ヒートスプレッダと金属板との接合方法
【課題】ヒートスプレッダと外部導出導体である金属板とをレーザ溶接することで、ヒートスプレッダ下のはんだにダメージを与えず、かつ、強固で高い信頼性を持った接合方法を提供する。
【解決手段】銅と銅−モリブデン焼結体の積層体で形成したクラッド材のヒートスプレッダ1の銅側上に外部導出導体である銅板5を配置する。レーザ出射ユニット18の照準を溶融予定個所21に合わせ、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板5とクラッド材のヒートスプレッダ1の銅を溶融して、溶融部20で固着する。このヒートスプレッダ1においては、銅−モリブデン焼結体に達する深い溶融部20を得ることができるために、高い接合強度と電気・熱抵抗に優れた溶接構造が実現できる。
【解決手段】銅と銅−モリブデン焼結体の積層体で形成したクラッド材のヒートスプレッダ1の銅側上に外部導出導体である銅板5を配置する。レーザ出射ユニット18の照準を溶融予定個所21に合わせ、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板5とクラッド材のヒートスプレッダ1の銅を溶融して、溶融部20で固着する。このヒートスプレッダ1においては、銅−モリブデン焼結体に達する深い溶融部20を得ることができるために、高い接合強度と電気・熱抵抗に優れた溶接構造が実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放熱のために半導体チップ上に固着されるヒートスプレッダと外部導出導体である金属板を固着するときのヒートスプレッダと金属板との接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力変換装置の小型化・高密度化が進んできている。電力変換装置の小型化・高密度化にしては、パッケージ内部の配線,パッケージ構造,放熱方法などを改良する必要がある。特にパワーデバイスであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)、パワーMOSFETおよびパワーバイポーラトランジスタ等の半導体チップでは、大電流化,小型化にともない、高電流密度で使用されることが多くなってきている。
【0003】
ここで問題となるのが高電流密度化にともなう発熱密度の増加である。例えば、従来では定格50Aで使用していた半導体チップに、半導体チップの高性能化にともなって定格以上の電流、例えば75Aの電流を流すという使われ方が多くなってきている。逆に同じ電流を流すのであれば、半導体チップの高性能化により、チップの面積を小さくすることができる。例えば10mm□の半導体チップを1枚のウェハから100個取り出すことができたとすると、半導体チップの高性能化に伴って、その面積を30%小さなもの(約8.4mm□)とすると、同じウェハから取り出すことのできる半導体チップ個数は約142個となり、1ウェハ当たりの半導体チップの取れ数が大きくなる。このように、より小さな半導体チップで、より多くの電流を流すことができれば、1ウェハ当たりの半導体チップの取れ数増加にともない、コスト低減につながる。
【0004】
また、半導体チップの小型化は、これらの半導体チップを複数個組み合わせて構成される半導体パッケージのサイズを小さくできるメリットもある。これらのことから、同じ定格電流でも、より小さなチップが嗜好される傾向が強く、結果として高発熱密度化が進んできている現状がある。
【0005】
IGBTやFWD等のパワー半導体素子では、動作温度の上限を125℃としている場合が多い。しかしながらチップの小型化や高電流密度化に伴って発熱密度が増加し、従来のアルミワイヤによる配線ではチップ表面の温度上昇を抑えることが不可能となっている。
これは、アルミワイヤが例えば直径が300μmや400μmといった細線であり、チップで発生した熱を移動することが出来ないばかりか、アルミワイヤ自身がジュール発熱により発熱し、場合によっては溶断してしまう問題点がある。
【0006】
片面冷却方式を取る半導体パッケージでは、半導体チップから発生した熱は半導体チップの下面からしか放熱が出来ない。半導体パッケージ内には、絶縁保護のためにシリコーン系の封止樹脂が充填されており、半導体チップの上面はこの封止樹脂で覆われている。シリコーン系封止樹脂の熱伝導率は0.1〜0.2W/mK程度であり、この構成では半導体チップ上面からの放熱は期待できない。
【0007】
このような問題点に対し、半導体チップ上面から効率的に熱を逃がす方法として、図6 に示すように、半導体チップ、ここではIGBTチップ上面に金属製のヒートスプレッダを熱伝導性樹脂あるいははんだ材により接合し、最も高温となるチップ中央部の熱をチップ周辺に拡散して最高温度を下げる方法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図7は、従来のIGBTモジュールの要部断面図である。セラミクス51の裏面に裏面銅箔52をを固着し、表面にエミッタ用導体パターン53とコレクタ用導体パターン54およびゲート用導体パターン55を固着した導電パターン月絶縁基板50と、このコレクタ用導体パターン54上にIGBTチップ56をはんだ60により固着し、このIGBTチップ56上面にヒートスプレッダ62をはんだ59により固着し、このヒートスプレッダ62とエミッタ用導体パターン53をアルミワイヤ63で接続し、IGBTチップ56上のゲートパッド58と、ゲート用導体パターン55の間をアルミワイヤ61で接続する。
【0009】
また、インバータ動作をさせるには、この他にダイオードが必要であるが、本特許での説明では簡略化のため省略してある。また、図7に示した構造のものは、PPS(ポリ・フェニレン・サルファイド)又はPBT(ポリ・ブチレン・テレフタレート)などの樹脂ケース内に収納され、さらにその中に素子保護としてシリコーン樹脂が充填される。
【0010】
図8に別の従来のIGBTモジュールの要部断面図を示す。ヒートスプレッダ62上のアルミワイヤ61を、銅やアルミニウムなどの金属板64としたものである。アルミワイヤ61を金属板64とすることで、配線抵抗の低減,配線のジュール発熱の低減,半導体チップから発生した熱の移動が可能となる。
【0011】
このヒートスプレッダ62と金属板64との接合方法として、導電性接着剤による接合、はんだ材による接合、超音波による直接接合などが考えられる。
【0012】
また、特許文献2には、半導体チップ上にヒートスプレッダ(導電性の良い金属板)が超音波溶接で接合されていることが記されている。
【0013】
また、特許文献3には、半導体素子に熱的に接続されたヒートスプレッダをレーザ溶接によりプリント配線基板に溶着させることやヒートスプレッダにNiめっきを施すことが記載されている。
【0014】
また、特許文献4には、銅合金の放熱板をリードフレームにYAGレーザで溶接することが記載されている。
【0015】
また、特許文献5には、銅線とタングステン製のプローブとを金属材料を介してレーザ溶接にて接合することが記載されている。
【0016】
また、特許文献6には、銅またはアルミニウムからなる低融点材料と高融点材料からなる接合クラッド板、接合クラッド板をレーザ溶接すること、接合クラッド材の用途としてヒートスプレッダに多用されることが記載されている。
【特許文献1】特開2000−307058号公報
【特許文献2】特開2004−96135号公報
【特許文献3】特開2001−168244号公報([要約] [0027])
【特許文献4】特開平11−191607号公報([要約] [請求項1])
【特許文献5】特開2000−187043号公報([請求項6])
【特許文献6】特開第3272787号公報([請求項1] [0021] [0003])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図8において、導電性接着剤では、はんだ接合や超音波接合に比べ電気抵抗が大きく、好ましくない。はんだ接合の場合、IGBTチップ56より発せられた熱がヒートスプレッダ62を介して伝導してくるため、はんだ接合が熱劣化し、接合信頼性の確保が難しくなる。また、超音波接合では、ヒートスプレッダ62上に銅板64を重ね、荷重と振動を加えるために、ヒートスプレッダ62とIGBTチップ56を接合しているはんだ59にクラックが生じる場合がある。
【0018】
これを解決するために、レーザ溶接を用いる方法があるのでそれを説明する。
【0019】
図9および図10は、銅のヒートスプレッダと銅板をレーザ溶接する様子を示す図である。これは図8のC部を示す。レーザ射出ユニット65からYAGレーザ(波長1064nm)を照射し、銅板64と銅のヒートスプレッダ62aを溶融し、銅板64と銅のヒートスプレッダ62aを固着する。
【0020】
YAGレーザを照射することにより、初めに銅板64表面から溶融が始まる。そして次第に溶融部67が深さ方向に進展していき、銅板64の下側に設置した銅のヒートスプレッダ62aに達することで銅板64と銅のヒートスプレッダ64界面が接合される。
【0021】
レーザパワー及びエネルギが低すぎた場合には、図9に示すように溶融部67が銅のヒートスプレッダ62aまで到達させることができず、接合が出来ない。また、レーザパワー及びエネルギが高すぎた場合には、図10に示すように銅板64と銅のヒートスプレッダ62aを貫通してしまい、接合が出来ない。
【0022】
一方、半導体チップの熱膨張係数と銅などの高熱伝導材からなるヒートスプレッダの熱膨張係数との差異により、冷熱繰り返し環境において、はんだに繰り返し応力が働き、はんだ部にクラックが生じてしまう問題点がある。
【0023】
図11にヒートスプレッダの接合構造における、冷熱繰り返し環境でのIGBTチップ及びヒートスプレッダの伸縮挙動を示す図であり、同図(a)は高温時の模式図、同図(b)は低温時の模式図である。同図(a)においては、IGBTチップ56に比べ銅のヒートスプレッダ62aの熱膨張係数の方が大きいため、銅のヒートスプレッダ62aにより左右に引っ張れる形となる。同図(b)においては、反対に銅のヒートスプレッダ62aにより中央に引っ張られる形となる。IGBTモジュールの信頼性試験においては、高温側は125℃、低温側は−40℃の温度条件にて、数百サイクルの繰り返し試験が実施されている。この繰り返し応力によりはんだ59が劣化し、最も応力が大きい箇所からクラックが生じてきてしまう。
【0024】
具体的には、シリコンの熱膨張係数は約3×10−6/℃であり、銅の熱膨張係数は16.5×10−6/℃である。これらの熱膨張係数の違いにより、IGBTチップ56と銅のヒートスプレッダ62aとを固着するはんだ59にストレスが加わる。
【0025】
このストレスで発生したクラックが進展した場合、IGBTチップ56からの電流経路が狭まり、配線抵抗増加,導通不良に発展するという不都合が生じる。
【0026】
このようなことから、ヒートスプレッダ62の材質として、熱膨張係数がシリコンに近いモリブデン(熱膨張係数は5.1×10−6/℃)やタングステン(同4.5×10−6/℃)、あるいは銅−モリブデン焼結体(同7〜14×10−6/℃)や銅−タングステン焼結体(同6〜12×10−6/℃)などの低熱膨張係数の金属または焼結体を用いることにより、IGBTチップ56と銅のヒートスプレッダ62a間のはんだ56に加わる熱ストレスを低減することが可能となる。
【0027】
つぎに、ヒートスプレッダ62とIGBTチップ56との熱膨張係数の差を縮めるためにヒートスプレッダ材として銅−モリブデン焼結体を用いた場合について説明する。
【0028】
図12および図13は、銅板と銅−モリブデン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図である。銅板64の表面にレーザ射出ユニット65から照射されたYAGレーザ66のエネルギにより銅板64が溶融しはじめ、照射時間とともにその溶融部67が銅−モリブデン焼結体62bの表面に近づいていく。しかし、図12に示すように、この溶融部67は銅−モリブデン焼結体62bの表面で停止するか、多少入り込んだ状態としかならない。これは、銅と銅―モリブデン焼結体62bの融点に大きな差があるためである。すなわち、銅の融点は1083℃であるが、モリブデンの融点は2620℃であるため、溶融部67が銅−モリブデン焼結体62b表面に達したとしても、その温度がモリブデンの融点である2620℃になっていない場合には、銅板64と銅−モリブデン焼結体62bの界面で停止してしまう。または、銅−モリブデン焼結体62bの中の銅成分だけが溶融し、溶融部67が銅−モリブデン焼結体62bに少し入り込んだ状態にしかならない。
【0029】
このような状態では、銅板64と銅−モリブデン焼結体62bとの所望の接合強度が得られない。そこで、レーザパワー及びエネルギを高くし、溶融部67を銅−モリブデン焼結体62b中に深く入り込ませようとした場合には、図13に示すように、溶融部67の一部がスパッタとして消失して消失部68が発生してしまう問題点がある。このような消失部68が発生した場合、接合強度の低下,電気・熱抵抗の増大が引き起こされ、使用できない。
【0030】
図14および図15に示すように、タングステン焼結体62cとした場合についても同様なことが起きる。すなわち、タングステンの融点は3410℃であるため、銅の融点1083℃に比べ差異がありすぎ、銅−モリブデン焼結体62bと銅板64との接合の場合よりも、接合が困難となる。
【0031】
この発明の目的は、前記の課題を解決して、ヒートスプレッダと外部導出導体である金属板とをレーザ溶接することで、ヒートスプレッダ下のはんだにダメージを与えず、かつ、強固で高い信頼性を持った接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記の目的を達成するために、半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダおよび前記金属板が銅で形成され、前記ヒートスプレッダと前記金属板とをレーザで溶接し、レーザパワー密度が0.4MW/cm2を超え、1.5MW/cm2未満であり、レーザエネルギーが50Jを超え、150J未満である接合方法とする。
【0033】
また、半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダが銅と銅−モリブデン焼結体の積層体であるクラッド材もしくは銅と銅−タングステン焼結体の積層体であるクラッド材であり、前記金属板が銅で形成され、該金属板と前記積層体であるクラッド材の銅とをレーザ溶接する接合方法とする。
【0034】
また、半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダが銅と銅−モリブデンの積層体であるクラッド材もしくは銅と銅−タングステンの積層体であるクラッド材であり、前記金属板が銅で形成され、該金属板と前記積層体であるクラッド材の銅とをレーザ溶接する接合方法とする。
【0035】
また、半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダの上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、
前記ヒートスプレッダは、モリブデン,タングステン,銅−モリブデンの焼結体,銅−タングステンの焼結体のいずれかであり、該ヒートスプレッダの少なくとも前記金属板との接合面にNiめっき膜を形成し、前記金属板が銅であり、
前記ヒートスプレッダのNiめっき膜上に前記金属板を配置し、該金属板と前記ヒートスプレッダとをレーザ溶接する接合方法とする。
【0036】
また、前記銅の表面にNiめっき膜が形成されているとよい。
【0037】
また、前記金属板に、銅に替えてアルミニウムを用いるとよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、銅のヒートスプレッダと銅板との接合をレーザ溶接し、その溶接条件を所定の条件とすることで、超音波接合のように加圧,振動を加えることが無いために、ヒートスプレッダ下のはんだ及び半導体チップにダメージを与えることが無く、高い接合信頼性を確保できる。
【0039】
また、銅―モリブデン、銅―タングステンの積層体であるクラッド材をヒートスプレッダとして用い、銅板とヒートスプレッダの銅側とをレーザ溶接し、その溶接条件を所定の条件とすることで、超音波接合のように加圧,振動を加えることが無いために、ヒートスプレッダ下のはんだ及び半導体チップにダメージを与えることが無く、高い接合信頼性を確保できる。
【0040】
さらに、半導体チップと接合するヒートスプレッダは熱膨張係数が小さいモリブデンやタングステンのため、半導体チップが実動作状態においても、ヒートスプレッダと半導体チップを固着するはんだに加わる熱ストレスを小さくできて、クラックの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1は、この発明を適用した半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部断面図、同図(b)は同図(a)のA部拡大図である。この図はIGBTモジュールの要部断面図である。
【0042】
セラミクス11の裏面に裏面銅箔12を固着し、表面にエミッタ用導体パターン13とコレクタ用導体パターン14およびゲート用導体パターン15を固着した導電パターン月絶縁基板10と、このコレクタ用導体パターン14上にIGBTチップ6をはんだ16により固着し、このIGBTチップ6上面に銅のヒートスプレッダ1をはんだ7により固着し、この銅のヒートスプレッダ1と外部導出導体である銅板5を所定の条件(詳細は後述の図2の説明を参照のこと)のYAGレーザ19をレーザ射出ユニット18から照射して
溶融し溶融部20で固着する。IGBTチップ6上のゲートパッド9と、ゲート用導体パターン15の間をアルミワイヤ17で接続する。
【0043】
また、インバータ動作をさせるには、この他にダイオードが必要であるが、本特許での説明では簡略化のため省略してある。また、図1に示した構造のものは、PPS(ポリ・フェニレン・サルファイド)又はPBT(ポリ・ブチレン・テレフタレート)などの樹脂ケース内に収納され、さらにその中に素子保護としてシリコーン樹脂が充填される。
【実施例1】
【0044】
図2は、この発明の第1実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、同図(a)から同図(c)は工程順に示した要部工程断面図である。この図は図1(b)のB部である。
【0045】
銅のヒートスプレッダ1上に外部導出導体である銅板5を配置する(同図(a))。
つぎに、レーザ出射ユニット18の照準を溶融予定個所21に合わせる(同図(b))。
つぎに、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板6と銅のヒートスプレッダ1を溶融して、溶融部20で固着する(同図(c))。
【0046】
実験によると、銅板5の厚みが0.5mm,銅のヒートスプレッダ1の厚みが1.0mmの場合、ファイバコア径0.4mmでレーザパワー密度1.0MW/cm2,エネルギを100Jとした場合、レーザ接合ができる。また、レーザパワー密度を1.5MW/cm2kW,エネルギを100Jとした場合には、銅のヒートスプレッダ1の裏面まで溶融部20が貫通してしまい、その溶融した銅はスパッタとして消失してしまったため、接合が不可能であった。
【0047】
さらに、レーザパワー密度を0.4MW/cm2とした場合には、溶融部20は銅のヒートスプレッダ1の表面に到達できず、接合が不可能であった。そして、レーザパワー密度を1.0MW/cm2としてエネルギを50Jと低くした場合には、溶融部20の銅のヒートスプレッダ1側への溶け込みが浅く、所望の接合強度が得られなかった。また、レーザパワー密度を1.0MW/cm2としてエネルギを150Jと高くした場合には、溶融部20の銅のヒートスプレッダ1側への溶け込みが深く、所望の接合強度が得られなかった。
【0048】
そのため、銅板5の厚みが0.5mm以下、銅のヒートスプレッダ1の厚みが1.5mm以下で、レーザパワー密度を0.4Mw/cm2を超え、1.5MW/cm2未満とし、エネルギーを50Jを超え150J未満とする、適切なレーザパワーとエネルギを選定することで、所望の溶接状態を得ることができる。
【0049】
上記接合例では、外部導出導体である金属板の材質として銅を用いた場合を述べたが、これを銅合金としても同様な結果が得られる。しかしながら、銅及び銅合金のYAGレーザ(波長1064nm)の吸収率は10%程度しかないため、出射したレーザの90%程度が無駄となってしまう。そこで図3に示すように銅板5(銅及び銅合金)の表面にYAGレーザの吸収率が高いNiめっき膜22を形成した。Niめっき22は少なくともレーザ光が直接照射される部分に形成されていればよいが、より簡便に金属板(銅板5)の全面をめっきしてもよい。NiにおけるYAGレーザの吸収率は約25%であり、銅及び銅合金のそれより2.5倍の吸収率がある。これにより、銅及び銅合金表面にNiめっき膜22を形成せずにYAGレーザを照射する場合よりも低いレーザパワー及びエネルギで所望の溶接状態を得ることが可能となる。
【0050】
また、超音波接合のように、加圧,振動を加えないために、ヒートスプレッダ1下のはんだ7及びIGBTチップ6にクラックを生じさせることがない。
【0051】
この場合のNiめっき膜22の形成は、少なくともレーザ照射面に形成してあれば目的を達成することができるため、必ずしも全面に形成しなくても良い。
【0052】
しかし、銅のヒートスプレッダ1では、前記したように、温度サイクルやヒートサイクルなどの熱ストレスが印加されるとIGBTチップ6との接合部であるはんだ7にクラックが発生する。それを防止する方法をつぎの実施例で説明する。
【実施例2】
【0053】
図4は、この発明の第2実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、同図(a)から同図(c)は工程順に示した要部工程断面図である。この図は銅2aと銅−モリブデン焼結体2bの積層体で形成したクラッド材のヒートスプレッダ2上の銅板5を固着した配線構造を示す。この積層体はクラッド材と呼ばれている。
【0054】
銅2aと銅−モリブデン焼結体2bの積層体で形成したクラッド材のヒートスプレッダ2の銅2a側上に外部導出導体である銅板5を配置する(同図(a))。
つぎに、レーザ出射ユニット18の照準を溶融予定個所21に合わせる(同図(b))。
つぎに、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板5とクラッド材のヒートスプレッダ2の銅2aを溶融して、溶融部20で固着する(同図(c))。
【0055】
クラッド材のヒートスプレッダ2は、上側に銅2a、下側に銅−モリブデン焼結体2bが配置された構造である。尚、下側を銅−タングステン焼結体にしてもよい。
【0056】
図4(c)に示したように、銅板5とクラッド材のヒートスプレッダ2においては、銅−モリブデン焼結体2bに達する深い溶融部20を得ることができるために、高い接合強度と電気・熱抵抗に優れた溶接構造が実現できる。このクラッド材のヒートスプレッダ2における銅板5と銅−モリブデン焼結体2b(又は銅−タングステン焼結体)の厚さの比率は、必要とする熱膨張係数と銅溶融部の深さにより適宜決めればよい。
【0057】
また、この場合も第1実施例と同様に銅板5の表面をNiめっき膜を形成してもよい。
【実施例3】
【0058】
図5は、この発明の第3実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、同図(a)から同図(c)は工程順に示した要部工程断面図である。この図は銅3aとモリブデン3bを積層したクラッド材のヒートスプレッダ3上の配線構造を示す。この積層体はクラッド材と呼ばれているこのモリブデンをタングステンにしてもよい。
【0059】
銅3aとモリブデン3bの積層体で形成したクラッド材のヒートスプレッダ3の銅5上に外部導出導体である銅板5を配置する(同図(a))。
つぎに、レーザ出射ユニット18の照準を溶融予定個所21に合わせる(同図(b))。
つぎに、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板3aとクラッド材のヒートスプレッダ3の銅3aを溶融し、溶融部20で固着する(同図(c))。
【0060】
図5(c)はクラッド材の構成を上側に銅3a、下側にモリブデン3b(又はタングステン)とした場合であり、図4(c)で説明したことと同様な溶融部20を得ることができる。
【実施例4】
【0061】
図6は、この発明の第4実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、同図(a)から同図(c)は工程順に示した要部工程断面図である。4はモリブデンのヒートスプレッダである。少なくとも、モリブデンのヒートスプレッダ4の銅板5との接合面にNiめっき膜22を形成しておく。
【0062】
。まず、モリブデンのヒートスプレッダ4の上に外部導出導体である銅板5を配置する(同図(a))。
【0063】
つぎにレーザ出射ユニット18の照準を溶融予定箇所21に合わせる(同図(b))。
【0064】
つぎに、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板5とヒートスプレッダ4の表面のNiめっき膜22とを溶融し、溶融部20で固着する(同図(c))。
【0065】
ヒートスプレッダ4をモリブデンで形成する場合、ヒートスプレッダの金属板(銅板5)との接合面側にNiめっき膜を設けるのは次の理由による。
【0066】
即ち、金属板(銅板)とモリブデンとは融点ならびにYAGレーザの吸収率が大きく異なる。まず、融点の高いモリブデンを溶融させうるパワーでYAGレーザを照射すると、YAGレーザの照射をうけた銅は融点を大きく上回り、沸点に達すると銅が消失してしまい十分な接合が得られない。また、モリブデンの方がレーザの吸収率が高いため、照射されたレーザがモリブデンに達すると一気にパワーを吸収してしまい、モリブデンを突き抜けてしまうことがある。したがって、銅とモリブデンをレーザ溶接することは困難であり、またレーザのパワーも銅を溶融させうる程度に設定せざるを得ない。
【0067】
Niはモリブデンほどレーザの吸収率が高くなく、また融点も高くないので、モリブデンの表面にNiめっき膜を設けておき、Niめっき膜に達するパワーでレーザを照射することにより、銅とNiが溶融して結合層を形成することができる。
【0068】
上記において、モリブデンのヒートスプレッダを例に説明したが、モリブデンをタングステン,銅−モリブデンの焼結体,銅−タングステンの焼結体のいずれかにしてもよく、Niめっき膜を設ける理由も同様である。
【0069】
また、図4〜図6においても、前記の図3で説明したように、銅板5の表面にNiめっき膜を形成すことにより、YAGレーザの吸収率を高めることが可能である。
【0070】
尚、前記第1実施例〜第4実施例で外部導出導体である金属板を銅板で説明したが、これをアルミニウム板に替えてもよい。そのときはレーザ溶接条件の最適化が必要となるが、アルミニウムはレーザの吸収率が銅に比べて高いためレーザ照射面にNiめっき膜を形成しなくてもよい。また、レーザはYAGレーザの場合について説明したが、半導体レーザであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明を適用した半導体装置の構成図であり、(a)は要部断面図、(b)は同図(a)のA部拡大図
【図2】この発明の第1実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、(a)から(c)は工程順に示した要部工程断面図
【図3】銅表面にNiめっき膜22を形成したヒートスプレッダの要部断面図
【図4】この発明の第2実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、(a)から(c)は工程順に示した要部工程断面図
【図5】この発明の第3実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、(a)から(c)は工程順に示した要部工程断面図
【図6】この発明の第4実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、(a)から(c)は工程順に示した要部工程断面図
【図7】従来のIGBTモジュールの要部断面図
【図8】別の従来のIGBTモジュールの要部断面図
【図9】銅のヒートスプレッダと銅板をレーザ溶接する様子を示す図
【図10】銅のヒートスプレッダと銅板をレーザ溶接する様子を示す図
【図11】ヒートスプレッダの接合構造における、冷熱繰り返し環境でのIGBTチップ及びヒートスプレッダの伸縮挙動を示す図であり、(a)は高温時の模式図、(b)は低温時の模式図
【図12】銅板と銅−モリブデン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図
【図13】銅板と銅−モリブデン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図
【図14】銅板とタングステン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図
【図15】銅板とタングステン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図
【符号の説明】
【0072】
1 銅のヒートスプレッダ
2 クラッド材のヒートスプレッダ
2a 銅
2b 銅−モリブデン焼結体
3 クラッド材のヒートスプレッダ/モリブデン
3a 銅
3b モリブデン
4 ヒートスプレッダ
5 銅板
6 IGBTチップ
7 はんだ
8 エミッタ電極
9 ゲートパッド
10 導電パターン付き絶縁基板
11 セラミクス
12 裏面銅箔
13 エミッタ用導体パターン
14 コレクタ用導体パターン
15 ゲート用導電パターン
16 はんだ
17 アルミワイヤ
18 レーザ出射ユニット
19 YAGレーザ
20 溶融部
21 溶融予定個所
22 Niめっき膜
【技術分野】
【0001】
この発明は、放熱のために半導体チップ上に固着されるヒートスプレッダと外部導出導体である金属板を固着するときのヒートスプレッダと金属板との接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力変換装置の小型化・高密度化が進んできている。電力変換装置の小型化・高密度化にしては、パッケージ内部の配線,パッケージ構造,放熱方法などを改良する必要がある。特にパワーデバイスであるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)、パワーMOSFETおよびパワーバイポーラトランジスタ等の半導体チップでは、大電流化,小型化にともない、高電流密度で使用されることが多くなってきている。
【0003】
ここで問題となるのが高電流密度化にともなう発熱密度の増加である。例えば、従来では定格50Aで使用していた半導体チップに、半導体チップの高性能化にともなって定格以上の電流、例えば75Aの電流を流すという使われ方が多くなってきている。逆に同じ電流を流すのであれば、半導体チップの高性能化により、チップの面積を小さくすることができる。例えば10mm□の半導体チップを1枚のウェハから100個取り出すことができたとすると、半導体チップの高性能化に伴って、その面積を30%小さなもの(約8.4mm□)とすると、同じウェハから取り出すことのできる半導体チップ個数は約142個となり、1ウェハ当たりの半導体チップの取れ数が大きくなる。このように、より小さな半導体チップで、より多くの電流を流すことができれば、1ウェハ当たりの半導体チップの取れ数増加にともない、コスト低減につながる。
【0004】
また、半導体チップの小型化は、これらの半導体チップを複数個組み合わせて構成される半導体パッケージのサイズを小さくできるメリットもある。これらのことから、同じ定格電流でも、より小さなチップが嗜好される傾向が強く、結果として高発熱密度化が進んできている現状がある。
【0005】
IGBTやFWD等のパワー半導体素子では、動作温度の上限を125℃としている場合が多い。しかしながらチップの小型化や高電流密度化に伴って発熱密度が増加し、従来のアルミワイヤによる配線ではチップ表面の温度上昇を抑えることが不可能となっている。
これは、アルミワイヤが例えば直径が300μmや400μmといった細線であり、チップで発生した熱を移動することが出来ないばかりか、アルミワイヤ自身がジュール発熱により発熱し、場合によっては溶断してしまう問題点がある。
【0006】
片面冷却方式を取る半導体パッケージでは、半導体チップから発生した熱は半導体チップの下面からしか放熱が出来ない。半導体パッケージ内には、絶縁保護のためにシリコーン系の封止樹脂が充填されており、半導体チップの上面はこの封止樹脂で覆われている。シリコーン系封止樹脂の熱伝導率は0.1〜0.2W/mK程度であり、この構成では半導体チップ上面からの放熱は期待できない。
【0007】
このような問題点に対し、半導体チップ上面から効率的に熱を逃がす方法として、図6 に示すように、半導体チップ、ここではIGBTチップ上面に金属製のヒートスプレッダを熱伝導性樹脂あるいははんだ材により接合し、最も高温となるチップ中央部の熱をチップ周辺に拡散して最高温度を下げる方法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図7は、従来のIGBTモジュールの要部断面図である。セラミクス51の裏面に裏面銅箔52をを固着し、表面にエミッタ用導体パターン53とコレクタ用導体パターン54およびゲート用導体パターン55を固着した導電パターン月絶縁基板50と、このコレクタ用導体パターン54上にIGBTチップ56をはんだ60により固着し、このIGBTチップ56上面にヒートスプレッダ62をはんだ59により固着し、このヒートスプレッダ62とエミッタ用導体パターン53をアルミワイヤ63で接続し、IGBTチップ56上のゲートパッド58と、ゲート用導体パターン55の間をアルミワイヤ61で接続する。
【0009】
また、インバータ動作をさせるには、この他にダイオードが必要であるが、本特許での説明では簡略化のため省略してある。また、図7に示した構造のものは、PPS(ポリ・フェニレン・サルファイド)又はPBT(ポリ・ブチレン・テレフタレート)などの樹脂ケース内に収納され、さらにその中に素子保護としてシリコーン樹脂が充填される。
【0010】
図8に別の従来のIGBTモジュールの要部断面図を示す。ヒートスプレッダ62上のアルミワイヤ61を、銅やアルミニウムなどの金属板64としたものである。アルミワイヤ61を金属板64とすることで、配線抵抗の低減,配線のジュール発熱の低減,半導体チップから発生した熱の移動が可能となる。
【0011】
このヒートスプレッダ62と金属板64との接合方法として、導電性接着剤による接合、はんだ材による接合、超音波による直接接合などが考えられる。
【0012】
また、特許文献2には、半導体チップ上にヒートスプレッダ(導電性の良い金属板)が超音波溶接で接合されていることが記されている。
【0013】
また、特許文献3には、半導体素子に熱的に接続されたヒートスプレッダをレーザ溶接によりプリント配線基板に溶着させることやヒートスプレッダにNiめっきを施すことが記載されている。
【0014】
また、特許文献4には、銅合金の放熱板をリードフレームにYAGレーザで溶接することが記載されている。
【0015】
また、特許文献5には、銅線とタングステン製のプローブとを金属材料を介してレーザ溶接にて接合することが記載されている。
【0016】
また、特許文献6には、銅またはアルミニウムからなる低融点材料と高融点材料からなる接合クラッド板、接合クラッド板をレーザ溶接すること、接合クラッド材の用途としてヒートスプレッダに多用されることが記載されている。
【特許文献1】特開2000−307058号公報
【特許文献2】特開2004−96135号公報
【特許文献3】特開2001−168244号公報([要約] [0027])
【特許文献4】特開平11−191607号公報([要約] [請求項1])
【特許文献5】特開2000−187043号公報([請求項6])
【特許文献6】特開第3272787号公報([請求項1] [0021] [0003])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図8において、導電性接着剤では、はんだ接合や超音波接合に比べ電気抵抗が大きく、好ましくない。はんだ接合の場合、IGBTチップ56より発せられた熱がヒートスプレッダ62を介して伝導してくるため、はんだ接合が熱劣化し、接合信頼性の確保が難しくなる。また、超音波接合では、ヒートスプレッダ62上に銅板64を重ね、荷重と振動を加えるために、ヒートスプレッダ62とIGBTチップ56を接合しているはんだ59にクラックが生じる場合がある。
【0018】
これを解決するために、レーザ溶接を用いる方法があるのでそれを説明する。
【0019】
図9および図10は、銅のヒートスプレッダと銅板をレーザ溶接する様子を示す図である。これは図8のC部を示す。レーザ射出ユニット65からYAGレーザ(波長1064nm)を照射し、銅板64と銅のヒートスプレッダ62aを溶融し、銅板64と銅のヒートスプレッダ62aを固着する。
【0020】
YAGレーザを照射することにより、初めに銅板64表面から溶融が始まる。そして次第に溶融部67が深さ方向に進展していき、銅板64の下側に設置した銅のヒートスプレッダ62aに達することで銅板64と銅のヒートスプレッダ64界面が接合される。
【0021】
レーザパワー及びエネルギが低すぎた場合には、図9に示すように溶融部67が銅のヒートスプレッダ62aまで到達させることができず、接合が出来ない。また、レーザパワー及びエネルギが高すぎた場合には、図10に示すように銅板64と銅のヒートスプレッダ62aを貫通してしまい、接合が出来ない。
【0022】
一方、半導体チップの熱膨張係数と銅などの高熱伝導材からなるヒートスプレッダの熱膨張係数との差異により、冷熱繰り返し環境において、はんだに繰り返し応力が働き、はんだ部にクラックが生じてしまう問題点がある。
【0023】
図11にヒートスプレッダの接合構造における、冷熱繰り返し環境でのIGBTチップ及びヒートスプレッダの伸縮挙動を示す図であり、同図(a)は高温時の模式図、同図(b)は低温時の模式図である。同図(a)においては、IGBTチップ56に比べ銅のヒートスプレッダ62aの熱膨張係数の方が大きいため、銅のヒートスプレッダ62aにより左右に引っ張れる形となる。同図(b)においては、反対に銅のヒートスプレッダ62aにより中央に引っ張られる形となる。IGBTモジュールの信頼性試験においては、高温側は125℃、低温側は−40℃の温度条件にて、数百サイクルの繰り返し試験が実施されている。この繰り返し応力によりはんだ59が劣化し、最も応力が大きい箇所からクラックが生じてきてしまう。
【0024】
具体的には、シリコンの熱膨張係数は約3×10−6/℃であり、銅の熱膨張係数は16.5×10−6/℃である。これらの熱膨張係数の違いにより、IGBTチップ56と銅のヒートスプレッダ62aとを固着するはんだ59にストレスが加わる。
【0025】
このストレスで発生したクラックが進展した場合、IGBTチップ56からの電流経路が狭まり、配線抵抗増加,導通不良に発展するという不都合が生じる。
【0026】
このようなことから、ヒートスプレッダ62の材質として、熱膨張係数がシリコンに近いモリブデン(熱膨張係数は5.1×10−6/℃)やタングステン(同4.5×10−6/℃)、あるいは銅−モリブデン焼結体(同7〜14×10−6/℃)や銅−タングステン焼結体(同6〜12×10−6/℃)などの低熱膨張係数の金属または焼結体を用いることにより、IGBTチップ56と銅のヒートスプレッダ62a間のはんだ56に加わる熱ストレスを低減することが可能となる。
【0027】
つぎに、ヒートスプレッダ62とIGBTチップ56との熱膨張係数の差を縮めるためにヒートスプレッダ材として銅−モリブデン焼結体を用いた場合について説明する。
【0028】
図12および図13は、銅板と銅−モリブデン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図である。銅板64の表面にレーザ射出ユニット65から照射されたYAGレーザ66のエネルギにより銅板64が溶融しはじめ、照射時間とともにその溶融部67が銅−モリブデン焼結体62bの表面に近づいていく。しかし、図12に示すように、この溶融部67は銅−モリブデン焼結体62bの表面で停止するか、多少入り込んだ状態としかならない。これは、銅と銅―モリブデン焼結体62bの融点に大きな差があるためである。すなわち、銅の融点は1083℃であるが、モリブデンの融点は2620℃であるため、溶融部67が銅−モリブデン焼結体62b表面に達したとしても、その温度がモリブデンの融点である2620℃になっていない場合には、銅板64と銅−モリブデン焼結体62bの界面で停止してしまう。または、銅−モリブデン焼結体62bの中の銅成分だけが溶融し、溶融部67が銅−モリブデン焼結体62bに少し入り込んだ状態にしかならない。
【0029】
このような状態では、銅板64と銅−モリブデン焼結体62bとの所望の接合強度が得られない。そこで、レーザパワー及びエネルギを高くし、溶融部67を銅−モリブデン焼結体62b中に深く入り込ませようとした場合には、図13に示すように、溶融部67の一部がスパッタとして消失して消失部68が発生してしまう問題点がある。このような消失部68が発生した場合、接合強度の低下,電気・熱抵抗の増大が引き起こされ、使用できない。
【0030】
図14および図15に示すように、タングステン焼結体62cとした場合についても同様なことが起きる。すなわち、タングステンの融点は3410℃であるため、銅の融点1083℃に比べ差異がありすぎ、銅−モリブデン焼結体62bと銅板64との接合の場合よりも、接合が困難となる。
【0031】
この発明の目的は、前記の課題を解決して、ヒートスプレッダと外部導出導体である金属板とをレーザ溶接することで、ヒートスプレッダ下のはんだにダメージを与えず、かつ、強固で高い信頼性を持った接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記の目的を達成するために、半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダおよび前記金属板が銅で形成され、前記ヒートスプレッダと前記金属板とをレーザで溶接し、レーザパワー密度が0.4MW/cm2を超え、1.5MW/cm2未満であり、レーザエネルギーが50Jを超え、150J未満である接合方法とする。
【0033】
また、半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダが銅と銅−モリブデン焼結体の積層体であるクラッド材もしくは銅と銅−タングステン焼結体の積層体であるクラッド材であり、前記金属板が銅で形成され、該金属板と前記積層体であるクラッド材の銅とをレーザ溶接する接合方法とする。
【0034】
また、半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダが銅と銅−モリブデンの積層体であるクラッド材もしくは銅と銅−タングステンの積層体であるクラッド材であり、前記金属板が銅で形成され、該金属板と前記積層体であるクラッド材の銅とをレーザ溶接する接合方法とする。
【0035】
また、半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダの上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、
前記ヒートスプレッダは、モリブデン,タングステン,銅−モリブデンの焼結体,銅−タングステンの焼結体のいずれかであり、該ヒートスプレッダの少なくとも前記金属板との接合面にNiめっき膜を形成し、前記金属板が銅であり、
前記ヒートスプレッダのNiめっき膜上に前記金属板を配置し、該金属板と前記ヒートスプレッダとをレーザ溶接する接合方法とする。
【0036】
また、前記銅の表面にNiめっき膜が形成されているとよい。
【0037】
また、前記金属板に、銅に替えてアルミニウムを用いるとよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、銅のヒートスプレッダと銅板との接合をレーザ溶接し、その溶接条件を所定の条件とすることで、超音波接合のように加圧,振動を加えることが無いために、ヒートスプレッダ下のはんだ及び半導体チップにダメージを与えることが無く、高い接合信頼性を確保できる。
【0039】
また、銅―モリブデン、銅―タングステンの積層体であるクラッド材をヒートスプレッダとして用い、銅板とヒートスプレッダの銅側とをレーザ溶接し、その溶接条件を所定の条件とすることで、超音波接合のように加圧,振動を加えることが無いために、ヒートスプレッダ下のはんだ及び半導体チップにダメージを与えることが無く、高い接合信頼性を確保できる。
【0040】
さらに、半導体チップと接合するヒートスプレッダは熱膨張係数が小さいモリブデンやタングステンのため、半導体チップが実動作状態においても、ヒートスプレッダと半導体チップを固着するはんだに加わる熱ストレスを小さくできて、クラックの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1は、この発明を適用した半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部断面図、同図(b)は同図(a)のA部拡大図である。この図はIGBTモジュールの要部断面図である。
【0042】
セラミクス11の裏面に裏面銅箔12を固着し、表面にエミッタ用導体パターン13とコレクタ用導体パターン14およびゲート用導体パターン15を固着した導電パターン月絶縁基板10と、このコレクタ用導体パターン14上にIGBTチップ6をはんだ16により固着し、このIGBTチップ6上面に銅のヒートスプレッダ1をはんだ7により固着し、この銅のヒートスプレッダ1と外部導出導体である銅板5を所定の条件(詳細は後述の図2の説明を参照のこと)のYAGレーザ19をレーザ射出ユニット18から照射して
溶融し溶融部20で固着する。IGBTチップ6上のゲートパッド9と、ゲート用導体パターン15の間をアルミワイヤ17で接続する。
【0043】
また、インバータ動作をさせるには、この他にダイオードが必要であるが、本特許での説明では簡略化のため省略してある。また、図1に示した構造のものは、PPS(ポリ・フェニレン・サルファイド)又はPBT(ポリ・ブチレン・テレフタレート)などの樹脂ケース内に収納され、さらにその中に素子保護としてシリコーン樹脂が充填される。
【実施例1】
【0044】
図2は、この発明の第1実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、同図(a)から同図(c)は工程順に示した要部工程断面図である。この図は図1(b)のB部である。
【0045】
銅のヒートスプレッダ1上に外部導出導体である銅板5を配置する(同図(a))。
つぎに、レーザ出射ユニット18の照準を溶融予定個所21に合わせる(同図(b))。
つぎに、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板6と銅のヒートスプレッダ1を溶融して、溶融部20で固着する(同図(c))。
【0046】
実験によると、銅板5の厚みが0.5mm,銅のヒートスプレッダ1の厚みが1.0mmの場合、ファイバコア径0.4mmでレーザパワー密度1.0MW/cm2,エネルギを100Jとした場合、レーザ接合ができる。また、レーザパワー密度を1.5MW/cm2kW,エネルギを100Jとした場合には、銅のヒートスプレッダ1の裏面まで溶融部20が貫通してしまい、その溶融した銅はスパッタとして消失してしまったため、接合が不可能であった。
【0047】
さらに、レーザパワー密度を0.4MW/cm2とした場合には、溶融部20は銅のヒートスプレッダ1の表面に到達できず、接合が不可能であった。そして、レーザパワー密度を1.0MW/cm2としてエネルギを50Jと低くした場合には、溶融部20の銅のヒートスプレッダ1側への溶け込みが浅く、所望の接合強度が得られなかった。また、レーザパワー密度を1.0MW/cm2としてエネルギを150Jと高くした場合には、溶融部20の銅のヒートスプレッダ1側への溶け込みが深く、所望の接合強度が得られなかった。
【0048】
そのため、銅板5の厚みが0.5mm以下、銅のヒートスプレッダ1の厚みが1.5mm以下で、レーザパワー密度を0.4Mw/cm2を超え、1.5MW/cm2未満とし、エネルギーを50Jを超え150J未満とする、適切なレーザパワーとエネルギを選定することで、所望の溶接状態を得ることができる。
【0049】
上記接合例では、外部導出導体である金属板の材質として銅を用いた場合を述べたが、これを銅合金としても同様な結果が得られる。しかしながら、銅及び銅合金のYAGレーザ(波長1064nm)の吸収率は10%程度しかないため、出射したレーザの90%程度が無駄となってしまう。そこで図3に示すように銅板5(銅及び銅合金)の表面にYAGレーザの吸収率が高いNiめっき膜22を形成した。Niめっき22は少なくともレーザ光が直接照射される部分に形成されていればよいが、より簡便に金属板(銅板5)の全面をめっきしてもよい。NiにおけるYAGレーザの吸収率は約25%であり、銅及び銅合金のそれより2.5倍の吸収率がある。これにより、銅及び銅合金表面にNiめっき膜22を形成せずにYAGレーザを照射する場合よりも低いレーザパワー及びエネルギで所望の溶接状態を得ることが可能となる。
【0050】
また、超音波接合のように、加圧,振動を加えないために、ヒートスプレッダ1下のはんだ7及びIGBTチップ6にクラックを生じさせることがない。
【0051】
この場合のNiめっき膜22の形成は、少なくともレーザ照射面に形成してあれば目的を達成することができるため、必ずしも全面に形成しなくても良い。
【0052】
しかし、銅のヒートスプレッダ1では、前記したように、温度サイクルやヒートサイクルなどの熱ストレスが印加されるとIGBTチップ6との接合部であるはんだ7にクラックが発生する。それを防止する方法をつぎの実施例で説明する。
【実施例2】
【0053】
図4は、この発明の第2実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、同図(a)から同図(c)は工程順に示した要部工程断面図である。この図は銅2aと銅−モリブデン焼結体2bの積層体で形成したクラッド材のヒートスプレッダ2上の銅板5を固着した配線構造を示す。この積層体はクラッド材と呼ばれている。
【0054】
銅2aと銅−モリブデン焼結体2bの積層体で形成したクラッド材のヒートスプレッダ2の銅2a側上に外部導出導体である銅板5を配置する(同図(a))。
つぎに、レーザ出射ユニット18の照準を溶融予定個所21に合わせる(同図(b))。
つぎに、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板5とクラッド材のヒートスプレッダ2の銅2aを溶融して、溶融部20で固着する(同図(c))。
【0055】
クラッド材のヒートスプレッダ2は、上側に銅2a、下側に銅−モリブデン焼結体2bが配置された構造である。尚、下側を銅−タングステン焼結体にしてもよい。
【0056】
図4(c)に示したように、銅板5とクラッド材のヒートスプレッダ2においては、銅−モリブデン焼結体2bに達する深い溶融部20を得ることができるために、高い接合強度と電気・熱抵抗に優れた溶接構造が実現できる。このクラッド材のヒートスプレッダ2における銅板5と銅−モリブデン焼結体2b(又は銅−タングステン焼結体)の厚さの比率は、必要とする熱膨張係数と銅溶融部の深さにより適宜決めればよい。
【0057】
また、この場合も第1実施例と同様に銅板5の表面をNiめっき膜を形成してもよい。
【実施例3】
【0058】
図5は、この発明の第3実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、同図(a)から同図(c)は工程順に示した要部工程断面図である。この図は銅3aとモリブデン3bを積層したクラッド材のヒートスプレッダ3上の配線構造を示す。この積層体はクラッド材と呼ばれているこのモリブデンをタングステンにしてもよい。
【0059】
銅3aとモリブデン3bの積層体で形成したクラッド材のヒートスプレッダ3の銅5上に外部導出導体である銅板5を配置する(同図(a))。
つぎに、レーザ出射ユニット18の照準を溶融予定個所21に合わせる(同図(b))。
つぎに、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板3aとクラッド材のヒートスプレッダ3の銅3aを溶融し、溶融部20で固着する(同図(c))。
【0060】
図5(c)はクラッド材の構成を上側に銅3a、下側にモリブデン3b(又はタングステン)とした場合であり、図4(c)で説明したことと同様な溶融部20を得ることができる。
【実施例4】
【0061】
図6は、この発明の第4実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、同図(a)から同図(c)は工程順に示した要部工程断面図である。4はモリブデンのヒートスプレッダである。少なくとも、モリブデンのヒートスプレッダ4の銅板5との接合面にNiめっき膜22を形成しておく。
【0062】
。まず、モリブデンのヒートスプレッダ4の上に外部導出導体である銅板5を配置する(同図(a))。
【0063】
つぎにレーザ出射ユニット18の照準を溶融予定箇所21に合わせる(同図(b))。
【0064】
つぎに、レーザ出射ユニット18によりYAGレーザ19を照射し、銅板5とヒートスプレッダ4の表面のNiめっき膜22とを溶融し、溶融部20で固着する(同図(c))。
【0065】
ヒートスプレッダ4をモリブデンで形成する場合、ヒートスプレッダの金属板(銅板5)との接合面側にNiめっき膜を設けるのは次の理由による。
【0066】
即ち、金属板(銅板)とモリブデンとは融点ならびにYAGレーザの吸収率が大きく異なる。まず、融点の高いモリブデンを溶融させうるパワーでYAGレーザを照射すると、YAGレーザの照射をうけた銅は融点を大きく上回り、沸点に達すると銅が消失してしまい十分な接合が得られない。また、モリブデンの方がレーザの吸収率が高いため、照射されたレーザがモリブデンに達すると一気にパワーを吸収してしまい、モリブデンを突き抜けてしまうことがある。したがって、銅とモリブデンをレーザ溶接することは困難であり、またレーザのパワーも銅を溶融させうる程度に設定せざるを得ない。
【0067】
Niはモリブデンほどレーザの吸収率が高くなく、また融点も高くないので、モリブデンの表面にNiめっき膜を設けておき、Niめっき膜に達するパワーでレーザを照射することにより、銅とNiが溶融して結合層を形成することができる。
【0068】
上記において、モリブデンのヒートスプレッダを例に説明したが、モリブデンをタングステン,銅−モリブデンの焼結体,銅−タングステンの焼結体のいずれかにしてもよく、Niめっき膜を設ける理由も同様である。
【0069】
また、図4〜図6においても、前記の図3で説明したように、銅板5の表面にNiめっき膜を形成すことにより、YAGレーザの吸収率を高めることが可能である。
【0070】
尚、前記第1実施例〜第4実施例で外部導出導体である金属板を銅板で説明したが、これをアルミニウム板に替えてもよい。そのときはレーザ溶接条件の最適化が必要となるが、アルミニウムはレーザの吸収率が銅に比べて高いためレーザ照射面にNiめっき膜を形成しなくてもよい。また、レーザはYAGレーザの場合について説明したが、半導体レーザであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明を適用した半導体装置の構成図であり、(a)は要部断面図、(b)は同図(a)のA部拡大図
【図2】この発明の第1実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、(a)から(c)は工程順に示した要部工程断面図
【図3】銅表面にNiめっき膜22を形成したヒートスプレッダの要部断面図
【図4】この発明の第2実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、(a)から(c)は工程順に示した要部工程断面図
【図5】この発明の第3実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、(a)から(c)は工程順に示した要部工程断面図
【図6】この発明の第4実施例のヒートスプレッダと金属板との接合方法を示す工程図であり、(a)から(c)は工程順に示した要部工程断面図
【図7】従来のIGBTモジュールの要部断面図
【図8】別の従来のIGBTモジュールの要部断面図
【図9】銅のヒートスプレッダと銅板をレーザ溶接する様子を示す図
【図10】銅のヒートスプレッダと銅板をレーザ溶接する様子を示す図
【図11】ヒートスプレッダの接合構造における、冷熱繰り返し環境でのIGBTチップ及びヒートスプレッダの伸縮挙動を示す図であり、(a)は高温時の模式図、(b)は低温時の模式図
【図12】銅板と銅−モリブデン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図
【図13】銅板と銅−モリブデン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図
【図14】銅板とタングステン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図
【図15】銅板とタングステン焼結体とをYAGレーザにて溶接した要部断面図
【符号の説明】
【0072】
1 銅のヒートスプレッダ
2 クラッド材のヒートスプレッダ
2a 銅
2b 銅−モリブデン焼結体
3 クラッド材のヒートスプレッダ/モリブデン
3a 銅
3b モリブデン
4 ヒートスプレッダ
5 銅板
6 IGBTチップ
7 はんだ
8 エミッタ電極
9 ゲートパッド
10 導電パターン付き絶縁基板
11 セラミクス
12 裏面銅箔
13 エミッタ用導体パターン
14 コレクタ用導体パターン
15 ゲート用導電パターン
16 はんだ
17 アルミワイヤ
18 レーザ出射ユニット
19 YAGレーザ
20 溶融部
21 溶融予定個所
22 Niめっき膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダおよび前記金属板が銅で形成され、前記ヒートスプレッダと前記金属板とをレーザで溶接し、レーザパワー密度が0.4MW/cm2を超え、1.5MW/cm2未満であり、レーザエネルギーが50Jを超え、150J未満であることを特徴とするヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項2】
半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダが銅と銅−モリブデン焼結体の積層体であるクラッド材もしくは銅と銅−タングステン焼結体の積層体であるクラッド材であり、前記金属板が銅で形成され、該金属板と前記積層体であるクラッド材の銅とをレーザ溶接することを特徴とするヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項3】
半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダが銅と銅−モリブデンの積層体であるクラッド材もしくは銅と銅−タングステンの積層体であるクラッド材であり、前記金属板が銅で形成され、該金属板と前記積層体であるクラッド材の銅とをレーザ溶接することを特徴とするヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項4】
半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダの上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、
前記ヒートスプレッダは、モリブデン,タングステン,銅−モリブデンの焼結体,銅−タングステンの焼結体のいずれかであり、該ヒートスプレッダの少なくとも前記金属板との接合面にNiめっき膜を形成し、前記金属板が銅であり、
前記ヒートスプレッダのNiめっき膜上に前記金属板を配置し、該金属板と前記ヒートスプレッダとをレーザ溶接することを特徴とするヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項5】
前記銅の表面にNiめっき膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項6】
前記金属板に、銅に替えてアルミニウムを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項1】
半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダおよび前記金属板が銅で形成され、前記ヒートスプレッダと前記金属板とをレーザで溶接し、レーザパワー密度が0.4MW/cm2を超え、1.5MW/cm2未満であり、レーザエネルギーが50Jを超え、150J未満であることを特徴とするヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項2】
半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダが銅と銅−モリブデン焼結体の積層体であるクラッド材もしくは銅と銅−タングステン焼結体の積層体であるクラッド材であり、前記金属板が銅で形成され、該金属板と前記積層体であるクラッド材の銅とをレーザ溶接することを特徴とするヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項3】
半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダ上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、前記ヒートスプレッダが銅と銅−モリブデンの積層体であるクラッド材もしくは銅と銅−タングステンの積層体であるクラッド材であり、前記金属板が銅で形成され、該金属板と前記積層体であるクラッド材の銅とをレーザ溶接することを特徴とするヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項4】
半導体チップ上に固着材を介して固着されたヒートスプレッダの上に金属板を接合するヒートスプレッダと金属板との接合方法において、
前記ヒートスプレッダは、モリブデン,タングステン,銅−モリブデンの焼結体,銅−タングステンの焼結体のいずれかであり、該ヒートスプレッダの少なくとも前記金属板との接合面にNiめっき膜を形成し、前記金属板が銅であり、
前記ヒートスプレッダのNiめっき膜上に前記金属板を配置し、該金属板と前記ヒートスプレッダとをレーザ溶接することを特徴とするヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項5】
前記銅の表面にNiめっき膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【請求項6】
前記金属板に、銅に替えてアルミニウムを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒートスプレッダと金属板との接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−165690(P2007−165690A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361624(P2005−361624)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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