppmとし、3成分の副成分を総量で30wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で30wtppmを添加する限りにおいて、白金20wt%と低いために、同一の悪い結果が得られた。
【0051】
(比較例4)
実施例1と同様に、粗Ni(〜4N程度)を電解精製にて、金属不純物成分を除去したのち、EB溶解にてさらに精製して高純度ニッケルインゴット(99.999wt%)とした。
次に、白金を27wt%添加し、さらに高純度イリジウム1wtppm、高純度ルテニウム1wtppm、高純度パラジウム2wtppmを真空溶解して高純度ニッケル合金インゴットを作製した。なお、この場合、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの総量は4wtppmとなる。白金の添加量は本発明の22wt%以上であるので、本発明の条件を満たしている。なお、イリジウム、ルテニウム、パラジウムの添加量は本願発明の条件である5wtppmを満たしていない。
この材料の真空溶解に際しては、水冷銅製坩堝を用いたコールドクルーシブル溶解法を用いた。ターゲットへの塑性加工性は良好であり、特に問題はなかった。
【0052】
溶解、鋳造して得た合金インゴットを鍛造及び圧延工程で板状にし、最終的に500〜950°Cで熱処理することによりターゲットを作製した。
このようにして得たニッケル合金ターゲットを用いてシリコン基板上にスパッタリングし、さらにこのスパッタ成膜を窒素雰囲気中で加熱し、シート抵抗値の変化温度を測定した。この場合、実施例1に比較して、750°C以上では、相変化温度が急速に増加し、熱安定性が低下した。このニッケル合金膜のシート抵抗を測定した結果を図1に示す。
【0053】
この図1から明らかなように、750°Cを超えるとシート抵抗値が高くなるのが確認できた。このように750°C程度の温度に加熱して場合でも、シート抵抗値が大きく高くなったことは、この温度でNiSiからNiSi2への相変化が起きたことを意味するものである。比較例1〜比較例3に比べて大きく改善されてはいるが、本発明の目的とする改善に至っていない。
【0054】
この比較例4においては、高純度イリジウム1wtppm、高純度ルテニウム1wtppm、高純度パラジウム2wtppmとし、3成分の副成分を総量で4wtppm添加した場合であるが、これらの副成分を1成分で単独添加した場合、また各副成分を2成分組み合わせた場合でも、総量で4wtppmを添加する限りにおいて、白金添加量が27wt%と本願発明の条件を満たしていても、やや悪い結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上に示すように、ニッケルに白金を8〜20at%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm添加したニッケル合金スパッタリングターゲットは、熱的に安定なシリサイド(NiSi)膜の形成が可能であり、膜の凝集や過剰なシリサイド化が起り難く、またスパッタ膜の形成に際してパーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティも良好であり、さらにターゲットへの塑性加工性に富むので、特にゲート電極材料(薄膜)の製造に有用なニッケル合金スパッタリングターゲットを提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金を22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し、残部がニッケル及び不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル合金スパッタリングターゲット。
【請求項2】
白金22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し残部がニッケル及び不可避的不純物であるニッケル合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、シリコン基板上にニッケル合金膜を形成し、このニッケル合金膜とシリコン基板との反応により形成したニッケルシリサイド膜であって、当該ニッケルシリサイド膜のNiSiからNiSi2への相変化温度が750°C以上であることを特徴とするニッケルシリサイド膜。
【請求項3】
NiSiからNiSi2への相変化温度が800°C以上であることを特徴とする請求項2記載のニッケルシリサイド膜。
【請求項1】
白金を22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し、残部がニッケル及び不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル合金スパッタリングターゲット。
【請求項2】
白金22〜46wt%、イリジウム、パラジウム、ルテニウムから選択した1成分以上を5〜50wtppm含有し残部がニッケル及び不可避的不純物であるニッケル合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、シリコン基板上にニッケル合金膜を形成し、このニッケル合金膜とシリコン基板との反応により形成したニッケルシリサイド膜であって、当該ニッケルシリサイド膜のNiSiからNiSi2への相変化温度が750°C以上であることを特徴とするニッケルシリサイド膜。
【請求項3】
NiSiからNiSi2への相変化温度が800°C以上であることを特徴とする請求項2記載のニッケルシリサイド膜。
【図1】
【公開番号】特開2009−167530(P2009−167530A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−28005(P2009−28005)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28005(P2009−28005)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】
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