説明

ノズル、基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板上における液体の微粒子の密度を増大しつつ、微粒子の基板への到達速度を調整可能にするノズルを提供する。
【解決手段】噴射ノズル4は、液滴生成ガスおよび純水が導入され、液滴を噴射する液滴生成ノズル部41を有し、液滴生成ノズル部41の先端には、筒状の補助ノズル部42が取り付けられる。補助ノズル部42は、液滴生成ノズル部41に接続される連結部421、および、液滴の基板上における被噴射範囲を制限する先端部423を有し、補助ノズル部42の流路425内において液滴を加速する加速ガスが加速ガス導入口424から導入される。噴射ノズル4では、液滴生成ガスの流量を高くして微小な液滴を生成し、さらに、被噴射範囲を制限することにより基板上における液滴の密度を増大することができ、加速ガスの流量を制御することにより液滴の基板への到達速度が調整可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に向けて液体の微粒子を噴射するノズル、および、当該ノズルを用いて基板を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程において、供給される液体と気体とを混合して液滴を生成しつつ噴射する2流体ノズルを用いて、洗浄液の微小な液滴を基板に向けて噴射することにより基板の表面に付着したパーティクル等の異物を除去する(すなわち、基板を洗浄する)ことが行われている。基板洗浄に用いられる2流体ノズルとして、例えば、特許文献1では、供給される液体と気体とを混合して生成される液滴の導出路を有し、導出路の先端に、導出路の断面積よりも小さい断面積を有する噴射口を形成することにより、噴射口内を通過する液滴を再微粒化しつつ噴射するものが提案されている。また、特許文献2では、先端に円筒状の直流部を設けることにより、液滴の拡散を抑制しつつ液滴を基板上に到達させることが可能な2流体ノズルが開示されている。
【0003】
なお、特許文献3および4では、外部の液滴生成部にて生成される液滴(および、キャリアガス)と、加速ガスとが供給されることにより、液滴を加速ガスにて加速しつつ基板へと噴射する手法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−294819号公報
【特許文献2】特開2002−208579号公報
【特許文献3】特開2006−128332号公報
【特許文献4】特開2004−223378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、基板に形成されるパターンの微細化に伴って基板上の異物の除去率の向上、および、洗浄時における基板上のパターンへの影響の低減(すなわち、低ダメージ化)が求められている。一般的に、異物の除去率は、液滴の基板への到達速度を高くすることにより向上することが可能であるが、この場合、基板上のパターンへのダメージが増大してしまう。また、異物の除去率は、基板上に噴射される液滴の径(液滴の平均粒径)を小さくしつつ、液滴の密度(単位時間当たりに基板表面の単位面積に到達する液滴数)を高くすることによっても向上することが可能であるが、2流体ノズルから噴射される液滴の径を小さくするには、2流体ノズルに供給する気体の流量を増大しなければならず、液滴の基板への到達速度が高くなって基板上のパターンへのダメージが大きくなってしまう。さらに、2流体ノズルと基板との間の距離をある程度長くして液滴の基板への到達速度を低くすることも考えられるが、この場合、2流体ノズルからの噴射幅が広がって基板上における液滴の密度が低くなり、異物の除去率の向上を図ることができなくなる。
【0005】
特許文献3および4の手法を用いることにより、液滴の径を小さくして液滴の密度を増大しつつ、液滴の基板への到達速度を調整可能にすることも考えられるが、液滴を噴射するノズルとは別に液滴生成部を設ける必要が生じ、装置の構成が複雑化してしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板上における液体の微粒子の密度を増大しつつ、微粒子の基板への到達速度を調整可能にするノズルを提供することを主たる目的とし、当該ノズルを用いて微粒子が衝突する際における基板へのダメージを低減しつつ好ましい基板処理を容易に実現することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板に向けて液体の微粒子を噴射するノズルであって、気体および液体が導入され、前記液体の微粒子を前記気体と共に噴射する微粒子生成ノズル部と、前記微粒子生成ノズル部からの前記微粒子の噴射方向に沿って伸びる筒状であり、一方の端部が前記微粒子生成ノズル部の噴射口の周囲を囲むとともに前記微粒子生成ノズル部に接続され、他方の端部が前記微粒子の基板上における被噴射範囲を制限し、前記一方の端部側から前記他方の端部に至る流路内において前記微粒子を加速する加速ガスを前記流路に導入する導入口を有する補助ノズル部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノズルであって、前記微粒子生成ノズル部が、前記噴射口の外部にて前記気体および前記液体を混合して前記微粒子を生成する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のノズルであって、前記補助ノズル部の前記一方の端部と前記微粒子生成ノズル部の前記噴射口との間に間隙が設けられ、前記導入口が前記間隙に設けられ、前記加速ガスが前記導入口から前記間隙を経由して前記流路に導入される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のノズルであって、前記補助ノズル部が、前記微粒子生成ノズル部に対して着脱可能である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、基板を保持する保持部と、前記保持部にて保持される基板の主面に向けて液体の微粒子を噴射する請求項1ないし4のいずれかに記載のノズルとを備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、基板を保持する工程と、請求項1ないし4のいずれかに記載のノズルから前記基板の主面に向けて液体の微粒子を噴射する工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板上における液体の微粒子の密度を増大しつつ、微粒子の基板への到達速度を調整可能にすることができ、これにより、微粒子が衝突する際における基板へのダメージを低減しつつ好ましい基板処理を容易に実現することができる。
【0014】
また、請求項2の発明では、基板上における微粒子の密度をさらに増大することができ、請求項3の発明では、加速ガスを流路に沿う方向に導入することができ、請求項4の発明では、別途設計された2流体ノズルを用いてノズルを容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板洗浄装置1の構成を示す図である。基板洗浄装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)の表面を洗浄し、基板9の表面に付着したパーティクル等の異物を除去する枚葉式の装置である。
【0016】
図1に示すように、基板洗浄装置1は、円板状の基板9を保持する基板保持部2、基板9の洗浄用の微粒子である洗浄液(本実施の形態では、純水(脱イオン水(deionized water)))の液滴を生成しつつ基板9に向けて噴射する噴射ノズル4、噴射ノズル4に純水を供給する純水供給部31、噴射ノズル4に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部32、および、これらの機構を制御する制御部5を備える。
【0017】
基板保持部2は、基板9を下側から保持する略円板状のチャック21を備え、チャック21の外周上には、基板9を把持する複数のチャックピン211が設けられる。チャック21の下面にはシャフト22が設けられ、シャフト22はモータ23に接続される。基板9は、基板9の中心がシャフト22の中心軸上に位置するようにチャック21に保持される。基板保持部2では、制御部5の制御によりモータ23が駆動されることによりシャフト22が回転し、基板9がチャック21およびシャフト22と共にシャフト22の中心軸を中心として回転する。なお、基板保持部2における基板9の保持は、例えば、基板9の下側(噴射ノズル4とは反対側)の主面の中央部のみを吸引吸着する等して実現されてもよい。
【0018】
噴射ノズル4は、液滴生成ノズル部41および補助ノズル部42を有し、液滴生成ノズル部41は、供給管311,321を介して純水供給部31および窒素ガス供給部32に接続される。供給管311,321には、開度調整が可能なバルブ312,322がそれぞれ設けられ、液滴生成ノズル部41へと供給される純水および窒素ガスのそれぞれの流量(単位時間当たりの供給量)が調整可能とされる。また、供給管321にはバルブ322と窒素ガス供給部32との間にて供給管323が分岐して設けられており、供給管323により補助ノズル部42が窒素ガス供給部32に接続される。供給管323にも開度調整が可能なバルブ324が設けられ、補助ノズル部42へと供給される窒素ガスの流量が調整可能とされる。
【0019】
後述するように、液滴生成ノズル部41は供給される液体と気体とを外部(液滴生成ノズル部41の外部)にて混合して液滴を生成する外部混合型の2流体ノズルであり、バルブ312,322が開放されて液滴生成ノズル部41から純水および窒素ガスが噴射されることにより外部にて(正確には、補助ノズル部42内にて)液滴が生成される。また、バルブ324が開放されて窒素ガスが補助ノズル部42に供給されることにより、補助ノズル部42内において液滴生成ノズル部41にて生成される液滴が加速される。噴射ノズル4は、アーム44を介して図示省略のノズル移動機構に接続されており、基板9の上方においてアーム44と共に移動可能とされる。以下の説明では、液滴生成ノズル部41に供給される窒素ガスを「液滴生成ガス」と呼び、補助ノズル部42に供給される窒素ガスを「加速ガス」と呼ぶ。
【0020】
図2は、噴射ノズル4を示す断面図である。図2に示すように、噴射ノズル4の液滴生成ノズル部41は、略円筒状の外筒45、および、外筒45の内部に嵌め込まれた略円筒状の内筒46を備え、外筒45および内筒46は、中心軸J1を共有する同軸状に配置されている。
【0021】
内筒46の内部空間は、直線状の純水流路461となっており、純水流路461の基板9とは反対側(図2中の上側)の端部は、供給管311(図1参照)に接続される純水導入口462として開口している。純水流路461の基板9側(図2中の下側)の端部は、純水流路461に導入された純水を噴射する純水噴射口463として開口している。液滴生成ノズル部41では、内筒46により、純水の搬送方向が中心軸J1に沿う直線状に規制され、純水噴射口463から中心軸J1に沿う方向(以下、「噴射方向」という。)に純水が噴射される。基板9の処理時には、噴射ノズル4は、中心軸J1が基板9の噴射ノズル4側の主面に垂直になるように配置される。
【0022】
液滴生成ノズル部41では、外筒45はほぼ一定の内径を有する。一方、内筒46は、噴射方向の各部で外径が変化し、内筒46の噴射方向における中間部46aは、外筒45の内径より小さな外径を有する。内筒46の純水噴射口463側および純水導入口462側の端部近傍には、内筒46の外周面から張り出すように、内筒46と一体的に形成されたフランジ46b,46cがそれぞれ設けられている。フランジ46b,46cは外筒45の内径にほぼ等しい外径を有しているため、外筒45の内部に嵌め込まれた内筒46は、フランジ46b,46cの外周面にて外筒45の内周面に密接する。そして、内筒46の中間部46aと外筒45の内周面との間に、中心軸J1を中心とする略円筒状の間隙である円筒流路471が形成される。外筒45の噴射方向における中間近傍には、供給管321(図1参照)に接続される液滴生成ガス導入口451が形成されており、液滴生成ガスが液滴生成ガス導入口451を介して円筒流路471に導入される。
【0023】
図3および図4は、内筒46のフランジ46b近傍を拡大して示す正面図および底面図である。図3および図4に示すように、フランジ46bは、円筒状の部位の下側に中空の円錐台が設けられた形状を有しており、中心軸J1に対して略垂直に突出している。フランジ46bには、噴射方向にフランジ46bを貫通する6つのスリット464が形成されている。各スリット464は、フランジ46bの外周面からフランジ46bの内側に向かって、中心軸J1に略平行、かつ、中心軸J1を含まない平面に沿うように、互いにほぼ等角度間隔で形成されている。各スリット464は、噴射方向に見て、フランジ46bの外周面における開口(以下、「側面開口」という。)465と中心軸J1とを結ぶ径方向に対して所定の角度にて斜交しており、また、フランジ46bから下方に突出して設けられた円筒状の内筒先端部46dの外周面にほぼ接する。
【0024】
図2に示すように、外筒45は基板9側の先端に外筒先端部45aを備える。外筒先端部45aは、純水噴射口463側の先端に向かうに従って内径が漸次小さくなるテーパ状の内周面、および、テーパ状の内周面の下方に設けられる中心軸J1に平行な内周面を有する。液滴生成ノズル部41では、各スリット464の側面開口465(図4参照)が外筒45の内周面により閉塞され、側面開口465の下部が外筒先端部45aのテーパ状の内周面により閉塞されることにより、円筒流路471と連通するとともに円筒流路471からの液滴生成ガスの流れの方向を変更する方向変更部472が形成される。
【0025】
また、外筒先端部45aの内径は内筒先端部46dの外径よりも大きいため、外筒先端部45aと内筒先端部46dとの間に中心軸J1の周囲を囲む略円筒状の間隙であって、方向変更部472からの液滴生成ガスが導かれて旋回流を形成する旋回流形成部473が形成される。旋回流形成部473の基板9側の先端は、純水噴射口463の周囲を囲む円環状の液滴生成ガス噴射口474として、純水噴射口463に近接して開口している。上述のように、スリット464は内筒先端部46dの外周面にほぼ接するように形成されているため(図4参照)、噴射ノズル4を基板9側から見た場合、方向変更部472の中心軸J1側の部位は、液滴生成ガス噴射口474と重なっている。
【0026】
液滴生成ノズル部41では、周囲にスリット464が形成された内筒46を外筒45の内部に嵌め込むことにより、液滴生成ガスが流れる円筒流路471、方向変更部472および旋回流形成部473(以下、これらをまとめて、「液滴生成ガス流路47」という。)が容易に形成される。
【0027】
図2の補助ノズル部42は、中心軸J1に沿って伸びる筒状(本実施の形態では、中心軸J1を中心とする円筒状)となっている。補助ノズル部42は、外筒45の基板9側の部位が着脱可能に挿入されることにより液滴生成ガス噴射口474および純水噴射口463の周囲を囲むとともに液滴生成ノズル部41と接続される連結部421、連結部421に接続するとともに基板9側に向かうに従って内周面の直径が漸次減小する傾斜部422、および、傾斜部422の基板9側の部位から中心軸J1に沿って一定の直径にて基板9側へと伸びる先端部423を有する。補助ノズル部42内では、一方の端部である連結部421側から、傾斜部422を経由して他方の端部である先端部423へと至る流路425が形成される。
【0028】
連結部421の傾斜部422側の部位と、液滴生成ノズル部41の液滴生成ガス噴射口474の周囲の部位(すなわち、外筒45の基板9側の端部)との間には間隙48が形成されており、供給管323(図1参照)に接続される加速ガス導入口424が間隙48に設けられる(正確には、間隙48に向かって開口するように、補助ノズル部42に設けられる。)。間隙48の基板9とは反対側は閉塞されており、加速ガス導入口424からの加速ガスは、間隙48を経由して流路425へと導入される。これにより、加速ガスが流路425に沿って基板9側へと導かれ、先端部423の開口である液滴噴射口426から噴射される。
【0029】
図5は、基板洗浄装置1が基板9を洗浄する処理の流れを示す図である。基板9を洗浄する際には、まず、外部の搬送装置により図1に示す基板保持部2上に基板9が載置されて保持される(ステップS11)。続いて、モータ23が制御部5により駆動されて基板9の回転が開始され(ステップS12)、その後、バルブ312,322が開放されることにより、液滴生成ノズル部41に純水と液滴生成ガスとが供給される。
【0030】
液滴生成ガスは、図2に示す円筒流路471内を液滴生成ガス流路47の母線方向(すなわち、噴射方向)に沿って下方に流れ、方向変更部472へと導かれる。方向変更部472では、各スリット464(図4参照)の外周側において下方へと流れる液滴生成ガスが、外筒先端部45aのテーパ状の内周面に沿って図4中の矢印Kにて示すフランジ46bの中心軸J1側に向かって流れつつ図2に示す旋回流形成部473へと導かれる。このように、方向変更部472では、液滴生成ガスの向き(すなわち、液滴生成ガスが流れる方向)が噴射方向から、中心軸J1を中心とする円周方向に沿う成分を有する方向へと変換される。
【0031】
方向変更部472の6つのスリット464を通過した液滴生成ガスは、旋回流形成部473において中心軸J1を中心とする円周方向に沿って、図4中における反時計回りに旋回しつつ下方へと流れる。液滴生成ガスは、中心軸J1を中心とする円周上において互いにほぼ等角度間隔に配列された6つのスリット464から旋回流形成部473へと導かれるため、円周方向(すなわち、旋回方向)に関して均一な旋回流となる。
【0032】
図2に示す旋回流形成部473を通過した液滴生成ガスは、液滴生成ガス噴射口474を介して純水噴射口463の周囲全周から旋回流として噴射される。純水噴射口463の周囲の各方向から噴射された液滴生成ガスは、純水噴射口463から噴射される純水の移動経路上において互いに衝突する。これにより、液滴生成ガス噴射口474および純水噴射口463の外部かつ補助ノズル部42の内部にて純水と液滴生成ガスとが混合されて純水の液滴が効率よく生成されつつ、液滴および液滴生成ガスが中心軸J1に沿って基板9側に向かって移動する。すなわち、液滴生成ノズル部41から純水の液滴が液滴生成ガスと共に噴射方向に噴射される。
【0033】
実際には、液滴生成ガスの流量を可能な範囲で高くする(例えば、液滴生成ノズル部41である2流体ノズルの仕様における上限値に近い流量とする)ことにより、液滴生成ノズル部41にて微小な径(平均粒径)の液滴が生成される。このように、液滴生成ガスの流量を高くする場合でも、液滴生成ノズル部41の液滴生成ガス噴射口474と基板9との間には、補助ノズル部42を配置するための十分に長い距離が設けられるとともに、液滴生成ガス噴射口474から噴射される液滴生成ガスは補助ノズル部42の内周面に衝突して減速することにより(正確には、液滴生成ガスのうち高速の部分が減速され、速度が均一化される。)、液滴生成ガス噴射口474からの液滴生成ガスにより基板9上のパターンが損傷することはない。
【0034】
また、バルブ324を開放することにより、液滴生成ノズル部41からの液滴の噴射と並行して、加速ガスが窒素ガス供給部32から補助ノズル部42に供給され、補助ノズル部42の流路425内における窒素ガス(加速ガスおよび液滴生成ノズル部41からの液滴生成ガス)は液滴生成ガスのみの速度よりも高速にて移動する。このようにして、流路425内において液滴が加速ガスにより加速されつつ液滴噴射口426から基板9の噴射ノズル4側の主面に向けて噴射される(ステップS13)。このとき、補助ノズル部42の先端部423により、基板9上における液滴の被噴射範囲が制限されるため(被噴射範囲の制限については後述する。)、基板9上における液滴の密度(単位時間当たりに基板表面の単位面積に到達する液滴数)を高くすることができる。また、バルブ324の開度を調整する(すなわち、加速ガスの流量を調整する)ことにより、液滴の基板への到達速度も調整可能とされる。実際には、加速ガスの流量は、基板9上のパターンが損傷せず、かつ、基板9上の異物を効率よく除去することが可能な大きさとされる。
【0035】
基板9への液滴の噴射が開始されると、図1に示す基板保持部2により回転する基板9の上方において、ノズル移動機構により噴射ノズル4が移動を開始し、基板9の中心と外周上の1点との間の上方にて、すなわち、図1中に実線にて示す位置と二点鎖線にて示す位置との間にて、往復移動を繰り返して基板9の上面全体(あるいは、所定の範囲)の洗浄が行われる。このようにして、噴射ノズル4からの液滴の噴出および噴射ノズル4の往復移動が所定時間だけ継続されると、噴射ノズル4に対する純水、液滴生成ガスおよび加速ガスの供給が停止され、噴射ノズル4の移動および基板9の回転も停止されて基板9の洗浄処理が終了する(ステップS14)。
【0036】
次に、液滴生成ノズル部41のみが設けられる比較例の噴射ノズルから噴射される液滴の基板9上における被噴射範囲について説明する。図6は、比較例の噴射ノズル90の液滴生成ガス噴射口474から噴射される液滴生成ガスの進行方向を示す斜視図である。図6中の矢印Nは、液滴生成ガスの進行方向を示す。比較例の噴射ノズル90では、旋回流形成部473(図2参照)において液滴生成ガスが純水流路461の周囲を均一に旋回しつつ流れることにより、液滴生成ガス噴射口474から噴射される液滴生成ガスが、液滴生成ガス噴射口474近傍にて旋回方向に均一な渦巻き気流となり、純水噴射口463から中心軸J1に沿って噴射される純水の液滴の周囲を囲みつつ純水と混合され、純水の液滴が生成される。
【0037】
図4に示すように、液滴生成ノズル部41では、スリット464が内筒先端部46dの外周面(すなわち、図2に示す液滴生成ガス噴射口474の内周)にほぼ接するように形成されているため、液滴生成ガスが液滴生成ガス噴射口474の接線方向の成分を有する方向に向けて噴射される。その結果、図6に示すように、比較例の噴射ノズル90から噴射された純水の液滴および液滴生成ガスが流れる領域の輪郭(図6中において二点鎖線にて示す。)は、純水噴射口463の近傍に形成される絞り部L1と、絞り部L1から基板9の表面に向かうに従って側方に広がる拡散部M1とを有する形状となる。絞り部L1は、液滴の噴射方向に直交する略円形断面の径が、噴射方向に沿う各部で基板9に近づくに従って漸次減少する略逆円錐台形状を有している。拡散部M1は、絞り部L1の基板9側において、噴射方向に直交する略円形断面の径が基板9に近づくに従って漸次増大する略円錐台形状を有している。換言すれば、絞り部L1と拡散部M1とにより、いわゆる鼓型の形状が形成される。比較例の噴射ノズル90を有する基板洗浄装置では、液滴生成ガスにより運ばれる液滴が、基板9上の略円状の被噴射範囲N1に衝突する。そして、被噴射範囲N1において、基板9に付着しているパーティクル等の異物が除去される(すなわち、基板9の被噴射範囲N1が洗浄される)。
【0038】
これに対し、図2の噴射ノズル4では、液滴生成ノズル部41に補助ノズル部42が取り付けられ、補助ノズル部42が、比較例の噴射ノズル90における基板9上の被噴射範囲N1よりも小さい断面積(噴射方向に垂直な断面積)の先端部423を有することにより、液滴生成ノズル部41から噴射される液滴の基板9上における被噴射範囲が、比較例の噴射ノズル90における被噴射範囲N1よりも小さくされる(すなわち、被噴射範囲が制限される)。これにより、噴射ノズル4と比較例の噴射ノズル90とで同じ量の液滴が噴出されると仮定した場合に、噴射ノズル4において基板9上における液滴の密度を比較例の噴射ノズル90よりも高くすることが可能となる。
【0039】
また、通常の使用方法による2流体ノズル(すなわち、比較例の噴射ノズル)では、純水に混合される液滴生成用のガスの流量により液滴の粒径が決定され、さらに、基板9上における液滴の到達速度が決定される。一方、図1に示す基板洗浄装置1では、液滴の粒径は、噴射ノズル4の液滴生成ノズル部41に供給する液滴生成ガスの流量によりほぼ決定され、基板9上における液滴の到達速度の制御は、制御部5によりバルブ324が制御されて補助ノズル部42に対する加速ガスの流量が変更されることにより行われる。その結果、基板9上における液滴の到達速度を遅くして基板9上のパターンの損傷を抑制する場合に、比較例の噴射ノズル90では液滴の平均粒径が大きくなっていくのに対し、噴射ノズル4では液滴の粒径を微小かつほぼ一定の大きさに維持することができる。
【0040】
以上に説明したように、基板洗浄装置1の噴射ノズル4では、液滴生成ノズル部41により生成した純水の液滴を、補助ノズル部42を介して加速ガスにて加速しつつ基板9に向けて噴射することにより、基板9上における液滴の到達速度にほとんど依存することなく、液滴の粒径を微小な大きさにて均一化することができるとともに、噴射ノズル4と基板9との間において液滴の流れる領域が側方に大きく広がって基板9上における液滴の密度が低下してしまうことが抑制される。このように、基板洗浄装置1では、噴射ノズル4を用いて基板9上における液滴の密度を増大しつつ、液滴の基板への到達速度を調整可能にすることにより、基板9上の異物の除去率を向上するとともに、液滴が衝突する際に基板9に与える衝撃を軽減して基板9上のパターンへのダメージを低減する(すなわち、パターンへの影響を抑制する)ことが容易に実現される。
【0041】
また、図2の噴射ノズル4では、加速ガス導入口424が補助ノズル部42の基板9とは反対側の端部と、液滴生成ノズル部41の液滴生成ガス噴射口474の周囲の部位との間の間隙48に設けられることにより、加速ガスを補助ノズル部42内の流路425に沿う方向に容易に導入することができ、液滴を液滴噴射口426から滑らかに噴射することができる。さらに、補助ノズル部42が液滴生成ノズル部41に対して着脱可能とされていることにより、別途設計された2流体ノズルである液滴生成ノズル部41に補助ノズル部42を取り付けるのみで噴射ノズル4を容易に作製することができるとともに、噴射ノズル4のメンテナンスの際には補助ノズル部42を取り外して液滴生成ノズル部41および補助ノズル部42の洗浄等の作業を容易に行うことができる。なお、噴射ノズルの設計によっては、加速ガス導入口は液滴生成ガス噴射口および純水噴射口よりも基板9側に設けられてもよく、また、液滴生成ノズル部と補助ノズル部とが一体的に形成されてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0043】
図2の噴射ノズル4では、液滴生成ノズル部41が外部混合型の2流体ノズルとされるが、内部混合型の2流体ノズルに補助ノズル部42を取り付けることにより、噴射ノズルが作製されてもよい。ただし、一般的には、外部混合型の2流体ノズルでは、内部混合型の2流体ノズルよりも微小な粒径の液滴が生成可能であるため、外部混合型の2流体ノズルを液滴生成ノズル部41として用いることにより、基板9上における液滴の密度をさらに増大して、基板9上の異物の洗浄効率をより向上することが可能となる。
【0044】
液滴生成ノズル部41では、純水以外の液体が供給されることにより、当該液体の微粒子が生成されてもよく、さらに、液滴生成ノズル部41および補助ノズル部42に供給される気体も、窒素ガス以外であってもよい。もちろん、液滴生成ノズル部41と補助ノズル部42とに異なる気体が供給されてもよい。
【0045】
基板洗浄装置1は、プリント配線基板やフラットパネル表示装置に使用されるガラス基板等、半導体基板以外の様々な基板の洗浄に利用されてよい。なお、基板の種類や大きさ等に合わせて、基板の洗浄時における回転は省略されてもよい。
【0046】
上記実施の形態では、基板を洗浄する基板洗浄装置について説明したが、上述の構成を備える装置は、基板表面へ様々な処理液の液滴を噴射して基板に処理を行う基板処理装置として利用されてよい。例えば、基板処理装置により、基板表面の露光済みのレジスト膜を現像する現像液の塗布が行われる場合、図1に示す噴射ノズル4には現像液、液滴生成ガスおよび加速ガスが供給され、現像液の微粒子が加速ガスと共に基板9に対して噴射されて基板9の現像が行われる。また、基板処理装置は、液体の微粒子の噴射による表面処理等に利用されてもよい。噴射ノズル4を有する基板処理装置では、基板上における液体の微粒子の密度を増大しつつ、微粒子の基板への到達速度が調整可能となるため、微粒子が衝突する際における基板へのダメージを低減しつつ好ましい基板処理を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】基板洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】噴射ノズルを示す断面図である。
【図3】内筒のフランジ近傍を拡大して示す正面図である。
【図4】内筒のフランジ近傍を拡大して示す底面図である。
【図5】基板を洗浄する処理の流れを示す図である。
【図6】比較例の噴射ノズルから噴射される液滴生成ガスの進行方向を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基板洗浄装置
2 基板保持部
4 噴射ノズル
9 基板
41 液滴生成ノズル部
42 補助ノズル部
48 間隙
421 連結部
423 先端部
424 加速ガス導入口
425 流路
474 液滴生成ガス噴射口
S11,S13 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に向けて液体の微粒子を噴射するノズルであって、
気体および液体が導入され、前記液体の微粒子を前記気体と共に噴射する微粒子生成ノズル部と、
前記微粒子生成ノズル部からの前記微粒子の噴射方向に沿って伸びる筒状であり、一方の端部が前記微粒子生成ノズル部の噴射口の周囲を囲むとともに前記微粒子生成ノズル部に接続され、他方の端部が前記微粒子の基板上における被噴射範囲を制限し、前記一方の端部側から前記他方の端部に至る流路内において前記微粒子を加速する加速ガスを前記流路に導入する導入口を有する補助ノズル部と、
を備えることを特徴とするノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のノズルであって、
前記微粒子生成ノズル部が、前記噴射口の外部にて前記気体および前記液体を混合して前記微粒子を生成することを特徴とするノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノズルであって、
前記補助ノズル部の前記一方の端部と前記微粒子生成ノズル部の前記噴射口との間に間隙が設けられ、前記導入口が前記間隙に設けられ、
前記加速ガスが前記導入口から前記間隙を経由して前記流路に導入されることを特徴とするノズル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のノズルであって、
前記補助ノズル部が、前記微粒子生成ノズル部に対して着脱可能であることを特徴とするノズル。
【請求項5】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板を保持する保持部と、
前記保持部にて保持される基板の主面に向けて液体の微粒子を噴射する請求項1ないし4のいずれかに記載のノズルと、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
基板を処理する基板処理方法であって、
基板を保持する工程と、
請求項1ないし4のいずれかに記載のノズルから前記基板の主面に向けて液体の微粒子を噴射する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−130643(P2008−130643A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311213(P2006−311213)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】