説明

パターン検査装置及びパターン検査方法

【目的】擬似欠陥を低減させるパターン検査を行う装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様のパターン検査装置100は、パターン形成されたフォトマスク101における光学画像データを取得する光学画像取得部150と、パターンの設計データを画像データに展開して展開画像データを生成する展開回路111と、展開画像データに対してひずみ処理を行い、ひずみ画像データを生成するひずみ画像生成回路140と、画素毎に、展開画像データとひずみ画像データとの差異を示す非類似指数を算出する非類似指数算出回路142と、展開画像データに対してデータ処理を行い、光学画像データと比較するための基準画像データを生成する基準画像生成回路112と、画素毎に、非類似指数に応じた判定条件で、光学画像データと基準画像データとを比較する比較回路108と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査装置及びパターン検査方法に係り、例えば、半導体製造に用いる試料となる物体のパターン欠陥を検査するパターン検査技術に関し、半導体素子や液晶ディスプレイ(LCD)を製作するときに使用されるフォトマスク、ウェハ、あるいは液晶基板などの極めて小さなパターンの欠陥を検査する装置およびその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。よって、かかる微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができるパターン描画装置を用いる。かかるパターン描画装置を用いてウェハに直接パターン回路を描画することもある。例えば、電子ビームやレーザビームを用いて描画される。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)は、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査する試料検査装置の開発も急務となってきている。
【0005】
ここで、従来のパターン検査装置では、拡大光学系を用いてリソグラフィマスク等の試料上に形成されているパターンを所定の倍率で撮像した光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パターンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行うことが知られている。例えば、パターン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die検査(ダイ−ダイ検査)」法や、マスクパターンを描画する時に使用したCADデータを検査装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計データ)をベースに比較の基準となる画像データ(基準画像データ)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像データとを比較する「die to database検査(ダイ−データベース検査)」法がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は光学画像(測定画像)データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、基準画像データと光学画像データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0006】
ここで、近年、マスク上のパターンの微細化に伴い、比較対象画像同士の画素位置ズレ、画像の伸縮、うねり、或いはセンシングノイズに埋もれる程度のサイズの欠陥を検出する必要が生じている。しかしながら、特に、ダイ−データベース検査において、設計パターンで示される図形の形状やサイズ等によっては、装置内で基準画像データを生成する際に、光学画像データとの比較に適さない基準画像データを生成してしまうことがある。このような基準画像データを用いて光学画像データとの比較を行なえば、本来、欠陥とすべきではないのに欠陥と判定されてしまう擬似欠陥が生じてしまうことにつながる。その結果、検査精度が低下してしまう。
【0007】
かかる問題を解決するアプローチのひとつとして基準画像を生成するモデルを改善することが考えられるが、多種多様な形状とサイズの図形パターンのすべてに完全であるモデルを構築することは困難である。よって、比較に適さない基準画像と比較に適した基準画像とを区別して検査することが重要となっている。
【0008】
ここで、マスク上の検査領域について検査閾値を変更するための領域を予め指定し、検査装置にかかる領域データを入力して、領域データが指定する領域毎に検査閾値を設定された閾値に変更する技術が文献に開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら、かかる技術では、基準画像データが検査装置内で生成される前に、予め、領域を指定しておかなければならないため、実際に検査装置内で生成される各基準画像データが比較に適した画像になるかどうか予めわかっている場合でないと対応することができない。そのため、上述した問題を解決する手法としては十分な手法にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−64843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、ダイ−データベース検査において、設計パターンで示される図形の形状やサイズ等によっては、装置内で基準画像データを生成する際に、光学画像データとの比較に適さない基準画像データを生成してしまうことがある。このような基準画像データを用いて光学画像データとの比較を行なえば、的確な検査が行なえず擬似欠陥が生じてしまうことにつながる。その結果、検査精度が低下してしまう。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、擬似欠陥を低減させるパターン検査を行う装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様のパターン検査装置は、
パターン形成された被検査試料における光学画像データを取得する光学画像取得部と、
前記パターンの設計データを画像データに展開して展開画像データを生成する展開画像生成部と、
前記展開画像データに対してひずみ処理を行い、ひずみ画像データを生成するひずみ画像データ生成部と、
画素毎に、前記展開画像データと前記ひずみ画像データとの差異を示す非類似指数を算出する非類似指数算出部と、
前記展開画像データに対してデータ処理を行い、前記光学画像データと比較するための基準画像データを生成する基準画像データ生成部と、
画素毎に、前記非類似指数に応じた判定条件で、前記光学画像データと前記基準画像データとを比較する比較部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様のパターン検査方法は、
パターン形成された被検査試料における光学画像データを取得する工程と、
前記パターンの設計データを画像データに展開して展開画像データを生成する工程と、
前記展開画像データに対してひずみ処理を行い、ひずみ画像データを生成する工程と、
画素毎に、前記展開画像データと前記ひずみ画像データとの差異を示す非類似指数を算出する工程と、
前記展開画像データに対してデータ処理を行い、前記光学画像データと比較するための基準画像データを生成する工程と、
画素毎に、前記非類似指数に応じた判定条件で、前記光学画像データと前記基準画像データとを比較し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較に適さない基準画像のデータと比較に適した基準画像のデータとを画素単位で区別して検査することができる。よって、擬似欠陥を低減させることができる。その結果、検査のやり直しを防ぐなど装置の有効利用を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図3】実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための図である。
【図4】実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。
【図5】実施の形態1における図形パターンの一例を示す図である。
【図6】実施の形態1における図形パターンの他の一例を示す図である。
【図7】実施の形態1における図形パターンの他の一例を示す図である。
【図8】図5(b)で示した図形パターンの展開画像を示す図である。
【図9】図8で示した図形パターンの展開画像にパターン変形処理を施した結果の一例を示す概念図である。
【図10】図9で示した図形パターンの画像にパターン逆変形処理を施した結果の一例を示す概念図である。
【図11】図10で示したひずみ画像と図8で示した展開画像から得られる非類似指数を画像表示した一例を示す概念図である。
【図12】実施の形態2におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図13】実施の形態2におけるパターン検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図14】実施の形態2における単精度化の手法の一例を示す概念図である。
【図15】実施の形態3におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図16】実施の形態3におけるパターン検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図17】実施の形態3における埋め込み処理の内容を説明するための概念図である。
【図18】実施の形態3における埋め込み処理の内容を説明するための他の概念図である。
【図19】別の光学画像取得手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図1において、マスクやウェハ等の基板を試料として、かかる試料の欠陥を検査するパターン検査装置100は、光学画像取得部150と制御回路160を備えている。光学画像取得部150は、XYθテーブル102、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、センサ回路106、レーザ測長システム122、オートローダ130、照明光学系170、及びストライプパターンメモリ146を備えている。制御回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較部の一例となる比較回路108、展開回路111、基準画像生成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、ひずみ画像生成回路140、非類似指数算出回路142、複雑度算出回路144、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、及びプリンタ119に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。図1では、本実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。パターン検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0018】
図2は、実施の形態1におけるパターン検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図2において、パターン検査方法は、光学画像取得工程(S102)、展開処理工程(S202)、画像処理工程(S212)、ひずみ処理工程(S222)、非類似指数算出工程(S224)、複雑度算出工程(S228)、及び比較工程(S300)という一連の工程を実施する。また、比較工程(S300)内では、エリア切り出し工程(S302)、位置合わせ工程(S304)及び比較処理工程(S306)という一連の内部工程を実施する。
【0019】
検査開始前に、まず、オートローダ制御回路113により制御されたオートローダ130により被検査試料となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上にロードされ、そして、XYθテーブル102上に載置される。また、フォトマスク101のパターン形成時に用いた設計パターンの情報(設計データ)は、装置外部からパターン検査装置100に入力され、記憶装置(記憶部)の一例である磁気ディスク装置109に記憶される。
【0020】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。
【0021】
S(ステップ)202において、光学画像取得工程として、光学画像取得部150は、パターン形成された被検査試料となるフォトマスク101における光学画像データ(測定データ)を取得する。具体的には、光学画像データは、以下のように取得される。フォトマスク101に形成されたパターンには、XYθテーブル102の上方に配置されている適切な光源103によって光が照射される。光源103から照射される光束は、照明光学系170を介してフォトマスク101を照射する。フォトマスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105及びセンサ回路106が配置されており、フォトマスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像し、入射する。拡大光学系104は図示しない自動焦点機構により自動的に焦点調整がなされていてもよい。
【0022】
図3は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための図である。被検査領域は、図3に示すように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割される。そして、更にその分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、図3に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第1の検査ストライプ20における画像を取得した後、第2の検査ストライプ20における画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第3の検査ストライプ20における画像を取得する場合には、第2の検査ストライプ20における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプ20における画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。ここでは、フォワード(FWD)−バックワード(BWD)手法を用いているが、これに限るものではなくフォワード(FWD)−フォワード(FWD)手法を用いても構わない。
【0023】
フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、例えばTDI(タイムディレイインテグレータ)センサのようなセンサが設置されている。ステージとなるXYθテーブル102をX軸方向に連続的に移動させることにより、TDIセンサはフォトマスク101のパターンを撮像する。これらの光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、センサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。
【0024】
センサ回路106出力された各検査ストライプ20の測定データ(光学画像データ)は、検査ストライプ20毎にストライプパターンメモリ146に一時的に格納される。そして、各検査ストライプ20の測定データは、順に、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に出力される。測定データは、各画素毎に例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を例えば0〜255で表現している。
【0025】
S202において、展開処理工程として、展開回路111は、所定の領域毎に、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計データを読み出し、読み出された被検査試料となるフォトマスク101の設計データを2値ないしは多値のイメージデータである展開画像データに変換(展開処理)する。所定の領域は、例えば、後述する比較工程(S300)において、光学画像と比較する画像の領域(エリア)とすればよい。例えば、1024×1024画素の領域(エリア)とする。実施の形態1では、一例として、光学画像の画素サイズと展開画像の画素サイズが同じサイズである場合について説明する。但し、これに限るものではなく、後述するように、光学画像の画素サイズと展開画像の画素サイズは異なっていても良い。展開回路111は、展開画像生成部の一例である。
【0026】
設計データに定義されるパターンを構成する図形は長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0027】
かかる図形データが展開回路111に入力されると、図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の画像データを展開する。そして、展開された画像データ(展開画像データ)は、回路内の図示しないパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。言い換えれば、占有率演算部において、設計パターンデータを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目ごとに設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データをパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109に出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、展開画像データは、各画素に対して8ビットの占有率データで定義されたエリア単位の画像データとしてパターンメモリ、或いは磁気ディスク装置109に格納される。
【0028】
S212において、画像処理工程として、基準画像生成回路112は、展開画像データを入力し、展開画像データに対してデータ処理(画像処理)を行い、光学画像データと比較するための基準画像データを生成する。基準画像生成回路112は、基準画像データ生成部の一例となる。基準画像生成回路112は、展開画像データに適切なフィルタ処理を施す。
【0029】
図4は、実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。センサ回路106から得られた光学画像データ(測定データ)は、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にある。そのため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである展開画像データにも所定のモデルに沿ったフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。例えば、拡大或いは縮小処理をおこなうリサイズ処理、コーナー丸め処理、或いはぼかし処理といったフィルタ処理を施す。このようにして光学画像と比較する基準画像を作成する。作成された基準画像データは、比較回路108に送られる。基準画像データも測定データと同様、各画素が例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を0〜255で表現している。生成された基準画像データは、基準画像生成回路112内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109に格納される。
【0030】
以上のように生成した展開画像データを用いて、光学画像データと比較するための基準画像データを生成する。しかし、上述したように、設計パターンで示される図形の形状やサイズ等によっては、装置内で基準画像データを生成する際に、光学画像データとの比較に適さない基準画像データを生成してしまうことがある。そこで、実施の形態1では、基準画像生成とは別に、生成された展開画像データに対して、あえてひずみ処理を施して、その結果得られたひずみ具合から、比較に適した基準画像データが生成されるのか、それとも、比較に適さない基準画像データが生成されるのかを判断する。
【0031】
以下、ひずみ処理工程(S222)から複雑度算出工程(S228)の各工程は、基準画像を生成した画像処理工程(S212)と並行して実施される。或いは、画像処理工程(S212)から引き続き連続して実施される。或いは、ひずみ処理工程(S222)から複雑度算出工程(S228)の各工程を実施した後に画像処理工程(S212)を引き続き連続して実施しても構わない。
【0032】
S212において、ひずみ処理工程として、ひずみ画像生成回路140は、展開画像データに対してひずみ処理を行い、ひずみ画像データを生成する。ひずみ画像生成回路140は、ひずみ画像データ生成部の一例である。ひずみ処理は、パターン変形処理(パターン形状を変形する処理)と、パターン逆変形処理(変形されたパターン形状を元に戻そうとする処理)という、相反する2つの画像処理を行う。相反する2つの処理には種々の方法があるが、例えば、次のような方法が用いられる。パターン変形処理はパターンサイズの拡大、パターン逆変形処理ではパターンサイズの縮小を行う。或いは、パターン変形処理はパターンサイズの縮小、パターン逆変形処理ではパターンサイズの拡大を行う。すなわち、処理の順序を逆にしてもよい。また、パターン変形処理とパターン逆変形処理とを数回繰り返しても構わない。ここで、パターンの拡大/縮小処理は、展開画像から基準画像を発生させる過程で施される一般的なもので構わない。以下に、ひずみが生じる可能性が大きい図形パターンの一例を示す。
【0033】
図5は、実施の形態1における図形パターンの一例を示す図である。図5(a)と図5(b)では、中央の図形の角部にOPCパターンが配置されている。このように、中央の図形の角部の数画素程度の領域内の複数個所で形状が変化する図形パターンが示されている。図5(a)と図5(b)では、遮光部と透光部とが逆になっただけの違いである。すなわち、所謂、白黒反転させた図形パターン同士である。
【0034】
図6は、実施の形態1における図形パターンの他の一例を示す図である。図6(a)と図6(b)では、幅寸法が数画素程度の小さい直線図形が間を広く開けて配置されている図形パターンが示されている。図6(a)と図6(b)では、遮光部と透光部とが逆になっただけの違いである。すなわち、所謂、白黒反転させた図形パターン同士である。
【0035】
図7は、実施の形態1における図形パターンの他の一例を示す図である。図7(a)と図7(b)では、複数の長方形が、上下左右間の間隔が数画素程度と狭い間隔で並んでいる図形パターンが示されている。図7(a)と図7(b)では、遮光部と透光部とが逆になっただけの違いである。すなわち、所謂、白黒反転させた図形パターン同士である。
【0036】
以下、一例として、図5(b)で示した図形パターンを用いて、ひずみ処理を説明する。
【0037】
図8は、図5(b)で示した図形パターンの展開画像を示す概念図である。図8において、OPCパターンが配置された中央部の図形の角部の領域Bと、OPCパターンが配置されていない上辺の領域Aとが示されている。領域Aは単純な形状のパターン、領域Bは複雑な形状をもつパターン(1画素の段差)が含まれている。図8(a)には、展開画像を図示している。また、図8(b)には、図8(a)に示す画像の右上角部(領域B)付近の画素値を示している。
【0038】
図9は、図8で示した図形パターンの展開画像にパターン変形処理を施した結果の一例を示す図である。図9の例では、パターン変形処理として、0.5画素の拡大処理を行った結果が示されている。図9(a)には、パターン変形処理を施した結果を画像で示している。また、図9(b)には、図9(a)に示す画像の右上角部(領域B)付近の画素値を示している。
【0039】
図10は、図9で示した図形パターンの画像にパターン逆変形処理を施した結果の一例を示す概念図である。図10の例では、パターン変形処理として、0.5画素の縮小処理を行った結果が示されている。図10では、図7で示した図形から若干ひずみが生じたひずみ画像が示されている。特に、OPCパターンが配置された中央部の図形の角部において、ひずみが生じている。図10(a)には、パターン逆変形処理を施した結果を画像で示している。また、図10(b)には、図10(a)に示す画像の右上角部(領域B)付近の画素値を示している。
【0040】
以上のようにして、パターン変形処理とパターン逆変形処理とを行なうことで、ひずみ画像データを生成することができる。ひずみ処理を行なうことによって、すべての図形パターンの展開画像がひずむとは限らないが、狭い領域内で形状が変化するパターンでは特にひずみが生じ易い。ひずみ画像データは、ひずみ画像生成回路140内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。
【0041】
S224において、非類似指数算出工程として、非類似指数算出回路142は、展開画像データとひずみ画像データとを入力し、上述した所定の領域の画像の画素毎に、展開画像データとひずみ画像データとの差異を示す非類似指数R(n)を算出する。非類似指数算出回路142は、非類似指数算出部の一例である。非類似指数R(n)は、例えば、以下の式(1)で求める。
(1) R(n)=√{(B(n)−A(n))
【0042】
なお、非類似指数R(n)は、n番目に位置する画素についての非類似指数を示している。B(n)は展開画像のn番目に位置する画素の画素値、A(n)はひずみ画像のn番目に位置する画素の画素値を示している。ただし、nは1、2、3、・・・Nと続きn≦Nである。
【0043】
式(1)において、非類似指数R(n)は、展開画像とひずみ画像の画素値の差分の2乗の平方根、言い換えれば、展開画像とひずみ画像の画素値の差分の絶対値として示しているが、これに限るものではない。例えば、展開画像とひずみ画像の画素値の差分のままであってもよい。算出された非類似指数R(n)データは、非類似指数算出回路142内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。
【0044】
図11は、図10で示したひずみ画像と図8で示した展開画像から得られる非類似指数を画像表示した一例を示す概念図である。図11(a)には、非類似指数で示される画像のうち、右上角部(領域B)付近の画素値を示している。しかし、図11(a)の画素値で画像表示しても視覚的に見にくいので、図11(b)に、説明の理解を得やすくするため非類似性を誇張した形状で記載している。また、図11(c)には、図11(b)に示す画像の右上角部(領域B)付近の画素値を示している。図11では、一例として、領域Aのような単純な形状のパターン部分においてR(n)=0となり、展開画像とひずみ画像が一致している。一方、領域Bのような複雑な形状のパターン部分においてR(n)>0となり不一致となっている。このように、非類似指数R(n)を求めることで、その値の大小により、光学画像データとの比較に適さない光学画像データが生成され得る画素を見つけることができる。
【0045】
S228において、複雑度算出工程として、複雑度算出回路144は、非類似指数R(n)に応じて複数の判定条件の中から1つを識別するための複雑度Z(n)(識別値)を算出する。複雑度Z(n)は、n番目に位置する画素についての複雑度を示している。複雑度算出回路144は、識別値算出部の一例である。ここでは、後述する光学画像データと基準画像データを比較回路108内で比較する際に使用する判定条件を識別する識別値を算出する。複雑度算出回路144は、非類似指数R(n)を複数の閾値Lmで大小の判定をして、展開画像上のパターン形状の複雑さ(ひずみ易さ)をランク別に分類する。
【0046】
複雑度Z(n)は、非類似指数R(n)を複数の閾値Lmでランク付けする。mは、ランク値を示す。ランク付けには種々の方法があるが、例えば、次のような方法がある。R(n)<閾値Lmの式を満たせば、Z(n)=閾値Lmが示すランク値mとする。例えば、3つのランク値を設定する。すなわち、m=1、2、3とする。そして、各ランク値の閾値は、順に、L1=50、L2=100、L3=220とする。ここでは、ランク値mが小さいほど、閾値Lmを小さい値とする。そして、非類似指数R(n)を判定する際、小さい閾値Lmから順に用いられる。具体的には、例えば、R(1)=46のとき、R(1)<L1なので、Z(1)=1となる。また、R(N)=210のとき、R(N)<L3なので、Z(N)=3となる。なお、R(n)≧(Lmの最大値)の場合には、Z(n)=Lmの最大値が示すランク値mとすればよい。例えば、R(n)=220のとき、R(n)≧L3なので、Z(n)=3となる。算出された複雑度Z(n)データは、複雑度算出回路144内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。そして、算出された複雑度Z(n)データは、比較回路108に出力される。
【0047】
S300において、比較工程として、比較回路108は、画素毎に、複雑度Z(n)に対応する判定条件で、該当する所定の領域の光学画像データと基準画像データとを比較する。比較回路108は、比較部の一例である。複雑度Z(n)は、非類似指数R(n)に応じて算出されるので、言い換えれば、比較回路108は、画素毎に、非類似指数R(n)に応じた判定条件で、該当する所定の領域の光学画像データと基準画像データとを比較する。以下、比較回路108内での処理を具体的に説明する。比較回路108内では、まず、ストライプパターンメモリ146から1つのストライプ分の光学画像データを入力し、1つのストライプ分の光学画像データを基準画像と同じ領域サイズで切り出す(S302)。その際、切り出す領域は、基準画像を生成する際の領域に合わせることは言うまでもない。領域サイズが合わされた光学画像データは、比較回路108内の図示しないメモリに格納される。他方、生成された所定の領域の基準画像データも、比較回路108内の図示しない他のメモリに格納される。そして、同じ領域の光学画像データと基準画像データを読み出し、位置合わせを行なう(S304)。そして、アライメントされた光学画像データと基準画像データに対して、複雑度Z(n)に対応する判定条件に従って画素毎に両者を比較し、欠陥の有無を判定する(S306)。判定条件としては、例えば、所定のアルゴリズムに従って画素毎に両者を比較し、欠陥の有無を判定する際の閾値Qmが該当する。或いは、例えば、両者を比較し、欠陥の有無を判定する際の比較アルゴリズムが該当する。
【0048】
判定条件として閾値Qmを可変にする場合、以下のように比較処理を行なう。比較処理は、比較アルゴリズムにおいて用いる判定閾値Qmについて、複雑度Z(n)ごとに適した閾値Gmを使って欠陥の判定をするために、例えば、次のような方法がある。比較アルゴリズムは、例えば、光学画像の画素値O(n)と基準画像の画素値K(n)との差の二乗値が、判定閾値Qmを超えるとき欠陥と判定する。複雑度Z(n)=1、Z(n)=2、Z(n)=3のときの判定閾値QmをそれぞれQ1=20、Q2=40、Q3=60と決めておく。複雑度Z(n)と判定閾値の関連テーブルは、比較回路108内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納しておけばよい。たとえば、O(1)とK(1)との差の二乗値が37で、Z(1)=1であったとすると、37>Q1となるので欠陥であると判定される。なお、比較アルゴリズムは、光学画像と基準画像から算出した2つの画像の相違点または類似点を示す値を、判定閾値Qmで判定するものであればよい。
【0049】
或いは、判定条件として比較アルゴリズムを可変にする場合、以下のように比較処理を行なう。比較回路108は、画素毎に、複雑度Z(n)に対応するアルゴリズムで、該当する所定の領域の光学画像データと基準画像データとを比較する。比較処理用の複数のアルゴリズムと、複雑度Z(n)とアルゴリズムの関連テーブルは、比較回路108内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納しておけばよい。複雑度Z(n)ごとに適した比較アルゴリズムを選ぶには、例えば、次のような方法がある。3つのアルゴリズム名をAg、Bg、Cgとして、複雑度Z(n)=1のときはAg、Z(n)=2のときはBg、Z(n)=3のときはCgを使うと決めておく。光学画像の画素値O(n)と基準画像の画素値K(n)の比較において、例えば、n=1のときZ(1)=2であったとすると、O(1)とK(1)の比較は、アルゴリズムBgを用いて行われる。なお、比較アルゴリズムAg、Bg、Cgは、それぞれ、光学画像と基準画像との類似点や相違点などを算出し欠陥検出をするものであればよい。例えば、光学画像の画素値と基準画像の画素値との差の2乗値が閾値を越えたとき欠陥であると判定する。或いは、例えば、光学画像の画素値と基準画像の画素値との差の絶対値が閾値を越えたとき欠陥であると判定する。また、比較アルゴリズムAg、Bg、Cgでは、かかる差の2乗値や差の絶対値に補正値を加算或いは減算してから閾値と比較してもよい。
【0050】
そして、比較された結果は、出力される。例えば、CRT117に表示される。或いは、パターンモニタ118に表示される。或いは、プリンタ119で印刷される。或いは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、或いはFD116に記憶される。
【0051】
以上のように、実施の形態1では、実際に画像展開された画像を使って、ひずみ画像を生成し、そのひずみ具合から比較アルゴリズムや判定閾値を変更する。かかる構成にすることで、比較に適さない基準画像のデータと比較に適した基準画像のデータとを画素単位で区別して検査することができる。よって、擬似欠陥を低減させることができる。その結果、検査のやり直しを防ぐなど装置の有効利用を可能にすることができる。さらに、パターン検査装置100にデータ入力前から判定閾値を変更する領域を設定しなくても済む。そのため、実際に検査装置内で生成される各基準画像データが比較に適した画像になるかどうか予めわかっていない場合でも対応することができる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態1では、展開画像データを光学画像データと同じ画素サイズで生成する場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態2では、基準画像を高精度に生成するために、展開画像データの解像度を光学画像データよりも高くして生成する場合について説明する。
【0053】
図12は、実施の形態2におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図12において、サイズ合わせ回路148が追加された点以外は、図1と同様である。また、以下、特に、説明した内容以外は、実施の形態1と同様である。
【0054】
図13は、実施の形態2におけるパターン検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図13において、非類似指数算出工程(S224)と複雑度算出工程(S228)との間に、サイズ合わせ工程(S226)を追加した点以外は、図2と同様である。
【0055】
図13において、光学画像取得工程(S102)の内容は実施の形態1と同様である。
【0056】
展開処理工程(S202)として、展開回路111は、光学画像取得工程(S102)で取得される光学画像の画素サイズよりも小さい画素サイズで展開画像を生成する。小さい画素サイズで展開画像を生成することで解像度を光学画像よりも高めることができる。例えば、光学画像の画素サイズの1/2の画素サイズで展開画像を生成する。かかるサイズにすることで解像度は光学画像の4倍となる。解像度を上げることで高精度な展開画像を生成することができる。
【0057】
画像処理工程(S212)として、基準画像生成回路112は、光学画像の画素サイズよりも小さい画素サイズの展開画像データを入力し、展開画像データに対してデータ処理(画像処理)を行い、光学画像データと比較するための基準画像データを生成する。基準画像生成回路112は、基準画像データ生成部の一例となる。基準画像生成回路112は、展開画像データに適切なフィルタ処理を施す。そして、基準画像生成回路112は、基準画像データについて、光学画像の画素サイズと同じ画素サイズに変換(単精度化)する。単精度化前の基準画像データが、光学画像データの画素サイズの1/2の画素サイズで生成されている場合、例えば、4つの画素の画素値の平均値を単精度化後の画素の画素値とすると好適である。或いは、4つの画素ののうちの1つを単精度化後の画素の画素値としても好適である。
【0058】
ひずみ処理工程(S222)として、ひずみ画像生成回路140は、光学画像の画素サイズよりも小さい画素サイズの展開画像データに対してひずみ処理を行い、展開画像データと同じ画素サイズのままでひずみ画像データを生成する。すなわち、光学画像の画素サイズよりも小さい画素サイズのひずみ画像データを生成する。展開画像の精度が低いと誤差が大きいので、展開画像の画素サイズを光学画像の画素サイズに合わせてからひずませるのではなく、解像度を上げた状態のままでひずませる。これにより高精度なひずみ画像を生成することができる。
【0059】
非類似指数算出工程(S224)として、非類似指数算出回路142は、展開画像データとひずみ画像データとを入力し、上述した所定の領域の画像の画素毎に、光学画像の画素サイズよりも小さい画素サイズの展開画像データと同様に光学画像の画素サイズよりも小さい画素サイズのひずみ画像データとの差異を示す非類似指数R(n)を算出する。非類似指数R(n)は、実施の形態1と同様、例えば、上述した式(1)で求める。算出された非類似指数R(n)データaは、非類似指数算出回路142内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。
【0060】
サイズ合わせ工程(S226)として、サイズ合わせ回路148は、光学画像データの画素サイズよりも小さい画素サイズの状態で算出された非類似指数R(n)を光学画像データの画素サイズに相当する非類似指数R(n)に変換する。光学画像データの画素サイズを基準とすると、非類似指数R(n)データaの画素サイズを光学画像データの画素サイズに単精度化する。サイズ合わせ回路148は、非類似指数変換部の一例である。単精度化された非類似指数R(n)データbは、サイズ合わせ回路148内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。
【0061】
図14は、実施の形態2における単精度化の手法の一例を示す概念図である。図14では、単精度化前の非類似指数R(n)データaが、光学画像データの画素サイズの1/2の画素サイズで生成されている場合を示している。かかる画素32を光学画像データの画素サイズである2倍のサイズの画素34に拡大し、単精度化する。4つの画素32が1の画素34に相当するので、4つの画素32をまとめることになる。非類似指数R(n)データaの4つの画素32の画素値RijがR11、R12、R21、R22である場合、以下の手法で単精度化すると好適である。(ij)は画素32の座標を示す。例えば、4つの画素32の画素値(R11、R12、R21、R22)の平均値を画素34の画素値R’11とすると好適である。或いは、4つの画素32の画素値(R11、R12、R21、R22)のうち、最も画素値(非類似指数R(n))が大きい値を画素34の画素値R’11としても好適である。或いは、4つの画素32の画素値(R11、R12、R21、R22)のうち、最も画素値(非類似指数R(n))が小さい値を画素34の画素値R’11とし、仮に4つの画素32の画素値(R11、R12、R21、R22)がすべて0の場合はそのまま0を画素34の画素値R’11としても好適である。図14に示したように、1/2倍の画素サイズを1倍に単精度化する際には、例えば座標(1,1)の画素32を基点に右隣の座標(2,1)の画素32と上隣の座標(1,2)の画素32と右斜め上隣の座標(2,2)の画素32との隣り合う4つの画素32を1つの画素34に変換する。よって、次は、例えば、座標(1,1)の画素32から1画素分だけ間を空けた座標(3,1)の画素32を基点に右隣の座標(4,1)の画素32と上隣の座標(3,2)の画素32と右斜め上隣の座標(4,2)の画素32との隣り合う4つの画素32を1つの画素34に変換する。このように、同じ画素32が2回使用されないようにする。以上のようにして、単精度化された非類似指数R(n)データbが生成される。
【0062】
複雑度算出工程(S228)として、複雑度算出回路144は、単精度化された非類似指数R(n)に応じて複数の判定条件の中から1つを識別するための複雑度Z(n)(識別値)を算出する。
【0063】
比較工程(S300)の内容は、実施の形態1と同様である。以上のように、展開画像を光学画像よりも小さい画素サイズで生成する場合に、非類似指数R(n)を算出した後で単精度化することで、高精度な非類似指数R(n)を算出することができる。
【0064】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、複雑度Z(n)を独立して、比較回路108に出力しているが、これに限るものではなく、実施の形態3では、基準画像データ中に複雑度Z(n)を埋め込む構成について説明する。
【0065】
図15は、実施の形態3におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図15において、埋め込み回路149が追加された点以外は、図1と同様である。また、以下、特に、説明した内容以外は、実施の形態1と同様である。
【0066】
図16は、実施の形態3におけるパターン検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図16において、画像処理工程(S212)と比較工程(S300)との間に埋め込み処理工程(S214)を追加した点以外は、図2と同様である。
【0067】
実施の形態3では、埋め込み処理工程(S214)として、埋め込み回路149が、画像処理工程(S212)において生成された基準画像データAの中に、複雑度算出工程(S228)で算出された複雑度Z(n)を埋め込む。そして、複雑度Z(n)が埋め込まれた基準画像データBは、埋め込み回路149内の図示しないメモリ、或いは磁気ディスク装置109内に格納される。埋め込み回路149は、埋め込み処理部の一例である。
【0068】
図17は、実施の形態3における埋め込み処理の内容を説明するための概念図である。画像処理工程(S212)において生成された基準画像データAの各画素値は、例えば、8ビットの符号なしデータとして生成される。かかるデータ中の下位側にビットに複雑度Z(n)を埋め込む。図17では、3つの複雑度Z(n)=1,2,3が算出される場合を示している。かかる場合に、基準画像データAの下位の2ビットを使って、図17(a)に示すようにZ(n)=1のとき、“00”と、図17(b)に示すようにZ(n)=2のとき、“01”と、図17(c)に示すようにZ(n)=3のとき、“10”とそれぞれ定義する。これにより、基準画像データAの下位の2ビットを識別すれば、かかる画素の複雑度Z(n)がわかる。下位の2ビットを複雑度Z(n)に使用したとしても、下位の2ビットに相当する画素値としては比較判定の際の判定誤差の範囲であるので、比較判定への影響は許容内となる。
【0069】
図18は、実施の形態3における埋め込み処理の内容を説明するための他の概念図である。図18では、2つの複雑度Z(n)=1,2が算出される場合を示している。かかる場合に、基準画像データAの最下位の1ビットを使って、図18(a)に示すようにZ(n)=1のとき、“0”と、図18(b)に示すようにZ(n)=2のとき、“1”とそれぞれ定義する。これにより、基準画像データAの最下位の1ビットを識別すれば、かかる画素の複雑度Z(n)がわかる。
【0070】
比較工程(S300)として、比較回路108は、複雑度Z(n)が埋め込まれた基準画像データBを入力して基準画像データBの中から複雑度Z(n)を抽出し、画素毎に、複雑度Z(n)に対応する判定条件で、該当する所定の領域の光学画像データと基準画像データとを比較する。
【0071】
以上のように、実施の形態3によれば、複雑度Z(n)を別途格納するためのメモリ容量を減らすことができる。また、基準画像データBを転送する帯域分で複雑度Z(n)の情報も転送できるので、転送の帯域を減らすことができる。
【0072】
図19は、別の光学画像取得手法を説明するための図である。図1の構成では、スキャン幅Wの画素数を同時に入射するフォトダイオードアレイ105を用いているが、これに限るものではなく、図19に示すように、XYθテーブル102をX方向に定速度で送りながら、レーザ干渉計で一定ピッチの移動を検出した毎にY方向に図示していないレーザスキャン光学装置でレーザビームをY方向に走査し、透過光或いは反射光を検出して所定の大きさのエリア毎に二次元画像を取得する手法を用いても構わない。
【0073】
以上の説明において、「〜部」、「〜回路」或いは「〜工程」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。例えば、演算制御部を構成するテーブル制御回路114、展開回路111、基準画像生成回路112、ひずみ画像生成回路140、非類似指数算出回路142、複雑度算出回路144、サイズ合わせ回路148、埋め込み回路149或いは比較回路108等は、電気的回路で構成されていても良いし、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現してもよい。また電気的回路とソフトウェアの組み合わせで実現しても良い。
【0074】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、各実施の形態では、透過光を用いているが、反射光あるいは、透過光と反射光を同時に用いてもよい。反射光を用いる場合には、透過部から得られる画素値と遮光部から得られる画素値の大小が逆になることは言うまでもない。
【0075】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0076】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置或いはパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0077】
32,34 画素
100 パターン検査装置
101 フォトマスク
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 フォトダイオードアレイ
106 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
111 展開回路
112 基準画像生成回路
115 磁気テープ装置
140 ひずみ画像生成回路
142 非類似指数算出回路
144 複雑度算出回路
146 ストライプパターンメモリ
148 サイズ合わせ回路
149 埋め込み回路
150 光学画像取得部
160 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成された被検査試料における光学画像データを取得する光学画像取得部と、
前記パターンの設計データを画像データに展開して展開画像データを生成する展開画像生成部と、
前記展開画像データに対してひずみ処理を行い、ひずみ画像データを生成するひずみ画像データ生成部と、
画素毎に、前記展開画像データと前記ひずみ画像データとの差異を示す非類似指数を算出する非類似指数算出部と、
前記展開画像データに対してデータ処理を行い、前記光学画像データと比較するための基準画像データを生成する基準画像データ生成部と、
画素毎に、前記非類似指数に応じた判定条件で、前記光学画像データと前記基準画像データとを比較する比較部と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記ひずみ画像データ生成部は、前記展開画像データに対して、パターン形状を変形する処理と変形されたパターン形状を元に戻そうとする処理とを行なうことにより、前記ひずみ画像データを生成することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記ひずみ画像データ生成部は、前記展開画像データに対して、パターンサイズを拡大する処理と拡大されたパターンサイズを縮小する処理とを行なうことにより、前記ひずみ画像データを生成することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項4】
前記ひずみ画像データ生成部は、前記展開画像データに対して、パターンサイズを縮小する処理と縮小されたパターンサイズを拡大する処理とを行なうことにより、前記ひずみ画像データを生成することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項5】
前記非類似指数に応じて複数の判定条件の中から1つを識別するための識別値を算出する識別値算出部をさらに備え、
前記比較部は、前記識別値を入力して、前記識別値に対応する判定条件で比較することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項6】
前記識別値を前記基準画像データの中に埋め込む埋め込み処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項7】
前記展開画像データは、前記光学画像データの画素サイズよりも小さい画素サイズで生成され、
前記ひずみ画像データ生成部は、前記光学画像データの画素サイズよりも小さい画素サイズの状態で前記展開画像データに対してひずみ処理を行うことで、前記光学画像データの画素サイズよりも小さい画素サイズの状態での前記ひずみ画像データを生成し、
前記非類似指数算出部は、前記光学画像データの画素サイズよりも小さい画素サイズの状態の前記展開画像データと前記ひずみ画像データとから前記非類似指数を算出し、
前記パターン検査装置は、さらに、
前記光学画像データの画素サイズよりも小さい画素サイズの状態で算出された前記非類似指数を前記光学画像データの画素サイズに相当する非類似指数に変換する非類似指数変換部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項8】
パターン形成された被検査試料における光学画像データを取得する工程と、
前記パターンの設計データを画像データに展開して展開画像データを生成する工程と、
前記展開画像データに対してひずみ処理を行い、ひずみ画像データを生成する工程と、
画素毎に、前記展開画像データと前記ひずみ画像データとの差異を示す非類似指数を算出する工程と、
前記展開画像データに対してデータ処理を行い、前記光学画像データと比較するための基準画像データを生成する工程と、
画素毎に、前記非類似指数に応じた判定条件で、前記光学画像データと前記基準画像データとを比較し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とするパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−256716(P2010−256716A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108144(P2009−108144)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【Fターム(参考)】