説明

ピン状フィン一体型ヒートシンク

【課題】放熱性に優れ、セラミックス基板の割れを生じさせないように支持することができるピン状フィン一体型ヒートシンクを提供する。
【解決手段】ピン状フィン一体型ヒートシンク1は、金属材料からなる板状部2の一面側に、セラミックス基板を有する電子部品が搭載される平面状の上表面部21が形成されるとともに、その上表面部21と反対面側に、多数のピン状フィン3が立設された下表面部22が形成されてなり、下表面部22は、その周辺部の取付部7と、この取付部7の内縁から中心部に向かって厚みが漸次大きくなるように形成された中央部5と、その中央部5に立設された多数のピン状フィン3とにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模集積回路(LSI)等の発熱を伴う電子部品の冷却に用いられるヒートシンクに関し、特に詳しくは、放熱のためのピン状フィンを一体に形成したピン状フィン一体型ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)等の発熱を伴う電子部品においては、電子部品を正常に動作させるために、熱を外部に放散させるヒートシンク或いはヒートスプレッダが取り付けられる。これらの素材としては、熱伝導率が高く、軽量で加工性の良いアルミニウムや銅が用いられる。
特許文献1にはヒートスプレッダ(ヒートシンク)用銅合金として、0.2%耐力が100〜200N/mm、熱伝導率が350W/m・K以上、加工硬化指数が0.14〜0.18、圧延表面板の幅方向の結晶粒径が25μm以下であるCu基合金が開示されている。また、Fe、Ni、Coのうち少なくとも1種類以上とPを合計で0.05〜0.3wt%含有し、残部がCuと不可避成分からなり、断面減少率40%以下の冷間鍛造後に600℃で30分間熱処理した後の結晶粒径が25μm以下であり、断面減少率40%以下の冷間鍛造後に600℃で30分間熱処理した後のビッカース硬さがHV60〜170であるのが好ましいと記載されている。
また、このようなヒートシンクとして、放熱のためのフィンをピン状に形成し、ベースとなる板状部に多数のピン状フィンを立設状態に設けたものがあり、その製造方法として、例えば特許文献2及び特許文献3に記載の方法が知られている。
【0003】
特許文献2には、金属材料に加熱処理を行う加熱工程と、加熱処理後の金属材料を金型を用いて鍛造して目的の形状に成形する鍛造工程と、成形後の金属材料をエジェクターピンで金型の外方に押し出す押出工程とを備え、金型の内側に、鍛造工程時の圧力により金属材料を平板状に成形する凹部を設け、該凹部下面に鍛造工程時の圧力で金属材料を搾伸してピン状に成形する孔部を多数穿設し、加熱した金属材料を凹部内で鍛造することにより板状部と多数のピン状フィンとを一体に成形する製造方法が開示されている。
【0004】
この製造方法によれば、常温では変形抵抗が大きい金属材料であっても、その変形抵抗を小さくして鍛造することができるので、ピン状フィンの立設ピッチを細かくすることや、大型のヒートシンクを製造することも可能となる。
【0005】
一方、特許文献3にも、成形ダイスとパンチとにより多数のピン状フィンを鍛造成形する技術が開示されており、この場合も、平板状の板状部に、所定のピッチで多数のピン状フィンが立設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−277853号公報
【特許文献2】特開2010−129774号公報
【特許文献3】特許第2828234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなピン状フィン一体型ヒートシンクは、各種機器の構造部材にねじ止め等により固定され、水冷の場合にはピン状フィンの立設側から水流の圧力が作用する。また、板状部にはピン状フィンと反対面である板状部の中央部分に電子部品がはんだ付け等により接合される。この電子部品は、セラミックス基板に回路層を介して半導体チップ等が搭載されている。このため、ヒートシンクは、優れた放熱性とともに、熱応力や水流からの圧力等の機械的応力により、脆性材料であるセラミックス基板に割れが生じないように支持する機能も併せ有することが求められる。
しかしながら、従来のヒートシンクでは、多数のフィン状ピンにより放熱性には優れるものの、これらの応力に対するセラミックス基板の割れ防止対策という点では不十分であった。
【0008】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れ、セラミックス基板の割れを生じさせないように支持することができるピン状フィン一体型ヒートシンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
電子部品のセラミックス基板に生じる応力には、はんだ接合時の熱応力に起因した反りによる曲げ応力、ヒートシンクとの熱伸縮差に伴う面内方向圧縮荷重による圧縮応力、使用時の水圧による曲げ応力、温度分布による圧縮応力等が存在する。このうち、反りによる曲げ応力、水圧による曲げ応力および温度分布による圧縮応力に対するヒートシンクの剛性を高めるには、ヒートシンク自体の板厚を厚くすれば良いが、ヒートシンク全体を厚くすると、熱伸縮差に伴う面内方向圧縮荷重による圧縮応力が大きくなり、また、重量増、材料費増を招く。
本発明は、このような知見の下、以下の解決手段とした。
【0010】
本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクは、金属材料からなる板状部の一面側に、セラミックス基板を有する電子部品が搭載される平面状の上表面部が形成されるとともに、該上表面部と反対面側に、多数のピン状フィンが立設された下表面部が形成されてなり、前記下表面部は、その周辺部の取付部と、この取付部の内縁から中心部に向かって厚みが漸次大きくなるように形成された中央部と、該中央部に立設された多数の前記ピン状フィンとにより形成されていることを特徴とする。
【0011】
板状部の全体を厚くするのではなく、中央部のみを厚くすることにより、必要な部分のみ曲げ剛性を高めた。接合時の圧縮応力については、中央部では大きくなるが、取付部では小さくなる。これらの総和として、使用時に発生するセラミックス基板上面の引張応力の最大値を小さく抑えることができる。このように、板状部の中心部にかけて厚みを増して設けることにより、接合されるセラミックス基板に割れを生じさせないように支持することができる。また、板状部全体の厚みを一律に増すことなく中央部のみを大きくしたので、製造コストを低減することができる。
【0012】
本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクにおいて、前記中央部は、角錐もしくは円錐状の斜面、または曲面に形成されているとよい。
中央部を斜面または曲面に形成することにより、ヒートシンク使用時の水圧の応力分布を分散させることができるので、板状部に生じる反りを低減させることができる。また、板状部の周辺部から中心部にかけて厚みが徐々に大きくなるように設けられた中央部は、成形時の金属材料の流れを良好に保つことができることから、成形性に優れている。
【0013】
本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクにおいて、前記取付部の厚みをt1、前記中央部の中心部に位置する最大厚みをt2とした場合、t2/t1が1.2以上3.0以下に設定されているとよい。
本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクにおいて、前記下表面部の中央部は、前記上表面部の前記セラミックス基板の搭載領域に対応する位置に設けられており、前記セラミックス基板の板幅をw、該板幅wの中心部からの距離をxとした場合、前記中央部の板厚tは、以下の(1)式を満たすように設けられているとよい。
t=t2−((t2−t1)/(w/2))・x …(1)
このように中央部の板厚tを設定することにより、ヒートシンク使用時に発生するセラミックス基板上面の引張応力を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放熱性に優れ、セラミックス基板の割れを生じないように支持することができるピン状フィン一体型ヒートシンクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態のピン状フィン一体型ヒートシンクを示す縦断面図である。
【図2】図1のヒートシンクを示すもので、(a)が上表面部側から見た斜視図、(b)が下表面部側から見た斜視図である。
【図3】図1のヒートシンクの水冷ボックスへの取付け例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態のピン状フィン一体型ヒートシンクを製造するための熱間鍛造工程に用いられるフィン成形金型の縦断面図であり、(a)がフィン成形金型に金属材料を配置した状態を示し、(b)が熱間鍛造をしている状態を示す。
【図5】ヒートシンク使用時におけるセラミックス基板上面の応力分布を説明する図である。
【図6】図5に示す各応力分布が足し合わされた状態におけるセラミックス基板上面の応力分布を説明する図である。
【図7】本発明の第2実施形態のピン状フィン一体型ヒートシンクを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
第1実施形態のピン状フィン一体型ヒートシンク1は、図1及び図2に示すように、金属材料からなる板状部2の一面側に、セラミックス基板を有する電子部品が搭載される平面状の上表面部21が形成されるとともに、その上表面部21と反対面側に、多数のピン状フィン3が立設された下表面部22が一体に形成されてなる。下表面部22は、その周辺部の取付部7と、この取付部7の内縁から中心部に向かって厚みが漸次大きくなるように角錐もしくは円錐面状の斜面、又は曲面に形成された中央部5と、中央部5に立設された多数のピン状フィン3とにより形成されている。
【0017】
図示例では、下表面部22の中央部5は曲面に形成されており、その中央部5の表面上に、一列に並べたピン状フィン3が列ごとに半ピッチ分だけずれて千鳥配列となるように形成されている。これらの諸寸法は特に限定されるものではないが、例えば板状部2は、外形が長さ133mm、幅77mmに形成され、ピン状フィン3は、外径が1.5mm〜2mm、高さが6mm〜8mm、ピッチが4mm〜5mmに形成される。この場合、各ピン状フィン3の先端位置は、水平面上に揃えられている。また、取付部7の厚みをt1、中央部5の中心部に位置する最大厚みをt2とした場合、t2/t1が1.2以上3.0以下になるように設定される。例えば、取付部7の厚さt1は5mm、中央部5の中心部の最大厚みt2は10mmに設定される。
【0018】
また、下表面部22に形成された中央部5は、上表面部21のセラミックス基板の搭載領域9に対応する位置に設けられており、セラミックス基板の板幅(搭載領域9の幅)をw、その板幅wの中心部からの距離をxとした場合に、中央部5の板厚tは、以下の(1)式を満たすように設けられる。なお、板幅wの中心部Cでは、距離xは0である。
t=t2−((t2−t1)/(w/2))・x …(1)
【0019】
金属材料としては、純度が99.90質量%以上の純銅または析出強化型Cu基合金が用いられる。純銅には、不純物として、As、Sb、Bi、Pb、S、Fe、O、Pなどが含まれる場合があるが、特にO、Pは微量で塑性変形能が低下するため、O量は500ppm以下、好ましくは100ppm以下とし、P量は150ppm以下、好ましくは50ppm以下に規制することが望ましい。タフピッチ銅、無酸素銅、リン脱酸銅が好適な素材として挙げられるが、純度99.96質量%以上の無酸素銅、99.99質量%以上の電子管用無酸素銅がより好ましい。
析出強化型Cu基合金としては、Cu−Fe−P系銅合金、Cu−Ni−Si系銅合金、Cu−Co−P系銅合金などを適用することができる。
【0020】
また、板状部2の取付部7には、各種機器への取付けの際にねじ止めを行う貫通孔8が形成されている。
板状部2のピン状フィン3が形成されていない他面側の上表面部21の搭載領域9に電子部品(図示略)がはんだ付け等により搭載され、その熱は板状部2を介して各ピン状フィン3に伝達され、これら板状部2及び各ピン状フィン3の外周面から放散される。
【0021】
このように構成されたピン状フィン一体型ヒートシンク1は、例えば図3に示すような冷却ボックス31に取り付けられる。この冷却ボックス31は、ヒートシンク1のピン状フィン3を内部に挿入状態として取り付けるために開口部32が形成されるとともに、その開口部32の周囲を囲むようにパッキン収容溝33が形成され、そのさらに外側にねじ穴34が形成されており、鎖線矢印で示すようにヒートシンク1をピン状フィン3が図3において下方を向くように配置して開口部32内に挿入し、板状部2を開口部32の周囲の表面にパッキン35を介して密接させ、ねじ止めにより固定する構成である。図示例では2個のヒートシンクが取り付けられるようになっており、矢印で示すように冷却媒体が流通して、内部に挿入状態のヒートシンク1のピン状フィン3を冷却する。
【0022】
このピン状フィン一体型ヒートシンク1を製造するための製造装置は、ピン状フィン3が立設される球面の中央部5及びピン状フィン3を、熱間で鍛造して成形するフィン成形用金型11により構成される。
フィン成形用金型11は、図4に示すように、図示略の鍛造プレスに、ピン状フィン3を形成するための多数の凹状のフィン成形用穴部15を有する成形ダイ16と、この成形ダイ16上に載せた金属材料Mを鍛造するパンチ17と、成形ダイ16に上下移動可能に設けられるエジェクターピン18とが備えられた構成とされている。
【0023】
成形ダイ16は、その上面部に、鍛造時に金属材料Mが配置される凹部19が形成されている。凹部19の周辺部は、取付部7の成形用に平面部191が形成されており、その平面部191の内縁から中心部にかけては、中央部5の成形用に曲面状に掘られた曲面部192が形成されている。そして、その曲面部192に連通して各フィン成形用穴部15が曲面部192の底面に形成されている。
パンチ17は、成形ダイ16の上方から図示略の油圧機構により上下動され、成形ダイ16の凹部19内で金属材料Mを叩くように押圧する。エジェクターピン18は、図示略の油圧機構等により、鍛造後の取付部7を下方から押し上げる構成である。
【0024】
このように構成されたフィン成形用金型11を用いてピン状フィン一体型ヒートシンク1を製造する方法について説明する。
この製造方法においては、金属材料Mを加熱する加熱工程と、加熱後の金属材料Mをフィン成形用金型11により鍛造して、成形ダイ16の成形用穴部15内に金属材料Mの一部を押し込むことにより、主に板状部2のピン状フィン3と中央部5とを成形する熱間鍛造工程とを備えている。以下、工程順に説明する。
【0025】
<加熱工程>
加熱工程では、金属材料Mの変形抵抗を減少させるため、金属材料の再結晶温度以上の温度まで加熱する。
【0026】
<熱間鍛造工程>
図4(a)に示すように、加熱された金属材料Mをフィン成形用金型11の成形ダイ16の凹部19に設置し、パンチ17により叩くように押圧すると、図4(b)に示すように、金属材料Mは成形ダイ16とパンチ17とにより押しつぶされて、凹部19内に広がりながら板状部2の中央部5が曲面に成形されるとともに、その一部がフィン成形用穴部15内に圧入されピン状フィン3の外形が成形される。この鍛造工程は、熱間で行われるため、金属材料Mの流動性が良く、細い径のピン状フィン3も精密に成形することができる。さらに、中央部5は、板状部2の周辺部から中心部にかけて厚みが徐々に大きくなるように設けられていることから、成形時の金属材料の流れを良好に保つことができる。
次いで、パンチ17を上方に退避させ、エジェクターピン18を上昇させて、製品を成形ダイ16から押し上げる。
【0027】
このようにして製造されたピン状フィン一体型ヒートシンク1は、ピン状フィン3が立設されている面とは反対面である板状部2の中央部分の搭載領域9に電子部品が搭載され、水冷ボックス31内にピン状フィン3を挿入した状態となるように、板状部2の取付部7がパッキン35を介して水冷ボックス31にねじ止め等により固定される。電子部品は、半導体チップ、回路基板等により構成される部品であり、水冷ボックス31は、内部に水等の冷却媒体が流通しており、その冷却媒体にピン状フィン3が浸漬して放熱を促進する。
【0028】
その際、電子部品のセラミックス基板には、その接合時及び使用時の熱応力や水圧等が作用する。そのセラミックス基板上面に作用する各種応力分布は、図5(a)〜(d)に示すようになる。図5(a)は接合時の熱応力に起因した反りによる曲げ応力分布、図5(b)は接合時のヒートシンク1との熱伸縮差に伴う面内方向圧縮荷重による圧縮応力分布、図5(c)は使用時の水圧による曲げ応力分布、図5(d)は使用時の温度分布による圧縮応力分布を示しており、これらの応力分布の総和を図6に示す。
参考までに、従来の平坦な板状部の場合の応力分布を破線で各図に示した。
【0029】
この図5及び図6に示すように、本発明の構造とすることにより、セラミックス基板上面の引張応力の最大値を小さく抑えることができる。
これにより、ヒートシンク1は、優れた放熱性を有するとともに、熱応力や水流からの圧力等の機械的応力により、脆性材料であるセラミックス基板6に割れが生じないように支持することができる。また、板状部2全体の厚みを一律に増すことなく、ヒートシンク1の反りを低減できるので、製造コストを低減することができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態では、図7に示すように、ピン状フィン一体型ヒートシンク10に、複数個の電子部品を搭載して構成される。
ヒートシンク10は、電子部品のセラミックス基板6が接合される各々の搭載領域に対応するように板状部2が肉厚に設けられており、その部分の剛性が高められている。これにより、第1実施形態と同様に、接合されるセラミックス基板に割れを生じさせないように支持することができる。
【実施例】
【0031】
金属材料として無酸素銅(純度99.99質量%以上)を用い、この無酸素銅の鋳塊を700℃に加熱した後、フィン成形用金型により熱間鍛造してフィン立設部の中央部5及びピン状フィン3ならびに取付部7を成形し、フィン立設部分である中央部5の形状を変えて試料1〜5のヒートシンクを作製した。なお、熱間鍛造時の圧力は100MPa〜150MPaとした。
試料1においては、中央部5の表面を、前述した(1)式を満たす曲面となるように形成した。試料2は(1)式は満たさないが、中央部5の表面が緩やかな曲面となるように形成した。また、試料3は、中央部5の表面を円錐面で形成し、試料4は、中央部5の表面を四角錐面で形成した。試料5は、中央部5及び取付部7の厚みを一律に形成した。
また、各ヒートシンクは、板状部2の外形を長さ133mm、幅77mm、取付部2の厚みt1を3mm、ピン状フィン3は、外径が1.5mm、高さ8mm、ピッチが4mmで、一列に並べたピン状フィン3が列ごとに半ピッチ分だけずれて千鳥配列としたものを成形した。各試料の取付部7の厚みt1と、中央部5の中心部に位置する最大厚みt2との比率t2/t1は表1に示す通りである。
【0032】
このようにして作製した試料1〜5のヒートシンクについて、熱サイクル性を評価した。熱サイクル性は、ヒートシンクの板状部2の上表面部にセラミックス基板を有する電子部品をはんだ付けし、JISC0025に準拠し、−65℃〜125℃の温度変化を500サイクル繰り返し、はんだ接合部の剥がれやクラック等を観察した。剥がれやクラック等の「接合部欠陥」が認められなかったものを「○」、これらが認められたものを「×」とした。また、ヒートシンクに「反り」が認められなかったもの及び30mm長さ当たりの反りが150μm以下であったものを「○」、150μmを超えていたが200μm以下であったものを「△」、200μmを超えていたものを「×」とした。
また、試料1〜5のヒートシンクを冷却ボックスに取り付けて冷却を行い、セラミックス基板に生じる割れを観察した。冷却ボックスに冷媒を封入し、水圧1MPaを負荷した際に「セラミックス基板の割れ」が認められなかったものを「○」、割れが認められたものを「×」とした。これらの結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示される結果から明らかなように、試料1〜4の本発明のピン状フィン一体型ヒートシンクは、セラミックス基板の割れを生じないように支持できることがわかる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、板状部を各種機器に取り付ける場合、ねじ止めに限らず、クランプ等の他の固定手段によってもよい。
また、図4においては、エジェクターピンにより鍛造品の外周部を押し上げるように構成したが、各ピン状フィンの下端を押し上げる構成としてもよい。また、鍛造時にバリを出していないが、鍛造機の能力に応じてバリを出して高い圧力で成形してもよい。また、加工前の初期の金属材料Mは、単純な板状の素材としているが、ピン状フィンの寸法等から、予め適切な形状に成形しておいてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ピン状フィン一体型ヒートシンク
2 板状部
3 ピン状フィン
5 中央部
6 セラミックス基板
7 取付部
8 貫通孔
9 搭載領域
11 フィン成形用金型
15 フィン成形用穴部
16 成形ダイ
17 パンチ
17a パンチ面
18 エジェクターピン
19 凹部
21 上表面部
22 下表面部
31 水冷ボックス
32 開口部
33 パッキン収容溝
34 ねじ穴
35 パッキン
191 平面部
192 曲面部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなる板状部の一面側に、セラミックス基板を有する電子部品が搭載される平面状の上表面部が形成されるとともに、該上表面部と反対面側に、多数のピン状フィンが立設された下表面部が形成されてなり、前記下表面部は、その周辺部の取付部と、この取付部の内縁から中心部に向かって厚みが漸次大きくなるように形成された中央部と、該中央部に立設された多数の前記ピン状フィンとにより形成されていることを特徴とするピン状フィン一体型ヒートシンク。
【請求項2】
前記中央部は、角錐もしくは円錐状の斜面、または曲面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のピン状フィン一体型ヒートシンク。
【請求項3】
前記取付部の厚みをt1、前記中央部の中心部に位置する最大厚みをt2とした場合、t2/t1が1.2以上3.0以下に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のピン状フィン一体型ヒートシンク。
【請求項4】
前記下表面部の中央部は、前記上表面部の前記セラミックス基板の搭載領域に対応する位置に設けられており、前記セラミックス基板の板幅をw、該板幅wの中心部からの距離をxとした場合、前記中央部の板厚tは、以下の(1)式を満たすように設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のピン状フィン一体型ヒートシンク。
t=t2−((t2−t1)/(w/2))・x …(1)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−248576(P2012−248576A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117183(P2011−117183)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】