説明

パワー検出回路および振幅制限回路

【課題】入力信号のオフセットレベルによらず、振幅に比例したパワーを検出する。
【解決手段】入力信号の振幅を予め決まった所定の範囲内の振幅に変換し、前記入力信号の振幅に比例した振幅の信号を出力するレベル安定化回路20と、該レベル安定化回路20の出力信号を基準値とを比較するパワー検知回路30とを備える。レベル安定化回路20は、容量結合により前記入力信号を取り込み振幅を予め決まった所定の範囲内の振幅に変換する入力レベル変換回路と、該入力レベル変換回路の出力信号を取り込みその平均値を検出する平均値検出回路と、前記入力レベル変換回路の出力信号と前記平均値検出回路の出力信号の差分を増幅する差動増幅回路とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号のパワーを検出するパワー検出回路および該パワー検出回路で検出されたパワーに応じて利得が変化される振幅制限回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に従来の振幅制限回路の構成を示す(例えば、特許文献1参照)。この振幅制限回路は、差動増幅回路50とオフセット補償回路60で構成されている。差動増幅回路50は、正相入力信号VIPと逆相入力信号VINを入力して増幅するNPNトランジスタQ11,Q12と負荷抵抗R21,R22と電流源I1よりなる入力差動増幅段と、NPNトランジスタQ13,Q14と電流源I2,I3よりなるエミッタホロワ回路からなる。また、オフセット補償回路60は、最大値検出用のレベル検出部61,62、その両レベル検出部61,62で検出された最大値の差分の電流を検出するNPNトランジスタQ15,Q16および電流源I4からなる。レベル検出部61は、図7に示すように、入力バッファ611と、ダイオードD11と容量C11からなりホールド電圧を入力バッファ611に帰還させる第1のホールド回路612と、ダイオードD12と容量C12からなる第2のホールド回路613とからなる。レベル検出部62も同様な構成である。
【0003】
この振幅制限回路では、正相入力信号VIPの最大値と逆相入力信号VINの最大値の電圧差に応じた電流が、オフセット補償回路60によって、差動増幅器50の入力差動増幅段の1対の負荷抵抗R21,R22から引き抜かれる。これにより、入力信号の電位のオフセット値に応じて差動増幅器50の出力信号VOP,VONの振幅に補正がかかり、所定の振幅の信号が出力される。
【特許文献1】特開2006−311210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、図7のレベル検出部61では、オフセットを含んだ最大値がパワーとして出力されるために、入力信号振幅に依存した信号を検出できないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、入力信号のオフセットレベルによらず、振幅に比例したパワーが検出できるようにしたパワー検出回路およびこれを利用した振幅制限回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明のパワー検出回路は、入力信号の振幅を予め決まった所定の範囲内の振幅に変換し、前記入力信号の振幅に比例した振幅の信号を出力するレベル安定化回路と、該レベル安定化回路の出力信号を基準値とを比較するパワー検知回路とを備え、該パワー検知回路から前記入力信号の振幅を表すパワー信号を出力することを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のパワー検出回路において、前記レベル安定化回路は、容量結合により前記入力信号を取り込み振幅を予め決まった所定の範囲内の振幅に変換する入力レベル変換回路と、該入力レベル変換回路の出力信号を取り込みその平均値を検出する平均値検出回路と、前記入力レベル変換回路の出力信号と前記平均値検出回路の出力信号の差分を増幅する第1の差動増幅回路とからなる、ことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載のパワー検出回路において、前記パワー検知回路は、前記レベル安定化回路の出力信号を増幅するトランジスタと、該トランジスタの出力信号の最大値を保持するトップホールド回路と、該トップホールド回路の出力信号を前記基準値と比較する電圧比較器とからなる、ことを特徴とする。
請求項4にかかる発明の振幅制限回路は、前記入力信号の振幅を一定にする増幅回路を多段縦続接続した振幅制限回路において、前記多段の増幅回路の内の少なくとも1つの増幅回路が、請求項1、2又は3に記載のパワー検出回路から出力する前記パワー信号に基づき利得が制御される利得可変増幅回路である、ことを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の振幅制限回路において、前記利得可変増幅回路は、入力信号を差動増幅する第2の差動増幅回路と、該第2の差動増幅回路の差動出力信号のレベルを変換するエミッタフォロワ回路とを備え、前記第2の差動増幅回路は、差動増幅用の1対のトランジスタのエミッタ抵抗又はソース抵抗として、別のトランジスタが接続され、該別のトランジスタが前記パワー信号によって制御されることにより利得が制御される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパワー検出回路によれば、入力信号のオフセットレベルによらず、入力信号振幅に依存したパワーが検出可能となり、オフセットキャンセル回路が不要となり、より構成が簡易となる。また、本発明の利得制限回路によれば、利得可変回路が容易な形で実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<第1の実施例>
図1(a)は本発明の第1の実施例のパワー検出回路10の構成を示すブロック図である。本パワー検出回路10は、入力信号V1の振幅を予め決まった範囲内の振幅に変換し、入力信号V1の振幅に比例した振幅の信号V4を出力するレベル安定化回路20と、該レベル安定化回路20の出力信号V4の振幅を基準電位とを比較し、その比較結果に基づき、入力信号の振幅の検知信号をパワー信号V6として出力するパワー検知回路30とからなる。本パワー検出回路10は、図1(b)に示すように入力信号V1の振幅が小さいときは、図1(c)に示すように得られるパワー信号V6のレベルが小さくなり、振幅が大きなときは大きくなる。
【0009】
図2(a)にレベル安定化回路20の構成を示す。このレベル安定化回路20は、入力レベル変換回路21と、平均値検出回路22と、差動増幅回路23とからなる。入力レベル変換回路21は、交流結合用の容量C1と電源電圧VCC−VEEを分圧する抵抗R1,R2とで構成され、入力信号V1の直流成分をカットした信号振幅に抵抗R1,R2による分圧電圧を加算することで、入力信号V1のレベルをある範囲内のレベルの信号V2に変換する。平均値検出回路22は、抵抗R3と容量C2による積分回路で構成され、レベル変換された信号V2の平均値V3を出力する。差動増幅回路23は、入力レベル変換回路21から出力する信号V2と平均値検出回路22から出力する信号V3の差分を増幅する。この結果、差動増幅回路23から出力する信号V4は、入力レベル変換回路21の出力信号V2の振幅が変動した場合でも、信号V3は信号V2の中心となり、安定した信号V4を得ることができる。また、この信号V4は、入力信号V1に含まれるオフセットレベルの影響が除去された安定化された信号となる。図2(b)に信号V1,V2,V3のレベル関係を示した。
【0010】
図3(a)にパワー検知回路30の構成を示す。このパワー検知回路30は、ベースにレベル安定化回路20の出力信号V4が印加するNPNトランジスタ31と、そのトランジスタ31のエミッタと電源VEEとの間に接続された抵抗R4と容量C3の並列回路からなるトップホールド回路32と、そのトップホールド回路32でホールドされている信号V5と基準信号Vrとを比較する電圧比較器33とからなる。このパワー検知回路30では、トップホールド回路32で入力信号V4の最大値がホールドされるので、この電圧比較器33からは、より変動が小さくなり正確な入力信号V1のパワーを示すパワー信号V6が出力する。このパワー信号V6は、入力オフセットの影響が除去されている。図3(b)に信号V4,V5,V6,Vrのレベル関係を示した。
【0011】
<第2の実施例>
図4(a)は上記したパワー検出回路10のパワー信号V6を制御信号として利用した振幅制限回路40の構成を示すブロック図である。この振幅制限回路40は、縦続接続された複数段の増幅回路からなり、その内の1又は2段以上は固定利得増幅回路41からなり、別の1段又は2段以上は利得可変増幅回路42からなる。そして、利得可変増幅回路42の利得が、パワー信号V6によって制御され、図4(b)に示すように、入力信号V1が利得制御され振幅制限された出力信号VOとして出力する。
【0012】
図5は利得可変増幅回路42の構成を示す回路図である。なお、いままでは入力信号を単相信号として説明したが、ここでは差動信号として説明する。この利得可変増幅回路42は、差動増幅回路421とエミッタホロワ回路422とから構成されている。差動増幅回路421は、ベースに差動の入力信号VIP,VINが印加するNPNトランジスタQ1,Q2、そのトランジスタQ1,Q2にエミッタ抵抗R11,R12を介して接続された電流源用のNPNトランジスタQ3,Q4、トランジスタQ1,Q2の負荷抵抗R13,R14、トランジスタQ3,Q4のエミッタ抵抗R15,R16、抵抗R11,R12に並列接続されゲートに前記パワー信号V6が印加するNMOSトランジスタNM1,MN2から構成されている。また、エミッタホロワ回路422は、NPNトランジスタQ5,Q6、電流源用のNPNトランジスタQ7,Q8、およびそのトランジスタQ7,Q8のエミッタ抵抗R17,R18からなる。
【0013】
この利得可変増幅器42では、パワー信号V6がトランジスタMN1,MN2のゲートに印加することによって、このトランジスタMN1,MN2の内部抵抗が制御されるので、各トランジスタQ1,Q2の合成エミッタ抵抗の値が制御され、コレクタ電流が制御される。よって、この差動増幅回路421における利得が制御され、結局、入力差動信号VIP,VINの利得が制御される。すなわち、入力信号V1のパワー信号V6が大きい場合は、前記合成エミッタ抵抗の値が小さくなり、逆に、パワーが小さい場合は大きくなり、この結果、振幅がほぼ一定に制御された差動信号VOP,VONが出力する。
【0014】
なお、この利得可変増幅器42では、トランジスタQ1〜Q8はNMOSトランジスタに置き換えることができ、またトランジスタMN1,MN2はNPNトランジスタに置き換えることができる。さらに電源極性を反転させたときは、NPNトランジスタはPNPトランジスタにNMOSトランジスタはPMOSトランジスタに置き換えればよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の1つの実施例のパワー検出回路のブロック図、(b)は入力信号の波形図、(c)はパワー信号の特性図である。
【図2】(a)は図1のレベル安定化回路の回路図、(b)は各信号の波形図である。
【図3】(a)は図1のパワー検知回路の回路図、(b)は各信号の波形図である。
【図4】(a)は本発明の別の実施例の振幅制限回路のブロック図、(b)は各信号の波形図である。
【図5】図4の利得可変増幅器の回路図である。
【図6】従来の振幅制限回路の回路図である。
【図7】図6のレベル検出部の回路図である。
【符号の説明】
【0016】
10:パワー検出回路
20:レベル安定化回路、21:入力レベル変換回路、22:平均値検出回路、23:差動増幅回路
30:パワー検知回路、31:NPNトランジスタ、32:トップホールド回路、33:電圧比較器
40:振幅制限回路、41:利得固定増幅回路、42:利得可変増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の振幅を予め決まった所定の範囲内の振幅に変換し、前記入力信号の振幅に比例した振幅の信号を出力するレベル安定化回路と、該レベル安定化回路の出力信号を基準値とを比較するパワー検知回路とを備え、該パワー検知回路から前記入力信号の振幅を表すパワー信号を出力することを特徴とするパワー検出回路。
【請求項2】
請求項1に記載のパワー検出回路において、
前記レベル安定化回路は、容量結合により前記入力信号を取り込み振幅を予め決まった所定の範囲内の振幅に変換する入力レベル変換回路と、該入力レベル変換回路の出力信号を取り込みその平均値を検出する平均値検出回路と、前記入力レベル変換回路の出力信号と前記平均値検出回路の出力信号の差分を増幅する第1の差動増幅回路とからなる、ことを特徴とするパワー検出回路。
【請求項3】
請求項1に記載のパワー検出回路において、
前記パワー検知回路は、前記レベル安定化回路の出力信号を増幅するトランジスタと、該トランジスタの出力信号の最大値を保持するトップホールド回路と、該トップホールド回路の出力信号を前記基準値と比較する電圧比較器とからなる、ことを特徴とするパワー検出回路。
【請求項4】
前記入力信号の振幅を一定にする増幅回路を多段縦続接続した振幅制限回路において、
前記多段の増幅回路の内の少なくとも1つの増幅回路が、請求項1、2又は3に記載のパワー検出回路から出力する前記パワー信号に基づき利得が制御される利得可変増幅回路である、ことを特徴とする振幅制限回路。
【請求項5】
請求項4に記載の振幅制限回路において、
前記利得可変増幅回路は、入力信号を差動増幅する第2の差動増幅回路と、該第2の差動増幅回路の差動出力信号のレベルを変換するエミッタフォロワ回路とを備え、
前記第2の差動増幅回路は、差動増幅用の1対のトランジスタのエミッタ抵抗又はソース抵抗として別のトランジスタが接続され、該別のトランジスタの内部抵抗が前記パワー信号によって制御される、ことを特徴とする振幅制限回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−236568(P2008−236568A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75750(P2007−75750)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】