説明

ハンディナースコールシステム

【課題】携帯通信端末を簡単な手段でスリープモード状態に設定できるとともに、スリープモード状態においては、電源断または電波の発信を禁止し、患者等の身体に直接接して看護処置を行なうような場合にも、患者の身に電波障害による不慮の事故が発生しないようにすることを課題とする。
【解決手段】RFタグの接近を検知することにスリープモード状態に自動的に遷移して、電源断または電波の発信を停止する携帯通信端末を有し、主装置において、携帯通信端末からスリープモードの開始信号および終了信号を受信することにより、携帯通信端末の着信可否状態を管理できるとともに、2種類のマナーモードを切替えるためのマナーモード種類切替手段とを有し、第1のマナーモードに設定されたときは着信音のみを規制する通常のマナーモードで動作し、第2のマナーモードに設定されたときは電源が断または電波の発信を停止できるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や介護施設で、看護師等の医療スタッフが持つ携帯通信端末で患者と呼出通話ができるハンディナースコールシステムに係り、特に、送信電波もしくは電源供給を停止させるためのスリープモードの設定が容易かつ確実にできるハンディナースコールシステムに関する。
【0002】
なお、病院や介護施設において連絡業務用として使用される携帯通信端末としては、医療機器や心臓ペースメーカに与える影響を考慮して、一般的には、PHS(簡易型携帯電話:Personal Handy-phone System)が使用されている。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、待ち受け時や通話時に、何らキー操作や着信等がない状態で、あらかじめユーザによって設定された時間が経過したかどうかを計数する。そして、その設定時間が経過した場合、バックライト部とLCD表示部への電源供給を停止するスリープモードへ移行させるようにした携帯通信端末が記載されている。
【0004】
特許文献2には、携帯無線端末を手動でマナーモードに切換え、マナーモード時には携帯無線端末の電源をオフさせるようにした携帯無線システムが記載されている。
【0005】
【特許文献1】・・特開2002−94658
【特許文献2】・・特開2003−333171
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今般、病院や福祉施設内における看護師等と患者との間の連絡システムとしてハンディナースコールシステムの普及が進んでいる。そして、看護師等は病棟内、施設内のどこにいても、携帯通信端末で患者から直接的に呼出され、これに対応できるようになった。このような状況は、便利な反面、時として、看護業務の支障となることもある。すなわち、今まさに看護処置中で手を離せない状態であろうがなかろうが、患者等からのコールは、携帯通信端末に着信する。患者にコールされれば何らかの応答をすることが看護師等の義務であり、処置中の看護業務を一時的に中断し、新しく着信した別の患者の呼出に応答せざるを得ない。結果、看護処置に集中できず、業務は停滞する。
【0007】
特許文献1に記載されたものは、キー操作後、基準時間がたったら一律にスリープモードに設定できるが、タイマー制御のため、看護業務の進行状況に合わせて臨機応変にスリープモードに設定することはできない。また、特許文献2に記載されたものは、マナーモードに切り替えるには、手動で切換える必要があるか、小さいボタンの操作は、片手が塞がっている場合にはきわめてやりにくい。
【0008】
本発明の1つは、看護処置開始直前に携帯通信端末に手をかざすというような簡単、確実な方法で、これをスリープモード状態に設定できることを課題とする。
【0009】
本発明の他の1つは、スリープモードに設定することにより、電波送信機能または電源供給を停止し、ペースメーカを装着した患者の身体に直接接して看護処置を実施するような場合にも、患者に電波障害による不慮の事故が発生しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、RFタグ信号の接近を検知することにスリープモードに自動的に遷移し、電源断または電波の発信を停止する携帯通信端末を有し、主装置においては、携帯通信端末からスリープモードの開始信号および終了信号を受信することにより、携帯通信端末の着信可否状態を管理できるようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の1つは、第1のマナーモードと第2のマナーモードからなるマナーモード設定手段と、2種類のマナーモードを切替えるためのマナーモード機能種類手段とを有し、第1のマナーモードに設定されたときは着信音のみを規制する通常のマナーモードで動作し、第2のマナーモードに設定されたときは電源が断または電波の発信を停止できるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リストバンドなどを使ってRFタグを予め手首に固定しておけば、看護処置を開始する直前に手首のRFタグを携帯通信端末に近づけるだけで、携帯通信端末をスリープモード状態に設定できるので、設定作業は極めて簡単であり、ボタン操作などにつきもの誤押しなどの問題が発生せず、確実にスリープモードに設定変更できる。
【0013】
また、本発明によれば、スリープモードに設定することにより、電源断または電波の送受信が自動停止するため、心臓ペースメーカを装着した患者を抱きかかえるなど、患者の身体に直接接して介護を行なうような場合にも電波障害の問題を発生せず極めて安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例を説明する。
【0015】
図1は本発明のハンディナースコールシステムのシステム構成図である。
3は、患者のベッドサイドに設置されるナースコール子機、2は各病室の出入り口に設置される個別情報廊下灯、1は、ナースステーションなどに設置されるナースコール親機、4は、看護師等が携帯する携帯通信端末6の基地局である無線基地局5を制御する主装置であり、ナースコール親機1に接続される。
【0016】
システム全体の動作を説明する。
まず、ナースコール子機3の握りボタンを押すと、個別情報廊下灯2を介してナースコール親機1にナースコール信号が送られる。ナースコール信号は、さらに、ナースコール親機1を介して主装置4に送られ、無線基地局5を介して携帯無線端末6に送信される。
【0017】
ナースコール親機1および携帯通信端末6は、ナースコール信号を受信すると、それぞれから、呼出音(着信音)がなり、ナースコール子機3の位置を示す病室番号、ベッド番号のほかに必要に応じて呼出した患者の情報(名前、救護区分、担当医師など)が表示される。
看護師等が、ナースコール親機1または携帯通信端末6で応答すれば、呼出音(着信音)が停止し、いずれか先に応答したほうがナースコール子機3と通話できる。
【0018】
図2は本発明の1実施例を示す携帯通信端末の回路ブロック図である。
本実施例では、制御部7を中心に、他の機能部をこれに接続する構成となっている。この制御部7は、接続されている各機能部から制御信号を受信したり、反対に制御信号を送って各機能部を制御したりするもので、CPUを含んでいる。アンテナ8は、PHS電波を送受信するアンテナであり、無線制御部9を介して制御部7に接続されている。
【0019】
10は近接したRFタグ11の存在を検出するタグ信号検出部であり、スリープモード設定手段12を介して制御部7に接続されている。
【0020】
13はマナーモード設定手段であり、マナーモード種類切替手段14を介して制御部7に接続されている。マナーモード種類切替手段14は、第1マナーモード14aまたは第2マナーモード14bのいずれか1つに選択的に切替るもので、両モードの出力は、それぞれ、制御部7に接続されている。
【0021】
携帯電話において、「マナーモード」とは、一般的に着信時に音を鳴らさずにバイブレータで振動を発する動作モードを指す用語として知られている。実施例における第1マナーモード14aは、この一般的に知られているマナーモードに対応し、制御部7のマナーモード入力に接続してある。
【0022】
他方の第2マナーモード14bは、着信音禁止に加えて電源断の動作モードに遷移させるためのものであり、その出力はスリープモード設定手段12の出力とオア接続の後、制御部7のスリープモード入力に接続してある。
【0023】
15は、サウンダ15aおよびバイブレータ15bを有する着信報知部であり、着信制御部16を介して制御部7に接続されている。
【0024】
17はキー操作制御部であり、数字キーのほかに通話キー、終話キー、電源キー等を含み、キー操作信号を受け付けると、これを制御部7へ伝送する。
【0025】
また、制御部7には、通話に使用されるマイク19、スピーカ20を制御する通話制御部18や、ナースコールした患者の病室番号、ベッド番号、患者名などの呼出データ等を表示するLCD形の表示部22が接続されている。
【0026】
21は、RAM、ROMなどで構成される記憶部であり、携帯通信端末の全体動作を制御するためのプログラムや、応答メッセージや画面データなどを記憶する。
23は、携帯通信端末を部分的または全体的に動作させるための電源であり、一般には充電式電池が主として使用される。
【0027】
次に図2により、携帯通信端末の動作を説明する。
まず、ナースコール子機からの呼出が発生すると、呼出信号は、所定の経路を通って無線基地局5に達する。この無線基地局5から送信される呼出電波は、携帯通信端末6のアンテナ8で受信される。この受信電波は、無線制御部9を介して制御部7に伝送される。制御部7は、呼出信号を受信すると、受信内容を所定の規則に従って解析することにより、呼出したナースコール子機の室番、ベッド番号、患者名などを取得し、表示部22に必要な項目を表示する。
【0028】
同時にマナーモードの設定条件に応じた着信制御信号を、着信制御部16を介して着信報知部15に送信する。その結果、マナーモード非設定時には、着信報知部15のサウンダ15aを鳴動させる。反対に、マナーモード設定時には、設定されているマナーモード条件に対応する動作を行なわせる。すなわち、第1マナーモード設定時には、バイブレータを振動させる。
なお、第2マナーモード設定時には、後述のように、携帯通信端末6全体が非動作であり、主装置4もまた、当該携帯通信端末6に対する呼出操作を実行しない、ので無反応状態を維持する。
【0029】
次にRFタグ11の検出動作に続く手順について述べる。
なお、本発明で使用するRFタグ11は、接触または非接触の近接センサーとしての使用に適する電磁結合方式、電磁誘導方式のいずれかの方式のRFタグを使用することが望ましい。
【0030】
RFタグ11の固定手段の1つは、手首に巻きつけるリストバンドにRFタグ11を適切な方法で固定する方法である。他の固定手段としては、看護師等の着衣にある1つのポケットを選び、この特定ポケットにRFタグ11を縫い付ける方法である。前者の場合には、RFタグ付きリストバンドを巻きつけた手首を携帯通信端末に近づける、あるいはかざすことにより、タグ信号検出部10を作動させる。後者の場合は、携帯通信端末をタグを固定した特定のポケットに収納することにより、タグ信号検出部10を作動させる。
【0031】
ところで、タグ信号検出部10の感度はRFタグ11が例えば3cm以下に近接したときにRFタグ11の存在を検出できるように設定されているものとする。
今、RFタグ11がタグ信号検出部10に対して3cm以下の距離に近づくと、タグ信号検出部10においてRFタグ11の存在が検出される。その検出信号はスリープモード設定手段12に出力され、スリープモード設定手段12をスリープモードにセットする。セット信号はそのまま制御部7のスリープモード入力に出力される。
【0032】
制御部7は、スリープモード設定手段12からスリープモードセット信号を受け取ると、その制御プログラムの作用で、スリープモード開始信号を発生し、これを無線制御部9、アンテナ8を介し、電波として外部に送信する。これを無線基地局5で受信し、主装置4へ送信する。スリープモード開始信号を受信した主装置4内での処理は後述する。
【0033】
制御部7は、スリープモード開始信号の送信が完了すると、引き続いて、電源23を制御して、携帯通信端末の各機能部に対する電源供給を選択的に遮断する。これに伴い、携帯通信端末の主要な電源消費部である、通話制御部18、着信報知部15、表示部22、無線制御部9等への電源の供給は遮断される。結果として、無線電波の送受信機能は停止し、表示部22の表示も消える。
【0034】
なお、第2マナーモード14bがセットされているときも、その出力は、スリープモード設定手段12と同様、制御部7のスリープモード入力に接続されているので、携帯通信端末を上記のスリープモードにセットし、結果として、携帯通信端末の電源を遮断し、無線電波の送受信機能を停止させる。
【0035】
この電源断の状態から電源を再投入する方法としては、公知の方法を使用することができる。たとえば、キー操作部17の特定キー、例えば電源キーを操作することにより電源が投入されるようにすることができる。あるいは、RFタグ11をタグ信号検出部10に近接させ、タグ信号検出部10がRFタグ11を検出したら、電源が再投入されるように構成することもできる。
【0036】
なお、この電源再投入信号を検出したら、制御部7は、電源23を制御し、携帯通信端末の各部に電源を供給し動作状態に復帰するとともに、スリープモード終了信号を無線制御部9、アンテナ8を介して送信し、その後、スリープモード設定手段12等、必要なイニシャライズ処理を実行する。後述のように、主装置4内においては、このスリープモード終了信号を受信すると、これに同期して、所定のデータ書換え処理を実行し、当該携帯通信端末に対する送受信機能を回復させる。
【0037】
次に、主装置4の動作について説明する。
主装置4は、複数のナースコール親機1に接続される局線収容ボード24と、複数の無線基地局5に接続される基地局収容ボード26と、ナースコール子機3および携帯通信端末6の相互間の呼出、通話、終話の交換動作を制御する交換処理制御部25とを備えている。27は交換処理制御部など主装置全体の動作をコントロールするプログラムなどを記憶する記憶装置であり、その一部に、着信禁止テーブル27aが記憶されている。
【0038】
前述したように、携帯通信端末6からスリープモード開始信号が送信されると、この開始信号は、無線基地局5、基地局収容ボード26を介して交換処理制御部25に送信される。交換処理制御部25は、スリープモード開始信号を受信すると、送信した携帯通信端末の端末IDを解読する。次いで、着信禁止テーブル27aにおいて、該当する端末IDを検索し、その着信フラグを禁止状態に設定する。
【0039】
交換処理制御部25は、ナースコール子機3からの呼出信号を受信したら、まず、着信禁止テーブル27aを参照し、禁止フラグのたっていない携帯通信端末の端末IDを取得するとともに、取得した端末IDを有する携帯通信端末に対する呼出信号を基地局収容ボード26を介して無線基地局5に送信し、携帯通信端末6を呼出す。スリープモード状態の携帯通信端末を呼出すことはない。
【0040】
次に、主装置4の交換処理制御部25において、スリープモード状態の携帯通信端末6から発信されたスリープモード終了信号を受信すると、着信禁止テーブル27aを参照し、該当する端末IDの着信禁止フラグをリセットする。
このリセットにより、当該携帯通信端末は使用禁止状態が解除され、ナースコール子機3との間の呼出、通話が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の1実施例におけるハンディナースコールシステムのシステム構成図。
【図2】本発明の1実施例における携帯通信端末の回路ブロック図。
【図3】本発明の1実施例における主装置の機能ブロック図。
【符号の説明】
【0042】
1 ナースコール親機
2 個別情報廊下灯
3 ナースコール子機
4 主装置
5 無線基地局
6 携帯通信端末
7 制御部
8 アンテナ
9 無線制御部
10 タグ信号検出部
11 RFタグ
12 スリープモード設定手段
13 マナーモード設定手段
14 マナーモード種類切替手段
14a 第1マナーモード
14b 第1マナーモード
15 着信報知部
15a サウンダ
15b バイブレータ
16 着信制御部
17 キー操作制御部
18 通話制御部
19 マイク
20 スピーカ
21 記憶部
22 表示部
23 電源
24 局線収容ボード
25 交換処理制御部
26 基地局収容ボード
27 記憶装置
27a 着信禁止テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のベッドサイドに設置される複数のナースコール子機と、前記ナースコール子機との間で相互に呼出、通話ができるナースコール親機と、前記ナースコール親機に接続された主装置と、前記主装置に接続される複数の無線基地局と、前記無線基地局を介し前記ナースコール子機との間で相互に呼出通話ができる携帯通信端末とで構成されるハンディナースコールシステムにおいて、
前記携帯通信端末は、RFタグ信号の接近を検知することによりスリープモードに遷移し、電源オン信号でスリープモードを解除するスリープモード設定手段と、スリープモード開始時においてスリープモード開始信号、スリープモード終了時においてスリープモード終了信号をそれぞれ外部に送信するとともに、スリープモード状態で電波送信機能停止または電源を断にする制御部とを有し、前記主装置は、前記携帯通信端末の端末IDと、前記スリープモード開始信号でセットされ、スリープモード終了信号でリセットされる着信禁止フラグとを一対として記憶する着信禁止テーブルを有し、ナースコール子機からの呼出信号を受信したときは、前記着信禁止テーブルを参照して、複数の携帯端末の中から、前記着信禁止フラグが設定された携帯通信端末を除外して呼出すようにしたことを特徴とするハンディナースコールシステム。
【請求項2】
前記携帯通信端末はマナーモード設定手段と、第1マナーモードおよび第2マナーモードを切替えるマナーモード種類切替手段とを有し、第1マナーモードに設定されたときは着信音のみを規制する通常のマナーモードで動作し、第2マナーモードに設定されたときは、電源断または電波送信停止となるようにしたことを特徴とするハンディナースコールシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−96557(P2007−96557A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281071(P2005−281071)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】