説明

パターン形成方法

【解決手段】環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位を含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、酸発生剤及び/又は酸と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、必要により添加され、酸発生剤より発生する酸を中和することによって不活性化させるクエンチャーと、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布、露光、ベーク、アルカリ水現像によってネガパターンを得るパターン形成方法。
【効果】本発明によれば、未露光部と過露光部がアルカリ現像液に不溶で、中間の露光量部分だけ現像液に溶解するデュアルトーンの特性を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に1回又は2回の露光とアルカリ水現像で高解像なホールパターン形成ができるネガパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの量産が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、F2リソグラフィーの開発が中止され、ArF液浸リソグラフィーが導入された。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいては、投影レンズとウエハーの間に屈折率1.44の水がパーシャルフィル方式によって挿入され、これによって高速スキャンが可能となり、NA1.3級のレンズによって45nmノードデバイスの量産が行われている。
【0004】
32nmノードのリソグラフィー技術としては、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーが候補に挙げられている。EUVリソグラフィーの問題点としてはレーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低ラインエッジラフネス(LWR)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられ、克服すべき問題が山積している。
【0005】
32nmノードのもう一つの候補の高屈折率液浸リソグラフィーは、高屈折率レンズ候補であるLUAGの透過率が低いことと、液体の屈折率が目標の1.8に届かなかったことによって開発が中止された。
【0006】
ここで最近注目を浴びているのは1回目の露光と現像でパターンを形成し、2回目の露光で1回目のパターンの丁度間にパターンを形成するダブルパターニングプロセスである。ダブルパターニングの方法としては多くのプロセスが提案されている。例えば、1回目の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて1回目の露光のスペース部分にフォトレジスト膜の露光と現像でラインパターンを形成してハードマスクをドライエッチングで加工して初めのパターンのピッチの半分のラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、1回目の露光と現像でスペースとラインが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に2回目のスペースパターンを露光しハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工する。
【0007】
ラインパターンに比べてホールパターンは微細化が困難である。従来法で細かなホールを形成するために、ポジ型レジスト膜にホールパターンマスクを組み合わせてアンダー露光で形成しようとすると、露光マージンが極めて狭くなってしまう。そこで、大きなサイズのホールを形成し、サーマルフローやRELACSTM法等で現像後のホールをシュリンクする方法が提案されている。しかしながら、現像後のパターンサイズとシュリンク後のサイズの差が大きく、シュリンク量が大きいほど制御精度が低下する問題がある。また、ホールシュリンク法ではホールのサイズは縮小可能であるがピッチを狭くすることはできない。
【0008】
ポジ型レジスト膜を用いてダイポール照明を用いてX方向のラインパターンを形成し、レジストパターンを硬化させ、その上にもう一度レジスト材料を塗布し、ダイポール照明でY方向のラインパターンを露光し、格子状ラインパターンの隙間よりホールパターンを形成する方法(非特許文献1:Proc. SPIE Vol. 5377, p.255 (2004))が提案されている。高コントラストなダイポール照明によるX、Yラインを組み合わせることによって広いマージンでホールパターンを形成できるが、上下に組み合わされたラインパターンを寸法精度高くエッチングすることは難しい。X方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクとY方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクを組み合わせてネガ型レジスト膜を露光してホールパターンを形成する方法が提案されている(非特許文献2:IEEE IEDM Tech. Digest 61 (1996))。但し、架橋型ネガ型レジスト膜は超微細ホールの限界解像度がブリッジマージンで決まるために、解像力がポジ型レジストに比べて低い欠点がある。
【0009】
X方向のラインとY方向のラインの2回露光を組み合わせて露光し、これを画像反転によってネガパターンにすることによって形成されるホールパターンは、高コントラストなラインパターンの光を用いることによって形成が可能であるために、従来の方法よりもより狭ピッチでかつ微細なホールを開口できる。しかしながら、この場合マスクを交換しながらの2回の露光を行う必要があるため、これによるスループットの低下と、2回の露光の位置ずれが問題となる。
【0010】
非特許文献3(Proc. SPIE Vol. 7274, p.72740N (2009))では、以下3つの方法による画像反転によるホールパターンの作製が報告されている。
即ち、ポジ型レジスト材料のX、Yラインのダブルダイポールの2回露光によりドットパターンを作製し、この上にLPCVDでSiO2膜を形成し、O2−RIEでドットをホールに反転させる方法、加熱によってアルカリ可溶で溶剤不溶になる特性のレジスト材料を用いて同じ方法でドットパターンを形成し、この上にフェノール系のオーバーコート膜を塗布してアルカリ現像によって画像反転させてホールパターンを形成する方法、ポジ型レジスト材料を用いてダブルダイポール露光、有機溶剤現像による画像反転によってホールを形成する方法である。これも前述の通り2回露光の問題点を有している。
【0011】
ここで、有機溶剤現像によるネガパターンの作製は古くから用いられている手法である。環化ゴム系のレジスト材料はキシレン等のアルケンを現像液として用いており、ポリ−t−ブトキシカルボニルオキシスチレンベースの初期の化学増幅型レジスト材料はアニソールを現像液としてネガパターンを得ていた。
【0012】
近年、有機溶剤現像が再び脚光を浴びている。ポジティブトーンでは達成できない非常に微細なホールパターンをネガティブトーンの露光で解像するために、解像性の高いポジ型レジスト材料を用いた有機溶剤現像でネガパターンを形成するのである。更に、アルカリ現像と有機溶剤現像の2回の現像を組み合わせることにより、2倍の解像力を得る検討も進められている。
有機溶剤によるネガティブトーン現像用のArFレジスト材料としては、従来型のポジ型ArFレジスト材料を用いることができ、特許文献1(特許第4554665号公報)にパターン形成方法が示されている。
有機溶剤現像では、特定の有機溶剤を現像液として用いることによって、アルカリ現像でポジ型レジスト材料として機能する一般的なレジスト材料を用いてネガパターンを得ることができる。未露光部分の有機溶剤現像の溶解速度は、露光部分のアルカリ溶解速度に比べて1〜2桁低い。このことは、同じ光学コントラストの光を与えた場合、アルカリ現像のポジパターンより有機溶剤現像のネガパターンの方がマージンが狭く、限界解像度が低い。
ポジティブレジスト材料を用いて有機溶剤のネガティブ現像を行った場合、現像後に形成されるレジスト膜は、保護基が脱保護したメタクリル酸を大量に含む。メタクリル酸は環構造が無く、酸素が多いためにほとんどエッチング耐性がない。ネガティブ現像においては、現像後のレジスト膜のエッチング耐性が弱いために、これをエッチング転写する時に寸法がばらつく問題を有している。これは、非特許文献3において、有機溶剤現像プロセスにおけるエッチング後の寸法バラツキが現像後の寸法バラツキよりも大きくなっていることで示されている。
【0013】
有機溶剤現像では、現像液とリンス液の両方に有機溶剤が用いられる。アルカリ現像液と水によるリンスに比べて大変な高価なプロセスになる。通常のアルカリ現像でネガパターンを得ることができるのはネガ型レジスト材料であるが、架橋型のネガ型レジスト材料では現像中の膨潤によって限界解像性が低いという問題がある。
アルカリ現像に適用可能で、かつ高解像なネガ型レジスト材料の開発が望まれているのである。
【0014】
非特許文献4(Proc. SPIE Vol. 7639, p.76392U−1 (2010))では酸発生剤と塩基発生剤の両方を添加したデュアルトーンレジスト材料が報告されている。酸不安定基と密着性基の両方を有する通常のポジ型レジスト材料用のポリマーを使って、低露光部分ではポジパターンとなり、露光量の多い領域ではネガパターンとなるのである。これを用いて1回の露光によってポジパターンのライン間にネガパターンのラインを形成し、解像力を倍加させることが報告されている。
【0015】
非特許文献5(Proc. SPIE Vol. 3999, p.91 (2000))では、酸不安定基のt−ブチル基で置換されたメタクリレートと無水マレイン酸を共重合したポリマーに、ベンジルシクロペンチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩の熱酸発生剤と光塩基発生剤を含有するレジストを用いて、露光によって光塩基発生剤から塩基を発生させ、高温のPEB時に熱酸発生剤から酸を発生させ、アルカリ現像によって形成したネガパターンをジアミノシロキサンの無水マレイン酸のシリル化とドライエッチングによって高アスペクトなネガパターンを得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第4554665号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 5377, p.255 (2004)
【非特許文献2】IEEE IEDM Tech. Digest 61 (1996)
【非特許文献3】Proc. SPIE Vol. 7274, p.72740N (2009)
【非特許文献4】Proc. SPIE Vol. 7639, p.76392U−1 (2010)
【非特許文献5】Proc. SPIE Vol. 3999, p.91 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、有機溶剤によるネガティブ現像でホールパターンを形成しようとすると、アルカリ水現像液よりもコスト高になるし、現像後のレジスト膜のエッチング耐性がきわめて低いという問題がある。架橋型のネガ型レジスト材料を用いアルカリ現像液でネガパターンを形成しようとすると、ネガ型レジスト材料自体の解像性が低いことにより微細なホールパターンを解像できない問題点がある。
【0019】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、解像性とエッチング耐性の高いポジ型レジスト材料用のポリマーを用いて、ポジ型レジスト材料中の保護基を脱保護させてエッチング耐性を低下させることなくアルカリ現像によってネガパターンを形成するパターン形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有してアルカリ現像液に難溶な高分子化合物をベースとし、酸のクエンチャーと光塩基発生剤から発生する化合物中のアミノ基の総量が光酸発生剤からの酸の量よりも多い組成のデュアルトーンレジスト材料、あるいは、熱酸発生剤及び/又は酸と光塩基発生剤を添加し、光塩基発生剤から発生する化合物中のアミノ基の量が熱酸発生剤から発生する酸と予め添加された酸の総量よりも多いネガティブトーンレジスト材料を用い、交差する2つのラインパターンの2回の露光、ドットパターン、格子状パターンのいずれかのマスクを使った露光を行うことによって、露光量を上げていくとポジ部分が溶解し、ネガ部分の膜が残ることによって画像反転によるホールパターンが形成できることを見出した。
【0021】
従って、本発明は、下記パターン形成方法を提供する。
〔1〕
環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位を含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、酸発生剤及び/又は酸と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、必要により添加され、酸発生剤より発生する酸を中和することによって不活性化させるクエンチャーと、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布、露光、ベーク、アルカリ水現像によってネガパターンを得ることを特徴とするパターン形成方法。
〔2〕
クエンチャー中のアミノ基の総モル数と、光塩基発生剤から発生する化合物中のアミノ基の総モル数の和が、酸発生剤から発生する酸と予め添加された酸の総モル数の合計よりも多いことを特徴とする〔1〕記載のパターン形成方法。
〔3〕
酸発生剤が光によって酸を発生することを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のパターン形成方法。
〔4〕
酸発生剤が、光照射によってスルホン酸、イミド酸、又はメチド酸が発生するものであることを特徴とする〔3〕記載のパターン形成方法。
〔5〕
酸発生剤が熱によって酸を発生することを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のパターン形成方法。
〔6〕
酸発生剤が炭素数1〜10のトリアルキルスルホニウム塩の熱酸発生剤であることを特徴とする〔4〕記載のパターン形成方法。
〔7〕
環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位を含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、酸と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布してベークし、露光後、ベーク(PEB)、現像の工程を経て、露光量の多い部分の膜を現像液に溶解させず、露光量の少ない部分を溶解させてネガパターンを得るための〔1〕記載のパターン形成方法。
〔8〕
光塩基発生剤から発生する化合物中のアミノ基の総モル数の和が、酸の総モル数の合計よりも多いことを特徴とする〔7〕記載のパターン形成方法。
〔9〕
環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位を含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、スルホニウム塩及び/又はヨードニウム塩と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、アミノ基を有し、スルホニウム塩及び/又はヨードニウム塩より発生する酸を中和することによって不活性化させるクエンチャーと、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布してベークし、露光後、ベーク(PEB)、現像の工程を経て、露光量の多い部分の膜を現像液に溶解させず、露光量の少ない部分を溶解させてネガパターンを得るためのパターン形成方法。
〔10〕
環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位とスルホニウム塩を持つ酸発生剤の繰り返し単位とを含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、アミノ基を有し、スルホニウム塩を持つ酸発生剤の繰り返し単位より発生する酸を中和することによって不活性化させるクエンチャーと、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布してベークし、露光後、ベーク(PEB)、現像の工程を経て、露光量の多い部分の膜を現像液に溶解させず、露光量の少ない部分を溶解させてネガパターンを得るためのパターン形成方法。
〔11〕
クエンチャー中のアミノ基の総モル数と、光塩基発生剤から発生する化合物中のアミノ基の総モル数の和が、スルホニウム塩を持つ酸発生剤の繰り返し単位、又は添加されたスルホニウム塩及び/又はヨードニウム塩より発生する酸の総モル数よりも多いことを特徴とする〔9〕又は〔10〕記載のパターン形成方法。
〔12〕
酸発生剤が、光照射によってスルホン酸、イミド酸、又はメチド酸が発生するものであることを特徴とする〔9〕〜〔11〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔13〕
光塩基発生剤が、光分解によりアミノ基を有する化合物を発生させるものであることを特徴とする〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔14〕
下記式(i)〜(iii)で示されるいずれかの部分構造を有する光塩基発生剤を含有することを特徴とする〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【化1】

〔15〕
光塩基発生剤が、下記一般式(1)中の繰り返し単位a1〜a4のいずれかで示されるものであり、該繰り返し単位が高分子化合物の主鎖に結合されていることを特徴とする〔14〕記載のパターン形成方法。
【化2】

(式中、R1、R7、R12、R17は水素原子又はメチル基である。R2、R8、R13、R18は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、又は−C(=O)−O−R21−である。R21は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又は炭素数2〜12のアルケニレン基であり、R3、R9、R14は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であるが、上記R21と結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R4、R5、R6は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基で、アリール基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はトリフルオロメチル基を含んでいてもよく、R4とR5、R5とR6、又はR4とR6とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよいが、R4、R5、R6の全てが水素原子、又は全てがアルキル基になることはない。R10、R11は炭素数6〜14のアリール基で、該アリール基は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R15、R16は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R15とR16とが結合してこれらが結合する炭素原子及び該炭素原子が結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、環の中にベンゼン環、ナフタレン環、2重結合、又はエーテル結合を有していてもよい。R19、R20は水素原子、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14のR4、R5、R6と同様の置換基を有していてもよいアリール基であり、R19、R20の内少なくとも一方あるいは両方がアリール基であり、又はR19とR20とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0<a1+a2+a3+a4<1.0である。)
〔16〕
光塩基発生剤が、下記一般式(2)〜(9)に示されるものから選ばれる1種以上であることを特徴とする〔14〕記載のパターン形成方法。
【化3】

(式中、R21、R22、R23、R26、R27、R28、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R40、R41、R42、R46、R47、R48は水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基で、アリール基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はトリフルオロメチル基を含んでいてもよいが、R21〜R23、R26〜R28、R32〜R34、R35〜R37、R40〜R42、R46〜R48の内少なくとも一つがアリール基であり、少なくとも1つが水素原子であり、又はR21〜R23及びR26〜R28及びR32〜R34及びR35〜R37及びR40〜R42及びR46〜R48の内、2つ以上が結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R24、R25、R29、R31、R38、R39、R43、R45、R51、R52、R55、R57は水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、2重結合、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、又はエステル基を有していてもよく、R24とR25、R29とR31、R29とR30、R31とR30、R38とR39、R43とR44、R44とR45、R43とR45、R51とR52、R55とR56、R55とR57、R56とR57とが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R30、R44、R56は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、又は炭素数2〜12のアルキニレン基で、これらの基は2重結合、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、又はエステル基を有していてもよい。R49、R50、R53、R54、R58、R59は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R49とR50、R53とR54、R58とR59とが結合してこれらが結合する炭素原子及び該炭素原子が結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、環の中にベンゼン環、ナフタレン環、2重結合、又はエーテル結合を有していてもよい。R60は炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のアルケニル基であり、R61は炭素数6〜20のアリール基、R62は水素原子、炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。R63、R64、R65は水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基又はアルコキシカルボニル基、又はシアノ基で、上記アルキル基、アリール基、アルケニル基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、スルフィド基、アミノ基、又はエーテル基を有していてもよい。m、n、rは1又は2である。)
〔17〕
露光波長が193nmのArFエキシマレーザーを光源とし、レンズと基板の間に水を挿入する液浸リソグラフィー、又は、レンズと基板の間が大気又は窒素であるドライリソグラフィーであることを特徴とする〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載のポジネガ反転のパターン形成方法。
〔18〕
交差する2つのラインパターンの2回の露光又はドットパターン又は格子状パターンの露光によってポジネガ反転を行うことを特徴とする〔17〕記載のパターン形成方法。
〔19〕
交差する2つのラインパターン及びドットパターン及び格子状パターンが透過率3〜15%のハーフトーン位相シフトマスクを用いて形成されたものであることを特徴とする〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔20〕
ハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜30nm太い第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成することを特徴とする〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔21〕
ハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜100nm太いドットパターンの第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成することを特徴とする〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔22〕
保護膜を形成する材料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとした材料を、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させたものを用い、これをレジスト膜上に塗布して保護膜を形成した後、露光、ベーク、現像を行うようにしたことを特徴とする〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0022】
このようなパターン形成方法を適用することによって、微細なホールパターンを形成することが可能になる。
【0023】
なお、本発明において、光塩基発生剤から発生するアミノ基、クエンチャー中のアミノ基とは、本来のアミノ基に加え、イミノ基、その他窒素原子を有し、塩基性を与える基、つまり窒素原子含有塩基性基を意味するものと定義する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有してアルカリ現像液に難溶でかつ酸によってアルカリ現像液に可溶となる高分子化合物をベースとし、クエンチャーと光塩基発生剤からのアミノ基の総量が光酸発生剤やスルホニウム塩を持つ繰り返し単位からの酸の総量よりも多い組成のレジスト材料を用いると、未露光部と過露光部がアルカリ現像液に不溶で、中間の露光量部分だけ現像液に溶解するデュアルトーンの特性を有することができる。高分子化合物としては前述と同様のものを用い、酸発生剤として熱酸発生剤及び/又は酸を添加した場合は、未露光部がアルカリ現像液に溶解し、露光部がアルカリに不溶化するネガ型の特性を得ることができる。このようなレジスト材料を、交差する2つのラインパターン、ドットパターン、格子状パターンのいずれかのマスクを用いてパターン転写することによってネガパターンを得ることができ、微細なホールパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るパターニング方法を説明するもので、(A)は基板上にフォトレジスト膜を形成した状態の断面図、(B)はフォトレジスト膜に露光した状態の断面図、(C)はアルカリ現像液で現像した状態の断面図である。
【図2】通常のポジ型レジスト材料のコントラストカーブのシミュレーションである。
【図3】図2のレジスト材料を用いて、NA1.35のArF液浸スキャナーのダイポール照明にAzimuthally偏光照明を加え、ウエハー上の寸法が40nmラインアンドスペース1:1の6%透過率のハーフトーン位相シフトマスクを用いてX方向のラインとY方向のラインの2回の露光(露光量15mJ/cm2)と現像を行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図4】図3と同じ方法で露光量30mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図5】図3と同じ方法で露光量50mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図6】図3と同じ方法で露光量80mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図7】ネガの露光量がポジの露光量の5倍のデュアルトーンレジスト材料のコントラストカーブのシミュレーションである。
【図8】図3と同じ方法で図7の材料を用いて露光量30mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図9】図8と同じ方法で露光量80mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図10】図8と同じ方法で露光量150mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図11】図8と同じ方法で露光量200mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図12】ネガの露光量がポジの露光量の2倍のレジスト材料のコントラストカーブのシミュレーションである。
【図13】図3と同じ方法で図12の材料を用いて露光量20mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図14】図13と同じ方法で露光量40mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図15】図13と同じ方法で露光量80mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図16】図13と同じ方法で露光量100mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図17】酸及び/又は熱酸発生剤と光塩基発生剤を添加したネガレジスト材料のコントラストカーブのシミュレーションである。
【図18】図3と同じ方法で図17の材料を用いて露光量30mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図19】図18と同じ方法で露光量80mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図20】図18と同じ方法で露光量150mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図21】図18と同じ方法で露光量200mJ/cm2で行った場合のレジスト形状シミュレーション結果である。
【図22】波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのX方向ラインの光学像を示す。
【図23】同Y方向ラインの光学像を示す。
【図24】図22のX方向ラインと図23のY方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージを示す。
【図25】格子状のパターンが配されたマスクを示す。
【図26】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、幅30nmの格子状ラインパターンの光学像である。
【図27】ピッチ90nm、一辺の幅が60nmの正四角形のドットパターンが配置されたマスクである。
【図28】同マスクにおけるNA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明での光学像コントラストである。
【図29】ピッチ90nmで、20nmラインの格子状パターン上に、ドットを形成したい部分に十字の太い交差ラインを配置したマスクを示す。
【図30】図29のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図31】ピッチ90nmで、15nmラインの格子状パターン上に、ドットを形成したい部分に太いドットを配置したマスクを示す。
【図32】図31のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図33】格子状パターンが配列されていないマスクを示す。
【図34】図33のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図35】パターニング評価2及び4で用いた格子状マスクを示す。
【図36】パターニング評価3で用いた格子状の上にドットが配置されたパターンのマスクを示す。
【図37】Y方向のラインのコントラストを向上させるダイポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【図38】X方向のラインのコントラストを向上させるダイポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【図39】X方向とY方向の両方のラインのコントラストを向上させるクロスポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【図40】レジスト1における露光量と膜厚との関係を示すグラフである。
【図41】レジスト23における露光量と膜厚との関係を示すグラフである。
【図42】比較レジスト1における露光量と膜厚との関係を示すグラフである。
【図43】比較レジスト2における露光量と膜厚との関係を示すグラフである。
【図44】比較レジスト3における露光量と膜厚との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、通常のポジ型レジスト材料用のポリマーを用いてアルカリ現像によってネガパターンを形成できるパターニング方法について鋭意検討を行った。光酸発生剤と光塩基発生剤を組み合わせるデュアルトーンレジスト材料、あるいは熱酸発生剤及び/又は酸と、光塩基発生剤とを組み合わせるネガティブトーンレジスト材料を用いて、交差する2つのラインパターン及びドットパターン及び格子状パターンのマスクを用いて露光し、PEB、現像することによって微細なホールパターンを形成できることを見出した。デュアルトーンレジスト材料は、ポジティブとネガティブの2つの閾値を有する。即ち、低露光量ではポジ型レジスト材料の特性であり、高露光量ではネガ型レジスト材料の特性を発揮するレジスト材料である。前述の非特許文献4では、酸不安定基で置換された通常のポジ型レジスト材料用ポリマーを用いて、酸発生剤と塩基発生剤とクエンチャーを添加したレジスト材料を用いてデュアルトーンの特性を得ている。この時、酸発生剤からの酸の発生効率よりも塩基発生剤からの塩基発生効率が低いことと、酸発生剤から発生する酸のモル数よりも、クエンチャーのアミノ基のモル数と塩基発生剤から発生するアミノ基のモル数を加えた値が多いことが必要である。露光量の少ない領域では、露光量の増大に対して酸の発生の傾きが高いためにポジティブトーンとなり、酸発生剤の分解がほぼ終了している露光量の多い領域では塩基発生剤から発生する塩基の傾きが高くなるために酸が中和によって不活性化されてネガティブトーンとなる。ここで非特許文献4では、コントラストカーブにおけるネガの感度をポジの感度で割った値が5になる場合、ポジのラインパターンの間に同程度の寸法のネガのラインパターンが出現し、解像力の倍加が達成できることが示されている。
【0027】
図2には通常のポジ型レジスト材料のコントラストカーブのシミュレーションが示される。このレジスト材料を用いて、NA1.35のArF液浸スキャナーのダイポール照明にAzimuthally偏光照明を加え、ウエハー上の寸法が40nmラインアンドスペース1:1の6%透過率のハーフトーン位相シフトマスクを用いてX方向のラインとY方向のラインの2回の露光と現像を行った場合のレジスト形状シミュレーション結果を図3〜6に示す。露光量が15mJ/cm2の場合、図3に示されるようにホールが形成される。但しこの場合、通常のホールパターンを形成する光のコントラストは低く、露光量マージンは極めて狭い。露光量が30mJ/cm2の場合を図4に示すが、ホールとホールの間がドットパターンとなり、露光量が50mJ/cm2と更に大きくなるに従って図5に示されるようにドットの寸法が小さくなり、図6の80mJ/cm2ではドットが消滅してしまう。
【0028】
図7にはネガの露光量がポジの露光量の5倍のデュアルトーンレジスト材料のコントラストカーブが示される。このようなポジネガの露光量の関係のレジスト材料を用いた場合、前述のようにラインパターンではピッチの倍加が可能になる。この場合、図8に示される露光量30mJ/cm2では図4や図5と同じようにポジパターンのドットが形成される。露光量を80mJ/cm2に上げた場合、図9に示されるようにポジのドットが消滅し、ポジのドット間にネガパターンのドットが発生する。更に露光量を上げて、150mJ/cm2では図10のようにネガパターンのホールが形成され、露光量を上げていくに従って図11に示されるようにホールのサイズは小さくなっていく。
【0029】
図12にはネガの露光量がポジの露光量の2倍のレジスト材料のコントラストカーブが示される。このレジスト材料の場合、ラインパターンではネガラインの方がポジラインよりも大幅に寸法が太くなりピッチの倍加ができない。このようなレジスト材料を前述と同様にXラインとYラインのダブルダイポール露光を行った場合、図13の露光量20mJ/cm2ではポジパターンのみだが、図14の40mJ/cm2ではポジとネガの両方のドットが出現し、図15の80mJ/cm2でネガパターンのホールが形成される。露光量を上げていくに従って図16に示されるようにホールのサイズは小さくなっていく。
【0030】
本発明のイメージリバーサルによるネガパターンのホール形成においては、ネガとポジの感度の割合を5よりも小さくしてもネガパターンのホールが形成可能であり、むしろ小さくした方がネガパターンが形成される感度が向上するので好ましいといえる。しかしながら、ネガとポジの感度の割合が1.5以下になるとホールが開口する露光量マージンが狭くなるので、2以上は必要である。
【0031】
熱酸発生剤及び/又は酸と光塩基発生剤とを組み合わせて、熱酸発生剤から発生する酸と予め添加された酸の総モル数よりも光塩基発生剤のモル数が多い場合、露光量の少ない領域では酸による脱保護が進行してアルカリ現像液に溶解し、露光量が多い部分はアミンの総数が酸の総数を上回ると脱保護が進行せずアルカリ現像液に不溶となる図17に示されるネガティブトーンの特性を示す。ネガレジスト材料を用いた場合、露光量が少ない場合は図18に示すように全ての膜が溶解してしまうが、露光量を上げて行くに従って図19に示すようにドットパターンが出現し、更に露光量を上げると図20に示すようにホールパターンとなり、更に露光量を上げると図21に示すようにホールのサイズがシュリンクしていく。
【0032】
以下、デュアルトーンレジスト材料、及びネガレジスト材料の原理について述べる。
架橋剤の添加によってネガ型レジスト材料の特性を得るのではなく、非特許文献4に示されるように酸の不活性化によってネガ型の特性を得る。光酸発生剤と光塩基発生剤の両方、あるいは熱酸発生剤と光塩基発生剤の両方、あるいは酸と光酸発生剤の両方をレジスト材料中に存在させると共に光塩基発生剤に比べて光酸発生剤の方が発生効率が高い材料を用いる。露光量を上げていくと、最初に酸が発生し、PEB中に脱保護反応が進行し、ポジ化が起きる。更に露光量を上げていくと、酸発生剤の分解による酸の発生は終息し、塩基発生剤から発生した塩基と、クエンチャーの塩基の総和が酸の量を上回った時点で酸の不活性化が起こり、PEB中の脱保護反応が阻害されるためネガ化が起き、デュアルトーンの特性を示すのである。光酸発生剤の代わりに熱酸発生剤や酸を用いた場合は、露光量が少ない領域では脱保護反応が進行し、露光量の大きい領域では熱酸発生剤から発生する酸や添加された酸よりも光によって発生する塩基の量が多くなることによって脱保護反応が阻害されてネガ化が起きるのである。
【0033】
光塩基発生剤としては、(i)カルバメート型、(ii)イミドカルバメート型、(iii)オキシムエステル型のいずれかの部分構造を有するものを挙げることができ、下記に示すことができる。
【化4】

【0034】
酸の不活性化が起きる露光量では、塩基が過剰に存在している。PEB中に脱保護反応が進行して現像後溶解する場所は酸が過剰に存在しているが、このような場所に塩基が過剰に存在している場所からの塩基の蒸発と再付着によって酸が不活性化されると本来現像液に溶解すべきところが不溶化する。塩基物質の蒸発と再付着を防止するためには、光によって発生するアミノ基がポリマー主鎖に結合している形態が好ましい。更に光塩基発生剤による繰り返し単位は、レジスト材料のベースポリマーとなる高分子化合物において、酸不安定基を有する繰り返し単位と共重合していることが好ましい。例えば光塩基発生剤による繰り返し単位のホモポリマーと、酸不安定基を有する繰り返し単位を有するレジスト材料のベースポリマーとをブレンドすることもできるが、この場合ポリマー同士が相分離を起こすことがあり、不活性化が起こる所と起こらない所とが分離するために、現像後のレジストパターンのエッジラフネスが大きくなったり、ブリッジ欠陥やライン欠落等の欠陥が発生する可能性がある。光塩基発生剤をレジスト材料のベースポリマー中に均一に分散させるためには、ベースポリマーの高分子化合物中に共重合物として取り込む方法が好ましいのである。
【0035】
従って、本発明において、光塩基発生剤としては、光塩基発生剤基として上記式(i)〜(iii)のいずれかの構造を含む繰り返し単位をベースポリマーの高分子化合物の主鎖に結合した態様として用いることが好ましい。
【0036】
ここで、レジスト材料のベースポリマーとなる高分子化合物中に共重合させる光塩基発生剤基を有する繰り返し単位は、下記一般式(1)中の繰り返し単位a1〜a4に示されるものが好ましい。
【化5】

(式中、R1、R7、R12、R17は水素原子又はメチル基である。R2、R8、R13、R18は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、又は−C(=O)−O−R21−である。R21は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又は炭素数2〜12のアルケニレン基であり、R3、R9、R14は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であるが、上記R21と結合してこれらが結合する窒素原子と共に、好ましくは炭素数3〜8、特に4〜6の環を形成してもよい。R4、R5、R6は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基で、アリール基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はトリフルオロメチル基を含んでいてもよく、R4とR5、R5とR6、又はR4とR6とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に好ましくは炭素数3〜10、特に4〜8の非芳香環を形成してもよいが、R4、R5、R6の全てが水素原子、又は全てがアルキル基になることはない。R10、R11は炭素数6〜14、好ましくは6〜10のアリール基で、該アリール基は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R15、R16は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R15とR16とが結合してこれらが結合する炭素原子及び該炭素原子が結合する窒素原子と共に炭素数4〜12、特に4〜10の環を形成してもよく、環の中にベンゼン環、ナフタレン環、2重結合、又はエーテル結合を有していてもよい。R19、R20は水素原子、炭素数1〜8、好ましくは1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14、好ましくは6〜10のR4、R5、R6と同様の置換基を有していてもよいアリール基であり、R19、R20の内少なくとも一方あるいは両方がアリール基であり、又はR19とR20とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数4〜10、特に4〜8の非芳香環を形成していてもよい。0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0<a1+a2+a3+a4<1.0、好ましくは、0≦a1≦0.5、0≦a2≦0.5、0≦a3≦0.5、0≦a4≦0.5、0.01≦a1+a2+a3+a4≦0.5、より好ましくは、0≦a1≦0.3、0≦a2≦0.3、0≦a3≦0.3、0≦a4≦0.3、0.015≦a1+a2+a3+a4≦0.3である。)
【0037】
一般式(1)中、繰り返し単位a1で示されるベンジルカルバメート型塩基発生剤は下記反応式(1)−a1で示される分解機構、繰り返し単位a2で示されるベンゾインカルバメート型塩基発生剤は下記反応式(1)−a2で示される分解機構、繰り返し単位a3で示されるイミドカルバメート型塩基発生剤は下記反応式(1)−a3で示される分解機構、繰り返し単位a4で示されるオキシムエステル型塩基発生剤は下記反応式(1)−a4で示される分解機構でアミンを生成する。分解によって炭酸ガスと2級あるいは1級のアミン化合物とその他の化合物が生成する。
【0038】
【化6】

(式中、R1〜R9、R12〜R20は上記の通り、R、R’はR10、R11で説明したアリール基の置換基である。)
繰り返し単位a1、a2、a3は主鎖に窒素原子が結合している。繰り返し単位a4は分解時の転移反応によって主鎖に結合したアミノ基が生成する。
【0039】
一般式(1)中、繰り返し単位a1で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。ここで、R4〜R6は前述の通りである。
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
一般式(1)中、繰り返し単位a1で示される塩基発生剤のR4〜R6は下記に例示することができる。ここで、R1〜R3は前述の通りである。
【化9】

【0042】
繰り返し単位a1としては、上記に例示されたR1〜R3とR4〜R6の組み合わせの繰り返し単位を選択することができる。
【0043】
一般式(1)中、繰り返し単位a2で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。
【化10】

(上式中、Tは
【化11】

を示す。破線は結合手である。なお、R10、R11は前述の通りである。)
【0044】
【化12】


(上式中、Tは
【化13】

を示す。破線は結合手である。なお、R10、R11は前述の通りである。)
【0045】
一般式(1)中、繰り返し単位a2で示される塩基発生剤のR10、R11は下記に例示することができる。ここで、R7〜R9は前述の通りである。
【化14】

【0046】
【化15】

【0047】
繰り返し単位a2としては、上記に例示されたR7〜R9とR10、R11の組み合わせの繰り返し単位を選択することができる。
【0048】
一般式(1)中、繰り返し単位a3で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。
【化16】


(上式中、Sは
【化17】

を示す。破線は結合手である。なお、R15、R16は前述の通りである。)
【0049】
【化18】


(上式中、Sは
【化19】

を示す。破線は結合手である。なお、R15、R16は前述の通りである。)
【0050】
一般式(1)中、繰り返し単位a3で示される塩基発生剤のR15、R16は下記に例示することができる。ここで、R12〜R14は前述の通りである。
【化20】

【0051】
繰り返し単位a3としては、上記に例示されたR12〜R14とR15、R16の組み合わせの繰り返し単位を選択することができる。
【0052】
一般式(1)中、繰り返し単位a4で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。
【化21】

【0053】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベースポリマーとしては、酸不安定基を有する繰り返し単位bを有するものが用いられ、特に下記一般式(AL)で示されるものが好ましい。この場合、この繰り返し単位bと共に、上述した一般式(1)で示される塩基発生剤基を有する繰り返し単位a1〜a4を用いることが好ましい。
【化22】


(式中、R024は水素原子又はメチル基、R025は酸不安定基である。)
【0054】
上記一般式(AL)中、R025で示される酸不安定基は種々選定されるが、特に下記式(AL−11)で示される基、下記式(AL−12)で示される三級アルキル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等が挙げられる。
【化23】

【0055】
式(AL−11)において、R054は炭素数1〜40、特に1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。R052、R053は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよく、R052とR053、R052とR054、又はR053とR054は互いに結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子と酸素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
055、R056、R057はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。あるいはR055とR056、R055とR057、又はR056とR057は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
【0056】
前記式(AL−11)で示されるアセタール基として、具体的には下記式(AL−11)−1〜(AL−11)−112に示すものが挙げられる。
【化24】

【0057】
【化25】

【0058】
【化26】

【0059】
【化27】

【0060】
【化28】

【0061】
【化29】

【0062】
また、酸不安定基として、下記一般式(AL−11a)あるいは(AL−11b)で表される基が挙げられ、該酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【化30】

【0063】
上記式中、R061、R062は水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R061とR062は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR061、R062は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R063は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b5、d5は0又は1〜10、好ましくは0又は1〜5の整数、c5は1〜7の整数である。Aは、(c5+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基はO、S、N等のヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0064】
この場合、好ましくはAは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基はO、S、N等のヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c5は好ましくは1〜3の整数である。
【0065】
一般式(AL−11a)、(AL−11b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(AL−11)−113〜(AL−11)−120のものが挙げられる。
【化31】

【0066】
次に、前記式(AL−12)に示される三級アルキル基としては、下記一般式(AL−12)−1〜(AL−12)−16で示される基を挙げることができる。
【化32】

【0067】
上記式中、R064は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R065、R067は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R066は炭素数3〜16の環状のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。
【0068】
更に、酸不安定基として、下記式(AL−12)−17、(AL−12)−18に示す基が挙げられ、2価以上のアルキレン基、又はアリーレン基であるR068を含む該酸不安定基によってベース樹脂が分子内あるいは分子間架橋されていてもよい。式(AL−12)−17、(AL−12)−18のR064は前述と同様、R068は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又はアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。b6は1〜3の整数である。
【0069】
【化33】

【0070】
なお、上述したR064、R065、R066、R067は酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有していてもよく、具体的には下記式(AL−13)−1〜(AL−13)−7に示すことができる。
【化34】

【0071】
特に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−19に示されるエキソ体構造を有するものが好ましい。
【化35】


(式中、R069は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R070〜R075及びR078、R079はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキル基等の1価の炭化水素基を示し、R076、R077は水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキル基等の1価の炭化水素基を示す。R070とR071、R072とR074、R072とR075、R073とR075、R073とR079、R074とR078、R076とR077、又はR077とR078は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環(特に脂環)を形成してもよく、その場合には環の形成に関与するものは炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基等の2価の炭化水素基を示す。またR070とR079、R076とR079、又はR072とR074は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、2重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0072】
ここで、一般式(AL−12)−19に示すエキソ体構造を有する下記繰り返し単位
【化36】


を得るためのエステル体のモノマーとしては、特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に示すものを挙げることができるが、これらに限定されることはない。なお、R0111、R0112は互いに独立に水素原子、メチル基、−COOCH3、−CH2COOCH3等を示す。
【0073】
【化37】

【0074】
更に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−20に示されるフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基を挙げることができる。
【化38】


(式中、R080、R081はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。R080、R081は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の脂肪族炭化水素環を形成してもよい。R082はフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基から選ばれる2価の基を示す。R083は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。)
【0075】
フランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基で置換された繰り返し単位
【化39】


を得るためのモノマーとしては、下記に例示される。なお、R0112は上記の通りである。また、下記式中Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。
【0076】
【化40】

【0077】
【化41】

【0078】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベースとなる高分子化合物は、一般式(1)で示される塩基発生剤基を有する繰り返し単位a1〜a4と一般式(AL)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位bを有することが好ましいが、更にはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、ラクトン環、カルボキシル基、カルボン酸無水物基等の密着性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位cを共重合させてもよい。
繰り返し単位cを得るためのモノマーとしては、具体的に下記に挙げることができる。
【0079】
【化42】

【0080】
【化43】

【0081】
【化44】

【0082】
【化45】

【0083】
【化46】

【0084】
【化47】

【0085】
【化48】

【0086】
【化49】

【0087】
【化50】

【0088】
【化51】

【0089】
【化52】

【0090】
【化53】

【0091】
【化54】

【0092】
【化55】

【0093】
上記繰り返し単位a1、a2、a3、a4、b、cにおいて、繰り返し単位の比率は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0<a1+a2+a3+a4<1.0、0<b≦0.9、0≦c<0.9(特に0<c<0.9)、好ましくは、0≦a1≦0.5、0≦a2≦0.5、0≦a3≦0.5、0≦a4≦0.5、0.01≦a1+a2+a3+a4≦0.5、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、より好ましくは、0≦a1≦0.3、0≦a2≦0.3、0≦a3≦0.3、0≦a4≦0.3、0.015≦a1+a2+a3+a4≦0.3、0.15≦b≦0.7、0.15≦c≦0.7の範囲である。
【0094】
上記a1、a2、a3、a4、b、c以外の繰り返し単位としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、炭素数2〜20のアルケニル基を有する(メタ)アクリレート、炭素数6〜20のアリール基を有する(メタ)アクリレート、スチレン、アルキル基で置換されたスチレン、アルコキシ基で置換されたスチレン、アセトキシ基で置換されたスチレン、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アセナフチレン、インデン、ビニルピリジン、ビニルアントラセン、ビニルピロリドンなどのモノマーに由来する繰り返し単位dを挙げることができる。なお、dの割合は0≦d≦0.3、好ましくは0≦d≦0.2である。
【0095】
更に、下記一般式(10)で示されるスルホニウム塩を持つ繰り返し単位e1、e2、e3のいずれかを共重合することができる。
【化56】


(上式中、R120、R124、R128は水素原子又はメチル基、R121は単結合、フェニレン基、−O−R−、又は−C(=O)−Y−R−である。Yは酸素原子又はNH、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又は炭素数3〜10のアルケニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R122、R123、R125、R126、R127、R129、R130、R131は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Zは単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R132−、又は−C(=O)−Z1−R132−である。Z1は酸素原子又はNH、R132は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。e1は0≦e1≦0.3、e2は0≦e2≦0.3、e3は0≦e3≦0.3、0≦e1+e2+e3≦0.3、好ましくは0<e1+e2+e3≦0.3である。)
【0096】
-の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸を挙げることができる。
【0097】
更には、下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示されるα,β位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【化57】

【0098】
一般式(K−1)中、R102は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ラクトン環、又はフッ素原子を有していてもよい。
一般式(K−2)中、R103は水素原子、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又はアリーロキシ基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はラクトン環を有していてもよい。
【0099】
なお、上記繰り返し単位e1、e2、e3の比率は、0≦e1+e2+e3≦0.3であるが、該繰り返し単位を導入する場合は、0.01≦e1+e2+e3≦0.25であることが好ましく、特に本発明に係るレジスト材料が添加型の酸発生剤を含まない場合は、0.02≦e1+e2+e3≦0.20が好ましく、更に好ましくは0.03≦e1+e2+e3≦0.18である。
ここで、a1+a2+a3+a4+b+c+d+e1+e2+e3=1である。
【0100】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジストのベース樹脂となる高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料現像後の熱架橋における架橋効率が低下するものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなる可能性がある。
【0101】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0102】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては繰り返し単位a1、a2、a3、a4、b、c、d、e1、e2、e3を得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤を加え加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後、保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0103】
本発明において、光塩基発生剤は、光塩基発生剤基を含む繰り返し単位としてベースポリマーの高分子化合物中に導入することで用いることができるが、光塩基発生剤基を高分子化合物中に導入するのではなく、又は光塩基発生剤基を導入した高分子化合物に加えて、上記式(i)〜(iii)のいずれかの部分構造を含む化合物を光塩基発生剤としてレジスト材料中に添加、使用することもできる。具体的には、下記一般式(2)〜(9)に示される添加型の光塩基発生剤を配合することができる。
【0104】
【化58】

(式中、R21、R22、R23、R26、R27、R28、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R40、R41、R42、R46、R47、R48は水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基で、アリール基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はトリフルオロメチル基を含んでいてもよいが、R21〜R23、R26〜R28、R32〜R34、R35〜R37、R40〜R42、R46〜R48の内少なくとも一つがアリール基であり、少なくとも1つが水素原子であり、又はR21〜R23及びR26〜R28及びR32〜R34及びR35〜R37及びR40〜R42及びR46〜R48の内、2つ以上が結合してこれらが結合する炭素原子と共に好ましくは炭素数3〜10、特に4〜8の非芳香環を形成してもよい。R24、R25、R29、R31、R38、R39、R43、R45、R51、R52、R55、R57は水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、2重結合、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、又はエステル基を有していてもよく、R24とR25、R29とR31、R29とR30、R31とR30、R38とR39、R43とR44、R44とR45、R43とR45、R51とR52、R55とR56、R55とR57、R56とR57とが結合してこれらが結合する窒素原子と共に好ましくは炭素数3〜10、特に4〜8の非芳香環を形成してもよい。R30、R44、R56は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、又は炭素数2〜12のアルキニレン基で、これらの基は2重結合、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、又はエステル基を有していてもよい。R49、R50、R53、R54、R58、R59は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R49とR50、R53とR54、R58とR59とが結合してこれらが結合する炭素原子及び該炭素原子が結合する窒素原子と共に好ましくは炭素数3〜10、特に4〜8の環を形成してもよく、環の中にベンゼン環、ナフタレン環、2重結合、又はエーテル結合を有していてもよい。R60は炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のアルケニル基であり、R61は炭素数6〜20のアリール基、R62は水素原子、炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。R63、R64、R65は水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基又はアルコキシカルボニル基、又はシアノ基で、上記アルキル基、アリール基、アルケニル基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、スルフィド基、アミノ基、又はエーテル基を有していてもよい。m、n、rは1又は2である。)
【0105】
一般式(2)で示される光塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。ここで、R24、R25は前述の通りである。
【化59】

【0106】
【化60】

【0107】
一般式(3)で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。ここで、R29〜R31は前述の通りである(以下、同じ)。
【化61】

【0108】
【化62】

【0109】
【化63】

【0110】
式(3)の3分岐のアミン化合物が発生する塩基発生剤としては、下記に例示される。
【化64】

【0111】
一般式(4)で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。ここで、R38、R39は前述の通りである(以下、同じ)。
【化65】

【0112】
【化66】

【0113】
一般式(5)で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。ここで、R43〜R45は前述の通りである(以下、同じ)。
【化67】

【0114】
式(4)の3分岐のアミン化合物が発生する塩基発生剤としては、下記に例示される。
【化68】

【0115】
一般式(6)で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。ここで、R51、R52は前述の通りである。
【化69】

【0116】
一般式(7)で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。ここで、R55〜R57は前述の通りである(以下、同じ)。
【化70】

【0117】
式(7)の3分岐のアミン化合物が発生する塩基発生剤としては、下記に例示される。
【化71】

【0118】
一般式(8)で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。
【化72】

【0119】
【化73】

【0120】
【化74】

【0121】
一般式(9)で示される塩基発生剤は、具体的には下記に例示される。
【化75】

【0122】
【化76】

【0123】
なお、上記一般式(2)〜(9)に示される添加型の塩基発生剤の配合量は、ベースポリマーとしての上記高分子化合物100質量部に対して0〜10質量部、特に0〜8質量部の範囲が好ましく、配合する場合は、0.2質量部以上、特に0.5質量部以上が好ましい。
【0124】
本発明のパターン形成方法においては、デュアルトーンレジスト材料の場合は、前述の通り光酸発生剤よりも光塩基発生剤の方が発生効率が低いことが重要である。光酸発生剤としてスルホニウム塩、あるいはヨードニウム塩を用いた場合、一般式(1)〜(9)に示される塩基発生剤は発生効率が低いために好適に用いることができる。しかしながら、例えば光酸発生剤としてN−スルホニルオキシイミド、光塩基発生剤として式(6)、(7)に示される化合物を用いた場合、発生効率が同じであるためにポジ化もネガ化も起こらない。
熱酸発生剤や酸を添加したネガレジスト材料の場合は、光塩基発生剤の発生効率の影響は受けない。むしろ塩基の発生効率の高い光塩基発生剤を用いた方が高感度化できるメリットがある。
【0125】
本発明のパターン形成方法において、光塩基発生剤に併用して塩基によって塩基を発生させる塩基増殖剤を用いることもできる。塩基増殖剤を光塩基発生剤と併用する場合、アミノ基のモル数の関係は次の通りである。即ち、クエンチャー中のアミノ基の総モル数と、光塩基発生剤から発生するアミノ基の総モル数と、塩基増殖剤から発生するアミノ基の総モル数の和が、光酸発生剤から発生する酸の総モル数の和よりも多いことが必要である。塩基増殖剤としては、ポリマー主鎖に結合していてもよく、添加型でもよい。
【0126】
ポリマー主鎖に結合している場合では、一般式(1)の繰り返し単位a1において、R4、R5、R6の内の一つがアルケニル基である場合や、カルボニル基、エステル基、ラクトン環、カーボネート基、マレイミド基、アミド基、又はスルホ基を含んでいる場合である。
ポリマー主鎖型の塩基増殖剤としては、下記に例示することができる。このような主鎖型の塩基増殖剤は、酸不安定基や密着性基を有する繰り返し単位と共重合することができる。なお、R1〜R3は前述の通りである。
【0127】
【化77】

【0128】
添加型の塩基増殖剤は、下記式(2’)又は(3’)に示すものである。
【化78】


(但し、式中、R210、R220、R230、R260、R270、R280、R320、R330、R340は水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は炭素数7〜15のアラルキル基であるが、R210、R220、R230の少なくとも一つ、R260、R270、R280の少なくとも一つ、R320、R330、R340の少なくとも一つは、炭素数2〜8のアルケニル基であるか、あるいはカルボニル基、エステル基、ラクトン環、カーボネート基、マレイミド基、アミド基又はスルホ基を含む炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基等の有機基である。R24、R25、R29、R30、R31、mは上記の通りである。)
【0129】
具体的には下記に例示することができる。なお、R24、R25、R29〜R31は前述の通りである。
【化79】

【0130】
【化80】

【0131】
【化81】

【0132】
【化82】

【0133】
【化83】

【0134】
上記塩基増殖剤の配合量は、高分子化合物の主鎖に結合している場合は、繰り返し単位の総量100モル%中、0.1〜10モル%、好ましくは0.3〜8モル%、より好ましくは0.5〜7モル%である。添加型の場合は、高分子化合物(ベース樹脂)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜15質量部、より好ましくは0.5〜12質量部である。
【0135】
本発明に係るレジスト材料は、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)又は熱によって酸を発生する化合物(熱酸発生剤)を含有する。なお、上記式(10)で示されるスルホニウム塩を持つ繰り返し単位を高分子化合物(ベース樹脂)が有する場合は光酸発生剤を含有しなくてもよいが、必要に応じ光酸発生剤を配合することもできる。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0136】
光酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。本発明のパターン形成方法において、光塩基発生剤よりも光酸発生剤の方が光による発生効率が高くなければ、中間の露光量でのポジ化を起こすことはできない。よって光酸発生剤としては、スルホン酸、イミド酸、又はメチド酸を発生させるものが好ましく、このような酸の発生効率の高いスルホニウム塩やヨードニウム塩系の光酸発生剤を用いることが好ましい。
【0137】
かかる光酸発生剤として具体的には、下記のものが挙げられる。
スルホニウム塩はスルホニウムカチオンとスルホネートあるいはビス(置換アルキルスルホニル)イミド、トリス(置換アルキルスルホニル)メチドの塩であり、スルホニウムカチオンとしてトリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル2−ナフチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられ、スルホネートとしては、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ドデカフルオロヘキサンスルホネート、ペンタフルオロエチルパーフルオロシクロヘキサンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(4−フェニルベンゾイルオキシ)プロパンスルホネート、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ピバロイルオキシプロパンスルホネート、2−シクロヘキサンカルボニルオキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−フロイルオキシプロパンスルホネート、2−ナフトイルオキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート、2−(4−tert−ブチルベンゾイルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート、2−アダマンタンカルボニルオキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート、2−アセチルオキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパンスルホネート、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トシルオキシプロパンスルホネート、1,1−ジフルオロ−2−ナフチル−エタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ノルボルナン−2−イル)エタンスルホネート、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8−イル)エタンスルホネート等が挙げられ、ビス(置換アルキルスルホニル)イミドとしてはビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、ビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、1,3−プロピレンビススルホニルイミド等が挙げられ、トリス(置換アルキルスルホニル)メチドとしてはトリストリフルオロメチルスルホニルメチドが挙げられ、これらの組み合わせのスルホニウム塩が挙げられる。
【0138】
ヨードニウム塩はヨードニウムカチオンとスルホネートあるいはビス(置換アルキルスルホニル)イミド、トリス(置換アルキルスルホニル)メチドの塩であり、ジフェニルヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、4−tert−ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム等のアリールヨードニウムカチオンが挙げられ、スルホネートとしては前述のスルホニウム塩と同様のスルホネートを適用することができる。
【0139】
上記光酸発生剤の含有量は、ベース樹脂としての上記高分子化合物100質量部に対して0.1〜30質量部、特に0.5〜25質量部の範囲が好ましい。
【0140】
熱酸発生剤としては50〜200℃の熱によって酸を発生し得るもので、トリアルキルスルホネートを挙げることができる。トリアルキルスルホネートのカチオン側としては、具体的にはトリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、トリプロピルスルホニウム、トリブチルスルホニウム、メチルシクロペンチルスルホニウム、メチルシクロヘキシルスルホニウム、エチルシクロペンチルスルホニウム、エチルシクロヘキシルスルホニウムを挙げることができる。アニオン側としては上記のスルホン酸、イミド酸、又はメチド酸を用いることができる。酸としては、前記のスルホン酸、イミド酸、又はメチド酸を用いることができる。熱酸発生剤の含有量は、ベース樹脂としての上記高分子化合物100質量部に対して0.1〜30質量部、特に0.5〜20質量部の範囲が好ましい。
【0141】
本発明に係るレジスト材料は、更に、有機溶剤、塩基性化合物(クエンチャー)を含有する。また、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか1つ以上を含有することができる。
【0142】
レジスト用の有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載されている化合物を用いることができる。
【0143】
即ち、ここで使用される有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0144】
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂としての上記高分子化合物100質量部に対して200〜8,000質量部、特に400〜6,000質量部が好適である。
【0145】
レジスト用のクエンチャーとして機能する塩基性化合物としては、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]、界面活性剤は段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は段落[0179]〜[0182]に記載されている材料を用いることができる。
この場合、クエンチャーとしては、特に上記公報の段落[0152]〜[0156]に記載の構造のものが好ましい。
【0146】
更に詳述すると、クエンチャーとしては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カルバメート類等が挙げられる。
【0147】
更に、下記一般式(B)−1で示される含窒素有機化合物が例示される。
N(X)n(Y)3-n (B)−1
(上記式中、nは1、2又は3である。側鎖Xは同一でも異なっていてもよく、下記一般式(X1)、(X2)又は(X3)で表すことができる。側鎖Yは同一又は異種の、水素原子もしくは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20のアルキル基を示し、エーテル基もしくはヒドロキシ基を含んでもよい。また、X同士が結合して環を形成してもよい。)
【化84】

【0148】
上記一般式(X1)〜(X3)中、R300、R302、R305は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R301、R304は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、又はラクトン環を1個あるいは複数個含んでいてもよい。
303は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R306は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環を1個あるいは複数個含んでいてもよい。
【0149】
更に、下記一般式(B)−2に示される環状構造を持つ含窒素有機化合物が例示される。
【化85】


(上記式中、Xは前述の通り、R307は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、カルボニル基、エーテル基、エステル基、又はスルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。)
【0150】
更に、下記一般式(B)−3〜(B)−6で表されるシアノ基を含む含窒素有機化合物が例示される。
【化86】


(上記式中、X、R307、nは前述の通り、R308、R309は同一又は異種の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。)
【0151】
更に、下記一般式(B)−7で表されるイミダゾール骨格及び極性官能基を有する含窒素有機化合物が例示される。
【化87】


(上記式中、R310は炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状の極性官能基を有するアルキル基であり、極性官能基としては水酸基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、スルフィド基、カーボネート基、シアノ基、アセタール基のいずれかを1個あるいは複数個含む。R311、R312、R313は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。)
【0152】
更に、下記一般式(B)−8で示されるベンズイミダゾール骨格及び極性官能基を有する含窒素有機化合物が例示される。
【化88】


(上記式中、R314は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。R315は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の極性官能基を有するアルキル基であり、極性官能基としてエステル基、アセタール基、シアノ基のいずれかを一つ以上含み、その他に水酸基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、カーボネート基のいずれかを一つ以上含んでいてもよい。)
【0153】
更に、下記一般式(B)−9及び(B)−10で示される極性官能基を有する含窒素複素環化合物が例示される。
【化89】


(上記式中、Aは窒素原子又は≡C−R322である。Bは窒素原子又は≡C−R323である。R316は炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状の極性官能基を有するアルキル基であり、極性官能基としては水酸基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、スルフィド基、カーボネート基、シアノ基又はアセタール基を一つ以上含む。R317、R318、R319、R320は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はアリール基であるか、又はR317とR318、R319とR320は互いに結合してベンゼン環、ナフタレン環あるいはピリジン環を形成してもよい。R321は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はアリール基である。R322、R323は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はアリール基である。R321とR323は結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成してもよい。)
【0154】
更に、下記一般式(B)−11〜(B)−14で示される芳香族カルボン酸エステル構造を有する含窒素有機化合物が例示される。
【化90】


(上記式中、R324は炭素数6〜20のアリール基又は炭素数4〜20のヘテロ芳香族基であって、水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、又は炭素数1〜10のアルキルチオ基で置換されていてもよい。R325はCO2326、OR327又はシアノ基である。R326は一部のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。R327は一部のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又はアシル基である。R328は単結合、メチレン基、エチレン基、硫黄原子又は−O(CH2CH2O)n−基である。n=0,1,2,3又は4である。R329は水素原子、メチル基、エチル基又はフェニル基である。Xは窒素原子又はCR330である。Yは窒素原子又はCR331である。Zは窒素原子又はCR332である。R330、R331、R332はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はフェニル基であるか、あるいはR330とR331又はR331とR332が結合して、炭素数6〜20の芳香環又は炭素数2〜20のヘテロ芳香環を形成してもよい。)
【0155】
更に、下記一般式(B)−15で示される7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸エステル構造を有する含窒素有機化合物が例示される。
【化91】


(上記式中、R333は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。R334及びR335はそれぞれ独立に、エーテル、カルボニル、エステル、アルコール、スルフィド、ニトリル、アミン、イミン、アミドなどの極性官能基を1個又は複数個含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基であって、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。R334とR335は互いに結合して、これらが結合する窒素原子と共に炭素数2〜20のヘテロ環又はヘテロ芳香環を形成してもよい。)
【0156】
更に、クエンチャーとして特許第3790649号公報記載のカルバメート基を有する化合物を用いることもできる。カルバメート基を有する化合物はアミノ基を有していないが、酸によってカルバメート基が分解しアミノ基が生成され、クエンチャーとしての機能が発揮される。
【0157】
なお、クエンチャー(塩基性化合物)の配合量は、ベース樹脂としての上記高分子化合物100質量部に対して0.01〜15質量部、特に0.1〜12質量部の範囲が好ましい。
【0158】
上記式(1)〜(9)に示される光塩基発生剤基から発生したアミン化合物を触媒として、アミンを発生させるアミン増殖機構を利用した場合はアミンの発生効率を高め、アミンの発生を露光量に対して非線形にすることができるメリットがある。アミンの発生が非線形になると、不活性化のコントラストが向上し、ネガ化のコントラストを向上させることができる。
【0159】
ここで、本発明のパターン形成方法に用いるレジスト材料としては、クエンチャー中のアミノ基の総モル数と本発明に係る高分子化合物の光塩基発生剤基を有する繰り返し単位から発生するアミノ基の総モル数との和が、酸発生剤から発生する酸の総モル数、又はスルホニウム塩を持つ繰り返し単位を高分子化合物(ベース樹脂)が有する場合は、酸発生剤から発生する酸の総モル数と、高分子化合物のスルホニウム塩を持つ繰り返し単位から発生する酸の総モル数との和よりも多いことが必要である。これによって過露光部分で酸発生剤から発生した酸の不活性化が行われる。
【0160】
上記アミノ基の総モル数の和が酸の総モル数よりも20%以上多いことが好ましく、より好ましくは40%以上であるが、100%を超える場合は、アミン化合物の発生量が常に酸の発生量よりも多くなり、ポジ化の領域、即ち露光量を上げていったときに一旦アルカリに溶解する露光量域が存在しなくなることがあるため、アミノ基の量は、酸発生量に対して最適化する必要がある。かかる点から100%以下であることが好ましく、特には25〜80%、とりわけ30〜70%である。
【0161】
クエンチャーだけのアミノ基の総モル数が酸発生剤から発生する酸やスルホニウム塩を持つ繰り返し単位から発生する酸の総モル数よりも多い場合は、酸発生剤から発生する酸が露光量の大小に拘わらずに中和されているので脱保護反応が起こらず、ポジ化溶解挙動を示さない。よってクエンチャーのアミノ基の総モル数は酸発生剤から発生する酸やスルホニウム塩を持つ繰り返し単位から発生する酸の総モル数よりも少なくしなければならない。また、光塩基発生剤と塩基増殖剤を併用する場合は、アミノ基の総モル数はクエンチャーのアミノ基のモル数と光塩基発生剤から発生するアミノ基のモル数と塩基増殖剤から発生するアミノ基のモル数の和が酸の総モル数よりも20%以上多いことが好ましい。
光塩基発生剤を用いずに塩基増殖剤だけを用いた場合は、アミンの発生が露光量の増大に従って多くなることがないためネガ化が起こらない。よって塩基増殖剤を用いる場合は、光塩基発生剤と併用する必要がある。
【0162】
発生する塩基のアミノ基の総モル数が増加すると図7のポジ化の感度が低下し、同時にネガ化の感度が向上する。アミノ基の総モル数が多すぎるとポジ化とネガ化の感度が交差し、膜厚が0になる領域が存在しなくなる。また、ネガ化の露光量をポジ化の露光量で割った値が3〜8の範囲になるようにクエンチャーと塩基発生剤の添加量を調整すると、実際のパターンにおいてラインの分割が達成される。
【0163】
ポジ化とネガ化の感度は、PEB温度によっても調整することができる。PEB温度が高いとポジ化が高感度化、ネガ化が低感度化してネガ化の露光量をポジ化の露光量で割った値が大きくなる。逆にPEB温度を下げると上記と逆で、下げすぎるとポジ化とネガ化の感度が交差する。PEB温度を変えるとポジ化とネガ化の感度が変わるだけでなく、酸とアミンの拡散距離が変化する。ポジ化を高感度化し、ネガ化を低感度化させるために必要以上にPEB温度を高めることは、酸とアミンの拡散距離を伸ばすことになり、解像性の劣化を招くために好ましいことではない。PEB温度を変えてポジ化とネガ化の感度を調整するよりは、クエンチャーと塩基発生剤の添加量を変えることによってポジ化とネガ化の感度を調整する方が好ましい。
【0164】
光酸発生成分の露光量に対する酸発生効率は、光塩基発生剤の塩基発生効率よりも高いことが必要である。光酸発生効率が光塩基発生効率と同じか、光塩基発生剤の発生効率が光酸発生効率よりも高い場合はデュアルトーンの特性が発現しない。光酸発生剤の露光量に対する酸発生効率(Cパラメータ)が、光塩基発生剤のCパラメータの約5倍の場合が図7に示されるコントラストカーブである。図7に示されるレジストのアミンクエンチャーの添加量を増やしていくと上記に記載されているように、ポジ化の感度が低下するがネガ化の感度が向上し、結果的にイメージリバーサルのホールを開けるための感度が向上する。更にイメージリバーサルのホールを開けるための感度を上げるためには、塩基発生効率の高い塩基発生剤を用いる。図12の場合は、酸発生剤のCパラメータが塩基発生剤のCパラメータの2.5倍の場合である。この場合、図7に比べてポジ化の感度がほぼ同じでネガ化の感度だけが高感度化している。これによってイメージリバーサルのホールを開けるための感度を大幅に向上させることができる。
【0165】
本発明のパターン形成方法に用いられる光塩基発生剤基は、一般式(1)中のa1〜a4に示されるように、分解によって主鎖にアミノ基が発生する光塩基発生剤基、あるいは一般式(2)〜(9)に示される添加型の光塩基発生剤によってデュアルトーンの特性を得ることができる。ベーク(PEB)中にアミンが過剰になっている領域からアミンが蒸発し、酸が過剰になっている領域に再付着し、本来ならばスペースパターンが形成されるはずの領域のパターンが形成されなかったり、スペースパターンのトップが庇を形成して頭張り形状となったりする。ダークパターンとブライトパターンとで形状差や寸法差が生じ、いわゆるケミカルフレアによるダークブライト(DB)差が生じる場合がある。この場合、アミンの蒸発によるDB差を生じさせないためには主鎖に結合したアミノ基が発生する光塩基発生剤や、高沸点のアミンが発生する光塩基発生剤を用いることや、レジストの上層に保護膜を適用することが好ましい。
【0166】
本発明のパターン形成方法に用いられるフォトマスクとしては、バイナリーマスクあるいは石英基板上に露光波長の1〜40%の透過率のハーフトーン位相シフト膜を積層させたハーフトーン位相シフトマスクを用いる。通常ハーフトーン位相シフトマスクとしては、6%程度の透過率のハーフトーン位相シフトマスクが用いられているが、これよりも高透過率の方が高コントラストな光のイメージを得ることができる。ハーフトーン位相シフト膜としてはCrと酸素及び/又は窒素を含有するCr系の膜や珪素と酸素及び/又は窒素を含有している材料など所定の透過率と位相差を満たすものであればよいが、珪素と酸素及び/又は窒素を含有する材料が所定の位相差で高い透過率が得易く、特に200nm以下の露光波長であるArFを光源とした露光で所定の位相差で高い透過率を得ることができるため好ましい。珪素に酸素及び/又は窒素を含有する材料としては、SiOやSiN、SiON(本標記は構成元素を示すものであり、組成比を示すものではない、以下同じ)などSiとO、Nからなるものの他に更にCや遷移金属などを含んでいてもよい。特に遷移金属を含ませることによって透過率を所定の値に調整することが容易となる。また、窒素や酸素などの含有量を調整することによって透過率を調整することもできる。遷移金属としてはMo、Ta、Zr、W、Ti、Cr、Hfなどが挙げられるが、特にMo、Ta、Zrを含むものが耐薬品性、加工性の観点から好ましい。具体的にはMoSiN、MoSiON、MoSiO、ZrSiN、ZrSiON、ZrSiO、TaSiN、TaSiON、TaSiOなどを挙げることができる。遷移金属としては1種のものを挙げたが、MoZrSiN、MoZrSiON、MoZrSiO、MoTaSiN、MoTaSiON、MoTaSiO、ZrTaSiN、ZrTaSiON、ZrTaSiOなど、遷移金属を2種以上含むものとしてもよい。
【0167】
本発明に係るパターニング方法は、図1に示される。この場合、図1(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層30を介してポジ型レジスト材料を基板上に塗布してレジスト膜40を形成する。
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層30としては、SiO2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
次いで、図1(B)に示すように露光50を行う。更に、図1(C)に示すように現像を行う。
【0168】
本発明のパターン形成方法は、露光波長や露光方法に特に制約はないが、露光波長が200nm以下、例えば193nmなど、照明系としては偏光照明やダイポールなどの変形照明、液浸などを用い、60nm以下のパターンを形成するのに特に好ましい。
【0169】
本発明のデュアルトーンレジスト材料、ネガティブトーンレジスト材料を用いてホールパターンを形成する場合、X、Y方向の2回のラインパターンのダイポール照明による露光を行うことが最も高コントラストの光となる。ダイポール照明に併せてs偏光照明を加えると、更にコントラストを挙げることができる。
【0170】
ここで、本発明においては、バイナリーマスクあるいはハーフトーン位相シフトマスクを用い、互いに交差するX、Y方向の2回のラインパターン、あるいは格子状のパターンの交点、あるいはドットパターンに現像後のホールパターンを形成することが好ましく、マスクとしてはパターンが透過率3〜15%のハーフトーン位相シフトマスクであることが好ましい。ランダムな位置にホールパターンを形成する場合は、図29に示されるようにハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜30nm太い第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成すること、あるいは図31に示されるようにハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜100nm太いドットパターンの第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成することが好ましい。
【0171】
以下、更に詳述する。
図22は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのX方向ラインの光学像を示す。
図23は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのY方向ラインの光学像を示す。色が濃い方が遮光部分、白い方が光の強い領域であり、白と黒のコントラスト差がはっきりしており、特に強い遮光部分が存在することが示されている。
図24は、Y方向ラインにX方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージである。XとYのラインの組み合わせで格子状のイメージができ上がるように思われるがそうではなく、光の弱い黒い部分のパターンは円形である。円形のサイズが大きい場合は菱形形状で隣のパターンとつながり易いが、円のサイズが小さいほど円形度合いが向上し、強く遮光された小さな円が存在することが示されている。
【0172】
X、Y方向のラインを2回のダイポール照明と偏光照明を組み合わせた露光は、最も高コントラストの光が形成される方法であるが、2回の露光とその間のマスクの交換によってスループットが大幅に低下する欠点がある。マスクを交換しながら2回の露光を連続して行うためには、露光装置側のマスクのステージを2つ設ける必要があるが、現在の露光装置のマスクのステージは1つである。この場合、1枚露光する毎にマスクを交換するのではなく、FOUPに入った25枚ウエハーをX方向のラインの露光を連続して行い、次にマスクを交換して同じ25枚のウエハーを連続して露光を行うことによってスループットを上げることができる。しかしながら、25枚のウエハーの最初のウエハーが次に露光されるまでの時間が長くなることによって環境の影響で現像後のレジストの寸法や形状が変化してしまう問題が生じる。2回目の露光までのウエハー待機中の環境の影響を遮断するために、レジストの上層に保護膜を敷くことが有効である。
マスクを1枚で済ませるために、格子状のパターンのマスクを用いてX、Y方向のそれぞれのダイポール照明で2回露光する方法が提案されている(前述非特許文献1)。この方法では、前述の2枚のマスクを用いる方法に比べると光学コントラストが若干低下するが、1枚のマスクを用いることができるためにスループットが向上する。前述の非特許文献1では、格子状のパターンのマスクを用いてX方向のダイポール照明によってX方向のラインを形成し、光照射によってX方向のラインを不溶化し、この上にもう一度フォトレジストを塗布し、Y方向のダイポール照明によってY方向のラインを形成し、X方向のラインとY方向のラインの隙間にホールパターンを形成している。この方法では、マスクは1枚で済むが、2回の露光の間に1回目のフォトレジストパターンの不溶化処理と2回目のフォトレジストの塗布と現像のプロセスが入るために、2回の露光間にウエハーが露光ステージから離れ、この時にアライメントエラーが大きくなる問題が生じる。2回の露光間のアライメントエラーを最小にするためには、ウエハーを露光ステージから離さずに連続して2回の露光を行う必要がある。格子状のパターンのマスクを用いてY方向(垂直方向)のラインを形成するためのダイポールのアパチャー形状は図32、X方向(水平方向)のラインを形成するためのダイポールのアパチャー形状は図33に示される。ダイポール照明にs偏光照明を加えると更にコントラストが向上するので好ましく用いられる。格子状のマスクを用いてX方向のラインとY方向のラインを形成する2回のダブルダイポール露光を重ねて行って現像を行うと、ホールパターンが形成される。
格子状のマスクを用いて1回の露光でホールパターンを形成する場合は、図34に示されるアパチャー形状の4重極照明(クロスポール照明)を用いる。これにX−Y偏光照明あるいは円形偏光のAzimuthally偏光照明を組み合わせてコントラストを向上させる。
【0173】
本発明のホールパターンの形成方法では、露光を2回行う場合、1回目の露光と2回目の露光の照明とマスクを変更してダブルダイポール露光を行う方法が最も高コントラストで微細なパターンを寸法均一性よく形成できる。1回目の露光と2回目の露光に用いられるマスクは1回目のラインパターンと2回目のラインとが交差した交点に現像後のレジストのホールパターンを形成する。1回目のラインと2回目のラインの角度は直交が好ましいが、90度以外の角度でも構わなく、1回目のラインの寸法と2回目のラインの寸法やピッチが同じであっても異なってもよい。1枚のマスクに1回目のラインと、これと異なる位置に2回目のラインが存在するマスクを用いて1回目の露光と2回目の露光を連続露光することも可能であるが、この場合ウエハー上に露光される面積が半分になる。但し連続露光を行うことによって、アライメントエラーを最小にすることができる。もちろん1回の露光では、2回の連続露光よりもアライメントエラーを小さくすることができる。
1枚のマスクを用いて露光面積を縮小することなく2回の露光を行うために、マスクパターンとしては図25に示される格子状のパターンを用いる場合、図27に示されるドットパターンを用いる場合、図31に示されるドットパターンと格子状パターンを組み合わせる場合がある。
格子状のパターンを用いる方が最も光のコントラストが向上するが、光の強度が低下するためにレジストの感度が低下する欠点がある。一方ドットパターンを用いる方法は光のコントラストが低下するが、レジストの感度が向上するメリットがある。
ホールパターンが水平と垂直方向に配列されている場合は前記の照明とマスクパターンを用いるが、これ以外の角度例えば45度の方向に配列している場合は、45度に配列しているパターンのマスクとダイポール照明あるいはクロスポール照明を組み合わせる。
【0174】
図25に示される格子状のパターンが配されたマスクでは、格子の交点が強く遮光され、図26に示されるように、非常に遮光性の高い黒点が現れる。図26は、NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、幅30nmの格子状ラインパターンの光学像である。このようなパターンのマスクを用いて露光を行い、デュアルトーンレジストによってポジネガ反転を行うことによって微細なホールパターンを形成することができる。
【0175】
図27に示されるピッチ90nm、一辺の幅が60nmの正四角形のドットパターンが配置されたマスクにおける、NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明での光学像コントラストが図28に示される。この場合、図26に比べて強い遮光部分の円の面積が小さくなり、格子状パターンのマスクに比べてコントラストが低下するものの、黒い遮光部分が存在するためにホールパターンの形成は可能である。
【0176】
ピッチや位置がランダムに配列された微細なホールパターンの形成が困難である。密集パターンは、ダイポール、クロスポール等の斜入射照明に位相シフトマスクと偏光を組み合わせた超解像技術によってコントラストを向上することができるが、孤立パターンのコントラストはそれほど向上しない。
【0177】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、孤立パターンの解像力は変わらないために、粗密バイアスが拡大する。微細化に伴うホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはフォトレジスト材料の特性、即ち、溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、フォトレジスト材料の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化する。フォトレジスト材料の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジ型レジストパターンを溶解させないアルコール溶剤のネガ型レジスト膜を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作製する方法(Pack and unpack;PAU法)が提案されている(Proc. SPIE Vol. 5753 p171 (2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ずれが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。
【0178】
ランダムピッチのホールパターンをポジネガ反転によって形成するためには、格子状のパターンが全面に配列され、ホールを形成する場所だけに格子の幅を太くしたマスクを用いる。
ピッチ90nmで、20nmラインの格子状パターン上に、図29に示すようにホールを形成したい部分に十字の太い交差ラインを配置する。色の黒い部分がハーフトーンのシフター部分である。孤立性の所ほど太いライン(図29では幅40nm)、密集部分では幅30nmのラインが配置されている。密集パターンよりも孤立パターンの方が光の強度が弱くなるために、太いラインが用いられる。密集パターンの端の部分も光の強度がやや低下するために、密集部分の中心よりもやや幅広の32nmのラインが宛われている。
図29のマスクの光学像のコントラストイメージが図30に示される。黒い遮光部分にポジネガ反転によってホールが形成される。ホールが形成されるべき場所以外にも黒点が見られるが、黒点のサイズは小さいために、実際にはほとんど転写されない。不必要な部分の格子ラインの幅を狭くしたりするなどの更なる最適化によって、不必要なホールの転写を防止することが可能である。
【0179】
同じく格子状のパターンを全面に配列し、ホールを形成する場所だけに太いドットを配置したマスクを用いることもできる。ピッチ90nmで、15nmラインの格子状パターン上に、図31に示すようにドットを形成したい部分に太いドットを配置する。色の黒い部分がハーフトーンのシフター部分である。孤立性の所ほど大きなドット(図31では一辺90nm)、密集部分では一辺55nmの四角状のドットが配置されている。ドットの形状は正四角形でも、長方形、菱形、5角形、6角形、7角形、8角形以上の多角形、円形でも構わない。図31のマスクにおける光学像のコントラストイメージが図32に示される。図25に比べてもほぼ同等の黒い遮光部分が存在し、ポジネガ反転によってホールが形成されることが示されている。
【0180】
図33に示されるような格子状パターンが配列されていないマスクを用いた場合、図34に示されるように黒い遮光部分は現れない。この場合はホールの形成が困難であるか、もし形成できたとしても光学像のコントラストが低いために、マスク寸法のバラツキがホールの寸法のバラツキに大きく反映する結果となる。
本発明においては、上記被加工層に直接又は上記ハードマスク等の中間介在層を介して本発明に係るレジスト材料によるレジスト膜を形成するが、このレジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
【0181】
熱酸発生剤を添加したネガレジストの場合は、熱酸発生剤を分解させない温度でプリベークを行い、露光後のPEBによって熱酸発生剤を分解させると同時に脱保護反応を進行させる。トリアルキルスルホニウム塩は分解温度が100℃付近が多く、これよりも低い温度でプリベークを行い、100℃よりも高温でPEBを行う。酸を添加したネガレジストの場合は、脱保護が進行しない温度でプリベークを行い、脱保護が進行する温度でPEBを行う。酸強度と保護基選択を最適化して100℃以下の温度では脱保護反応が進行せず、100℃を超える温度で脱保護反応を進行させる組み合わせを選択する。プリベーク中に脱保護反応が進行すると、その後の露光によって塩基が発生してもネガ化が起こらない。
【0182】
次いで、露光を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、その中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカンなどの屈折率が1以上で、露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを40nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよく、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0183】
光塩基発生剤から発生したアミンがベーク中に蒸発し、これが酸が過剰な領域のレジスト表面に再付着することによって、本来酸によって脱保護が進行して現像後にスペースが開く領域が開口しない現象が起きることがある。このために光塩基発生剤から発生するアミンは沸点が高く、理想的にはポリマー主鎖にアミノ基が結合したアミンが発生する光塩基発生剤を用いることが望ましい。しかしながら、高沸点のバルキーなアミンや高分子型のアミンは酸の捕捉能が低く、不活性化能が低い。不活性化能が低い場合、ネガ化のコントラストが低くなり、ネガパターンの形状が逆テーパー形状になり、エッジラフネスが劣化するおそれがある。添加型の光塩基発生剤から発生するアミンは不活性化能が高いが、ベーク中に蒸発しケミカルフレアを引き起こす可能性がある。ケミカルフレアを防止するために、レジストの上層に保護膜を適用することは効果的である。
保護膜材料としては、特開2006−91798号公報、特開2007−316581号公報、特開2008−81716号公報、特開2008−111089号公報、特開2009−205132号公報に示されている材料を挙げることができる。
【0184】
レジスト材料として、レジスト表面の撥水性を上げるための添加剤を加えてもよい。このものは、フルオロアルコール基を有する高分子体であり、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって表面エネルギーを低下させ、滑水性が向上する。このような材料は、特開2007−297590号公報、特開2008−122932号公報に示される。
【0185】
露光における露光量は1〜200mJ/cm2程度、好ましくは10〜150mJ/cm2、更に好ましくは15〜120mJ/cm2となるように露光する。
次に、ホットプレート上で50〜150℃、1〜5分間、好ましくは60〜140℃、1〜3分間ポストエクスポジュアーベーク(PEB)する。
PEB中に酸触媒による脱保護反応が進行するが、酸とアミンの拡散も進行する。酸の拡散による解像性の低下が指摘されているが、本発明に係るレジスト組成物においてはアミンの拡散の方が解像性やホールパターンの寸法のバラツキに大きく影響する。アミンの拡散を抑えるためにはなるべく低温でPEBを行うことが好ましく、このためには低温のPEBで酸による脱保護反応が進行する低活性化エネルギーの保護基が好ましい。
低活性化エネルギーの保護基の代表としてはアセタール保護基が挙げられる。
【0186】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより基板上に目的のパターンが形成される。
【0187】
次いで、レジスト膜をマスクとしてハードマスク等の中間介在層をエッチングし、更に被加工層のエッチングを行う。この場合、ハードマスク等の中間介在層のエッチングは、フロン系、ハロゲン系のガスを用いてドライエッチングすることによって行うことができ、被加工層のエッチングは、ハードマスクとのエッチング選択比をとるためのエッチングガス及び条件を適宜選択することができ、フロン系、ハロゲン系、酸素、水素等のガスを用いてドライエッチングすることによって行うことができる。次いで、レジスト膜を除去するが、この除去は、ハードマスク等の中間介在層のエッチング後に行ってもよい。なお、レジスト膜の除去は、酸素、ラジカルなどのドライエッチングによって行うことができ、あるいはアミン系有機溶剤、又は硫酸/過酸化水素水などの剥離液によって行うことができる。
【0188】
現像後のレジストパターンをマスクにしてイオンを基板に打ち込むイオンインプランテーションを行ってもよい。有機溶剤現像によるネガティブパターンは、残った膜が脱保護反応によって生じたカルボキシル基であるために、イオンを打ち込んだ時の遮断性が低いが、本発明のパターン形成方法で形成されたネガティブパターンは環式の保護基が残っているためにイオンの遮断性が高いメリットがある。同様の理由でドライエッチングにおけるエッチング耐性も高い。
また、架橋型のネガ型レジストや、有機溶剤現像によるネガパターン形成において、スペース部分の溶解残さが問題になるが、本発明のパターン形成においては脱保護反応によって生じるカルボキシル基によるスペース部分の溶解速度が速いために、スペース部分に残差が生じることが無い。
現像後に、ホールパターンやトレンチパターンをシュリンクさせるプロセスを行うこともできる。シュリンクプロセスとしては、熱ベークによるサーマルフロー、シュリンク剤を塗布してベークし、余分なシュリンク剤を剥離するRELACSTM、SAFIRETMなどを挙げることができる。
【実施例】
【0189】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0190】
[合成例]
レジスト材料に添加される高分子化合物として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶剤下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマー1〜12)を得た。得られた高分子化合物の組成は1H−NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフにより確認した。
【0191】
ポリマー1
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.76
【化92】

【0192】
ポリマー2
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.77
【化93】

【0193】
ポリマー3
分子量(Mw)=7,600
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化94】

【0194】
ポリマー4
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.92
【化95】

【0195】
ポリマー5
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.83
【化96】

【0196】
ポリマー6
分子量(Mw)=7,300
分散度(Mw/Mn)=1.81
【化97】

【0197】
ポリマー7
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化98】

【0198】
ポリマー8
分子量(Mw)=9,300
分散度(Mw/Mn)=1.93
【化99】

【0199】
ポリマー9
分子量(Mw)=9,600
分散度(Mw/Mn)=1.98
【化100】

【0200】
ポリマー10
分子量(Mw)=9,600
分散度(Mw/Mn)=1.98
【化101】

【0201】
ポリマー11
分子量(Mw)=9,400
分散度(Mw/Mn)=1.98
【化102】

【0202】
ポリマー12
分子量(Mw)=9,400
分散度(Mw/Mn)=1.98
【化103】

【0203】
比較ポリマー1
分子量(Mw)=9,900
分散度(Mw/Mn)=1.99
【化104】

【0204】
[レジストの組成及び調製]
上記で合成した高分子化合物(ポリマー1〜12)、比較ポリマー1、光酸発生剤(PAG1)、熱酸発生剤(TAG1〜7)、酸(Acid1〜4)、比較熱酸発生剤(比較TAG1)、光塩基発生剤(PBG1〜9)、塩基増殖剤(BG1〜3)、塩基性化合物(アミンクエンチャー:Quencher1,2)、レジスト表面撥水剤(撥水剤ポリマー1)、住友スリーエム(株)製界面活性剤;FC−4430が50ppm混合された溶剤を表1−1、1−2の組成で混合し、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過した溶液を調製した。
【0205】
【化105】

【0206】
【化106】

【0207】
【化107】

【0208】
【化108】

有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
【0209】
【表1−1】

【0210】
【表1−2】

【0211】
上記表1−1、1−2の組成のレジストポリマー中の光塩基発生剤基から発生するアミノ基のモル数a、添加した塩基発生剤と塩基増殖剤から発生するアミノ基のモル数b、クエンチャーのアミノ基のモル数c、光酸発生剤から発生する酸及びスルホニウム塩を持つ繰り返し単位から発生する酸、熱酸発生剤から発生する酸、添加された酸の合計のモル数d、上記アミノ基の合計モル数を酸の合計のモル数で割った値eとした場合の値を表2に示す。
【0212】
【表2】

【0213】
(1)コントラストカーブ評価
表1−1中に示されるレジスト1をシリコンウエハーにARC−29A(日産化学工業(株)製)を80nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを110nmにした。表1−2中に示されるレジスト23、比較レジスト3をシリコンウエハーにARC−29A(日産化学工業(株)製)を80nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて75℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを110nmにした。表1−2中に示される比較レジスト1、比較レジスト2は、シリコンウエハーにARC−29A(日産化学工業(株)製)を80nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを110nmにした。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S307E,NA0.85、σ0.93、通常照明)を用いて露光量を変えながらオープンフレーム露光を行い、110℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。現像後のレジスト膜厚を光学式膜厚計で測定した。レジスト1の結果を図40に示し、レジスト23の結果を図41に示す。図40において膜厚が0になるポジ化の感度は18mJ/cm2、膜厚が増加し始めるネガ化の感度は72mJ/cm2であり、デュアルトーンレジストの溶解特性を示す。図41においては膜厚が増加し始めるネガ化の感度は33mJ/cm2であり、ネガレジストの溶解特性を示す。比較レジスト1の結果を図42、比較レジスト2のレジストの結果を図43、比較レジスト3のレジストの結果を図44に示す。
【0214】
(2)パターニング評価1
表1−1、1−2中に示されるレジスト材料を、シリコンウエハーにスピンオンカーボン膜ODL−102(信越化学工業(株)製)を200nmの膜厚、スピンオン珪素含有膜SHB−A940(信越化学工業(株)製)を35nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、実施例1−1〜1−19、比較例1,2はホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、実施例1−20〜1−32、比較例3〜5はホットプレートを用いて75℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを80nmにした。レジスト1〜7、レジスト20〜32、及び比較レジスト1〜5は保護膜なしで、レジスト8〜19はレジスト膜上に表3に示す保護膜1を塗布し、90℃で60秒間ベークし、膜厚50nmの保護膜を作製した。
【0215】
【表3】

【化109】

【0216】
これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール照明)、Azimuthally偏光照明で、ウエハー上の寸法で50nmライン、100nmピッチのX方向のラインとY方向のラインの2つのマスクパターンにそれぞれ適用するダイポール照明で露光し、表4−1、4−2に示す温度で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S−9380)を用いて、50nmサイズのホールが形成されているかどうか、この時の露光量を確認し、ホールが形成されている場合イメージ反転されたホールパターン50箇所の寸法を測定し、3σの寸法バラツキを求めた。結果を表4−1、4−2に示す。
【0217】
【表4−1】

【0218】
【表4−2】

【0219】
(3)パターニング評価2
表1−1、1−2中に示されるレジスト材料を、シリコンウエハーにスピンオンカーボン膜ODL−102(信越化学工業(株)製)を200nmの膜厚、スピンオン珪素含有膜SHB−A940(信越化学工業(株)製)を35nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを80nmにし、レジスト上に表3に示す保護膜1を塗布し、90℃で60秒間ベークし、膜厚50nmの保護膜を作製した。これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C,NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ100nm、ライン幅40nmの図35に示されるレイアウトの格子状マスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後表5に示す温度で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S−9380)を用いて、50nmサイズのホールが形成されているかどうか、この時の露光量を確認し、ホールが形成されている場合イメージ反転されたホールパターン50箇所の寸法を測定し、3σの寸法バラツキを求めた。結果を表5に示す。
【0220】
【表5】

【0221】
(4)パターニング評価3
表1−1、1−2中に示されるレジスト材料を、シリコンウエハーにスピンオンカーボン膜ODL−102(信越化学工業(株)製)を200nmの膜厚、スピンオン珪素含有膜SHB−A940(信越化学工業(株)製)を35nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを80nmにし、レジスト上に表3に示す保護膜1を塗布し、90℃で60秒間ベークし、膜厚50nmの保護膜を作製した。これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C,NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ100nm、ライン幅20nmの図36に示されるレイアウトの格子状の上にドットが配置されたパターンのマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後表6に示す温度で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S−9380)を用いて、50nmサイズのホールが形成されているかどうか、この時の露光量を確認し、ホールが形成されている場合イメージ反転されたホールパターン50箇所の寸法を測定し、3σの寸法バラツキを求めた。結果を表6に示す。
【0222】
【表6】

【0223】
(5)パターニング評価4
表1−1、1−2中に示されるレジスト材料を、シリコンウエハーにスピンオンカーボン膜ODL−102(信越化学工業(株)製)を200nmの膜厚、スピンオン珪素含有膜SHB−A940(信越化学工業(株)製)を35nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを80nmにし、レジスト上に表3に示す保護膜1を塗布し、90℃で60秒間ベークし、膜厚50nmの保護膜を作製した。これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C,NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ100nm、ライン幅40nmの図35に示されるレイアウトの格子状マスク)を用いて露光量を変化させながら同じ場所をXダイポールとYダイポールの2回の連続露光を行い、露光後表7に示す温度で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S−9380)を用いて、50nmサイズのホールが形成されているかどうか、この時の露光量を確認し、ホールが形成されている場合イメージ反転されたホールパターン50箇所の寸法を測定し、3σの寸法バラツキを求めた。結果を表7に示す。
【0224】
【表7】

【0225】
(6)パターニング評価5
表1−1、1−2中に示されるレジスト材料を、シリコンウエハーにスピンオンカーボン膜ODL−102(信越化学工業(株)製)を200nmの膜厚、スピンオン珪素含有膜SHB−A940(信越化学工業(株)製)を35nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを80nmにし、レジスト上に表3に示す保護膜1を塗布し、90℃で60秒間ベークし、膜厚50nmの保護膜を作製した。これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C,NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ90nmドットの一辺60nmの図27に示されるレイアウトのドットマスク)を用いて露光量を変化させながら同じ場所をXダイポールとYダイポールの2回の連続露光を行い、露光後表8に示す温度で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行った。
(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S−9380)を用いて、50nmサイズのホールが形成されているかどうか、この時の露光量を確認し、ホールが形成されている場合イメージ反転されたホールパターン50箇所の寸法を測定し、3σの寸法バラツキを求めた。結果を表8に示す。
【0226】
【表8】

【0227】
本発明のレジスト材料32は、アミノ基の合計モル数が発生酸の合計モル数より上回るもので、デュアルトーンの特性を示し、交差する2つのラインパターン及びドットパターン及び格子状パターンのマスクを用いて露光し、アルカリ水溶液現像による画像反転によってホールパターンを高精度に形成できた。
【符号の説明】
【0228】
10 基板
20 被加工基板
30 中間介在層
40 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位を含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、酸発生剤及び/又は酸と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、必要により添加され、酸発生剤より発生する酸を中和することによって不活性化させるクエンチャーと、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布、露光、ベーク、アルカリ水現像によってネガパターンを得ることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
クエンチャー中のアミノ基の総モル数と、光塩基発生剤から発生する化合物中のアミノ基の総モル数の和が、酸発生剤から発生する酸と予め添加された酸の総モル数の合計よりも多いことを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項3】
酸発生剤が光によって酸を発生することを特徴とする請求項1又は2記載のパターン形成方法。
【請求項4】
酸発生剤が、光照射によってスルホン酸、イミド酸、又はメチド酸が発生するものであることを特徴とする請求項3記載のパターン形成方法。
【請求項5】
酸発生剤が熱によって酸を発生することを特徴とする請求項1又は2記載のパターン形成方法。
【請求項6】
酸発生剤が炭素数1〜10のトリアルキルスルホニウム塩の熱酸発生剤であることを特徴とする請求項4記載のパターン形成方法。
【請求項7】
環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位を含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、酸と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布してベークし、露光後、ベーク(PEB)、現像の工程を経て、露光量の多い部分の膜を現像液に溶解させず、露光量の少ない部分を溶解させてネガパターンを得るための請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項8】
光塩基発生剤から発生する化合物中のアミノ基の総モル数の和が、酸の総モル数の合計よりも多いことを特徴とする請求項7記載のパターン形成方法。
【請求項9】
環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位を含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、スルホニウム塩及び/又はヨードニウム塩と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、アミノ基を有し、スルホニウム塩及び/又はヨードニウム塩より発生する酸を中和することによって不活性化させるクエンチャーと、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布してベークし、露光後、ベーク(PEB)、現像の工程を経て、露光量の多い部分の膜を現像液に溶解させず、露光量の少ない部分を溶解させてネガパターンを得るためのパターン形成方法。
【請求項10】
環状構造を含む3級エステル型酸不安定基及び/又はアセタール型酸不安定基を有する繰り返し単位とスルホニウム塩を持つ酸発生剤の繰り返し単位とを含み、酸によってアルカリ現像液に可溶になる高分子化合物と、アミノ基を有する化合物を発生させる光塩基発生剤と、アミノ基を有し、スルホニウム塩を持つ酸発生剤の繰り返し単位より発生する酸を中和することによって不活性化させるクエンチャーと、有機溶剤とを含むレジスト材料を基板上に塗布してベークし、露光後、ベーク(PEB)、現像の工程を経て、露光量の多い部分の膜を現像液に溶解させず、露光量の少ない部分を溶解させてネガパターンを得るためのパターン形成方法。
【請求項11】
クエンチャー中のアミノ基の総モル数と、光塩基発生剤から発生する化合物中のアミノ基の総モル数の和が、スルホニウム塩を持つ酸発生剤の繰り返し単位、又は添加されたスルホニウム塩及び/又はヨードニウム塩より発生する酸の総モル数よりも多いことを特徴とする請求項9又は10記載のパターン形成方法。
【請求項12】
酸発生剤が、光照射によってスルホン酸、イミド酸、又はメチド酸が発生するものであることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【請求項13】
光塩基発生剤が、光分解によりアミノ基を有する化合物を発生させるものであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【請求項14】
下記式(i)〜(iii)で示されるいずれかの部分構造を有する光塩基発生剤を含有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【化1】

【請求項15】
光塩基発生剤が、下記一般式(1)中の繰り返し単位a1〜a4のいずれかで示されるものであり、該繰り返し単位が高分子化合物の主鎖に結合されていることを特徴とする請求項14記載のパターン形成方法。
【化2】

(式中、R1、R7、R12、R17は水素原子又はメチル基である。R2、R8、R13、R18は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、又は−C(=O)−O−R21−である。R21は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又は炭素数2〜12のアルケニレン基であり、R3、R9、R14は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であるが、上記R21と結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R4、R5、R6は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基で、アリール基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はトリフルオロメチル基を含んでいてもよく、R4とR5、R5とR6、又はR4とR6とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよいが、R4、R5、R6の全てが水素原子、又は全てがアルキル基になることはない。R10、R11は炭素数6〜14のアリール基で、該アリール基は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R15、R16は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R15とR16とが結合してこれらが結合する炭素原子及び該炭素原子が結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、環の中にベンゼン環、ナフタレン環、2重結合、又はエーテル結合を有していてもよい。R19、R20は水素原子、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14のR4、R5、R6と同様の置換基を有していてもよいアリール基であり、R19、R20の内少なくとも一方あるいは両方がアリール基であり、又はR19とR20とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0<a1+a2+a3+a4<1.0である。)
【請求項16】
光塩基発生剤が、下記一般式(2)〜(9)に示されるものから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項14記載のパターン形成方法。
【化3】

(式中、R21、R22、R23、R26、R27、R28、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R40、R41、R42、R46、R47、R48は水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基で、アリール基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はトリフルオロメチル基を含んでいてもよいが、R21〜R23、R26〜R28、R32〜R34、R35〜R37、R40〜R42、R46〜R48の内少なくとも一つがアリール基であり、少なくとも1つが水素原子であり、又はR21〜R23及びR26〜R28及びR32〜R34及びR35〜R37及びR40〜R42及びR46〜R48の内、2つ以上が結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。R24、R25、R29、R31、R38、R39、R43、R45、R51、R52、R55、R57は水素原子、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、2重結合、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、又はエステル基を有していてもよく、R24とR25、R29とR31、R29とR30、R31とR30、R38とR39、R43とR44、R44とR45、R43とR45、R51とR52、R55とR56、R55とR57、R56とR57とが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R30、R44、R56は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、又は炭素数2〜12のアルキニレン基で、これらの基は2重結合、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、又はエステル基を有していてもよい。R49、R50、R53、R54、R58、R59は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R49とR50、R53とR54、R58とR59とが結合してこれらが結合する炭素原子及び該炭素原子が結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、環の中にベンゼン環、ナフタレン環、2重結合、又はエーテル結合を有していてもよい。R60は炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のアルケニル基であり、R61は炭素数6〜20のアリール基、R62は水素原子、炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。R63、R64、R65は水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基又はアルコキシカルボニル基、又はシアノ基で、上記アルキル基、アリール基、アルケニル基が炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、スルフィド基、アミノ基、又はエーテル基を有していてもよい。m、n、rは1又は2である。)
【請求項17】
露光波長が193nmのArFエキシマレーザーを光源とし、レンズと基板の間に水を挿入する液浸リソグラフィー、又は、レンズと基板の間が大気又は窒素であるドライリソグラフィーであることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項記載のポジネガ反転のパターン形成方法。
【請求項18】
交差する2つのラインパターンの2回の露光又はドットパターン又は格子状パターンの露光によってポジネガ反転を行うことを特徴とする請求項17記載のパターン形成方法。
【請求項19】
交差する2つのラインパターン及びドットパターン及び格子状パターンが透過率3〜15%のハーフトーン位相シフトマスクを用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【請求項20】
ハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜30nm太い第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成することを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【請求項21】
ハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜100nm太いドットパターンの第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成することを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【請求項22】
保護膜を形成する材料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとした材料を、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させたものを用い、これをレジスト膜上に塗布して保護膜を形成した後、露光、ベーク、現像を行うようにしたことを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図12】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図25】
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【図27】
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【図29】
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【図31】
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【図33】
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【図35】
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【図36】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図28】
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【図30】
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【図32】
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【図34】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2012−181510(P2012−181510A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20397(P2012−20397)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】