説明

バーナ装置

【課題】ディーゼル酸化触媒を迅速に昇温して、フィルタ再生処理を早期に実行する。
【解決手段】ディーゼルエンジン100の排気経路110において、排気ガスを酸化するディーゼル酸化触媒130の前段に配置される本発明のバーナ装置200は、排気経路から分流した排気ガスが流入する流入路210と、排気ガスと燃料との混合気を燃焼し、燃焼後の排気ガスを排気経路に流出させる燃焼室212と、燃焼室に設けられ、燃焼を促進するバーナ触媒214と、バーナ触媒に燃料を供給する燃焼燃料供給部216と、流入路から燃焼室へ流入する流量を制限する燃焼流量制限機構と、バーナ触媒を火炎で加熱する火炎加熱部220とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させてディーゼルエンジンの排気ガスを昇温するバーナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる煤等の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を除去するパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が普及している。このパティキュレートフィルタに粒子状物質が堆積すると目詰まりを起こす。その場合、排気ガスを昇温し堆積した粒子状物質を燃焼させるフィルタ再生処理が必要となる。そこで、排気経路におけるパティキュレートフィルタの前段に、燃料を燃焼して排気ガスを昇温するディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)が設けられている。
【0003】
しかし、ディーゼル酸化触媒は、エンジンの始動時や低負荷時等、排気ガスの温度が低く酸化が促進される活性温度に達していない間、排気ガスを昇温できず、その後段のパティキュレートフィルタにおいてフィルタ再生処理を行うことができない。そのため、ディーゼル酸化触媒を迅速に温める技術が望まれる。触媒を温める手段としては、例えば、第1触媒体とそれに隣接する第2触媒体とを備え、第2触媒体を電気ヒータで加熱して燃焼を開始させ、その燃焼熱が第1触媒体に伝熱することで第1触媒体を活性温度以上に昇温する燃焼装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3793609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、電気ヒータでディーゼル酸化触媒を温める場合、排気ガスの熱のみでディーゼル酸化触媒を温めるより、迅速に活性温度以上にすることができる。しかし、ディーゼル酸化触媒は、排気ガスの流れを直接受けて放熱しているため、昇温には、ディーゼル酸化触媒に放熱流量以上の熱を与えて活性温度まで昇温可能な大容量の電気ヒータが必要であった。
【0006】
また、上述した特許文献1の技術をディーゼル酸化触媒に用い、パティキュレートフィルタの前段に2つのディーゼル酸化触媒を設け、その一方のみを電気ヒータで温める場合、仮に電気ヒータで温める方のディーゼル酸化触媒を、比較的小さい体積として昇温し易くしたとしても、その燃焼熱も体積に比例して小さくなるため、もう一方のディーゼル酸化触媒の昇温に時間を要する結果を招く。
【0007】
さらに、ディーゼル酸化触媒に、着火部で着火した火炎を直接当てて昇温する場合、排気ガスの流速が速かったり、排気ガスの酸素濃度が低かったりして、失火してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、ディーゼル酸化触媒を迅速に昇温して、フィルタ再生処理を早期に実行することが可能なバーナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、ディーゼルエンジンの排気経路において、排気ガスを酸化するディーゼル酸化触媒の前段に配置される、本発明のバーナ装置は、排気経路から分流した排気ガスが流入する流入路と、排気ガスと燃料との混合気を燃焼し、燃焼後の排気ガスを排気経路に流出させる燃焼室と、燃焼室に設けられ、燃焼を促進するバーナ触媒と、バーナ触媒に燃料を供給する燃焼燃料供給部と、流入路から燃焼室へ流入する排気ガスの流量を制限する燃焼流量制限機構と、バーナ触媒を火炎で加熱する火炎加熱部とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために、ディーゼルエンジンの排気経路において、排気ガスを酸化するディーゼル酸化触媒の前段に配置される、本発明の他のバーナ装置は、排気経路から分流した排気ガスが流入する流入路と、排気ガスと燃料との混合気を燃焼し、燃焼後の排気ガスを排気経路に流出させる燃焼室と、燃焼室に設けられ、燃焼を促進するバーナ触媒と、バーナ触媒に燃料を供給する燃焼燃料供給部と、流入路から燃焼室へ流入する排気ガスの流量を制限する燃焼流量制限機構と、バーナ触媒に併置されたヒータとを備えることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために、ディーゼルエンジンの排気経路において、排気ガスを酸化するディーゼル酸化触媒の前段に配置される、本発明の他のバーナ装置は、排気経路から分流した排気ガスが流入する流入路と、排気ガスと燃料との混合気を燃焼し、燃焼後の排気ガスを排気経路に流出させる燃焼室と、燃焼室に設けられ、燃焼を促進するバーナ触媒と、バーナ触媒に燃料を供給する燃焼燃料供給部と、流入路から燃焼室へ流入する排気ガスの流量を制限する燃焼流量制限機構と、バーナ触媒を通電させる電源部とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記バーナ装置は、ディーゼルエンジンにおける、吸気絞り、排気絞り、またはポスト噴射によって、排気温度を上昇させるエンジン制御部をさらに備えてもよい。
【0013】
上記バーナ装置は、バーナ触媒の温度を検知する温度検知部と、バーナ触媒の温度が活性温度未満である場合に、火炎加熱部、ヒータ、電源部、または、エンジン制御部を機能させる機能制御部とをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバーナ装置によれば、ディーゼル酸化触媒を迅速に昇温して、フィルタ再生処理を早期に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ディーゼルエンジンの排気構造を説明するための説明図である。
【図2】第1の実施形態におけるバーナ装置の構造を説明するための説明図である。
【図3】第1の実施形態におけるバーナ装置の構造を説明するための説明図である。
【図4】吸気絞りによる排気ガスの昇温効果を説明するための説明図である。
【図5】第2の実施形態におけるバーナ装置の構造を説明するための説明図である。
【図6】第3の実施形態におけるバーナ装置の構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、ディーゼルエンジン100の排気構造を説明するための説明図である。図1(a)に示すように、ディーゼルエンジン100は、ピストンによってシリンダ内の空気を圧縮して高温高圧化し、燃料タンク102に蓄えられた、軽油、および重油等の燃料を燃料ポンプ104や噴射ポンプ106で昇圧して噴射し、爆発を起こして、その爆発によって生じるエネルギーを動力に変えるレシプロエンジンである。過給機108は、ディーゼルエンジン100の排気ガスのエネルギーでタービンを回転し、吸気を圧縮して吸気圧を高めることでエンジン出力を向上する装置である。
【0018】
排気経路110は、ディーゼルエンジン100から排出された排気ガスを外部に排気するための配管112によって形成され、配管112の一端部がディーゼルエンジン100の排気口と接続され、他端部がディーゼル酸化触媒130に接続される。パティキュレートフィルタ120は、ディーゼルエンジン100の排気ガスに含まれる煤等の粒子状物質を、例えば、10ミクロン程度の孔で捕集して除去する、セラミックや金属のフィルタで構成される。パティキュレートフィルタ120のフィルタ120aは、図1(b)の断面図に示すように、粒子状物質122が堆積し過ぎると目詰まり124を起こす。目詰まり124は排気圧の上昇を招き燃費の悪化や出力低下につながる。
【0019】
ディーゼル酸化触媒130は、ディーゼルエンジン100とパティキュレートフィルタ120の間に設けられ、例えばプラチナ、パラジウム等の触媒で構成され、ディーゼルエンジン100の排気ガス中に含まれる酸素を利用し未燃の燃料を触媒燃焼させることによって排気ガスを昇温する。昇温された排気ガスは、後段のパティキュレートフィルタ120に流れ、パティキュレートフィルタ120に堆積した粒子状物質122を燃やし二酸化炭素として排気させ、パティキュレートフィルタ120の目詰まりを解消する(フィルタ再生処理)。
【0020】
このようなフィルタ再生処理は、パティキュレートフィルタ120が目詰まりを起こしたとき、例えば、目詰まりが解消されるまで実行されるバッチ処理である。しかし、フィルタ再生処理を試みるとき、ディーゼルエンジン100の始動時や低負荷時等、ディーゼル酸化触媒130が活性温度に達していない場合、触媒燃焼が生じず排気ガスを昇温できないため、パティキュレートフィルタ120のフィルタ再生処理を行うことができない。
【0021】
そこで、以下の実施形態では、ディーゼルエンジン100とディーゼル酸化触媒130との間の排気経路110に設けられ、ディーゼル酸化触媒130を迅速に昇温して、パティキュレートフィルタ120のフィルタ再生処理を実行することが可能なバーナ装置200、300、400についてそれぞれ詳述する。
【0022】
(第1の実施形態)
図2、3は、第1の実施形態におけるバーナ装置200の構造を説明するための説明図である。図2に示すように、バーナ装置200は、流入路210と、燃焼室212と、バーナ触媒214と、燃焼燃料供給部216と、仕切部材218と、火炎加熱部220と、エンジン制御部222と、過給機制御部224と、温度検知部226と、機能制御部228とを備える。
【0023】
流入路210は、排気経路110から分流した排気ガス(Exhausted Gas:図中、Exh.Gasで示す)が、排気経路110を流れる排気ガスの流量の20%程度流入する。燃焼室212は、流入路210からの排気ガスと燃料との混合気を燃焼するための領域であり、仕切部材218、260と、バーナ装置200の外形を形成する外壁230と、配管112の外周面に相当する開口部232とで囲まれている。
【0024】
バーナ触媒214は、基材(図示せず)と、その基材を覆う例えばプラチナ、パラジウム等の触媒のコーディング材で構成され、燃焼室212内に設けられており、混合気の燃焼を促進する。ここでは、より触媒燃焼を促進するため、バーナ触媒214を2重に配置しているが1重としてもよいし、3重以上としてもよい。燃焼燃料供給部216は、例えば燃料噴射装置(インジェクタ)で構成され、燃焼室212内に燃料を霧状に噴霧して、バーナ触媒214に燃料を供給する。
【0025】
仕切部材218は、孔218aと共に燃焼流量制限機構として機能する。燃焼流量制限機構は、流入路210と燃焼室212とを隔て、流入路210から燃焼室212へ流入する流量を、例えば、流入路210を流れる排気ガスの流量の80%程度、すなわち排気経路110を流れる排気ガスの流量の16%程度に制限する。具体的に、燃焼流量制限機構は、孔218a(図3(a)のXX断面図参照)が開いており、この孔218aを介して流入路210から燃焼室212に流入する排気ガスの流量を制限することによって、燃焼室212内の排気ガスの流速が抑制される。
【0026】
かかる流速を抑制する構成により、バーナ触媒214による触媒燃焼が安定化する。そのため、流速を抑制する構成を取らない場合より、低温、低酸素濃度の排気ガスでも、バーナ触媒214は、触媒燃焼を開始可能となる。また、本実施形態のバーナ装置200は、さらに触媒燃焼を迅速に開始するため、火炎加熱部220を備える。
【0027】
火炎加熱部220は、バーナ触媒214を火炎や高温の排気ガスで加熱する。火炎加熱部220は、火炎生成室250と、火炎燃料供給部252と、着火部254と、燃料保持部256と、仕切部材258、260と、邪魔板262とを含んで構成される。
【0028】
火炎生成室250は、バーナ触媒214を加熱するための火炎が生成されるための領域であり、火炎流量制限機構である仕切部材258、260と外壁230とで囲まれる。火炎燃料供給部252は、例えば燃料噴射装置で構成され、火炎生成室250に燃料を供給する。着火部254は、燃料(液体燃料を用いる場合、着火部254の熱で液体燃料が気化した燃料)と排気ガスとの混合気を、着火温度以上に加熱して着火させるグロープラグで構成されている。燃料保持部256は、例えば、金網、焼結金属、金属繊維、ガラス布、セラミック多孔体、セラミックファイバ、軽石等によって形成され、着火部254の先端に設置され、火炎燃料供給部252から供給された燃料を燃焼するまで一時的に保持する。
【0029】
仕切部材258は、流入路210と火炎生成室250とを隔て、仕切部材260は、火炎生成室250と燃焼室212とを隔てる。そして、仕切部材258、260は、それぞれに設けられた孔258a、260aに基づいて、火炎流量制限機構として機能する。火炎流量制限機構は、火炎生成室250への流入流量および火炎生成室250からの流出流量のいずれか一方または両方を制限する。例えば、火炎流量制限機構は、火炎生成室250に流入する流量を、流入路210を流れる排気ガスの流量の20%程度、すなわち排気経路110を流れる排気ガスの流量の4%程度に制限する。
【0030】
具体的に、火炎流量制限機構は、孔258a(図3(b)のYY断面図参照)を通じて流入路210から火炎生成室250に排気ガスを通気可能とし、孔260aによって火炎生成室250から燃焼室212に燃焼後の排気ガスを通気可能としており、この孔258a、260aを介して火炎生成室250への流入流量および火炎生成室250からの流出流量を制限することによって、火炎生成室250内の排気ガスの流速が抑制される。
【0031】
邪魔板262は、流入路210から流入する排気ガスの着火部254に直接衝突する流路を妨げるように配置される。かかる構成により、着火部254付近の排気ガスや混合気の流速を抑制でき、着火性が向上する。
【0032】
エンジン制御部222は、ディーゼルエンジン100における、吸気絞り、排気絞り、またはポスト噴射によって、排気温度を上昇させる。ここで、ポスト噴射は、ディーゼルエンジン100におけるメイン噴射の後、排気工程が終了するまでに、シリンダ内に燃料を噴射する処理である。ポスト噴射によって、膨張工程で熱を奪われた排気ガス中でさらに燃焼を起こし排気ガスの温度を昇温することができる。
【0033】
図4は、吸気絞りによる排気ガスの昇温効果を説明するための説明図である。図4では、図1に示す位置A〜Dにおける排気ガスの温度を示す。図4に示すように、吸気圧20kPa、0kPa、−20kPa、−40kPaのそれぞれの条件において、位置A〜Dの排気ガスの温度を測定すると、吸気絞りを行って吸気圧が低いときの方が排気ガスの温度が高いことが分かる。これは、燃焼によって生じる熱量が変わらなければ、ディーゼルエンジン100を通過する気体の質量が少ない方が熱容量が減り昇温し易いためである。また、特に、吸気圧が−40kPaのとき、位置Dでは、20kPaのときに比べて約120度の温度上昇が見られ、他の位置に比べて温度の上昇幅が大きい。これは、排気ガスに含まれる未燃の燃料が、活性温度以上に温められたディーゼル酸化触媒130によって酸化され排気ガスが昇温したためである。
【0034】
ディーゼルエンジン100は、吸気絞りに限らず、排気絞りやポスト噴射によっても、排気ガスに含まれる熱量を増やすことができる。これらの制御を行った場合、ディーゼルエンジン100から排気される段階で排気ガスの温度をある程度高めることができる。しかし、ディーゼルエンジン100の制御による排気ガスの高温化のみでは、昇温時間は短いものの、昇温できる温度幅に限界がある。そこで、本実施形態のバーナ装置200は、ディーゼルエンジン100の制御による排気ガスの高温化と、バーナ触媒214による燃焼とを併用する。かかる構成により、ディーゼルエンジン100から排気される段階で高温である排気ガスと、火炎加熱部220によって、バーナ装置200のバーナ触媒214をより迅速に活性温度まで昇温でき、また、バーナ装置200で排気ガスを昇温する温度幅も小さくて済むため、ディーゼル酸化触媒130をより迅速に活性温度まで昇温することが可能となる。
【0035】
過給機制御部224は、過給機108のウェイストゲートバルブまたは可変ノズルの開度を制御して、排気温度を上昇させる。具体的に、過給機制御部224は、過給機108がウェイストゲートバルブを備える構成の場合、ウェイストゲートバルブを比較的大きく開くことで、排気ガスを過給機108で仕事をさせることなく(排気ガスの温度を下降させることなく)バーナ装置200に流入させ、排気ガスの温度を昇温することができる。また、過給機108が可変ノズルを備える構成の場合、過給機制御部224は、可変ノズルを比較的大きく開くことで、同様に、排気ガスの温度を昇温可能となる。
【0036】
本実施形態のバーナ装置200は、ディーゼルエンジン100の制御による排気ガスの高温化と、バーナ触媒214による燃焼に加え、過給機108の制御による排気ガスの高温化も併用する。かかる構成により、ディーゼル酸化触媒130をさらに迅速に活性温度まで昇温できる。
【0037】
温度検知部226は、バーナ触媒214の温度を検知する。機能制御部228は、バーナ触媒214の温度が活性温度未満である場合に、火炎加熱部220、エンジン制御部222、または過給機制御部224を機能させる。
【0038】
フィルタ再生処理を行う場合、バーナ装置200のバーナ触媒214の温度がすでに活性温度以上であれば、燃料を供給するだけで触媒燃焼を起こすことができる。このとき、火炎加熱部220の火炎燃料供給部252、着火部254、エンジン制御部222、または過給機制御部224を機能させると、電気や燃料を浪費することになってしまう。そこで、温度検知部226と機能制御部228によって、バーナ触媒214の温度に応じて火炎燃料供給部252、着火部254、エンジン制御部222、および過給機制御部224の機能を制限することで、電気や燃料の浪費を回避できる。
【0039】
続いて、バーナ装置200における排気ガスの流れを説明する。流入路210に分流した排気ガスは、燃焼室212および火炎生成室250に流入する。火炎生成室250では、着火部254が、着火温度以上に加熱され、排気ガスと燃料の混合気を着火し燃焼して火炎を生成する。
【0040】
火炎生成室250における燃焼後の排気ガスは、孔260aを通過して、燃焼室212に流入し、バーナ触媒214を加熱する。また、火炎生成室250で生成された火炎も、孔260aを通ってバーナ触媒214を加熱する。バーナ触媒214は、活性温度以上に加熱されると、燃焼燃料供給部216から供給された燃料と、孔218aから流入した排気ガスとが混合した混合気を触媒燃焼させる。そして、燃焼後の高温の排気ガス(図中、Heated Exh.Gasで示す)は、排気経路110に流入し、排気経路110を通過する排気ガスの温度を高める。
【0041】
このように、本実施形態のバーナ装置200は、火炎流量制限機構や燃焼流量制限機構を備える構成により、ディーゼルエンジン100が高回転であっても、火炎生成室250や燃焼室212では排気ガスの流速が抑制され着火性や保炎性を向上できるため、バーナ触媒214を昇温して触媒燃焼を安定化することが可能となる。そのため、燃焼室212から流出した高温の排気ガスで排気経路110の排気ガスを昇温し、後段のディーゼル酸化触媒130を迅速かつ確実に活性温度まで昇温することができる。
【0042】
また、例えば、排気ガスの酸素濃度が低い場合、仮に、酸素を補充すべく酸素を供給する機構を設けるとなると、排気経路110の圧力より高圧で酸素を供給しなければならず、大幅にコストがかかってしまう。しかし、バーナ装置200は、混合気の流速を抑制することで触媒燃焼が安定しているため、排気ガスの酸素濃度が低い場合であっても、酸素を供給する機構を設ける必要がなく、低コスト化を図ることができる。
【0043】
(第2の実施形態)
上述した実施形態では、火炎加熱部220がバーナ触媒214を加熱する構成を有するバーナ装置200について説明した。続いて、火炎加熱部220とは異なる構成でバーナ触媒214を加熱するバーナ装置300について詳述する。
【0044】
図5は、第2の実施形態におけるバーナ装置300の構造を説明するための説明図である。バーナ装置300は、流入路210と、燃焼室212と、バーナ触媒214と、燃焼燃料供給部216と、仕切部材218と、ヒータ320と、エンジン制御部222と、過給機制御部224と、温度検知部226と、機能制御部328とを備える。第1の実施形態における構成要素として既に述べた、流入路210、燃焼室212、バーナ触媒214、燃焼燃料供給部216、仕切部材218、エンジン制御部222、過給機制御部224、温度検知部226は、実質的に機能が等しいので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違するヒータ320、機能制御部328を主に説明する。
【0045】
ヒータ320は、その加熱部分320aがバーナ触媒214に接触するように併置される。特に、本実施形態においては加熱部分320aがバーナ触媒214内部に挿入して併置される。そして、ヒータ320は、バーナ触媒214を活性温度以上となるように加熱する。
【0046】
本実施形態のバーナ装置300は、燃焼流量制限機構を備える構成により、燃焼室212では排気ガスの流速が抑制されるため、バーナ触媒214から排気ガスへの放熱流量が低く、ヒータ320でバーナ触媒214を活性温度まで迅速に昇温できる。そのため、ディーゼルエンジン100が高回転であったり、排気ガスの酸素濃度が低かったりしても、バーナ触媒214を昇温して触媒燃焼を安定化することができ、燃焼室212から流出した触媒燃焼後の混合気で排気経路110の排気ガスを昇温し、後段のディーゼル酸化触媒130を迅速かつ確実に活性温度まで昇温することが可能となる。
【0047】
機能制御部328は、バーナ触媒214の温度が活性温度未満である場合に、ヒータ320、エンジン制御部222、または過給機制御部224を機能させる。
【0048】
上述したように、フィルタ再生処理を行う場合、バーナ装置300のバーナ触媒214の温度がすでに活性温度以上であれば、燃料を供給するだけで触媒燃焼を起こすことができる。このとき、ヒータ320、エンジン制御部222または過給機制御部224を機能させると、電気や燃料を浪費することになってしまう。そこで、温度検知部226と機能制御部328によって、バーナ触媒214の温度に応じてヒータ320、エンジン制御部222および過給機制御部224の機能を制限することで、電気や燃料の浪費を回避できる。
【0049】
(第3の実施形態)
続いて、ヒータ320よりも簡易な構成でバーナ触媒214を加熱するバーナ装置400について詳述する。
【0050】
図6は、第3の実施形態におけるバーナ装置400の構造を説明するための説明図である。バーナ装置400は、流入路210と、燃焼室212と、バーナ触媒214と、燃焼燃料供給部216と、仕切部材218と、電源部420と、エンジン制御部222と、過給機制御部224と、温度検知部226と、機能制御部428とを備える。第1の実施形態および第2の実施形態における構成要素として既に述べた、流入路210、燃焼室212、バーナ触媒214、燃焼燃料供給部216、仕切部材218、エンジン制御部222、過給機制御部224、温度検知部226は、実質的に機能が等しいので重複説明を省略し、ここでは、構成が相違する電源部420、機能制御部428を主に説明する。
【0051】
電源部420は、バーナ触媒214の基材を通電させ、電気抵抗によって基材を加熱し、基材にコーティングされている触媒に伝熱することで、触媒を活性温度以上となるように加熱する。
【0052】
本実施形態のバーナ装置400は、第2の実施形態と同様、燃焼室212では排気ガスの流速が抑制されるため、バーナ触媒214から排気ガスへの放熱流量が低く、電源部420による通電でバーナ触媒214を活性温度まで迅速に昇温できる。ディーゼルエンジン100が高回転であったり、排気ガスの酸素濃度が低かったりしても、バーナ触媒214を昇温して触媒燃焼を安定化することができ、後段のディーゼル酸化触媒130を迅速かつ確実に活性温度まで昇温することが可能となる。また、排気ガスの酸素濃度が低い場合でも、第1の実施形態と同様、バーナ装置400は、触媒燃焼が安定しているため、酸素を供給する機構を設ける必要がなく、低コスト化を図ることができる。また、バーナ装置400は、バーナ触媒214の基材に通電するのみの簡易な構成のため、バーナ触媒214の表面を遮る面積が小さく、触媒効果を最大限発揮させることができる。さらに、バーナ装置400は、バーナ触媒214の基材を直接加熱できるため、輻射や対流による伝熱に比べて、より確実にバーナ触媒214を昇温できる。
【0053】
機能制御部428は、バーナ触媒214の温度が活性温度未満である場合に、電源部420、エンジン制御部222、または過給機制御部224を機能させる。
【0054】
上述したように、バーナ触媒214の温度が活性温度以上であれば、フィルタ再生処理は可能である。そこで、機能制御部428は、バーナ触媒214の温度に応じて電源部420、エンジン制御部222および過給機制御部224の機能を制限することで、第2の実施形態における機能制御部328と同様、電気や燃料の浪費を回避できる。
【0055】
また、第1の実施形態と同様、第2、第3の実施形態においても、エンジン制御部222は、ディーゼルエンジン100における、吸気絞り、排気絞り、またはポスト噴射によって、排気温度を上昇させ、過給機制御部224は、過給機108のウェイストゲートバルブまたは可変ノズルの開度を制御して、排気温度を上昇させる。かかる構成により、ディーゼル酸化触媒130をより迅速に活性温度まで昇温することが可能となる。
【0056】
以上、説明したバーナ装置200、300、400によって、ディーゼル酸化触媒130を迅速に昇温して、フィルタ再生処理を実行することが可能となる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、燃料を燃焼させてディーゼルエンジンの排気ガスを昇温するバーナ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
100 …ディーゼルエンジン
110 …排気経路
130 …ディーゼル酸化触媒
200 …バーナ装置
210 …流入路
212 …燃焼室
214 …バーナ触媒
216 …燃焼燃料供給部
218 …仕切部材(燃焼流量制限機構)
220 …火炎加熱部
222 …エンジン制御部
226 …温度検知部
228、328、428 …機能制御部
320 …ヒータ
420 …電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気経路において、排気ガスを酸化するディーゼル酸化触媒の前段に配置されるバーナ装置であって、
前記排気経路から分流した排気ガスが流入する流入路と、
前記排気ガスと燃料との混合気を燃焼し、燃焼後の排気ガスを前記排気経路に流出させる燃焼室と、
前記燃焼室に設けられ、前記燃焼を促進するバーナ触媒と、
前記バーナ触媒に前記燃料を供給する燃焼燃料供給部と、
前記流入路から前記燃焼室へ流入する前記排気ガスの流量を制限する燃焼流量制限機構と、
前記バーナ触媒を火炎で加熱する火炎加熱部と、
を備えることを特徴とするバーナ装置。
【請求項2】
ディーゼルエンジンの排気経路において、排気ガスを酸化するディーゼル酸化触媒の前段に配置されるバーナ装置であって、
前記排気経路から分流した排気ガスが流入する流入路と、
前記排気ガスと燃料との混合気を燃焼し、燃焼後の排気ガスを前記排気経路に流出させる燃焼室と、
前記燃焼室に設けられ、前記燃焼を促進するバーナ触媒と、
前記バーナ触媒に前記燃料を供給する燃焼燃料供給部と、
前記流入路から前記燃焼室へ流入する前記排気ガスの流量を制限する燃焼流量制限機構と、
前記バーナ触媒に併置されたヒータと、
を備えることを特徴とするバーナ装置。
【請求項3】
ディーゼルエンジンの排気経路において、排気ガスを酸化するディーゼル酸化触媒の前段に配置されるバーナ装置であって、
前記排気経路から分流した排気ガスが流入する流入路と、
前記排気ガスと燃料との混合気を燃焼し、燃焼後の排気ガスを前記排気経路に流出させる燃焼室と、
前記燃焼室に設けられ、前記燃焼を促進するバーナ触媒と、
前記バーナ触媒に前記燃料を供給する燃焼燃料供給部と、
前記流入路から前記燃焼室へ流入する前記排気ガスの流量を制限する燃焼流量制限機構と、
前記バーナ触媒を通電させる電源部と、
を備えることを特徴とするバーナ装置。
【請求項4】
前記ディーゼルエンジンにおける、吸気絞り、排気絞り、またはポスト噴射によって、排気温度を上昇させるエンジン制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバーナ装置。
【請求項5】
前記バーナ触媒の温度を検知する温度検知部と、
前記バーナ触媒の温度が活性温度未満である場合に、前記火炎加熱部、前記ヒータ、前記電源部、または、前記エンジン制御部を機能させる機能制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のバーナ装置。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24520(P2013−24520A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161954(P2011−161954)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】