説明

ハイブリッド車両

【課題】 走行中のエンジン再始動時のクランキング制御における消費電力を低減するようにして、制御システムのダウンを防止すること。
【解決手段】 ハイブリッド車両は、電動モードで走行中にバッテリの充電量が所定値を下回って、バッテリ充電のためにエンジン1を再始動する際に、スロットル弁アクチュエータ駆動回路11によりスロットル弁を全閉状態にし、デューティ設定部23により発電電動機2に供給する発電電動機電流を最大発電電動機電流に設定し、このクランクキング開始直後に、クランキング開始時の最大発電電動機電流より低下させるように制御し、クランク軸の回転数がエンジン1を点火する所定の目標回転数に上昇するまで、その発電電動機電流量を所定の勾配で徐々に上げていくように制御する。クランク軸の回転数がエンジン1を点火する所定の目標回転数に上昇した時、スロットル弁の開度を全閉状態から点火開度に開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関し、特に、エンジンによって発電電動機を駆動し、この発電電動機の駆動力により走行するハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電動機とエンジンを直結したハイブリッド車において、交流電動機をエンジンの始動に使用する始動装置が特許文献1に提案されている。この始動装置では、エンジン始動時における負荷を小さくするために、停止後始動前に交流電動機でエンジンを逆方向に回転させ、その後エンジンを回転方向に回転させるようにしている。
【0003】
この始動装置では、停止後始動前に交流電動機でエンジンを逆方向に回転させるため、クランクが助走でき、交流電動機に対する負荷が小さくなる分、発電容量の小さい交流電動機を使用でき、エンジン始動初期の消費電力を低減できる。
【特許文献1】特開平8−35470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のハイブリッド車では、エンジンの始動に必要なトルクを交流電動機が直接発生する必要があり、エンジンの回転数が高回転になったときに交流電動機の消費電力が一番多くなる。また、このハイブリッド車では、走行中にバッテリ出力の低下によりエンジンを再始動することもある。この場合、更にバッテリの出力電力を急激に消費し出力電圧レベルが急激に低下するため、バッテリから電力が供給されている制御システム自体がシステムダウンを起こすという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は係る問題を解決するため、走行中のエンジン再始動時のクランキング制御における消費電力を低減するようにして、制御システムのダウンを防止するハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両は、エンジンによって発電電動機を駆動し、この発電電動機により充電池に充電し、この充電池により車両駆動用電力、システム制御用電力及びエンジン始動用電力を供給するハイブリッド車両において、前記エンジンのクランク軸を回転させる始動手段と、走行中の前記エンジンの始動時に前記始動手段に供給する電力を上限値に基づいて規制する制御手段と、を備える構成を採る。
【0007】
この構成によれば、エンジン再始動時にクランク軸が回転を開始した後の消費電力を低減することができ、システムダウンを防止することができる。
【0008】
本発明のハイブリッド車両は、請求項1記載のハイブリッド車両において、前記制御手段は、前記始動手段に供給する電流をパルス信号のパルス幅により制御する構成を採る。
【0009】
この構成によれば、エンジン再始動時のクランク軸の回転制御を容易に制御することができる。
【0010】
本発明のハイブリッド車両は、請求項2記載のハイブリッド車両において、前記制御手段は、前記クランク軸の回転数を所定の目標回転数まで上昇させる電力を前記始動手段に供給する際に、該電力を所定の勾配で上昇させるように前記パルス信号のパルス幅を制御する構成を採る。
【0011】
この構成によれば、エンジン再始動時にクランキングを開始させる際の電力量を精度良く制御することができる。
【0012】
本発明のハイブリッド車両は、エンジンによって発電電動機を駆動し、この発電電動機により充電池に充電し、この充電池により車両駆動用電力、システム制御用電力及びエンジン始動用電力を供給するハイブリッド車両において、走行中に前記エンジン再始動時に該エンジンのクランク軸を回転させる始動手段と、前記エンジンのシリンダに導入される空気量を調整する吸気量調整手段と、前記エンジン再始動時に、前記吸気量調整手段の開度をエンジン点火に必要な開度より小とする制御手段と、を備える構成を採る。
【0013】
この構成によれば、エンジン再始動時にシリンダ内に供給される空気量を少なくし、圧縮時の負荷を小さくすることができ、少ない電力でクランキングを開始することができ、システムダウンを防止することができる。
【0014】
本発明のハイブリッド車両は、請求項4記載のハイブリッド車両において、前記クランク軸の回転数を検出する検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記検出手段により検出されるクランク軸の回転数が目標回転数に上昇すると、前記吸気量調整手段の開度を前記エンジンを点火させる開度に制御する構成を採る。
【0015】
この構成によれば、エンジン再始動時に必要な空気量を適切なタイミングでシリンダ内に導入されるように制御することができる。
【0016】
本発明のハイブリッド車両は、請求項1又は4記載のハイブリッド車両において、前記始動手段として前記発電電動機を用いる構成をとる。
【0017】
この構成によれば、エンジン再始動時のクランキング制御を容易にすることができる。
【0018】
本発明のハイブリッド車両は、請求項1又は4記載のハイブリッド車両において、前記充電池は、ニッケル系、リチウム系等の二次電池を用いる構成を採る。
【0019】
この構成によれば、エンジン再始動時のクランキング制御に伴う電力制御を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、走行中のエンジン再始動時における消費電力を低減するようにクランキングを制御することができ、制御システムのダウンを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の骨子は、走行中のエンジン再始動時における消費電力を低減するようにクランキングを制御して、制御システムのダウンを防止することである。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1〜図3は本発明を適用した一実施の形態のハイブリッド車両を説明するための図である。図1はハイブリッド車両の制御系の構成を示すブロック図、図2はエンジン再始動時のクランキング制御処理を示すフローチャート、図3は発電電動機電流とパルス信号の関係を示す図である。
【0024】
本実施の形態のハイブリッド車両は、シリーズ型ハイブリッド車両であり、エンジンによって発電電動機を駆動し、この発電電動機によりバッテリを充電し、このバッテリにより駆動モータ駆動用電力、制御用電力及びエンジン始動用電力を供給するように構成されている。また、本実施の形態のハイブリッド車両は、バッテリとしてニッケル系、リチウム系等の二次電池を用いるものとする。
【0025】
まず、図1のブロック図を参照してハイブリッド車両の制御系の構成を説明する。エンジン1は、発電電動機2によりクランク軸が駆動されて始動され、スロットル弁アクチュエータ12によりシリンダ内に導入される空気量が調整される。発電電動機2は、ドライバ回路24から供給される駆動電流により駆動されてエンジン1のクランク軸を始動し、エンジン1により駆動されて発電し、充電電流をバッテリに供給する。
【0026】
メインスイッチ3は、ハイブリッド車両を始動/停止する際に操作するスイッチである。バッテリ負端子4a及びバッテリ正端子4bは、図示しないバッテリの入出力端子であり、ドライバ回路24と駆動回路27に駆動電流を出力するとともに、発電電動機2から充電電流が入力される。バッテリ電流検出器5は、バッテリ正端子4bとドライバ回路24の間に流れる電流を検出し、その検出信号をバッテリ電流検出部6に出力する。バッテリ電流検出部6は、バッテリ電流検出器5から入力される検出信号をバッテリ電流値に変換してバッテリ容量計算部7と発電指令値計算部8に出力する。
【0027】
バッテリ容量計算部7は、バッテリ電流検出部6から入力されるバッテリ電流値に基づいてバッテリ容量SOC(State of Charge )を計算し発電指令値計算部8に出力する。
【0028】
発電指令値計算部8は、バッテリ容量計算部7からSOC信号が入力されると、バッテリ電流検出部6から入力されるバッテリ電流値に基づいて発電電力量を計算し、発電電力指令値を発電時発電指令値計算部16とスロットル弁開度指令値計算部10に出力する。メモリ9は、発電電力指令値−スロットル開度指令値テーブルを記憶し、メインスイッチ3のON信号を受けてテーブルの設定内容をスロットル弁開度指令値計算部10に出力する。
【0029】
スロットル弁開度指令値計算部10は、発電指令値計算部8から入力される発電電力指令値と、回転数計算部20から入力される発電電動機回転数とに基づいて、メモリ9に記憶された発電電力指令値−スロットル開度指令値テーブルからスロットル開度指令値を読み出して駆動信号を生成してスロットル弁アクチュエータ駆動回路11に出力する。
【0030】
スロットル弁アクチュエータ駆動回路11は、スロットル弁開度指令値計算部10から入力される駆動信号に基づいてスロットル弁アクチュエータ12に駆動電流を出力し、スロットル弁の開度を調整する。スロットル弁アクチュエータ12は、スロットル弁アクチュエータ駆動回路11から入力される駆動電流によりスロットル弁の開度を変更して、エンジン1のシリンダに導入する空気量を調整する。
【0031】
メモリ13は、駆動開始時における発電電動機初期電流指令値を記憶する。メモリ14は、クランキング時指令回転数を記憶する。メモリ15は、発電指令値に対応する回転指令値を示す発電指令値−回転数指令値テーブルを記憶する。発電時発電指令値計算部16は、発電指令値計算部8から入力される発電電力指令値に基づいて、メモリ15に記憶された発電指令値−回転数指令値テーブルから回転数指令値を読み出して発電時発電指令値を計算して回転数PI制御部17に出力する。
【0032】
回転数PI制御部17は、発電時発電指令値計算部16から入力される発電時発電指令値と、回転数計数部20から入力される発電電動機回転数とに基づいて、メモリ14に記憶されたクランキング時指令回転数が設定された発電電動機回転数指令値を読み出して、クランク軸の回転数を所定の勾配で徐々に上げていくように発電電動機電流指令値を計算してデューティPI計算部22に出力する。
【0033】
メモリ18は、回転数に対応する電流最大値が定義された回転数−電流最大値テーブルを記憶する。ロータリエンコーダ19は、発電電動機2の回転を検出し、エンコーダ検出信号を回転数計算部20に出力する。回転数計算部20は、ロータリエンコーダ19から入力されるエンコーダ検出信号に基づいて発電電動機2の回転数を計算し、発電電動機回転数を発電電動機電流最大値計算部21に出力する。
【0034】
発電電動機電流最大値計算部21は、回転数計算部20から入力される発電電動機回転数に基づいて、メモリ18に記憶された回転数−電流最大値テーブルから回転数に応じた電流最大値を読み出して発電電動機電流最大値を計算してデューティPI計算部22に出力する。
【0035】
デューティPI計算部22は、エンジン再始動時のクランキング前に、メモリ13に記憶された発電電動機初期電流値を読み出して、発電電動機初期電流値に対応するデューティ指令値を計算してデューティ設定部23に出力する。また、デューティPI計算部22は、エンジン再始動時のクランキング時に、回転数PI制御部17から入力される発電電動機電流指令値に基づいてデューティ指令値を計算してデューティ設定部23に出力する。また、デューティPI計算部22は、エンジン再始動時のクランク軸回転開始後に、発電電動機電流最大値計算部21から入力される発電電動機電流最大値と、電流検出部26から入力される発電電動機電流検出値とに基づいて、デューティ指令値を計算してデューティ設定部23に出力する。
【0036】
デューティ設定部23は、デューティPI計算部22から入力されるデューティ指令値に基づいて、駆動信号を生成してドライバ回路24内の各FETを駆動制御する。ドライバ回路24は、発電電動機2の各相に対応して接続されたFETにより構成され、デューティ設定部23から各FETに入力される駆動信号により駆動電流を生成して、発電電動機2の発電動作及び電動動作を駆動制御する。
【0037】
電流検出器25は、ドライバ回路24と発電電動機2とを接続する3線路のうち2線路に接続され、各線路に流れる電流を検出し、その各電流検出信号を電流検出部26に出力する。電流検出部26は、電流検出器25から入力される2線路の各検出信号に基づいて発電電動機電流検出値をデューティPI計算部22に出力する。
【0038】
駆動回路27は、バッテリ負端子4aとバッテリ正端子4bに接続され、バッテリから供給される電流によりモータ駆動電流を生成して駆動モータ28を駆動制御する。駆動モータ28は、ハイブリッド車両の駆動輪を駆動するためのモータであり、駆動回路27から入力されるモータ駆動電流により駆動トルクを発生して駆動輪を駆動する。
【0039】
本実施の形態のハイブリッド車両は、シリーズ型であるため、走行中にバッテリ充電量SOCが予め設定された下限値を下回ると、エンジン1を再始動して発電電動機2によりバッテリの充電動作を開始する。このとき、発電電動機2の駆動軸と連結されたエンジン1のクランク軸の回転を開始させるため、発電電動機2に供給する駆動電流と、スロットル弁アクチュエータ12の開度を制御する。これらの制御について図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0040】
本実施の形態のハイブリッド車両は、電動モードで走行中にバッテリ容量をバッテリ容量計算部7により検出し、バッテリ容量が予め設定した下限値を下回ると、SOC信号を発電指令値計算部8に出力する。図2のステップS201において、発電指令値計算部8は、バッテリ容量計算部7からのSOC信号の入力の有無によりエンジンを始動するか否かを判定する。発電指令値計算部8は、バッテリ容量計算部7からSOC信号が入力されるとエンジンを始動すると判定する。図示しない信号によって指示される始動時の開度がスロットル弁開度指令値計算部10に出力される。
【0041】
スロットル弁開度指令値計算部10は、始動時のスロットル開度をスロットル弁アクチュエータ駆動回路11に出力する。
【0042】
スロットル弁アクチュエータ駆動回路11は、スロットル弁開度指令値計算部10から入力された駆動信号に基づいて駆動電流を生成してスロットル弁アクチュエータ12に出力する。スロットル弁アクチュエータ12は、スロットル弁アクチュエータ駆動回路11から入力される駆動電流によりスロットル弁を全閉する。このように、エンジン再始動時にスロットル弁を全閉にすることにより、クランキング時にエンジン1のシリンダ内に供給される空気量を最小にして、クランク軸の回転を開始する際の圧縮負荷を軽減することができる。
【0043】
次いで、ステップS203において、発電指令値計算部8は、スロットル弁アクチュエータ駆動回路11から出力される駆動電流量に基づいて、スロットル弁が全閉になったか否かを判定する。発電指令値計算部8が、スロットル弁が全閉になっていないと判定した場合は、ステップS202に戻って上記発電電力指令値の出力を繰り返す。また、発電指令値計算部8が、スロットル弁が全閉になったと判定した場合は、ステップS204に移行する。
【0044】
ステップS204において、発電指令値計算部8は、図示しない点火CDI(点火コイル)をオンさせる。次いで、ステップS205において、デューティPI計算部22は、メモリ13に記憶された発電電動機初期電流値を読み出して、発電電動機初期電流値に対応する発電電動機最大駆動電流に相当するデューティ指令値を計算してデューティ設定部23に出力する。デューティ設定部23は、デューティPI計算部22から入力されたデューティ指令値に基づいて、最大駆動電流に相当する駆動信号を生成してドライバ回路24内の各FETを駆動制御する。発電電動機2は、最大駆動電流で駆動されることにより、その駆動軸に連結されたエンジン1のクランク軸の回転を開始する。
【0045】
次いで、ステップS206において、回転数計算部20は、ロータリエンコーダ19から入力されるエンコーダ検出信号に基づいてクランク軸が回転を開始したか否かを判定する。回転数計算部20が、クランク軸が回転を開始していないと判定した場合はステップS205に戻り、クランク軸が回転を開始したと判定した場合は、ステップS207に移行する。
【0046】
ステップS207において、回転数計算部20は、ロータリエンコーダ19から入力されるエンコーダ検出信号に基づいて発電電動機2の所定時間当たりの回転数を計算し発電電動機回転数として発電電動機電流最大値計算部21に出力する。次いで、ステップS208において、発電電動機電流最大値計算部21は、回転数計算部20から入力される発電電動機回転数に基づいて、メモリ18に記憶された回転数−電流最大値テーブルから対応する電流最大値を読み出し、回転数毎に消費される電力量を計算し発電電動機電流最大値としてデューティPI計算部22に出力する。
【0047】
次いで、ステップS209において、回転数PI制御部17は、クランク時の回転開始後、メモリ14に記憶されたクランキング時指令回転数が設定された発電電動機回転数指令値を読み出して、クランク軸の回転数を所定の勾配で徐々に上げていくように発電電動機電流指令値を計算してデューティPI計算部22に出力する。
【0048】
デューティPI計算部22は、発電電動機電流最大値計算部21から入力される発電電動機電流最大値と、クランク軸の回転により電流検出部26から入力される発電電動機電流検出値と、回転数PI制御部17から入力される発電電動機電流指令値とに基づいて、クランク軸を所定の目標回転数まで所定の勾配で徐々に上げていくようにデューティ指令値を計算してデューティ設定部23に出力する。
【0049】
デューティ設定部23は、デューティPI計算部22から入力されるデューティ指令値に応じてデューティ比を設定した駆動信号を生成してドライバ回路24内の各FETを駆動制御する。この駆動制御により、発電電動機2に供給される駆動電流量は、クランク軸が所定の目標回転数に上昇するまで所定の勾配で徐々に上昇される。
【0050】
ここで、デューティ比の設定と、発電電動機電流との対応関係を図3に示す。図3(a)は、発電電動機2の各相に流れる発電電動機電流の変化を示し、図3(b)は、その発電電動機電流の変化に対応してデューティ設定部23で設定されるパルス信号T1〜T4のデューティ比t1〜t4の変化を示している。このように、回転数PI制御部17、デューティPI計算部22及びデューティ設定部23によりパルス信号のデューティ比を制御して、発電電動機2に供給する駆動電流量を制御することにより、駆動電流量制御を容易にすることができる。
【0051】
以上、ステップS205〜ステップS209のように、クランク軸の回転開始時は、発電電動機2に最大駆動電流を供給するように制御することにより、クランク軸の回転開始を容易にする。次いで、クランク軸の回転開始直後は、発電電動機2に供給される駆動電流量は、回転数PI制御部17により計算される発電電動機電流指令値により、回転開始時よりも低下される。次いで、クランク軸が所定の目標回転数に上昇するまで発電電動機2に供給される駆動電流量は、所定の勾配で徐々に上げていくように制御される。
【0052】
次いで、ステップS210において、電流検出部26は、電流検出器25から入力される電流検出信号に基づいて発電電動機電流検出値をデューティPI計算部22に出力する。次いで、ステップS211において、デューティPI計算部22は、電流検出部26から入力される発電電動機電流検出値に基づいて、クランク軸の回転数がエンジン1を点火する所定の目標回転数に達したか否かを判定する。デューティPI計算部22が、クランク軸の回転数がエンジン1を点火する所定の目標回転数に達していないと判定した場合は、ステップS207に戻って、上記ステップS207〜ステップS210の処理を繰り返し、クランク軸の回転数がエンジン1を点火する所定の目標回転数に達していると判定した場合は、ステップS212に移行する。
【0053】
次いで、ステップS212において、回転数PI制御部17は、発電電動機2の回転数を所定回転数に維持するため発電電動機電流指令値を固定してデューティPI計算部22に出力する。次いで、ステップS213において、電流検出部26は、電流検出器25から入力される電流検出信号に基づいて発電電動機電流検出値をデューティPI計算部22に出力する。
【0054】
次いで、ステップS214において、デューティPI計算部22は、回転数PI制御部17から入力される発電電動機電流指令値と、電流検出部26から入力される発電電動機電流検出値に基づいて、発電電動機2の回転数を所定回転数に維持するためのデューティ指令値を計算してデューティ設定部23に出力する。
【0055】
次いで、ステップS215において、デューティ設定部23は、デューティPI計算部22から入力されたデューティ指令値に応じてデューティ比を設定した駆動信号を生成してドライバ回路24内の各FETを駆動制御する。この駆動制御により、発電電動機2に供給される駆動電流量は、所定回転数に維持するように制御される。
【0056】
次いで、ステップS216において、スロットル弁開度指令値計算部10は、メモリ9に記憶された発電電力指令値−スロットル開度指令値テーブルから点火開度指令値を読み出し、スロットル弁を点火開度まで開くための駆動信号を計算してスロットル弁アクチュエータ駆動回路11に出力する。
【0057】
スロットル弁アクチュエータ駆動回路11は、スロットル弁開度指令値計算部10から入力された駆動信号に基づいて駆動電流を生成してスロットル弁アクチュエータ12に出力する。スロットル弁アクチュエータ12は、スロットル弁アクチュエータ駆動回路11から入力される駆動電流によりスロットル弁を点火開度まで開く。図示しないスイッチにより点火プラグをONとする(ステップS217)。
【0058】
次いで、ステップS218において、デューティPI計算部22は、電流検出部26から入力される発電電動機電流検出値に基づいて、その発電電動機電流の流れる向きの変化によりエンジン1が点火したか否かを判定する。デューティPI計算部22は、エンジン1が点火していないと判定した場合はステップS212に戻り、エンジン1が点火したと判定した場合は、本処理を終了する。
【0059】
以上のように、本実施の形態のハイブリッド車両では、電動モードで走行中にバッテリの充電量が所定値を下回って、バッテリ充電のためにエンジン1を再始動する際に、スロットル弁を全閉状態にして、発電電動機2に供給する発電電動機電流を最大発電電動機電流に設定した。そして、このクランクキング開始直後に、発電電動機2に供給する発電電動機電流量を、上限値を超えないように制御し、クランク軸の回転数がエンジン1を点火する所定の目標回転数に上昇するまで、その発電電動機電流量を所定の勾配で徐々に上げていくように制御した。また、クランク軸の回転数がエンジン1を点火する所定の目標回転数に上昇した時、スロットル弁の開度を全閉状態から点火開度に一挙に開いた。
【0060】
このため、本実施の形態のハイブリッド車両は、電動モードで走行中のバッテリ充電のためのエンジン再始動時に、クランキング動作とバッテリ消費電力との対応関係を考慮しながら発電電動機に供給する駆動電流量とスロットル弁の開度を適宜制御したため、バッテリ出力電圧が下限値よりも低下してシステムをダウンさせるという事態を回避することができる。
【0061】
また、本実施の形態のハイブリッド車両は、エンジン再始動時にスロットル弁を全閉にすることにより、クランキング時にエンジン1のシリンダ内に供給される空気量を最小にして、クランク軸回転開始時の圧縮負荷を軽減することができ、発電電動機2に対する負荷も軽減することができ、従来よりも少ない電力でクランキングを開始させることができる。なお、エンジン再始動時のスロットル弁の開度は、必ずしも全閉にする必要はなく、再始動直前の開度よりも閉じる方向に調整すれば、同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、本実施の形態のハイブリッド車両は、クランクキング開始から点火までの間において、発電電動機2に供給する電力の上限値を設けて、クランク軸の回転数がエンジン1を点火する所定の目標回転数に上昇するまで、その発電電動機電流量を所定の勾配で徐々に上げていくように制御したため、クランクキング開始直後のバッテリ出力電圧の急激な低下を確実に防止することができる。
【0063】
また、本実施の形態のハイブリッド車両は、エンジン再始動時にクランク軸の始動手段として発電電動機2を用い、発電電動機2に供給する発電電動機電流量をパルス信号のデューティ比により制御するようにしたため、クランキング時にクランク軸の回転数に応じて発電電動機2に供給する発電電動機電流量を容易に制御することができる。また、本実施の形態のハイブリッド車両は、バッテリとしてニッケル系、リチウム系等の二次電池を用いるようにしたため、満充電状態ではない所定の充電範囲でも、上記発電電動機に供給する駆動電流量を容易に制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るハイブリッド車両は、走行中のエンジン再始動時のクランキング制御における消費電力を低減することを可能にし、ハイブリッド車両用のエンジン制御装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御系の構成を示すブロック図
【図2】本実施の形態のエンジン再始動時のクランキング制御を示すフローチャート
【図3】本実施の形態のクランキング制御時の発電電動機電流とパルス信号のデューティ比の対応関係を示す図
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン
2 発電電動機
3 メインスイッチ
4a バッテリ負端子
4b バッテリ正端子
5 バッテリ電流検出器
6 バッテリ電流検出部
7 バッテリ容量計算部
8 発電指令値計算部
9、13〜15、18 メモリ
10 スロットル弁開度指令値計算部
11 スロットル弁アクチュエータ駆動回路
12 スロットル弁アクチュエータ
16 発電時発電指令値計算部
17 回転数PI制御部
19 ロータリエンコーダ
20 回転数計算部
21 発電電動機電流最大値計算部
22 デューティPI計算部
23 デューティ設定部
24 ドライバ回路
25 電流検出器
26 電流検出部
27 駆動回路
28 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって発電電動機を駆動し、この発電電動機により充電池に充電し、この充電池により車両駆動用電力、システム制御用電力及びエンジン始動用電力を供給するハイブリッド車両において、
前記エンジンのクランク軸を回転させる始動手段と、
走行中の前記エンジンの始動時に前記始動手段に供給する電力を上限値に基づいて規制する制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御手段は、前記始動手段に供給する電流をパルス信号のパルス幅により制御することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記制御手段は、前記クランク軸の回転数を所定の目標回転数まで上昇させる電力を前記始動手段に供給する際に、該電力を所定の勾配で上昇させるように前記パルス信号のパルス幅を制御することを特徴とする請求項2記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
エンジンによって発電電動機を駆動し、この発電電動機により充電池に充電し、この充電池により車両駆動用電力、システム制御用電力及びエンジン始動用電力を供給するハイブリッド車両において、
走行中に前記エンジン再始動時に該エンジンのクランク軸を回転させる始動手段と、
前記エンジンのシリンダに導入される空気量を調整する吸気量調整手段と、
前記エンジン再始動時に、前記吸気量調整手段の開度をエンジン点火に必要な開度より小とする制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
前記クランク軸の回転数を検出する検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記検出手段により検出されるクランク軸の回転数が目標回転数に上昇すると、前記吸気量調整手段の開度を前記エンジンを点火させる開度に制御することを特徴とする請求項4記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記始動手段として前記発電電動機を用いることを特徴とする請求項1又は4記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記充電池は、ニッケル系、リチウム系等の二次電池を用いることを特徴とする請求項1又は4記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−74765(P2007−74765A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−9857(P2004−9857)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】