説明

バニリンおよびエチルバニリンを含有する新規化合物、ならびにこの調製および利用

本発明は、バニリンおよびエチルバニリンを含有する新規化合物に、ならびにこれらを製造するための方法に関する。より正確には、本発明は、バニリンとエチルバニリンの共結晶化によって得られる新規化合物に関する。本発明は、非常に多数の利用可能分野における、特に、人および動物の食物における、これらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バニリンおよびエチルバニリンに基づく新規化合物、ならびにこの調製方法に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、バニリンとエチルバニリンの共結晶化によって得られる新規化合物に関する。
【0003】
本発明は、多数の利用分野における、とりわけ人および動物の栄養における、この使用にも関する。
【背景技術】
【0004】
バニリン、即ち4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドは、非常に多くの利用分野で着香剤および/または香料として広く用いられている製品である。
【0005】
従って、バニリンは、食品および動物飼料産業において豊富に消費されるが、他の領域、例えば、薬学または香料製造のためにも利用されている。それ故、バニリンは、消費量の多い製品である。
【0006】
少量のエチルバニリンの存在が、バニリンの賦香性および/または感覚刺激性を強化できることは公知であるので、非常に多くの場合、バニリンは、エチルバニリン、即ち3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドと併用される。
【0007】
従って、潜在的利用者は、バニリンとエチルバニリンの既製混合物の供給を望んでいる。
【0008】
発生する問題は、バニリンおよびエチルバニリンの粉末の従来の乾式混合技術による前記混合物の調製が、非常に塊を形成しやすい混合物を生じさせることである。結果として、粉状の形態でないこの体裁のため、このような混合物を使用することができず、および生じた集塊を溶かすことは相当困難である。
【0009】
さらに、長期保管は、粉末の固化に至るランピネス(lumpiness)現象の悪化をもたらす。
【発明の概要】
【0010】
従って、本発明の目的は、改善された流動性を有し、保管によるランピネスがない、バニリンおよびエチルバニリンに基づく新規体裁を提供することである。
【0011】
本発明の前記目的を構成する化合物であって、2のバニリン/エチルバニリンモル比で使用したバニリンとエチルバニリンの共結晶化によって得られる新規化合物を、今般、発見した。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、バニリンおよびエチルバニリンから前記化合物を得る方法であり、この方法は、2のバニリン/エチルバニリンモル比で使用したバニリンとエチルバニリンの、溶融媒体中でのまたはこれらを溶解する溶媒に溶解した状態での、共結晶化を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の化合物の、バニリンの、およびエチルバニリンの異なるX線回折スペクトルに対応する3つの曲線を示す図である。
【図2】本発明の化合物のX線スペクトルの変化を保管時間の関数として示す図である。
【図3】比較のため、バニリンおよびエチルバニリンの2つの粉末の2のモル比での乾式混合物のX線回折スペクトルを示す図である。
【図4】サンプルに加えられた熱出力を20℃と90℃の間の温度の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従って、(65/35重量比に相当する)2のモル比でのバニリンとエチルバニリンの共結晶化によって得られる化合物はユニークな特性を示すことが判明した。
【0015】
これは白色粉末の形態であり、この粉末は、示差走査熱分析によって測定すると60℃±2℃の融点を有し、この融点は、それぞれ81℃±1℃および76℃±1℃であるバニリンおよびエチルバニリンのものとは異なる。
【0016】
本発明の化合物は、これ独自の固有X線回折スペクトルを有し、このスペクトルは、バニリンおよびエチルバニリンのものとは異なる。
【0017】
図1は、本発明の化合物の、バニリンの、およびエチルバニリンの異なるX線回折スペクトルに対応する3つの曲線を示すものである。
【0018】
バニリンおよびエチルバニリンの基づく本発明の化合物のスペクトルに関して、本発明者らは、角度2θ(単位:°)=20.7−25.6−27.5−28.0での線の存在に特に注目する;前記の線は、バニリンおよびエチルバニリンのX線回折スペクトルには不在である。
【0019】
本発明の化合物のもう1つの特徴は、このX線回折スペクトルが長期保管中に有意に変化しないことである。
【0020】
このスペクトルの変化を室温での保管時間の関数として追跡した。実施例1において説明する、図2によって証明されるように、長期保管期間(5ヶ月)にわたって本発明の化合物のスペクトルには変化がまったく観察されない。
【0021】
本発明の化合物の特性線に変化がないことがわかる。
【0022】
本発明の化合物のもう1つの特徴は、本化合物が、バニリンおよびエチルバニリンのような吸湿性がないまたは殆どない化合物であることである。
【0023】
本発明の化合物の吸湿性を、40℃、空気中、相対湿度80%で1時間保持した後にこの重量変化を測定することにより判定する。
【0024】
前記化合物は、0.5重量%未満の水を吸収し、この含有率は、好ましくは、水分0.1重量%と0.3重量%の間である。前記化合物は、完全に固体のままである。
【0025】
特許PL 54 771には、57重量%のバニリンおよび43重量%のエチルバニリンを含む食品用着香剤が記載されていることに留意しなければならない。この混合物は、本発明の製品とは異なる組成物を有し、本発明の製品とは異なる物理化学的特定を有する。
【0026】
PL 54 77によると、このいわゆる共融混合物は、本発明の製品が60℃であるのに比べて、49℃の融点を有する。
【0027】
もう1つの大きな違いは、吸湿性というこの性質に関する。実際、空気中、相対湿度80%で40℃に加熱された、57重量%のバニリンおよび43%のエチルバニリンを含む混合物は、これらの条件で3重量%より多くの水を吸収して、ペースト状にまたは部分的に液体にさえなる。従って、一定の地理的区域においてしばしば遭遇する高温および/または高湿の気象条件下でこの混合物を保管または使用することはできないが、本発明の製品は、完全に固体のままであり、容易に取り扱うことができる。
【0028】
従って、本発明の化合物は、バニリンとエチルバニリンの単純乾式混合に比べて、大いに改善されたランピネス特性を有する。
【0029】
2/98と98/2の間のVA/EVA重量比を有する前記乾式混合物は、1週間未満の室温(22℃)での保管後、重量増加を示すが、同じ条件で保管した本発明の化合物は、1か月後、または数か月(例えば、少なくとも6ヶ月)後でさえ、重量増加を示さない。
【0030】
本発明の化合物は、良好な感覚刺激性を有する。
【0031】
これは、バニリンのものよりはるかに大きい高着香力を有する。従って、着香剤としてこれを利用する際、より少ない量、例えば半分にした量を、着香力のいかなる差も見いだすことなく使用することができる。
【0032】
本発明の化合物のこれらの個々の特性は、2つのパラメータ、即ち、バニリンのエチルバニリンに対するモル比と、この融点およびこのX線回折スペクトルによって特徴づけられる特異的結晶形態での共再結晶化がバニリンとエチルバニリン間にあるという事実によって関係づけられる。
【0033】
従って、本発明のもう1つの目的は、本発明の化合物を得る方法である。
【0034】
本発明に従って、バニリンとエチルバニリンのこの新規化合物は、2のモル比で使用したバニリンとエチルバニリンの共結晶化によってこれを得たとき、改善されたランピネス特性を示すことが判明した。
【0035】
前記調製方法の第一の実施形態は、溶媒中でバニリンとエチルバニリンの共結晶化を行うことから成る。
【0036】
もう1つの実施形態は、溶融操作、その後の制御温度での冷却による凝固により、共結晶化を行うことから成る。
【0037】
本発明の方法は、バニリンおよびエチルバニリンを、重量で65%のバニリンおよび35%のエチルバニリンを含む混合物に相当する2のバニリン/エチルバニリンモル比で使用する。
【0038】
本発明の1つの実施形態によると、バニリンおよびエチルバニリンを溶媒に溶解する。
【0039】
使用される溶媒は、バニリンおよびエチルバニリンに対して化学的に不活性でなければならず、ならびに本明細書において下で定義する温度範囲での加熱中に不活性のままでなければならない。
【0040】
本発明の組成物において溶媒を使用する場合、プロトン性もしくは非プロトン性極性溶媒、または溶媒の混合物を使用することが望ましい。
【0041】
本発明にもっぱら適している溶媒の例を以下に示す:

アルコール、好ましくは脂肪族または芳香アリールアルコール、およびさらに好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、β−フェニルエチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、
エーテル−オキシド、好ましくは脂肪族エーテル−オキシド、およびより詳細にはジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、
脂肪族、環式脂肪族または芳香族カルボン酸のアルキルまたはアラルキルエステル、ならびにさらに好ましくは酢酸エチル、酢酸ブチル、サリチル酸ベンジル、ラウリン酸メチル、安息香酸メチル、クエン酸エチル、トリアセチルグリセロールまたはトリアセチン、グリセロールのおよび酢酸のエステル。
上のリストは、網羅的なものではない。
好ましくは、上述の溶媒から水、エタノール、プロピレングリコール、トリアセチンおよびこれらの混合物が選択される。
【0042】
使用される溶媒の量について言えば、この量は、この溶媒の性質、および溶解温度に依存する。溶解温度が低いほど、この量は多い。
【0043】
使用される溶媒の量は、乾燥物質(バニリン+エチルバニリン)の重量に対する重量で表して、一般に、5%と60%の間で変わる。
【0044】
乾燥物質の重量に対して使用する溶媒の量によっては、この混合物を好ましくは40℃と90℃の間、およびさらに好ましくは50℃80℃の間で場合により加熱して、バニリンおよびエチルバニリンの溶解を助長することがある。
【0045】
もう1つの実施形態によると、上で定義した温度に溶媒を加熱し、その後、バニリンおよびエチルバニリンを2のモル比で導入する。
【0046】
均質な溶液が得られるまで、この混合物を攪拌し続ける。一般に、均質な溶液を得るには10分から120分かかる。
【0047】
その後、このようにして得た溶液を冷却して、本発明の化合物の結晶化を生じさせる。
【0048】
溶液を40℃と90℃の間で調製した場合、一般には室温への冷却で十分であるが、0℃の温度までこれを行うこともある。
【0049】
「室温」は、15℃と25℃の間、好ましくは18℃と22℃の間、の温度を意味する。
【0050】
溶液を室温で調製した場合、本発明の化合物の結晶化を生じさせるために、0℃と10℃の間、およびさらに好ましくは0℃と5℃の間の温度への冷却が必要である。
【0051】
調製のいかなる変法を用いようとも、従来の固体/液体分離技術によって、好ましくは濾過または遠心分離によって、結晶化生成物を分離する。
【0052】
その後、乾燥操作を行う;この操作は、従来の乾燥用装置、例えば、加熱炉、プレート型乾燥機、流動床、真空レンジなどで行うことができる。
【0053】
乾燥は、空気中で行われることがあり、または不活性ガス雰囲気で、好ましくは窒素ガス雰囲気で、行われることがある。乾燥は、チャンバ内で、減圧下、例えば10mm水銀柱と500mm水銀柱の間の圧力で、行われることもある。
【0054】
得られた化合物の結晶を51℃±1℃の温度に加熱することによって乾燥を行う。
【0055】
乾燥時間は、一般に、15分から2時間である。
【0056】
上で定義した性質を有する化合物が得られる。
【0057】
本発明の前記方法の変形は、2のモル比で使用したバニリンとエチルバニリンの混合物を溶融すること、およびその後、温度を50℃±1℃に低下させることによってこの溶融混合物を冷却すること、その後、この混合物が完全に凝固するまでこの温度を維持することから成る操作に従って、本発明の化合物を調製することから成る。
【0058】
本発明の前記方法の好ましい変形によると、攪拌が一切不在の状態で冷却を行う。
【0059】
このために、2モルの比で使用するバニリンおよびエチルバニリンを別々に投入し、または混ぜ合わせ、60℃と90℃の間で選択されるおよび好ましくは70℃と80℃の間である温度にこの混合物を加熱する。
【0060】
この操作は、一般に、任意の装置において、およびとりわけ、従来の加熱装置、例えば電気抵抗により、でなければダブルジャケット内の熱交換液の循環により加熱するためのシステムを装備したタンクにおいて、または加熱チャンバ、例えば加熱炉またはレンジにおいて、攪拌しながら行われる。
【0061】
好ましくは窒素である不活性ガスの雰囲気下で、この溶融混合物の調製を行うことが、望ましい。
【0062】
この混合物を、溶融混合物が得られるまで、選択した温度で維持する。
【0063】
この溶融生成物を、凝固後にこの生成物を容易に回収することができる任意の容器、例えばステンレス鋼トレーに移す。溶融混合物を入れる前に、この容器を70℃と80℃の間に予熱する。
【0064】
次の段階で、任意の公知手段によって冷却温度を制御することにより、この溶融混合物を50℃±1の温度に冷却する。
【0065】
前に述べたように、好ましくは攪拌が一切不在の状態で冷却を行う。
【0066】
得られた凝固混合物を成形することができ、そのための様々な技術を思い浮かべることができる。
【0067】
1つの技術は、得られた混合物を、この粒径が思い浮かべた用途に適合したものになるように、磨砕することから成る。
【0068】
最も多くの場合、この粒径は、100μmから2mmである。
【0069】
一般に、メジアン径(d50)によって表される前記粒径は、100μmから800μmまで、好ましくは200μmと300μmの間で、様々である。メジアン径は、粒子の50重量%がこのメジアン径より大きいまたは小さい直径を有するようになるように定義される。
【0070】
磨砕操作は、従来の機器、例えば、ブレードミル、歯付きロール粉砕機、または造粒機で行うことができる。
【0071】
もう1つの成形は、ドラムまたはベルト上でのフレーク形成技術を用いて行うことができる。
【0072】
バニリンとエチルバニリンの溶融混合物を、前に述べた比率で調製する。その後、この溶融混合物を、50℃の温度に冷却した金属ドラムまたはベルトと接触させ、その後、このドラム上で得られる薄膜をブレードで削り落として、バニリンとエチルバニリンの固体混合物をフレークの形態で回収する。
【0073】
この共結晶化段階のために、本発明の方法は、本実施例において実証するように、塊形成現象が大いに低減されるような、改善された保管特性を有するバニリンとエチルバニリンの新規化合物の獲得を可能にする。
【0074】
本発明は、本発明の化合物と共に1つ以上の賦形剤を使用することを除外しない。
【0075】
賦形剤の選択は、最終製品の所期の用途を考慮に入れなければならないこと、従って、これを食品部門で使用する場合には食用に適するものでなければならないことに、留意しなければならない。
【0076】
賦形剤の量は、非常に様々であり得、これは、最終混合物の重量の0.1から90%に相当し得る。
【0077】
有利には、20重量%と60重量%の間でこれを選択する。
【0078】
採用する賦形剤のタイプ、使用する量および最終製品の所期の用途に依存して、賦形剤は、本発明の化合物と共に乾式混合することによって添加されることもあり、または本発明の化合物の製造方法に組み込まれる、例えば、バニリンとエチルバニリンの混合物の溶融段階の間に添合されることもある。
【0079】
使用することができる賦形剤の例を下に記載するが、いかなる点においてもこれらに限定されない。
【0080】
脂肪は、賦形剤の第一のタイプの代表である。
【0081】
例として、本発明者らは、場合により塩またはエステルの形態の、脂肪酸を挙げることができる。
【0082】
使用する脂肪酸は、一般に、長鎖飽和脂肪酸、即ち、炭素原子数9と21の間の鎖長を有するもの、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸である。
【0083】
前記酸は、塩形成形態である可能性があり、本発明者らは、とりわけ、ステアリン酸カルシウムまたはマグネシウムを挙げることができる。
【0084】
脂肪酸のエステルとして、本発明者らは、特に、グリセリルステアラート、イソプロピルパルミタート、セチルパルミタート、イソプロピルミリスタートを挙げることができる。
【0085】
本発明者らは、さらに具体的には、グリセロールのおよび長鎖脂肪酸のエステル、例えば、グリセロールモノステアラート、グリセロールモノパルミトステアラート、グリセロールパルミトステアラート、エチレングリコールパルミトステアラート、ポリグリセロールパルミトステアラート、ポリグリコール1500および6000パルミトステアラート、グリセロールモノリノレアート;場合により、長鎖脂肪酸のモノまたはジアセチル化グリセロールエステル、例えば、モノアセチル化またはジアセチル化モノグリセリドおよびこれらの混合物;半合成グリセリドを挙げることができる。
【0086】
本発明者らは、炭素原子鎖が炭素原子数約16と22の間のものである脂肪アルコール、例えば、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールも加えることができる。
【0087】
10から20個の炭素原子を有する線状または分岐脂肪アルコール、例えばコプラアルコール、トリデカノールまたはミリスチルアルコールの、1モルあたりエチレンオキシド6から20モルの率でのエチレンオキシドとの縮合の結果として生ずるポリエトキシ化脂肪アルコールを使用することもできる。
【0088】
本発明者らは、蝋、例えば、ミクロクリスタリンワックス、白蝋、カルナウバ蝋、パラフィンも挙げることができる。
【0089】
本発明者らは、糖、例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、リボース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール;転化糖:グルコースシロップ、ならびにヤシ油、パーム油、硬化パーム油および硬化大豆油などの脂肪油から得られるスクログリセリド;脂肪酸のスクロエステル、例えば、モノパルミチン酸スクロース、モノジステアリン酸スクロースおよびジステアリン酸スクロースを挙げることができる。
【0090】
他の賦形剤の例として、本発明者らは、多糖類を挙げることができ、および本発明者らは、数ある中でも、以下の製品およびこれらの混合物を挙げることができる:
とりわけ小麦、トウモロコシ、大麦、米、カッサバまたは馬鈴薯から得られるデンプン、天然、α化または化工デンプン、およびさらに詳細には高アミロース天然トウモロコシデンプン、α化トウモロコシデンプン、化工トウモロコシデンプン、化工ワキシートウモロコシデンプン、α化ワキシートウモロコシデンプン、化工ワキシートウモロコシデンプン、特に、OSSA/オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、
デンプン加水分解物、
デンプン(小麦、トウモロコシ)または片栗粉の加水分解の結果として生ずるデキストリンおよびマルトデキストリン、ならびにβ−シクロデキストリン、
セルロース、このエーテル、とりわけ、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース;またはこのエステル、とりわけ、場合によりナトリウム含有形態でのカルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロース、
ゴム、例えば、カッパ−カラゲナンまたはイオタ−カラゲナンのゴム、ペクチン、グアーガム、キャロブガム、およびキサンタンガム、アルギン酸塩、アラビアゴム、アカシアゴム、寒天。
【0091】
好ましくは、20未満、および好ましくは5と19の間、およびさらに好ましくは6と15の間の、「デキストロース当量」即ちDEによって測定される加水分解度を有するマルトデキストリンを選択する。
【0092】
他の賦形剤として、本発明者らは、穀粉、とりわけ、小麦粉(天然またはプレゲル);デンプン、より詳細には、馬鈴薯デンプン、Tolomanデンプン、トウモロコシデンプン、トウモロコシ粉、サゴまたはタピオカを挙げることができる。
【0093】
賦形剤として、ゼラチン(好ましくは、ゲルメーターを使用して測定して100、175および250ブルームのゲル化強度を有するもの)を使用することもできる。これは、豚皮およびオセインの酸処理からのものである場合もあり、または牛皮およびオセインのアルカリ処理からのものである場合もある。
【0094】
他の賦形剤、例えば、シリカ、または例えば抗酸化物質、例えばとりわけビタミンE、または乳化剤、とりわけレシチンも添加することができる。
【0095】
前記混合物の着香力を調整するまたはこの味を向上させるために、エチルマルトールおよび/またはプロペニルグアエトール(propenylguetol)の使用を考えることができる。
【0096】
本発明は、補足量のバニリンまたはエチルバニリンの追加を除外しない。
【0097】
本発明の好ましい組成物は、糖、好ましくは、グルコース、スクロース、フルクトースおよび/またはデキストリンもしくはマルトデキストリンを含み、最後のものは、有利には6と15の間のDEを有する。
【0098】
思い浮かべた用途に関連して前に挙げたような賦形剤を選択する。
【0099】
食品および製薬部門をはじめとする多くの利用分野において、ならびに香料製造業において、本発明の化合物を使用することができる。
【0100】
本発明の化合物の好ましい利用分野は、ビスケットおよびケーキ、およびより詳細には、
乾燥ビスケット:古典的なタイプの甘いビスケット、バタービスケット、着香ビスケット、スナックバー、ショートブレッド、
産業用ケーキ:シャンパンレディーフィンガーズ、薄いフィンガービスケット、スポンジビスケット、ジェノバケーキ、スポンジケーキ、マドレーヌ、パウンドケーキ、フルーツケーキ、アーモンドケーキ、プチフール
のためのものである。
【0101】
上述の産業のためのものである混合物中に存在する主成分は、タンパク質(グルテン)およびデンプンであり、これらは、最も多くの場合、小麦粉によって供給される。様々なタイプのビスケットおよびケーキを調製するために、スクロース、塩、卵、牛乳、脂、場合によっては化学的ふくらし粉(重炭酸ナトリウムもしくは他の人工ふくらし粉)または生物学的ふくらし粉、および様々穀物粉などのような材料が小麦粉に添加される。
【0102】
所望される製品によっては、当該分野の従来の技術(とりわけ、J.L.KINGER and J.C.KINGER − Techniques Modernes de la Biscuiterie,Patisserie−Boulangerie industrielles et artisanales(Modern Techniques of Industrial and Traditional Production of Biscuits,Cake and Bakery Products),DUNOD,Paris,1968,Vol.2,pp.231 ff.参照)を用いて、製造中に本発明のバニリンおよびエチルバニリンの化合物を添合する。
【0103】
好ましくは、生地の調製に使用する脂に本発明の化合物を導入する。
【0104】
指針として、本発明の化合物を生地1kgあたり0.005から0.2gの量で導入する。
【0105】
本発明のバニリンとエチルバニリンの化合物は、これを使用する形態(チョコレートバー、クーベルチュールチョコレートまたはチョコレートフィリング)に関係なく、チョコレート製造の際の使用に完全に適する。
【0106】
コンチング、即ち、カカオペーストと様々な材料、とりわけ着香剤との混合中に、またはコンチング後に、ココアバターに加えることにより、これを導入することができる。
【0107】
この利用分野では、本発明のバニリンとエチルバニリンの化合物を、チョコレートのタイプに依存して、完成品1kgあたり0.0005gから0.1gの率で使用する(最高含有率は、クーベルチュールチョコレートにおいて用いられる。)。
【0108】
本発明の化合物のもう1つの用途は、すべての種類のキャンディー(シュガードアーモンド、キャラメル、ヌガー、飴玉、フォンダンキャンディーおよびその他)の製造である。
【0109】
導入する本発明の化合物の量は、所望されるより強いまたはさほど強くない味に依存する。従って、本発明の化合物の使用用量は、0.001%と0.2%の間で様々であり得る。
【0110】
本発明の化合物は、酪農製品産業における、およびより詳細にはフレーバーおよびゲル化ミルク、アントルメ、ヨーグルト、アイスおよびアイスクリームにおける使用に非常に適する。
【0111】
製品の製造中に必要とされる混合段階の1つにおいて、本発明の化合物を単に添加することにより、着香が果たされる。
【0112】
使用することとなる前記化合物の含有率は一般に低く、完成品1kgあたりほぼ0.02g程度である。
【0113】
食品産業における本発明の化合物のもう1つの用途は、バニリン糖の調製、即ち、完成品1kgに対して表すとほぼ7g程度の含有率でのバニリンの糖への含浸である。
【0114】
本発明の化合物を様々な飲料に含めることもでき、数ある中でも、本発明者らは、グレナディンおよびチョコレート飲料を挙げることができる。
【0115】
詳細には、飲料自動販売機によって供給されるインスタン飲料、粉末形態の着香飲料、すべての種類のデザートを作るためのものである粉末形態の、でなければ粉末形態のインスタント食品のチョコレート、カスタードタルト、ケーキ用ペースト、パンケーキのための調製の際に、水または牛乳で希釈した後、本化合物を使用することができる。
【0116】
バターを変性させるためのバニリンの使用は通例である。このために、本発明のバニリンとエチルバニリンの化合物をバター1トンあたり6gの率で使用することができる。
【0117】
本発明の化合物のもう1つの利用分野は、動物飼料、とりわけ、子牛および豚に給餌するためのミールの調製のためのものである。推奨含有率は、着香するミール1kgあたり約0.2gである。
【0118】
本発明の化合物は、製薬産業のための(医薬製品の臭いを隠すための)または他の工業製品(例えば、ゴム、プラスチック、ゴム製品など)のためのマスキング剤などの、他の用途を見出すことができる。
【0119】
本化合物は、化粧品、香料または洗剤などの全く異なる産業分野にも、もっぱら適する。
【0120】
化粧品、例えばクリーム、乳液およびメーキャップならびに他の製品において、ならびに賦香組成物、発香物および発香製品における賦香材料として、本化合物を使用することができる。
【0121】
「賦香組成物」は、本発明の化合物が添合される、溶媒、固体または液体担体、固定剤、様々な臭気化合物などの様々な材料の混合物を意味し、様々なタイプの完成品に所望の芳香を付与するために使用される。
【0122】
香料基剤は、本発明の化合物を有利には0.1から2.5重量%の含有率で使用することができる賦香組成物の好ましい例を構成するものである。
【0123】
香料基剤は、非常に多数の発香製品、例えば、化粧水、香水、アフターシェーブローション;洗面用化粧品および衛生製品、例えば、浴用またはシャワーゲル、スティックの形態であろうと、ローションの形態であろうと、消臭剤または制汗薬、すべての種類のタルクまたはパウダー;毛髪用製品、例えばシャンプー、およびすべての種類の毛髪製品の調製に使用することができる。
【0124】
本発明の化合物の用途のもう1つの例は、石鹸製造である。賦香すべき全質量の0.3%から0.75%の含有率で本化合物を使用することができる。一般に、この用途では、本化合物をベンゾインレジノイドおよび次亜塩素酸ナトリウム(2%)と併用する。
【0125】
本発明によるバニリンとエチルバニリンの化合物は、多くの他の用途を、とりわけ、室内空気消臭剤またはすべてのメインテナンス製品に見出すことができる。
【0126】
例証を目的として上に挙げた様々な用途に、本発明の化合物を単独で導入することができ、または1つ以上の賦形剤(賦形剤の幾つかの例を上に与えた)と共に本発明の化合物を含有する組成物の形態で導入することができる。
【0127】
本発明を限定することなく、本発明を例証する実施例を下に記載する。
【0128】
本実施例において挙げる百分率は、重量で表したものである。
【実施例】
【0129】
(実施例1)
本発明の化合物の調製
粉末形態の5.2gのバニリン(VA)および粉末形態の2.8gのエチルバニリン(EVA)、即ち、VA/EVA重量比=65/35を125mLビンに入れる。
【0130】
このビンを数回反転させることにより、この混合物を均質にする。
【0131】
その後、このビンを70℃のレンジの中に2時間置いて、完全な溶融を達成する。
【0132】
その後、レンジの中で70℃に予熱したアルミニウム皿にこの溶融混合物を注入し;この液体を広げて、1mmを超えない均一な厚みの薄膜を形成する。
【0133】
この皿をこのレンジの中に保持し、この温度を1℃/分の速度で70から51℃に低下させ、その後、VA−EVA混合物を完全に凝固させるために少なくとも1時間、51℃で横ばいにする。
【0134】
その後、レンジの温度を徐々に(約1℃/分)室温に低下させる。
【0135】
得られた固体バーを、1.6mmの網目を有するふるいを備えた揺動アーム造粒機(Erweka EGS造粒機)によって適度に磨砕する。
【0136】
得られる本発明の化合物は、顆粒形態である。
【0137】
本発明の化合物の物理化学的特性
1.本発明の化合物の融点を示差走査熱分析によって測定する。
【0138】
Mettler DSC882e示差走査熱量計を用いて下記条件で測定を行う:
室温でサンプル調製:計量およびサンプルホルダー内への導入、
サンプルホルダー:圧着アルミニウムカプセル、
試験サンプル:8.4mg、
温度上昇速度:2℃/分
調査範囲:10−90℃
化合物のサンプルを計量し、カプセルに導入し、このカプセルを圧着し、その後、前記機器の中に置く。
【0139】
温度プログラムを開始し、サーモグラムで融解プロフィールを得る。
【0140】
上の動作条件で得られたサーモグラムから融点を決定する。
【0141】
開始温度:融解ピークの最大勾配に対応する温度を見つける。
【0142】
本発明の化合物は、前に説明したように判定して(開始T)融点=60℃を有する。
【0143】
2.X’Celerator検出器を備えたX’Pert Pro MPD PAN分析機器によって、下記条件で、本発明の化合物のX線回折スペクトルを判定する:
開始位置[°2シータ]:1.5124
終止位置[°2シータ]:49.9794
ステップサイズ[°2シータ]:0.0170
走査ステップ時間[秒]:41.0051
アノード材:Cu
K−アルファ[Å]:1.54060
発生装置設定:30mA、40kV
これを、バニリンのおよびエチルバニリンのものと比較する。
【0144】
図1は、本発明の化合物の、バニリンのおよびエチルバニリンの異なるX線回折スペクトルに対応する3つの曲線を示すものである。
【0145】
本発明の化合物のX線回折スペクトルは、角度2θ(単位:°)=20.7−25.6−27.5−28.0に幾つかの特性線を示し(銅K−アルファ1=1.54060Åの線を基準にして測定)、これらによってこのスペクトルはバニリンおよびエチルバニリンのスペクトルと区別される。
【0146】
本発明の化合物は、室温で2から5ヵ月間の長期保管後、変化しない。
【0147】
例えば、図2は、本発明の化合物のX線スペクトルの変化を保管時間の関数として示すものである。この図は、t=0の時点で、及び2ヶ月および5ヶ月間の保管後に得た本発明の化合物の異なるX線回折スペクトルに対応する3つの曲線を示す。
【0148】
得られた3つの曲線を普通に重ね合わせる。より良く区別するために、図2における3つの曲線のうちの2つは、t=0の時点でのX線回折スペクトルである参照ベースラインを基準にして故意にずらしたベースラインを有する。2ヶ月間の保管後に得たX線回折スペクトルに対応する曲線を5000パルス/秒ずらし、5ヶ月間の保管後に得たX線回折スペクトルに対応する曲線を10000パルス/秒ずらす。
【0149】
図2は、本発明の化合物が長期保管後に不変であることを明示している。
【0150】
図3は、比較のため、バニリンおよびエチルバニリンの2つの粉末の2のモル比での乾式混合物のX線回折スペクトルを示すものである。
【0151】
測定条件は、上で述べたとおりである。
【0152】
この混合物のX線回折スペクトルは、本発明の化合物の特性線を有さない。
【0153】
3.吸湿性に関しては、40℃、空気中、相対湿度80%の人工気候室に1時間、薄層(1から2mm厚)の状態で置いた本発明の化合物のサンプルの重量増加からこれを定量する。
【0154】
40℃、空気中、相対湿度80%で1時間保持した後、本発明の化合物は、0.27重量%の水分しか吸収しない;この重量増加は、相対湿度40%で25℃に戻すことにより、完全に戻せる。
【0155】
共栓ビンの中で22℃で1ヶ月間保管した、得られた顆粒は、依然として良好な流動性を示す。
【0156】
比較のために、同じ条件で保管した、バニリンおよびエチルバニリンの2つの粉末の混合物は、2/98と98/2の間のVA/EVA重量比にもかかわらず、1週間後に完全に固化した。
【0157】
(実施例2)
4.9gの無水エタノール、5.2gのバニリンおよび2.8gのエチルバニリン、即ち、VA/EVA重量比=65/35を125mLビンに入れる。
【0158】
このビンをボトルローラーによって攪拌し、2つの生成物が完全に溶解するまで(約2時間)、25℃で維持する。
【0159】
その後、このビンを約10時間、3℃の冷蔵庫の中に置く。
【0160】
白色の固相が出現する。これを濾過によって迅速に液体と分離する。
【0161】
このようにして得た固体を真空(100mm水銀柱)下、最初は20℃で1時間、その後、この温度を1℃/分の速度でゆっくりと52℃に上昇させて乾燥させる。
【0162】
52℃で1時間、真空(100mm水銀柱)下での乾燥を続ける。
【0163】
示差走査熱分析によって測定して、この乾燥生成物は、61℃の融点を有する。
【0164】
このX線回折スペクトルは、これをバニリンおよびエチルバニリンと区別する特性線を有する。
【0165】
(実施例3)
8.5gのバニリン、4.6gのエチルバニリンおよび1.0gの脱塩水を125mLビンに入れる。
【0166】
このビンを62℃のレンジの中に2時間置いて、単一の均質な液相を得る。
【0167】
この液体をアルミニウム皿に注入し、広げて、均一な厚みの薄膜を形成する。
【0168】
その後、この皿を約10時間、3℃の冷蔵庫の中に置く。
【0169】
すべての生成物の完全な固化が観察される。
【0170】
これを室温に戻した後、この生成物は依然として固体であり、1.6mmの網目を有するふるいを備えた揺動アーム造粒機(ErwekaタイプFGS造粒機)によってこれを適度に磨砕する。
【0171】
顆粒の形態で得られた本発明の化合物を真空(100mm水銀柱)下、最初は20℃で1時間、その後、この温度を1℃/分の速度でゆっくりと52℃に上昇させて乾燥させる。
【0172】
52℃で1時間、真空(100mm水銀柱)下での乾燥を続ける。
【0173】
示差走査熱分析によって測定して、この乾燥生成物は、60℃の融点を有する。
【0174】
このX線回折スペクトルは、これをバニリンおよびエチルバニリンと区別する特性線を有する。
【0175】
(実施例4から6)
実施例4から6では、本発明の化合物を含有する顆粒(実施例4)およびこれらを含有する組成物(実施例5および6)を調製する。
【0176】
これらの保管挙動を、バニリン(比較例A)、エチルバニリン(比較例B)およびバニリンとエチルバニリンの乾式混合物(比較例C)と比較して観察する。
【0177】
(実施例4)
粉末形態の350gのバニリンおよび粉末形態の188.5gのエチルバニリン、即ち2のバニリンのエチルバニリンに対するモル比を、ダブルジャケット加熱装置を備えた攪拌反応器に入れる。これらの粉末の含水率は、0.1±0.02重量%である。
【0178】
この混合物を攪拌しながら70℃に加熱する。このようにして均質な液相を得る。
【0179】
50℃に維持したステンレス鋼プレート上にこの溶融混合物を注入して、約1mmの厚みを有する薄膜をこのプレート上で形成する。約10分で結晶化が完了する。
【0180】
このようにして形成された固体シートは、このステンレス鋼から容易にはがれる;これが完全に冷却されるまで、室温でこれを放置する。
【0181】
その後、1.0mmの網目を有するふるいを備えた揺動アーム造粒機(ErwekaタイプFGS造粒機)に供給するために、このシートを粗く粉砕する。そこでこの生成物を適度に磨砕して、0.1から1.0mmの様々なサイズを有する顆粒を得る。
【0182】
このようにして得た顆粒は、示差走査熱分析によって測定して(開始T)、および図4に示すサーモグラムから判定して、59.8℃の融点を有する。
【0183】
このサーモグラムは、サンプルに加えられた熱出力(w/gで表す。)を20℃と90℃の間の温度の関数として示すグラフである。
【0184】
得られた曲線の積分から、融解エンタルピー、129.5J/gを見出すことができる。
【0185】
図1に示すように、これらのX線回折スペクトルは、角度2θ(°)=20.7−25.6−27.5−28.0に特性線を有し、これらよりこのスペクトルはバニリンおよびエチルバニリンのスペクトルと区別される。
【0186】
(実施例5)
実施例4に従って調製した顆粒を、これらの流動性をさらに改善する賦形剤と、例えば重量で50/50で、乾式混合することができる。
【0187】
この実施例では、実施例4に従って調製した顆粒50重量%と賦形剤、スクロース、50重量%とを含む組成物を調製する。
【0188】
WAMプラウミキサーにおいて室温で約5分の混合操作を行う。
【0189】
(実施例6)
この実施例では、実施例4に従って調製した顆粒50重量%と6のDEを有するマルトデキストリン(Roquette Glucidex IT6)50重量%とを含む組成物を調製する。
【0190】
実施例5において説明したように混合操作を行う。
【0191】
(比較例AからC)
これらの実施例は、それぞれ、バニリン、エチルバニリン、ならびに実施例4におけるようなミキサーにおいて製造したバニリンおよびエチルバニリンの粉末の2のモル比での乾式混合物に関する。
【0192】
本発明の化合物のおよびこれを用いる組成物の流動性および塊になりやすさを、バニリン粉末、エチルバニリン粉末、およびこれら2つの粉末の単純乾式混合物と比較する。
【0193】
粉末の流動性は、当業者によく知られている技術概念である。さらなる詳細については、とりわけ、The Institution of Chemicals Engineers,1989(ISBN:0 85295 232 5)によって発表された研究「Standard shear tesing technique for particulate solids using the Jenike shear cell」を参照することができる。
【0194】
流動性指数は、次のようにして測定する。
【0195】
(ドイツのD.Schulzeによって市販されている)環状セルにおいてサンプルを剪断することにより粉末の流動性を測定する。
【0196】
5200Paの垂直応力下で粉末の予備剪断を行う。
【0197】
サンプルの流動軌跡をプロットするために必要な剪断点を、予備剪断応力より低い4つの垂直応力、一般には480Pa、850Pa、2050Paおよび3020Paについて得る。
【0198】
これらの流動軌跡を用いて、「垂直応力の関数としての剪断応力」図におけるモール円から、サンプルを特徴づける2つの応力を決定する:
主方向での垂直応力:これは、予備剪断点を通る大モール円の端によって与えられる、
粘着力:これは、流動軌道に接するおよび原点を通る小モール円の端によって与えられる。
【0199】
主方向の垂直応力の粘着力に対する比は、「i、流動性指数」と呼ばれる無次元数である。
【0200】
環状セルに充填した直後にこれらの測定を行い、このようにして瞬間流動性指数を得る。
【0201】
40℃および相対湿度80%で、2400Paの垂直応力で、24時間保管したセルを用いて、もう1つの系列の測定を行う。
【0202】
これによりランピネス指数を得る。
【0203】
表(I)に提示する結果は、瞬間流動性指数及びランピネス指数について、バニリン粉末(比較例A)と、エチルバニリン粉末(比較例B)と、これら2つの粉末の単純な乾式混合物(比較例C)と、本発明の方法に従って得た顆粒(実施例4)と、本発明の方法に従って得てスクロースと重量で50/50で混合した、顆粒(実施例5)と、本発明の方法に従って得てマルトースと重量で50/50で混合した顆粒(実施例6)との比較を可能にする。
【0204】
【表1】

【0205】
本発明の方法に従って得た顆粒は、応力下での保管後、バニリンおよびエチルバニリンの粉末の単純乾式混合物のものよりはるかに高いランピネス指数を有することがわかる。
【0206】
マルトデキストリンと重量で50/50で混合したとき、これらの顆粒は、純粋なバニリンのまたは純粋なエチルバニリンの粉末のものに匹敵するランピネス指数を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60℃±2度の融点を有する、バニリン/エチルバニリンモル比が2であるバニリンとエチルバニリンの化合物。
【請求項2】
純粋なバニリンのおよび純粋なエチルバニリンのX線回折スペクトルには存在しないものである幾つかの特性線を角度2θ(単位:°)=20.7−25.6−27.5−28.0に有するX線回折スペクトル(銅K−アルファ1=1.54060Åの線を基準にして測定)を有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
0.5重量%未満の水、好ましくは0.1重量%と0.3重量%の間の水を吸収すること、および40℃、空気中、相対湿度80%で完全に固体のままであることを特徴とする、請求項1および2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
改善された流動性および22℃で1ヶ月の保管後にランピネス(lumpiness)不在を示すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
バニリン/エチルバニリンモル比を2で使用したバニリンとエチルバニリンの、溶融媒体中でのまたはこれらを溶解する溶媒に溶解した状態での、共結晶化を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項6】
バニリンとエチルバニリンの混合物が、加熱および攪拌しながら溶媒に溶解され、この全体が冷却され、得られた化合物の結晶が分離されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有機溶媒が、水および/またはプロトン性もしくは非プロトン性極性有機溶媒であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、

アルコール、好ましくは脂肪族またはアリール脂肪族アルコール、およびさらに好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、β−フェニルエチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、
エーテル−オキシド、好ましくは脂肪族エーテル−オキシド、およびより詳細にはジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、
脂肪族、環式脂肪族または芳香族カルボン酸のアルキルまたはアラルキルエステル、ならびにさらに好ましくは酢酸エチル、酢酸ブチル、サリチル酸ベンジル、ラウリン酸メチル、安息香酸メチル、クエン酸エチル、トリアセチルグリセロールまたはトリアセチン、グリセロールのおよび酢酸のエステル
から選択されることを特徴とする、請求項6および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
溶媒が、水、エタノール、プロピレングリコール、トリアセチンおよびこれらの混合物であることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
使用される溶媒の量が、乾燥物質(バニリン+エチルバニリン)の重量に対する重量で表して、5から60%であることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
2のモル比で使用したバニリンとエチルバニリンの混合物を溶融し、その後、温度を50℃±1℃に低下させることによりこの溶融混合物を冷却し、その後、該混合物が完全に凝固するまでこの温度を維持することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
2のモル比で使用したバニリンとエチルバニリンを、別々にまたは混ぜ合わせて、投入し、60℃から90℃の範囲内で選択されるおよび好ましくは70℃から80℃である温度にこの混合物を加熱することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
好ましくは窒素である不活性ガスの雰囲気下で前記溶融混合物を調製することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
攪拌を伴わずに溶融混合物を冷却することを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
得られた化合物を磨砕技術によって成形することを特徴とする、請求項5から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
溶融混合物をフレーク形成技術によって成形することを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
2のモル比で使用したバニリンとエチルバニリンの混合物を60℃から90℃の範囲内および好ましくは70℃から80℃で選択される温度で溶融し、その後、この温度を50℃±1に低下させることによりこの溶融混合物を冷却し、その後、該混合物が完全に凝固するまでこの温度を維持することによって得られることを特徴とする、バニリンとエチルバニリンの化合物。
【請求項18】
請求項1から4、17のいずれか一項に記載のバニリンとエチルバニリンの少なくとも1つの化合物と、脂肪、脂肪アルコール、糖、多糖類、シリカ、バニリンおよびエチルバニリンから選択される少なくとも1つの賦形剤とを含む組成物。
【請求項19】
賦形剤が、
糖、好ましくはグルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、リボース、マルトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール;転化糖:グルコースシロップ、ならびに脂肪油、好ましくはヤシ油、パーム油、硬化パーム油および硬化大豆油、から得られるスクログリセリド;脂肪酸のスクロエステル、好ましくはモノパルミチン酸スクロース、モノジステアリン酸スクロースおよびジステアリン酸スクロース、
とりわけ小麦、トウモロコシ、大麦、米、カッサバまたは馬鈴薯から得られるデンプン、天然、α化または化工デンプン、およびさらに詳細には高アミロース天然トウモロコシデンプン、α化トウモロコシデンプン、化工トウモロコシデンプン、化工ワキシートウモロコシデンプン、α化ワキシートウモロコシデンプン、化工ワキシートウモロコシデンプン、特に、OSSA/オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、
デンプン加水分解物、
デンプン(小麦、トウモロコシ)または片栗粉の加水分解の結果として生ずるデキストリンおよびマルトデキストリン、ならびにβ−シクロデキストリン、好ましくは、20未満、好ましくは5から19、およびさらに好ましくは6から15のDEを有するマルトデキストリン、
セルロース、このエーテル、とりわけ、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース;またはこのエステル、とりわけ、場合によりナトリウム含有形態でのカルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロース、
ゴム、例えば、カッパ−カラゲナンまたはイオタ−カラゲナンのゴム、ペクチン、グアーガム、キャロブガム、およびキサンタンガム、アルギン酸塩、アラビアゴム、アカシアゴム、寒天、
穀粉、好ましくは小麦粉(天然またはプレゲル);デンプン、好ましくは、馬鈴薯デンプン、
ゼラチン、
シリカ、
抗酸化物質、好ましくはビタミンE、
乳化剤、好ましくはレシチン、
バニリンまたはエチルバニリン
から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
0.1から90重量%の賦形剤、好ましくは、20から60重量%の賦形剤を含むことを特徴とする、請求項18および19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
人および動物の栄養、薬学分野における香味料としての、ならびに化粧品、香料および洗剤産業における香料としての、請求項1から4、17のいずれか一項に記載の化合物、または請求項18から20のいずれか一項に記載の組成物の利用。
【請求項22】
本発明の化合物または組成物が、乾燥ビスケット製造および産業用ケーキ製造の領域において、生地の製造中に、好ましくは脂に;チョコレート製造の分野において、とりわけ、チョコレートバー、クーベルチュールチョコレートまたはチョコレートフィリングの調製のために;すべての種類のキャンディー:シュガードアーモンド、キャラメル、ヌガー、飴玉、フォンダンキャンディーおよびその他、の製造において;酪農製品産業において、およびより詳細には、フレーバーおよびゲル化ミルク、アントルメ、ヨーグルト、アイスおよびアイスクリームにおいて;砂糖にバニリンを含浸させることによる、バニリンシュガーの調製において;様々な飲料、好ましくは、グレナディンおよびチョコレート飲料、の調製において;インスタンド飲料、例えば粉末形態の着香飲料、すべての種類のデザートを作るためのものである粉末形態の、でなければ粉末形態のインスタント食品のチョコレートの調製において;バターの変性に使用されることを特徴とする、請求項21に記載の利用。
【請求項23】
本発明の化合物または組成物が、動物飼料において、とりわけミールの調製のために使用されることを特徴とする、請求項21に記載の利用。
【請求項24】
本発明の化合物または組成物が、臭気マスキング剤として、とりわけ製薬産業において;化粧品分野においてクリーム、乳液およびメーキャップならびに他の製品のために、香料製造において賦香基剤として、ならびに洗剤分野において、とりわけ石鹸製造の際に、使用されることを特徴とする、請求項21に記載の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−506399(P2012−506399A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532578(P2011−532578)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063093
【国際公開番号】WO2010/046239
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】