説明

ノード・キャパシタンスを増加した半導体メモリ・デバイス

【課題】 ノード・キャパシタンスを増加した半導体メモリ・デバイスを提供することにある。
【解決手段】 集積回路半導体メモリ・デバイス(100)は、ゲートから基板へのキャパシタンスを増加し、それにより、ソフト・エラー率を低減するために、ストレージ・トランジスタのゲートの下に基板(112)の一部分(130)には存在しないBOX層として特徴付けられた第1の誘電体層(116)を有する。第1の誘電体層とは異なる特性を有する第2の誘電体層(132)は、基板のその部分(130)を少なくとも部分的に覆う。このデバイスは、フィン(122)と、ゲートとフィンとの間のゲート誘電体層(124、126)とを含むFinFETデバイスにすることができ、第2の誘電体層はゲート誘電体層より漏れが少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフト・エラーに対する保護のために増加したノード・キャパシタンスを提供する、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)またはラッチなどの集積回路半導体メモリ・デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
RAM(ランダム・アクセス・メモリ)などの半導体メモリ・デバイスは、一般に、それぞれがいくつかのトランジスタから形成されたいくつかのメモリ・セルを含む。一般に、2つのパス・ゲート・トランジスタの間に4つのストレージ・トランジスタが結合され、パス・ゲート・トランジスタのそれぞれには1本のビット線が結合される。各パス・ゲート・トランジスタは1本のワード線に結合された1つのゲート電極を有し、特定のメモリ・セルを選択し、そこから保管データを読み出すために、そのメモリ・セルに関連するワード線上にアドレス信号が供給される。このように選択されたメモリ・セルでは、そのデータは、ビット線を介してパス・ゲート・トランジスタを通ってメモリ・セルのメモリ・ノードから読み出される(またはデータがそこに書き込まれる)。当然のことながら、メモリ・セル内に保管されたデータは、読み出されるまで元のままであることが重要である。
【0003】
集積規模がますます高くなり、メモリ・セル・エレメントの物理的サイズが減少するにつれて、このような保管データを保全するのがますます困難になってきた。この困難はソフト・エラーとして知られるものから発生し、このソフト・エラーは主にメモリ・ノードの1つに当たるアルファ粒子によって引き起こされるか、または回路雑音によって引き起こされる可能性がある。これにより、メモリ・ノード上の電圧が変化する可能性があり、時には、論理1が論理0に変換されるかまたはその逆の変換が行われるほど十分なものになる。所与のアルファ粒子ヒットの電圧変化の量はメモリ・ノード上のキャパシタンスに反比例し、したがって、メモリ・ノード上のキャパシタンスが比較的大きいと、所与のアルファ粒子ヒットの電圧変化の量が低減され、それに対応して、ソフト・エラーの可能性が低減される。
【0004】
集積度がより低く比較的大きいデバイスの場合、ほとんど時間のソフト・エラーを防止するために十分なノード・キャパシタンスが存在した。しかし、チップ上により多くのデバイスを収容するためにメモリ・セルの寸法が縮小されるにつれて、ノード・キャパシタンスはそれに対応して非常に低くなる。加えて、デバイス・サイズにつれて印加電圧Vddも減少し、この場合も、ノード上の電荷蓄積が削減される。その結果、回路雑音および放射線に対する感受性が増し、それにより、容認できないほど高いソフト・エラー率になる可能性がある。
【0005】
したがって、デバイス・サイズをさらに大きくすることに頼らずに、SRAM、ラッチなどのノード・キャパシタンスを増加することが非常に望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の一目的は、従来技術の前述の諸問題を回避する半導体メモリ・デバイスを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、低いソフト・エラー率を可能にするためにノード・キャパシタンスを増加した半導体メモリ・デバイスを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、面積の増加を必要とせずにノード・キャパシタンスを増加した半導体メモリ・デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の諸目的ならびに追加の利点については、以下に記載する本発明の実施において認識されるであろう。その最も広い実施形態では、集積回路半導体メモリ・デバイスは、基板の第1の部分を覆い、基板の第2の部分には存在しない第1の誘電体層を備えた基板を有する。このデバイスは、第1の誘電体層とは異なる特性を有し、基板の第2の部分を少なくとも部分的に覆う第2の誘電体層をさらに有する。ソース領域は第1の誘電体層上の第1のドープ領域内に形成され、ドレイン領域は第1の誘電体層上の第2のドープ領域内に形成され、ゲートは第2の誘電体層の上で第1のドープ領域と第2のドープ領域との間に形成される。本発明の重要な一態様によれば、第2の誘電体層の特性により、基板上の第1の誘電体層の上に形成されたゲートの理論キャパシタンスより大きい、基板に対するゲートのゲート・キャパシタンスが提供される。
【0010】
本発明の有利な一態様では、メモリ・デバイスは、SRAMメモリ・セルであり、有利なことにFETまたは特にFinFETである。
【0011】
好ましい一実施形態では、第1の誘電体層は埋め込み酸化物層であり、第2の誘電体層は埋め込み酸化物層より低い絶縁効果を提供する薄い酸化物層であり、ゲートは基板に容量結合される。
【0012】
他の好ましい実施形態では、このデバイスは、フィンを有するFinFETであり、ゲートとフィンとの間のゲート誘電体層をさらに有し、第2の誘電体層はゲート誘電体層より漏れが少ない。
【0013】
さらに他の好ましい実施形態では、基板は、上位レベルの上向きの第1の表面と、下位レベルの上向きの第2の表面とを有し、第1の誘電体層は第1の表面上に形成された埋め込み酸化物層であり、第2の誘電体層は第2の表面上に形成された薄い酸化物層である。
【0014】
さらに他の好ましい実施形態では、バルク・プロセスにより、第1の誘電体層が埋め込み酸化物層であり、第2の誘電体層がより低い絶縁効果を提供する薄い酸化物層であるレイアウトが形成される。
【0015】
本発明の上記その他の諸目的、特徴、および諸態様は、添付図面に併せて示されている好ましい諸実施形態に関する以下の説明から明らかになるであろう。
【0016】
添付図面に関連して本発明について詳述するが、種々の図面内の同様の要素は最後の2桁が共通する番号によって表されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下の考察では、従来技術および本発明の諸実施形態について、FinFETに関連して説明する。FinFETは、ソース領域とドレイン領域を接続するためにSOIウェハのシリコン・ボディ内に薄い垂直フィンを確定し、それにエッチングを施すことによって形成されたダブルゲートMOSFETである。ポリシリコン・ゲート電極はフィンを囲んで確定される。以下に論ずる諸実施形態では、ダブルゲートは、フィンの右側と左側にあり、フィンの上を通過するゲートの一部分によって接続される。FinFETがオンになると、電流はフィンの左右の垂直エッジに沿ってソースからドレインに流れる。
【0018】
以下の考察および添付図面は、一般にFinFETの完全な構造または特に任意のFinFETを参照するわけではなく、むしろ、本発明を説明するために有用なFinFETの要素のみを概略的に確定し比較するものであることは、当業者にとって自明なことになるであろう。省略または簡略化された要素は以下の考察に影響するものではない。したがって、本発明は、すべての必要な要素を取り入れた実際のメモリ・セル構造に関連して適用されるものであることを理解されたい。
【0019】
したがって、図1には、従来のFinFET10が集積回路チップ上に半導体メモリ・デバイスの1つのエレメントを形成するものとして概略的に図示されており、図2は図示の通り側面断面図である。従来のFinFET10は、その上面14上に埋め込み酸化物(BOX)層16を有する基板12によって形成される。FinFET10は、BOX層16上の第1のドープ領域内に形成されたソース領域18と、BOX層16上の第2のドープ領域内に形成されたドレイン領域20と、ソースおよびドレイン領域18、20を接続する垂直に突出するフィン22とを有する。図2に図示されている通り、フィン22は、BOX層16上にも形成され、薄い酸化物の側壁24、26を含む。加えて、FinFET10は、フィン22の両側に1つずつ、合わせて2つのゲート部分28a、28bを備え、FinFET10を起動するための制御電極として働くゲート28を含む。この構造では、ゲート28の下にあるBOX層16により、ゲート28の面積が実質的に削減されている、より大規模な集積化において不十分なキャパシタンスが提供される。
【0020】
本発明は、メモリ・セル・エレメントの物理的サイズの増加を必要とせずに、この問題に対する解決策を提供するものである。図3および図4は、それぞれ、図1および図2に対応する本発明の第1の好ましい実施形態の平面図および側面断面図である。図3および図4では、FinFET100は、その上面114の第1の部分114a上に埋め込み酸化物(BOX)層116を有する基板112によって形成され、そのBOX層116は確定した特性を有する誘電材料である。FinFET100は、BOX層116上の第1のドープ領域内に形成されたソース領域118と、BOX層116上の第2のドープ領域内に形成されたドレイン領域120と、ソース領域およびドレイン領域118、120を接続する垂直に突出するフィン122とを有する。図4に図示されている通り、フィン122は、BOX層116上にも形成され、薄い酸化物の側壁124、126を含む。
【0021】
本発明によれば、従来技術と区別して、BOX層116は、基板112のうち、FinFET100の下にある部分全体を覆うわけではなく、むしろ、基板112の少なくとも第2の部分130には存在しない。その代わりに、この第2の部分130上には第2の異なる誘電体層132が設けられる。第2の誘電体層132は、BOX層116を形成する誘電材料とは異なる特性、特に、異なる誘電係数または異なる厚さあるいはその両方を有する誘電材料から形成される。FinFET100のゲート128は第2の誘電体層132上に形成され、この第2の誘電体層132はこの実施形態では薄い酸化物層である。
【0022】
本発明では、薄い酸化物層132は、BOX層116に取って代わることによりノード・キャパシタンスを増加し、それにより、ゲート128が基板112に容量結合することができる。すなわち、この薄い酸化物(第2の誘電体)層132により、BOX(第1の誘電体)層116の上に形成されたゲートの理論キャパシタンスより大きい、基板112に対するゲート128のゲート・キャパシタンスが提供される。
【0023】
当然のことながら、基板112には、BOX層116または薄い酸化物層132のいずれにも覆われない他の部分が存在する可能性がある。
【0024】
FinFET100を形成するための方法の1つは、BOX除去のためにブロック・マスクを形成するステップと、次にBOXにエッチングを施すステップとを追加することになるであろう。
【0025】
図5は、他の好ましい実施形態の概略側面断面図である。図5のFinFET200では、第1の実施形態の薄い酸化物の第2の誘電体層132は、ゲート漏れを低減するためにBOX層216を形成する材料とは異なる誘電係数を有するより厚い酸化物層232によって取って代わられる。酸化物層232は、誘電材料を付着させるかまたは成長させ、次に適切な面積になるように誘電材料にマスキングをし、エッチングを施すための追加のプロセス・ステップによって形成することができる。
【0026】
この実施形態およびその他の諸実施形態では、フィンのいずれの側の側壁も有利なことに、ゲートとフィンとの間の薄い誘電体層の形になっており、BOX層116よりも漏れが少ない誘電材料から形成される。
【0027】
図6は、第3の好ましい実施形態を示している。この場合、たとえば、FinFET300を形成する際にエッチングを施すことによりBOX層316を除去すると、ゲート328の下部部分328a、328bが基板312内のへこみ312a、312bに収まるように、エッチングが基板312内に継続される。したがって、基板312は、上位レベルの上向きの第1の表面314aと、下位レベルの上向きの第2の表面314bとを有する。シリコン基板312の追加のエッチングは、追加のプロセスにするかまたはBOXエッチング・プロセスの継続にすることができる。次に、この構造は、下部部分328a、328bの底面および側面に沿った薄い酸化物層332a、332b、ならびにフィン322の側面上の薄い酸化物側壁324、326を使用する。
【0028】
複数のメモリ・セルを形成するためのバルク・プロセスでは、厚い酸化物層を成長させるかまたはゲートの下に誘電体を付着させ、トランジスタ上の誘電材料とは異なる誘電体層を形成してゲートから基板への漏れを低減することは有利である。図7は、ゲート428の下の基板412上にこの第2の誘電体層432を有し、このようなバルク・プロセスによる単一FinFET400を概略的に示している。フィン422は、薄い酸化物の側壁424、426を含む。図8は、FinFETが本発明により形成されたFinFET552の構造を有するFinFET SRAMレイアウト550を示している。
【0029】
代替プロセスでは、酸化物がFinFET上より基板上でより速く成長するように基板にドーピングすることができ、その結果、誘電作用の差、したがって、キャパシタンスの差は酸化物層の厚さの差から発生する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ゲートから基板へのキャパシタンスを増加し、それにより、ソフト・エラー率を低減することが望ましい、集積回路半導体メモリ・デバイス、特に、FETストレージ・トランジスタを有するデバイスの製造に適用可能である。
【0031】
種々の実施形態による特徴を有利に組み合わせて、本発明の範囲内でその他の組み合わせを形成できることは、当業者には理解されるであろう。
【0032】
本発明の上記の説明は、あるタイプの半導体メモリ・デバイスの特定の構造に関して行われたものである。上記の説明は例示のみのためのものであり、本発明の全体的な精神および範囲を逸脱せずに本発明に対して様々な変更および修正を行うことができることは、当業者にとって自明なことになるであろう。したがって、上記の諸実施形態に関連して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲内に含まれる変更および修正を行うことが可能であり、本発明の全容は特許請求の範囲のみによって定義され制限される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来のFinFETの概略平面図である。
【図2】図1の矢印A−Aに沿って取られた従来のFinFETの概略断面図である。
【図3】本発明の第1の好ましい実施形態によるFinFETの概略平面図である。
【図4】図3の矢印B−Bに沿って取られた本発明の第1の好ましい実施形態によるFinFETの概略断面図である。
【図5】本発明の第2の好ましい実施形態によるFinFETの一部分の概略断面図である。
【図6】本発明の第3の好ましい実施形態によるFinFETの一部分の概略断面図である。
【図7】本発明の第4の好ましい実施形態によるFinFETの一部分の概略断面図である。
【図8】本発明によるFinFETを含むSRAMレイアウトの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(112)と、
前記基板の第1の部分(114a)を覆い、前記基板の第2の部分(130)には存在しない第1の誘電体層(116)と、
前記第1の誘電体層とは異なる特性を有し、前記基板の前記第2の部分(130)を少なくとも部分的に覆う第2の誘電体層(132)と、
前記第1の誘電体層上の第1のドープ領域内に形成されたソース領域(118)と、
前記第1の誘電体層上の第2のドープ領域内に形成されたドレイン領域(120)と、
前記第2の誘電体層の上で前記第1のドープ領域と前記第2のドープ領域との間に形成されたゲート(128)と、
を有し、
前記第2の誘電体層の前記特性により、前記基板上の前記第1の誘電体層の上に形成されたゲートの理論キャパシタンスより大きい、前記基板に対する前記ゲートのゲート・キャパシタンスが提供される、集積回路半導体メモリ・デバイス(100)。
【請求項2】
前記デバイスがRAMである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスがSRAMである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスがFETを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記FETがFinFETである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の誘電体層が埋め込み酸化物層(116)であり、前記第2の誘電体層が前記埋め込み酸化物層より低い絶縁効果を提供する薄い酸化物層(132)であり、前記ゲートが前記基板に容量結合される、請求項1または請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記FinFETのフィン(122)が前記埋め込み酸化物層の上に形成される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記デバイスが、フィン(122)と、前記ゲートと前記フィンとの間のゲート誘電体層(124、126)とをさらに有し、前記第2の誘電体層が前記ゲート誘電体層より漏れが少ない、請求項1または請求項5に記載のデバイス。
【請求項9】
前記基板が、上位レベルの上向きの第1の表面(314a)と、下位レベルの上向きの第2の表面(314b)とを有し、前記第1の誘電体層が前記第1の表面上に形成された誘電体層であり、前記第2の誘電体層が前記第2の表面上に形成された誘電体層であり、前記FinFETのフィン(322)が埋め込み層の上に形成される、請求項1または請求項5に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の誘電体層が埋め込み酸化物層(316)であり、前記第2の誘電体層が薄い酸化物層(332a、332b)である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の誘電体層が埋め込み酸化物層(116)であり、前記第2の誘電体層が薄い酸化物層(132)である、請求項8に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−521640(P2007−521640A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512855(P2005−512855)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/039026
【国際公開番号】WO2005/064682
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】