説明

ニューロンエキソサイトーシス抑制ペプチド

本発明は、ニューロンエキソサイトーシスを制御できる一般式(I):R‐AA‐Rのペプチドに係り、その立体異性体、そのラセミ混合物又は非ラセミ混合物及び化粧品的又は医薬的に許容できるその塩である。式中、AAは、SNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に含まれる3〜40の隣接アミノ酸配列であり、Rは、H、アルキル基、アリール基、アラルキル基及びアシル基から成る群より選択され、Rは、脂肪族基又は環状基で置換された又は置換されていないアミノ基、ヒドロキシル基及びチオール基から成る群より選択され、RがH又はアセチル基であるとき、Rは置換されていないアミノ基、ヒドロキシル基及びチオール基ではない。また、本発明は、そのペプチド、それを含む化粧品又は医薬組成物を製造する方法、及びニューロンエキソサイトーシス制御が必要な状態を治療するための、好ましくは、皮膚を治療するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューロンエキソサイトーシスを制御するペプチド及び、例えば筋痙直、顔面非対称及び/又は、顔のしわ、好ましくは表情じわ等のニューロンエキソサイトーシスの制御が必要な状態の処置に有用な前記ペプチドを含む化粧品又は医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の加齢で最も目に見える兆候の1つは、乾燥、しみ、弛緩及びしわなど皮膚によって認められる変化である。これらの影響は、日光への持続的な曝露、大気汚染又は例えば洗浄剤に含まれる化学物質との接触などの外的因子によって引き起こされる場合があるが、コラーゲン又はエラスチンなどのタンパク質合成の減少、タンパク質分解の増加並びに皮膚保護、結合組織及び結合性の一般的な破壊に起因する内的な生理学的、生化学的及び組織学的な人体の変化の結果でもある。
【0003】
例えば、レチノイド、ヒドロキシ酸、フラボノイド又はビタミンC及びビタミンE誘導体など、加齢の兆候を抑制及び減少させる様々な活性成分が伝えられている。前記化合物は、通常、皮膚の水分補強の改善、細胞の修復の増加又は皮膚形成組織の変性の抑制をすることによって作用する。しかしながら筋収縮によって引き起こされた顔のしわの予防や治療における有効性は限られている。顔の表情じわの形成の原理又はメカニズムは、内部で皮膚を引っ張る表皮筋肉の緊張である。この筋肉の緊張は、顔の筋肉を衰弱させる神経の過剰活動の結果である。神経の過剰活動は、筋繊維を興奮させる神経伝達物質の制御できない過度の放出によって特徴付けられる。そのため、ニューロンエキソサイトーシスを制御する分子は、筋肉の緊張を緩和させ、顔のしわを排除することに貢献する。
【0004】
したがって、ニューロンエキソサイトーシスを制御するための、ひいては筋痙直の治療並びに顔面非対称及び/又は顔のしわ、特に表情じわの減少及び/又は除去のための化粧品又は医薬組成物を調製するために、有効性が証明された新しい活性成分を開発する必要がある。
【0005】
表情じわは、顔の皮膚上で起こる顔の表情に関与する顔の筋肉の収縮によって加えられた圧力から生じるしわである。通常、表情じわは、額、まゆの間、口の周り及び/又は目の周りにできる。顔の形、表情の頻度及びチックの存在(1つ以上の筋肉、この場合は顔の筋肉の不随収縮によって引き起こされ、頻繁に繰り返される痙攣運動)によって、青年期の間にも表情じわは現れる。日光への曝露などの外的要因はそれらの深さと可視性を強くする。
【0006】
ボツリヌス毒素、特に血清型A[BOTOX(登録商標)Cosmetic,Allergan Inc.]は、表情じわの減少、及び/又は、排除する目的で広く用いられる(非特許文献1、非特許文献2)。BOTOXを用いた治療と美容整形は、希釈された薬剤(ボツリヌスA‐赤血球凝集素複合体、500kDa)を筋肉の緊張がある領域に局所注射することで構成される。毒素の麻痺効果は平均6カ月持続し、可逆的である(非特許文献3、非特許文献4)。したがって、治療としてはボツリヌス毒素を繰り返して注射する必要がある。この治療の主な問題点は、その分子サイズが患者の免疫システムによって認識されるために薬剤に対する免疫反応が惹起される可能性があることである。ボツリヌス毒素に対する抗体が現れることは、有効性の明らかな低下に寄与するので深刻な問題である(非特許文献5〜非特許文献12)。BOTOXの治療効果の低下により、その後の処置において薬剤の濃度を高める必要性が生じるが、それは同じ様に免疫反応の増強を引き起こす。ボツリヌス毒素血清型Aによる治療に代わる手段として、BoTox B、BoTox F及びBoTox Eなどの異なったボツリヌス毒素血清型の使用が考えられた。それでもやはり免疫反応が遅かれ早かれ再度起こるために、異なった血清型の薬剤の使用は問題の解決にはならない。その上、ボツリヌス毒素を用いる治療は、主にそれらを含む薬剤の不安定性のために高価である。
【0007】
したがって、免疫反応を惹起せず、生産費用が費用対効果に優れており、より簡単で、安定した構造であるボツリヌス毒素の麻痺状態の効果を模倣する分子の開発が急務である。ペプチドの性質を有する分子はこれらの特性に適合する。
【0008】
分子レベルでは、ボツリヌス毒素は、カルシウムイオン活性化エキソサイトーシスメカニズムに関連する神経タンパクを分解するプロテアーゼである(非特許文献13〜非特許文献15)。例えば、痙性疾患の徴候の軽減や顔のしわと顔面非対称の除去に適用されるために、主に臨床診療や美容整形に用いられるボツリヌス毒素Aは、ニューロンタンパク質SNAP‐25を切断する。このSNAP‐25タンパク質は、小胞に蓄積されたアセチルコリンの放出の誘導や制御を行う蛋白質複合体(SNARE又は融合複合体として知られている)の形成に関連していることから神経分泌において重要な役割を担っている。前記融合複合体の中心は、シナプス前細胞膜に局在するシンタキシンとSNAP‐25タンパク質及び小胞膜に局在するシナプトブレビン又はVAMPタンパク質によって形成されている(非特許文献16、非特許文献17)。融合複合体の主な機能は、神経伝達物質(アセチルコリン)を含んだ小胞を近くまで移動させて、シナプス前細胞膜と接触するように置くことである(非特許文献18、非特許文献19)。即ち、カルシウム濃度の上昇に反応した両者の膜融合は好ましく、その結果、神経伝達物質の放出が起こる。したがって、前記小胞の融合体とアンカリングSNAREタンパク質複合体は神経分泌を制御するための主要なターゲットを形成する。融合複合体を形成するタンパク質のいずれの切断もその集合を妨げ、したがって小胞の放出を抑制し、ニューロンエキソサイトーシスを制御する。
【0009】
当該技術分野では、SNARE複合体を形成するタンパク質の配列に由来する特定のペプチドがニューロンエキソサイトーシスを抑制できることが知られている。例えば、SNAP‐25タンパク質のアミノ領域及びカルボキシル領域に由来するペプチド(非特許文献20〜非特許文献25)、シンタキシンのアミノ酸配列に由来するペプチド(非特許文献26)、シナプトブレビンのアミノ酸配列に由来するペプチド(非特許文献27)、シナプトタグミンのアミノ酸配列に由来するペプチド(非特許文献28)及びsnapinタンパク質のアミノ酸配列に由来するペプチド(非特許文献29)である。同様に、ニューロンエキソサイトーシスを抑制するSNARE複合体の形成を阻害する合理的なデザイン又は合成化合物ライブラリーによって得られた合成ペプチドも記載されている(非特許文献30)。
【0010】
このタイプの化合物の工業的応用は制限されている。表情じわの形成の治療と予防専用のボツリヌス毒素の作用を模倣する化合物を開発するために、美容産業が相当な努力を行った(非特許文献31)。特に、Lipotec,S.A.社の特許文献1では、しわ取り効果を有するSNAP‐25タンパク質のアミノ末端断片に由来するペプチドについて記載しており、特許文献2でもSNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に由来するペプチド、特に、そのカルボキシ末端領域に由来するか、ニューロンエンドサイトーシスを抑制できるシナプトブレビン又はシンタキシンに由来するペプチドについて記載している。
【0011】
上述の特許文献のいずれもが、ニューロンエキソサイトーシスの制御薬物としての、不可逆的に化学的に修飾されたSNAP‐25タンパク質誘導体と無関係である。特許文献1は、血液脳関門と上皮組織の通過を容易にし、生物利用率を向上させることを目的としたSNAP‐25タンパク質のアミノ末端のペプチドの可逆的化学修飾、例えばアスパラギン酸及びグルタミン酸残基の側鎖のエステル化について記載している。これは、後に細胞内エステラーゼによってin vivoで分解され、生物活性に必要な非修飾ペプチドに戻る。驚くべきことに、本発明の出願人は、前記ペプチドのアミノ酸及びカルボキシル末端の不可逆的な化学的修飾が、細胞内プロテアーゼの分解に対して大きな抵抗性を与え、ニューロンエキソサイトーシスの制御因子としての効果をより長く持続させるだけでなく、驚くべきことに、それらは対応する非修飾ペプチドに比して、in vitroでの効果を2〜30倍に増大できることを発見した。
【0012】
脂質鎖を有するタンパク質の修飾がアミノ末端又はリジン残基の側鎖のいずれかの配列に存在するアミノ基で行われるとき、それは不可逆的修飾であると記載されているが、システイン残基のチオール基で行われるときには、修飾ペプチド又はタンパク質が対応するチオエステラーゼによってin vivoで加水分解されるために、可逆的であると考えられる(非特許文献32、非特許文献33)。当該技術では、脂肪酸鎖の誘導体を有するペプチドの不可逆的修飾の例が示されており、それらは皮膚の浸透性を高めてそれらのin vivo効果を改善することを目的としている(非特許文献34)。また、有用なワクチンとして開発するために、より良い免疫応答を達成することを目的としている(非特許文献35)。そのほかに、細菌に対して高い毒性効果を生じさせること(非特許文献36)又は真菌に対して高い毒性効果を生じさせることを目的としている(非特許文献37)。このタイプの修飾は、前記ペプチドのin vitroでの有効性について、いつも変化を生じさせるわけではない。例えば、GHKトリペプチドのパルミトイル化は、繊維芽細胞のコラーゲン合成を誘導する能力を改善しない(非特許文献38)。即ち、炭化水素基を有するペプチドの修飾が、対応する非修飾ペプチドに照らして、in vitroでの変わらない有効性を増加させるか、減少させるか、又はそのままとするかどうかについて、本発明時点での当業者は予測できなかった。
【0013】
「PEG化」として知られている、ポリエチレングリコールの繰り返し単位の共有結合的な導入の手段によるペプチド及びタンパク質の不可逆的化学修飾は、一般的にペプチドとタンパク質のin vivoでの半減期の増大、毒性の減少及び免疫原性と抗原性の減少を目的としており、当該技術分野で公知である(非特許文献39〜非特許文献45)。当該技術分野に存在する例では、それらの分布と排泄の薬理学的特性を改善すること、即ちin vitroの生物活性を変化させることなくin vivo活性を改善することを目的としたペプチドとタンパク質の修飾を示している。それらはPEG化がタンパク質のin vitro生物活性を増大できる可能性を示唆するものでは決してなく、むしろ反対に、PEG化されたインターフェロンのin vitro活性が元のインターフェロンに比べて低下した例などが示されている(非特許文献46)。
【0014】
驚くべきことに、本発明では、SNAP‐25タンパク質に由来するペプチド配列の不可逆的な化学修飾が、ニューロンエキソサイトーシスの抑制についての前記配列の有効性を増大できることを示している。前記修飾が前記ペプチドの抑制効果を増大するであろうことは当該技術分野では示されていない。したがって、当業者はニューロンエキソサイトーシスを抑制するそれらの能力を増大させるために必要なペプチドの修飾の本質を推論できなかった。
【特許文献1】欧州特許第1180524号明細書
【特許文献2】国際公開番号WO97/34620パンフレット
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は既存のニーズに対して新規な解決方法を提供する。そこには、当該分野で公知の対応する非修飾ペプチドに比べて、より効果的で長期的な方法でニューロンエキソサイトーシスを抑制できるSNAP‐25タンパク質由来の不可逆的に化学修飾されたペプチド配列の発見が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ニューロンエキソサイトーシスを制御するための簡単で効果的でリスクのない解決手段を提供する。そこには、SNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する1つ以上のペプチドを含む組成物の哺乳動物体内への適用及びそのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端の不可逆的な化学的修飾が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】0.1mM濃度の本発明のペプチド存在下において、ラットの海馬初代培養からの[H]‐L‐グルタミン酸の放出が40%以上抑制され、この化合物がニューロンエキソサイトーシスの抑制物質であることを示す図である。同じ濃度の配列番号11で定義されるSNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に由来する非修飾ペプチドでは、[H]‐L‐グルタミン酸放出の抑制はわずか5%であり、不可逆的に化学修飾されたペプチドと同等のレベルの抑制に達するためには30倍以上(3mM)の濃度が必要である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
即ち、本発明の第一の実施形態は、ニューロンエキソサイトーシスを制御できる一般式(I):R‐AA‐Rのペプチドに係り、
その立体異性体、そのラセミ混合物又は非ラセミ混合物及び化粧品的又は医薬的に許容できるその塩であり、
式中、
AAは、配列番号1のアミノ酸配列に含まれる3〜40の隣接アミノ酸配列であり、
は、H、アルキル基、アリール基、アラルキル基及びアシル基から成る群より選択され、
は、脂肪族基又は環状基で置換された又は置換されていないアミノ基、ヒドロキシル基及びチオール基から成る群より選択され、
がH又はアセチル基であるとき、Rは置換されていないアミノ基、ヒドロキシル基及びチオール基ではない。
【0019】
一般式(I)に示されたペプチドの好ましい構造は、
式中、
は、H、アセチル基、飽和若しくは不飽和の、直鎖、分岐鎖若しくは環状のC〜C24アシル基又はポリエチレングリコールポリマーであり、
は、アミノ基又はヒドロキシル基であり、任意に、飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状のC〜C24脂肪族基で置換されており、
がH又はアセチル基であるとき、Rは置換されていないアミノ基及びヒドロキシル基ではない。
【0020】
より好ましい構造は、ポリエチレングリコールポリマーが以下の構造であり、
【0021】
【化1】

【0022】
式中、
nは、1〜100とすることができ、更に好ましくは1〜5である。
【0023】
更に、好ましい構造は、式中、Rが式CH‐(CH‐CO-のアシル基であり、mは1〜22とすることができる。
【0024】
本発明のペプチドは、立体異性体又は立体異性体の混合物として存在できる。例えば、それらを形成するアミノ酸は、L又はDの立体配置を持つことができるし、相互に独立したラセミ体であることもできる。したがって、不斉炭素の数及び異性体や異性体混合物の存在によって、異性体混合物のほかに、ラセミ体やジアステレオ異性体混合物、又は純粋なジアステレオ異性体や光学異性体を得ることができる。本発明のペプチドの好ましい構造は、純粋な異性体、すなわち光学異性体やジアステレオ異性体である。
【0025】
本明細書では、「脂肪族基」という用語は、飽和又は不飽和の直鎖基又は環状基に対応する。
【0026】
「炭化水素基」という用語は、本発明においては、例えばアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を網羅するために用いられる。
【0027】
「アルキル基」という用語は、飽和の直鎖又は分岐炭化水素基に対応する。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t‐ブチル基、ヘプチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アミル基、2‐エチルヘキシル基、2‐メチルブチル基及び5‐メチルヘキシル基等が含まれる。
【0028】
「アルケニル基」という用語は、1つ以上のビニル基のような炭素‐炭素二重結合を有する不飽和の直鎖又は分岐炭化水素基に対応する。
【0029】
「アルキニル基」という用語は、1つ以上の炭素‐炭素三重結合を有する不飽和の直鎖又は分岐炭化水素基に対応する。
【0030】
「環状基」という用語は、脂環基、芳香族基又は複素環基として分類できる閉じた炭化水素環に対応する。
【0031】
「脂環基」という用語は、脂肪族基と同様の特性を有する環状炭化水素基に対応する。
【0032】
「芳香族基」又は「アリル基」という用語は、単環又は多環の芳香族炭化水素基に対応する。
【0033】
「複素環基」という用語は、環の1つ以上の原子が炭素以外の原子(例えば、窒素、酸素、硫黄など)である閉じた炭化水素環に対応する。
【0034】
「ポリエチレングリコールポリマー」という用語は、‐CHCHO‐基の繰り返し単位を含む置換又は非置換の炭化水素鎖に対応する。
【0035】
この技術領域で理解されるように、置換の度合いが高いことは、許容さるだけでなく、推奨される。したがって、本発明のペプチドに置換があってもよい。本発明の明細書の記載を簡略化する目的で、「基」や「ブロック」という用語は、置換を許容する又は置換される化学種(基)と、置換を許容しない又は置換されない化学種(ブロック)を区別するために使用される。このように「基」という用語が、化学置換基についての記載に使用されるとき、記載された化学物質には、非置換基とO、N又はS原子を含む基の両方が含まれる。
【0036】
一方、「ブロック」という用語が化合物又は官能基を表すために使用される場合、非置換の化学物質のみが含まれる。例えば「アルキル基」という表現は、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソブチル基などの開鎖の飽和アルキル化合物だけではなく、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキサミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びアルキルスルフォニル基など当該技術分野で公知の他の置換基を含むアルキル置換基も含まれる。このように「アルキル基」にはエーテル基、ハロアルキル基、アルコール基、チオール基、カルボキシル基、アミン基、ハイドロキシアルキル基、スルフォアルキル基、グアニジン基及びその他のものが含まれる。それに対して「アルキルブロック」という表現は、メチル、エチル、プロピル及びイソブチルなどの開鎖の飽和アルキル官能基のみを含むことに制限される。
【0037】
本明細書では、「SNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列」は、SNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に含まれる任意のアミノ酸配列又は断片を意味する。その配列はSNAP‐25タンパク質活性を有するペプチドに対応するものであって、配列番号1又は1つ以上のアミノ酸の変異、挿入、欠失、置換若しくは遺伝子コードの縮重という点で配列番号1の配列とは異なる任意のアミノ酸配列によって定義される。変異、挿入又は置換は、天然又は合成の遺伝的にコード化されたアミノ酸又は非コード化されたアミノ酸によって起こる。例えばアミノ酸は、非限定的な意味で、特に、シトルリン、オルニチン、ザルコシン、デスモシン、ノルバリン、4‐アミノ酪酸、2‐アミノ酪酸、2‐アミノイソ酪酸、6‐アミノヘキサン酸、1‐ナフチルアラニン、2‐ナフチルアラニン、2‐アミノ安息香酸、4‐アミノ安息香酸、4‐クロロフェニルアラニン、2,3‐ジアミノプロピオン酸、2,4‐ジアミノ酪酸、シクロセリン、カルニチン、シスチン、ペニシラミン、ピログルタミン酸、チエニルアラニン、ヒドロキシプロリン、アロイソロイシン、アロトレオニン、イソニペコチン酸、イソセリン、フェニルグリシン、スタチン、β‐アラニン、ノルロイシン、N‐メチルアミノ酸、β‐アミノ酸又はγ‐アミノ酸及びそれらの誘導体である。合成アミノ酸のリストは、Roberts D.C.及びVellaccio Fの「Unusual amino acids in peptide synthesis」という記事(The Peptides, Vol. 5 (1983), Chapter VI, Gross E. and Meienhofer J., Eds., Academic Press, New York, USA)又は、この産業分野の専門会社、例えば、特に、NeoMPS, Bachem, Novabiochem, Sigma-Aldrich, Peptides International, Advanced ChemTech, Chem-Impex, Maybridge Chemical, Chirotech Technology, Peninsula Laboratories又はRSP Amino Acid Analoguesなどの商業用カタログで見られる。
【0038】
配列番号1によって定義され、不可逆方法で化学的に修飾されるSNAP‐25のアミノ酸配列に由来する本発明のペプチドの中で好ましい配列は、配列番号2によって定義されるSNAP‐25タンパク質のアミノ末端領域の配列に含まれるアミノ酸配列又は配列番号3によって定義されるカルボキシ末端領域の配列に含まれるアミノ酸配列を有するものであり、より好ましいのは、配列番号4によって定義される10〜22残基間に含まれる領域に含まれ、配列番号5によって定義される25〜40残基間に含まれる領域に含まれ、配列番号6によって定義される65〜81残基間に含まれる領域に含まれ、又は配列番号7によって定義される181〜206残基間に含まれる領域に含まれるアミノ酸配列を有し、更に好ましいのは、配列番号8によって定義される12〜19残基間に含まれる領域に含まれ、配列番号9によって定義される26〜38残基間に含まれる領域に含まれ、又は配列番号10によって定義される68〜79残基間に含まれる領域に含まれるアミノ酸配列を有し、また特に、配列番号11によって定義される12〜17残基間に含まれる領域に含まれるアミノ酸配列を有するものである。
【0039】
また本発明には、本質的にSNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に由来する不可逆的に化学修飾されたペプチドと相同であるペプチドが含まれる。「本質的に相同なペプチド」とは、少なくとも60%、好ましくは80%、より好ましくは95%が配列番号1と同じであるアミノ酸配列として理解される。「同一割合」とは、2つのアミノ酸配列を最適な並びで比較したときに同じであるアミノ酸の割合に対応する。そこでは、前記割合は単に統計的なものであり、2つのアミノ酸配列の異なる部分は配列内でランダムに分散されている。「最適な並び」とは、より高い同一割合となるアミノ酸配列の並びとして理解される。同一割合は、2つの比較される配列においてアミノ酸が同一である同一箇所の数を測定し、その数を比較した箇所の数で割り、得られた結果に100を掛けることによって、2つの配列間の同一割合を得ることによって算出される。2つのアミノ酸配列の比較は、手動で、又は、例えばウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)上でインターネットを通してアクセスできるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムなどのコンピュータプログラムの方法を用いて実施できる。
【0040】
本発明で提供された化粧品的又は医薬的に許容されるペプチドの塩は、本発明の範囲に含まれる。「化粧品的又は医薬的に許容できる」という用語には、通常、金属塩又は酸付加塩、有機の酸付加塩(例えば、特に、酢酸塩、クエン酸塩、オレイン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、しゅう酸塩又はグルコン酸塩など)又は無機の酸付加塩(例えば、特に、塩化物、硫酸塩、ほう酸塩又は炭酸塩など)のいずれかを形成するのに用いられる塩が含まれる。化粧品的又は医薬的に許容できれば、塩の性質は重要でない。化粧品的又は医薬的に許容できる本発明のペプチドの塩は、当該技術分野で周知の一般的な方法で得ることができる。
【0041】
本発明のペプチドの合成は、当該技術分野で公知の一般的な方法に従って実施できる。例えば、固相ペプチド合成法の適応(Stewart J.M. and Young J.D. (1984) “Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition”, Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois. Bodanzsky M. and Bodanzsky A. (1984) “The practice of Peptide Synthesis”, Springer Verlag, New York; Lloyd-Williams, P., Albericio, F. and Giralt, E. (1997) “Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins” CRC, Boca Raton (FL, USA))、液相合成法、固相合成法と液相合成法の組み合わせ又は酵素合成法(Kullmann W. (1980) “Proteases as catalysts for enzymic syntheses of opioid peptides” J.Biol.Chem. 255, 8234-8238)などである。またペプチドは、所望の配列を作製する目的で遺伝子工学的に改良された又は改良されていない細菌株による発酵や、少なくとも所望の配列を含むペプチド断片を放出する動物起源や植物起源(好ましくは植物起源)のタンパクの制御された加水分解によっても得ることができる。
【0042】
例えば、本発明のペプチドを得るためのひとつの方法では、フリーのカルボキシル基を有する本発明のペプチド断片又はその反応誘導体が、1つ以上のフリーの水素原子を持つアミノ基を有する相補的な断片と反応し、その後アミド結合を形成し、アミド結合の形成に寄与しない前記断片の官能基が存在する場合には、一時的に又は永久的に保護基によって都合よく保護される。
【0043】
本発明のペプチドを得るための別の方法では、例えば、特にトシル基、メシル基及びハロゲン基などの脱離基を有する本発明のペプチド断片が、1つ以上のフリーの水素原子を持つアミノ基を有する相補的な断片と求核置換反応によって反応し、N‐C結合の形成に寄与しない前記断片の官能基が存在する場合には、一時的に又は永久的に保護基によって都合よく保護される。保護基、それらの挿入及び除去の例は、文献に記載されている(Greene T.W. (1981) “Protective groups in organic synthesis” John Wiley & Sons, New Cork; Atherton B. and Sheppard R.C. (1989) “Solid Phase Peptide Synthesis: A practical approach” IRL Oxford University Press)。また「保護基」という用語は、固相合成に使用される高分子支持体を含む。
【0044】
合成を固相で完全に又は部分的に行うとき、本発明の方法で用いられる固体支持体として以下のものを挙げることができる:ポリスチレン及びポリエチレングリコールでグラフトされたポリスチレン等で作製された支持体、例えば、p‐メチルベンズヒドリルアミン樹脂(MBHA)(Matsueda G.R. and Stewart J.M. (1981) “A p-methylbenzhydrylamine resin for improved solid-phase synthesis of peptide amides” Peptides 2, 45-50)、2‐クロロトリチル樹脂((a) Barlos K., Gatos D., Kallitsis J., Papaphotiu G., Sotiriu P., Wenqing Y. and Schafer W. (1989) “Darstellung geschutzter peptid-fragmente unter einsatz substituierter triphenylmethyl-harze” Tetrahedron Lett. 30, 3943-3946;(b) Barlos K., Gatos D., Kapolos S., Papaphotiu G., Schafer W. and Wenqing Y. (1989) “Veresterung von partiell geschutzten peptid-fragmenten mit harzen. Einsatz von 2-chlorotritylchlorid zur synthese von Leu15 -gastrin I” Tetrahedron Lett. 30, 3947-3951)、TentaGel(商標)樹脂(Rapp Polymere GmbH)及びChemMatrix(商標)樹脂(Matrix Innovation, Inc)等である。これらは、高分子支持体からの化合物の脱保護と、それと同時の切断を可能にする不安定スペーサー(labile spacer)を含んでいても、含んでいなくてもよい。不安定スペーサーとは、5‐(4‐アミノメチル‐3,5‐ジメトキシフェノキシ)バレリアン酸(PAL)(Albericio F., Kneib-Cordonier N., Biancalana S., Gera L., Masada R.I., Hudson D. and Barany G. (1990) “Preparation and application of the 5-(4-(9-fluorenylmethyloxycarbonyl)aminomethyl-3,5-dimethoxy-phenoxy)-valeric acid (PAL) handle for the solid-phase synthesis of C-terminal peptide amides under mild conditions” J. Org. Chem. 55, 3730-3743)、2‐[4‐アミノメチル‐(2,4‐ジメトキシフェノキシ)フェノキシ酢酸(AM)(Rink H. (1987) “Solid-phase synthesis of protected peptide fragments using a trialkoxy-diphenyl-methylester resin” Tetrahedron Lett. 28, 3787-3790)及びワング(Wang S.S. (1973) “p-Alkoxybenzyl Alcohol Resin and p-Alkoxybenzyloxycarbonylhydrazide Resin for Solid Phase Synthesis of Protected Peptide Fragments” J.Am.Chem.Soc. 95, 1328-1333)等である。
【0045】
ニューロンエキソサイトーシスを制御するために、化合物が、哺乳動物、好ましくはヒトの体内のそれの作用部位と接触を起こす何らかの方法によって、本発明のペプチドはそれらを含む組成物の形で投与される。この意味で、本発明は、1つ以上の一般式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容できるその塩を含む化粧品又は医薬組成物を提供する。前記組成物は、当業者に公知の一般的な方法によって製造できる。
【0046】
本発明のペプチドは、本発明の化粧品的又は医薬的組成において、所望の効果を発揮するために化粧品的又は医薬的に有効な濃度で使用される。好ましくは、0.00000001%〜20%(重量として)、より好ましくは0.00001%〜10%(重量として)、更に好ましくは0.0001%〜5%(重量として)である。
【0047】
本発明のペプチド対象物は、それらの配列の特性又はそれらが有するアミノ末端及びカルボキシ末端の修飾によって多様な水溶性を示す。水溶性でないものは、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール又はポリエチレングリコールなど従来からの化粧品的又は医薬的に許容できる溶媒に溶解できる。
【0048】
病的状態を治療するために投与される、本発明のペプチド及び/又は医薬組成物の医薬的に有効な量及びその投与量は、年齢、患者の状態、障害又は疾病の重症度、投与の方法及び頻度及び使用されるペプチドの特徴を含む多くの因子に依存する。
【0049】
本発明のペプチドを含む医薬組成物は、例えば固体又は液体の任意の投与形態を持つことができ、例えば、経口、経鼻、非経口、経直腸、局所又は経皮など任意の適切な経路で投与できる。それには、所望の投与形態の製剤のために必要な賦形剤が含まれる。本明細書中、「非経口の」という用語には、皮下、皮内、血管内注射、例えば、静脈内、筋肉内、脊髄、頭蓋内、関節内、髄腔内及び腹腔内注射並びに他の同様の注射又は注入技術のどれもが含まれる。医薬品及びそれらを得るために必要な賦形剤のいろいろな投与形態の概説は、例えば、“Tratado de Farmacia Galenica”, C. Fauli i Trillo, 1993, Luzan 5, S.A. Ediciones, Madridで見ることができる。
【0050】
また本発明のペプチドは、活性成分のより優れた浸透性を達成すること、及び/又は、その薬物動態的及び薬力学的な特性を改善することを目的として、リポソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、スポンジ、小胞、ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェア、ナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロカプセル及びナノカプセルに加え、マイクロエマルジョンやナノエマルジョンなどの化粧品的又は医薬的な徐放性システム及び/又はキャリアシステムに前もって組み込むことができる。コントロールされた徐放製剤は、当該技術分野で公知の方法によって製造でき、例えば、貼付剤を含む局所投与、経口投与、直腸内投与、皮下移植又は身体の特定の部分への直接移植によって投与でき、好ましくは、本発明のペプチドを相対的に一定の量で放出しなければならない。コントロールされた徐放製剤に含まれるペプチドの量は、例えば、本発明のペプチドの投与部位、動態及び徐放期間に加え、治療又は予防の状態に依存する。
【0051】
また、本発明のペプチドは、特に、タルク、ベントナイト、シリカ、デンプン又はマルトデキストリンなどの固体の有機高分子又は無機担体上に吸着できる。
【0052】
本発明のペプチドを含む化粧品又は医薬品は、例えば、非限定的な意味で、クリーム、水中油滴型及び/又は水中シリコン型エマルジョン、油中水滴型及び/又はシリコン中水滴型エマルジョン、油、ミルク、香油、泡、ローション、ゲル、塗布薬、セラム、石鹸、軟膏(unguents)、ムース、軟膏(ointments)、棒状のもの、ペンシル及びスプレーなど、付けたまま及び洗い落とせる処方を含む局所適用のための様々なタイプの製剤に使用できる。また、当業者に公知の手法によって、ウェットティッシュ、ヒドロゲル、粘着性(又は非粘着性)のパッチ若しくはフェイスマスクなどの様々なタイプの固形品に含ませること、又は、特に、メークアップファンデーション、ローション、メーク落としミルク、コンシーラー、アイシャドー及び口紅などの様々なメークアップ製品に含ませることができる。
【0053】
また、織物に固着させるシステムの生物分解、身体と衣料の摩擦、身体の水分、皮膚のpH又は体温によって、本発明のぺプチドが放出されるように、身体の皮膚と直接接触する衣料を作る布に当該ペプチドを含ませることができる。衣料と布、及びマイクロカプセル化を含むペプチドを織物中に固定する手段の例は、文献に記載されており、当該技術分野で公知である(Schaab C.K. (1986) "Impregnating Fabrics With Microcapsules", HAPPI May 1986; Nelson G. (2002) “Application of microencapsulation in textiles” Int. J. Pharm. 242, 55-62)。好ましくは、衣料は包帯である。
【0054】
本発明の化粧品又は医薬組成物の対象は、皮下注射、皮内注射、スチームラップ又は活性成分をより浸透させるためのイオン導入によって、治療又はケアを必要とする体の部位に適用できる。適用領域は処置される状態に決定される。適用される好ましい部位は、表情じわがある額の部分に加え、まゆの間の領域、口の周り及び/又は目の周りのしわと細い線である。
【0055】
本発明でクレームされる化粧品又は医薬組成物には、皮膚のケア、クリーニング及び治療用の組成物、例えば非限定的な意味で、エマルジョン薬剤、柔軟化粧水、オーガニック溶液、スキンコンディショナーなどで一般的に使用される追加成分を含むことができる。例えば、保湿剤、αハイドロキシ酸、保湿成分、ビタミン、顔料又は染料、ゲル化ポリマー、増粘剤、軟化剤、しわ取り剤、目の下のたるみを減少又は治療できる薬剤、ホワイトニング又は脱色剤、ピーリング剤、アンチエイジング剤、フリーラジカル捕捉剤及び/又は抗大気汚染剤、NO合成酵素阻害剤、抗酸化剤、抗糖化剤、抗菌剤、抗真菌剤、例えばコラーゲン合成を誘導する薬剤、エラスチン合成を誘導する薬剤、デコリン合成を誘導する薬剤、ラミニン合成を誘導する薬剤、コラーゲン分解を阻害する薬剤、エラスチン分解を阻害する薬剤、線維芽細胞の増殖を誘導する薬剤、ケラチノサイトの増殖を誘導する薬剤、ケラチノサイトの分化を誘導する薬剤、脂質や角質層(セラミド、脂肪酸など)の成分の合成を誘導する薬剤など、皮膚や表皮の高分子合成を誘導及び/又はそれらの分解を阻害できる薬剤、皮膚弛緩剤、グリコサミノグリカン合成を誘導する薬剤、安定剤、抗妊娠線剤、鎮静剤、抗炎症剤、毛細血管循環及び/又は微小循環に作用する薬剤、細胞代謝に作用する薬剤、メラニン合成を誘導及び/又は阻害する薬剤、皮膚と表皮の結合改善の薬剤、防腐剤、香料、キレート剤、植物抽出物、精油、海洋抽出物、生物発酵から得られる薬剤、ミネラル塩、細胞抽出物、日焼け止め剤(紫外線A及びB照射に対して機能する有機又は無機の光防護剤)などである。何よりも、これらは組成物の他の成分と物理的及び化学的に混合可能であり、特に、本発明の組成物に含まれる一般式(I)のペプチドと混合可能である。前記追加成分の特性は、合成物、若しくは例えば植物抽出物など天然のもの、又は生物発酵過程から得られるものである。
【0056】
本発明の更なる実施形態は、化粧品的又は医薬的に有効な量の1つ以上の本発明のペプチドと、化粧品的又は医薬的に有効な量のしわ取り及び/又はアンチエイジングに用いる1つ以上の抽出物、例えば非限定的な意味で、特にVitis vinifera、Rosa canina、Curcuma longa、Iris pallida、Theobroma cacao、Ginkgo biloba若しくはDunaliella salinaの抽出物など、又はしわ取り及び/又はアンチエイジング活性を有する1つ以上の合成化合物、抽出物若しくは発酵生産物、例えば非限定的な意味で、特にSederma社が販売するMatrixyl(商標)、Pentapharm社が販売するVialox(商標)、Syn‐ake(商標)、Cognis社が販売するMyoxinol(商標)、Exsymol社が販売するAlgisum C(商標)、Hydroxyprolisilane CN(商標)、Lipotec社が販売するArgireline(商標)、Leuphasyl(商標)、Aldenine(商標)、Decorinyl(商標)、Decorinol(商標)、Lipochroman(商標)、Institut Europeen de Biologie Cellulaire社が販売するKollaren(商標)、Vincience社が販売するCollaxyl(商標)、Quintescine(商標)、アルベリン、マンガナーゼ、マグネシウム塩などのCa2+チャンネルアンタゴニスト、特定の第二級、第三級アミン、レチノール及びその誘導体、イデベノン及びその誘導体、コエンザイムQ10及びその誘導体、ボスウェリア酸及びその誘導体、γアミノ酪酸若しくは塩素イオンチャネルアゴニストなどを含む化粧品又は医薬組成物である。
【0057】
本発明の組成物は、過敏な皮膚に関連する腫れや刺激を軽減する目的で鎮痛剤及び/又は抗炎症剤に含まれるか、又は、それと一緒に投与できる。ヒドロコルチゾンなどのステロイドタイプ化合物、パラセタモールやアセチルサリチル酸などの非ステロイドタイプ化合物、天然抽出物又は精油が鎮痛活性と抗炎症剤活性を有する。
【0058】
本発明のペプチドは、ボツリヌス毒素と同様にニューロンエキソサイトーシスを抑制する作用メカニズムを有する。したがって、このペプチドは、顔のしわ及び/又は顔面非対称の治療に加え、失調症、斜視、眼瞼痙攣、斜頸、チックなどの筋肉痙攣状態の治療においても有効性を示すと考えられる。
【0059】
したがって、本発明の更なる実施形態は、ニューロンエキソサイトーシスの制御を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトの状態を治療するための化粧品又は医薬組成物の製造において、一般式(I)の1つ以上のペプチドを使用することである。本発明の別の実施形態は、皮膚のトリートメント、クリーニング又はケアのための化粧品又は医薬組成物の製造において、一般式(I)の1つ以上のペプチドを使用することである。本発明の更なる実施形態は、顔面非対称と顔のしわ、好ましくは表情じわの減少及び/又は除去のための化粧品又は医薬組成物の製造において、不可逆的に化学的に修飾された、SNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に由来する1つ以上のペプチドを使用することである。本発明の更なる別の実施形態は、失調症、斜視、眼瞼痙攣、斜頸、チックなどの筋肉痙攣を示す神経障害又は病理を治療するための化粧品又は医薬組成物の製造において、不可逆的に化学的に修飾された、SNAP‐25タンパク質のアミノ酸配列に由来する1つ以上のペプチドを使用することである。
【0060】
本発明の別の実施形態は、ニューロンエキソサイトーシスの制御を必要とする哺乳動物の状態、好ましくはヒトの状態を治療するための美容的又は医薬的手法であり、有効な量の一般式(I)の1つ以上のペプチドの投与、好ましくはそれを含む化粧品又は医薬組成物の形での投与が含まれる。更に、本発明は顔のしわの減少及び/又は除去、又は顔面非対称の治療のための美容的又は医薬的方法を提供する。その方法には、本発明の1つ以上のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩を含む化粧品又は医薬組成物の顔の皮膚への適用が含まれる。また本発明は、失調症、斜視、眼瞼痙攣、斜頸、チックなどの筋肉痙攣を示す神経障害又は病理を治療するための美容的又は医薬的な方法を提供する。その方法には、本発明の1つ以上のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩を含む化粧品又は医薬組成物の適用が含まれる。
【0061】
適用の頻度は、それぞれの対象のニーズによって広範囲であり、月に1回から1日10回まで、好ましくは、週に1回から1日4回まで、より好ましくは、週に3回から1日2回まで、更に好ましくは、1日1回が推奨される。
【0062】
好ましい美容的又は医薬的方法は、表情じわが出る顔や額のスペース、好ましくは、口及び/又は目の周りのしわ、及び/又は額のしわ及び/又はまゆの間のスペースのしわに適用することである。
【実施例】
【0063】
本明細書で示す以下の特定の実施例は、本発明の本質を説明するために有用である。これらの実施例は、説明の目的のためだけに含まれており、本明細書でクレームされた発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0064】
一般手法
化学合成
すべての合成過程は、多孔性のポリエチレンディスクを備えたポリプロピレンシリンジ内で実施される。すべての試薬と溶媒は、合成用の品質であり、追加の処理なしで使用される。溶媒と試薬は吸引によって除去される。Fmoc基の除去はピペリジン‐DMF(2:8,v/v)(1×1分間,1×5分間;5ml/g樹脂)を用いて実施される(Lloyd-Williams P., Albericio F. and Giralt, E. (1997) “Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins” CRC, Boca Raton (FL, USA))。脱保護、カップリング及び再脱保護のステップの間の洗浄は、1gの樹脂あたり10mlの溶媒を用いたDMFで実施する(3×1分間)。カップリング反応は、1gの樹脂あたり3mlの溶媒を用いて行われた。カップリングの調節はニンヒドリン試験によって実施する(Kaiser E., Colescott R.L., Bossinger C.D. and Cook P.I. (1970) “Color test for detection of free terminal amino groups in the solid-phase synthesis of peptides” Anal. Biochem. 34, 595-598)。すべての合成反応と洗浄は25℃で実施した。
【0065】
エレクトロスプレー質量分析は、島津製作所製の装置LCMS-QP8000(京都、日本)にて、移動相としてMeCN:HO 4:1(+0.1%TFA)の混合液を用いて、流速0.2ml/分で実施した。
【0066】
略語
アミノ酸に使用される略語は、「Eur. J. Biochem. (1984) 138, 9-37 and in J. Biol. Chem. (1989) 264, 633-673」の生化学用語に指定されたIUPAC−IUB委員会の規則に従う。
AM,2‐[4‐アミノメチル‐(2,4‐ジメトキシフェニル)]‐フェノキシ酢酸;BoNT A,ボツリヌス毒素血清型A;cps,センチポアズ;DCM,ジクロロメタン;DIEA,N,N‐ジイソプロピルエチルアミン;DIPCDI,N,N’‐ジイソプロピルカルボジイミド;DMF,N,N‐ジメチルホルムアミド;DPPC,ジパルミトイルホスファチジルコリン;eq.,等価;Fmoc,フルオレニルメトキシカルボニル;HOBt,1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール;INCI,化粧品原料の国際命名法;MBHA,p‐メチルベンズヒドリルアミン;MeCN,アセトニトリル;MLV,多層小胞;MeOH,メタノール;NMP,N‐メチルピロリドン;Pbf,2,2,4,6,7‐ペンタメチルジヒドロベンゾフラン‐5‐スルホニル;PEG,ポリエチレングリコール;PEG,‐[NH‐CH‐(CHCHO)‐(CH‐NH‐CO‐CHCH‐CO‐];rpm,毎分回転数;SNAP‐25,シナプトソーム関連タンパク質(25kDa);tBu,tert‐ブチル;TFA,トリフルオロ酢酸;THF,テトラヒドロフラン;ULV,単層小胞。
【0067】
実施例1
Fmoc‐Glu(OtBu)‐Glu(OtBu)‐Met‐Gln‐Arg(Pbf)‐Arg(Pbf)‐AM‐MBHAの作製
一般的に記述されたFmoc基を除去するためのプロトコルに従って、0.628mmol/g(95mmol,1eq.)の機能化した151.3gのFmoc‐AM‐MBHA樹脂をピペリジン‐DMFで処理する。DIPCDI(36.6ml,237mmol,2.5eq.)及びHOBt(35.6g,237mmol,2.5eq.)の存在下で、DMFを溶媒として用いて、154.1gのFmoc‐L‐Arg(Pbf)‐OH(237mmol,2.5eq.)を、非保護樹脂に1時間かけて導入する。
【0068】
次に樹脂を一般的に記述された方法で洗浄し、Fmoc基の脱保護のための処理を次のアミノ酸を導入するために繰り返す。以下のプロトコルに従い、154.1gのFmoc‐L‐Arg(Pbf)‐OH(237mmol,2.5eq.)、87.5gのFmoc‐Gln‐OH(474mmol,5eq.)、88.2gのFmoc‐L‐Met‐OH(237mmol,2.5eq.)、105.3gのFmoc‐L‐Glu(OtBu)‐OH(237mmol,2.5eq.)及び105.3gのFmoc‐L‐Glu(OtBu)‐OH(237mmol,2.5eq.)を、71.3gのHOBt(474mmol,5eq.)を用いるFmoc‐L‐Gln‐OHを導入するステップを除いて、36.5gのHOBt(237mmol,2.5eq.)及び36.6mlのDIPCDI(237mmol,2.5eq.)存在下で順次結合させる。
【0069】
得られたFmoc‐Glu(OtBu)‐Glu(OtBu)‐Met‐Gln‐Arg(Pbf)‐Arg(Pbf)‐AM‐MBHAをDMF(5×1分間)、DCM(4×1分間)、ジエチル・エーテル(4×1分間)で洗浄し、真空下で乾燥する。
【0070】
実施例2
CH‐(CH‐CO‐Glu‐Glu‐Met‐Gln‐Arg‐Arg‐NHの作製
1.68gのFmoc‐Glu(OtBu)‐Glu(OtBu)‐Met‐Gln−Arg(Pbf)‐Arg(Pbf)‐AM−MBHA(0.5mmol,0.296mmol/g,1eq.)のアミノ末端Fmoc基を、一般的に記述された方法で脱保護し、DMF(10ml)に前もって溶解させたCH‐(CH‐COOH(5mmol,10eq.)を、770mgのHOBt(5mmol,10eq.)及び770μlのDIPCDI(5mmol,10eq.)の存在下で導入する。15時間反応させ、その後、樹脂をTHF(5×1分間)、DCM(5×1分間)、DMF(5×1分間)、MeOH(5×1分間)、DMF(5×1分間)、THF(5×1分間)、DMF(5×1分間)、DCM(4×1分間)、エーテル(3×1分間)で洗浄し、真空下で乾燥する。
【0071】
1.00gの乾燥したペプチジル樹脂を15mlのTFA‐PrSi‐HO(90:5:5)を用いて室温で2時間処理する。ろ液を冷ジエチルエーテル(100ml)に集め、4000rpmで5分間遠心し、エーテル溶液を静かに注ぐ。エーテルで5回洗浄を繰り返す。最終的な沈殿物を真空下で乾燥する。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例3
Ac‐PEG‐Glu‐Glu‐Met‐Gln‐Arg‐Arg‐NHの作製
321.0mgのFmoc‐Glu(OtBu)‐Glu(OtBu)‐Met‐Gln‐Arg(Pbf)‐Arg(Pbf)‐AM−MBHA(0.095mmol,0.296mmol/g,1eq.)のアミノ末端Fmoc基を一般的に記述された方法で脱保護し、NMPに前もって溶解したFmoc‐PEG‐OH(2.5eq.)を、36.5mgのHOBt(0.237mmol,2.5eq.)及び36.6μlのDIPCDI(0.237mmol,2.5eq.)の存在下で、40〜60分間かけて加える。一般的な方法に記述されたアミノ末端Fmoc基、Fmoc‐PEG‐OHを組み込む反応及びFmocの脱保護を(n−1)回実施する。異なる誘導体を得るために、n=1〜100である。アミノ末端のアセチル化をDMF中のAcO(2.5eq.)及びDIEA(2.5eq.)を用いて30分間実施する。
【0074】
Ac‐PEG‐Glu(OtBu)‐Glu(OtBu)‐Met‐Gln‐Arg(Pbf)‐Arg(Pbf)‐AM‐MBHA樹脂は、DMF(5×1分)、DCM(4×1分)、ジエチルエーテル(4×1分)で洗浄し、真空下で乾燥する。
【0075】
22.4mgのAc‐PEG‐Glu(OtBu)‐Glu(OtBu)‐Met‐Gln‐Arg(Pbf)‐Arg(Pbf)‐AM‐MBHAを、1.57mlのTFA‐PrSi-HO(95:2.5:2.5)混合物を用いて0℃で5分間、続いて室温で90分間処理する。ろ液を冷ジエチルエーテル(10ml)に集め、4000rpmで5分間遠心し、エーテル溶液を静かに注いだ。エーテルで5回洗浄を繰り返す。油性の最終残留物をMeCN:HO(1:1)に再溶解し、凍結乾燥する。
【0076】
【表2】

【0077】
実施例4
Ac‐Glu‐Glu‐Met‐Gln‐Arg‐Arg‐NH‐(CH‐CHの作製
500μlのDIEA(2.9mmol,0.90eq.)を添加した20mlのDCMに溶解した2.10gのFmoc‐L‐Arg(Pbf)‐OH(3.23mmol,1eq.)を乾燥2‐クロロトリチル樹脂に加える。それを5分間攪拌し、1mLのDIEA(5.9mmol,1.81eq.)を加える。それを40分間反応させる。残りの塩化基は1.6mlのメタノールで処理することにより保護される。
【0078】
アミノ末端Fmoc基を一般的に記述された方法で脱保護し、DMFを溶媒として用いたDIPCDI(770μl,5mmol,5eq.)及びHOBt(770g,5mmol,5eq.)の存在下で、3.24gのFmoc‐L‐Arg(Pbf)‐OH(5mmol,5eq.)を、1mmolのアミノアシル樹脂 Fmoc‐L‐Arg(Pbf)‐ClTrt(商標)に1時間かけて導入する。次に、一般的に記述された方法で樹脂を洗浄し、Fmoc基を脱保護する処理を次のアミノ酸導入のために繰り返す。記述されたプロトコルに従い、1.84gのFmoc‐L‐Gln‐OH(5mmol、5eq.)、1.86gのFmoc‐L‐Met‐OH(5mmol、5eq.)、2.12gのFmoc‐L‐Glu(OtBu)‐OH及び2.12gのFmoc‐L‐Glu(OtBu)‐OH(5mmol,5eq.)を、770mgのHOBt(5mmol,5eq.)及び770μlのDIPCDI(5mmol,eq.)の各カップリングの存在下で、Fmoc‐L‐Gln‐OHを導入するステップを除いて、1.54gのHOBt(10mmol,10eq.)を加えて順次カップリングさせる。
【0079】
一般的に記述された方法でアミノ末端Fmoc基を脱保護し、DMFを溶媒として用いた4.28mlのDIEA(25mmol,25eq.)存在下で、ペプチジル樹脂を、2.36mlの無水酢酸(25mmol、25eq.)で30分間処理する。これをDMF(5×1分間)、DCM(4×1分間)、ジエチルエーテル(4×1分間)で洗浄し、真空下で乾燥する。
【0080】
3%TFAのDCM溶液を用いて、KOHの存在下で前もって真空で乾燥したペプチジル樹脂を5分間処理することによって、完全に保護されたペプチド[Ac‐Glu(OtBu)‐Glu(OtBu)‐Met‐Gln‐Arg(Pbf)‐Arg(Pbf)‐OH]を得る。ろ液を冷ジエチルエーテルに集め、その処理を3回繰り返す。室温で、エーテル溶液をロータリーエバポレーターで乾燥させる。析出物を50%MeCN水溶液で再懸濁し、凍結乾燥する。得られた生成物を279mgバルーン(balloon)に量り取り、3eq.のCH‐(CH‐NH及び30mlの無水DMFを加える。120μlのDIPCDI(2eq.)を加え、47℃でマグネチックスターラーを用いて反応させる。その反応は、最初の生成物が消滅するまでHPLCで制御し、24時間後に終了する。溶媒を乾燥するまで濃縮し、DCMを用いて2回共濃縮する。得られた残渣[Ac‐Glu(OtBu)‐Glu(OtBu)‐Met‐Gln‐Arg(Pbf)‐Arg(Pbf)‐NH‐(CH‐CH]を50mlのTFA‐PrSi‐HO(90:5:5)混合物で再懸濁し、室温で30分間反応させる。250mlの冷ジエチルエーテルを加え、溶媒をロータリーエバポレーターで濃縮し、更に2回、エーテルを用いて共濃縮する。残渣を50%MeCN水混合液で溶解し、凍結乾燥する。
【0081】
【表3】

【0082】
実施例5
実施例1〜4に記載された一般的なプロトコルに従って、機械的に繰り返して、試薬の特性とペプチド配列を変えることによって、更に、本発明の範囲に含まれるSNAP‐25タンパク質の配列に由来する不可逆的に化学修飾された以下のペプチドが得られた。
【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
【表7】

【0087】
【表8】

【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
【表11】

【0091】
【表12】

【0092】
【表13】

【0093】
【表14】

【0094】
【表15】

【0095】
【表16】

【0096】
【表17】

【0097】
【表18】

【0098】
【表19】

【0099】
【表20】

【0100】
【表21】

【0101】
実施例6
H]‐L‐グルタミン酸のニューロンエキソサイトーシスにおける不可逆的に化学修飾されたSNAP‐25タンパク質由来ペプチドの活性評価
本発明のペプチドが、神経伝達物質のニューロンエキソサイトーシスを抑制するか否かを評価するために、ラット海馬ニューロンの初代培養のL−グルタミン酸神経伝達物質の放出におけるペプチドの活性を調べた。培養ニューロンにおける神経伝達物質のエキソサイトーシスは、細胞の電気的脱分極によって得ることができる。ラット胎児の海馬初代培養は、従来の方法(Blanes-Mira C., Merino J.M., Valera E., Fernandez-Ballester G., Gutierrez L.M., Viniegra S., Perez-Paya E. and Ferrer-Montiel A. “Small peptides patterned after the N-terminus domain of SNAP25 inhibit SNARE complex assembly and regulated exocytosis” J. Neurochem. 88, 124-135)で行い、5%CO、37℃のインキュベーターで14日間培養し、維持した。[H]‐L‐グルタミン酸を海馬初代培養にロードするために[H]‐L‐グルタミン酸とともに培養物を37℃で3時間インキュベートする。その後、過剰な[H]‐L‐グルタミン酸を洗浄し、0.1mMの評価されるペプチドとともに37℃で1時間インキュベートする。[H]‐L‐グルタミン酸は、37℃で10分間、生理的な緩衝液で緩衝した75mM KCl及び2mM CaCl溶液を用いた脱分極によって放出される。培養液を集めて、[H]‐L‐グルタミン酸量をβ放射線測定器で定量する。その結果を、ペプチド非存在下での[H]‐L‐グルタミン酸放出量で標準化し、カルシウム非存在下でのベースの放出量で補正する。
【0102】
実施例7
CH‐(CH14‐CO‐Glu‐Glu‐Met‐Gln‐Arg‐Arg‐CONHを含む化粧品組成物の製造
以下の処方を本発明の記載通りに行った。
A相の成分を十分に大きい反応槽に量り取り、ワックスを溶かすためにその混合物を80℃で加熱する。B相の成分を全体の内容量に適した容器に量り取り、それらを70℃で加熱する。激しくかき混ぜながらA相をB相にゆっくりと加える。その後、かき混ぜながらC相を前記混合物に加える。一旦添加を終了し、緩やかにかき混ぜながら冷却する。混合物が室温になったら、CH‐(CH14‐CO‐Glu‐Glu‐Met‐Gln‐Arg‐Arg‐CONHとレシチンの水溶液を加え、ホモジナイズする。必要な場合はトリエタノールアミンを用いてpHを調整する。
【0103】
得られるクリームは、pH6〜7、粘度10,000〜15,000cps(6/50)である。
【0104】
【表22】

【0105】
実施例8
CH‐(CH14‐CO‐ELEEMQRRADQLA‐NHを含むリポソームの作製
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を量り取り、クロロホルムに溶解する。溶媒を真空下でリン脂質の薄層が得られるまで気化し、所望の濃度のペプチドを含む水溶液(Phenonip(商標)を含む)を用いて55℃で処理することによって、該薄層を水和し、MLVリポソームを得る。ULVリポソームは超音波洗浄器に55℃で2分間、5分間隔で8サイクル、MLVリポソームを浸すことによって得られる。
【0106】
【表23】

【0107】
第一の実施形態では、本発明は一般式(I):R‐AA‐Rのペプチドに係り、その立体異性体、化粧品的及び医薬的に許容できるその塩及びその混合物であり、
式中、
AAは、配列番号1のアミノ酸配列に含まれる3〜40の隣接アミノ酸配列であり、
は、H、アルキル基、アリール基、アラルキル基及びアシル基から成る群より選択され、
は、脂肪族基又は環状基で置換された又は置換されていないアミノ基、ヒドロキシル基及びチオール基から成る群より選択され、
がH又はアセチル基であるとき、Rは置換されていないアミノ基、ヒドロキシル基及びチオール基ではない。
【0108】
第二の重要な実施形態では、一般式(I)のペプチドにおいて、Rは、好ましくは、飽和若しくは不飽和の、直鎖、分岐鎖若しくは環状のC〜C24アシル基である。Rは、好ましくは、式CH‐(CH‐CO-のアシル基であり、mは1〜22とすることができる。
【0109】
本発明の別の重要な実施形態では、一般式(I)のペプチドにおいて、Rは、好ましくは、ポリエチレングリコールポリマーである。
【0110】
本発明の別の重要な実施形態では、一般式(I)のペプチドにおいて、Rは、好ましくは、分子量が200〜35000ダルトンのポリエチレングリコールポリマーである。
【0111】
本発明の別の重要な実施形態では、一般式(I)のペプチドにおいて、Rは、好ましくは、以下の構造のポリエチレングリコールポリマーであり、
【0112】
【化2】

【0113】
式中、nは、1〜100とすることができ、本発明の更に好ましい実施形態では、nは、1〜5とすることができる。
【0114】
本発明の重要な実施形態では、一般式(I)のペプチドにおいて、Rは、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状のC〜C24脂肪族基で置換された又は置換されていないアミノ基又はヒドロキシル基である。
【0115】
本発明の重要な実施形態では、一般式(I)のペプチドにおいて、AAは、好ましくは、以下のアミノ酸配列から成る群より選択される配列に含まれる3〜40の隣接アミノ酸配列から成る:MAEDADMRNELEEMQRRADQL,ADESLESTRRMLQLVEESKDAGI,ELEEMQRRADQLA,ELEEMQRRADQL,ELEEMQRRADQ,ELEEMQRRAD,ELEEMQRRA,ELEEMQRR,LEEMQRRADQL,LEEMQRRADQ,LEEMQRRAD,LEEMQRRA,LEEMQRR,EEMQRRADQL,EEMQRRADQ,EEMQRRAD,EEMQRRA,EEMQRR,LESTRRMLQLVEE,NKDMKEAEKNLT,KNLTDL,IMEKADSNKTRIDEANQRATKMLGSG,SNKTRIDEANQRATKMLGSG,TRIDEANQRATKMLGSG,DEANQRATKMLGSG,NQRATKMLGSG及びQRATKMLGSG。
【0116】
別の重要な実施形態では、本発明は、固相ペプチド合成に基づいて、一般式(I)のペプチドを製造する方法である。
【0117】
別の重要な実施形態では、本発明は、Fmoc/t‐ブチル、Fmoc/トリチル及びFmoc/アリルから成る群より選択される保護基を用いた一般式(I)のペプチドを製造する方法である。
【0118】
別の重要な実施形態では、本発明は、化粧品的又は医薬的に有効な量の1つ以上の式(I)のペプチド及び1つ以上の化粧品的又は医薬的に許容される賦形剤又は補助剤を含む化粧品又は医薬組成物である。
【0119】
別の重要な実施形態では、本発明は、リポソーム、ミリカプセル、マイクロカプセル、ナノカプセル、スポンジ、小胞、ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェア、ナノスフェア、リポスフェア、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ミリ粒子、マイクロ粒子及びナノ粒子から成る群より選択される化粧品的又は医薬的に許容される徐放性システム又はキャリアに組み込まれた1つ以上の一般式(I)のペプチドを含む化粧品又は医薬組成物である。
【0120】
別の重要な実施形態では、本発明は、タルク、ベントナイト、シリカ、デンプン及びマルトデキストリンから成る群より選択される固体の有機高分子又は無機担体上に吸着した1つ以上の一般式(I)のペプチドを含む化粧品又は医薬組成物である。
【0121】
別の重要な実施形態では、本発明は、一般式(I)のペプチドが、クリーム、水中油滴型及び/又は水中シリコン型エマルジョン、油中水滴型及び/又はシリコン中水滴型エマルジョン、油、ミルク、香油、泡、ローション、ゲル、塗布薬、セラム、石鹸、軟膏(unguents)、ムース、軟膏(ointments)、棒状のもの、ペンシル及びスプレーから成る群より選択される製剤中に存在する化粧品又は医薬組成物である。
【0122】
別の重要な実施形態では、本発明は、一般式(I)のペプチドが、ウェットティッシュ、ヒドロゲル、粘着性のパッチ、非粘着性のパッチ及びフェイスマスクから成る群より選択される固体保持体に含まれる化粧品又は医薬組成物である。
【0123】
別の重要な実施形態では、本発明は、一般式(I)のペプチドが、布、好ましくは包帯形状に含まれる化粧品又は医薬組成物である。
【0124】
別の重要な実施形態では、本発明は、コンシーラー、メークアップファンデーション、メーク落としローション及びミルク、アイシャドー並びに口紅から成る群より選択されるメークアップ製品に含まれた一般式(I)のペプチドを含む化粧品又は医薬組成物である。
【0125】
別の重要な実施形態では、本発明は、0.00000001〜20%の濃度(重量)で、一般式(I)のペプチドを含む化粧品又は医薬組成物である。
【0126】
別の重要な実施形態では、本発明は、好ましくは0.0001〜5%の濃度(重量)で、一般式(I)のペプチドを含む化粧品又は医薬組成物である。
【0127】
別の重要な実施形態では、本発明は、ピーリング剤、保湿剤、脱色又はホワイトニング剤、色素形成促進剤、しわ取り剤、目の下のたるみを減少又は除去する薬剤、抗酸化剤、抗糖化剤、NO合成酵素阻害剤、アンチエイジング剤、皮膚や表皮の分子合成を誘導及び/又はそれらの分解を抑制する薬剤、線維芽細胞及び/又はケラチノサイトの増殖を誘導する薬剤又はケラチノサイトの分化を誘導する薬剤、皮膚弛緩剤、安定剤、抗大気汚染剤及び/又は抗フリーラジカル剤、毛細血管循環及び/又は微小循環に作用する薬剤、鎮静剤、抗炎症剤、細胞代謝に作用する薬剤、紫外線A及び/又はB照射に対して機能する有機又は無機の光防護剤並びにその混合物から成る群より選択される化粧品的又は医薬的に有効な量の活性剤を含む化粧品又は医薬組成物である。この活性剤は、好ましくは、合成物又は植物抽出物や生物発酵由来のものである。
【0128】
別の重要な実施形態では、本発明は、しわ取り剤及び/又はアンチエイジング剤が、Lipotec社が販売するArgireline(商標)、Leuphasyl(商標)、Decorinyl(商標)、Decorinol(商標)、Lipochroman(商標)及びAldenine(商標)から成る群より選択される化粧品又は医薬組成物である。
【0129】
重要な実施形態では、本発明は、ニューロンエキソサイトーシスを制御する化粧品又は医薬組成物の製造における式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩の使用である。
【0130】
別の重要な実施形態では、本発明は、皮膚の治療、クリーニング又はケアのための化粧品又は医薬組成物の製造における式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩の使用である。
【0131】
別の重要な実施形態では、本発明は、顔のしわ及び/又は顔面非対称を減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における一般式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩の使用である。
【0132】
別の重要な実施形態では、本発明は、顔の表情じわを減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における一般式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩の使用である。
【0133】
別の重要な実施形態では、本発明は、額、まゆの間のスペース及び/又はしわ並びに口の周り及び/又は目の周りの細い線に局所的に適用する方法によって顔の表情じわを減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における一般式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩の使用である。
【0134】
別の重要な実施形態では、本発明は、額、まゆの間のスペース及び/又はしわ並びに口の周り及び/又は目の周りの細い線にイオン導入によって適用する方法によって顔の表情じわを減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における一般式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩の使用である。
【0135】
別の重要な実施形態では、本発明は、額、まゆの間のスペース及び/又はしわ並びに口の周り及び/又は目の周りの細い線に皮下注射又は皮内注射によって適用する方法によって顔の表情じわを減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における一般式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩の使用である。
【0136】
別の重要な実施形態では、本発明は、筋痙直を減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における一般式(I)のペプチド又は化粧品的若しくは医薬的に許容されるその塩の使用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):R‐AA‐Rのペプチドであって、
その立体異性体若しくはその混合物、又は化粧品的及び医薬的に許容できるその塩であり、
式中、
AAは、配列番号1のアミノ酸配列に含まれる3〜40の隣接アミノ酸配列であり;
は、H、アルキル基、アリール基、アラルキル基及びアシル基から成る群より選択され;
は、脂肪族基又は環状基で置換された又は置換されていないアミノ基、ヒドロキシル基及びチオール基から成る群より選択され、
がH又はアセチル基であるとき、Rは置換されていないアミノ基、ヒドロキシル基及びチオール基ではないことを特徴とするペプチド。
【請求項2】
が、飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状のC〜C24アシル基であることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
が、式CH‐(CH‐CO-のアシル基であって、式中、mが1〜22であることを特徴とする請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
が、ポリエチレングリコールポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコールポリマーの分子量が、200〜35000ダルトンであることを特徴とする請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコールポリマーが、以下の構造であり、
【化1】

式中、nが1〜100であることを特徴とする請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
nが、1〜5であることを特徴とする請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
が、飽和又は不飽和の、直鎖、分岐鎖又は環状のC〜C24脂肪族基で置換された又は置換されていないアミノ基又はヒドロキシル基であることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
AAが、以下のアミノ酸配列:MAEDADMRNELEEMQRRADQL,ADESLESTRRMLQLVEESKDAGI,ELEEMQRRADQLA,ELEEMQRRADQL,ELEEMQRRADQ,ELEEMQRRAD,ELEEMQRRA,ELEEMQRR,LEEMQRRADQL,LEEMQRRADQ,LEEMQRRAD,LEEMQRRA,LEEMQRR,EEMQRRADQL,EEMQRRADQ,EEMQRRAD,EEMQRRA,EEMQRR,LESTRRMLQLVEE,NKDMKEAEKNLT,KNLTDL,IMEKADSNKTRIDEANQRATKMLGSG,SNKTRIDEANQRATKMLGSG,TRIDEANQRATKMLGSG,DEANQRATKMLGSG,NQRATKMLGSG及びQRATKMLGSG;から成る群より選択される配列に含まれる隣接アミノ酸配列であることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の一般式(I)のペプチドの製造を固相上で行うことを特徴とするペプチドの製造方法。
【請求項11】
Fmoc/t‐ブチル、Fmoc/トリチル及びFmoc/アリルから成る群より選択される保護基を使用することを特徴とする請求項10に記載のペプチドの製造方法。
【請求項12】
化粧品的又は医薬的に有効な量の1つ以上の請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の一般式(I)のペプチドを含み、1つ以上の化粧品的又は医薬的に許容される賦形剤又は補助剤を含むことを特徴とする化粧品又は医薬組成物。
【請求項13】
一般式(I)のペプチドが、リポソーム、ミリカプセル、マイクロカプセル、ナノカプセル、スポンジ、小胞、ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェア、ナノスフェア、リポスフェア、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ミリ粒子、マイクロ粒子及びナノ粒子から成る群より選択される化粧品的又は医薬的に許容される徐放性システム又はキャリアに組み込まれていることを特徴とする請求項12に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項14】
一般式(I)のペプチドが、タルク、ベントナイト、シリカ、デンプン及びマルトデキストリンから成る群より選択される化粧品的又は医薬的に許容される有機高分子又は固体の無機担体上に吸着していることを特徴とする請求項12に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項15】
クリーム、水中油滴型及び/又は水中シリコン型エマルジョン、油中水滴型及び/又はシリコン中水滴型エマルジョン、油、ミルク、香油、泡、ローション、ゲル、塗布薬、セラム、石鹸、軟膏(unguents)、ムース、軟膏(ointments)、棒状のもの、ペンシル及びスプレーから成る群より選択される製剤であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1つの項に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項16】
一般式(I)のペプチドが、ウェットティッシュ、ヒドロゲル、粘着性のパッチ、非粘着性のパッチ及びフェイスマスクから成る群より選択される固体保持体に含まれることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1つの項に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項17】
一般式(I)のペプチドが、コンシーラー、メークアップファンデーション、メーク落としローション、メーク落としミルク、アイシャドー及び口紅から成る群より選択されるメークアップ製品に含まれることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1つの項に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項18】
一般式(I)のペプチドが、布に含まれることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1つの項に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項19】
一般式(I)のペプチドが、包帯に含まれることを特徴とする請求項18に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項20】
化粧品的又は医薬的に有効な量の1つ以上の請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の一般式(I)のペプチドを含み、一般式(I)のペプチドの濃度が0.00000001重量%〜20重量%であることを特徴とする化粧品又は医薬組成物。
【請求項21】
一般式(I)のペプチドの濃度が0.0001重量%〜5重量%であることを特徴とする請求項20に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項22】
化粧品的又は医薬的に有効な量の1つ以上の請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の一般式(I)のペプチドを含み、更に、ピーリング剤、保湿剤、脱色又はホワイトニング剤、色素形成促進剤、抗妊娠線剤、しわ取り剤、抗酸化剤、抗糖化剤、NO合成酵素阻害剤、アンチエイジング剤、目の下のたるみを減少又は除去する薬剤、皮膚や表皮の分子合成を誘導及び/又はそれらの分解を抑制する薬剤、線維芽細胞及び/又はケラチノサイトの増殖を誘導する薬剤及びケラチノサイトの分化を誘導する薬剤、皮膚と表皮の結合改善の薬剤、皮膚弛緩剤、安定剤、抗大気汚染剤及び/又は抗フリーラジカル剤、毛細血管循環及び/又は微小循環に作用する薬剤、鎮静剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗真菌剤、細胞代謝に作用する薬剤、毛細血管循環及び/又は微小循環に作用する薬剤、ビタミン、キレート剤、紫外線A及びB照射に対して機能する有機又は無機の光防護剤並びにその混合物から成る群より選択される化粧品的又は医薬的に有効な量の活性剤を含むことを特徴とする化粧品又は医薬組成物。
【請求項23】
前記活性剤が、合成物、植物抽出物又は生物発酵由来のものであることを特徴とする請求項22に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項24】
前記しわ取り剤及び/又はアンチエイジング剤が、Argireline(商標)、Leuphasyl(商標)、Decorinyl(商標)、Decorinol(商標)、Lipochroman(商標)及びAldenine(商標)から成る群より選択されることを特徴とする請求項22に記載の化粧品又は医薬組成物。
【請求項25】
哺乳類のニューロンエキソサイトーシス制御が必要な状態を治療するための化粧品又は医薬組成物の製造における請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の一般式(I)のペプチドの使用。
【請求項26】
皮膚の治療、クリーニング又はケアのための化粧品又は医薬組成物の製造における請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の一般式(I)のペプチドの使用。
【請求項27】
顔のしわ及び/又は顔面非対称を減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の一般式(I)のペプチドの使用。
【請求項28】
顔の表情じわを減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における請求項27に記載の一般式(I)のペプチドの使用。
【請求項29】
額、まゆの間のスペース及び/又はしわ並びに口の周り及び/又は目の周りの細い線に適用する方法によって、顔の表情じわを減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における請求項28に記載の一般式(I)のペプチドの使用。
【請求項30】
額、まゆの間のスペース及び/又はしわ並びに口の周り及び/又は目の周りの細い線にイオン導入により適用する方法によって、顔の表情じわを減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における請求項28に記載の一般式(I)のペプチドの使用。
【請求項31】
額、まゆの間のスペース及び/又はしわ並びに口の周り及び/又は目の周りの細い線に皮下注射又は皮内注射により適用する方法によって、顔の表情じわを減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における請求項28に記載の一般式(I)のペプチドの使用。
【請求項32】
筋痙直を減少及び/又は除去する化粧品又は医薬組成物の製造における請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の一般式(I)のペプチドの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−507632(P2010−507632A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533889(P2009−533889)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/ES2007/000603
【国際公開番号】WO2008/049945
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509120241)
【Fターム(参考)】