説明

パワー素子およびその製造方法

【課題】本発明は、ノーマリーオフ動作が可能なパワー素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のパワー素子は、第1窒化物層を形成した後ゲート電極下部に第2窒化物層をさらに形成することによってゲート電極に対応する部分には2次元の電子ガス層が形成されないため、ノーマリーオフ動作が可能である。これによって、本発明の一実施形態に係るパワー素子は、ゲートの電圧に応じて2次元の電子ガス層の生成を調整することができ、ノーマリーオフ動作が可能であるため、消費電力を減少させ得る。また、ゲート電極に対応する第2窒化物層を形成するため、第1窒化物層を形成した後ゲート電極に対応する部分のみを再成長させたり、ゲート電極に対応する部分を除いた残り部分をエッチングする方法を用いることによって、リセス工程を省略することができることから素子の再現性を確保することが化膿であり、工程を単純化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パワー素子およびその製造方法が開示される。より詳しくは、ノーマリーオフ(Normally off)動作が可能なパワー素子およびその製造方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は電流が印加されると、p、n型半導体の接合部分で電子と精工の再結合に基づいて様々な色の光を発生させ得る半導体装置である。このような半導体発光素子は、フィラメントに基づいた発光素子に比べて長い寿命、低い電源、優れる初期駆動特性、高い振動抵抗などの多様な長所を有するため、その需要が持続的に増加している。特に、最近では青色系の短波長領域の光を発光することのできる窒化物半導体が脚光を浴びている。
【0003】
最近、全世界的に情報通信技術の急激な発達に伴って超高速、大容量の信号送信のための通信技術が急速に発達している。特に、無線通信技術において個人携帯電話、衛星通信、軍事用レーダー、放送通信、通信用中継機などの需要が次第に拡大するにつれて、マイクロ波とミリメートル波帯域の超高速情報通信システムに必要な高速、高電力電子素子に対する要求が増加している。また、高電力に使用しているパワー素子における応用においても省エネのために多くの研究が行われている。
【0004】
特に、窒化物半導体はエネルギギャップが大きく、高い熱的および化学的な安定度、高い電子飽和の速度(〜3×10cm/sec)等の優れる物性を有し、光素子だけではなく高周波、高出力用の電子素子における応用が容易であるため、全世界的に活発に研究されている。特に、窒化物半導体を用いる電子素子は高い降伏電圧(〜3×10V/cm)および最大電流密度、安定した高温動作、高い熱伝導度などの様々な長所を有する。
【0005】
化合物半導体のヘテロ接合構造を用いるHFET(Heterostructure Field Effect Transistor)の場合、接合界面におけるバンド不連続(band−discontinuity)が大きいため、界面に高い濃度の電子が誘起される場合があるため電子移動度(mobility)をさらに高める。このような物性的な特徴により高電力素子における応用が可能である。しかし、このような高い電子移動度を有するAlGaN/GaN HFET構造では、信号が印加されていない状態でも電流が流れることで電力の消耗が発生する。
【0006】
電力素子の場合、大きい電流密度が要求されるためノーマリーオン(normally on)素子における電力損失は大きい問題になっており、最近ゲートの部分のAlGaN層を除去してMOS HFETを実現したノーマリーオフ(Normally off)素子が開発されている。このようなノーマリーオフ素子は、ゲートの部分のAlGaN層をICP−RIE(Inductively Coupled Plasma−Reactive Ion Etch)で除去してリセス(recess)構造を形成し、絶縁物質をゲート酸化物を用いてMOS HFETを実現した後、電圧の印加によりチャネルが形成される。しかし、AlGaN層の厚さを正確に制御することが難しく、ICP−RIEを用いる時に表面がプラズマに露出して電気的な特性の低下をもたらす問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ノーマリーオフ動作が可能なパワー素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るパワー素子は、基板と、前記基板上に形成される半絶縁性GaN層と、前記半絶縁性GaN層上に形成され、AlがドーピングされたGaN層と、前記AlがドーピングされたGaN層上に形成される第1窒化物層と、前記第1窒化物層上に形成される第2窒化物層と、前記第1窒化物層上に形成されるソース電極およびドレイン電極パターンと、前記第2窒化物層上に形成されるゲート電極パターンとを含む。
【0009】
本発明の一側面に係るパワー素子において、前記第1窒化物層は、下記の組成式1を有する物質からなってもよい。
【0010】
[組成式1]
AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)
【0011】
本発明の一側面に係るパワー素子において、前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層と同じ物質からなってもよい。
【0012】
本発明の一側面に係るパワー素子において、前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層の物質にp型物質がドーピングされたものからなってもよい。
【0013】
本発明の一側面に係るパワー素子において、前記組成式1においてx値の範囲が0.1≦x≦0.5であり、y値が0である場合、前記第2窒化物層の厚さは20nm〜70nmであってもよい。
【0014】
本発明の一側面に係るパワー素子において、前記組成式1においてx値が1であり、y値が0である場合、前記第2窒化物層の厚さは2nm〜7nmであってもよい。
【0015】
本発明の一側面に係るパワー素子において、前記第2窒化物層と前記ソース・ドレイン電極パターンとの間に形成された絶縁パターンをさらに含んでもよい。
【0016】
本発明の一側面に係るパワー素子において、前記絶縁パターンは、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、および酸化アルミニウム(Al)に形成されたグループから選択されてもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態に係るパワー素子の製造方法は、基板上に半絶縁性GaN層を形成するステップと、前記半絶縁性GaN層上にAlがドーピングされたGaN層を形成するステップと、前記AlがドーピングされたGaN層上に第1窒化物層を形成するステップと、前記第1窒化物層上に第2窒化物層を形成するステップと、前記第1窒化物層上にソース電極およびドレイン電極パターンを形成するステップと、前記第2窒化物層上にゲート電極パターンを形成するステップとを含む。
【0018】
本発明の一実施形態に係るパワー素子の製造方法は、前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層を形成した後、前記ゲート電極パターンの下部領域で窒化物が再成長されて形成されてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係るパワー素子の製造方法は、前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層を形成した後、前記ゲート電極パターンの下部領域を除いた部分がエッチングされて形成されてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係るパワー素子の製造方法は、前記第1窒化物層は、下記の組成式1を有する物質からなってもよい。
【0021】
[組成式1]
AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)
【0022】
本発明の一実施形態に係るパワー素子の製造方法は、前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層と同じ物質からなってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態に係るパワー素子の製造方法は、前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層の物質にp型物質がドーピングされたものからなってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態に係るパワー素子の製造方法は、前記組成式1においてx値の範囲が0.1≦x≦0.5であり、y値が0である場合、前記第2窒化物層の厚さは20nm〜70nmであってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態に係るパワー素子の製造方法は、前記組成式1においてx値が1であり、y値が0である場合、前記第2窒化物層の厚さは2nm〜7nmであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施形態に係るパワー素子は、第1窒化物層を形成した後、ゲート電極下部に第2窒化物層をさらに形成することによって、ゲート電極に対応する部分には2次元の電子ガス層(2−DEG:2−Dimensional Electron Gas)が形成されないため、ノーマリーオフ動作が可能である。
【0027】
これによって、本発明の一実施形態に係るパワー素子は、ゲートの電圧に応じて2次元の電子ガス層の生成を調整することができ、ノーマリーオフ動作が可能であるため消費電力を減少させることができる。
【0028】
また、ゲート電極に対応する第2窒化物層を形成するために、第1窒化物層を形成した後、ゲート電極に対応する部分のみを再成長させたり、ゲート電極に対応する部分を除いた残り部分をエッチングする方法を用いることによって、リセス工程を省略することができることから素子の再現性が確保され、工程を単純化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るパワー素子構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図3B】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図3C】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図3D】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図4A】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図4B】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図4C】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図4D】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図4E】本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るパワー素子においてAlGaNの厚さによる移動度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施形態の説明において、各基板、層またはパターンなどが各基板、層、またはパターンなどの「上(on)」に、または「下(under)」に形成されるものと記載される場合、「上(on)」と「下(under)」は「直接(directly)」または「他の構成要素を介在して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上または下に対する基準は図面を基準にして説明する。
【0031】
図面における各構成要素の大きさは説明のために誇張される場合があり、実際に適用される大きさを意味することはない。
【0032】
以下では下記の図面を参照して実施形態を説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係るパワー素子構造を示す断面図である。
【0034】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るパワー素子は、基板100、半絶縁性GaN層200、AlがドーピングされたGaN層300、2次元の電子ガス層(2−DEG:2−Dimensional Electron Gas)400、第1窒化物層510、第2窒化物層520、ソース電極パターン620、ドレイン電極パターン630、およびゲート電極パターン610、絶縁パターン710,720を含む。
【0035】
基板100上にバッファ層(図示せず)または半絶縁性GaN層200が形成されてもよい。基板100は、ガラス基板またはサファイア基板のような絶縁性の基板であってもよく、Si、SiC、ZnOのような導電性基板であってもよい。また、基板100は、窒化物成長用の基板であってもよく、例えば、AlNまたはGaN系の基板であってもよい。
【0036】
半絶縁性GaN層200は基板100上に形成される。半絶縁性GaN層200は、基板100に向かった漏洩電流を防止して素子間の分離のために比較的に高い抵抗を有し得る。半絶縁性GaN層200は、抵抗が極めて高くて半絶縁性(semi−insulating)の特性を有し得る。
【0037】
AlがドーピングされたGaN層300は半絶縁性GaN層200上に形成される。AlがドーピングされたGaN層300はチャネル層の役割をする。2次元の電子ガス層400は、異なるバンドギャップを有するAlがドーピングされたGaN層300および下記の第1窒化物層510のヘテロ接合によって形成される。すなわち、ゲート電極610に電圧が印加されると、2次元の電子ガス層400によってチャネルが形成されて、ソース電極620とドレイン電極630との間に電流が流れる。
【0038】
第1窒化物層510はAlがドーピングされたGaN層300上に形成され、第2窒化物層520は第1窒化物層510上に形成される。
【0039】
第1窒化物層510は、下記の組成式1を有する物質からなり得る。
【0040】
[組成式1]
AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)
【0041】
第2窒化物層520は、第1窒化物層510と同じ物質からなってもよい。また、第2窒化物層520は、第1窒化物層510の物質にp型物質がドーピングされたもので形成されてもよい。例えば、第2窒化物層520は、AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)、またはp−AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)であってもよい。ここで、p−AlInGa1−xNはAlInGa1−xNがp型物質にドーピングされたものを意味し、p型物質はIII族の元素である。第2窒化物層520がp型物質にドーピングされたp−AlInGa1−xNから形成されることによって、p型ドーピングによって電荷は(+)、チャネルは(−)になって、電荷中性(charge neutral)を達成することができる。これによって、ゲート電極610の下部に対応する部分には、2次元の電子ガス層400が形成されないためチャネルを除去することができる。
【0042】
第1窒化物層510および第2窒化物層520は、アルミニウムの含量に応じて表面のモーフォロジー(morphology)およびピエゾ効果(piezzo effect)が変わり得る。通常、アルミニウム含量に応じる表面のモーフォロジーおよびピエゾ効果は互いにトレードオフ(trade off)の関係にある。すなわち、アルミニウムの含量に応じて表面のモーフォロジーが優れるとピエゾ効果は減少し、反対に、アルミニウムの含量に応じてピエゾ効果が増加すると表面のモーフォロジーはよくない特性を表す。
【0043】
組成式1においてx値が0または1である場合、すなわち、GaNまたはAlNの場合にはGaNまたはAlN表面のモーフォロジーが優秀であるが、x値が0.1と1の間にある場合には表面のモーフォロジーが様々に変化することがある。
【0044】
本発明の一側面に係るパワー素子において、表面のモーフォロジーを考慮する時に第1窒化物層510においてx値の範囲が0.1≦x≦0.5であってもよく、第1窒化物層510の厚さは25nm〜30nmであってもよい。ただし、第1窒化物層510においてx値が0.3であり、第1窒化物層510の厚さが25nm〜30nmである場合、ピエゾ効果が最も強いことがある。
【0045】
本発明において優秀な表面モーフォロジーを確保しながらピエゾ効果を除去するために、ゲート電極610に対応する部分に第2窒化物層520を形成してもよい。すなわち、第1窒化物層510においてx値の範囲を0.1≦x≦0.5に調整することで優秀な表面モーフォロジーを確保し、第2窒化物層520の厚さを調整することでゲート電極610に対応する部分において2次元の電子ガス層400の形成を遮断することができる。
【0046】
本発明の一側面における第1窒化物層510の組成式1において、x値の範囲が0.1≦x≦0.5であり、y値が0である場合、第2窒化物層520の厚さは20nm〜70nmであってもよい。好ましくは、第1窒化物層510の組成式1において、x値の範囲が0.1≦x≦0.5であり、y値が0である場合、第2窒化物層520の厚さは30nm〜50nmであってもよい。
【0047】
本発明の一側面における第1窒化物層510の組成式1において、x値が1であり、y値が0である場合、第2窒化物層520の厚さは2nm〜7nmであってもよい。好ましくは、第1窒化物層510の組成式1においてx値が1であり、y値が0である場合、第2窒化物層520の厚さは3nm〜5nmであってもよい。すなわち、第1窒化物層510がAlNからなることによって優秀な表面モーフォロジーを確保し、第2窒化物層520の厚さを2nm〜7nmに形成することによって、ゲート電極610に対応する部分で2次元の電子ガス層400の形成を遮断することができる。
【0048】
第1窒化物層510および第2窒化物層520が全てAlGa1−xNである場合よりも第1窒化物層510および第2窒化物層520が全てAlNである場合において、第2窒化物層520の厚さがさらに小さくなってもよい。すなわち、第1窒化物層510および第2窒化物層520が全てAlNである場合にさらに小さい厚さの第2窒化物層520で2次元の電子ガス層の形成を防ぐことができる。
【0049】
すなわち、本発明の一側面に係るパワー素子は、第1窒化物層510では優秀な表面モーフォロジーを確保し、第2窒化物層520では第1窒化物層510を形成した後第2窒化物層520を特定の厚さで形成することによって、ゲート電極610に対応する部分に2次元の電子ガス層の形成を遮断することができる。
【0050】
したがって、本発明の一側面に係るパワー素子は2次元の電子ガス層400が形成されていないため、ノーマリーオフ動作が可能である。すなわち、ゲート電極610の下部に対応する部分には2次元の電子ガス層400が形成されていないため、ゲート電極にバイアス電圧を加えなければ、ソース・ドレインの間に電流が流れることなくオフ状態となる。これによって、本発明の一側面に係るパワー素子は、ゲートの電圧に応じて2次元の電子ガス層400の生成を調整することができ、ノーマリーオフ動作が可能であるため消費電力の減少を図ることができる。
【0051】
第2窒化物層520とソース・ドレイン電極パターン620,630との間に形成された絶縁パターン710,720をさらに含んでもよい。絶縁パターン710,720は、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、および酸化アルミニウム(Al)に形成されるグループから選択されてもよい。絶縁パターン710,720は、ゲート電極610、ソース電極620、およびドレイン電極630の間を絶縁させ、電極間にショートの発生を防止することができる。
【0052】
ソース電極パターン620およびドレイン電極パターン630は第1窒化物層510上に形成され、ゲート電極パターン610は第2窒化物層520上に形成される。ソース620、ドレイン630およびゲート電極パターン610は、Ni、Al、Ti、TiN、Pt、Au、RuO、V、W、WN、Hf、HfN、Mo、NiSi、CoSi、WSi、PtSi、Ir、Zr、Ta、TaN、Cu、Ru、Coおよびこの組合で形成されるグループから選択されてもよい。
【0053】
本発明の一実施形態に係るパワー素子は、第1窒化物層を形成した後、ゲート電極下部に第2窒化物層をさらに形成することによってストレイン(strain)が完全に弛緩してゲート電極に対応する部分でピエゾ効果が喪失される。すなわち、本発明の一実施形態に係るパワー素子は、ゲート電極に対応する部分には2次元の電子ガス層が形成されないためノーマリーオフ動作が可能である。したがって、本発明の一実施形態に係るパワー素子は、ノーマリーオフ動作が可能であるため消費電力を減少させることができる。
【0054】
以下は、本発明の他の実施形態に係るパワー素子の製造方法を説明する。
【0055】
図2〜図4は、本発明の一実施形態に係るパワー素子を製造する過程を示す図である。
【0056】
図2〜図4を参照すると、本発明の他の実施形態に係るパワー素子の製造方法は、基板100上に半絶縁性GaN層200を形成するステップと、半絶縁性GaN層200上にAlがドーピングされたGaN層300を形成するステップと、AlがドーピングされたGaN層300上に第1窒化物層510を形成するステップと、第1窒化物層510上に第2窒化物層520を形成するステップと、第1窒化物層510上にソース電極パターン620およびドレイン電極パターン630を形成するステップと、第2窒化物層520上にゲート電極パターン610を形成するステップとを含む。
【0057】
まず、図2に示すように、基板100上に半絶縁性GaN層200を形成する。半絶縁性GaN層200は、金属有機化学気相蒸着法(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)、分子線成長法(Molecular Beam Epitaxy;MBE)、および水素気相成長法(Hydride Vapor Phase Epitaxy;HVPE)等の方法を用いて形成してもよく、これに制限されることはない。
【0058】
半絶縁性GaN層200上にAlがドーピングされたGaN層300を形成する。AlがドーピングされたGaN層300は、Alが1%以下にドーピングされて形成してもよく、AlがドーピングされたGaN層300も上記のように様々な成長方法に基づいて形成してもよい。
【0059】
その後、AlのドーピングされたGaN層300上に下記の組成式1を有する第1窒化物層500が形成される。
【0060】
[組成式1]
AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)
【0061】
第1窒化物層510上には第2窒化物層520が形成される。第2窒化物層520は第1窒化物層510と同じ物質からなってもよい。また、第2窒化物層520は、第1窒化物層510の物質にp型物質がドーピングされたものに形成されてもよい。例えば、第2窒化物層520は、AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)またはp−AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)であってもよい。
【0062】
ここで、p−AlInGa1−xNはAlInGa1−xNがp型物質にドーピングされたことを意味し、p型物質はIII族の元素である。第2窒化物層520がp型物質にドーピングされたp−AlInGa1−xNからなることによって、p型ドーピングにより電荷は(+)、チャネルは(−)になって電荷中性を達成することができる。これによって、ゲート電極610の下部に対応する部分では2次元の電子ガス層400が形成されないためャネルを除去することができる。
【0063】
第2窒化物層520は、図3A〜図3Dに示すように再成長方法に基づいて形成されてもよく、図4A〜図4Eに示すようにエッチング方法に基づいて形成されてもよい。以下では第2窒化物層520の形成方法について具体的に説明する。
【0064】
図3A〜図3Dは第1窒化物層510が形成された後、ゲート電極パターン610の下部領域で窒化物が再成長されることによって第2窒化物層520が形成される過程を示す図である。
【0065】
図3A〜図3Dを参照すると、第1窒化物層510が形成された後、ゲート電極パターン610に対応する下部領域で追加的に窒化物を再成長させることによって行われてもよい。
【0066】
図3Aに示すように第1窒化物層510を25〜30nmに成長させた後、図3Bに示すように第1窒化物層510上にフォトレジスト700の工程でパターニングしてゲート電極610に対応する部分を定義する。すなわち、フォトレジスト工程において、ゲート電極610に対応する部分のみをエッチングして第1窒化物層510を露出させる。その次に、図3Cに示すように露出された第1窒化物層510で窒化物を一定の厚さ以上の範囲で再成長させた後、図3Dに示すようにフォトレジストを除去して第2窒化物層520を形成する。第2窒化物層520は、第1窒化物層510と同じ物質または第1窒化物層510の物質にp型物質がドーピングされた物質に形成されてもよい。
【0067】
図4A〜図4Eは、第1窒化物層510が形成された後、ゲート電極パターン610の下部領域を除いた部分が直角になるように第2窒化物層520が形成される過程を示す図である。
【0068】
図4A〜図4Eを参照すると、第1窒化物層510が形成された後、ゲート電極パターン610に対応する下部領域を除いた部分が特定の厚さにエッチングされる工程を行ってもよい。
【0069】
図4Aに示すように第1窒化物層510を50nm〜100nmの範囲に成長させた後、図4Bに示すように第1窒化物層510の全面にフォトレジスト700を形成した後、図4Cに示すようにフォトレジスト700の一部をパターニングしてゲート電極610に対応する部分のみを残してエッチングする。すなわち、フォトレジスト工程において、ゲート電極610に対応する部分のみを残して第1窒化物層510を露出させる。
【0070】
その後、図4Dに示すように、露出された第1窒化物層510を25〜30nm範囲の厚さにエッチングする。その後、図4Eに示すように、エッチングされずにゲート電極パターン610に対応する部分を第2窒化物層520と定義し、第2窒化物層520を形成する。第2窒化物層520は、第1窒化物層510と同じ物質または第1窒化物層510の物質にp型物質がドーピングされた物質に形成されてもよい。
【0071】
その後、第1窒化物層510上にゲート610、ソース・ドレイン電極620,630を形成し、電極の間に絶縁パターン710,720を形成する。ここで、ソース620、ドレイン630、およびゲート電極パターン610は通常のフォトリソグラフィ(photolithography)工程によって形成されてもよい。
【0072】
すなわち、図3A〜図3Dおよび図4A〜図4Eに示すような再成長およびエッチング工程によって形成された第2窒化物層520は、上述したようなピエゾ効果を除去するために特定の厚さで形成されてもよい。すなわち、本発明の一側面において、第1窒化物層510の組成式1においてx値の範囲が0.1≦x≦0.5であり、y値が0である場合、第2窒化物層520の厚さは20nm〜70nmであってもよい。好ましくは、第1窒化物層510の組成式1において、x値の範囲が0.1≦x≦0.5であり、y値が0である場合、第2窒化物層520の厚さは30nm〜50nmであってもよい。
【0073】
また、本発明の一側面において、第1窒化物層510の組成式1においてx値が1であり、y値が0である場合、第2窒化物層520の厚さは2nm〜7nmであってもよい。好ましくは、第1窒化物層510の組成式1においてx値が1であり、y値が0である場合、第2窒化物層520の厚さは3nm〜5nmであってもよい。すなわち、第1窒化物層510がAlNからなることによって優秀な表面モーフォロジーを確保し、第2窒化物層520の厚さを2nm〜7nmに形成することによって、ゲート電極610に対応する部分で2次元の電子ガス層400の形成を遮断することができる。
【0074】
図5は、本発明の一実施形態に係るパワー素子でAlGaNの厚さに応じる移動度を示すグラフである。図5において、第1窒化物層および第2窒化物層が同じ物質に形成され、第1窒化物層および第2窒化物層の全てがAl0.3Ga0.7Nの物質に形成された。
【0075】
図5に示すように、第1窒化物層の組成式1においてx値が0.3であり、第1窒化物層の厚さが約30nmである場合、移動度が約1200cm/Vsであるため、ピエゾ効果が最も強く現れた。一方、本発明の一側面に係るパワー素子において、第1窒化物層の組成式1においてx値が0.3であり、第1窒化物層(約30nm)および第2窒化物層(約40nm)の厚さの和が約70nmである場合、移動度は50cm/Vsであることを確認することができた。
【0076】
その後、第1窒化物層を形成した後、第2窒化物層を上述したような厚さに形成することによって、ゲート電極パターンの下部で2次元の電子ガス層の形成を遮断することができる。
【0077】
すなわち、本発明の一側面によって製造されたパワー素子は、ゲート電極の下部に対応する部分には2次元の電子ガス層が形成されないため、ゲート電極にバイアス電圧を加えなければソース・ドレインの間に電流が流れないためオフ状態となる。これによって、本発明の一側面によって製造されたパワー素子はノーマリーオフ動作が可能であり、消費電力を減少させることができる。
【0078】
上述したように本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような実施形態から多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されて定められるものではなく、特許請求の範囲だけではなく特許請求の範囲と均等なものなどによって定められるものである。
【符号の説明】
【0079】
100 基板
200 半絶縁性GaN層
300 AlがドーピングされたGaN層
400 2次元の電子ガス層
510 第1窒化物層
520 第2窒化物層
610 ゲート電極
620 ソース電極
630 ドレイン電極
700 フォトレジスト
710、720 絶縁パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される半絶縁性GaN層と、
前記半絶縁性GaN層上に形成され、AlがドーピングされたGaN層と、
前記AlがドーピングされたGaN層上に形成される第1窒化物層と、
前記第1窒化物層上に形成される第2窒化物層と、
前記第1窒化物層上に形成されるソース電極パターンおよびドレイン電極パターンと、
前記第2窒化物層上に形成されるゲート電極パターンと
を含むことを特徴とするパワー素子。
【請求項2】
前記第1窒化物層は、下記の組成式1を有する物質からなることを特徴とする請求項1に記載のパワー素子。
[組成式1]
AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)
【請求項3】
前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層と同じ物質からなることを特徴とする請求項2に記載のパワー素子。
【請求項4】
前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層の物質にp型物質がドーピングされたものからなることを特徴とする請求項2に記載のパワー素子。
【請求項5】
前記組成式1においてx値の範囲が0.1≦x≦0.5であり、y値が0である場合、前記第2窒化物層の厚さは20nm〜70nmであることを特徴とする請求項3に記載のパワー素子。
【請求項6】
前記組成式1においてx値が1であり、y値が0である場合、前記第2窒化物層の厚さは2nm〜7nmであることを特徴とする請求項3に記載のパワー素子。
【請求項7】
前記第2窒化物層と前記ソース電極パターンおよび前記ドレイン電極パターンとの間に形成された絶縁パターンをさらに含むことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のパワー素子。
【請求項8】
前記絶縁パターンは、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、および酸化アルミニウム(Al)に形成されたグループから選択されることを特徴とする請求項7に記載のパワー素子。
【請求項9】
基板上に半絶縁性GaN層を形成するステップと、
前記半絶縁性GaN層上にAlがドーピングされたGaN層を形成するステップと、
前記AlがドーピングされたGaN層上に第1窒化物層を形成するステップと、
前記第1窒化物層上に第2窒化物層を形成するステップと、
前記第1窒化物層上にソース電極パターンおよびドレイン電極パターンを形成するステップと、
前記第2窒化物層上にゲート電極パターンを形成するステップと
を含むことを特徴とするパワー素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層を形成した後、前記ゲート電極パターンの下部領域で窒化物が再成長されて形成されることを特徴とする請求項9に記載のパワー素子の製造方法。
【請求項11】
前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層を形成した後、前記ゲート電極パターンの下部領域を除いた部分がエッチングされて形成されることを特徴とする請求項9に記載のパワー素子の製造方法。
【請求項12】
前記第1窒化物層は、下記の組成式1を有する物質からなることを特徴とする請求項9から11の何れか1項に記載のパワー素子の製造方法。
[組成式1]
AlInGa1−xN(ここで、0.1≦x≦1であり、0≦y≦0.3である)
【請求項13】
前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層と同じ物質からなることを特徴とする請求項12に記載のパワー素子の製造方法。
【請求項14】
前記第2窒化物層は、前記第1窒化物層の物質にp型物質がドーピングされたものからなることを特徴とする請求項12に記載のパワー素子の製造方法。
【請求項15】
前記組成式1においてx値の範囲が0.1≦x≦0.5であり、y値が0である場合、前記第2窒化物層の厚さは20nm〜70nmであることを特徴とする請求項13に記載のパワー素子の製造方法。
【請求項16】
前記組成式1においてx値が1であり、y値が0である場合、前記第2窒化物層の厚さは2nm〜7nmであることを特徴とする請求項13に記載のパワー素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−16786(P2013−16786A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126225(P2012−126225)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(509156538)サムソン エルイーディー 株式会社 (114)
【Fターム(参考)】