説明

ピストン往復内燃機関のための給気制御装置

【課題】ピストン往復内燃機関特にガス機関のための特に経済的な運転を可能とする給気制御装置を提供する。
【解決手段】電動機282,284によって作動される別途弁278,272を給気路14内の吸気弁の直近上流に配置し、別途弁は電動機によって作動される軸部276と該軸部と固定結合された少なくとも2閉鎖体278とを備えた弁体274を有し、軸部は給気路を垂直に貫通して電動機により垂直方向に摺動可能とし、閉鎖体を軸部を取巻く円盤として形成し、吸気路遮断面で見て蛇行状に形成された隔壁の弁穴272と当接可能とし、制御器を設け、該制御器により少なくとも1パワー要求素子と相関させてパワー要求が減少するにしたがって弁の閉鎖時点を吸気弁の閉鎖時点よりさらに早期にずらすように電動機を制御するように構成し、これによって、エンジン負荷は別途弁によってのみ制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピストン往復内燃機関、特にガス機関のための給気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストン往復内燃機関、特にスロットル弁制御されて4サイクル方式で作動するピストン往復内燃機関は負荷が減少すると共に比消費量すなわち放出される実効単位当たりの消費量がますます増加するという事情の理由の一つはスロットル損失にある。スロットル弁の下流にはスロットル弁と吸気弁との間の吸気管容積中にスロットル弁の絞りが増すにつれて増強された低圧が形成され、この低圧は吸気弁が閉じている間に解消される。したがって低圧の作用を受けた容積中に貯えられたエネルギーは有効エネルギーとしては失われることとなる。吸気行程におけるピストンの下降運動の間に生み出された低圧はP-V線図において損失と結びついた給排気交換ループの原因となる。
【0003】
US 5,105,784には吸気弁の上流に回転弁が配置され、該弁の回転体は軸方向において円周角が拡大するように形成された貫通穴を有するように構成された内燃機関が記載されている。該回転体を軸方向に移動することにより前記回転弁の開放時間を変化させることができる。また前記回転体と該回転体を駆動するクランクシャフトとの間の位相位置を変化させることにより開放開始時点を変化させることができる。これにより全体としてたとえば先ず最初に前記回転体の軸方向ポジションを所望の開放時間に合わせて調節し、次いで所望の閉鎖時点が結果するように位相を調節することによって所定の開放時間と所定の閉鎖時点との調節を実現することができる。
【0004】
前記公知の回転弁はなによりも排気弁開と吸気弁開とのバルブオーバーラップ時に吸気路にシリンダから望ましくない逆流が侵入するのを回避するために利用される。その他の場合には給気制御装置は従来通りスロットル弁で作動する。
【0005】
前記公知の給気制御装置の特徴は軸方向位置と位相位置とが一般に組み合わされて変化させられなければならない点にあり、これは構造的にも制御技術的にも比較的割高なものとなる。さらに回転弁の開閉フランクの持続時間はクランクシャフトの回転数に依存していることから、高い精度が問題となる低回転数時には開閉フランクが長くなり、これによって精度に不適な影響がもたらされるだけでなく、給排気交換損失も高まることとなる。前記公知の円筒形回転弁のもう一つの特徴は該弁の開放断面積が開放時間と共に(クランク角と相関して)変化する点にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的はピストン往復内燃機関特にガス機関のための特に経済的な運転を可能とする給気制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
装置にかかわる本発明の課題を解決するための第一の方法は請求項1に記載の給気制御装置によって実現される。
【0008】
本発明の給気制御装置は請求項2、3に記載の特徴によってさらに好適に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】回転弁を前置したピストン往復内燃機関のシリンダの原理図である。
【図2】図1に示した機関の種々相違した運転相を示した図である。
【図3】回転弁を各要素に分解して示した図である。
【図4】2吸気弁を備えたシリンダにおける回転弁の断面図である。
【図5】過給方式を説明するための回転弁の基本的配置を示した図である。
【図6】相異した各種プロセス制御の作業線図である。
【図7】電動機を組込んだ回転弁の断面図である。
【図8】レジスタ過給装置を示した図である。
【図9】弁の一実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を図面を例として詳細に説明する。
【0011】
図1に示した内燃機関、たとえばガスで運転される比較的低速で回転する実用車両エンジンはシリンダ4を有し、該シリンダ内でピストン6が作動し、該ピストンはコンロッド8を経てクランクシャフト10を回転駆動する。UTおよびOTは、ピストン8が最低レベル、最高レベルになるそれぞれの位置を示している。
【0012】
前記シリンダの燃焼室12への新気の供給は吸気管14を経て行われ、吸気管14がシリンダ4に開口する吸気口16において吸気弁18が作動する。排気路22の起点となる排気口20では排気弁24が作動する。
【0013】
燃焼室12内の給気に点火するため点火プラグ26が設けられている。吸気弁18と排気弁24はクランクシャフト10により位相固定式または位相可変式に回転駆動させられる1本もしくは複数本のカムシャフトを経てそれ自体公知の方法で制御される。
【0014】
燃料(ガス)が新鮮空気に供給されて吸気管14内に所定の組成(空燃比)の可燃性新気が形成されるそれ自体公知の装置は図示されていない。
【0015】
前記内燃機関の制御には公知のようにマイクロプロセッサと当該記憶装置とを備えた制御器26が利用される。
【0016】
上述したエンジンの構造はそれ自体公知に属していることからこれ以上の説明は行わない。
【0017】
吸気管内には吸気口16のできるだけ直近上流に回転弁28が配置され、円筒として形成された該弁の回転体30は対向する2つの穴を備え、回転弁28によって互いに分離された吸気管14の上下流部分はこれらの穴によりオプショナルに互いに連結もしくは分離される。回転体30を駆動するために電動機32たとえばステップモータが設けられ、該モータは制御器26によって制御される。制御器26は複数の入力装置、とりわけアクセルペダル34と連携した入力装置を有している。その他の入力装置はクランクシャフト10の回転数ないし回転ポジションを把握するための回転数センサ、温度センサ等と連携させることができる。
【0018】
前記内燃機関はそれ自体公知の類の過給装置、たとえば排気ターボチャージャまたはメカニカルチャージャを備えているのが好適であり、これにより吸気管14内の回転弁28の上流に高圧が形成されることとなる。
【0019】
図2は前記内燃機関の種々の運転相を示している。この場合、吸気弁18と排気弁24とはたとえば吸気弁は上死点前27,5°で開放し、下死点後38,5°で閉鎖し、排気弁は下死点前57°で開放し、上死点後25°で閉鎖するように制御される。
【0020】
図2aは吸気弁18と回転弁28とが共に開いているときにピストン6が下死点前約45°まで下降運動した吸入状態を示している。図2bが示すようにピストンがさらに下降運動を行うと回転弁28が閉じ、その結果、回転弁下流の空間に低圧が生じ、これはピストンが下死点を越えて運動すると下死点後38,5°で吸気弁18が閉じるまでに損失なしに解消される。
【0021】
図2cが示すようにその後のピストンの圧縮行程に際して吸気弁18は閉じたままである。図2cに示した状態はたとえば点火が行われるポジションを表わしている。図2dに示した行程中吸気弁18と排気弁24とは閉じられているが、回転弁28はこの時から開かれる。図2eは排気行程開始時の排気弁24が開いた状態を示しており、その際、吸気弁18は閉じ、回転弁28はすでに開かれている。ピストンが上死点前27,5°のポジションに達すると吸気弁18が開き、排気弁24は上死点後25°で閉じることから、その直後に図2aに示したポジションが新たに開始されることとなる。
【0022】
図3は図示されていないシリンダヘッドに回転弁28(図1)をフランジ取付けするための集成部品をそれぞれ組み立てた状態a)と分解した状態b)で示したものである。
【0023】
ケーシング40は2つの接続フランジ42と44とを有し、そのうち一方のフランジは前記内燃機関の図示されていないシリンダヘッドに取付けることができ、他方のフランジには吸気管(図示されていない)を取付けることができる。ケーシング40は2本の貫通路46と48とを有し、該貫通路はシリンダヘッドに形成された接続穴に対応し、該接続穴にはシリンダの2吸気弁に達する互いに独立した2吸気路が開口している。
【0024】
ケーシング40には貫通路46および48と交差して貫通孔50および52が形成されている。貫通孔50と52とのそれぞれにおいて以下に述べる回転弁が作動するが、図示されているのは貫通孔50に配された回転弁のみである。
【0025】
孔50には対向する穴56と58とを有したブシュ54が嵌合挿入される。ブシュ54はケーシング40に回転阻止されて収容されている。穴56と58とは貫通路46と整合され、該貫通路の断面に対応している。
【0026】
ブシュ54には対向する穴を有した円筒形回転体60が挿入されており、図中には該穴の一方62のみが示されている。
【0027】
円筒形回転体60はブシュ54内に回転可動式に収容されており、該回転体の閉じた上端には軸ピン64が設けられており、該ピンはケーシング40にねじ留めされた上部部品68に嵌め込まれた連結カップリング66によって受け留められる。
【0028】
前記円筒形回転体はガイド中子69との間に配置されたころがり軸受け70によって誘導支持される。ガイド中子69はさらに混合気の流れを誘導しもしくはは弁内での流れの拡散もしくは流れの剥離を防止する役割を有している。このためガイド中子69は基板73を弁ケーシング40に取付ける(ねじ留めする)際にガイド中子69の貫通路76と弁ケーシング40の貫通路46,48とが正確に整合するようにして溝付きナット74により位置ずれ防止されてポジショニング固定されている。部品71,72および75(軌道盤およびねじ)はガイド中子69に接したころがり軸受け70のポジショニングに用いられる。ガイド中子表面と円筒形回転体60の内側面との間に死空間が形成されるのを回避するため、固定されているガイド中子69の外径は回転する円筒形回転体60の内径よりもごくわずかに小さいだけにすぎない。この場合、これら双方の部品(60と69)の間の隙間寸法は両部品が接触せずに回動する際に良好な封止作用が生ずるように選択されている。部品54,69,60および62が図1に示した回転弁28を形成する。
【0029】
図3から看取されるように、2つの貫通路46と48とは貫通孔50と52の内部でそれぞれ専用のステップモータで作動する回転弁によって互いに分離独立して制御され得ることから、たとえば負荷要求が僅かな場合(アクセルペダル34の操作が僅かな場合)にはシリンダの一方の吸気路は完全に閉じたままであり、これによりシリンダに供給される給気は吸気路の形成に応じ渦流(渦軸はピストンの運動方向と平行)または翻転流(渦軸はピストンの運動方向に垂直)となって流入することとなる。双方の回転弁は負荷が高まると共に双方の吸気路を通って流入する給気がますます同化するように制御され、これによってシリンダ内ないし燃焼室内の渦流形成を最適な燃焼速度/燃焼機能の点からエンジンの運転状態に適合させることができる。こうして部分負荷時に効率的な燃焼を可とするすぐれた熱力学的条件が達成され、全負荷時にもシリンダの充填が損なわれることはない。
【0030】
図4はケーシング40を一部切開して側面から眺めた図を示している。同図からケーシング40、ケーシング上部部品68、円筒形回転体60の軸ピン64ならびに連結カップリング66に載置されたステップモータ90が明白に認められる。それぞれの連結カップリング66は伝動板80を含んでおり、該伝動板にモータ軸82が回転確動式に噛み込んでいる。伝動板80はトルクを伝達するフレキシブルな部品84を経てもう一枚の伝動板86と結合されており、該伝動板は円筒形回転体60の軸ピン64に回転確動式ないし相補嵌合式に噛み込んでいる。このようにしてフレキシブルで捩りに強い連結カップリングが形成されている。
【0031】
前記参考形態において制御器26によって双方のステップモータが別様に制御され、たとえば貫通路48(図3)に配された円筒形回転体が貫通路48を貫通路46が閉じられるよりも早く閉じる場合には、貫通路46を通ってより多くの新気がシリンダに流入し、これにより、吸気路と吸気弁とが適切に形成されていれば燃焼室に渦が形成される。ステップモータの別様な制御はそれによって特別な利点が達成されるエンジン運転領域、たとえば軽負荷運転に制限することができる。この制御コンセプトは同じく円筒形回転体によって他方の吸気路を完全に封鎖することができることを含んでいることは言うまでもなく、これによって完全な管路遮断が実現される。
【0032】
電動機ないしステップモータ32(図1)ないし90(図4)による回転弁(一方もしくは双方)の制御によって回転弁後方に配置された吸気弁に比較して回転弁開閉時点の広範な自由度を達成することができる。吸気管の長さを合理的に選択し、回転弁の開閉時点をそれを適合させることにより、たとえば、図2bに示した作動相において回転弁28と吸気弁18との間に形成される低圧を合理的に利用し、回転弁が開き吸気弁がなお閉じている場合に形成される圧力波がまさに吸気弁が開く時点に同所に達し、これによりピストンによって遂行される吸入仕事が低減されるようにすることができる。さらに、回転弁後方に配置された吸気弁に比較した回転弁開閉時点の広範な自由度により、発生した低圧によって生み出され、開放吸気管端で反射した波が吸入行程末期に開放吸気弁に圧力波として達する時点を調整し、慣性過給効果を達成してシリンダ充填を高めると共に吸入仕事が低減されるようにすることが可能である。
【0033】
図5は前述した関係を概略的に図示したものである。回転弁28は全長L、総容積Vを有した吸気管14をそれぞれL、VとL、Vとを有した部分域IとIIとに分割する。回転弁が閉じ且つ吸気弁が閉じている時に部分容積Vに貯えられた低圧は回転弁が開放されると波を生み出し、この波は開放吸気管端100で反射され全管長Lを通過した後圧力波として開放吸気弁18に達する。ポジション200は吸気弁座を表わしていることから、有効管長Lはポジション100と200とによって決定されている。前記効果は広いエンジン運転領域で利用することができるが、それは波の伝播の開始と開放管端での反射とのタイミングを回転弁4の開閉時点の可変性によって保障することができるからである。
【0034】
回転弁の開閉時点の可変性とは開放時点ならびに閉鎖時点のいずれもが吸気弁の全開放期間をカバーすることができることとして理解される。
【0035】
制御が自由であることからステップモータ制御される回転弁の開放相および特に閉鎖相は(クランクシャフトを介して決まったギア比で駆動される)強制駆動式の回転弁のそれに比較して遥かに短い。これによって吸入行程中の相ないしピストン行程は短縮される一方で回転弁断面に制約されたスロットル損失が生ずる。
【0036】
本発明に基づくシステムは過給エンジンに好適に使用することができる。本発明に基づくシステムが過給エンジンにもたらす長所は通例ウェストゲート弁(排気流れがタービンホイールを迂回する)によって遂行される過給制限機能が回転弁の適切な制御によって引き受けられる点にある。この場合、最大過給圧への到達および/または超過が生ずると回転弁の閉鎖時点は早期の方向にずらされる。これによりシリンダ給気およびそれに制約されてターボチャージャに供給されるエネルギー量は減少する。この方法により常に、排気質量流の最大圧力緩和により、その都度達成可能な最大圧縮仕事がターボチャージャのコンプレッサ内で遂行される。ウェストゲート弁を経てエネルギーが失われるという事態は生じない。回転弁の適切な早めずらしによりチャージ圧と排気背圧との圧力差を最適にして作動点固有の所望量のシリンダ給気がシリンダに供給される。この最適圧力差は場合によりP−V線図においてプラスの仕事を行うガス交換成分をもたらすこととなる。この方法はミラー・サイクルの概念によって公知である。本発明に基づくシステムはミラー・サイクルを独自に実現したものである。
【0037】
図6は仕事線図を表わしており、同図において縦軸はシリンダ内の圧力Pの対数を表わし、横軸は容積Vを表わしている。OTおよびUTはそれぞれピストンの上死点と下死点を表わしている。
【0038】
図6aはスロットルバルブ制御された4サイクル機関の仕事線図を示している。それぞれの線は以下を意味している:
1−2: ポリトロープ圧縮
2;3: 燃焼熱Qを放出する等容熱供給
3;4: ポリトロープ膨張(出力)
4;5: 等容排熱(排気口、開)
5−6−7: 等圧圧縮(排気行程)
7;8: 吸気口開放
8−1: 等圧吸気
【0039】
斜線で表わされた面積はポンプ損失を表わし、格子で表わされた面積は仕事を表わしている。
【0040】
図6bは吸気弁の可変閉鎖によってパワー制御が行われる場合の仕事線図を示している。図6aとの違いは、排出行程5−7と吸気行程7−6’が同じ圧力レベルで行われ、ポリトロープ膨張6’−1とポリトロープ圧縮1−6’が同じ圧力で行われる結果、ポンプ損失がゼロになる点にある。点6ないし6’(吸気弁の閉鎖)は可変的である。
【0041】
図6cは図6aおよび6bと同様に3から4へのポリトロープ膨張後の下死点において熱量Qが排出される典型的なミラー・サイクルを示している。5から7への排気行程は排気背圧が比較的低い場合に行われる。8から9への吸気行程は過給システムによって生み出された相対的に高い圧力時に生ずることから、図6aに示した方法とは異なり斜線で表わされた面積で仕事が得られることとなる。9は吸気弁が閉じられる点を示している。
【0042】
図6dは吸気弁の閉鎖(点9)が可変的であり、これによって全仕事サイクルをさらに最適化することができるミラー・サイクルの仕事線図を表わしている。
【0043】
図7は図3に比較して一部変更された回転弁の断面図を示したものである。機能が同じ部品には図3と同じ番号が付されている。穴62を有した円筒形回転体60は接続フランジ42と44とを有したケーシング40に回転可動に収容されている。ケーシング40の両側はカバー102で封鎖されている。カバー102中には軸受けリング104が配置され、ロータないし円筒形回転体60は該リングによってケーシング40内に回転可動支持されている。
【0044】
図3および4に示した参考形態とは異なり、ステップモータとして形成された電動機は回転弁に一体化されており、S極とN極とが交互に交代するロータコイル106は該回転弁内でロータないし円筒形回転体60と固定結合されている。電動機の固定子コイル108はケーシング40と固定結合されてケーシング40の当該切り欠き部に配置されている。
【0045】
前記配置によってステップモータを組込んだきわめてコンパクトな回転弁が実現される。制御器によって固定子コイル108を制御するための電気的接続は図示されていない。
【0046】
図8は負荷制御のための回転弁を備えた補助レジスタ過給装置付き6気筒エンジンを示している。
【0047】
エンジンはそれぞれ3気筒を擁した気筒群112を有し、これらは吸気管114を介してガスディストリビュータないしエアディストリビュータ116と結合されている。
【0048】
それぞれの吸気管において各気筒に設けられた2吸気弁に対応した電動式の回転弁118が作動する。
【0049】
すべての気筒の排気管120は1本のマニホルド122に集められ、2機のターボチャージャ124と126との駆動に利用される。
【0050】
排気マニホルド122からは1本の管130がターボチャージャ126の排気タービン131に達し、同所から別の管132がターボチャージャ124の排気タービン133に達し、そこから排気管134が図示されていないマフラに達している。管130には電動式ディストリビュータ弁140が配置され、これによりマニホルド122から到来する排気流の一部はターボチャージャ124の排気タービンに合流する枝管142に分流される。
【0051】
内燃機関への給気供給は、新鮮空気がエアフィルタ150を通して吸入され、該空気に混合ユニット152内で内燃機関の運転条件に応じた所定の比率でガスが混合され、こうした形成された給気は続いてターボチャージャ124のコンプレッサ154で圧縮され、圧縮された給気は管156を経てインタクーラ158を通過し排気ターボチャージャ126のコンプレッサ160に供給され、さらに同所から別のインタクーラ162を通過してエアディストリビュータ116に供給されるという方法で行われる。
【0052】
回転弁118、ディストリビュータ弁140ならびに場合によりターボチャージャ124と126との排気タービン131と133との入口部のブレードポジション――ターボチャージャが可変タービンジオメトリを備えている場合――の制御には電子制御器164が用いられ、該制御器の入力は内燃機関の運転パラメータとアクセルペダル166のポジションを把握するセンサと結びつき、出力は前記の電気式制御される部品と結びついている。電線ならびにセンサは図をわかりやすくするために記入されていない。
【0053】
制御器164には運転パラメータと相関して回転弁118、ディストリビュータ弁140ならびに場合によりターボチャージャ124と126との入口ジオメトリをそれぞれ調整するためのパラメータが記憶され、回転弁118の開閉時点ならびに各排気タービンに供給される排気量および場合によりタービンジオメトリが互いに最適適合され、求められたパワーが内燃機関の可能最善の効率を以って生み出されるように為されている。
【0054】
図9は吸気管14(図1)に配置された弁の一部変更された本発明の実施形態を示したものである。
【0055】
図9に示したように吸気管14は吸気管縦断面で見て蛇行状に形成された隔壁270を有し、該隔壁には図示した例において吸気管の軸方向に対して垂直方向に4個の弁穴272が形成されている。吸気管と弁穴を垂直方向から貫いて全体が274で表わされた弁素子が伸びており、該素子は軸部276と軸部を取巻いてそれに固定された円板278とを有している。これらの円板は図9に示した弁開放ポジションにおいて一番上と上から三番目の円板278は吸気管を通る吸気流から見て当該弁穴272の下流に位置し、他の2つの円板278は当該弁穴272の上流に位置するように配置されている。円板278の直径は弁穴272の直径とほぼ一致していることから、図9に示した軸部276が円板278と共に上方に向かって運動し、円板278が穴272の内部に納まると弁は閉じられることとなる。円板278は流れに好適な形に成形されているのが好ましい。
【0056】
軸部276は吸気管14の外側に弁を作動するための円筒形の突出し部280を有し、該突出し部にはコイル282が収容され、該コイルは好ましくは電磁石として形成された磁石284によって囲まれ、これら全体は吸気管に固定されたケーシング286に収容されている。
【0057】
軸部276はブシュ288により吸気管14内に垂直方向摺動式にガイドされている。円筒形突出し部280は軸部276ないし弁素子274の上下動が一方では吸気管14の外周への自らの当接により、他方では自らの内部に突き入ったケーシング286の突起への当接によって制限されるように形成されている。
【0058】
ばね290は弁素子274を開放ポジションに保持する。
【0059】
前記の弁は以下のように機能する:
コイル282は制御器26(図1)に接続されている。弁はばね290の作用下で通常は開いている。コイル282が当該電流の作用をうけることにより図9に示した弁素子は上方に運動し、円板278が弁穴272に納まって弁穴を通る流体の通過を遮断するポジションを占める。図から看取されるように、弁が閉鎖ポジションを占め、たとえば弁の左側を高圧が支配していれば、該高圧は一番上と上から三番目の円板に対し下向きに押し付ける作用をおよぼし、他方で一番下と下から三番目の円板には上向きに押し付ける作用をおよぼすことから、弁素子には全体として圧力差にかかわりなく力がかからない。
【0060】
前記の弁によって達成される利点は、閉鎖ポジションから開放ポジションへの運動およびその逆の運動が極めて迅速に行えることから、流れ損失を可能最小限に抑制した精密制御が可能なことである。
【0061】
図示した好ましい実施形態において軸部276は変位路程センサ291と連結されている。この変位路程センサ291は軸部276ないし円板278のその時々の正確なポジションに関する情報をもたらす。制御器26は弁体(276,278)の実ポジションが弁体上下動運動のどの瞬間にも制御器にプログラムされた基準ポジションに合致するようにコイル282を通る電流を制御する。これにより多気筒エンジンにあっても同一制御時間の気筒当たり充填量を同一とすることが保障される。
【0062】
電磁作動はたとえば円筒形突出し部280を固有のコイルを持たない保磁子として形成する等によってきわめて多様な方法で変化させることができるのは言うまでもない。図示した実施形態(ボイスコイル)は磁気慣性が非常にわずかであるという長所を有している。弁素子は隔壁と共にそれが90°回転すると弁穴を閉じもしくは開くように変更することが可能である。
【0063】
図9に示した弁は先述した実施形態の弁に代用することができ、したがって、本発明によって達成される機能上の利点は図9に示した弁によっても達成することができる。弁の閉鎖時点はパワー要求が減少するにしたがってますます吸気弁閉鎖時点の前方にずらされる。開放時点は吸気仕事を減少させる先述した過給効果を実現するため閉鎖時点とは無関係にエンジン回転数に合わされる。
【0064】
閉鎖時点を変えずにまたはシリンダ充填量(空気消費)を変えずに弁の開放時点を変化させ、部分負荷時にも過給効果が給排気交換の最適化に利用されるようにするのが好適である。
【0065】
前記の効果は給排気交換損失を最小化するための部分負荷同調過給と称することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト(10)と連結したピストン(6)が内部で作動する少なくとも1シリンダ(4)を含む内燃機関であって、前記シリンダは少なくとも1吸気口(16)と少なくとも1排気口(20)とを有し、吸気口においてクランクシャフトの回転に応じて開閉作動する吸気弁(18)は該吸気口を末端とする吸気路(14)と前記シリンダとを一時的に連結し、該排気口において前記クランクシャフトの回転に応じて開閉作動する排気弁(24)は該排気口を起点とする排気路(22)と前記シリンダとを一時的に連結するように構成されたピストン往復内燃機関であるガス機関のための給気制御装置において、
電動機(282,284)によって作動される別途弁(278,272)を給気路(14)内の吸気弁(18)の直近上流に配置し、前記別途弁は電動機(282,284)によって作動される軸部(276)と該軸部と固定結合された少なくとも2閉鎖体(278)とを備えた弁体(274)を有し、前記閉鎖体は吸気路(14)の隔壁(270)に配置された当該弁穴(272)と協働して前記閉鎖体に作用する圧力差を補償し、
軸部(276)は吸気路(14)を垂直に貫通して往復動電磁装置(282,284)として形成された電動機により垂直方向に摺動可能とし、
前記閉鎖体を前記軸部を取巻く円盤(278)として形成し、
前記吸気路遮断面で見て蛇行状に形成された隔壁(270)を設け、前記円板を前記弁の開放状態において前記吸気路を通る流れの方向から見て前記弁穴の異なった側に配置し、
制御器(26)を設け、該制御器により少なくとも1パワー要求素子(34)と相関させてパワー要求が減少するにしたがって前記弁の閉鎖時点を前記吸気弁の閉鎖時点よりさらに早期にずらすように前記電動機を制御するように構成し、これによって、エンジン負荷は前記別途弁(278,272)によってのみ制御されることを特徴とする給気制御装置。
【請求項2】
4弁穴(272)を当該円板(278)と共に設けた請求項1に記載の給気制御装置。
【請求項3】
各シリンダは当該吸気弁を備えた2吸気口を有し、該吸気口のそれぞれに至る各吸気路(46,48)に当該電動機によって作動される弁を配置した請求項1または2に記載の吸気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−92842(P2012−92842A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270064(P2011−270064)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2000−559340(P2000−559340)の分割
【原出願日】平成11年7月5日(1999.7.5)
【出願人】(501008967)
【Fターム(参考)】