説明

ヒータユニット

【課題】 昇温・降温特性に優れたヒータユニットを提供する。
【解決手段】
通電によりヒータを昇温させる電極と、上記電極に接続された炭化ケイ素を含む材料から構成されたヒータと、被加熱体を保持するウェハホルダーと、上記ヒータと前記ウェハホルダーを取り囲む、少なくとも内側表面に反射層が設けられたチャンバーと、を備えるヒータユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素を含む材料から構成されたヒータを備えるヒータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における被加熱体を加熱する装置として、ランプを面状に多数個配置し輻射により被加熱体を加熱するランプ加熱方式の急速加熱装置がある。しかし、温度制御性が悪くしかもランプの一部に不具合が発生すると均熱性が低下するといった問題があった。
【0003】
上記課題を解決する手段として、炭化ケイ素をヒータとして用いたセラミックヒータが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。炭化ケイ素は熱伝導率が高いことから、温度制御性や均熱性が良好で、しかも耐食性を有するからである。
【0004】
しかしながら、ニクロムなどの金属ヒータは急速昇温で金属が発生し被加熱体に悪影響を及ぼしていた。また窒化アルミニウムや窒化ホウ素などのセラミックヒータは1000℃以上の高温加熱や急速昇温ができなかった。また炭素製ヒータは空気中で使用することができなかった。
【特許文献1】特開2003−308951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上より、昇温・降温特性に優れたヒータユニットが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、以下の記載事項に関する:
(1) 通電によりヒータを昇温させる電極と、上記電極に接続された炭化ケイ素を含む材料から構成されたヒータと、被加熱体を保持するウェハホルダーと、上記ヒータと前記ウェハホルダーを取り囲む、少なくとも内側表面に反射層が設けられたチャンバーと、を備えるヒータユニット。
【0007】
(2) 上記反射層の輻射率は、0.01〜0.80である上記(1)記載のヒータユニット。
【0008】
(3) 上記ヒータと上記電極は一体に形成されている上記(1)又は(2)に記載のヒータユニット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、昇温・降温特性に優れたヒータユニットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは検討を行ったところ、ヒータを覆うチャンバーの内側に反射層を設けることで、ヒータユニットの昇温降温特性が向上することを見出した。以下に実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明は必ずしも以下の実施形態に限定されない。
(ヒータユニット)
図1(a)(b)に示すように実施形態にかかるヒータユニット20は、
通電によりヒータ1を昇温させる電極2と、
電極に接続された炭化ケイ素を含む材料から構成されたヒータ1と、
被加熱体を保持するウェハホルダー5と、
ヒータ1とウェハホルダー5を取り囲む、少なくとも内側表面に反射層が設けられたチャンバー3と、を備える。
【0011】
電極2は、ヒータ1と同様に炭化ケイ素を含む材料から構成されていることが好ましい。熱伝導率が向上し良好な昇温降温特性が得られるからである。また、ヒータ1と電極2は、それらと同一の部材からなる接合体を用いて、一体に形成されることが好ましい。熱伝導率が等しい部材を用いてヒータ1と電極2を一体に形成することで、ヒータ1の均熱特性が向上するからである。尚、ヒータ1と電極2をそれらとは異なる部材からなる接合部材を用いて接合すると、ヒータ1の均熱特性が低下する傾向がある。
【0012】
ウェハホルダー5は、被加熱体を保持でき、かつ高温耐性があれば特に制限なく種々の材料を用いて形成される。ここではウェハホルダー5は石英から構成されている。またウェハホルダー5は、被加熱体を配置した際に被加熱体の下方に当たる部分に熱電対を備える。
【0013】
チャンバー3は、ヒータ1とウェハホルダー5を収納保持する下部チャンバー3aと、ヒータユニット20使用時に下部チャンバー3aに対向して配置される上部チャンバー3bと、を備える。チャンバー3の内側は、輻射熱が被加熱体に集中するように湾曲して構成されている。チャンバー3の内側表面には、熱の輻射率が高く耐酸化性を備える反射層8が設けられている。熱の輻射率としては、0.01〜0.80が好ましい。反射層8としては、輻射率が0.02程度の物質、例えば金メッキが挙げられる。またチャンバー3の内側を鏡面仕上することにより反射層8を設けてもよい。チャンバー3の内側表面に反射層8を設けたことで、ヒータユニット20内に熱がこもりらくなるので、ヒータユニット20の昇温降温特性が向上する。
【0014】
尚、発明の理解を容易にする目的で図示されていないが、ヒータユニット20は、デジタル式制御回路を備える加熱制御手段に接続されている。熱電対を用いて被加熱体の温度を所定の周期で測定し、過熱傾向にある場合に加熱を制御して被加熱体の過熱を防止している。温度測定周期は0.05秒以下(1℃/秒)、好ましくは0.01秒以下に設定されることが好ましい。
【0015】
(製造方法)
まずヒータユニット20を構成するヒータ1と電極2を後に説明するホットプレス法に従って製造する。その際ヒータ1と電極2を係合可能とし(図2(a))、かつ係合した際に接合部10に遊び部が形成されるように(図2(b))、ヒータ1の一部に連通孔を設けまた電極2の一端に凸部を形成する。
【0016】
次に図2(b)に示すように、ヒータ1と電極2の接合部10に、炭化ケイ素(SiC)と炭素(C)を含むスラリーを流し込む。その後接合部を部分加熱する。続いて高純度のシリコン(Si)を接合部に挿入し、余剰のCとSiを反応させてSiCを形成する。このような反応焼結法により、図2(c)に示すようにヒータ1と電極2が一体化される。
【0017】
さらに構造材3を組立ることにより図1(a)に示すセラミックヒータユニット20が製造される。
尚、前述のヒータ及び電極はホットプレス法により製造した。しかし、前述のヒータ及び電極は他の製法、例えば反応焼結法やその改良法により製造されてもよい。
【0018】
(実施例)
ヒータユニットの昇温降温特性を調べるため以下の条件で実験を行った。尚、本発明は以下の実施例に制限されることはない:
ヒータユニットしては、図1(a)(b)に示すヒータユニット20を用いた。被加熱体としては、単結晶シリコンからなる熱伝導率160w/m・kのウェハを用いた。そしてウェハを700℃まで加熱し、上記温度に約10分間保持した後に降温した。被加熱体の温度測定周期は0.01秒であった。
【0019】
以上、実施例及び比較例で得られた結果を図3〜5に示す。図3は昇温降温実験の全体図である。図4は図3中の昇温領域の拡大図である。図5は図3中の降温領域の拡大図である。
【0020】
実験結果より、実施例は、70℃から700℃まで昇温するまでの昇温速度は630℃/分であった。また700℃から200℃まで降温するまでの降温速度は500℃/分であった。
【0021】
(ホットプレス法)
以下にヒータユニットの製造に用いられる炭化ケイ素の製造方法について説明する:
本発明のヒータユニットの製造方法には、遊離炭素含有率が2〜10重量%の炭化ケイ素焼結体を使用する。このような炭化ケイ素焼結体は、炭化ケイ素粉末と、非金属系焼結助剤との混合物を焼成することにより得られる。まず、炭化ケイ素粉末について説明する。炭化ケイ素粉末としては、α型、β型、非晶質、あるいはこれらの混合物等を広く用いることができ、市販品を用いてもよい。中でもβ型炭化ケイ素粉末が好適に用いられる。炭化ケイ素焼結体を高密度化するためには、用いる炭化ケイ素粉末の粒径は小さいほうがよい。好ましくは0.01〜10μm程度、より好ましくは0.05〜2μmである。粒径が0.01μm未満であると、計量、混合等の処理工程における取り扱いが困難となり、一方10μmを超えると、粉体の比表面積、即ち、隣接する粉体との接触面積が小さくなり、高密度化が困難となるので好ましくない。
【0022】
高純度の炭化ケイ素粉末を用いると、得られる炭化ケイ素焼結体も高純度になるので好ましい。高純度の炭化ケイ素粉末は、例えば、ケイ素化合物(以下「ケイ素源」という場合がある。)と、加熱により炭素を発生する有機材料と、Z重合触媒または架橋触媒とを混合し、得られた固形物を非酸化性雰囲気中で焼成することにより製造することができる。ケイ素源としては、液状、および固体状の化合物を広く用いることができるが、少なくとも液状の化合物を1種以上用いる。液状のケイ素源としては、アルコキシシラン(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−)の重合体等が挙げられる。アルコキシシランの重合体の中では、テトラアルコキシシランの重合体が好適に用いられる。具体的には、メトキシシラン、エトキシシラン、プロピロキシシラン、ブトキシシラン等が挙げられるが、ハンドリングの点からはエトキシシランが好ましい。テトラアルコキシシラン重合体の重合度は2〜15程度であると液状の低分子量重合体(オリゴマー)となる。その他、重合度が高いケイ酸ポリマーで液状のものもある。液状のケイ素源と併用可能な固体状のケイ素源としては、炭化ケイ素が挙げられる。ここにいう炭化ケイ素には、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)の他、シリカゾル(コロイド状超微細シリカ含有液であって、コロイド分子内にOH基やアルコキシ基を含有するもの)、微細シリカ、石英粉体等も含まれる。これらのケイ素源の中でも、均質性やハンドリング性が良好であるテトラアルコキシシランのオリゴマー、またはテトラアルコキシシランのオリゴマーと微粉体シリカとの混合物等が好ましい。また、これらのケイ素源は高純度であることが好ましく、具体的には初期の不純物含有量が20ppm以下であるのが好ましく、5ppm以下であるのがさらに好ましい。
【0023】
加熱により炭素を生成する有機材料としては、液状のものの他、液状のものと固体状のものを併用することもできる。残炭率が高く、かつ触媒あるいは加熱により重合または架橋する有機材料が好ましい。具体的には、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール等のモノマー、およびプレポリマーが好ましい。その他、セルロース、しょ糖、ピッチ、タール等の液状物も用いられる。中でもレゾール型フェノール樹脂が、熱分解性および純度の点で好ましい。有機材料の純度は、目的に応じて適宜、制御すればよい。特に高純度の炭化ケイ素粉末が必要な場合は、不純物元素の含有量が各々5ppm未満である有機材料を用いるのが好ましい。
【0024】
ケイ素源と有機材料の配合比率は、炭素とケイ素のモル比(以下「C/Si」と略記する。)を目安に好ましい範囲をあらかじめ決定することができる。ここにいうC/Siとは、ケイ素源と有機材料との混合物を1000℃にて炭化した炭化ケイ素中間体を元素分析し、その分析値より得られるC/Siである。炭素は、以下の反応式で表わされるように、酸化ケイ素と反応し、炭化ケイ素に変化する。
【0025】
式(I)SiO2+3C→SiC+2CO従って、化学量論的には、C/Siが3.0であると、炭化ケイ素中間体中の遊離炭素は0%になるが、実際にはSiOガス等が揮散するため、C/Siがより低い値であっても遊離炭素が発生する。遊離炭素は粒成長を抑制する効果を有するので、目的とする粉末粒子の粒径に応じて、C/Siを決定し、その比となるようにケイ素源と有機材料とを配合すればよい。例えば、約1気圧、1600℃以上で、ケイ素源と有機材料との混合物を焼成する場合、C/Siが2.0〜2.5の範囲になるように配合すると、遊離炭素の発生を抑制することができる。同条件で、C/Siが2.5を超えるように配合すると、遊離炭素の発生が顕著となり、粒子の小さな炭化ケイ素粉末が得られる。このように、目的に応じて、配合比率を適宜決定することができる。尚、炭化ケイ素粉末に起因する遊離炭素の作用および効果は、焼結助剤から生じる遊離炭素の作用および効果と比較して非常に弱いので、炭化ケイ素粉末に起因する遊離炭素は、本発明の効果には本質的に影響しないものである。
【0026】
また、炭化ケイ素粉末に含まれる不純物炭素は、約30重量%以上約40重量%以下であるのが好ましい。炭化ケイ素(SiC)の炭素含有量は理論的には約30重量%であるが、非炭素系不純物を含有する場合は30重量%より減少し、炭素系不純物を含有する場合は30重量%より増加する。前述のように有機材料を添加し、焼成することにより得られた炭化ケイ素粉末は、炭素系不純物を含有するので、炭素の含有量は30重量%より大きくなる。従って、炭化ケイ素粉末中の炭素含有量が30重量%未満であると、非炭素系不純物の割合が高いこととなり、純度の点で好ましくない。一方、40重量%を超えると、得られる炭化ケイ素焼結体の密度が低下し、強度、耐酸化性等の点で好ましくない。
【0027】
ケイ素源と有機材料との混合物を硬化させ、固形物にすることもできる。硬化の方法としては、加熱による架橋反応を利用する方法、硬化触媒により硬化する方法、電子線や放射線を利用する方法等がある。用いる硬化触媒は、用いる有機材料に応じて適宜選択できるが、フェノール樹脂、フラン樹脂を有機材料に用いた場合は、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢酸、蓚酸、塩酸、硫酸等の酸類、ヘキサミン等のアミン類等が挙げられる。ケイ素源と有機材料を含有する固形物は、必要に応じ加熱炭化される。炭化は、窒素またはアルゴン等の非酸化性雰囲気中800℃〜1000℃にて30〜120分間加熱することにより行われる。さらに、非酸化性雰囲気中1350℃〜2000℃で加熱すると炭化ケイ素が生成する。焼成温度と焼成時間は、得られる炭化ケイ素粉末の粒径等に影響するので、適宜決定すればよいが、1600〜1900℃で焼成すると効率的で好ましい。以上に説明した高純度の炭化ケイ素粉末を得る方法は、特開平9−48605号明細書により詳細に記載されている。
【0028】
次に非金属系焼結助剤について説明する。本発明に用いられる炭化ケイ素焼結体は、遊離炭素2〜10重量%のものである。この遊離炭素は、非金属系焼結助剤に用いられる有機材料に起因するものであり、非金属系焼結助剤の添加量等の添加条件を調整することにより遊離炭素量を前述の範囲にすることができる。
【0029】
非金属系焼結助剤としては、前述したように遊離炭素源となり得る、即ち加熱により炭素を生じる有機材料(以下「炭素源」という場合がある。)を含有するものを用いる。前述の有機材料を単独で、または前述の有機材料を炭化ケイ素粉末(粒径:約0.01〜1ミクロン)表面に被覆させたものを焼結助剤として用いてもよいが、効果の点からは、有機材料を単独で用いるのが好ましい。加熱により炭素を生成する有機材料としては、具体的には、残炭化率の高いコールタールピッチ、ピッチタール、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂の他、各種糖類、例えば、グルコース等の単糖類、しょ糖等の小糖類、セルロース、でんぷん等の多糖類等が挙げられる。有機材料を炭化ケイ素粉末と均質に混合するには、有機材料は常温で液状のもの、溶媒に溶解するもの、または熱可塑性、熱融解性を有する等加熱により軟化するものが好ましい。中でも、フェノール樹脂を用いると炭化ケイ素焼結体の強度が向上するので好ましく、さらにレゾール型フェノール樹脂が好ましい。これらの有機材料の作用機構は明確にはなっていないが、有機材料は加熱されると系中にカーボンブラック、グラファイトの如き無機炭素系化合物を生成する。この無機炭素系化合物が焼結助剤として有効に作用しているものと考えられる。但し、カーボンブラック等を焼結助剤として用いても、同様な効果は得られない。
【0030】
非金属系焼結助剤は、所望により有機溶媒に溶解し、その溶液と炭化ケイ素粉末を混合してもよい。使用する有機溶媒は、非金属系焼結助剤により異なり、例えば、焼結助剤としてフェノール樹脂を用いる場合は、エチルアルコール等の低級アルコール類、エチルエーテル、アセトン等を選択することができる。高純度の炭化ケイ素焼結体を作製する場合は、高純度の炭化ケイ素粉末を使用するのみならず、焼結助剤および有機溶媒も不純物含有量の少ないものを用いるのが好ましい。
【0031】
非金属系焼結助剤の炭化ケイ素粉末に対する添加量は、炭化ケイ素焼結体の遊離炭素が2〜10重量%になるように決定する。遊離炭素がこの範囲外であると、接合処理中に進行するSiCへの化学変化、および炭化ケイ素焼結体間の接合が不十分となる。ここで、遊離炭素の含有率(重量%)は、炭化ケイ素焼結体を酸素雰囲気下において、800℃で8分間加熱し、発生したCO2、COの量を炭素分析装置で測定し、その測定値から算出することができる。焼結助剤の添加量は、用いる焼結助剤の種類および炭化ケイ素粉末の表面シリカ(酸化ケイ素)量によって異なる。添加量を決定する目安としては、あらかじめ炭化ケイ素粉末の表面シリカ(酸化ケイ素)量を弗化水素水を用いて定量し、この酸化ケイ素を還元するのに十分な化学量論(式(I)で算出される化学量論)を算出する。これと、非金属系焼結助剤が加熱により炭素を生成する割合を考慮し、遊離炭素が前述の適する範囲となるように添加量を決定することができる。以上に説明した炭化ケイ素焼結体の非金属系焼結助剤についての説明は、特願平9−041048号明細書中により詳細に記載されている。
【0032】
次に、炭化ケイ素粉末と非金属系焼結助剤の混合物を焼結する方法について説明する。炭化ケイ素粉末と非金属系焼結助剤は均質に混合する。均質の混合物を得るために、前述したように焼結助剤を有機溶媒に溶解した溶液を用いてもよい。混合方法としては、公知の方法、例えば、ミキサー、遊星ボールミル等を用いる方法が挙げられる。混合に使用する器具は、金属元素不純物の混入を防止するため、合成樹脂素材のものを用いるのが好ましい。混合は10〜30時間程度、特に16〜24時間程度行い、十分に混合するのが好ましい。十分に混合した後、溶媒を除去し、混合物を蒸発乾固させる。その後、篩にかけて混合物の原料粉体を得る。乾燥には、スプレードライヤー等の造粒装置を使用してもよい。
【0033】
このようにして得られた原料粉体は、成形金型中に配置される。使用する成形金型が黒鉛製のものであると、金属不純物が炭化ケイ素焼結体中に混入しないので好ましい。金属製の成形金型であっても、原料粉体と金型の金属部とが直接接触しないように、接触部を黒鉛製とするか、または接触部にトリテトラフルオロエチレンシート(商標名テフロン(登録商標)シート)を介在させれば、好適に使用できる。特に、高純度の炭化ケイ素焼結体を製造したい場合は、金型、および炉内の断熱材等には高純度の黒鉛材料を用いるのが好ましい。具体的には、2500℃以上の温度で、あらかじめ十分にベーキング処理され、高温使用しても不純物の発生がない黒鉛材料等が挙げられる。
【0034】
成形金型中に配置された原料粉体は、ホットプレス加工を施される。ホットプレスの圧力については特に制約はなく、300〜700kgf/cm2の広い範囲の圧力により行うことができる。但し、400kgf/cm2以上で加圧する場合は、ホットプレス用の部品、例えば、ダイス、パンチ等は耐圧性に優れたものを用いる必要がある。
【0035】
ホットプレスは、2000℃〜2400℃にて行うが、このホットプレス加工温度までの昇温は穏やかに、かつ段階的に行うのが好ましい。このように昇温すると、各々の温度で生じる化学変化、状態変化等を十分に進行させることができ、その結果、不純物混入や亀裂および空孔の発生を防止することができる。好ましい昇温工程の一例を以下に示す。まず、5〜10gの原料粉体をいれた成形金型を炉内に配置し、炉内を10−4torrの真空状態にする。室温から200℃まで穏やかに昇温し、約30分間200℃に保つ。その後、700℃まで6〜10時間で昇温し、2〜5時間700℃に保つ。室温から700℃までの昇温工程で、吸着水分や有機溶媒の脱離が起こり、また、非金属系焼結助剤の炭化も進行する。一定温度の保持時間は、炭化ケイ素焼結体のサイズによって異なり、適宜好適な時間に設定すればよい。また、保持時間が十分であるか否かの判断は、真空度の低下がある程度少なくなる時点を目安にすることができる。次に、700℃〜1500℃まで6〜9時間で昇温し、1〜5時間程1500℃に保持する。1500℃に保持している間、酸化ケイ素が還元され炭化ケイ素に変化する反応が進行する(式(I))。保持時間が不十分であると、二酸化ケイ素が残留し、炭化ケイ素粉末表面に付着するので、粒子の緻密化を妨げ、大粒の成長原因となるので好ましくない。保持時間が十分であるか否かの判断は、副生成物である一酸化炭素の発生が停止しているかを目安に、即ち、真空度の低下がおさまり、還元反応開始温度である1300℃の真空度まで回復しているかを目安にすることができる。
【0036】
ホットプレスは、焼結が開始する1500℃程度まで炉内を昇温し、次に炉内を非酸化性雰囲気とするために、不活性ガスを充填した後行うのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、あるいはアルゴンガス等が用いられるが、高温においても非反応性であるアルゴンガスを用いるのが好ましい。高純度炭化ケイ素焼結体を製造したい場合は、不活性ガスも高純度のものを用いる。炉内を非酸化性雰囲気とした後、温度が2000℃〜2400℃、圧力が300〜700kgf/cm2となるように炉内を加熱および加圧する。最高温度が2000℃未満であると、高密度化が不十分となる。一方、最高温度が2400℃を超えると、粉体もしく成形体原料が昇華(分解)する虞があるため好ましくない。1500℃近傍〜最高温度までの昇温は2〜4時間かけて行い、最高温度で1〜3時間保持するのが好ましい。1850〜1900℃で焼結は急速に進行し、最高温度保持時間中に焼結が完了する。また加圧条件が、300kgf/cm2未満であると高密度化が不十分となり、700kgf/cm2を超えると黒鉛製の成形金型が破損することもあり、製造効率上好ましくない。圧力は異常粒が成長するのを抑えるために、300kgf/cm2〜700kgf/cm2程度で加圧するのが好ましい。
【0037】
用いる炭化ケイ素焼結体は、高密度化されていて、密度が2.9g/cm3以上、気孔率が1%以下であると好ましく、密度が3.0g/cm3以上、気孔率が0.8%以下であると特に好ましい。高密度化された炭化ケイ素焼結体を用いると、得られる炭化ケイ素接合体の曲げ強度、破壊強度等の力学的特性、および電気的物性が向上する。また、高密度化された炭化ケイ素焼結体を用いると、構成粒子が小粒化されているので汚染性の点でも好ましい。一方、低密度の、例えば多孔性の炭化ケイ素焼結体を用いると、炭化ケイ素接合体の耐熱性、耐酸化性、耐薬品性、および機械的強度が劣り、また接合強度が不十分となる場合もある。
【0038】
炭化ケイ素焼結体を高密度化する方法として、焼結工程に先立って予め成形工程を実施する方法がある。この成形工程は、焼結工程と比較して低温低圧で行われるものである。この焼結工程を実施すると、嵩のある粉体を予めコンパクト(小容量化)にできるので、この工程を何度も繰り返すことによって、大型の成形体が製造しやすくなる。焼結工程に先立って予め実施される成形工程の諸条件の一例を以下に示す。炭化ケイ素粉末と非金属系焼結助剤とを、均質に混合して得られた原料粉体を成形金型内に配置し、温度80℃〜300℃、好ましくは120℃〜140℃、圧力50kgf/cm2〜100kgf/cm2で5〜60分間、好ましくは20〜40分間プレスして成形体を得る。加熱温度は非金属系焼結助剤の特性に応じて、適宜決定すればよい。得られる成形体の密度は、平均粒径1μm程度の粉体を用いた場合は1.8g/cm2以上となるように、また平均粒径0.5μmの粉体を用いた場合は1.5g/cm2となるようにプレスするのが好ましい。用いる成形体の密度がこの範囲であると、炭化ケイ素焼結体の高密度化が容易となるので好ましい。得られた成形体が焼結工程に用いる成形金型に適合するように、成形体に切削加工を施してもよい。
【0039】
本発明に用いる炭化ケイ素焼結体中の不純物元素(1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の元素周期表において、C、N、O、Siを除く、原子番号3以上の元素)の総含有量は5ppm以下であると、高い清浄度が要求されるプロセス、例えば、半導体製造プロセス等にも使用し得るので好ましい。より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。但し、化学的分析による不純物含有量は、実際に使用する場合の参考値としての意味を有するに過ぎない。例えば、不純物含有量は同一であっても、不純物が均一に分布しているか、局所的に偏在しているかによってその炭化ケイ素接合体に対する汚染性の評価は異なる場合もある。尚、以上に具体的に例示した材料、および例示した焼結方法を用いれば、不純物含有量1ppm以下の炭化ケイ素焼結体が得られる。また、炭化ケイ素焼結体の不純物元素含有量を減少させるには、用いる原料(例えば、炭化ケイ素粉末と非金属系焼結助剤)、および不活性ガスに含まれる不純物元素含有量を1ppm以下にしたり、焼結時間、温度等、焼結の諸条件を調整して不純物を除去する方法等が挙げられる。尚、ここでいう不純物元素とは、前述と同様であり、1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の周期律表における、原子番号3以上(但し、C、N、O、Si、を除く。)の元素をいう。
【0040】
本発明に用いる炭化ケイ素焼結体の、その他の物性値は、室温における曲げ強度550〜800kgf/mm2、ヤング率3.5×104〜4.5×104 、ビッカース硬度550〜800kgf/mm2 、ポアソン比0.14〜0.21、熱膨張係数3.8×10-6〜4.2×10-6l/℃、熱伝導率150W/m・K以上、比熱0.15〜0.18cal/g・℃、耐熱衝撃性500〜700ΔT℃、比抵抗1Ω・cmであると、得られる炭化ケイ素接合体の諸特性が良好となるので好ましい。尚、本発明の炭化ケイ素焼結体として、本発明者等の特願平9−041048号明細書に記載の炭化ケイ素焼結体を好適に使用することができる。
【0041】
また、炭化ケイ素焼結体の接合する面は、密着性の観点から滑らかであると好ましく、具体的には、接合する面の表面粗さRaは0.5μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。炭化ケイ素焼結体の表面粗さは、メッシュ200から800の砥石による研削加工またはバフ加工等を施すことによって、前述の範囲に調整することができる。
【0042】
次に、接合材として用いるシリコン金属について説明する。本発明に用いるシリコン金属は、純度98%以上のものを用いるのが好ましく、より好ましくは純度99%以上、特に好ましくは純度99.9%である。純度の低いシリコン金属を用いると、炭化ケイ素接合体中に不純物元素による共有化合物が生成し、耐火度を低下させることになる。特に、ウエハ治具等、半導体プロセス関連に用いる場合は、純度99.999%以上のものを用いるのが好ましい。用いるシリコン金属が粉体である場合は、粉体は100メッシュ以上のものが好ましい。シリコン金属の大きさが100メッシュ未満であると、接合する面がずれやすくなり、寸法精度が得られなくなる。上限値については特に制約はないが、実際に入手できるものは350メッシュ以下のものである。
【0043】
接合に用いるシリコン金属量は、得られる炭化ケイ素接合体の接合強度等に影響する。本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、以下の式(1)に従って算出される量のシリコン金属を用いると、得られる炭化ケイ素接合体の接合強度が良好となるとともに、シリコン金属の残存による接合強度の低下や、汚染は生じないことを見出した。式(1)k×{炭化ケイ素接合体の接合面表面積(cm2)}×{炭化ケイ素焼結体の遊離炭素量(%)}(g)式中、炭化ケイ素接合体の接合面表面積は、接合面の投影面でみた表面積を示すものである。例えば、2個の同一の面を有する焼結体を接合する場合は、一方の炭化ケイ素焼結体の面の投影面でみた表面積を示す。また、3個以上の炭化ケイ素焼結体を接合する場合は、炭化ケイ素焼結体のすべての接合する面の投影面でみた表面積を合計し、その1/2の面積を示すものである。式中、kは0.08〜0.12であり、実験的に求められた係数である。そのディメンジョンはg/cm2になる。
【0044】
シリコン金属は、接合される2以上の炭化ケイ素焼結体の面の間に挟持される。例えば、一方の炭化ケイ素焼結体の面にシリコン金属粉末を散布し、次にシリコン金属が散布された面上に他方の炭化ケイ素焼結体の接合する面を重ねたり、予め2以上の炭化ケイ素焼結体を所定の空間が得られるように近接して配置し(接合面同士が対向するように配置し)、その空間に金属シリコン粉末を充填すればよい。この際、特別に加圧する必要はなく、例えば、炭化ケイ素焼結体を重ねた状態で接合する場合は、炭化ケイ素焼結体の自重が負荷されているのみでも面がずれなければよい。面がずれないように、固定具で固定したり、加圧してもよい。シリコン金属を炭化ケイ素焼結体の面上に散布する方法としては、例えば、ロート等を用いて炭化ケイ素焼結体の面がシリコン金属ですべて被覆されるように散布する方法がある。
【0045】
次に、シリコン金属を挟持する炭化ケイ素焼結体は、高温加熱処理を施される。加熱処理は、非酸化性雰囲気で行うのが好ましく、真空中または窒素ガス以外の不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。用いる不活性ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガスが好ましい。不活性ガスとして窒素ガスを用いると、高温でシリコン金属と反応し、窒化ケイ素が生成してしまい、接合面が熱膨張差により剥離または破壊してしまうことがある。一方、アルゴンガスおよびヘリウムガスは、高温においても非反応性であるので、そのような問題は生じず好ましい。尚、高純度の炭化ケイ素接合体を製造したい場合は、不活性ガスも高純度のものを用いるのが好ましい。
【0046】
加熱温度は、シリコン金属の融点以上であればよく、1450℃〜2200℃が好ましい。1450℃未満ではシリコン金属が融解せず、2200℃ではシリコン金属が一部昇華する。原料としてβ型の炭化ケイ素を用いた場合は2000℃、α型を用いた場合は1800℃を上限とするのが好ましい。特に1600℃程度で接合すると、効率的に高強度な接合体を製造できるので好ましい。また、昇温を穏やかに行うと、シリコン金属と炭化ケイ素焼結体中の遊離炭素との反応が十分に進行するので好ましい。具体的には、5℃/分〜15℃/分で昇温するのが好ましく、特に10℃/分程度で行うのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(a)は実施形態にかかるヒータユニットの側面断面図である。
【0048】
図1(b)は実施形態にかかるヒータユニットの斜視図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、ヒータ1と電極2の接合方法の工程図である。
【図3】図3はヒータユニット20の昇温降温特性を示す図である。
【図4】図4はヒータユニット20の昇温特性を示す図(図3の一部拡大図)である。
【図5】図5はヒータユニット20の降温特性を示す図(図3の一部拡大図)である。
【符号の説明】
【0049】
1:ヒータ
2:電極
3:チャンバー
5:ウェハホルダー
6:熱電対
8:反射層
W:被加熱体(ウェハ)
20:ヒータユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によりヒータを昇温させる電極と、
前記電極に接続された炭化ケイ素を含む材料から構成されたヒータと、
被加熱体を保持するウェハホルダーと、
前記ヒータと前記ウェハホルダーを取り囲む、少なくとも内側表面に反射層が設けられたチャンバーと、を備えることを特徴とするヒータユニット。
【請求項2】
前記反射層の輻射率は、0.01〜0.80であることを特徴とする請求項1記載のヒータユニット。
【請求項3】
前記ヒータと前記電極は一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒータユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−156119(P2006−156119A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344706(P2004−344706)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】