説明

パターン検査装置及びパターン検査方法

【目的】光学系の位置ずれによる画像の歪みを補正する検査装置を提供することを目的とする。
【構成】パターン検査装置100は、光源103と、フォトマスク101を配置するXYθテーブル102と、レーザを用いてXYθテーブル102の位置を測定するレーザ測長システム122と、フォトマスク101のパターン像を撮像するラインセンサ105と、ラインセンサ105にパターン像を結像させる拡大光学系104と、レーザを用いて拡大光学系104の位置を測定するレーザ測長システム124と、XYθテーブル102の位置と拡大光学系104の位置との差分を用いて、撮像されたパターン像を補正する補正回路140と、補正後のパターン像を用いて、パターンの欠陥の有無を検査する比較回路108と、を備えたことを特徴とする。本発明によれば、光学系の位置ずれによる画像の歪みを補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査装置及びパターン検査方法に係り、特に、撮像された画像の歪みを補正する機能を備えたパターン検査装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。
【0003】
多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
検査手法としては、拡大光学系を用いてリソグラフィマスク等の試料上に形成されているパターンを所定の倍率で撮像した光学画像と、設計データ、あるいは試料上の同一パターンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、パターン検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die(ダイ−ダイ)検査」や、パターン設計されたCADデータをマスクにパターンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計パターンデータ)を検査装置に入力して、これをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database(ダイ−データベース)検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、試料はステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、例えば、波長限界を超える微細なパターンを露光するための技術として、二重露光技術や二重パターニング技術がある。かかる手法では、2つのマスクを使用するが、それぞれのマスク検査では通常、欠陥とはならない局所的なパターンの位置ずれが、両マスクのパターンを重ね合わせた結果、欠陥となる場合があり得る。そのため、かかる局所的なパターンの位置ずれが、歩留まりに大きな影響を与えかねない。そのため、検査装置では、絶対位置の歪みを局所的に検出する必要がある。しかしながら、検査装置で撮像される画像が歪んでしまうと絶対位置の歪みを高精度に検出することが困難となる。画像が歪んでしまう原因の1つとして、ステージとセンサ間の光学系と、ステージとの相対位置が検査装置の基台等の熱膨張や変形等でずれてしまう場合があることが挙げられる。従来、光学系の位置ずれによる画像の歪みを抑制する十分な解決法がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−112178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、画像が歪んでしまう原因の1つとして、ステージとセンサ間の光学系と、ステージとの相対位置が検査装置の基台等の熱膨張や変形等でずれてしまう場合があることが挙げられる。従来、光学系の位置ずれによる画像の歪みを抑制する十分な解決法がなかった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる問題点を克服し、光学系の位置ずれによる画像の歪みを補正する検査装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のパターン検査装置は、
光源と、
パターンが形成された基板を配置するステージと、
レーザを用いてステージの位置を測定する第1のレーザ測長部と、
光源からの光が基板に形成されたパターンに照射されて得られるパターン像を撮像するセンサと、
センサにパターン像を結像させる光学系と、
レーザを用いて光学系の位置を測定する第2のレーザ測長部と、
ステージの位置と光学系の位置との差分を用いて、撮像されたパターン像を補正する補正部と、
補正後のパターン像を用いて、パターンの欠陥の有無を検査する検査部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
そして、光学系の光学中心から径方向へと延びる方向に形成された反射面を有し、第2のレーザ測長部により照射されるレーザを反射面で反射する反射ミラーをさらに備えると好適である。
【0011】
また、補正部は、画素単位でパターン像を補正すると好適である。
【0012】
本発明の一態様のパターン検査方法は、
レーザを用いて、パターンが形成された基板を配置するステージの位置を測定する第1の測定工程と、
光源からの光が基板に形成されたパターンに照射されて得られるパターン像をセンサで撮像する撮像工程と、
レーザを用いて、センサにパターン像を結像させる光学系の位置を測定する第2の測定工程と、
ステージの位置と光学系の位置との差分を用いて、撮像されたパターン像を補正する補正工程と、
補正後のパターン像を用いて、パターンの欠陥の有無を検査する検査工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、パターン検査方法についても、パターン像は、画素単位で補正されると好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光学系の位置ずれによる画像の歪みを補正することができる。よって、局所的なパターンの位置ずれを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための概念図である。
【図3】実施の形態1におけるステージと拡大光学系とが支持部材により支持された状態の一例を示す図である。
【図4】実施の形態1におけるステージの位置と拡大光学系の位置とを測定する状態をそれぞれ上面から示す概念図である。
【図5】実施の形態1における位置回路内の構成を示す図である。
【図6】実施の形態1における画像補正を説明するための概念図である。
【図7】実施の形態1における画像の補正前後の一例を示す図である。
【図8】実施の形態1におけるダイ−ダイ検査を行うフォトマスクの一例を示す図である。
【図9】実施の形態2におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。
【図10】実施の形態2における2次元センサの受光素子の配列の一例を示す概念図である。
【図11】実施の形態2における最大開口角NAを説明するための概念図である。
【図12】実施の形態2における補正回路内の構成を示す概念図である。
【図13】実施の形態2における検査装置のセンサ面上に結像された画像の一例を示す図である。
【図14】図13に示す画像の強度プロファイルの状況をわかりやすく示すために、画像のx軸上の理想的な強度分布を示すグラフである。
【図15】実施の形態2におけるサブ画素単位補正を行なわない場合での図14に対応する強度分布を示すグラフである。
【図16】実施の形態2におけるサブ画素単位補正を行なった場合での図14に対応する強度分布を示すグラフである。
【図17】実施の形態2における1次元のラインセンサの受光素子の配列の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図1において、試料、例えばマスクの欠陥を検査するパターン検査装置100は、光学画像取得部150と制御系回路160を備えている。光学画像取得部150は、光源103、XYθテーブル102、照明光学系170、拡大光学系104、ラインセンサ105、センサ回路106、レーザ測長システム122,124、及びオートローダ130を備えている。制御系回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、補正回路140、比較回路108、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、及びプリンタ119に接続されている。また、センサ回路106は、ストライプパターンメモリ123に接続され、ストライプパターンメモリ123は、補正回路140に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。XYθテーブル102は、ステージの一例となる。ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0017】
検査装置100では、光源103、XYθテーブル102、照明光学系170、拡大光学系104、ラインセンサ105、及びセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。また、XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、拡大光学系104の移動位置はレーザ測長システム124により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。
【0018】
被検査試料となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、フォトマスク101に形成されたパターンには、適切な光源103によって連続光が照明光学系170を介して照射される。フォトマスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、ラインセンサ105に光学像として結像し、入射する。ラインセンサ105としては、例えば、時間遅延積分型(TDI)センサが好適である。
【0019】
図2は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための概念図である。被検査領域22は、図2に示すように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割される。そして、その分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御される。XYθテーブル102の移動によってラインセンサ105が相対的にX方向(第1の方向)に連続移動しながら光学画像が取得される。ラインセンサ105では、図2に示されるようなスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。実施の形態1では、1つの検査ストライプ20における光学画像を撮像した後、スキャン幅WずつY方向にずれた位置で今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。すなわち、往路と復路で逆方向に向かうフォワード(FWD)−バックフォワード(BWD)の方向で撮像を繰り返す。
【0020】
ラインセンサ105上に結像されたパターンの像は、ラインセンサ105の各受光素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。そして、検査ストライプ20毎にストライプパターンメモリ123に画素データが格納される。その後、画素データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置Y(斜体文字Yは、ベクトルを示す。)を示すデータと共に補正回路140に送られる。測定データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0021】
図3は、実施の形態1におけるステージと拡大光学系とが支持部材により支持された状態の一例を示す図である。基台30上には、XYθテーブル102を動作させるモータ42を固定する支持部材40が配置される。また、基台30上には、XYθテーブル102の位置を測長するレーザ測長システム122(第1のレーザ測長部)と、拡大光学系104の位置を測長するレーザ測長システム124(第2のレーザ測長部)とを支持する支持部材38が配置される。また、基台30上には、支持部材38,40の間の光学中心側に、拡大光学系104と共にラインセンサ105を支持する支持部材36が配置される。ここで、モータ42は、図1に示すように、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系を示す。モータ42は、各軸について、それぞれ個別のモータであっても構わないことは言うまでもない。
【0022】
XYθテーブル102の位置は、x方向とy方向についてそれぞれ測長される。そのため、レーザ測長システム122には、x方向のXYθテーブル102の位置を測長するレーザ干渉計50と、y方向のXYθテーブル102の位置を測長するレーザ干渉計52とを備えている。また、XYθテーブル102は、レーザ干渉計50から照射されるレーザを反射する反射ミラー32と、レーザ干渉計52から照射されるレーザを反射する反射ミラー33とを有している。そして、レーザ測長システム122によって測長されたXYθテーブル102の位置X(位置Xは、ベクトルを示す。)を示すデータは、位置回路107に送られる。
【0023】
ここで、基台30は、熱膨張や変形によって伸縮する。そのため、XYθテーブル102と拡大光学系104の相対位置も基台30の伸縮によって変化する。そのため、XYθテーブル102の位置だけで画像位置を特定すると拡大光学系104がずれることに伴い画像位置に誤差が生じることになる。さらに、支持部材36,38の変形や倒れも誤差の要因となる。
【0024】
そこで、実施の形態1では、XYθテーブル102の位置の他に、さらに、拡大光学系104の位置も測長する。拡大光学系104の位置は、XYθテーブル102と同様、x方向とy方向についてそれぞれ測長される。そのため、レーザ測長システム124には、x方向の拡大光学系104の位置を測長するレーザ干渉計54と、y方向の拡大光学系104の位置を測長するレーザ干渉計56とを備えている。また、拡大光学系104を支持する支持部材36は、レーザ干渉計54から照射されるレーザを反射する反射ミラー34と、レーザ干渉計56から照射されるレーザを反射する反射ミラー35とを有している。レーザ測長システム124によって測長された拡大光学系104の位置Z(位置Zは、ベクトルを示す。)を示すデータは、位置回路107に送られる。
【0025】
図4は、実施の形態1におけるステージの位置と拡大光学系の位置とを測定する状態を上面からそれぞれ示す概念図である。図4において、XYθテーブル102のx方向の一方の外周端には、y方向へと延びる反射面をもつ反射ミラー32が配置される。また、XYθテーブル102のy方向の一方の外周端には、x方向へと延びる反射面をもつ反射ミラー33が配置される。反射ミラー32,33は、XYθテーブル102と一体で形成されても構わないし、別体で形成された上で結合されていても構わない。或いは別体で形成された上で組み立てられていても構わない。反射ミラー32はレーザ干渉計50からx方向に照射されるレーザを反射する。反射ミラー33はレーザ干渉計52からy方向に照射されるレーザを反射する。そして、レーザ干渉計50,52によって測長されたXYθテーブル102の各方向の位置を示すデータは、位置回路107に送られる。
【0026】
図4において、拡大光学系104は、支持部材36に取り囲まれるように支持される。そして、拡大光学系104の光学中心Oからy方向(径方向の一例)に向かって支持部材36の外周にあたる位置に、反射ミラー34が配置される。反射ミラー34は、拡大光学系104の光学中心Oからy方向へと延びる方向に形成された反射面を有している。そして、反射ミラー34の反射面は拡大光学系104の光学中心Oとy方向の座標が一致する位置に配置されると好適である。
【0027】
そして、拡大光学系104の光学中心Oからx方向(径方向の一例)に向かって支持部材36の外周にあたる位置に、反射ミラー35が配置される。反射ミラー35は、拡大光学系104の光学中心Oからx方向へと延びる方向に形成された反射面を有している。そして、反射ミラー35の反射面は拡大光学系104の光学中心Oとx方向の座標が一致する位置に配置されると好適である。
【0028】
反射ミラー34はレーザ干渉計54からx方向に照射されるレーザを反射する。反射ミラー35はレーザ干渉計56からy方向に照射されるレーザを反射する。そして、レーザ干渉計54,56によって測長された拡大光学系104の各方向の位置を示すデータは、位置回路107に送られる。
【0029】
図5は、実施の形態1における位置回路内の構成を示す図である。図5において、位置回路107内には、画像位置演算部60と減算器62が配置される。画像位置演算部60は、レーザ測長システム122によって測長されたXYθテーブル102の位置Xを示すデータからXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置Yを演算し、フォトマスク101の位置Y(位置Yはベクトルを示す)を示すデータを補正回路140に出力する。減算器62は、レーザ測長システム122によって測長されたXYθテーブル102の位置Xとレーザ測長システム124によって測長された拡大光学系104の位置Zとの差分(X−Z)(差分(X−Z)はベクトルを示す)を演算し、随時、時間の経過或いは位置によって変化し得る差分(X−Z)を示すデータを補正回路140に出力する。レーザ干渉計を用いることでナノメートル(nm)単位で位置を測定することができる。
【0030】
図6は、実施の形態1における画像補正を説明するための概念図である。図6において、座標系14は、XYθテーブル102と拡大光学系104との相対位置を考慮していないローカルな座標系を示す。他方、座標系16は、XYθテーブル102と拡大光学系104との相対位置を考慮したグローバルな絶対座標系を示す。座標系14内において、撮像された画像の画素データをΦ(Y)と示す(Yはベクトルを示す)とすると、座標系16でのかかる画素データは、Φ(Y−(X−Z))で示すことができる(Y−(X−Z)はベクトルを示す)。よって、Φ(Y−(X−Z))が絶対座標系での画素データとなる。
【0031】
そこで、補正回路140(補正部)は、ストライプパターンメモリ123から画像の各画素データを入力し、XYθテーブル102の位置Xと拡大光学系104の位置Zとの差分(X−Z)を用いて、撮像されたパターン像を補正する。補正の際、差分(X−Z)は、各画素データがラインセンサ105で受光された時点での差分(X−Z)を用いる。そして、パターン像は、画素単位で補正されると好適である。補正後の絶対座標系での画素データΦ(Y−(X−Z))が比較回路108に出力される。
【0032】
図7は、実施の形態1における画像の補正前後の一例を示す図である。XYθテーブル102と拡大光学系104との相対位置を考慮していないローカルな座標系では、図7(a)に示すように歪んだ画像となる。これに対し、XYθテーブル102と拡大光学系104との相対位置で補正することにより、図7(b)に示すように歪みが補正された画像にすることができる。特に、画素単位で補正することで、図7(b)に示すようにより高精度な歪補正を行うことができる。
【0033】
ここで、ダイ−データベース検査の場合には、以下のように検査する。比較回路108(検査部)は、検査ストライプ20毎に補正回路140から補正後の画素データを入力する。そして、検査ストライプのサイズの画像が、例えば、512×512画素のサイズの検査用画像に切り出される。他方、参照回路112は、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計データを読み出す。そして、読み出されたフォトマスク101の設計データを2値ないしは多値のイメージデータに変換して、測定データの画像と同じサイズの参照データ(参照画像)を作成する。そして、参照データは、比較回路108(検査部)に送られる。
【0034】
そして、測定データと参照データとの位置合わせを行なう。そして、測定データの各画素データと参照データの参照画素データとを所定のアルゴリズムに従って画素毎に比較し、欠陥の有無を判定する。そして、比較された結果は出力される。比較された結果は、例えば、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119に出力される。或いは、外部に出力されても構わない。また、検査手法は、ダイ−データベース検査に限るものではなく、ダイ−ダイ検査であってもよい。ダイ−ダイ検査を行う場合について以下に説明する。
【0035】
図8は、実施の形態1におけるダイ−ダイ検査を行うフォトマスクの一例を示す図である。図8において、フォトマスク101の中に同一の設計データから描画された被検査領域(ダイ)が2つ以上あることが前提となる。図8では、被検査領域10と被検査領域12との同一の設計データに基づく2つの被検査領域がフォトマスク101の中に描画されている。ここで、ダイ−ダイ検査を行う場合、かかる2つの被検査領域10,12を含む全体の検査領域が、図2に示したように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割される。よって、2つの対応する領域が1つの検査ストライプ20内に含まれることになる。そして、その分割された各検査ストライプ20が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御される。
【0036】
次に、ダイ−ダイ検査の場合には、以下のように検査する。共に撮像された被検査領域10,12の測定データが、ストライプパターンメモリ123に検査ストライプ20毎に格納された後、補正回路140にて各画素データの位置が補正される。そして、補正後の画素データは比較回路108(検査部)に送られる。そして、検査ストライプのサイズの画像が、例えば、512×512画素のサイズの検査用画像に切り出される。そして、被検査領域10,12の対応する領域の検査用画像同士の位置合わせを行なう。そして、各検査用画像の各画素データを所定のアルゴリズムに従って画素毎に比較し、パターンの欠陥の有無を判定する。そして、比較された結果は出力される。比較された結果は、例えば、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119に出力される。或いは、外部に出力されても構わない。
【0037】
以上のように、本実施の形態によれば、XYθテーブル102と拡大光学系104との相対位置の変動を正確に補正回路140にフィードバックすることができる。そして、その変動分を考慮することで光学系の位置ずれによる画像の歪みを補正することができる。よって、局所的なパターンの位置ずれを検出することができる。その結果、例えば、二重露光や二重パターニング用のマスクについても局所的なパターンの位置ずれを検出することができる。また、基台30を丈夫にして伸縮をさせないようにすることも考えられる。しかし、基台30を丈夫にするには多大なコストがかかる。さらに、基台30を丈夫にしても1nm以下の寸法変動精度に抑えることは困難となる。これに対し、レーザ干渉計では1nm以下の寸法を測定することができる。よって、より簡易でかつ正確な画像補正を行うことができる。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態1では、XYθテーブル102の位置Xと拡大光学系104の位置Zとの差分(X−Z)を用いて、撮像されたパターン像を画素単位で補正したが、実施の形態2では、さらに、画素より小さいサブ画素単位での補正を行なう構成について説明する。
【0039】
図9は、実施の形態2におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図9において、ラインセンサ105の代わりに2次元センサ205を備えた点以外は図1と同様である。
【0040】
図10は、実施の形態2における2次元センサの受光素子の配列の一例を示す概念図である。図10において、2次元センサ205は、x,y方向に複数の受光素子70を配置している。そして、x,y方向ともに受光素子70は、ピッチPで規則的に配列されている。
【0041】
ここで、複数の受光素子70は、以下の式で示すナイキスト(Nyquist)条件により得られるサンプリング間隔L(或いは、サンプリング周波数(空間周波数)とも言う。)をピッチPとして配置される。サンプリング間隔Lは、拡大光学系104におけるフォトマスク101側の最大開口角NAと光源103からの照明光の波長λと拡大光学系104の倍率Mとを用いて、L≦λ/(4NA)・Mで定義される。
【0042】
図11は、実施の形態2における最大開口角NAを説明するための概念図である。図11において、拡大光学系104におけるフォトマスク101側の光軸に対する開口角θを用いて、最大開口角NAは、NA=sinθで表される。
【0043】
ここで、2次元センサ205をTDIセンサとして使用する場合には、ステージの移動速度Vに受光素子70からの出力のサンプリング時間Δtを乗じたV・Δtが、V・Δt=P=L≦λ/(4NA)・Mとなる移動速度Vとサンプリング時間Δtを設定すればよい。
【0044】
図12は、実施の形態2における補正回路内の構成を示す概念図である。図12において、補正回路140内には、画素単位補正部142と画素より小さいサブ画素単位で補正するサブ画素単位補正部144が配置されている。実施の形態2では、補正回路140内の画素単位補正部142(補正部)は、ストライプパターンメモリ123から画像の各画素データを入力し、XYθテーブル102の位置Xと拡大光学系104の位置Zとの差分(X−Z)を用いて、撮像されたパターン像を画素単位で補正する。ここまでは、実施の形態1と同様である。そして、画素単位補正部142によって画素単位で補正された絶対座標系での画素データΦ(Y−(X−Z))がサブ画素単位補正部144に出力される。画素単位で補正された画素データΦ(Y−(X−Z))は、続いて、サブ画素単位補正部144によってサブ画素単位で補正される。
【0045】
ここで、受光素子70面上に得られる画像強度分布をI(x、y)とする。この画像は、サブ画素単位での歪み等が補正されていない画像強度分布である。観測系の座標系の歪みを補正するためにサブ画素を含む任意の距離、たとえば(ξ(x,y),η(x,y))だけ移動された画像強度分布I’(x、y)が必要となる。画像強度分布I’(x、y)は、I’(x、y)=I(x−ξ、y−η)で定義される。
【0046】
次に、画像を一定間隔Lでサンプリングしたものを画像データとしてを2次元スカラー配列としてあらわす。2次元センサ205は一定の面積の開口を持つ受光素子70が規則的に等ピッチで2次元格子状に配置されているとする。その場合、2次元センサ205を構成する受光素子70の位置をx、y方向の位置のindexを用いて(i,j)と表すとき、画像強度分布Iと受光素子70の位置を示す画素位置(i,j)での2次元センサ205から出力される画素データΦとの関係は、Φ(i,j)=I(iL,jL)と表すことができる。但し、x=iL,y=jLである。
【0047】
したがって、移動された画素データΦ’(i,j)は、ξ=ξ(x,y)、η=η(x,y)として、Φ’(i,j)=I’(iL,jL)=I(iL−ξ,jL−η)と表すことができる。
【0048】
ここで、ホイッタカー・シャノン(Whittaker−Shannon)の公式(補間公式)を利用すると、画像強度分布I(x、y)は、以下の式(1)で表すことができる。
【数1】

【0049】
ただし、sinc(x)=sin(πx)/πxである。
【0050】
従って、移動された画素データΦ’(i,j)は、以下の式(2)で表すことができる。
【数2】

【0051】
式(2)を用いることで、測定された画素データΦ(i,j)から連続関数となる画像強度分布I(x、y)を復元することができる。同様に、画像強度分布I(x、y)から補正後の連続関数となる画像強度分布I’(x、y)を求めることができる。同様に、補正後の画像強度分布I’(x、y)を離散化して画像について任意の連続量の位置補正を施した補正後の画素データΦ’(i,j)を求めることができる。
【0052】
以上の関係を用いて、サブ画素単位補正部144(補正部)は、さらに、ナイキスト(Nyquist)条件により得られるサンプリング間隔Lを用いたホイッタカー・シャノン(Whittaker−Shannon)の公式を用いて、撮像されたパターン像をサブ画素単位で補正する。すなわち、画素単位補正部142によって画素単位で補正された絶対座標系での画素データΦ(Y−(X−Z))をΦ(i,j)として、サブ画素単位補正部144は、Φ(i,j)を入力して、サブ画素単位で補正された画素データΦ’(i,j)を演算する。そして、サブ画素単位で補正された画素データΦ’(i,j)を比較回路108に出力する。
【0053】
図13は、実施の形態2における検査装置のセンサ面上に結像された画像の一例を示す図である。
図14は、図13に示す画像の強度プロファイルの状況をわかりやすく示すために、画像のx軸上の理想的な強度分布を示すグラフである。しかしながら、実際にセンサ回路196から出力されるデータは図14に示すような理想的なグラフにはなっていない。
【0054】
図15は、実施の形態2におけるサブ画素単位補正を行なわない場合での図14に対応する強度分布を示すグラフである。実施の形態2におけるサブ画素単位補正を行なわない場合、図15において点線で示す折れ線で示すような不完全なデータとなっている。原画像の最小ピッチが検出画素(受光素子70)のピッチに近くなっているためである。原画像のプロファイルと異なっている部分は画素の間のプロファイルを線形補間しているため、折れ線で示すような不完全なデータとなっている。かかる補間方法で画素移動を行うと、誤差が大きい。
【0055】
図16は、実施の形態2におけるサブ画素単位補正を行なった場合での図14に対応する強度分布を示すグラフである。ナイキスト(Nyquist)条件により得られるサンプリング間隔Lを用いたホイッタカー・シャノン(Whittaker−Shannon)の公式を用いて、撮像されたパターン像をサブ画素単位で補正すると、図16に示すように、理想的な強度分布にほぼ一致させることができ、誤差を大幅に低減する事ができる。なお、画素ピッチとなるサンプリング間隔Lをナイキスト(Nyquist)条件よりもさらに厳しく、L≦λ/(4NA)・M−αとすると、計算量を低減することができ好適である。また、Φ(i,j),Φ’(i,j),I(x、y),I’(x、y)等の関数は、適宜変形して用いてもよい。
【0056】
また、実施の形態2では、2次元センサ205を用いているが、検査方向(例えばx方向)と直交する方向(例えばy方向)にだけサブ画素単位補正を行なう場合には、2次元センサ205ではなく、1次元のラインセンサを用いても構わない。
【0057】
図17は、実施の形態2における1次元のラインセンサの受光素子の配列の一例を示す概念図である。図17において、1次元ラインセンサ105は、例えばy方向に複数の受光素子70を配置している。そして、y方向に受光素子70は、ピッチPで規則的に配列されている。そして、複数の受光素子70は、L≦λ/(4NA)・Mで定義されるサンプリング間隔LをピッチPとして配置されればよい。かかる構成によれば、y方向にサブ画素単位補正を行なうことができる。
【0058】
以上の説明において、「〜部」、或いは「〜回路」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。例えば、演算制御部を構成するオートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、参照回路112、比較回路108、補正回路140及び位置回路107内の各回路等は、電気的回路で構成されていても良いし、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現してもよい。また電気的回路とソフトウェアの組み合わせで実現しても良い。
【0059】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、以上の説明では、透過光学系とフォトマスク101の透過光を使った検査装置について説明したが、反射光学系とフォトマスク101の反射光を使った検査装置であっても本発明は有効である。また、本発明は、ロールオフの手法を使って補間式を若干変形して適用することも含まれる。
【0060】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、検査装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0061】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0062】
10,12 被検査領域
14,16 座標系
20 検査ストライプ
22 被検査領域
30 基台
32,33,34,35 反射ミラー
36,38,40 支持部材
42 モータ
50,52,54,56 レーザ干渉計
60 画像位置演算部
62 減算器
70 受光素子
100 検査装置
101 フォトマスク
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 ラインセンサ
106 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
112 参照回路
113 オートローダ制御回路
114 テーブル制御回路
115 磁気テープ装置
116 FD
117 CRT
118 パターンモニタ
119 プリンタ
120 バス
122,124 レーザ測長システム
123 ストライプパターンメモリ
130 オートローダ
140 補正回路
142 画素単位補正部
144 サブ画素単位補正部
150 光学画像取得部
160 制御系回路
170 照明光学系
205 2次元センサ
206 ラインセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
パターンが形成された基板を配置するステージと、
レーザを用いて前記ステージの位置を測定する第1のレーザ測長部と、
前記光源からの光が前記基板に形成されたパターンに照射されて得られるパターン像を撮像するセンサと、
前記センサに前記パターン像を結像させる光学系と、
レーザを用いて前記光学系の位置を測定する第2のレーザ測長部と、
前記ステージの位置と前記光学系の位置との差分を用いて、撮像されたパターン像を補正する補正部と、
補正後のパターン像を用いて、パターンの欠陥の有無を検査する検査部と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記光学系の光学中心から径方向へと延びる方向に形成された反射面を有し、前記第2のレーザ測長部により照射されるレーザを前記反射面で反射する反射ミラーをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記補正部は、画素単位で前記パターン像を補正することを特徴とする請求項1又は2記載のパターン検査装置。
【請求項4】
前記補正部は、さらに、ナイキスト(Nyquist)条件により得られるサンプリング間隔を用いたホイッタカー・シャノン(Whittaker−Shannon)の公式を用いて、撮像された前記パターン像をサブ画素単位で補正することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項5】
前記サンプリング間隔Lは、前記光学系における前記基板側の最大開口角NAと前記光源からの光の波長λと前記光学系の倍率Mとを用いて、以下の式
L≦λ/(4NA)・M
から得られることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項6】
前記補正部は、画素単位で前記パターン像を補正した後に、さらに、サブ画素単位で前記パターン像を補正することを特徴とする請求項4又は5記載のパターン検査装置。
【請求項7】
前記センサは、複数の受光素子を有し、
前記複数の受光素子は、ナイキスト(Nyquist)条件により得られるサンプリング間隔をピッチとして配置されることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のパターン検査装置。
【請求項8】
レーザを用いて、パターンが形成された基板を配置するステージの位置を測定する第1の測定工程と、
光源からの光が前記基板に形成されたパターンに照射されて得られるパターン像をセンサで撮像する撮像工程と、
レーザを用いて、前記センサに前記パターン像を結像させる光学系の位置を測定する第2の測定工程と、
前記ステージの位置と前記光学系の位置との差分を用いて、撮像されたパターン像を補正する補正工程と、
補正後のパターン像を用いて、パターンの欠陥の有無を検査する検査工程と、
を備えたことを特徴とするパターン検査方法。
【請求項9】
前記パターン像は、画素単位で補正されることを特徴とする請求項8記載のパターン検査方法。
【請求項10】
前記パターン像を補正する際、さらに、ナイキスト(Nyquist)条件により得られるサンプリング周期を用いたホイッタカー・シャノン(Whittaker−Shannon)の公式を用いて、前記パターン像がサブ画素単位で補正されることを特徴とする請求項8又は9記載のパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図17】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−96740(P2010−96740A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67661(P2009−67661)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】