説明

ファジィ制御装置、レーン走行支援装置、および操舵補助装置

【課題】ファジィルールを合理的に選定する。
【解決手段】ファジィ制御装置は、複数の入力変量に対しファジィ推論を行って出力変量を生成し、生成した出力変量を制御対象に出力して制御するものである。ファジィ推論に利用されるファジィルールは、複数の入力変量に関するリヤプノフ関数Vの安定条件を示す条件式dV/dt<0と、複数の入力変量の少なくとも1つの時間微分と出力変量との対応関係を示す関係式とに基づいて選定される。これにより、各入力変量に対応するメンバーシップ関数を2つに減らし、ファジィルールの数を2(nは入力変量の数)に減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の入力変量に対しファジィ推論を行って出力変量を生成し、生成した出力変量を制御対象に出力して制御するファジィ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記ファジィ制御装置の従来例としては、特許文献1に記載のファジィ制御器が挙げられる。該ファジィ制御器は、入力信号を正規化してメンバーシップ関数を形成し、形成したメンバーシップ関数に対してファジィルールを適用して、出力信号に対するメンバーシップ関数を取得し、取得したメンバーシップ関数に基づいて平均値形成を行うことにより、正規化された出力信号を生成している。上記ファジィ制御器を利用することにより、車両の走行動特性および走行状態に影響を与える量をできるだけ最適に閉ループ制御することができる。
【特許文献1】特開平6−206559号公報(1994年7月26日公開)
【特許文献2】特開2006−236238号公報(2006年9月7日公開)
【特許文献3】特開平5−201345号公報(1993年8月10日公開)
【特許文献4】特開2006−315634号公報(2006年11月24日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ファジィ制御装置は、他の制御方法を用いた制御装置に比べて、簡便な構成になる利点と、ロバスト性に優れる利点とを有している。しかしながら、従来のファジィ制御装置では、ファジールールの選定が、経験および試行錯誤によって行われているため、多大な労力および時間を費やす結果となっていた。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、合理的なファジィルールを用いたファジィ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、リヤプノフ(Lyapunov)の安定条件を利用することにより、ファジィルールを合理的に選定できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明に係るファジィ制御装置は、複数の入力変量に対しファジィ推論を行って出力変量を生成し、生成した出力変量を制御対象に出力して制御するファジィ制御装置であって、上記ファジィ推論に利用されるファジィルールは、上記複数の入力変量に関するリヤプノフ関数Vの安定条件を示す条件式と、上記複数の入力変量の少なくとも1つと上記出力変量との対応関係を示す関係式とに基づいて選定されたものであることを特徴としている。
【0007】
上記の構成によると、上記関係式を用いて、複数の入力変量に関するリヤプノフ関数Vの条件式に出力変量を組み込むことができる。リヤプノフ関数Vの条件式は、全ての入力変量が0である場合にV=0であり、それ以外の場合にV>0であり、かつ、入力変量の値に関係なくdV/dt=V′<0である。したがって、出力変量が組み込まれた条件式を参照することにより、各入力変量が正である場合と負である場合とによって、上記出力変量の正負とその大きさとを規定することができ、ファジィルールを選定することができる。このとき、選定されたファジィルールの数は、入力変量の数をnとすると、2以下に抑えることができる。
【0008】
従って、本発明によると、リヤプノフ関数Vの安定条件から、上記複数の入力変量と上記出力変量とが満たすべき条件式を導出し、該条件式を参照してファジィルールを選定しているので、合理的なファジィルールを選定することができる。その結果、ファジィルールの選定のための労力および時間を大幅に軽減することができる。
【0009】
また、選定されたファジィルールは、各入力変量が正である場合と負である場合とに基づいているため、各入力変量に対応するメンバーシップ関数は、正である場合に対応するものと、負である場合に対応するものとの2つだけでよい。例えば、特許文献3では、2つの入力変数のそれぞれに7つのメンバーシップ関数を導入している。従って、メンバーシップ関数の設定を従来よりも容易に行うことができる。
【0010】
本発明に係るファジィ制御装置では、上記複数の入力変量は、或る入力変量と、該入力変量の時間積分および時間微分とを含むことが好ましい。この場合、制御対象の変動に良好に追従して制御することができる。
【0011】
ところで、一般に、入力変量を増加すると、ファジィルールの数を指数関数的に増加させる必要がある。しかしながら、本発明では、入力変量を1つ増加しても、ファジィルールが2倍になる程度であるので、ファジィルールの選定のための労力および時間を従来よりも費やす必要がない。
【0012】
本発明に係るファジィ制御装置では、上記入力変量および上記出力変量に対応するメンバーシップ関数は、ガウス関数およびシグモイド関数の何れか一方または両方であることが好ましい。この場合、制御対象を、より実態に即して制御することができる。
【0013】
ところで、従来は、ファジィルールの選定を簡略化するため、メンバーシップ関数として三角型が用いられてきた。これに対し、本発明では、上述のように、ファジィルールの選定のための労力および時間を大幅に軽減できるので、メンバーシップ関数としてガウス関数および/またはシグモイド関数と利用しても、労力および時間を従来よりも費やす必要がない。
【0014】
なお、本発明のファジィ制御装置は、任意の制御対象に対する制御に適用することができるが、特に、車両の走行を支援する装置に適用することが好ましい。
【0015】
例えば、車両の操舵を制御する操舵制御手段と、上記車両の走行路面上の走行レーンを検出する走行レーン検出手段とを備え、該走行レーン検出手段が検出した走行レーンに沿って上記車両が走行するように上記操舵制御手段を制御することにより、上記車両の上記走行レーンに沿った走行を支援する車両のレーン走行支援装置であって、上記車両の位置を検知する車両位置検知手段と、上記走行レーン検出手段が検出した走行レーンと、上記車両位置検知手段が検知した車両の位置との距離を算出する距離算出手段と、上記距離算出手段が算出した距離に基づいて操舵調整量を生成する操舵調整量生成手段と、該操舵調整量に基づいて上記操舵制御手段による操舵を調整する操舵調整手段とを備えるレーン走行支援装置における上記操舵調整量生成手段に対して、上記構成のファジィ制御装置を適用することが挙げられる。
【0016】
また、運転者による車両の操舵を補助する車両の操舵補助装置であって、車両の操舵を制御する操舵制御手段と、上記車両の目標とする軌跡である目標軌跡の情報を、上記車両の動力学モデルを用いて算出する目標軌跡算出手段と、上記車両の位置を検知する車両位置検知手段と、上記目標軌跡算出手段が算出した目標軌跡と、上記車両位置検知手段が検知した車両の位置との距離を算出する距離算出手段と、上記距離算出手段が算出した距離に基づいて操舵調整量を生成する操舵調整量生成手段と、該操舵調整量に基づいて上記操舵制御手段による操舵を調整する操舵調整手段とを備える操舵補助装置における上記操舵調整量生成手段に対して、上記構成のファジィ制御装置を適用することが挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係るファジィ制御装置では、ファジィ推論に利用されるファジィルールが、複数の入力変量に関するリヤプノフ関数Vの安定条件を示す条件式dV/dt<0と、上記複数の入力変量の少なくとも1つの時間微分と出力変量との対応関係を示す関係式とに基づいて選定されるので、ファジィルールを合理的に選定できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。図2は、本実施形態の制御システムの概略構成を示している。図示のように、制御システム10は、設定装置11、結合点12、ファジィ制御装置13、制御対象14、および検出装置15を備えるフィードバック制御システムである。なお、本発明は、フィードフォワード制御システムに適用することもできる。
【0019】
設定装置11は、結合点12に対して目標値wを出力する。結合点12は、設定装置11からの目標値wと、検出装置15が検出した実際値yとの偏差eを求めてファジィ制御装置13に出力する。ファジィ制御装置13は、偏差eに基づいて、各種の判断および計算を行って、操作量uを求め、求めた操作量uを制御対象14に出力して、制御対象14を制御する。検出装置15は、上記制御の結果を示す制御量を検出し、検出した制御量に基づいて実際値yを求めて結合点12に出力する。
【0020】
図2の制御システム10は、ファジィ制御装置13以外の構成要素は、従来のフィードバック制御システムに含まれる構成要素と同様である。
【0021】
図3は、ファジィ制御装置13の概略構成を示している。図示のように、ファジィ制御装置13は、積分器20、微分器21、ファジィ化ユニット22、ファジィ推論ユニット23、および非ファジィ化ユニット24を備える構成である。
【0022】
積分器20は、入力された偏差eの時間積分を行って、ファジィ化ユニット22に出力する。また、微分器21は、入力された偏差eの時間微分を行って、ファジィ化ユニット22に出力する。
【0023】
ファジィ化ユニット22は、入力された偏差e、偏差eの時間積分∫e、および偏差eの時間微分e′に対応するメンバーシップ関数を取得する。なお、以下では、偏差eの時間積分∫eと、偏差eの時間微分e′とを、それぞれ単に時間積分∫eと時間微分e′と記載する。ファジィ推論ユニット23は、上記メンバーシップ関数に対してファジィルールを適用し、操作量uに対するメンバーシップ関数を求める。非ファジィ化ユニット24は、操作量uに対するメンバーシップ関数に基づいて、操作量uを重心法などの公知の方法により生成する。
【0024】
図1は、ファジィ推論ユニット23にて利用されるファジィルールを、マンダニ型で示している。本実施形態では、上記ファジィルールは、リヤプノフ安定条件から導出されたものである。以下、ファジィルールの導出方法について説明する。
【0025】
上述のように、ファジィ化ユニット22に入力される変数が、偏差e、時間積分∫e、および時間微分e′であるから、リヤプノフ関数V(e)を次式のように選択する。なお、以下では、偏差eの上に1個のドットを付したものは、1階の時間微分e′と同じであり、偏差eの上に2個のドットを付したものは、2階の時間微分e″と同じである。他の変数も同様である。
【0026】
【数1】

【0027】
リヤプノフの安定条件は、リヤプノフ関数V(e)が安定であるための条件であり、下記の条件からなる。
〔第1の条件〕:V(0)=0
〔第2の条件〕:V(e)>0(但し、e≠0)
〔第3の条件〕:V′(e)<0
本実施形態では、これらの条件のうち、第3の条件を利用する。上記式(1)から、第3の条件は次式で表される。
【0028】
【数2】

【0029】
次に、偏差eと操作量uとの関係に基づき、上記式(2)に操作量uを代入する。例えば、後述の実施例のように、2階の時間微分e″と操作量uとが比例関係にある場合、ファジィ推論では、2階の時間微分e″と操作量uとを略等しいと扱えるので、次式のように、2階の時間微分e″を操作量uに置き換えることができる。
【0030】
【数3】

【0031】
上記式(3)を参照すると、偏差e、時間積分∫e、および時間微分e′のそれぞれの正負によって、操作量uをどの程度にすべきかが理解できる。例えば、偏差e、時間積分∫e、および時間微分e′が正である場合、上記式(3)の不等号の左辺における第1項および第2項が正となるから、上記式(3)を常に満たすには、第3項が負であり、かつその大きさが大きい必要がある。このとき、時間微分e′が正であるから、操作量uは、負であり、かつその大きさが大きい必要がある。
【0032】
また、偏差eおよび時間積分∫eが正であり、時間微分e′が負である場合、上記式(3)の不等号の左辺における第1項が正であり、第2項が負となるから、上記式(3)を常に満たすには、第3項が負である必要がある。このとき、時間微分e′が負であるから、操作量uは、正である必要がある。また、偏差eが正であり、時間積分∫eおよび時間微分e′が負である場合、上記式(3)の不等号の左辺における第1項および第2項が負となるから、上記式(3)を常に満たすには、第3項がほぼゼロであればよい。従って、操作量uは、ほぼゼロであればよい。
【0033】
そこで、上記式(3)の偏差e、時間積分∫e、時間微分e′、および操作量uのファジィ集合を次式で表現する。ここで、μはメンバーシップ関数であり、μの添え字のu,p,i,dは、それぞれ操作量u、偏差e、時間積分∫e、および時間微分e′に対応することを示し、μの添え字の+,−は、それぞれ正および負のメンバーシップ関数であることを示している。
【0034】
【数4】

【0035】
上記式(4)のファジィ集合を用いると、上記式(3)から図1に示されるファジィルールを作成することができる。図示のように、リヤプノフの安定条件に基づいてファジィルールを作成すると、ファジィルールの数を、入力変数の正負の組合せ数(本実施形態では、2=8)とすることができる。
【0036】
以上のように、偏差e、時間積分∫e、および時間微分e′に関するリヤプノフ関数Vの安定条件の条件式(2)から、偏差e、時間積分∫e、および時間微分e′と操作量uとが満たすべき条件式(3)を導出し、該条件式(3)を参照してファジィルールを選定しているので、合理的なファジィルールを選定することができる。その結果、ファジィルールの選定のための労力および時間を大幅に軽減することができる。
【0037】
また、偏差e、時間積分∫e、および時間微分e′のそれぞれに対応するメンバーシップ関数の数を2つにし、ファジィルールの数を8個に抑えることができるので、メンバーシップ関数の調整およびファジィルールの選定を従来よりも容易に行うことができる。
【0038】
また、偏差eとその時間微分e′だけでなく、偏差eの時間積分∫eもファジィ化ユニット22に入力しているので、制御対象へのランプ入力に対しても追従することができる。偏差eの時間微分e′および時間積分∫eの代わりに、他のセンサからの状態量をファジィ化ユニット22に入力してもよい。
【0039】
また、本実施形態では、上記メンバーシップ関数としてガウス関数を利用している。この場合、上記メンバーシップ関数として従来頻繁に利用されている三角型の関数に比べて、より実態に即したファジィ制御を行うことができる。なお、上記三角型の関数をメンバーシップ関数として利用してもよいし、シグモイド関数をメンバーシップ関数として利用してもよい。
【0040】
具体的には、上記式(4)のメンバーシップ関数は、下記のようになる。
【0041】
【数5】

【0042】
ここで、c〜cおよびw〜wは、設計によって調整するパラメータである。このうち、パラメータc〜cは、制御対象14の性能および仕様によって、概略値を迅速に決定することができる。従って、設計者は、パラメータc〜cのバランス調整と、パラメータw〜wの調整とを行えばよく、これは、PID制御装置の設計と同程度である。
【0043】
また、非ファジィ化ユニット24における重心法による非ファジィ化は、次式により行われる。
【0044】
【数6】

【0045】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の別の実施形態について、図4および図5を参照して説明する。本実施形態は、図1〜図3に示す制御システム10を車両のレーン走行支援システムに適用したものである。
【0046】
レーン走行支援システムは、車両が走行レーンに沿って走行することを支援するものである。図4は、車両の重心が走行レーンに沿うように車両を走行させることを概略的に示している。同図では、走行レーンが一点鎖線で示され、車両100の重心CGの軌跡が車両軌跡として破線で示されている。図示の例では、車両100の重心CGが走行レーンよりも右側に位置しているため、車両100の走行方向(速度ベクトルvの向き)を左寄りに操舵すればよい。
【0047】
図5は、本実施形態のレーン走行支援システムの概略構成を示している。レーン走行支援システム(レーン走行支援装置)110は、車両100に搭載されるものであり、図示のように、車載カメラ111、レーン認識演算装置(走行レーン検出手段、車両位置検知手段、距離算出手段)112、GPS(Global Positioning System)装置(走行レーン検出手段、車両位置検知手段、距離算出手段)113、ファジィコントローラ(ファジィ制御装置、操舵調整量生成手段)114、操舵角センサ115、結合点(操舵調整手段)116、および操舵アクチュエータ(操舵制御手段)117を備えるフィードバック制御システムである。
【0048】
車載カメラ111は、車両100の外部の状況を撮影し、撮影した撮影画像(カメラ画像)の情報をレーン認識演算装置112に出力する。レーン認識演算装置112は、上記撮影画像に基づいて、走行レーンを認識し、GPS装置113は、車両100の重心など、車両100を代表する位置を検出する。レーン認識演算装置112およびGPS装置113の何れか一方または両方を用いて、走行レーンの位置に対する車両100の位置の誤差を示す位置誤差eが求められ、ファジィコントローラ114に出力される。
【0049】
ファジィコントローラ114は、位置誤差eに基づいてファジィ推論を行って、車輪の操舵角δを出力変量として求め、求めた操舵角δを結合点116に出力する。本実施形態では、ファジィコントローラ114は、図1〜図3に示すファジィ制御装置13と同様の構成である。
【0050】
操舵角センサ115は、ハンドルの操舵角を検知し、検知した操舵角を結合点116に出力する。結合点116は、操舵角センサ115からのハンドルの操舵角に、ファジィコントローラ114からの操舵角δを加算し、加算した操舵角を操舵アクチュエータ117に出力する。操舵アクチュエータ117は、車輪の操舵角が結合点116からの操舵角となるように、車両100の操舵を制御する。
【0051】
なお、本実施形態では、カメラによる撮影画像とGPSによる車両の位置とを利用して、位置誤差eを取得しているが、レーンマーカを利用するなど、公知の方法を種々利用することができる。しかしながら、近時、GPSを利用したカーナビゲーションシステムが市販の自動車に普及しており、また最近では、カメラによる撮影画像を用いた運転支援システムが市販の自動車に搭載され始めていることから、カメラおよびGPSを利用して位置誤差eを取得することが、現段階では最も望ましい。
【0052】
また、本実施形態のファジィコントローラ114では、上記式(5)のパラメータw〜wを意図的に大きくすると、走行レーン付近では操舵支援を殆ど行わず、走行レーンから外れるにつれて、強力な操舵支援を行うようにすることができる。すなわち、運転者の機転をきかせた操作に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0053】
また、ファジィコントローラ114からの操舵角δをそのまま操舵アクチュエータ117に出力してもよい。しかしながら、上記実施形態のように、ファジィコントローラ114からの操舵角δを、結合点116にてハンドルの操舵角と加算して操舵アクチュエータ117に出力する方が、何らかの原因で何れかの操舵角が遮断されても、操舵不能となることを回避できる点で望ましい。
【0054】
〔実施例1〕
次に、本実施形態のレーン走行支援システム110を利用した、走行レーンに対する追従性能のシミュレーション結果について、図6〜図9を参照して説明する。なお、特許文献2に記載のレーン走行支援装置の走行レーンに対する追従性能を参考例として挙げている。
【0055】
まず、次表は、以下で利用されるパラメータとその意味とを示している。また、図6は、本実施例のシミュレーションで利用した車両モデルを示している。この車両モデルは、2DOF(自由度)車両モデルである。
【0056】
【表1】

【0057】
また、タイヤの数学モデルとしては、Magic formula型や、Fiala型などがあるが、本実施例のシミュレーションでは、路面状況の変更を想定しているため、タイヤの構成から導かれるFiala型の円環ビームモデルを利用した。また、車両に対する外乱のモデルとして、本実施例のシミュレーションでは、車両に対して真横から風がかかったとする横風モデルを利用した。
【0058】
以上から、車両の動力学モデルは次式のようになる。
【0059】
【数7】

【0060】
次に、本実施例のシミュレーションで設定したパラメータを説明する。次表は、ファジィコントローラ114におけるメンバーシップ関数のパラメータとその設定値とを示している。
【0061】
【表2】

【0062】
また、次表は車両モデルのパラメータとその設定値とを示している。なお、この車両モデルは、一般的な自動車を想定しており、重心が前輪よりになっている4輪駆動の自動車である。
【0063】
【表3】

【0064】
以上のモデルおよび設定値を利用して、車両の走行レーンに対する追従性能のシミュレーション結果を図7〜図9に示す。図7は、目標軌跡(走行レーン)に対する車両の移動軌跡を示している。
【0065】
一般的な走行レーンの曲線がクロソイド曲線であることを考慮すると、走行レーンの曲率半径は常に変化していると考えるべきであり、このような変化にも対応できる必要がある。そこで、本実施例のシミュレーションでは、目標軌跡Rを、R=15+10×cos(φ/2)(−4π<φ≦4π)とした。従って、目標軌跡は、最大回転半径が25m、最小回転半径が5mとなる。なお、車両100は、図面に向かって左回りに旋回し、車両の目標速度は7.5m/sとした。
【0066】
図7において、実線が本実施例の移動軌跡を示しており、破線が参考例の移動軌跡を示している。同図を参照すると、本実施例のレーン走行支援システム110により、車両100が目標軌跡に良好に追従していることが理解できる。
【0067】
図8は、車両100の追従誤差(位置誤差)eおよび操舵角δの時間変化を示している。同図において、実線が本実施例の時間変化を示しており、破線が参考例の時間変化を示している。また、時間tが0〜30秒では晴天の路面状況とし、30〜60秒では雨天の路面状況としている。また、追従誤差eは、車両の進行方向に向かって左側(目標軌跡の内側)が正としており、右側(目標軌跡の外側)が負としている。
【0068】
図8を参照すると、本実施例では、位置誤差eのみを状態量として利用しているにもかかわらず、車両100が、目標軌跡に僅かな追従誤差(外側に10cm以内)で追従していることが理解できる。また、路面状況が変化しても、良好に追従していることが理解できる。
【0069】
一方、参考例では、実施例に比べて追従誤差が大きいことが理解できる。また、参考例では、時間tが20秒付近、すなわち目標軌跡が最小回転半径となる位置を車両100が通過する時に追従誤差が大きく変動していることが理解できる。また、参考例では、車両モデルのパラメータの設定値を変化させると、上記位置を通過する時に、車両100がスピンしてしまうことが多かった。
【0070】
図9は、本実施例における車両100の追従誤差eおよび操舵角δの時間変化を示している。同図では、時間tが15〜25秒および35〜45秒の時に、車両100に対し15m/sの横風を与えている。図8および図9を比較すると、車両100が横風を受けても、追従誤差eおよび操舵角δが殆ど変化しないことが理解できる。従って、本実施形態のレーン走行支援システム110は、ロバスト性に優れていることが理解できる。なお、参考例では、時間tが20秒付近の時に車両100がスピンしてしまい、測定できなかったため、図9では省略されている。
【0071】
なお、図には示していないが、図3に示す積分器20を省略したファジィコントローラ114で同様のシミュレーションを行った。この場合、車両100が目標軌跡に良好に追従できたが、追従誤差eが負の方へシフトした。すなわち、車両100が目標軌跡の略外側を走行することになった。
【0072】
次に、本実施形態と従来例との考察を行う。特許文献2には、車両の走行路面の傾斜状態を適切に検知し、傾斜状態に左右されることなく、確実に車両のレーン走行支援を行う車両のレーン走行支援装置が開示されている。該レーン走行支援装置は、車両の走行路面の傾斜状態を検知し、傾斜状態に応じて補償操舵量(操舵トルク又は操舵角)を設定し、補償操舵量に基づき操舵制御を修正している。
【0073】
特許文献2のレーン走行支援装置では、カメラ画像、車速、操舵角、ヨーレイト、および横加速度を利用して、車両の傾斜状態の状態量である走行レーンの位置、該位置の変動速度、ヨー角、およびヨーレイトを検知している。上記カメラ画像、車速、操舵角、ヨーレイト、および横加速度を取得するには、それぞれ、カメラ、車速センサ、操舵角センサ、ヨーレイトセンサ、および横加速度センサを車体に設ける必要がある。
【0074】
このように、従来のレーン走行支援装置では、車両の状態量を多数把握する必要があり、このため、車両に多数のセンサを設ける必要がある。また、車両の横滑り、荷重変動、空気力学、走行レーンのバンク、路面状況などの状態量によっても車両の挙動が複雑に変化する。このため、車両のレーン走行支援を確実に行うには、上記状態量をも把握する必要があるが、さらに多数のセンサを車両に設ける必要がある。また、車両の横滑りや路面状況などの状態量は測定が困難である。
【0075】
従って、車両のレーン走行支援を実現するには、ロバスト性に優れ、非線形制御の実現に有効であるファジィ制御を利用することが考えられる。ファジィ制御は、多数の車両制御システムにて利用されている実用的な制御方法ではあるが、レーン走行支援装置に適用された例は知られていない。これは、従来のファジィルールの選定が、経験および試行錯誤によって行われているため、多大な労力および時間を必要とすることが一因として考えられる。
【0076】
例えば、ファジィ制御を用いた運転支援装置として、特許文献3には後輪舵角制御装置が開示されている。該後輪舵角制御装置では、メンバーシップ関数として、単純かつ調節容易な三角型を利用している。また、車速および前輪舵角に対して7つのメンバーシップ関数(負で大、負で中、負で小、ゼロ、正で小、正で中、および正で大)が用意され、設定モードに対して3つのメンバーシップ関数が用意され、操舵速度に対して2つのメンバーシップ関数が用意されている。このため、同文献では、ファジィルールを7×3×2=294個選定している。
【0077】
従って、特許文献3に記載のファジィ制御を、特許文献2に記載のレーン走行支援装置に適用した場合、利用している状態量が4つであるため、各状態量に7つのメンバーシップ関数を用意すると、ファジィルールを7=2041個選定する必要がある。このような莫大な数のファジィルールを技術者が選定することは事実上不可能に近い。
【0078】
一方、本実施形態のファジィコントローラ114では、ファジィ推論に利用される入力変量が、位置誤差eと、その時間積分および時間微分との3つである。しかしながら、本実施形態では、上述のようにリヤプノフの安定条件を用いてファジィルールを選定しているため、各入力変量に2つのメンバーシップ関数を用意すればよく、ファジィルールを2=8個選定すればよい。従って、技術者は、メンバーシップ関数を容易に用意でき、ファジィルールを容易に選定することができる。また、メンバーシップ関数を容易に用意できるので、メンバーシップ関数としてガウス関数および/またはシグモイド関数を利用しても、メンバーシップ関数のパラメータを容易に調整することができる。
【0079】
〔実施の形態3〕
次に、本発明の他の実施形態について、図10および図11を参照して説明する。本実施形態は、図1〜図3に示す制御システム10を車両の操舵支援システムに適用したものである。
【0080】
一般に、自動車は、駆動方式などの車両特性と路面状態などの環境とによって、車両の旋回がオーバステアになったり、アンダーステアになったりするなど、車両の挙動が変化する。そこで、従来の操舵支援は、車速、操舵速度などの状態量に基づいて補助モータおよび/または可変ギア機構を制御して操舵トルクを変更し、車両の挙動を安定化させるパワーステアリングが行われていた。また、最近では、車速、ヨーレイトなどから、車両のステアリング特性を判定し、判定した特性に応じて操舵輪の補正回転角を導出する車両用操舵装置が提案され、例えば特許文献4に記載されている。
【0081】
しかしながら、上述のように、車両の状態を完全に把握することは困難であるため、特許文献4に記載の車両用操舵装置では、オーバステアであるか否かと、アンダーステアであるか否かとを判定しているのみである。従って、オーバステアおよびアンダーステアの度合を評価する方法や、該評価に基づいて操舵を支援する具体的な方法は未だ知られていない。
【0082】
そこで、本願発明者らは、車両100の動力学モデルから理想的な車両軌跡を算出し、これを目標軌跡として、該目標軌跡と実際の車両軌跡との誤差からオーバステアおよびアンダーステアの度合を評価できることを見出した。そして、目標軌跡と車両軌跡との誤差に基づいて、運転者のステアリング操作によるハンドル操舵角を補正することにより、車両軌跡を目標軌跡に近づける操舵支援システムを案出した。
【0083】
図10は、車両100の重心CGの軌跡である車両軌跡が目標軌跡に沿うように車両を走行させることを概略的に示している。同図では、目標軌跡が破線で示され、車両軌跡が実線で示されている。図示の例では、車両軌跡が目標軌跡よりも右側に位置しているため、車両100の走行方向(速度ベクトルvの向き)を左寄りに操舵すればよい。
【0084】
図11は、本実施形態の操舵支援システムの概略構成を示している。本実施形態の操舵支援システム(操舵補助装置)120は、図5に示すレーン走行支援システム110に比べて、目標位置算出装置(目標軌跡算出手段)121および結合点(距離算出手段)122を追加した点と、レーン認識演算装置112およびGPS装置113の何れか一方または両方が、車両100の位置情報を結合点122に出力する点とが異なり、その他の構成は同様である。なお、上記実施形態で説明した構成と同様の機能を有する構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0085】
目標位置算出装置121は、上記式(7)に示すような車両100の動力学モデルを利用して、操舵角センサ115からのハンドルの操舵角から、上記目標軌跡上の位置である目標位置を算出し、算出した目標位置の情報を結合点122に出力する。結合点122は、目標位置算出装置121からの目標位置と、レーン認識演算装置112および/またはGPS装置113からの車両100の位置との誤差eを求めてファジィコントローラ114に出力する。
【0086】
本実施形態の操舵支援システム120は、上記実施形態に記載の作用効果を奏すると共に、さらに下記の作用効果を奏する。すなわち、本実施形態の操舵支援システム120は、ハンドルの操舵角を補正するものであり、操舵トルクに影響を与えないため、他のパワーステアリング装置と併用することもできる。
【0087】
ところで、前後輪のコーナリングの力が等しい場合、ニュートラルステアとなり、理想的な走行軌跡(目標軌跡)となる。従って、本実施形態の操舵支援システム120は、車両100が常にニュートラルステアとなるべく、操舵支援を行っている。しかしながら、走行状態や運転者の判断によってバランスを変更し、アンダーステアやオーバステアに変更することにより、運転者が運転を楽しむようにすることもできる。
【0088】
また、現段階では実用化されていないが、車体横滑り角βを検知するセンサを設けることができれば、誤差eは、e=β−β(但し、βは目標とする車体横滑り角である)とすることができる。
【0089】
〔実施例2〕
次に、本実施形態の操舵支援システム120を利用した操舵支援のシミュレーション結果について、図12および図13を参照して説明する。なお、本実施例のシミュレーションで設定したパラメータは、図6〜図9に示す実施例と同様である。図12は、目標軌跡に対する車両100の移動軌跡を示している。
【0090】
一般的な車両100の方向転換がクロソイド曲線であることを考慮すると、車両100の旋回の曲率半径は常に変化していると考えるべきであり、このような変化にも対応できる必要がある。そこで、本実施例のシミュレーションでは、目標操舵角δを、δ=0.115×(1+cos(1.115×t))とした。なお、車両100は、図面に向かって左回りに旋回し、車両の目標速度は7.5m/sとした。
【0091】
図12を参照すると、本実施例の操舵支援システム120により、車両100が目標軌跡に良好に追従していることが理解できる。図13は、本実施例における車両100の追従誤差eおよび操舵角δの時間変化を示している。同図では、時間tが15〜25秒および35〜45秒の時に、車両100に対し15m/sの横風を与えている。
【0092】
図13を参照すると、本実施例では、追従誤差eのみを状態量として利用しているにもかかわらず、車両100が、目標軌跡にごく僅かの誤差(ミリ単位)で追従していることが理解できる。また、ファジィコントローラ114からの操舵角δが、車両100の旋回状況に応じて適切に変化しているので、操舵支援を適切に行っていることが理解できる。また、車両100が横風を受けても、追従誤差eおよび操舵角δが殆ど変化しないことが理解できる。従って、本実施形態の操舵支援システム120は、ロバスト性に優れていることが理解できる。
【0093】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0094】
例えば、上記実施形態では、ファジィ推論を利用して、位置の誤差eから操舵角δを求めて操舵を制御することにより、走行レーンへの追従または操舵支援を行っているが、さらに、速度の誤差eから駆動・制動力Fを求めて駆動・制動機構を制御することにより、走行レーンへの追従または操舵支援を行ってもよい。
【0095】
図14は、図5に示すレーン走行支援システム110に対し、速度の誤差eから駆動・制動力Fを求めて車両100の駆動・制動機構(図示せず)を制御するファジィ速度コントローラ130を追加した構成を示している。また、図15は、図11に示す操舵支援システム120に対し、上記構成のファジィ速度コントローラ130を追加した構成を示している。
【0096】
図14および図15に示すように、ファジィ速度コントローラ130は、ファジィコントローラ114から独立して設けることができるので、各コントローラ114・130の設計を別々に行うことができる。その結果、コントローラ114・130の設計効率を向上させることができる。なお、図15の場合、目標位置算出装置121は、目標操舵角δだけでなく、目標速度vに基づいて、目標位置を算出することが望ましい。
【0097】
最後に、制御システム10、レーン走行支援システム110、および操舵支援システム120の各ブロック、特にファジィ制御装置13およびファジィコントローラ114は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0098】
すなわち、制御システム10、レーン走行支援システム110、および操舵支援システム120は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである制御システム10、レーン走行支援システム110、および操舵支援システム120の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記制御システム10、レーン走行支援システム110、および操舵支援システム120に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0099】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0100】
また、制御システム10、レーン走行支援システム110、および操舵支援システム120を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係るファジィ制御装置は、車両の走行支援以外にも、複数の入力変量に基づいて出力変量を求めて制御する任意の制御装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態である制御システムにおいて利用されるファジィルールを示す図である。
【図2】上記制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】上記制御システムにおけるファジィ制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】車両の重心が走行レーンに沿うように車両を走行させることを概略的に示す図である。
【図5】本発明の別の実施形態であるレーン走行支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【図6】車両モデルを示す図である。
【図7】上記レーン走行支援システムによる走行レーンに対する車両の移動軌跡を示すグラフである。
【図8】上記レーン走行支援システムによる車両の位置誤差および操舵角の時間変化を示すグラフである。
【図9】上記レーン走行支援システムによる車両の位置誤差および操舵角の時間変化を示すグラフである。
【図10】車両軌跡が目標軌跡に沿うように車両を走行させることを概略的に示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態である操舵支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【図12】上記操舵支援システムによる目標軌跡に対する車両の移動軌跡を示すグラフである。
【図13】上記操舵支援システムによる車両の追従誤差および操舵角の時間変化を示すグラフである。
【図14】上記レーン走行支援システムにファジィ速度コントローラを追加した構成を示すブロック図である。
【図15】上記操舵支援システムにファジィ速度コントローラを追加した構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0103】
10 制御システム
11 設定装置
12 結合点
13 ファジィ制御装置
14 制御対象
15 検出装置
20 積分器
21 微分器
22 ファジィ化ユニット
23 ファジィ推論ユニット
24 非ファジィ化ユニット
100 車両
110 レーン走行支援システム(レーン走行支援装置)
111 車載カメラ
112 レーン認識演算装置(走行レーン検出手段、車両位置検知手段、距離算出手段)
113 GPS装置(車両位置検知手段、車両位置検知手段、距離算出手段)
114 ファジィコントローラ(ファジィ制御装置、操舵調整量生成手段)
115 操舵角センサ
116 結合点(操舵調整手段)
117 操舵アクチュエータ(操舵制御手段)
120 操舵支援システム(操舵補助装置)
121 目標位置算出装置(目標軌跡算出手段)
122 結合点(距離算出手段)
130 ファジィ速度コントローラ
V リヤプノフ関数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力変量に対しファジィ推論を行って出力変量を生成し、生成した出力変量を制御対象に出力して制御するファジィ制御装置であって、
上記ファジィ推論に利用されるファジィルールは、上記複数の入力変量に関するリヤプノフ関数Vの安定条件を示す条件式と、上記複数の入力変量の少なくとも1つと上記出力変量との対応関係を示す関係式とに基づいて選定されたものであることを特徴とするファジィ制御装置。
【請求項2】
複数の入力変量に対しファジィ推論を行って出力変量を生成し、生成した出力変量を制御対象に出力して制御するファジィ制御装置であって、
各入力変量に対応するメンバーシップ関数は2つであり、ファジィルールの数は2(但し、nは入力変量の数)であることを特徴とするファジィ制御装置。
【請求項3】
上記複数の入力変量は、或る入力変量と、該入力変量の時間積分および時間微分とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のファジィ制御装置。
【請求項4】
上記入力変量および上記出力変量に対応するメンバーシップ関数は、ガウス関数およびシグモイド関数の何れか一方または両方であることを特徴とする請求項1または2に記載のファジィ制御装置。
【請求項5】
車両の操舵を制御する操舵制御手段と、上記車両の走行路面上の走行レーンを検出する走行レーン検出手段とを備え、該走行レーン検出手段が検出した走行レーンに沿って上記車両が走行するように上記操舵制御手段を制御することにより、上記車両の上記走行レーンに沿った走行を支援する車両のレーン走行支援装置であって、
上記車両の位置を検知する車両位置検知手段と、
上記走行レーン検出手段が検出した走行レーンと、上記車両位置検知手段が検知した車両の位置との距離を算出する距離算出手段と、
上記距離算出手段が算出した距離に基づいて操舵調整量を生成する操舵調整量生成手段と、
該操舵調整量に基づいて上記操舵制御手段による操舵を調整する操舵調整手段とを備えており、
上記操舵調整量生成手段は、請求項1ないし4の何れか1項に記載のファジィ制御装置であることを特徴とするレーン走行支援装置。
【請求項6】
運転者による車両の操舵を補助する車両の操舵補助装置であって、
車両の操舵を制御する操舵制御手段と、
上記車両の目標とする軌跡である目標軌跡の情報を、上記車両の動力学モデルを用いて算出する目標軌跡算出手段と、
上記車両の位置を検知する車両位置検知手段と、
上記目標軌跡算出手段が算出した目標軌跡と、上記車両位置検知手段が検知した車両の位置との距離を算出する距離算出手段と、
上記距離算出手段が算出した距離に基づいて操舵調整量を生成する操舵調整量生成手段と、
該操舵調整量に基づいて上記操舵制御手段による操舵を調整する操舵調整手段とを備えており、
上記操舵調整量生成手段は、請求項1ないし4の何れか1項に記載のファジィ制御装置であることを特徴とする操舵補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−197848(P2008−197848A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31345(P2007−31345)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(599035627)学校法人加計学園 (43)
【Fターム(参考)】