フィルム・インサート成形プラスチック・ウィンドウ用電気接続部
第1面及び第2面を有する透明なプラスチック基板を含むプラスチック・ウィンドウ。この基板の第1面に、基板よりも薄いプラスチック・フィルムが接着される。少なくとも1つの導電コネクタ部を含む導電性グリッドが、基板とフィルムとの間に封入される。基板の中に延在する少なくとも1つの電気コネクタが、導電コネクタ部と電気的に接触する状態に配置され、その結果、電圧源を導電コネクタ部に接続し、電流を導電性グリッド中に流すことができるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、導電性グリッド、トレース又は回路(以後は単に「グリッド」という)をパネル上に有するプラスチック・パネルへの電気端子の接続に関するものである。より詳細には、本発明は、霜除去及び曇り除去などの機能をウィンドウ・システムにもたせるために、フィルム・インサート成形によってプラスチック・ウィンドウ・システムのプラスチック基板に適用される電気グリッドに対する電気端子の取付けに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウィンドウの霜除去及び曇り除去などの機能を、ウィンドウ・システム、とりわけ自動車のバックライトにもたせるために、導電性グリッドが長く使用されてきた。例えば電気加熱バックライトでは、一般に、導電性ヒーティング・グリッドがウィンドウの内側又は外側に配置される。また一般に、ヒーティング・グリッドは、一連のグリッド線が間に延在する一対の対向するバスバーも含む。このヒーティング・グリッド中を電流が通過する間、グリッド線の抵抗により熱が発生することになり、この熱がウィンドウ全体にわたって放散し、続いてウィンドウの霜又は曇りが除去される。ヒーティング・グリッドに電気を供給するために、ヒーティング・グリッドは自動車の電気系統に接続される。
【0003】
ヒーティング・グリッドへの自動車の電気系統の接続を実施するために、ヒーティング・グリッドのバスバーが、ウィンドウの縁部を越えて延在するホイル・タブを持つよう形成されてきた。このタブに車両の電気系統からのワイヤ・ハーネス端子が係合する。この端子は、様々な構造とすることができるが、ハウジング内に入れられたばね金属接点を含むことが多い。このハウジングがタブに取り付けられると、その接点が付勢されてバスバーと接触する。別の構造では、結合パッドがバスバーに一体化して形成され、又は取り付けられ、この結合パッドに車両の電気系統からの端子がハンダ付けされる。
【0004】
別の代替構造では、ヒーティング・グリッドは、フィルム・インサート成形(FIM)によってウィンドウの基板に取り付けられる。フィルム・インサート成形(FIM)は、インモールド成形(IMD)と呼ばれることもある。本発明がとりわけ対象とするのはこれらの技法である。FIMでは、ヒーティング・グリッドは、本明細書でフィルムと呼ぶ柔軟で薄いプラスチック・シート上に印刷される。このフィルムは、プラスチック・パネルが中に形成される金型のキャビティ面の形状に一致するように形づくられる。フィルムは、ヒーティング・グリッドが金型キャビティの内側に向くように、金型内で、金型キャビティに対応する面上に配置される。その後、金型が閉じられ、パネルの基板用のプラスチック樹脂が金型中に注入され、それによってフィルムがバックフィル(back filling)され、プラスチック・フィルムが付着したパネルが形成される。その結果、ヒーティング・グリッドは、パネル内でフィルムと基板との間に封入される。パネルが十分に冷却された後、金型が開かれ、フィルム及び一体化したヒーティング・グリッドを備えたパネルが金型から取り出される。
【0005】
上記の構造のそれぞれには、既知の問題及び制約がある。ばね接点の例示的な制約には、車両の寿命の間に疲労及び/又は振動によりばね接点がゆるんで、ヒーティング・グリッドが動作しなくなる、又は動作不良になるということがある。パッド結合構造の制約に関しては、つけるハンダが多すぎたり少なすぎたりすると、端子と結合パッドとの間の接合が弱くなり、その結果、端子が結合パッド自体から容易に外れることになりうる。プラスチックのガラス転移温度が低いことにより、従来の高温ハンダを使用してバスバーへの堅固な接続部を作製することができない。残念ながら、市販の低温ハンダ、及び導電性接着剤でさえも、容認できる結合強度、及び、又は信頼性を有していない。
【0006】
FIMによって取り付けられるヒーティング・グリッドに関しては、モールド成形後、ヒーティング・グリッドはフィルムとパネルのプラスチック基板との間に封入される。ヒーティング・グリッドが機能するようにするためには、ヒーティング・グリッドが車両の電気系統に、より具体的には、電気系統の電気端子に接続されなければならない。上記に鑑みて、端子をプラスチック・ウィンドウ・システムのFIM導電性グリッドのバスバーに取り付けるための改善された接続構造が必要なことが明らかである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
関連技術についての列挙した欠点及び他の制約を克服するだけでなく、上記の必要性も満たすために、本発明は、第1面及び第2面を有する透明なプラスチック基板を含むプラスチック・ウィンドウを用意することによって、FIM導電性グリッドの接続の問題を解決する。この基板の第1面に、基板よりも薄いプラスチック・フィルムが接着される。少なくとも1つの導電コネクタ部を含む導電性グリッドが、基板とフィルムとの間に封入される。少なくとも1つの電気コネクタが、基板内に延在し、導電コネクタ部と電気的に接触する状態に配置され、その結果、電圧源を導電コネクタ部に接続し、電流を導電性グリッドに流すことができるようになる。
【0008】
本発明の別の態様では、基板とフィルムとの間の接着が溶融接着である。
【0009】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、基板内に形成された穴の中に延在する。
【0010】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、穴を画定する基板の部分と接触する。
【0011】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、穴を画定する基板の部分と接触しない。
【0012】
本発明の別の態様では、電気コネクタは穴とねじ係合する。
【0013】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、基板に少なくとも部分的に封入され、その中で機械的に保持される。
【0014】
本発明の別の態様では、導電性グリッドは、アンテナ、エレクトロルミネセント・ボーダー(electroluminescent border)、電気スイッチ、ヒーティング・グリッド、並びにエレクトロクロミック・デバイス、フォトクロミック・デバイス、液晶デバイス、ユーザ制御可能フォトクロミック・デバイス、ポリマー分散液晶デバイス及び当技術分野で一般に知られている懸濁粒子デバイス(suspended particle device)などの発色デバイスのうちの1つである。
【0015】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、プラスチック基板内に鋳込まれたねじ金属インサートであり、導電コネクタ部と接触する。
【0016】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、導電コネクタ部に取り付けられた金属円盤であり、この円盤は、基板の開口を通じて部分的に露出している。
【0017】
本発明の別の態様では、円盤は電気端子取付け機能を有する部分を含む。
【0018】
本発明の別の態様では、円盤の底面は、導電コネクタ部と接触しており、刻み目を付けた面(knurled surface)を有することができる。
【0019】
本発明の別の態様では、電気端子取付け機能を有する部分は、円盤内に画定された折り曲げタブである。
【0020】
本発明の別の態様では、保護コーティングが基板及びフィルムに施され、この保護コーティング・システムは、耐候層及び耐摩耗層のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
本発明の別の態様では、フィルムは薄いプラスチック・シートである。
【0022】
本発明のさらに別の態様では、プラスチック・ウィンドウを製造する方法は、第1面及び第2面を有する薄く柔軟なプラスチック・フィルムを用意するステップと、フィルムの第1面上に、少なくとも1つの導電コネクタ部を含む導電性グリッドを形成するステップと、フィルムを金型のキャビティ面に固定するステップであって、このキャビティ面が、ウィンドウの形状に金型のキャビティを部分的に画定し、フィルムの第2面がキャビティ面と接触するステップと、フィルムがキャビティ内に保持されるように金型を閉じるステップと、金型とフィルムの第1面との間のキャビティ内にプラスチック樹脂を注入して基板を画定するステップと、導電性グリッドがフィルムと基板との間に封入されるようにフィルムの第1面を基板に溶融接着するステップと、基板内に延在し、導電コネクタ部と電気的に接触し、それによって電圧源を導電コネクタ部に接続することができ、またそれによって導電性グリッドに電流を流すことができる、電気コネクタを設けるステップとを含む。
【0023】
本発明の別の態様では、この方法は、基板を導電コネクタ部まで貫通する少なくとも1つの穴を形成するステップをさらに含み、電気コネクタが、穴の中に延在するように設けられる。
【0024】
本発明の別の態様では、穴は、基板の、導電コネクタ部に直近の部分を機械的に切除することによって形成される。
【0025】
本発明の別の態様では、穴は、フィルムに対向して位置する金型の一部分から延びるピンのまわりに基板をモールド成形することによって形成される。
【0026】
本発明の別の態様では、この方法は、キャビティ内にプラスチック樹脂を注入するステップの前に、金型を閉じ、ピンを導電コネクタ部と接触させるステップをさらに含む。
【0027】
本発明の別の態様では、金型を閉じると同時に、ピンを支持する金型の部分の中に、このピンは、少なくとも部分的に引き入れられる。
【0028】
本発明の別の態様では、ピンは、ピンを支持する金型の部分から延びる位置へ向けて付勢される。
【0029】
本発明の別の態様では、電気コネクタは超音波により穴の中に挿入される。
【0030】
本発明の別の態様では、電気コネクタは穴の中に熱により挿入される。
【0031】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、本明細書に添付され、その一部を成す図面及び特許請求の範囲を参照して以下の説明を検討すれば、当業者には容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の原理を実施するプラスチック・ウィンドウの図である。
【図2】図1に見られるプラスチック・ウィンドウの部分断面図である。
【図3A】本発明の原理によるプラスチック・ウィンドウをモールド成形するための金型の概略図である。
【図3B】図3Aでモールド成形されたプラスチック・ウィンドウの概略断面図である。
【図4A】本発明の原理による別のプラスチック・ウィンドウをモールド成形するための金型の概略図である。
【図4B】図4Aでモールド成形されたプラスチック・ウィンドウの概略断面図である。
【図5】本発明で使用できる代表的なコネクタを示す図である。
【図6A】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6B】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6C】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6D】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6E】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6F】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【実施例】
【0033】
好ましい諸実施例についての以下の説明は、例示的な性質のものにすぎず、本発明の範囲、あるいはその応用又は用途を限定するものでは決してない。
【0034】
ここで図1を参照すると、プラスチック・ウィンドウ・システム10が全体的に示されており、その主要な構成要素として、パネル14内に組み込まれた導電性グリッド12を含む。導電性グリッド12は、ウィンドウ・システムに機能をもたせる様々な要素の1つであるが、ここでは導電性グリッド12をさらに説明するとともに、それをヒーティング・グリッド12と呼ぶ。
【0035】
ヒーティング・グリッド12は、概して対向するバスバー18、19の間に延在する一連のグリッド線16を含むことが好ましいが、他のヒーティング・グリッドの構造を使用することもできる。さらに、グリッド線16のうちの少なくとも一部を、残りのグリッド線16の間に広がる導電性コーティングと置き換えることもできる。
【0036】
バスバー18、19は、正極バスバー及び負極バスバーと呼ばれ、それぞれ、自動車の電気系統の一部である電源22の正極リード線20、負極リード線21に接続される。ヒーティング・グリッド12に電圧が加えられると、電流が正極バスバー18から負極バスバー19へとグリッド線16を通って流れ、その結果、グリッド線16は抵抗加熱によって熱くなる。バスバー18、19及びグリッド線16の幅及び長さは、適切な任意の寸法とすることができ、一つには、ウィンドウ・システム10のサイズ及び他の特性によって決められる。
【0037】
図2で分かるように、パネル14は、より詳細には、26及び28でそれぞれ示された対向する第1及び第2の面を有する透明なプラスチック基部層すなわち基板24を含む。これらの面は、それぞれ、自動車に組み込まれたウィンドウの内側面及び外側面の方向に向けられている。パネル14はさらに、第1面32及び第2面34を有する透明なプラスチック・フィルム32を含む。ヒーティング・グリッド12は、フィルム30の第1面32に設けられる。パネル14の最終構造では、ヒーティング・グリッド12を基板24とフィルム30との間に封入するために、基板24の第1面26とフィルム30の第1面32とは、一体化してともに溶融接着される。パネル14はさらに、その片面又は両面に塗布された耐候層36及び/又は耐摩耗層38を含むことができる。
【0038】
基板24及びフィルム30はプラスチック樹脂で形成され、この樹脂は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂及びポリスルホン樹脂、並びにそれらの共重合体及び混合物でよいが、それらに限定されない。基板24及びフィルム30はさらに、様々な添加物を含むことができ、とりわけ、着色剤、離型剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤(UVA)などを含むことができる。
【0039】
フィルム30の厚さは、個々の設計に応じて変わりうる。しかし、この厚さは、約0.05〜2mmであるのが好ましく、約0.5mmであればより好ましい。基板24の厚さは、約2〜5mmであるのが好ましく、約3〜4mmであればより好ましい。全体で、ウィンドウ・システム10の厚さは、溶融接着されたフィルム30と基板24の両方を含めて、約3〜6mmであるのが好ましく、約4〜5mmであればより好ましい。
【0040】
フィルム30の第1面32上のヒーティング・グリッドは、スクリーン印刷によって第1面32上に塗布される導電性インクで形成されるが、当業者に知られている他の印刷の方法も許容できる。そのような他の方法には、マスク/スプレー(mask/spray)印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、膜画像転写(membrane image transfer)印刷、又はロボット(robotic)印刷が含まれるが、それらに限定されない。導電性インクの材料は、当技術分野でよく知られている。
【0041】
フィルム30と基板24の両方の第1面26及び32が溶融接着された後、得られたプラスチック・パネル14は、一般に、その上に耐候層36及び耐摩耗層38を形成させるためにコーティングされる。一般に、耐候層はフィルム30の第2面に塗布される。しかし、耐候層34はまた、基板24の第2面28に塗布することもできる。耐摩耗層38は一般に、基板24とフィルム30との両方の第2面28、34に塗布される。
【0042】
他のコーティング・システムを使用することもできるが、耐候層36は、ポリウレタン・コーティング、又はアクリル下塗り剤とシリコーン・ハードコートの組合せを含むことが好ましい。そのようなアクリル下塗り剤の一実施例としては、Exatec(登録商標)SHP 9X(Exatec、LLC、米国ミシガン州Wixom)がある。一般に下塗り剤は、透明なプラスチック・パネル上にコーティングされ、空気乾燥され、次に熱硬化される。シリコーン・ハードコートが下塗り層の上に塗布され、手入れをされる(curried)前に空気乾燥される。シリコーン・ハードコート中の樹脂は、複数のアルコール溶剤の混合物中に分散させたメチルシルセスキオキサン樹脂が好ましい。また、シリコーン・ハードコートは、他の添加物を含むこともでき、とりわけ界面活性剤、酸化防止剤、殺生物剤、紫外線吸収剤、及び乾燥剤などを含むこともできるが、それらに限定されない。好ましいシリコーン・ハードコートは、Exatec(登録商標)SHX(Exatec、LLC、米国ミシガン州Wixom)である。耐候層の下塗り剤は、第1の共溶媒としての水と、第2の共溶媒としての有機液体とを含む水性アクリル下塗り剤である。下塗り剤/ハードコート系に存在する第2の共溶媒に関連した概略の化学的分類には、グリコールエーテル、ケトン、アルコール及びアセテートが含まれる。アクリル樹脂は、水溶性、分散性、又は還元可能な樹脂として存在することができる。下塗り剤は、他の添加物を含むこともでき、とりわけ界面活性剤、酸化防止剤、殺生物剤、紫外線吸収剤(UVA)、及び乾燥剤などを含むこともできるが、それらに限定されない。
【0043】
耐候層36は、当技術分野で浸漬被覆として知られる方法で、室温及び大気圧においてパネルを被覆剤に浸漬することによって、透明なプラスチック・パネルに塗布することができる。別法として、耐候層は、流し塗り、カーテン・コーティング、スプレー・コーティング、又は当業者に知られた他の方法によって塗布することもできる。
【0044】
耐摩耗層38は実質的に無機の被覆剤であり、この被覆剤は、耐摩耗性を改善することによって自動車の装飾ガラス・アセンブリに付加的又は強化した機能を加える。耐摩耗層38は、耐候層36の上面、並びに基板24の第2面28とフィルム30の第2面34の両方に塗布されるが、耐候層36は、基板24の第2面28にはなくてもよい。したがって、耐摩耗層38は、基板24の第2面28上に直接堆積させることもある。耐摩耗層38として可能な無機被覆剤の具体的な実施例には、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコンオキシナイトライド、シリコンオキシカーバイド、シリコンカーバイド、水素化シリコンオキシカーバイド、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、又はガラス、並びにこれらの混合物又は配合物が含まれが、それらに限定されない。
【0045】
耐摩耗層38は、当業者に知られた任意の技法によって塗布することができる。これらの技法には、真空蒸着プロセスに使用される蒸着などの反応種からの蒸着と、及びゾル−ゲル被覆を基板に適用するために使用されるプロセスなどの大気中コーティング・プロセスが含まれる。真空蒸着プロセスの実施例には、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、アークPECVD、イオン・アシスト・プラズマ蒸着、マグネトロン・スパッタリング、電子ビーム蒸着、及びイオン・ビーム・スパッタリングを含むが、それらに限定されない。大気中コーティング・プロセスの実施例には、カーテン・コーティング、スプレー・コーティング、スピン・コーティング、ディップ・コーティング、及び流し塗りを含むが、それらに限定されない。
【0046】
本発明では、ウィンドウ・システムはFIMによって用意される。その最も基本の形態では、FIMは、薄く柔軟なプラスチック・フィルム30を使用し、フィルム30の第1面32上にはヒーティング・グリッド12などの機能要素が印刷される。次に、印刷されたフィルム30は必要な形状に成形される。
【0047】
フィルム30の成形は、真空成形(熱成形)、加圧成形、又はハイドロフォーミングを含む様々な技法によって実施することができる。一般に、熱成形の場合と同様に、フィルム30は、フィルムの上に配置されたセラミック加熱素子の列を使用して加熱される。その後フィルムは、所望の完成パネル又は完成ウィンドウの形状に似ているツールの上方に固定される。このツールは下から引き上げられ、気密封止が行われると、真空にされることにより、ツールの上の柔らかくされたフィルムが引っ張られる。ヒーティング・グリッド12を硬化させた直後に成形が実施されるならば、フィルムを事前乾燥させる必要がないことがある。しかし、厚い(約375μm、すなわち0.375mm(0.015インチ)よりも厚い)フィルムでは、たとえ導電性グリッド12の硬化直後であっても、フィルムを事前乾燥させることが必要な場合がある。プラスチック・フィルムの成形はよく知られているので、このプロセスは図面に示されていない。
【0048】
成形の後、必要に応じて、フィルム30は所望のサイズまで削られる。次に、フィルムは、射出金型キャビティ内の、キャビティを画定する面上に、フィルム30の第2面34が金型の表面に接触した状態で配置される。したがって、第1面32及びヒーティング・グリッド12は、キャビティの内部に面している。フィルム30は、真空によって、又はFIMの技術分野の当業者に知られた他の任意の手段によって、金型の表面に保持することができる。金型の半分を閉じた後、基板24を形成する溶融樹脂が金型キャビティ内に注入され、フィルム30の第1面32上にバックフィルする。熱い樹脂と冷たいフィルム30との間の接触により、フィルム30と基板24との間の溶融接着が行われる。したがって、フィルム30はパネル14と一体になる。この方法で製造された各パネル14は、導電性グリッドが基板24とフィルム30との間に封入されているので、ヒーティング・グリッド12に関して、耐擦傷性、耐溶剤性、耐摩耗性及び耐薬品性が強化されている。
【0049】
しかし、車両の電気系統をウィンドウ・システム10の封入されたヒーティング・グリッド12とどのようにして接続するかという点で、問題が依然として残っている。
【0050】
この接続の問題を解決するいくつかの方法を本明細書で提案する。1つの方法は、モールド成形後に、電気コネクタをパネル14内へ挿入することを含む。別の方法は、電気コネクタをパネル14内にインサート成形することを含む。
【0051】
次に、本発明の一実施例による図3A及び図3Bを参照すると、ばねで留めたピン40が、半金型44(すなわちキャビティ側)に対向して位置する半金型42(すなわちコア側)に設けられ、フィルム30が金型41のキャビティ面に固定されている。金型41が閉じられると、ピン40の先端部がヒーティング・グリッド12のバスバー18、19に接触する。ピン40の先端部は、高圧成形中にヒーティング・グリッド12に擦り傷を付けることがないように、ポリウレタン(PU)発泡体又はゴムなどの伸縮性の弾性材料でできていることが好ましい。バスバー18、19とのピン46の接触は、適切なばね率を有するばね48を選択することによって、狭い許容範囲で精密に制御されることが好ましい。容易に理解されるように、ばね48は、ピン46を対向する半金型44の方に付勢し、ばねがヒーティング・グリッド12及びフィルム30に作用する圧力を制御する。このようにして、ピン46とバスバー18、19の間に隙間を生じさせず、それによって、ピン46とバスバー18、19の間にプラスチックが存在すること(flashing)も回避される。しかし、ピン46は、フィルム30をあまりに強く押してはならない。というのは、そのような力は、フィルム30上にひずみ又は傷跡を残し、あるいは、フィルム30とバスバー18、19の間の接触を実際に遮断することがあるからである。金型41が開かれ、そこからパネル14が取り出されると、ピン46は、形成されたパネル14の外に引き出される。
【0052】
ピン18、19により、穴50が成形パネル14内に形成される。図3で分かるように、穴50を利用して、電気コネクタ52が穴52の中に挿入又はねじ込みされ、あるいは別法として穴52の中に超音波により挿入、又は熱により挿入される。超音波により挿入される間、コネクタは穴(コネクタよりわずかに小さい寸法にしてある)の上部に配置され、超音波溶接機の音極(sonotrode)すなわちホーンによって超音波励振される。こうすることで、コネクタと穴の境界面で摩擦熱が発生する。その結果、コネクタは、穴の中のそれが通る部分を溶融する。コネクタがバスバーと係合すると、超音波励振が停止され、溶融部が固化してコネクタが固定される。この挿入プロセスは、ねじコネクタでもねじコネクタでなくても使用することができる。熱による挿入では、コネクタを加熱してから、コネクタを穴に押し込む機器を使用する。この加熱は一般に、接触(インサート/コネクタを保持する加熱先端部)又は誘導によって行われる。コネクタ50が穴52の中に完全に挿入されるとき、バスバー18、19を損傷することなく、基板24又はフィルム30に応力をかけることなく、コネクタ50がバスバー18、19と十分に電気的な接触をするように、コネクタ52は寸法設定されることが好ましい。
【0053】
本発明の一代替実施例(図4Aに示す)では、コネクタ・インサート54(真鍮、銅又は鋼でできていることが好ましい)が、フィルム30を支持する半金型44(すなわちキャビティ側)に対向する半金型42(すなわちコア側)上に装着される。インサート54は、パネル14中へのフィルム30のFIMの間に基板24に鋳込まれるように、半金型42によって保持される。2つの半金型42、44が閉じられると、コネクタ・インサート54は、フィルム30上のバスバー18、19と接触する。先の方法と同様に、バスバー18、19との接触は、バスバー18、19、フィルム30、又はこれら2つの間の接続を損なわないように制御される。コネクタ・インサート54によるバスバー18、19との接触もまた、バスバー18、19とコネクタ・インサート54の間に注入されたプラスチックが存在することを回避するのに十分でなければならない。次に、基板24のプラスチック樹脂がフィルム30と半金型42との間に注入される。その結果、図4Bで分かるように、FIMヒーティング・グリッド12がフィルム30と基板24との間に封入され、かつコネクタ・インサート54が基板24に封入されたパネル14が得られる。
【0054】
一般に、この第2の実施例の製造工程は以下の通りである。まず、ヒーティング・グリッド12がフィルム30に印刷されるが、後者は、光学ポリカーボネート・フィルム、耐候性フィルム(すなわちPC/PMMA)でよく、あるいはFIMに適し、基板を形成すべき材料に対し良好な接着性を有する他のフィルム(PCが好ましい)でもよい。フィルム30は、成形され、(必要に応じて)削られ、次に、金型41のうちの一方の半金型44内に、半金型44内に画定されたキャビティに対応した形状の面に固定されて配置される。ロータリ型又はシャトル・テーブル型の射出成形機は、本方法を使用するのに最もよく適していると考えられる。それは、これらの成形機がより大きな融通性及び生産性を提供し、かつコネクタ・インサート54を半金型42(コア側)内に取り付け、形成されたパネル14を取り出すのにロボット・オペレータを使用することを可能にする点においてである。フィルム30が半金型44内に配置されると、又はその前に、コネクタ・インサート54は、それぞれの半金型42内の保持機能を有する部分55の中に装着される。コネクタ・インサート54は、車両の電気系統へのさらなる取付けに適した多様な任意のものでよいが、車両の電気系統への取付け用の雌ねじを含むことが好ましい。例示的には、コネクタ・インサート54は、自動車分野で使用されることが多い種類の6.35mm(4分の1インチ)電気コネクタとすることができる。このようなコネクタの代表的な実施例が概略的に図5に示されている。
【0055】
プロセスを実施する際には、ロボット・アームがフィルム30を供給マガジンから取り上げ、フィルム30を半金型44の対応する面の上に配置することが好ましい。フィルム30は、静電荷、機械的方法、又は真空を加えることによって金型面上に保持されることが好ましい。別のロボット・アームが、1つ又は複数のコネクタ・インサート54を別の供給器から取り上げ、それらを概してフィルム30に対向するそれぞれの半金型42の保持フィーチャ55内に配置することが好ましい。半金型42の保持フィーチャ55は、コネクタ・インサート54を成形金型42に固定し保持する機械的手段、磁気的手段又は他の手段とすることができる。そのように装着されて、金型41が閉じられ、プラスチック樹脂がフィルム30と半金型42との間に注入され、それによってインサート54が部分的に覆われ、すなわち封入され、フィルム30と基板24がホット・メルト接合される。コネクタ・インサート54を部分的に封入することで、インサート54のまわりの封入樹脂がその樹脂の冷却につれて収縮することによって、あるいは樹脂がインサート54の表面凹凸とかみ合うことによって、機械的結合が基板24とコネクタ・インサート54との間に形成される。次に、注入樹脂が冷えて固化し、その結果、封入されたヒーティング・グリッド12、並びにモールドイン・コネクタ・インサート54を備えたパネル14が得られる。モールド成形の後、パネル14が好ましくはロボット・アームによって排除すなわち取り出され、次のモールド成形サイクルが新たに始まる。
【0056】
前の実施例の、図6A〜6Fに見られる一変形では、フィルム30をパネル14内に組み込む前に、1つ又は複数のパッド・コネクタ56がフィルム30のバスバー18、19に取り付けられる。バスバー18、19と接触するパッド・コネクタ56の面には、バスバー18、19との電気的接触をよりよくするために、刻み目が付けられる(knurled)ことが好ましい。FIMの間に、基板24を形成するプラスチック樹脂は、フィルム30上に設けられたヒーティング・グリッド12だけでなく、パッド・コネクタ56も封入する(図6C参照)。金型からの取出しの後、基板24の、パッド・コネクタ56のすぐ上に位置する部分が除去されて穴57が画定され、パッド・コネクタ56の中央部分が露出する(図6D参照)。パッド・コンダクタ56の厚さは、基板24の、パッド・コンダクタ56の上に位置する部分が除去されるときに、パッド・コンダクタ56を貫通してバスバー18、19の中まで機械加工する危険を低減させるように、十分に厚いことが好ましい。また、コネクタ・パッド56の直径又は幅は、基板24から除去される領域よりも大きいことが好ましい。このようにして、基板24は、パッド・コネクタ56の少なくとも一部分を引き続き封入する。それによって、一部分を封入せずにパッド・コネクタ56を単にバスバー18、19に取り付けただけの場合よりも、パッド・コネクタ56をバスバー18、19の上に保持する力がより大きくなる。
【0057】
パッド・コネクタ56はまた、車両の電気系統配線用ハーネスの端子への機械的接続を容易にする機能も取り入れることができる。例えば、図6Aで分かるように、パッド・コネクタ56内に溝60によってスペード端子(spade)58を画定することができる。パッド・コネクタ56が露出すると、次に、図6Eで概略的に分かるように、スペード端子58を上方に曲げ、そこに配線用ハーネスの端子(図示せず)を取り付けることができる。別法として、またスペード端子58を用いないで、図6Fで概略的に分かるように、配線用ハーネス62の端子をパッド・コネクタ56に接合することもできる。
【0058】
好ましい実施例についての上記の説明は、例示的な性質のものにすぎず、本発明、あるいはその応用又は用途を限定するものでは決してない。上記の説明から当業者には理解されるように、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、改変及び変更を本発明の好ましい実施例に加えることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、導電性グリッド、トレース又は回路(以後は単に「グリッド」という)をパネル上に有するプラスチック・パネルへの電気端子の接続に関するものである。より詳細には、本発明は、霜除去及び曇り除去などの機能をウィンドウ・システムにもたせるために、フィルム・インサート成形によってプラスチック・ウィンドウ・システムのプラスチック基板に適用される電気グリッドに対する電気端子の取付けに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウィンドウの霜除去及び曇り除去などの機能を、ウィンドウ・システム、とりわけ自動車のバックライトにもたせるために、導電性グリッドが長く使用されてきた。例えば電気加熱バックライトでは、一般に、導電性ヒーティング・グリッドがウィンドウの内側又は外側に配置される。また一般に、ヒーティング・グリッドは、一連のグリッド線が間に延在する一対の対向するバスバーも含む。このヒーティング・グリッド中を電流が通過する間、グリッド線の抵抗により熱が発生することになり、この熱がウィンドウ全体にわたって放散し、続いてウィンドウの霜又は曇りが除去される。ヒーティング・グリッドに電気を供給するために、ヒーティング・グリッドは自動車の電気系統に接続される。
【0003】
ヒーティング・グリッドへの自動車の電気系統の接続を実施するために、ヒーティング・グリッドのバスバーが、ウィンドウの縁部を越えて延在するホイル・タブを持つよう形成されてきた。このタブに車両の電気系統からのワイヤ・ハーネス端子が係合する。この端子は、様々な構造とすることができるが、ハウジング内に入れられたばね金属接点を含むことが多い。このハウジングがタブに取り付けられると、その接点が付勢されてバスバーと接触する。別の構造では、結合パッドがバスバーに一体化して形成され、又は取り付けられ、この結合パッドに車両の電気系統からの端子がハンダ付けされる。
【0004】
別の代替構造では、ヒーティング・グリッドは、フィルム・インサート成形(FIM)によってウィンドウの基板に取り付けられる。フィルム・インサート成形(FIM)は、インモールド成形(IMD)と呼ばれることもある。本発明がとりわけ対象とするのはこれらの技法である。FIMでは、ヒーティング・グリッドは、本明細書でフィルムと呼ぶ柔軟で薄いプラスチック・シート上に印刷される。このフィルムは、プラスチック・パネルが中に形成される金型のキャビティ面の形状に一致するように形づくられる。フィルムは、ヒーティング・グリッドが金型キャビティの内側に向くように、金型内で、金型キャビティに対応する面上に配置される。その後、金型が閉じられ、パネルの基板用のプラスチック樹脂が金型中に注入され、それによってフィルムがバックフィル(back filling)され、プラスチック・フィルムが付着したパネルが形成される。その結果、ヒーティング・グリッドは、パネル内でフィルムと基板との間に封入される。パネルが十分に冷却された後、金型が開かれ、フィルム及び一体化したヒーティング・グリッドを備えたパネルが金型から取り出される。
【0005】
上記の構造のそれぞれには、既知の問題及び制約がある。ばね接点の例示的な制約には、車両の寿命の間に疲労及び/又は振動によりばね接点がゆるんで、ヒーティング・グリッドが動作しなくなる、又は動作不良になるということがある。パッド結合構造の制約に関しては、つけるハンダが多すぎたり少なすぎたりすると、端子と結合パッドとの間の接合が弱くなり、その結果、端子が結合パッド自体から容易に外れることになりうる。プラスチックのガラス転移温度が低いことにより、従来の高温ハンダを使用してバスバーへの堅固な接続部を作製することができない。残念ながら、市販の低温ハンダ、及び導電性接着剤でさえも、容認できる結合強度、及び、又は信頼性を有していない。
【0006】
FIMによって取り付けられるヒーティング・グリッドに関しては、モールド成形後、ヒーティング・グリッドはフィルムとパネルのプラスチック基板との間に封入される。ヒーティング・グリッドが機能するようにするためには、ヒーティング・グリッドが車両の電気系統に、より具体的には、電気系統の電気端子に接続されなければならない。上記に鑑みて、端子をプラスチック・ウィンドウ・システムのFIM導電性グリッドのバスバーに取り付けるための改善された接続構造が必要なことが明らかである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
関連技術についての列挙した欠点及び他の制約を克服するだけでなく、上記の必要性も満たすために、本発明は、第1面及び第2面を有する透明なプラスチック基板を含むプラスチック・ウィンドウを用意することによって、FIM導電性グリッドの接続の問題を解決する。この基板の第1面に、基板よりも薄いプラスチック・フィルムが接着される。少なくとも1つの導電コネクタ部を含む導電性グリッドが、基板とフィルムとの間に封入される。少なくとも1つの電気コネクタが、基板内に延在し、導電コネクタ部と電気的に接触する状態に配置され、その結果、電圧源を導電コネクタ部に接続し、電流を導電性グリッドに流すことができるようになる。
【0008】
本発明の別の態様では、基板とフィルムとの間の接着が溶融接着である。
【0009】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、基板内に形成された穴の中に延在する。
【0010】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、穴を画定する基板の部分と接触する。
【0011】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、穴を画定する基板の部分と接触しない。
【0012】
本発明の別の態様では、電気コネクタは穴とねじ係合する。
【0013】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、基板に少なくとも部分的に封入され、その中で機械的に保持される。
【0014】
本発明の別の態様では、導電性グリッドは、アンテナ、エレクトロルミネセント・ボーダー(electroluminescent border)、電気スイッチ、ヒーティング・グリッド、並びにエレクトロクロミック・デバイス、フォトクロミック・デバイス、液晶デバイス、ユーザ制御可能フォトクロミック・デバイス、ポリマー分散液晶デバイス及び当技術分野で一般に知られている懸濁粒子デバイス(suspended particle device)などの発色デバイスのうちの1つである。
【0015】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、プラスチック基板内に鋳込まれたねじ金属インサートであり、導電コネクタ部と接触する。
【0016】
本発明の別の態様では、電気コネクタは、導電コネクタ部に取り付けられた金属円盤であり、この円盤は、基板の開口を通じて部分的に露出している。
【0017】
本発明の別の態様では、円盤は電気端子取付け機能を有する部分を含む。
【0018】
本発明の別の態様では、円盤の底面は、導電コネクタ部と接触しており、刻み目を付けた面(knurled surface)を有することができる。
【0019】
本発明の別の態様では、電気端子取付け機能を有する部分は、円盤内に画定された折り曲げタブである。
【0020】
本発明の別の態様では、保護コーティングが基板及びフィルムに施され、この保護コーティング・システムは、耐候層及び耐摩耗層のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
本発明の別の態様では、フィルムは薄いプラスチック・シートである。
【0022】
本発明のさらに別の態様では、プラスチック・ウィンドウを製造する方法は、第1面及び第2面を有する薄く柔軟なプラスチック・フィルムを用意するステップと、フィルムの第1面上に、少なくとも1つの導電コネクタ部を含む導電性グリッドを形成するステップと、フィルムを金型のキャビティ面に固定するステップであって、このキャビティ面が、ウィンドウの形状に金型のキャビティを部分的に画定し、フィルムの第2面がキャビティ面と接触するステップと、フィルムがキャビティ内に保持されるように金型を閉じるステップと、金型とフィルムの第1面との間のキャビティ内にプラスチック樹脂を注入して基板を画定するステップと、導電性グリッドがフィルムと基板との間に封入されるようにフィルムの第1面を基板に溶融接着するステップと、基板内に延在し、導電コネクタ部と電気的に接触し、それによって電圧源を導電コネクタ部に接続することができ、またそれによって導電性グリッドに電流を流すことができる、電気コネクタを設けるステップとを含む。
【0023】
本発明の別の態様では、この方法は、基板を導電コネクタ部まで貫通する少なくとも1つの穴を形成するステップをさらに含み、電気コネクタが、穴の中に延在するように設けられる。
【0024】
本発明の別の態様では、穴は、基板の、導電コネクタ部に直近の部分を機械的に切除することによって形成される。
【0025】
本発明の別の態様では、穴は、フィルムに対向して位置する金型の一部分から延びるピンのまわりに基板をモールド成形することによって形成される。
【0026】
本発明の別の態様では、この方法は、キャビティ内にプラスチック樹脂を注入するステップの前に、金型を閉じ、ピンを導電コネクタ部と接触させるステップをさらに含む。
【0027】
本発明の別の態様では、金型を閉じると同時に、ピンを支持する金型の部分の中に、このピンは、少なくとも部分的に引き入れられる。
【0028】
本発明の別の態様では、ピンは、ピンを支持する金型の部分から延びる位置へ向けて付勢される。
【0029】
本発明の別の態様では、電気コネクタは超音波により穴の中に挿入される。
【0030】
本発明の別の態様では、電気コネクタは穴の中に熱により挿入される。
【0031】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、本明細書に添付され、その一部を成す図面及び特許請求の範囲を参照して以下の説明を検討すれば、当業者には容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の原理を実施するプラスチック・ウィンドウの図である。
【図2】図1に見られるプラスチック・ウィンドウの部分断面図である。
【図3A】本発明の原理によるプラスチック・ウィンドウをモールド成形するための金型の概略図である。
【図3B】図3Aでモールド成形されたプラスチック・ウィンドウの概略断面図である。
【図4A】本発明の原理による別のプラスチック・ウィンドウをモールド成形するための金型の概略図である。
【図4B】図4Aでモールド成形されたプラスチック・ウィンドウの概略断面図である。
【図5】本発明で使用できる代表的なコネクタを示す図である。
【図6A】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6B】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6C】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6D】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6E】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【図6F】本発明の原理を実施する別の方法及びプラスチック・ウィンドウを示す図である。
【実施例】
【0033】
好ましい諸実施例についての以下の説明は、例示的な性質のものにすぎず、本発明の範囲、あるいはその応用又は用途を限定するものでは決してない。
【0034】
ここで図1を参照すると、プラスチック・ウィンドウ・システム10が全体的に示されており、その主要な構成要素として、パネル14内に組み込まれた導電性グリッド12を含む。導電性グリッド12は、ウィンドウ・システムに機能をもたせる様々な要素の1つであるが、ここでは導電性グリッド12をさらに説明するとともに、それをヒーティング・グリッド12と呼ぶ。
【0035】
ヒーティング・グリッド12は、概して対向するバスバー18、19の間に延在する一連のグリッド線16を含むことが好ましいが、他のヒーティング・グリッドの構造を使用することもできる。さらに、グリッド線16のうちの少なくとも一部を、残りのグリッド線16の間に広がる導電性コーティングと置き換えることもできる。
【0036】
バスバー18、19は、正極バスバー及び負極バスバーと呼ばれ、それぞれ、自動車の電気系統の一部である電源22の正極リード線20、負極リード線21に接続される。ヒーティング・グリッド12に電圧が加えられると、電流が正極バスバー18から負極バスバー19へとグリッド線16を通って流れ、その結果、グリッド線16は抵抗加熱によって熱くなる。バスバー18、19及びグリッド線16の幅及び長さは、適切な任意の寸法とすることができ、一つには、ウィンドウ・システム10のサイズ及び他の特性によって決められる。
【0037】
図2で分かるように、パネル14は、より詳細には、26及び28でそれぞれ示された対向する第1及び第2の面を有する透明なプラスチック基部層すなわち基板24を含む。これらの面は、それぞれ、自動車に組み込まれたウィンドウの内側面及び外側面の方向に向けられている。パネル14はさらに、第1面32及び第2面34を有する透明なプラスチック・フィルム32を含む。ヒーティング・グリッド12は、フィルム30の第1面32に設けられる。パネル14の最終構造では、ヒーティング・グリッド12を基板24とフィルム30との間に封入するために、基板24の第1面26とフィルム30の第1面32とは、一体化してともに溶融接着される。パネル14はさらに、その片面又は両面に塗布された耐候層36及び/又は耐摩耗層38を含むことができる。
【0038】
基板24及びフィルム30はプラスチック樹脂で形成され、この樹脂は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂及びポリスルホン樹脂、並びにそれらの共重合体及び混合物でよいが、それらに限定されない。基板24及びフィルム30はさらに、様々な添加物を含むことができ、とりわけ、着色剤、離型剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤(UVA)などを含むことができる。
【0039】
フィルム30の厚さは、個々の設計に応じて変わりうる。しかし、この厚さは、約0.05〜2mmであるのが好ましく、約0.5mmであればより好ましい。基板24の厚さは、約2〜5mmであるのが好ましく、約3〜4mmであればより好ましい。全体で、ウィンドウ・システム10の厚さは、溶融接着されたフィルム30と基板24の両方を含めて、約3〜6mmであるのが好ましく、約4〜5mmであればより好ましい。
【0040】
フィルム30の第1面32上のヒーティング・グリッドは、スクリーン印刷によって第1面32上に塗布される導電性インクで形成されるが、当業者に知られている他の印刷の方法も許容できる。そのような他の方法には、マスク/スプレー(mask/spray)印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、膜画像転写(membrane image transfer)印刷、又はロボット(robotic)印刷が含まれるが、それらに限定されない。導電性インクの材料は、当技術分野でよく知られている。
【0041】
フィルム30と基板24の両方の第1面26及び32が溶融接着された後、得られたプラスチック・パネル14は、一般に、その上に耐候層36及び耐摩耗層38を形成させるためにコーティングされる。一般に、耐候層はフィルム30の第2面に塗布される。しかし、耐候層34はまた、基板24の第2面28に塗布することもできる。耐摩耗層38は一般に、基板24とフィルム30との両方の第2面28、34に塗布される。
【0042】
他のコーティング・システムを使用することもできるが、耐候層36は、ポリウレタン・コーティング、又はアクリル下塗り剤とシリコーン・ハードコートの組合せを含むことが好ましい。そのようなアクリル下塗り剤の一実施例としては、Exatec(登録商標)SHP 9X(Exatec、LLC、米国ミシガン州Wixom)がある。一般に下塗り剤は、透明なプラスチック・パネル上にコーティングされ、空気乾燥され、次に熱硬化される。シリコーン・ハードコートが下塗り層の上に塗布され、手入れをされる(curried)前に空気乾燥される。シリコーン・ハードコート中の樹脂は、複数のアルコール溶剤の混合物中に分散させたメチルシルセスキオキサン樹脂が好ましい。また、シリコーン・ハードコートは、他の添加物を含むこともでき、とりわけ界面活性剤、酸化防止剤、殺生物剤、紫外線吸収剤、及び乾燥剤などを含むこともできるが、それらに限定されない。好ましいシリコーン・ハードコートは、Exatec(登録商標)SHX(Exatec、LLC、米国ミシガン州Wixom)である。耐候層の下塗り剤は、第1の共溶媒としての水と、第2の共溶媒としての有機液体とを含む水性アクリル下塗り剤である。下塗り剤/ハードコート系に存在する第2の共溶媒に関連した概略の化学的分類には、グリコールエーテル、ケトン、アルコール及びアセテートが含まれる。アクリル樹脂は、水溶性、分散性、又は還元可能な樹脂として存在することができる。下塗り剤は、他の添加物を含むこともでき、とりわけ界面活性剤、酸化防止剤、殺生物剤、紫外線吸収剤(UVA)、及び乾燥剤などを含むこともできるが、それらに限定されない。
【0043】
耐候層36は、当技術分野で浸漬被覆として知られる方法で、室温及び大気圧においてパネルを被覆剤に浸漬することによって、透明なプラスチック・パネルに塗布することができる。別法として、耐候層は、流し塗り、カーテン・コーティング、スプレー・コーティング、又は当業者に知られた他の方法によって塗布することもできる。
【0044】
耐摩耗層38は実質的に無機の被覆剤であり、この被覆剤は、耐摩耗性を改善することによって自動車の装飾ガラス・アセンブリに付加的又は強化した機能を加える。耐摩耗層38は、耐候層36の上面、並びに基板24の第2面28とフィルム30の第2面34の両方に塗布されるが、耐候層36は、基板24の第2面28にはなくてもよい。したがって、耐摩耗層38は、基板24の第2面28上に直接堆積させることもある。耐摩耗層38として可能な無機被覆剤の具体的な実施例には、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコンオキシナイトライド、シリコンオキシカーバイド、シリコンカーバイド、水素化シリコンオキシカーバイド、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、又はガラス、並びにこれらの混合物又は配合物が含まれが、それらに限定されない。
【0045】
耐摩耗層38は、当業者に知られた任意の技法によって塗布することができる。これらの技法には、真空蒸着プロセスに使用される蒸着などの反応種からの蒸着と、及びゾル−ゲル被覆を基板に適用するために使用されるプロセスなどの大気中コーティング・プロセスが含まれる。真空蒸着プロセスの実施例には、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、アークPECVD、イオン・アシスト・プラズマ蒸着、マグネトロン・スパッタリング、電子ビーム蒸着、及びイオン・ビーム・スパッタリングを含むが、それらに限定されない。大気中コーティング・プロセスの実施例には、カーテン・コーティング、スプレー・コーティング、スピン・コーティング、ディップ・コーティング、及び流し塗りを含むが、それらに限定されない。
【0046】
本発明では、ウィンドウ・システムはFIMによって用意される。その最も基本の形態では、FIMは、薄く柔軟なプラスチック・フィルム30を使用し、フィルム30の第1面32上にはヒーティング・グリッド12などの機能要素が印刷される。次に、印刷されたフィルム30は必要な形状に成形される。
【0047】
フィルム30の成形は、真空成形(熱成形)、加圧成形、又はハイドロフォーミングを含む様々な技法によって実施することができる。一般に、熱成形の場合と同様に、フィルム30は、フィルムの上に配置されたセラミック加熱素子の列を使用して加熱される。その後フィルムは、所望の完成パネル又は完成ウィンドウの形状に似ているツールの上方に固定される。このツールは下から引き上げられ、気密封止が行われると、真空にされることにより、ツールの上の柔らかくされたフィルムが引っ張られる。ヒーティング・グリッド12を硬化させた直後に成形が実施されるならば、フィルムを事前乾燥させる必要がないことがある。しかし、厚い(約375μm、すなわち0.375mm(0.015インチ)よりも厚い)フィルムでは、たとえ導電性グリッド12の硬化直後であっても、フィルムを事前乾燥させることが必要な場合がある。プラスチック・フィルムの成形はよく知られているので、このプロセスは図面に示されていない。
【0048】
成形の後、必要に応じて、フィルム30は所望のサイズまで削られる。次に、フィルムは、射出金型キャビティ内の、キャビティを画定する面上に、フィルム30の第2面34が金型の表面に接触した状態で配置される。したがって、第1面32及びヒーティング・グリッド12は、キャビティの内部に面している。フィルム30は、真空によって、又はFIMの技術分野の当業者に知られた他の任意の手段によって、金型の表面に保持することができる。金型の半分を閉じた後、基板24を形成する溶融樹脂が金型キャビティ内に注入され、フィルム30の第1面32上にバックフィルする。熱い樹脂と冷たいフィルム30との間の接触により、フィルム30と基板24との間の溶融接着が行われる。したがって、フィルム30はパネル14と一体になる。この方法で製造された各パネル14は、導電性グリッドが基板24とフィルム30との間に封入されているので、ヒーティング・グリッド12に関して、耐擦傷性、耐溶剤性、耐摩耗性及び耐薬品性が強化されている。
【0049】
しかし、車両の電気系統をウィンドウ・システム10の封入されたヒーティング・グリッド12とどのようにして接続するかという点で、問題が依然として残っている。
【0050】
この接続の問題を解決するいくつかの方法を本明細書で提案する。1つの方法は、モールド成形後に、電気コネクタをパネル14内へ挿入することを含む。別の方法は、電気コネクタをパネル14内にインサート成形することを含む。
【0051】
次に、本発明の一実施例による図3A及び図3Bを参照すると、ばねで留めたピン40が、半金型44(すなわちキャビティ側)に対向して位置する半金型42(すなわちコア側)に設けられ、フィルム30が金型41のキャビティ面に固定されている。金型41が閉じられると、ピン40の先端部がヒーティング・グリッド12のバスバー18、19に接触する。ピン40の先端部は、高圧成形中にヒーティング・グリッド12に擦り傷を付けることがないように、ポリウレタン(PU)発泡体又はゴムなどの伸縮性の弾性材料でできていることが好ましい。バスバー18、19とのピン46の接触は、適切なばね率を有するばね48を選択することによって、狭い許容範囲で精密に制御されることが好ましい。容易に理解されるように、ばね48は、ピン46を対向する半金型44の方に付勢し、ばねがヒーティング・グリッド12及びフィルム30に作用する圧力を制御する。このようにして、ピン46とバスバー18、19の間に隙間を生じさせず、それによって、ピン46とバスバー18、19の間にプラスチックが存在すること(flashing)も回避される。しかし、ピン46は、フィルム30をあまりに強く押してはならない。というのは、そのような力は、フィルム30上にひずみ又は傷跡を残し、あるいは、フィルム30とバスバー18、19の間の接触を実際に遮断することがあるからである。金型41が開かれ、そこからパネル14が取り出されると、ピン46は、形成されたパネル14の外に引き出される。
【0052】
ピン18、19により、穴50が成形パネル14内に形成される。図3で分かるように、穴50を利用して、電気コネクタ52が穴52の中に挿入又はねじ込みされ、あるいは別法として穴52の中に超音波により挿入、又は熱により挿入される。超音波により挿入される間、コネクタは穴(コネクタよりわずかに小さい寸法にしてある)の上部に配置され、超音波溶接機の音極(sonotrode)すなわちホーンによって超音波励振される。こうすることで、コネクタと穴の境界面で摩擦熱が発生する。その結果、コネクタは、穴の中のそれが通る部分を溶融する。コネクタがバスバーと係合すると、超音波励振が停止され、溶融部が固化してコネクタが固定される。この挿入プロセスは、ねじコネクタでもねじコネクタでなくても使用することができる。熱による挿入では、コネクタを加熱してから、コネクタを穴に押し込む機器を使用する。この加熱は一般に、接触(インサート/コネクタを保持する加熱先端部)又は誘導によって行われる。コネクタ50が穴52の中に完全に挿入されるとき、バスバー18、19を損傷することなく、基板24又はフィルム30に応力をかけることなく、コネクタ50がバスバー18、19と十分に電気的な接触をするように、コネクタ52は寸法設定されることが好ましい。
【0053】
本発明の一代替実施例(図4Aに示す)では、コネクタ・インサート54(真鍮、銅又は鋼でできていることが好ましい)が、フィルム30を支持する半金型44(すなわちキャビティ側)に対向する半金型42(すなわちコア側)上に装着される。インサート54は、パネル14中へのフィルム30のFIMの間に基板24に鋳込まれるように、半金型42によって保持される。2つの半金型42、44が閉じられると、コネクタ・インサート54は、フィルム30上のバスバー18、19と接触する。先の方法と同様に、バスバー18、19との接触は、バスバー18、19、フィルム30、又はこれら2つの間の接続を損なわないように制御される。コネクタ・インサート54によるバスバー18、19との接触もまた、バスバー18、19とコネクタ・インサート54の間に注入されたプラスチックが存在することを回避するのに十分でなければならない。次に、基板24のプラスチック樹脂がフィルム30と半金型42との間に注入される。その結果、図4Bで分かるように、FIMヒーティング・グリッド12がフィルム30と基板24との間に封入され、かつコネクタ・インサート54が基板24に封入されたパネル14が得られる。
【0054】
一般に、この第2の実施例の製造工程は以下の通りである。まず、ヒーティング・グリッド12がフィルム30に印刷されるが、後者は、光学ポリカーボネート・フィルム、耐候性フィルム(すなわちPC/PMMA)でよく、あるいはFIMに適し、基板を形成すべき材料に対し良好な接着性を有する他のフィルム(PCが好ましい)でもよい。フィルム30は、成形され、(必要に応じて)削られ、次に、金型41のうちの一方の半金型44内に、半金型44内に画定されたキャビティに対応した形状の面に固定されて配置される。ロータリ型又はシャトル・テーブル型の射出成形機は、本方法を使用するのに最もよく適していると考えられる。それは、これらの成形機がより大きな融通性及び生産性を提供し、かつコネクタ・インサート54を半金型42(コア側)内に取り付け、形成されたパネル14を取り出すのにロボット・オペレータを使用することを可能にする点においてである。フィルム30が半金型44内に配置されると、又はその前に、コネクタ・インサート54は、それぞれの半金型42内の保持機能を有する部分55の中に装着される。コネクタ・インサート54は、車両の電気系統へのさらなる取付けに適した多様な任意のものでよいが、車両の電気系統への取付け用の雌ねじを含むことが好ましい。例示的には、コネクタ・インサート54は、自動車分野で使用されることが多い種類の6.35mm(4分の1インチ)電気コネクタとすることができる。このようなコネクタの代表的な実施例が概略的に図5に示されている。
【0055】
プロセスを実施する際には、ロボット・アームがフィルム30を供給マガジンから取り上げ、フィルム30を半金型44の対応する面の上に配置することが好ましい。フィルム30は、静電荷、機械的方法、又は真空を加えることによって金型面上に保持されることが好ましい。別のロボット・アームが、1つ又は複数のコネクタ・インサート54を別の供給器から取り上げ、それらを概してフィルム30に対向するそれぞれの半金型42の保持フィーチャ55内に配置することが好ましい。半金型42の保持フィーチャ55は、コネクタ・インサート54を成形金型42に固定し保持する機械的手段、磁気的手段又は他の手段とすることができる。そのように装着されて、金型41が閉じられ、プラスチック樹脂がフィルム30と半金型42との間に注入され、それによってインサート54が部分的に覆われ、すなわち封入され、フィルム30と基板24がホット・メルト接合される。コネクタ・インサート54を部分的に封入することで、インサート54のまわりの封入樹脂がその樹脂の冷却につれて収縮することによって、あるいは樹脂がインサート54の表面凹凸とかみ合うことによって、機械的結合が基板24とコネクタ・インサート54との間に形成される。次に、注入樹脂が冷えて固化し、その結果、封入されたヒーティング・グリッド12、並びにモールドイン・コネクタ・インサート54を備えたパネル14が得られる。モールド成形の後、パネル14が好ましくはロボット・アームによって排除すなわち取り出され、次のモールド成形サイクルが新たに始まる。
【0056】
前の実施例の、図6A〜6Fに見られる一変形では、フィルム30をパネル14内に組み込む前に、1つ又は複数のパッド・コネクタ56がフィルム30のバスバー18、19に取り付けられる。バスバー18、19と接触するパッド・コネクタ56の面には、バスバー18、19との電気的接触をよりよくするために、刻み目が付けられる(knurled)ことが好ましい。FIMの間に、基板24を形成するプラスチック樹脂は、フィルム30上に設けられたヒーティング・グリッド12だけでなく、パッド・コネクタ56も封入する(図6C参照)。金型からの取出しの後、基板24の、パッド・コネクタ56のすぐ上に位置する部分が除去されて穴57が画定され、パッド・コネクタ56の中央部分が露出する(図6D参照)。パッド・コンダクタ56の厚さは、基板24の、パッド・コンダクタ56の上に位置する部分が除去されるときに、パッド・コンダクタ56を貫通してバスバー18、19の中まで機械加工する危険を低減させるように、十分に厚いことが好ましい。また、コネクタ・パッド56の直径又は幅は、基板24から除去される領域よりも大きいことが好ましい。このようにして、基板24は、パッド・コネクタ56の少なくとも一部分を引き続き封入する。それによって、一部分を封入せずにパッド・コネクタ56を単にバスバー18、19に取り付けただけの場合よりも、パッド・コネクタ56をバスバー18、19の上に保持する力がより大きくなる。
【0057】
パッド・コネクタ56はまた、車両の電気系統配線用ハーネスの端子への機械的接続を容易にする機能も取り入れることができる。例えば、図6Aで分かるように、パッド・コネクタ56内に溝60によってスペード端子(spade)58を画定することができる。パッド・コネクタ56が露出すると、次に、図6Eで概略的に分かるように、スペード端子58を上方に曲げ、そこに配線用ハーネスの端子(図示せず)を取り付けることができる。別法として、またスペード端子58を用いないで、図6Fで概略的に分かるように、配線用ハーネス62の端子をパッド・コネクタ56に接合することもできる。
【0058】
好ましい実施例についての上記の説明は、例示的な性質のものにすぎず、本発明、あるいはその応用又は用途を限定するものでは決してない。上記の説明から当業者には理解されるように、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、改変及び変更を本発明の好ましい実施例に加えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する透明なプラスチック基板と、
前記基板よりも薄く、前記基板の前記第1面に接着されるプラスチック・フィルムと、
少なくとも1つの導電コネクタ部を含み、前記基板と前記フィルムとの間に封入される導電性グリッドと、
前記基板内に延在し、前記導電コネクタ部と電気的に接触し、それによって電圧源を前記導電コネクタ部に接続することができ、またそれによって電流が前記導電性グリッドに流れる、少なくとも1つの電気コネクタとを含む、プラスチック・ウィンドウ。
【請求項2】
前記基板と前記フィルムとの間の接着が溶融接着である、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項3】
前記電気コネクタが、前記基板内に形成された穴の中に延在する、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項4】
前記電気コネクタが、前記穴を画定する前記基板の部分と接触する、請求項3に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項5】
前記電気コネクタが、前記穴を画定する前記基板の部分と接触しない、請求項3に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項6】
前記電気コネクタが前記穴とねじ係合する、請求項3に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項7】
前記電気コネクタが、モールド成形後に前記プラスチック基板内の前記穴に挿入された、請求項6に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項8】
前記電気コネクタが、前記基板に少なくとも部分的に封入され、前記基板中に機械的に保持される、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項9】
前記導電性グリッドが、アンテナ、エレクトロルミネセント・ボーダー、電気スイッチ、ヒーティング・グリッド、及び発色デバイスのうちの1つである、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項10】
前記電気コネクタが、前記プラスチック基板内に鋳込まれたねじ金属インサートであり、前記導電コネクタ部と接触する、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項11】
前記電気コネクタが、前記導電コネクタ部に取り付けられた金属円盤であり、前記円盤が前記基板の開口を通じて部分的に露出している、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項12】
前記円盤が電気端子取付け機能を有する部分を含む、請求項11に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項13】
前記電気端子取付け機能を有する部分が、前記円盤内に画定された折り曲げタブである、請求項12に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項14】
前記導電コネクタ部と接触する前記円盤の底面が、刻み目をつけた面を有する、請求項12に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項15】
前記基板及びフィルムに施された保護コーティングをさらに含み、前記保護コーティング・システムが、耐候層及び耐摩耗層のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項16】
前記フィルムが薄いプラスチック・シートである、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項17】
プラスチック・ウィンドウを製造する方法であって、
第1面及び第2面を有する薄く柔軟なプラスチック・フィルムを用意するステップと、
前記フィルムの前記第1面に、少なくとも1つの導電コネクタ部を含む導電性グリッドを形成するステップと、
前記フィルムを金型のキャビティ面に固定するステップであって、前記キャビティ面が、前記ウィンドウの形状に前記金型のキャビティを部分的に画定し、前記フィルムの前記第2面が前記キャビティ面と接触するステップと、
前記フィルムが前記キャビティ内に保持されるように前記金型を閉じるステップと、
前記金型と前記フィルムの前記第1面との間のキャビティ内にプラスチック樹脂を注入して基板を画定するステップと、
前記導電性グリッドが前記フィルムと前記基板との間に封入されるように前記フィルムの前記第1面を前記基板に溶融接着するステップと、
前記基板内に延在して前記導電コネクタ部と電気的に接触し、それによって電圧源を前記導電コネクタ部に接続することができ、またそれによって前記導電性グリッドに電流を流すことができる、電気コネクタを設けるステップとを含む、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項18】
前記導電コネクタ部まで前記基板を貫通する少なくとも1つの穴を形成するステップをさらに含み、前記電気コネクタが、前記穴の中に延在するように設けられる、請求項17に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項19】
前記穴が、前記基板の、前記導電コネクタ部に直近の部分を機械的に切除することによって形成される、請求項18に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項20】
前記穴が、前記フィルムに対向して位置する金型の一部分から延びるピンのまわりに基板をモールド成形することによって形成される、請求項18に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項21】
前記キャビティ内に前記プラスチック樹脂を注入するステップの前に、前記金型を閉じ、前記ピンを前記導電コネクタ部と接触させるステップをさらに含む、請求項20に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項22】
前記金型を閉じると同時に、前記ピンを支持する金型の部分の中に前記ピンを少なくとも部分的に引き入れるステップをさらに含む、請求項21に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項23】
前記ピンを支持する金型の部分から延びる位置へ向けて、前記ピンを付勢するステップをさらに含む、請求項22に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項24】
前記電気コネクタが、超音波により前記穴の中に挿入される、請求項18に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項25】
前記電気コネクタが、熱により前記穴の中に挿入される、請求項18に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項1】
第1面及び第2面を有する透明なプラスチック基板と、
前記基板よりも薄く、前記基板の前記第1面に接着されるプラスチック・フィルムと、
少なくとも1つの導電コネクタ部を含み、前記基板と前記フィルムとの間に封入される導電性グリッドと、
前記基板内に延在し、前記導電コネクタ部と電気的に接触し、それによって電圧源を前記導電コネクタ部に接続することができ、またそれによって電流が前記導電性グリッドに流れる、少なくとも1つの電気コネクタとを含む、プラスチック・ウィンドウ。
【請求項2】
前記基板と前記フィルムとの間の接着が溶融接着である、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項3】
前記電気コネクタが、前記基板内に形成された穴の中に延在する、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項4】
前記電気コネクタが、前記穴を画定する前記基板の部分と接触する、請求項3に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項5】
前記電気コネクタが、前記穴を画定する前記基板の部分と接触しない、請求項3に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項6】
前記電気コネクタが前記穴とねじ係合する、請求項3に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項7】
前記電気コネクタが、モールド成形後に前記プラスチック基板内の前記穴に挿入された、請求項6に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項8】
前記電気コネクタが、前記基板に少なくとも部分的に封入され、前記基板中に機械的に保持される、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項9】
前記導電性グリッドが、アンテナ、エレクトロルミネセント・ボーダー、電気スイッチ、ヒーティング・グリッド、及び発色デバイスのうちの1つである、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項10】
前記電気コネクタが、前記プラスチック基板内に鋳込まれたねじ金属インサートであり、前記導電コネクタ部と接触する、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項11】
前記電気コネクタが、前記導電コネクタ部に取り付けられた金属円盤であり、前記円盤が前記基板の開口を通じて部分的に露出している、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項12】
前記円盤が電気端子取付け機能を有する部分を含む、請求項11に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項13】
前記電気端子取付け機能を有する部分が、前記円盤内に画定された折り曲げタブである、請求項12に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項14】
前記導電コネクタ部と接触する前記円盤の底面が、刻み目をつけた面を有する、請求項12に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項15】
前記基板及びフィルムに施された保護コーティングをさらに含み、前記保護コーティング・システムが、耐候層及び耐摩耗層のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項16】
前記フィルムが薄いプラスチック・シートである、請求項1に記載されたプラスチック・ウィンドウ。
【請求項17】
プラスチック・ウィンドウを製造する方法であって、
第1面及び第2面を有する薄く柔軟なプラスチック・フィルムを用意するステップと、
前記フィルムの前記第1面に、少なくとも1つの導電コネクタ部を含む導電性グリッドを形成するステップと、
前記フィルムを金型のキャビティ面に固定するステップであって、前記キャビティ面が、前記ウィンドウの形状に前記金型のキャビティを部分的に画定し、前記フィルムの前記第2面が前記キャビティ面と接触するステップと、
前記フィルムが前記キャビティ内に保持されるように前記金型を閉じるステップと、
前記金型と前記フィルムの前記第1面との間のキャビティ内にプラスチック樹脂を注入して基板を画定するステップと、
前記導電性グリッドが前記フィルムと前記基板との間に封入されるように前記フィルムの前記第1面を前記基板に溶融接着するステップと、
前記基板内に延在して前記導電コネクタ部と電気的に接触し、それによって電圧源を前記導電コネクタ部に接続することができ、またそれによって前記導電性グリッドに電流を流すことができる、電気コネクタを設けるステップとを含む、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項18】
前記導電コネクタ部まで前記基板を貫通する少なくとも1つの穴を形成するステップをさらに含み、前記電気コネクタが、前記穴の中に延在するように設けられる、請求項17に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項19】
前記穴が、前記基板の、前記導電コネクタ部に直近の部分を機械的に切除することによって形成される、請求項18に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項20】
前記穴が、前記フィルムに対向して位置する金型の一部分から延びるピンのまわりに基板をモールド成形することによって形成される、請求項18に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項21】
前記キャビティ内に前記プラスチック樹脂を注入するステップの前に、前記金型を閉じ、前記ピンを前記導電コネクタ部と接触させるステップをさらに含む、請求項20に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項22】
前記金型を閉じると同時に、前記ピンを支持する金型の部分の中に前記ピンを少なくとも部分的に引き入れるステップをさらに含む、請求項21に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項23】
前記ピンを支持する金型の部分から延びる位置へ向けて、前記ピンを付勢するステップをさらに含む、請求項22に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項24】
前記電気コネクタが、超音波により前記穴の中に挿入される、請求項18に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【請求項25】
前記電気コネクタが、熱により前記穴の中に挿入される、請求項18に記載された、プラスチック・ウィンドウを製造する方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【公表番号】特表2010−527099(P2010−527099A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506641(P2010−506641)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/062255
【国際公開番号】WO2008/137569
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/062255
【国際公開番号】WO2008/137569
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】
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