説明

パワーモジュール

【課題】本発明は、パワーモジュールの放熱性能を低下させずに実装密度を高めることを目的とする。
【解決手段】パワーモジュール10は、基板12、基板12に埋め込まれた熱伝導部材14、熱伝導部材14に実装された第1の電子部品16、基板12に実装された第2の電子部品18a、18b、熱伝導部材14に取り付けられた放熱器20を備える。熱伝導部材14は、第4平面30を第2平面24から基板12の外側に突出させている。第2平面24と放熱器20とが離れ、第2平面24に第2の電子部品18a、18bを実装できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にパワー半導体などの電子部品を実装したパワーモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放熱性を向上させるために、様々なパワーモジュールが提案されている。例えば、図5(a)のパワーモジュール100aは、基板12の第1平面22にヒートスプレッダ102を介してパワー半導体104が実装されている。ヒートスプレッダ102は、基板12のサーマルビア106が設けられた位置に配置される。図5(b)のパワーモジュール100bは、基板12にヒートスプレッダ108を貫通させ、ヒートスプレッダ108の上にパワー半導体104が実装されている。
【0003】
いずれのパワーモジュール100a、100bも、基板12の第2平面24に絶縁層40を介して放熱器20が取り付けられている。放熱器20はアルミニウムの押し出し成形で製造されており、板状部42とその板状部42の片面に垂直になるように設けられた放熱フィン44から構成される。板状部42の放熱フィン44の無い面を基板12に取り付けている。また、パワー半導体104以外の電子部品は第1平面22に実装される。
【0004】
上記のように基板12の第2平面24に板状部42を取り付けるため、基板12の第2平面24に電子部品を実装することはできない。基板12の第1平面22にのみ電子部品を実装するため、実装密度を上げにくい。第1平面22にのみ電子部品を実装するための配線パターン34を形成するため、配線パターン34に制約が生じる。電子部品のリードを第1平面22から第2平面24に突出させる場合、放熱器20にリードを配置するための加工が必要になる。
【0005】
下記の特許文献1に、放熱器110の板状部112の一部に突出部116を設ける加工をおこない、基板12の第2平面24にも電子部品18aを実装したパワーモジュール100cが開示されている(図6)。しかし、放熱器110の突出部116でサーマルビア106に接続するため、放熱器110の放熱フィン114まで熱が伝導しにくく、放熱性能が悪化する。突出部116を設ける加工が複雑になれば、製造コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−158796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、パワーモジュールの放熱性能を低下させずに実装密度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパワーモジュールは、基板と、基板と一定間隔を有して配置された放熱器と、基板の貫通穴にはめ込まれて、放熱器に接続された熱伝導部材とを備える。また、熱伝導部材には第1の電子部品が実装され、基板には第2の電子部品が実装される。基板と放熱器とが一定間隔を有して離れているため、その間に第2の電子部品を実装することができる。
【0009】
第1の電子部品の熱は、熱伝導部材を伝導して放熱器に伝わり、放熱される。第2の電子部品は基板の両面に実装することができ、基板の放熱器側であっても、基板と放熱器とが一定間隔を有するため実装できる。また、基板から第2の電子部品のリードが突出しても、基板と放熱器とが一定間隔を有するため、放熱器にリードを配置するための加工をせずにリードを配置することができる。
【0010】
放熱器よりも熱伝導部材の熱伝導率を高くしている。第1の電子部品の熱を熱伝導率の高い熱伝導部材で効率よく放熱器に伝導して、放熱する。
【0011】
基板と放熱器との間は、樹脂で封止されている。第2の電子部品を樹脂で封止して、保護する。また、放熱器を固定しやすくする。
【0012】
熱伝導部材と樹脂との間に空間を設けている。空間によって、熱伝導部材から樹脂を介して第2の電子部品に熱が伝わらないようにする。
【0013】
熱伝導部材における反突出部側面が、基板の内部に配置されている。基板の表面ではなく内部に配置されることによって、第1の電子部品の高さが低くなる。また、第1の電子部品から放熱器までの距離も短くなる。
【0014】
第1の電子部品は、パワー半導体である。高発熱の電子部品を直接熱伝導部材に実装し、熱を放熱器に伝導しやすくする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、熱伝導部材を基板から突出させており、基板と放熱器との間に空間を形成できたため、基板の両面に電子部品を実装できる。このため、電子部品の高密度実装が可能である。放熱器の板状部まで熱伝導部材によって伝熱するため、放熱性能を下げることはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のパワーモジュールの構成を示す図である。
【図2】図1の上面図であって、(a)は熱伝導部材を円形にした図であり、(b)は熱伝導部材を方形にした図である。
【図3】熱伝導部材と樹脂との間に空間を設けた図である。
【図4】熱伝導部材の第3平面を基板の内部に配置されるようにした図である。
【図5】従来のパワーモジュールの構成を示す図であり、(a)は基板にサーマルビアを設けた図であり、(b)は基板にヒートスプレッダを貫通させた図である。
【図6】放熱器を加工した従来のパワーモジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のパワーモジュールについて図面を用いて説明する。図面は模式的に示しており、実際の大きさとは異なる場合がある。
【実施例1】
【0018】
図1のパワーモジュール10は、基板12、基板12を貫通するように設けられた熱伝導部材14、熱伝導部材14に実装された第1の電子部品16、基板12に実装された第2の電子部品18a、18b、および熱伝導部材14に取り付けられた放熱器20を備える。
【0019】
基板12は、樹脂基板、セラミック(アルミナ)基板、金属基板などの板体が挙げられる。樹脂基板は、ガラスクロス含浸エポキシ樹脂基板などである。金属基板は、アルミニウムや銅などの金属板の上に絶縁層が設けられたものである。説明では、基板12の放熱器20の反対側の面を第1平面22、放熱器20側の面を第2平面24とする。基板12の各平面22,24には、薄膜導体で配線パターン34が形成されている。
【0020】
基板12には、第1平面22から第2平面24までを貫通する貫通穴26が設けられる。この貫通穴26に熱伝導部材14がはめ込まれる。熱伝導部材14を基板12に固定するために接着剤を使用してもよい。熱伝導部材14は、柱状または肉厚の板状である。熱伝導部材14は、第1の電子部品16の熱を放熱器20へ伝熱するためのものである。熱伝導部材14は、銅や銅合金などの熱伝導率の高い材料を使用する。熱伝導部材14は、少なくとも2つの平面を備えており、第1の電子部品16が実装される平面を第3平面28、放熱器20が取り付けられる平面を第4平面30とする。
【0021】
さらに熱伝導部材14は基板12の外側に突出させる突出部14Tを有し、第4平面30を第2平面24よりも基板12の外側に突出させている。突出部14Tによって第2平面24と放熱器20とが離れ、第2平面24に第2の電子部品18aを実装できるようにする。従来技術で示した引用文献とは異なり、熱伝導部材14の一部分を基板12から突出させただけであり、構造が単純である。
【0022】
熱伝導部材14の第3平面28および第4平面30の形状は円形または方形である(図2)。熱伝導部材14の形状を円形にした場合、基板12に貫通穴26を形成し易く、貫通穴26に熱伝導部材14をはめ込む時の方向を考慮する必要もない。また、熱伝導部材14の形状を方形にした場合、第1の電子部品16が方形であり、円形の場合よりも放熱性能が高い。これらの熱伝導部材14は、求められる放熱性能や製造コストにあわせて適宜選択する。
【0023】
第1の電子部品16は、パワー半導体などの高発熱の電子部品である。パワー半導体として、インバータに用いられるIGBT(insulated gate bipolar transistor)やFWD(free wheeling diode)などが挙げられる。
【0024】
第1の電子部品16は、ベアチップや表面実装部品を含む。ベアチップであれば、金属ワイヤ32やTAB(tape automated bonding)によって基板12の配線パターン34に電気接続して、ベアチップおよび金属ワイヤ32などを樹脂36で封止して保護する。表面実装部品であれば、リードや端子を基板12の配線パターン34に直接電気接続する。また、第1の電子部品16は、熱伝導部材14に対してハンダや接着剤で固定される。
【0025】
第2の電子部品18a,18bは基板12の各平面22,24に実装される。第2の電子部品18a,18bとしては、ベアチップ、表面実装部品、リード部品が挙げられ、第1の電子部品16のようには高発熱とはならない非パワー半導体などである。例えば、抵抗、コンデンサ、コイルなどの受動素子、トランジスタやドライバICなどの能動素子が挙げられる。図1では、ベアチップを符号18aとし、リード部品を符号18bとして例示している。
【0026】
ベアチップ(第2の電子部品18a)は、ワイヤボンディング、TAB、またはフリップ実装によって配線パターン34に電気接続される。第2の電子部品が表面実装部品であれば、リードや端子が配線パターン34に直接電気接続される。第2平面24と放熱器20との距離は、第2の電子部品18aや金属ワイヤなどが放熱器22に短絡しない距離である。
【0027】
また、リード部品(第2の電子部品18b)を実装する場合、リード38が基板12を通過して突出し、配線パターン34にハンダ付けされる。第1平面22にリード部品を実装すると、リード38が第2平面24から突出するため、リード38が放熱器20に短絡しないように、第2平面24と放熱器20との距離を取る。第2平面24と放熱器20とが離れているため、放熱器20に対してリード38を配置するための加工をおこなう必要はない。
【0028】
なお、ベアチップの第2の電子部品18aを第2平面24に実装し、リード部品の第2の電子部品18bを第1平面22に実装したが、図1は一例であって、各電子部品18a,18bの実装される面は図1の態様に限定されない。また、図1ではリード38のある位置に放熱器20が無いが、リード38の位置が移動しても放熱器20にリード38を配置するための加工は必要ない。
【0029】
放熱器20は、絶縁層40を介して熱伝導部材14の突出部14Tの先端面、すなわち第4平面30に取り付けられる。取り付け方法としては、基板12と放熱器20とをねじ止めや専用のジグで固定することによって、放熱器20を熱伝導部材14に密着させる方法が挙げられる。放熱器20は、板状部42および板状部42の片面に対して垂直に設けられた放熱フィン44から構成される。熱伝導部材14を伝導した熱は板状部42を介して放熱フィン44で空気中に放熱される。
【0030】
放熱器20は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を押し出し成形して製造されたものである。放熱器20の板状部42は、放熱フィン44の反対側が第5平面46となっており、第5平面46が絶縁層40を介して第4平面30に取り付けられ、かつ第2平面24に対向する。第5平面46は第4平面30よりも広くなっている。従来技術と異なり、第5平面46を突出させる加工をおこなっていない。
【0031】
銅の熱伝導率は398W/mKであり、アルミニウムの熱伝導率は236W/mKである。熱伝導部材14は、銅や銅合金などで構成されており、アルミニウムやアルミニウム合金の放熱器20よりも熱伝導率が高い。図6の従来技術は、放熱器20の突出部116から板状部42に熱を伝えているため、突出部116によって熱伝導を悪化させていた。本発明は、熱伝導率の高い熱伝導部材14によって板状部42まで熱を伝えるため、熱伝導を悪化させることはない。
【0032】
なお、熱伝導部材14を銅または銅合金、放熱器20をアルミニウムまたはアルミニウム合金としたが、放熱器20よりも熱伝導部材14の熱伝導率が高い組み合わせであれば、他の材料であっても良い。
【0033】
また、第2平面24から放熱器20までを樹脂48で封止する。樹脂48としては、エポキシ樹脂を主成分とした樹脂が挙げられる。第2の電子部品18aやリード38の保護になる。樹脂48によって放熱器20の熱伝導部材14への固定が安定する。
【0034】
以上のように、本発明は熱伝導部材14を基板12から突出するように構成したことによって、第2平面24に第2の電子部品18a,18bが実装できる空間ができた。本発明は基板12の両面22,24に第2の電子部品18a、18bを実装することができ、高密度実装が可能である。放熱器20の板状部42まで熱伝導部材14によって伝熱するため、放熱性能を下げることはない。放熱器20に突出部116を設ける加工はおこなっていず、低コストである。
【実施例2】
【0035】
第2平面24から放熱器20まで樹脂48で封止することに限定されない。第2の電子部品18aがベアチップの場合に、ベアチップと金属ワイヤまたはTABのみを樹脂48で封止しても良い。また、第2平面24に取り付けられる第2の電子部品18aがベアチップではなく、パッケージングされた表面実装部品であれば、樹脂48で封止しないことも可能である。
【実施例3】
【0036】
図3のパワーモジュール10bのように、樹脂48を基板12から放熱器20まで封止し、かつ熱伝導部材14の突出部14Tの外周に樹脂48を封止せずに空間50を設けても良い。すなわち、熱伝導部材14と樹脂48との間に空間50を設ける。空間50によって熱伝導部材14から樹脂48に熱を伝導させにくくする。樹脂封止された第2の電子部品18aに熱が伝わりにくく、第2の電子部品18aの保護になる。
【0037】
また、第2の電子部品18aのみを樹脂48で封止した場合であっても、樹脂48が熱伝導部材14に接しないようにして、第2の電子部品18aに熱を伝わりにくくしても良い。
【実施例4】
【0038】
図4のパワーモジュール10cのように、第3平面28を第1平面22から第2平面24までの基板12の内部に配置しても良い。第3平面28が第2平面24に近づくにつれて、第1平面22に対する第1の電子部品16の高さが低くなる。第1の電子部品16がベアチップの場合、ベアチップおよび金属ワイヤ(またはTAB)を樹脂36で封止することになるが、金属ワイヤを含めた第1の電子部品16の高さが低いため、樹脂36を少なくすることができる。パワーモジュール10cの高さを低くすることができ、パワーモジュール10cを小型化できる。また、第3平面28が第2平面24に近づいた分、第3平面28と第4平面30との距離が短くなり、熱伝導部材14の熱抵抗が低くなる。第1の電子部品16の熱を放熱器20に伝熱し易く、放熱性能が向上する。
【0039】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。各実施例は独立的または排他的なものに限定されず、組み合わされても良い。
【符号の説明】
【0040】
10、10b、10c:パワーモジュール
12:基板
14:熱伝導部材
14T:熱伝導部材の突出部
16:第1の電子部品
18a、18b:第2の電子部品
20:放熱器
22:第1平面
24:第2平面
26:貫通穴
28:第3平面
30:第4平面
32:金属ワイヤ
34:配線パターン
36、48:樹脂
38:リード
40:絶縁層
42:板状部
44:放熱フィン
46:第5平面
50:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴が設けられた基板と
前記貫通穴にはめ込まれ、基板から突出する突出部を有する熱伝導部材と、
前記熱伝導部材の反突出部側面に実装された第1の電子部品と、
前記突出部に取り付けられた放熱器と、
前記基板の前記放熱器と対向する側の面に実装され、または当該面からリードが突出するように前記基板の前記放熱器と反対側の面に実装された第2の電子部品と、
を備えたパワーモジュール。
【請求項2】
前記放熱器よりも熱伝導部材の熱伝導率が高い請求項1のパワーモジュール。
【請求項3】
前記基板と放熱器との間を樹脂で封止した請求項1または2のパワーモジュール。
【請求項4】
前記熱伝導部材と樹脂との間に空間を設けた請求項3のパワーモジュール。
【請求項5】
前記反突出部側面が、基板の内部に配置された請求項1から4のいずれかのパワーモジュール。
【請求項6】
前記第1の電子部品は、パワー半導体である請求項1から5のいずれかのパワーモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−74425(P2012−74425A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216312(P2010−216312)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】