説明

フィルムコンデンサ

【課題】誘電体にフィルムを使用したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納する上端面に開口部のある有底筒状の金属ケースと、この金属ケースの開口部を封口する樹脂キャップと、樹脂キャップに設けた穴から充填樹脂を金属ケース内に充填するフィルムコンデンサにあって、金属ケースの側面方向に沿って、樹脂キャップの周辺部から一体的に張り出した筒状の張り出し部を設け、この張り出し部に金属ケースの開口部にはめ込まれるはめ込み部分を設けた場合、樹脂キャップのはめ込み部分とコンデンサ素子との間のすき間の周回ばらつきをなくし、金属ケース内に均一に充填樹脂を充填させる。
【解決手段】この張り出し部の側面に、張り出し部とコンデンサ素子とのすき間部分に、複数の凸部設けるフィルムコンデンサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサは、従来、図3に示すように、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)等のフィルムに、アルミニウム(Al)や亜鉛(Zn)を蒸着して電極を形成し、これを積層または捲回してコンデンサ素子1を構成するか、Al箔電極をフィルムとともに積層または捲回してコンデンサ素子1を構成していた。蒸着金属の場合、こうしてできたコンデンサ素子1にメタリコンの端面電極8を施し、この端面電極8に引き出しタブ10を溶接又ははんだ付し、ケース12に収納し、引き出しタブ10はケース12外に引き出し、プラスチックケース12内には充填樹脂4を注入し、コンデンサ素子1や引き出しタブ10部分に充填樹脂4を充填硬化していた。
ところで、上記の引き出しタブは、充填樹脂だけで固定されているので、固定が不安定になりやすい。そのため、特許文献1には、金属ケースの開放端部に設けた封口用の樹脂キャップの外部端子に、この引き出しタブを接続固定し、樹脂キャップに設けた貫通穴から金属ケース内を樹脂充填する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−71179公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の封口用の樹脂キャップを金属ケースの開放端部に設けた後、樹脂キャップに設けた貫通穴から金属ケース内を樹脂充填する方法において、樹脂キャップに設けた外部端子と金属ケースとの絶縁距離を大きくとるために、金属ケースの側面方向に沿って、樹脂キャップの周辺部から一体的に張り出した筒状の張り出し部を設け、この張り出し部には金属ケースの開口部にはめ込まれるはめ込み部分を設けた場合で、このはめ込み部分よりもコンデンサ素子のほうが樹脂キャップに近い場合、このはめ込み部分がコンデンサ素子にかかるので、このはめ込み部分とコンデンサ素子との間のすき間が狭くまた、すき間の間隔が部分的にばらついてしまい、金属ケース内に均一に樹脂が充填し難くなってしまう。
【0005】
そのため、本発明では、樹脂キャップのはめ込み部分とコンデンサ素子との間のすき間の周回ばらつきをなくし、金属ケース内に均一に樹脂を充填させたフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、下記のフィルムコンデンサを提供するものである。
(1)誘電体にフィルムを使用したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納する上端面に開口部のある有底筒状の金属ケースと、この金属ケースの開口部を封口する樹脂キャップと、前記金属ケース内を充填する充填樹脂とを備えたフィルムコンデンサにあって、前記金属ケースの側面方向に沿って、前記樹脂キャップの周辺部から一体的に張り出した筒状の張り出し部を設け、この張り出し部には前記金属ケースの開口部にはめ込まれるはめ込み部分と、この前記張り出し部の側面と前記コンデンサ素子とのすき間部分には複数のスペーサ用凸部と、を有することを特徴とするフィルムコンデンサ。
(2)前記スペーサ用凸部が、前記張り出し部の張り出し方向のストライプであることを特徴とする(1)記載のフィルムコンデンサ。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の構成により、樹脂キャップのはめ込み部分とコンデンサ素子との間の周回すき間のばらつきをなくし、金属ケース内に均一に樹脂を充填させたフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態を示すフィルムコンデンサの断面図を示している。
【図2】本発明の別の実施の形態を示すフィルムコンデンサの断面図を示している。
【図3】従来のフィルムコンデンサの概略断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に述べる金属ケースは、上端面に開口部のある有底筒状の金属容器で、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ステンレス、銅またはそれらの合金などが使用できる。
特に、アルミニウムは軽量、加工性、コスト的にも優れているため好ましく使用できる。アルミニウム材質は、純アルミニウム系(A1000系)と、アルミニウム合金系としてAl−Zn、Al−Mgも使用(A3000系、A5000系)できる。
金属ケースの作成方法は、インパクト成形法等が利用でき、ケース厚みは0.3〜2mmで使用する。好ましくは、ケース厚み0.5〜1.5mmとなる。
【0010】
本発明における樹脂キャップは、金属ケースの開口部を封口するもので、その周辺部から金属ケースの側面方向に、一体的に張り出した筒状の張り出し部を設け、この張り出し部には前記金属ケースの開口部にはめ込まれるはめ込み部分を設ける。
樹脂キャップの材質は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリオキシメチレン)、PPO(ポリフェニレンオキサイド)等の成形品、またはポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどの真空成形品が使用できる。ガラス繊維で強化されてもよい。好ましくは、充填樹脂の硬化温度でも塑性変形しないPPS、PBT、PPEなどの耐熱性の結晶性の樹脂が好ましい。
【0011】
本発明における充填樹脂は、コンデンサ用の絶縁性の充填材で、一般的にフィルムコンデンサの充填用に使用しているものが使用でき、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂にフィラー等を混ぜたものである。フィラーとしては、珪素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭化物、窒化物、これらの複合物などが使用できる。必要があれば、難燃剤、酸化防止剤を添加してもよい。
この充填樹脂は、樹脂キャップに設けた貫通孔等から金属ケース内に液体状で注入され、充填後加熱や硬化剤による重合化等により固化される。金属ケース内からはみ出した充填樹脂は、封口体の外表面に設けた、ダム形状の周回体やせき止め溝によりせき止める。封口体と一体化したものが好ましいが別部品でもよい。たとえば、粘着テープをダム形状に周回しておくとか、熱収縮チューブを金属ケース側面外周に設ける場合、外部端子側にはみ出させたりして、はみ出した充填樹脂をせき止めてもよい。
充填樹脂は、単層の材料でもよいし、同じ材料でも物性値を変えた複数層ものでもよいし、樹脂またはフィラー等の種類や量を別々に選択することができる。別々に選択することにより、充填樹脂周辺部分の樹脂の堅さ、熱膨張係数、構成材料との密着性等を最適なものとすることができる。
たとえば、コンデンサ素子側には比較的柔軟性のあるウレタン系の樹脂、封口体側には比較的強度があり外部端子と密着性のあるエポキシ系の樹脂などが選択できる。また、フィラーの量をコンデンサ素子側には少なく、封口体側には多くするなども選択できる。
【0012】
本発明におけるスペーサ用凸部は、金属ケースの側面方向に沿って樹脂キャップの周辺部から一体的に張り出した筒状の張り出し部に設けた突起物で、コンデンサ素子とこの張り出し部とのリング状のすき間部分に、リング状のすき間が均一になるように設ける。

スペーサ用凸部の形状は、ドット状または張り出し部の張り出し方向のストライプ状が使用できる。
スペーサ用凸部の設ける場所は、コンデンサ素子と樹脂キャップの張り出し部とのリング状のすき間部分に間欠的に設けるだけでよいが、樹脂キャップの成形金型の関係で、樹脂キャップの張り出し部の元から、張り出し方向にストライプ状であると成形が容易で好ましい。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示すフィルムコンデンサの断面図を示している。
図1では、誘電体にフィルムを使用したコンデンサ素子1と、このコンデンサ素子1を収納する上端面に開口部のある有底筒状の金属ケース2と、この金属ケース2の開口部を封口する樹脂キャップ3と、樹脂キャップ3に設けた貫通穴4から注入して、金属ケース2内を充填する充填樹脂5とを備えたフィルムコンデンサにあって、金属ケース2の内側面方向に、樹脂キャップ3の周辺部から一体的に張り出した筒状の張り出し部6を設け、この張り出し部6には金属ケース2の開口部にはめ込まれるはめ込み部分7を有する。コンデンサ素子1と張り出し部6とのリング状のすき間部分に、複数のドット状のスペーサ用凸部8を張り出し部6に設けている。
【0014】
また、コンデンサ素子1の両端面には、亜鉛金属などの金属の溶射などの方法により端面電極9を形成し、これと樹脂キャップ3に設けた外部との接続用の外部端子10とは、引き出しタブ11により接続する。
外部端子10本体の材質としては、たとえば、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、ステンレス、燐青銅等の金属または合金からなるもの、表面に錫、半田等をメッキする場合もある。形状は、直径が1mmから30mm程度の円錐形で、その大きさは流れる電気量により決定する。外部とは、ボルト等により接続できるような、ネジ等の加工部を設け接続される。
【0015】
引き出しタブ11は、金属の箔、薄板、または線など変形可能で、はんだ接続、溶接、圧接可能なものが限定なく使用できる。特に電気的良導体として銅または銅合金が好ましい。また接続部分以外の部分を絶縁物で被覆することもある。引き出しタブ11を外部端子10と一体化させる場合もある。
【0016】
なお、誘電体のフィルムはポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、フェニレンサルファイドフィルム等など特に限定なく使用できる。
【0017】
また、コンデンサ素子も、特に限定なく、誘電体の片面に金属化蒸着電極を形成した金属化フィルムを2枚重ねて捲回したコンデンサ素子のほか、両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムと、金属蒸着電極を形成していない誘電体フィルムとを重ねて捲回して作製したコンデンサ素子でもよい。
【0018】
図2は、本発明の別の実施の形態を示すフィルムコンデンサの断面図を示している。図2(a)では、縦方向の断面図、図2(b)では、横方向の断面図を示している。
コンデンサ素子1と張り出し部6とのリング状のすき間部分に、複数のドット状のスペーサ用凸部8の代わりに張り出し方向のストライプ状のスペーサ用凸部8を張り出し部6に設けている。
スペーサ用凸部8の設ける場所は、コンデンサ素子1と樹脂キャップ3の張り出し部6とのリング状のすき間部分に間欠的に設けるだけでよいが、樹脂キャップ3の成形金型の関係で、樹脂キャップ3の張り出し部6の元から、張り出し方向にストライプ状であると成形が容易で好ましい。
また、図2(b)では、金属ケース2、樹脂キャップ3の張り出し部6、スペーサ用凸部8、コンデンサ素子1そして引き出しタブ11がかさなった部分の断面となっている。スペーサ用凸部8は、おおよそ等間隔で樹脂キャップ3の張り出し部6の内側面から一体に突出している。また、引き出しタブ11は、スペーサ用凸部8と隣のスペーサ用凸部8との間を通って引き出されている。
【符号の説明】
【0019】
1…コンデンサ素子、2…金属ケース、3…樹脂キャップ、4…貫通穴、5…充填樹脂、6…張り出し部、7…はめ込み部分、8…スペーサ用凸部、9…端面電極、10…外部端子、11…引き出しタブ、12…プラスチックケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体にフィルムを使用したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納する上端面に開口部のある有底筒状の金属ケースと、この金属ケースの開口部を封口する樹脂キャップと、前記金属ケース内を充填する充填樹脂とを備えたフィルムコンデンサにあって、前記金属ケースの側面方向に沿って、前記樹脂キャップの周辺部から一体的に張り出した筒状の張り出し部を設け、この張り出し部には前記金属ケースの開口部にはめ込まれるはめ込み部分と、この前記張り出し部の側面と前記コンデンサ素子とのすき間部分には複数のスペーサ用凸部と、を有することを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記スペーサ用凸部が、前記張り出し部の張り出し方向のストライプであることを特徴とする請求項1のフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−69966(P2013−69966A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208704(P2011−208704)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(309035062)日立エーアイシー株式会社 (47)
【Fターム(参考)】