説明

バンドギャップリファレンス回路

【課題】比較的簡単な回路構成を用いながら、カレントミラー回路を構成するMOSトランジスタのチャネル長又はチャネル幅に誤差が生じても基準電圧値のバラツキが少ない高精度な基準電圧を得ることができるバンドギャップリファレンス回路を提供する。
【解決手段】この回路は、PN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第1の半導体素子と、複数の第1の半導体素子のP型半導体に複数の第1のNチャネルMOSトランジスタを介して電流をそれぞれ供給する複数の第1のPチャネルMOSトランジスタと、第1の半導体素子とは並列接続個数又はサイズが異なるPN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された第2の半導体素子と、第2の半導体素子のP型半導体にインピーダンス素子及び第2のNチャネルMOSトランジスタを介して電流を供給し、複数の第1のPチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成する第2のPチャネルMOSトランジスタとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードやトランジスタ等の半導体素子のバンドギャップを利用して基準電圧や基準電流を生成するバンドギャップリファレンス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な回路において動作の基準となる基準電圧や基準電流を生成するために、バンドギャップリファレンス回路が使用されている。バンドギャップリファレンス回路によれば、温度や電源電圧等が変動しても、高精度で安定した基準電圧や基準電流を得ることができる。バンドギャップリファレンス回路の基本的な構成及び動作に関しては、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0003】
図5は、従来のバンドギャップリファレンス回路の構成を示す回路図の一例である。このバンドギャップリファレンス回路は、PN接合を有するダイオードD1〜D3と、PチャネルMOSトランジスタQP1〜QP3と、NチャネルMOSトランジスタQN1及びQN2と、抵抗R2及びR3とを含んでおり、第1の電源電位VDD及び第2の電源電位VSSが供給されて動作する。
【0004】
図5において、PチャネルMOSトランジスタ及びNチャネルMOSトランジスタのそれぞれについて、チャネル長及びチャネル幅が同サイズのトランジスタQP1〜QP3及びQN1〜QN2はカレントミラー回路を構成しているので、それらのトランジスタにそれぞれ流れる電流の大きさは、理想的には互いに等しくなる。また、ダイオードD2におけるPN接合の並列接続個数又は面積は、ダイオードD1におけるPN接合の並列接続個数又は面積のK倍となっているので、ダイオードD1及びD2にそれぞれ流れる電流の大きさが互いに等しくても、それらの電流密度が互いに異なるように設定されている。
【0005】
ここで、ダイオードD1の飽和電流をIとすると、ダイオードD2の飽和電流はK・Iとなる。また、トランジスタQP1〜QP3にそれぞれ流れる電流をIとし、ダイオードD1〜D3の両端電圧をそれぞれVD1〜VD3とし、抵抗R2及びR3の値をそれぞれR及びRとすると、以下の式が成立する。なお、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、qは電子の電荷である。
D1=(kT/q)ln(I/I) ・・・(1)
D2=(kT/q)ln(I/(K・I)) ・・・(2)
D1=I・R+VD2 ・・・(3)
【0006】
式(3)を変形して式(1)及び式(2)を代入することにより、次式(4)が得られる。
I=(VD1−VD2)/R=(kT/qR)ln(K) ・・・(4)
従って、トランジスタQP3のドレインから出力される基準電圧VREFは、次式(5)によって表される。
REF=I・R+VD3
=(R/R)(kT/q)ln(K)+VD3 ・・・(5)
【0007】
基準電圧VREFの温度依存性をキャンセルするためには、式(5)を絶対温度Tで微分した値がゼロになれば良い。
dVREF/dT=(R/R)(k/q)ln(K)+dVD3/dT=0
・・・(6)
式(6)において、dVD3/dTは負の温度特性を持っているので、(R/R)(k/q)ln(K)の値をこれに釣り合う正の値とすれば、基準電圧VREFの温度依存性をキャンセルすることが可能である。
【0008】
しかしながら、カレントミラー回路を構成するトランジスタQP1〜QP3及びQN1〜QN2のチャネル長又はチャネル幅にばらつきが生じた場合には、それらのトランジスタの電流又は電圧に誤差が発生して、基準電圧VREFの値にバラツキが生じて高精度の基準電圧を得ることができなくなってしまう。
【非特許文献1】谷口研二、「CMOSアナログ回路入門」第3版、CQ出版株式会社、2005年9月1日、p.120
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、比較的簡単な回路構成を用いながら、カレントミラー回路を構成するトランジスタのチャネル長又はチャネル幅に誤差が生じても基準電圧のバラツキが少ない高精度な基準電圧を得ることができるバンドギャップリファレンス回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の観点に係るバンドギャップリファレンス回路は、PN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第1の半導体素子と、ゲートとドレインとが互いに接続され、複数の第1の半導体素子のP型半導体にソースがそれぞれ接続された複数の第1のNチャネルMOSトランジスタと、複数の第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにドレインがそれぞれ接続され、複数の第1のNチャネルMOSトランジスタを介して複数の第1の半導体素子に電流をそれぞれ供給する複数の第1のPチャネルMOSトランジスタと、第1の半導体素子とは並列接続個数又はサイズが異なるPN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された第2の半導体素子と、第2の半導体素子のP型半導体に第1の端子が接続されたインピーダンス素子と、複数の第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにゲートが接続され、インピーダンス素子の第2の端子にソースが接続された第2のNチャネルMOSトランジスタと、複数の第1のPチャネルMOSトランジスタのゲートにゲート及びドレインが接続され、第2のNチャネルMOSトランジスタのドレインにゲート及びドレインが接続され、第2のNチャネルMOSトランジスタ及びインピーダンス素子を介して第2の半導体素子に電流を供給する第2のPチャネルMOSトランジスタとを具備する。
【0011】
本発明の第1の観点に係るバンドギャップリファレンス回路は、複数の第1のPチャネルMOSトランジスタ及び第2のPチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成し、ドレインから電流を供給する第3のPチャネルMOSトランジスタと、第3のPチャネルMOSトランジスタのドレインに接続され、基準電位を発生する第2のインピーダンス素子及びPN接合を有する第3の半導体素子とをさらに具備するようにしても良い。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係るバンドギャップリファレンス回路は、PN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された第1の半導体素子と、ゲートとドレインとが互いに接続され、第1の半導体素子のP型半導体にソースが接続された第1のNチャネルMOSトランジスタと、第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにドレインが接続され、第1のNチャネルMOSトランジスタを介して第1の半導体素子に電流を供給する第1のPチャネルMOSトランジスタと、第1の半導体素子とは並列接続個数又はサイズが異なるPN接合を各々が有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第2の半導体素子と、複数の第2の半導体素子のP型半導体に第1の端子がそれぞれ接続された複数のインピーダンス素子と、第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにゲートが接続され、複数のインピーダンス素子の第2の端子にソースがそれぞれ接続された複数の第2のNチャネルMOSトランジスタと、第1のPチャネルMOSトランジスタのゲートにゲート及びドレインがそれぞれ接続され、複数の第2のNチャネルMOSトランジスタのドレインにゲート及びドレインがそれぞれ接続され、複数の第2のNチャネルMOSトランジスタ及び複数のインピーダンス素子を介して複数の第2の半導体素子に電流をそれぞれ供給する複数の第2のPチャネルMOSトランジスタとを具備する。
【0013】
本発明の第2の観点に係るバンドギャップリファレンス回路は、第1のPチャネルMOSトランジスタ及び複数の第2のPチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成し、ドレインから電流を供給する第3のPチャネルMOSトランジスタと、第3のPチャネルMOSトランジスタのドレインに接続され、基準電位を発生する第2のインピーダンス素子及びPN接合を有する第3の半導体素子とをさらに具備するようにしても良い。
【0014】
さらに、本発明の第3の観点に係るバンドギャップリファレンス回路は、PN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第1の半導体素子と、ゲートとドレインとが互いに接続され、複数の第1の半導体素子のP型半導体にソースがそれぞれ接続された複数の第1のNチャネルMOSトランジスタと、複数の第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにドレインがそれぞれ接続され、複数の第1のNチャネルMOSトランジスタを介して複数の第1の半導体素子に電流をそれぞれ供給する複数の第1のPチャネルMOSトランジスタと、第1の半導体素子とは並列接続個数又はサイズが異なるPN接合を各々が有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第2の半導体素子と、複数の第2の半導体素子のP型半導体に第1の端子がそれぞれ接続された複数のインピーダンス素子と、複数の第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにゲートが接続され、複数のインピーダンス素子の第2の端子にソースがそれぞれ接続された複数の第2のNチャネルMOSトランジスタと、複数の第1のPチャネルMOSトランジスタのゲートにゲート及びドレインがそれぞれ接続され、複数の第2のNチャネルMOSトランジスタのドレインにゲート及びドレインがそれぞれ接続され、複数の第2のNチャネルMOSトランジスタ及び複数のインピーダンス素子を介して複数の第2の半導体素子に電流をそれぞれ供給する複数の第2のPチャネルMOSトランジスタとを具備する。
【0015】
本発明の第3の観点に係るバンドギャップリファレンス回路は、複数の第1のPチャネルMOSトランジスタ及び複数の第2のPチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成し、ドレインから電流を供給する第3のPチャネルMOSトランジスタと、第3のPチャネルMOSトランジスタのドレインに接続され、基準電位を発生する第2のインピーダンス素子及びPN接合を有する第3の半導体素子とをさらに具備するようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の第1の半導体素子をそれぞれ含む複数の電流経路、及び/又は、複数の第2の半導体素子をそれぞれ含む複数の電流経路を設けたことにより、比較的簡単な回路構成を用いながら、カレントミラー回路を構成するトランジスタのチャネル長又はチャネル幅に誤差が生じても基準電圧の値に与える誤差を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るバンドギャップリファレンス回路の構成を示す回路図である。このバンドギャップリファレンス回路は、第1の電源電位VDD及び第2の電源電位VSSが供給されて動作する。一般的には、第1の電源電位VDDと第2の電源電位VSSとの差(VDD−VSS)が電源電圧となり、第2の電源電位VSSが接地電位(0V)である場合には、VDDが電源電圧となる。
【0018】
本発明の第1の実施形態においては、図5に示すダイオードD1に相当する半導体素子を含む電流経路がM個設けられる。ここで、Mは2以上の整数である。図1においては、PN接合を有する半導体素子としてダイオードD11、D12、D13、・・・をそれぞれ含む電流経路A1、A2、A3、・・・が示されている。なお、PN接合を有する半導体素子としては、ダイオードの他に、バイポーラトランジスタやジャンクションFET(電界効果トランジスタ)を用いることも可能である。
【0019】
ここで、ダイオードD2におけるPN接合の並列接続個数又は面積は、ダイオードD11等におけるPN接合の並列接続個数又は面積のK倍となっているので、ダイオードD11及びD2にそれぞれ流れる電流の大きさが互いに等しくても、それらの電流密度が互いに異なるように設定されている。先に説明した式(6)において、dVD3/dTは約−1.5mV/℃の負の温度特性を持っていて、d/dT・(kT/q)は約0.087mV/℃の正の温度特性を持っているので、(R/R)ln(K)の値を、例えば、R:R=10:1及びK=6等として、17〜23程度にすることができる。
【0020】
電流経路A1においては、PチャネルMOSトランジスタQP11と、NチャネルMOSトランジスタQN11と、ダイオードD11とが直列に接続されており、電流経路A2においては、PチャネルMOSトランジスタQP12と、NチャネルMOSトランジスタQN12と、ダイオードD12とが直列に接続されており、電流経路A3においては、PチャネルMOSトランジスタQP13と、NチャネルMOSトランジスタQN13と、ダイオードD13とが直列に接続されている。
【0021】
一方、電流経路Bにおいては、PチャネルMOSトランジスタQP2と、NチャネルMOSトランジスタQN2と、インピーダンス素子としての抵抗R2と、ダイオードD2とが直列に接続されており、電流経路Cにおいては、PチャネルMOSトランジスタQP3と、インピーダンス素子としての抵抗R3と、ダイオードD3とが直列に接続されている。基準電圧VREFは、トランジスタQP3のドレインから出力される。なお、インピーダンス素子としては、抵抗の他に、ゲートとドレインとが互いに接続されたトランジスタ等を用いることも可能である。
【0022】
図1において、チャネル長及びチャネル幅が同サイズのトランジスタQP11、QP12、・・・のゲートと、トランジスタQP2のゲート及びドレインと、トランジスタQP3のゲートとが、互いに接続されている。また、チャネル長及びチャネル幅が同サイズのトランジスタQN11、QN12、・・・のゲート及びドレインと、トランジスタQN2のゲートとが、互いに接続されている。これにより、トランジスタQP11、QP12、・・・、QP2、QP3、及び、トランジスタQN11、QN12、・・・、QN2はカレントミラー回路を構成するので、それらのトランジスタにそれぞれ流れる電流の大きさは、理想的には互いに等しくなる筈である。
【0023】
しかしながら、実際には、トランジスタのチャネル長又はチャネル幅にばらつきが生じるので、それらのトランジスタの電流又は電圧に誤差が発生して、基準電圧VREFの値にバラツキが生じて高精度の基準電圧を得ることができなくなってしまう。そこで、本発明の第1の実施形態においては、電流経路A1と並列に電流経路A2、A3、・・・を接続することにより、M個の電流経路Aにおける電流又は電圧の誤差の影響を平均化して、基準電圧VREFの値にバラツキが小さくなり高精度の基準電圧が得られるように改善している。
【0024】
図2は、本発明の効果をシミュレーションで確認するために用いられるバンドギャップリファレンス回路の構成を示す回路図である。このバンドギャップリファレンス回路においては、図1に示すダイオードD11〜D13及びD2の替わりにPNPバイポーラトランジスタQ11〜Q13及びQ2が用いられており、また、トランジスタQP3のドレインから出力される電流を測定電圧Vに変換するために、図1に示す抵抗R3及びダイオードD3の替わりにNチャネルMOSトランジスタQN3のゲート及びドレインがトランジスタQP3のドレインに接続されている。ここで、トランジスタQ11〜Q13をそれぞれ含む電流経路A1〜A3の内の所定の電流経路が接続されている場合の測定電圧Vが、汎用のシミュレーションプログラムを用いて算出される。なお、上記のPNPバイポーラトランジスタの替わりに、NPNバイポーラトランジスタを用いても良い。
【0025】
図3は、本発明の効果を確認するためのシミュレーションの結果を示す図である。図3において、曲線(1a)〜(3a)は、トランジスタのチャネル長が設計値(6μm)通りである場合の測定電圧Vを示している。曲線(1a)は、電流経路A1のみが接続されている場合の測定電圧Vを表しており、曲線(2a)は、電流経路A1及びA2が接続されている場合の測定電圧Vを表しており、曲線(3a)は、電流経路A1〜A3が接続されている場合の測定電圧Vを表している。図3に示すように、それらの結果は同一である。
【0026】
図3において、曲線(1b)〜(3b)は、図2に示すトランジスタQN11のチャネル長が設計値である6μmから外れて5μmになった場合の測定電圧Vを示している。曲線(1b)は、電流経路A1のみが接続されている場合の測定電圧Vを表しており、曲線(2b)は、電流経路A1及びA2が接続されている場合の測定電圧Vを表しており、曲線(3b)は、電流経路A1〜A3が接続されている場合の測定電圧Vを表している。
【0027】
図3に示すように、電流経路Aの数(M)が増加するにつれて、トランジスタQP3から出力される電流の誤差が減少することが分かる。具体的には、M=2の場合に誤差が約1/2となり、M=3の場合に誤差が約1/3となる。従って、Mの値は大きいほど良いが、誤差を約1/10以下とするためには、M≧10とすることが望ましい。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係るバンドギャップリファレンス回路の構成を示す回路図である。本発明の第2の実施形態においては、図5に示すダイオードD2に相当する半導体素子を含む電流経路がN個設けられる。ここで、Nは2以上の整数である。図4においては、PN接合を有する半導体素子としてダイオードD21、D22、D23、・・・をそれぞれ含む電流経路B1、B2、B3、・・・が示されている。なお、PN接合を有する半導体素子としては、ダイオードの他に、バイポーラトランジスタやジャンクションFET(電界効果トランジスタ)を用いることも可能である。
【0029】
ここで、ダイオードD21等におけるPN接合の並列接続個数又は面積は、ダイオードD1におけるPN接合の並列接続個数又は面積のK倍となっているので、ダイオードD1及びD21にそれぞれ流れる電流の大きさが互いに等しくても、それらの電流密度が互いに異なるように設定されている。先に説明した式(6)において、dVD3/dTは約−1.5mV/℃の負の温度特性を持っていて、d/dT・(kT/q)は約0.087mV/℃の正の温度特性を持っているので、(R/R)ln(K)の値を、例えば、R:R=10:1及びK=6等として、17〜23程度とすることができる。
【0030】
電流経路Aにおいては、PチャネルMOSトランジスタQP1と、NチャネルMOSトランジスタQN1と、ダイオードD1とが直列に接続されている。一方、電流経路B1においては、PチャネルMOSトランジスタQP21と、NチャネルMOSトランジスタQN21と、インピーダンス素子としての抵抗R21と、ダイオードD21とが直列に接続されており、電流経路B2においては、PチャネルMOSトランジスタQP22と、NチャネルMOSトランジスタQN22と、インピーダンス素子としての抵抗R22と、ダイオードD22とが直列に接続されており、電流経路B3においては、PチャネルMOSトランジスタQP23と、NチャネルMOSトランジスタQN23と、インピーダンス素子としての抵抗R23と、ダイオードD23とが直列に接続されている。
【0031】
また、電流経路Cにおいては、PチャネルMOSトランジスタQP3と、インピーダンス素子としての抵抗R3と、ダイオードD3とが直列に接続されている。基準電圧VREFは、トランジスタQP3のドレインから出力される。なお、インピーダンス素子としては、抵抗の替わりに、ゲートとドレインとが互いに接続されたトランジスタ等を用いることも可能である。
【0032】
図4において、チャネル長又はチャネル幅が同サイズのトランジスタQP1のゲートと、トランジスタQP21、QP22、・・・のゲート及びドレインと、トランジスタQP3のゲートとが、互いに接続されている。また、チャネル長又はチャネル幅が同サイズのトランジスタQN1のゲート及びドレインと、トランジスタQN21、QN22、・・・のゲートとが、互いに接続されている。これにより、トランジスタQP1、QP21、QP22、・・・、QP3、及び、トランジスタQN1、QN21、QN22、・・・はカレントミラー回路を構成するので、それらのトランジスタにそれぞれ流れる電流の大きさは、理想的には互いに等しくなる筈である。
【0033】
しかしながら、実際には、トランジスタのチャネル長又はチャネル幅にばらつきが生じるので、それらのトランジスタの電流又は電圧に誤差が発生して、期待する基準電圧VREFの値を得ることができなくなってしまう。そこで、本発明の第2の実施形態においては、電流経路B1と並列に電流経路B2、B3、・・・を接続することにより、N個の電流経路Bにおける電流又は電圧の誤差の影響を平均化して、期待する基準電圧VREFの値を得られるように改善している。
【0034】
電流経路Bの数(N)が増加するにつれて、トランジスタQP3から出力される電流の誤差が減少する。具体的には、N=2の場合に誤差が約1/2となり、N=3の場合に誤差が約1/3となる。従って、Nの値は大きいほど良いが、誤差を約1/10以下とするためには、N≧10とすることが望ましい。
【0035】
さらに、本発明の第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせることにより、M個の電流経路AとN個の電流経路Bとを設けるようにしても良い。その場合には、トランジスタのチャネル長又はチャネル幅のばらつきの影響をさらに低減することができる。
【0036】
ところで、ASIC(Application Specific IC:特定用途向けIC)等の半導体集積回路においては、各種の論理回路を実現するための複数のセルを組み合わせてレイアウト領域内に配置し、それらのセル間を配線することにより、レイアウト設計が行われている。各種のセルの中でも、I/Oセル(入出力セル)の数は多いので、レイアウト設計のために用いるライブラリにおいて、本発明において増設される電流経路A2、A3、・・・、及び/又は、電流経路B2、B3、・・・を予めI/Oセルに組み込んでおけば、本発明に係るバンドギャップリファレンス回路の実現を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバンドギャップリファレンス回路の回路図。
【図2】本発明の効果を確認するためのバンドギャップリファレンス回路の回路図。
【図3】本発明の効果を確認するためのシミュレーションの結果を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るバンドギャップリファレンス回路の回路図。
【図5】従来のバンドギャップリファレンス回路の回路図。
【符号の説明】
【0038】
D1〜D23 ダイオード、 QP1〜QP23 PチャネルMOSトランジスタ、 QN1〜QN23 NチャネルMOSトランジスタ、 R2〜R23 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第1の半導体素子と、
ゲートとドレインとが互いに接続され、前記複数の第1の半導体素子のP型半導体にソースがそれぞれ接続された複数の第1のNチャネルMOSトランジスタと、
前記複数の第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにドレインがそれぞれ接続され、前記複数の第1のNチャネルMOSトランジスタを介して前記複数の第1の半導体素子に電流をそれぞれ供給する複数の第1のPチャネルMOSトランジスタと、
前記第1の半導体素子とは並列接続個数又はサイズが異なるPN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された第2の半導体素子と、
前記第2の半導体素子のP型半導体に第1の端子が接続されたインピーダンス素子と、
前記複数の第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにゲートが接続され、前記インピーダンス素子の第2の端子にソースが接続された第2のNチャネルMOSトランジスタと、
前記複数の第1のPチャネルMOSトランジスタのゲートにゲート及びドレインが接続され、前記第2のNチャネルMOSトランジスタのドレインに前記ゲート及びドレインが接続され、前記第2のNチャネルMOSトランジスタ及び前記インピーダンス素子を介して前記第2の半導体素子に電流を供給する第2のPチャネルMOSトランジスタと、
を具備するバンドギャップリファレンス回路。
【請求項2】
前記第2のPチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成し、ドレインから電流を供給する第3のPチャネルMOSトランジスタと、
前記第3のPチャネルMOSトランジスタのドレインに接続され、基準電位を発生する第2のインピーダンス素子及びPN接合を有する第3の半導体素子と、
をさらに具備する、請求項1記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項3】
PN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された第1の半導体素子と、
ゲートとドレインとが互いに接続され、前記第1の半導体素子のP型半導体にソースが接続された第1のNチャネルMOSトランジスタと、
前記第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにドレインが接続され、前記第1のNチャネルMOSトランジスタを介して前記第1の半導体素子に電流を供給する第1のPチャネルMOSトランジスタと、
前記第1の半導体素子とは並列接続個数又はサイズが異なるPN接合を各々が有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第2の半導体素子と、
前記複数の第2の半導体素子のP型半導体に第1の端子がそれぞれ接続された複数のインピーダンス素子と、
前記第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにゲートが接続され、前記複数のインピーダンス素子の第2の端子にソースがそれぞれ接続された複数の第2のNチャネルMOSトランジスタと、
前記第1のPチャネルMOSトランジスタのゲートにゲート及びドレインがそれぞれ接続され、前記複数の第2のNチャネルMOSトランジスタのドレインに前記ゲート及びドレインがそれぞれ接続され、前記複数の第2のNチャネルMOSトランジスタ及び前記複数のインピーダンス素子を介して前記複数の第2の半導体素子に電流をそれぞれ供給する複数の第2のPチャネルMOSトランジスタと、
を具備するバンドギャップリファレンス回路。
【請求項4】
前記複数の第2のPチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成し、ドレインから電流を供給する第3のPチャネルMOSトランジスタと、
前記第3のPチャネルMOSトランジスタのドレインに接続され、基準電位を発生する第2のインピーダンス素子及びPN接合を有する第3の半導体素子と、
をさらに具備する、請求項3記載のバンドギャップリファレンス回路。
【請求項5】
PN接合を有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第1の半導体素子と、
ゲートとドレインとが互いに接続され、前記複数の第1の半導体素子のP型半導体にソースがそれぞれ接続された複数の第1のNチャネルMOSトランジスタと、
前記複数の第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにドレインがそれぞれ接続され、前記複数の第1のNチャネルMOSトランジスタを介して前記複数の第1の半導体素子に電流をそれぞれ供給する複数の第1のPチャネルMOSトランジスタと、
前記第1の半導体素子とは並列接続個数又はサイズが異なるPN接合を各々が有し、N型半導体に電源電位VSSが接続された複数の第2の半導体素子と、
前記複数の第2の半導体素子のP型半導体に第1の端子がそれぞれ接続された複数のインピーダンス素子と、
前記複数の第1のNチャネルMOSトランジスタのゲート及びドレインにゲートが接続され、前記複数のインピーダンス素子の第2の端子にソースがそれぞれ接続された複数の第2のNチャネルMOSトランジスタと、
前記複数の第1のPチャネルMOSトランジスタのゲートにゲート及びドレインがそれぞれ接続され、前記複数の第2のNチャネルMOSトランジスタのドレインに前記ゲート及びドレインがそれぞれ接続され、前記複数の第2のNチャネルMOSトランジスタ及び前記複数のインピーダンス素子を介して前記複数の第2の半導体素子に電流をそれぞれ供給する複数の第2のPチャネルMOSトランジスタと、
を具備するバンドギャップリファレンス回路。
【請求項6】
前記複数の第2のPチャネルMOSトランジスタとカレントミラー回路を構成し、ドレインから電流を供給する第3のPチャネルMOSトランジスタと、
前記第3のPチャネルMOSトランジスタのドレインに接続され、基準電位を発生する第2のインピーダンス素子及びPN接合を有する第3の半導体素子と、
をさらに具備する、請求項5記載のバンドギャップリファレンス回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−199482(P2009−199482A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42397(P2008−42397)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】