説明

ネットワーク通信装置および受信バッファ制御方法

【課題】クロック誤差によるデータのアンダーラン、オーバーフローを発生させずに、データ欠落を防止することができるネットワーク通信装置および受信バッファ制御方法を提供する。
【解決手段】送信側から見做しFAXデータを受信し、見做しFAXデータを受信蓄積メモリに蓄積し、受信蓄積メモリのデータ量がD/A変換開始量に到達すると、D/A変換部が見做しFAXデータのD/A変換処理を実行する。D/A変換処理中に受信蓄積メモリのデータ量がUpper Limitを上回った場合、周波数制御部がD/A変換周波数fRを高くし、また、D/A変換処理中に受信蓄積メモリのデータ量がLower Limitを下回った場合、周波数制御部がD/A変換周波数fRを低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク通信装置および受信バッファ制御方法に関し、特に、音声をIPネットワーク上で伝送するVoIP機能を有するネットワーク通信装置および受信バッファ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等で利用される標準プロトコルであるUDP[User Datagram Protocol]/RTP[Real-time Transport Protocol]の手順によるFAX通信(見做しFAX通信)において、送信側と受信側との同期をとる様々な技術が開示されている。
【0003】
例えば、パケット内に予め計算しておいた到達時間と実際にパケットを得た時間との差でネットワーク遅延を計算することによって、バッファの深さを調節するネットワークエッジにおける揺らぎ吸収バッファ制御方法およびシステム並びに記録媒体がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−26969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送信側データのA/D変換用のクロック(以後、fTと称する)と、受信側のD/A変換用のクロック(以後、fRと称する)との誤差によって、受信側の受信蓄積メモリに問題が発生する。fR>fTの場合、受信蓄積メモリにアンダーランが発生する可能性があり、fR<fTの場合、受信蓄積メモリにオーバーフローが発生する可能性がある。このような問題を防止するために受信蓄積メモリに冗長なメモリを用いていた。
【0005】
しかし、あまり受信蓄積メモリを大きくすると、送信側のコマンド/ステータスの送信時から受信側でそのコマンドを受信するまでに時間がかかり、タイムアウトになってしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、クロック誤差によるデータのアンダーラン、オーバーフローを発生させずに、データ欠落を防止することができるネットワーク通信装置および受信バッファ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ネットワークを介してデータ通信を行うネットワーク通信装置において、前記ネットワークを介して受信した送信端末からのデータを一時蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段から前記データを順次取り出して所定の処理を行う処理手段と、前記処理手段が前記処理を行う際に、前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量に基づいて該処理手段の動作周波数を制御する周波数制御手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記周波数制御手段は、前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量が予め設定された値を上回ったとき、前記処理手段で動作中の動作周波数を該動作周波数より高くし、前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量が予め設定された値を下回ったとき、前記処理手段で動作中の動作周波数を該動作周波数より低くすることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記データは、音声データデジタル信号であり、前記処理手段は、前記音声データデジタル信号を音声データアナログ信号に変換する処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、ネットワークを介してデータ通信を行うネットワーク通信装置の受信バッファ制御方法において、前記ネットワークを介して受信した送信端末からのデータを蓄積手段に一時蓄積し、処理手段が前記蓄積手段から前記データを順次取り出して所定の処理を行い、周波数制御手段が前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量に基づいて該処理手段の動作周波数を制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記周波数制御手段は、前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量が予め設定された値を上回ったとき、前記処理手段で動作中の動作周波数を該動作周波数より高くし、前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量が予め設定された値を下回ったとき、前記処理手段で動作中の動作周波数を該動作周波数より低くすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記データは、音声データデジタル信号であり、前記処理手段は、前記音声データデジタル信号を音声データアナログ信号に変換する処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クロック誤差によるデータのアンダーラン、オーバーフローを発生させずに、データ欠落を防止することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るネットワーク通信装置および受信バッファ制御方法の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用したFAX通信システム1のシステム構成の一例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、送信側のFAX装置(以後、送信側と略称する)21と受信側のFAX装置(以後、受信側と略称する)22とがIP網3を介して接続している。以下、送信側21から受信側22に見做しFAX通信でFAXデータを送信する処理について説明する。
【0017】
送信側21はモデム等で生成したFAXアナログ信号4をA/D変換部5でFAXデジタル信号6に変換する。詳細には、FAXアナログ信号4は一時的に送信蓄積メモリ7に蓄積され、A/D変換部5はFAXアナログ信号4を送信蓄積メモリ7から順次取り出してA/D変換処理(A/D変換周波数fT(=f0+Δ1))を行い、FAXデジタル信号6をIP網3を介して受信側22に送信する。
【0018】
受信側22は送信側21から送信されたFAXデジタル信号6をIP網3を介して受信すると、受信したFAXデジタル信号6をD/A変換部8でFAXアナログ信号4に変換する。詳細には、FAXデジタル信号6は一時的に受信蓄積メモリ9に蓄積され、D/A変換部8はFAXデジタル信号6を受信蓄積メモリ9から順次取り出してD/A変換処理(D/A変換周波数fR(=f0+Δ2))を行い、FAXアナログ信号4をモデム等に出力する。
【0019】
ここで、A/D変換周波数fTとD/A変換周波数fTとが同期していない場合、受信蓄積メモリ9にアンダーランまたはオーバーフローが発生する可能性がある。
【0020】
そこで、本発明では、受信側22の周波数制御部10が受信蓄積メモリ9に蓄積されたFAXデジタル信号6のデータ量に基づき、D/A変換周波数fRを加減することで、D/A変換処理の速度を加減し、受信蓄積メモリ9のデータ量を制御する。
【0021】
図2は、周波数制御部10が行うD/A変換周波数fRの制御について説明する図である。
【0022】
図2に示すように、受信蓄積メモリ9にデータが蓄積されていない状態をEmptyとし、受信蓄積メモリ9の容量一杯にデータが蓄積されている状態をFullとする。そして、受信蓄積メモリ9へのFAXデジタル信号6の蓄積が開始し、受信蓄積メモリ9のデータ量が増加していき、データ量がD/A変換開始量に到達すると、D/A変換部8はFAXデジタル信号6のD/A変換処理を開始する。これは、受信蓄積メモリ9へのFAXデジタル信号6の蓄積開始時にD/A変換処理を開始すると、アンダーランが発生してしまう可能性があるからである。
【0023】
そして、受信蓄積メモリ9へのFAXデジタル信号6の蓄積と、D/A変換部8によるFAXデジタル信号6のD/A変換処理とが並行して行われる。
【0024】
ここで、受信蓄積メモリ9のデータ量がUpper Limitに到達した場合、周波数制御部10はオーバーフローの発生を考慮して、D/A変換周波数fRを上限の周波数内で高く(Δ2>0)する(なお、周波数の範囲Δは−100ppm<Δ<100ppm)。これにより、D/A変換部8が行うD/A変換処理の速度が速くなり、受信蓄積メモリ9のデータ量が減少することになり、オーバーフローの発生を防止することができる。
【0025】
また、受信蓄積メモリ9のデータ量がLower Limitに到達した場合、周波数制御部10はアンダーランの発生を考慮して、D/A変換周波数fRを下限の周波数内で低く(Δ2<0)する(なお、周波数の範囲Δは−100ppm<Δ<100ppm)。これにより、D/A変換部8が行うD/A変換処理の速度が遅くなり、受信蓄積メモリ9のデータ量が増加することになり、アンダーランの発生を防止することができる。
【0026】
また、上述したUpper Limit、Lower Limitを段階的に複数用意し、D/A変換周波数fRを段階的に制御することもできる。
【0027】
図3は、周波数制御部10が行う段階的なD/A変換周波数fRの制御について説明する図である。
【0028】
図3(a)に示すように、Upper LimitとFullの間にUp/2を設定し、Lower LimitとEmptyの間にLow/2を用意する。
【0029】
そして、図3(b)に示すように、「Full>データ量X>Up/2」の範囲に対応するD/A変換周波数fRを「fR_Upper_Limit」に設定し、「Up/2>X>Upper Limit」の範囲に対応するfRを「fR_Upper」に設定し、「Upper Limit>X>Lower Limit」の範囲に対応するfRを「fR」に設定し、「Lower Limit>X>Low/2」の範囲に対応するfRを「fR_Lower」に設定し、「Low/2>X>Empty」の範囲に対応するfRを「fR_Lower_Limit」に設定することで、段階的なD/A変換周波数fRの制御を行うことができる。
【0030】
次に、ネットワーク通信装置で行われるD/A変換周波数fRの制御処理の手順について図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0031】
送信側から見做しFAXデータを受信し(ステップS401)、受信した見做しFAXデータを受信蓄積メモリに蓄積し(ステップS402)、受信蓄積メモリのデータ量がD/A変換開始量に到達すると(ステップS403でYES)、D/A変換部が見做しFAXデータのD/A変換処理を実行する(ステップS404)。
【0032】
D/A変換処理中に受信蓄積メモリのデータ量がUpper Limitを上回った場合(ステップS405でYES)、周波数制御部がD/A変換周波数fRを高くし(ステップS406)、ステップS404に戻る。なお、データ量に応じたD/A変換周波数fRの制御を行うこともできる。
【0033】
また、D/A変換処理中に受信蓄積メモリのデータ量がUpper Limitを上回らず(ステップS405でNO)、Lower Limitを下回った場合(ステップS407でYES)、周波数制御部がD/A変換周波数fRを低くし(ステップS408)、ステップS404に戻る。なお、データ量に応じたD/A変換周波数fRの制御を行うこともできる。
【0034】
そして、D/A変換処理中に受信蓄積メモリのデータ量がLower Limitを下回らず(ステップS407でNO)、見做しFAXデータの受信が終了すると(ステップS409でYES)、制御処理の手順を終了する。
【0035】
本発明は、上記し、且つ図面に示した実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用したFAX通信システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図2】周波数制御部が行うD/A変換周波数fRの制御について説明する図である。
【図3】周波数制御部が行う段階的なD/A変換周波数fRの制御について説明する図である。
【図4】ネットワーク通信装置で行われるD/A変換周波数fRの制御処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1 FAX通信システム
21 送信側のFAX装置
22 受信側のFAX装置
3 IP網
4 FAXアナログ信号
5 A/D変換部
6 FAXデジタル信号
7 送信蓄積メモリ
8 D/A変換部
9 受信蓄積メモリ
10 周波数制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介してデータ通信を行うネットワーク通信装置において、
前記ネットワークを介して受信した送信端末からのデータを一時蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段から前記データを順次取り出して所定の処理を行う処理手段と、
前記処理手段が前記処理を行う際に、前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量に基づいて該処理手段の動作周波数を制御する周波数制御手段と
を具備することを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項2】
前記周波数制御手段は、
前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量が予め設定された値を上回ったとき、前記処理手段で動作中の動作周波数を該動作周波数より高くし、
前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量が予め設定された値を下回ったとき、前記処理手段で動作中の動作周波数を該動作周波数より低くする
ことを特徴とする請求項1記載のネットワーク通信装置。
【請求項3】
前記データは、
音声データデジタル信号であり、
前記処理手段は、
前記音声データデジタル信号を音声データアナログ信号に変換する処理を行う
ことを特徴とする請求項1記載のネットワーク通信装置。
【請求項4】
ネットワークを介してデータ通信を行うネットワーク通信装置の受信バッファ制御方法において、
前記ネットワークを介して受信した送信端末からのデータを蓄積手段に一時蓄積し、
処理手段が前記蓄積手段から前記データを順次取り出して所定の処理を行い、
周波数制御手段が前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量に基づいて該処理手段の動作周波数を制御する
ことを特徴とするネットワーク通信装置の受信バッファ制御方法。
【請求項5】
前記周波数制御手段は、
前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量が予め設定された値を上回ったとき、前記処理手段で動作中の動作周波数を該動作周波数より高くし、
前記蓄積手段に一時蓄積されているデータ量が予め設定された値を下回ったとき、前記処理手段で動作中の動作周波数を該動作周波数より低くする
ことを特徴とする請求項4記載のネットワーク通信装置の受信バッファ制御方法。
【請求項6】
前記データは、
音声データデジタル信号であり、
前記処理手段は、
前記音声データデジタル信号を音声データアナログ信号に変換する処理を行う
ことを特徴とする請求項4記載のネットワーク通信装置の受信バッファ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−11351(P2008−11351A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181532(P2006−181532)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】